この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

白質脳症は、脳の白質(神経の線維が集まり、情報を伝える部分)が主に傷む病気の総称です。生まれつきの遺伝子の変化による「遺伝性白質脳症」には多くの種類があり、この検査では原因となる69の遺伝子をまとめて調べます。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。原因がわかれば、病名と経過の見通し、早く始めたい治療や備えが決まるだけでなく、ご家族が自分のことを考える手がかりや、次のお子さんで同じ病気が起こる確率まで、具体的に考えられるようになります。このページでは、白質脳症の種類と症状、遺伝のしかた、この検査でわかること・わからないことを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
白質脳症(白質ジストロフィーを含む)の原因として知られる69の遺伝子の変化をまとめて調べ、原因となる病気を確かめます。副腎白質ジストロフィー・白質消失病・皮質下嚢胞をもつ大頭型白質脳症・アレキサンダー病・CADASILなどが対象です。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
MRIで白質の異常を指摘され原因がわからない方、お子さんが白質脳症と診断・疑われたご両親、ご家族に遺伝性の白質脳症の方がいる方です。薬や感染症など後天性の白質脳症は対象ではありません。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
結果までは2〜3週間(至急オプション55,000円で約7日短縮)。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などで、オンライン診療にも対応しています。検査費用はお問い合わせください。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。ご家族への影響、次のお子さんでの確率、意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. 白質脳症とは:遺伝性と後天性の違い
白質脳症(はくしつのうしょう)は、脳の白質が主に傷む病気をまとめた呼び名です。原因は大きく、生まれつきの遺伝子の変化による「遺伝性」と、薬・感染症・血圧・加齢などによる「後天性」に分かれます。このページの検査は、遺伝性の白質脳症の原因を調べるものです。
脳の白質と、白質脳症・白質ジストロフィー
脳の表面に近い灰白質には神経細胞の本体が集まり、その内側の白質には、神経細胞どうしをつなぐ長い線維が束になって走っています。線維の多くは、髄鞘(ずいしょう)という脂質の多い膜に包まれ、電気信号を速く伝えられるようになっています。白質が傷むと、運動・ことば・飲み込み・考える力など、脳の働きのさまざまな面に影響が出ます。
遺伝性の白質の病気について、国際的な定義では、髄鞘やそれを作り保つグリア細胞にもともとの異常がある遺伝性の病気を「白質ジストロフィー(leukodystrophy)」、白質に異常は出るものの、神経細胞そのものの障害や全身の症状が目立つものを「遺伝性白質脳症(genetic leukoencephalopathy)」と分けています。この定義の論文では、白質ジストロフィーにあたる病気が30以上、遺伝性白質脳症にあたる病気が60以上挙げられています[1]。この検査は、この両方にまたがる病気の原因遺伝子を調べます。
この検査の対象にならない白質脳症
「白質脳症」という言葉は、遺伝とは関係のない病気にも使われます。たとえば、抗がん剤など薬による白質脳症、免疫が弱ったときにウイルスで起こる進行性多巣性白質脳症(PML)、血圧の急な上昇などで起こる可逆性後頭葉白質脳症(PRES)、年齢とともに増える大脳白質病変などです。
💡 この検査が向くのは「白質の異常の原因がわからないとき」
これらの後天性の白質脳症は、生まれつきの遺伝子の変化が原因ではないため、この検査ではわかりません。一方で、薬・感染症・血管の病気などで説明がつかない白質の異常や、ご家族に同じような病気の方がいる場合は、遺伝性の白質脳症を考えます。どちらにあたるかは、主治医の診断と遺伝カウンセリングで確かめます。
どれくらいの頻度か
遺伝性の白質ジストロフィーは、一つひとつの病気はまれです。米国の研究では、遺伝子のデータベースに登録された変化の頻度から、白質ジストロフィー全体で出生4,733人に1人という発生頻度が推定されました[2]。これは実際に診断された人数を数えたものではなく、遺伝子のデータから計算した推定値です。まとめて見ると、「まれな病気の集まり」として決して少なくないことがわかります。
2. 白質脳症の主な種類と症状
白質脳症の初期症状は、病気の種類と発症する年齢で大きく違います。乳幼児期に始まり発達の遅れや後戻りで気づかれる病気もあれば、成人になってから歩きにくさ・もの忘れ・脳梗塞などで始まる病気もあります。症状やMRIだけで病気を一つに決めるのは難しいことが多く、遺伝子検査で原因を確かめることが診断の決め手になります。
乳幼児期・小児期に始まることが多い病気
成人になってから始まることが多い病気
- ●CADASIL:NOTCH3遺伝子が原因の脳の細い血管の病気です。前兆のある片頭痛、中年期の脳梗塞のくり返し、気分の変化や意欲の低下、認知機能の低下がみられます。脳梗塞などの発作は平均47歳ごろ(20〜70歳)に始まると報告されています[16]。
- ●CSF1R関連白質脳症(HDLS):CSF1R遺伝子が原因で、ことばの障害、認知機能の低下、行動や精神面の変化、つっぱり、パーキンソン症状、けいれんなどが進みます。症状が進み始めるのは、平均で女性40歳ごろ、男性47歳ごろとされています[17]。
- ●LMNB1関連大脳白質脳症:40〜50代に、自律神経の症状(排尿の障害や立ちくらみなど)から始まることが特徴です[18]。
- ●HTRA1関連脳小血管病・那須・ハコラ病・脳腱黄色腫症など:HTRA1遺伝子、TREM2・TYROBP遺伝子、CYP27A1遺伝子などが原因です。
白質脳症になるとどうなるか:経過と寿命
経過や寿命の見通しは、原因となる病気によってまったく違うため、「白質脳症」としてひとまとめに言うことはできません。急に進んで寝たきりに近い状態になる病気もあれば、成人になってから何十年もかけてゆっくり進む病気、白質消失病のように熱やけがをきっかけに悪くなる病気もあります[13]。原因がわかると、その病気で何に気をつければよいか、どのような経過が考えられるかを具体的に知ることができます。
早く見つけると治療の選択肢がある病気
多くの遺伝性白質脳症には、原因そのものを治す治療はまだありません。それでも、早い段階で始めることで経過を変えられる治療がある病気があります[7]。
- ●副腎白質ジストロフィー(大脳型):造血幹細胞移植は、症状がまだなく、MRIで変化が出はじめた早い時期に行うと最も良い結果が得られるとされています[8][9]。
- ●クラッベ病:症状が出る前の新生児期に臍帯血移植を受けた11人は全員が生存し、髄鞘の形成が進んだのに対し、症状が出てから移植を受けた乳児では神経の改善はわずかでした[10]。
- ●異染性白質ジストロフィー:症状が出る前や早い段階の子どもを対象にした遺伝子治療(アチダルサジーン オートテムセル)が、欧州(2020年)と米国(2024年)で承認されています[7]。日本では、2025年10月の企業の発表時点で、希少疾病用再生医療等製品に指定されたうえで臨床試験の準備中とされ、承認には至っていません。
- ●脳腱黄色腫症:ケノデオキシコール酸による治療があり、症状が出る前に始めると症状の出現を防げる可能性があるとされています[11]。
- ●脳葉酸輸送欠損症(FOLR1遺伝子):2歳で葉酸の一種(フォリン酸)の内服を始めたお子さんで、症状とMRIの所見がともに回復したという報告があります[12]。
だからこそ、原因がはっきりしないまま時間がたつ前に、遺伝子で原因を確かめる意味があります。
3. 白質脳症の遺伝のしかた
遺伝性白質脳症は、病気ごとに「常染色体潜性(劣性)遺伝」「X連鎖遺伝」「常染色体顕性(優性)遺伝」のどれかで受け継がれます。どの遺伝のしかたかによって、ご家族の誰が関係し、次のお子さんでどれくらいの確率で起こるかが変わります。
「自分が軽いから、子どもも軽い」とは言えません
副腎白質ジストロフィーでは、同じ家族やきょうだいの中で、まったく違う型の症状が出ることがよくあると報告されています[8]。成人で脊髄の症状がゆっくり進む方の家族に、子どものうちに脳の白質が急に傷む型の方がいることもあります。また、保因者の女性も、年齢とともに65〜80%で脊髄の症状が出るとされています[8]。
⚠️ 症状の軽さだけで、次の世代の見通しは決められません
ご自身やご家族の症状が軽かったり、ほとんどなかったりしても、同じ変化を受け継いだお子さんが同じ程度になるとは限りません。だからこそ、ご家族の誰かが遺伝性の白質脳症とわかったときは、症状の有無だけで判断せず、知ったうえで計画することに意味があります。
家族に同じ病気の人がいない場合:新しく起きた変化とモザイク
アレキサンダー病(GFAP遺伝子)やTUBB4A遺伝子の病気、STXBP1・KCNT1遺伝子の病気などでは、ご両親はその変化をもたず、お子さんで新しく起きた変化(de novo)が原因であることが多いとされています[15]。この場合、ご両親のせいではないことがはっきりします。
ただし、次のお子さんでの確率はゼロにはなりません。251家族のきょうだいを調べた研究では、きょうだいが同じ「新しく起きた変化」を共有している例が見つかり、そのうち57.2%は親の血液でも見つかりました。親の体の一部の細胞にだけ変化がある「モザイク」が背景にあると考えられています[20]。卵子や精子のもとになる細胞に変化がある「性腺モザイク」では、その細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化をもちます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは人によって違い、実際の診療ではわかりません。そのため、次のお子さんへの確率は「最大で2分の1」と考えます。
4. どんな人がこの検査を受けるとよいか
MRIで白質の異常を指摘されて原因がわからない方、お子さんが白質脳症と診断・疑われたご両親、ご家族に遺伝性の白質脳症の方がいる方に向く検査です。見た目や家族歴だけでは判断できないことが多いので、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。
MRIで白質の異常があり、原因がわからない方
欧州のまれな病気の患者さん6,507人を対象にした調査では、診断がつくまでに平均4.7年かかっていました[4]。白質の病気でも、標準的な検査を尽くしても原因がわからない患者さん71家族に全エクソーム解析を行ったところ、35%で診断に結びつく変化が見つかったと報告されています[3]。原因がわからないまま病院を回る時間を、遺伝子検査で短くできる可能性があります。
ただし、全員に診断がつくわけではありません。日本の未診断疾患イニシアチブ(IRUD)では、遺伝学的解析を終えた5,136家系のうち、診断が確定したのは2,247家系(43.8%)でした[5]。原因が見つからなかった場合の次の選択肢は、第7章でご説明します。
お子さんが白質脳症と診断された・疑われているご両親
重い白質脳症のお子さんでは、検査を考えるのはご本人よりご両親であることがほとんどです。原因がわかれば、病名と見通し、合併症への備え、使える制度が決まります。さらに、次のお子さんで同じ病気が起こる確率と、次の妊娠でどう備えられるかを、具体的に考えられるようになります。原因がわからないままでは、出生前診断で何を調べればよいかを決められません。
ほかのお子さん(きょうだい)が将来、結婚や出産を考えるときに、保因者かどうかを知る手がかりにもなります(常染色体潜性遺伝・X連鎖遺伝の病気の場合)。
ご家族に遺伝性の白質脳症の方がいる方(成人で発症する病気を含む)
CADASILやCSF1R関連白質脳症のように、成人になってから発症する常染色体顕性遺伝の病気では、症状のないご家族が、自分が変化を受け継いでいるかを調べる「発症前の検査」を考えることがあります。当院は、ライフステージごとに患者さんの人生をサポートするという考え方で診療しており、知りたいと願う方を拒むことはしません。遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合は、その意思を尊重して検査まで行います。知らないでいる選択も、同じように尊重します。
先が見えないまま過ごすより、わかったうえで、仕事・結婚や出産・住まい・ご家族の介護の準備など、これからの人生を計画したいと考える方もいます。英国でハンチントン病の発症前検査を受けた人の理由として最も多かったのは「不確実さを減らすため」(70.5%)でした[21]。結果を知ったあとの気持ちの変化は陽性でも陰性でも起こりうるため、当院では結果をお伝えしたあとも遺伝カウンセリングで相談を続けていただけます。なお、日本医学会のガイドライン(2022年改定)は、成年期以降に発症する病気の未成年者への発症前の検査は、原則として本人が成人して自分で判断できるまで延期すべきとしています。
この検査より別の検査が向いている場合
疑う病気がはっきりしている場合や、白質以外の症状が目立つ場合は、次の検査のほうが向いていることがあります。比べる相手は検査の種類で、どれが合うかは遺伝カウンセリングでご説明します。
🔍 症状に合わせた検査の選び方
※薬・感染症・高血圧・加齢などによる後天性の白質脳症は、遺伝子検査の対象ではありません。
5. 調べる69遺伝子と、それぞれの遺伝子でわかる病気
この検査では、白質脳症の原因として知られる69の遺伝子をまとめて調べます。下の表は、遺伝子ごとに、関係する主な病気と遺伝のしかたをまとめたものです。同じ遺伝子でも、変化のしかたによって別の病気になることがあります。
🧬 白質脳症パネルで調べる69遺伝子
※対象遺伝子は当院の検査内容による。病名と遺伝のしかたは、GeneReviews[8][11][13][14][15][16][17][18]などの遺伝性疾患の解説・データベースで確かめた。白質脳症パネルの目的と関係の深い主な病気を挙げており、ほかの病気と関係する遺伝子もあります。
💡 白質脳症とは別の病気の手がかりが見つかることがある遺伝子
PTEN遺伝子はPTEN過誤腫症候群の原因で、乳がん・子宮体がん・甲状腺がんなどのリスクと関係します。SDHA・SDHB遺伝子は、片方の遺伝子だけの変化で遺伝性褐色細胞腫・パラガングリオーマと関係します。SOX10遺伝子はワーデンブルグ症候群(難聴など)とも関係します。こうした結果は、ご本人やご家族の健康管理に役立つ情報にもなるため、結果の説明で扱いを丁寧にお伝えします。
6. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、69の遺伝子の中の小さな変化(1つの塩基の変化や、小さな挿入・欠失)と、ページに示した範囲の欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。
- ●調べるところ:遺伝子のうちタンパク質の設計図になる部分(コード領域)と、その境目(スプライス部位)を、次世代シーケンサーで読みます。
- ●欠失・重複:遺伝子1つまるごとの欠失・重複は、血液と口の内側の粘膜の検体でわかります。2つ以上続くエクソン(遺伝子の中の区切り)の欠失・重複は、血液の検体でわかります。エクソン1つだけの欠失・重複は、ふだんは検出できません。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
- ●わからない変化:染色体の一部が入れかわる転座や逆位、同じ配列の繰り返しが長くなる変化(リピート伸長)、遺伝子のスイッチ部分(プロモーター)やエクソンから離れた場所の変化は検出できません。
- ●LMNB1関連大脳白質脳症の注意点:この病気は、LMNB1遺伝子の配列の変化ではなく、遺伝子の重複や、遺伝子の上流の欠失で起こります[18]。遺伝子の上流の欠失は、この検査で調べる範囲の外になります。
- ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)を見つけることは、この検査の目的に含まれていません。
- ●調べていない遺伝子:白質脳症の原因は69遺伝子だけではありません。今後新しい原因遺伝子がわかる可能性もあります。
- ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。
- ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、遺伝性の白質脳症ではないとは言い切れません。
7. 結果が出たあと
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。
陽性だったとき:病名が決まり、次の一手が決まる
原因の遺伝子がわかると、病名がはっきりし、受けるべき検査、気をつけたい合併症、早く始めたい治療、使える制度(第8章)が決まります。エクソーム・ゲノム検査の研究167件を調べた米国臨床遺伝・ゲノム学会の系統的レビューでは、その95%の研究で、患者さんやご家族の診療方針に何らかの変化があったと報告されています[6]。変化の中身や大きさは研究ごとに違いますが、名前がつくことで次の一手が決まることを示しています。
ご家族への影響と、ご家族が検査を受けるとき
あなたの1回の検査が、ご両親・きょうだい・お子さんが自分の状態を知る手がかりになります。ご家族の中で原因がわかっていると、ほかのご家族は同じ場所を調べることで、受け継いでいるかどうかを確かめられます。乳がん・卵巣がんの遺伝子検査を受けた人の研究では、検査の前に「家族のため」を理由に挙げた人は約25%でしたが、遺伝カウンセリングのあとには、家族や社会のためという理由が有意に増えていました[19]。症状のないご家族の検査が発症前の検査になる場合は、その前に遺伝カウンセリングで、知ることの意味をよく考えていただきます(第4章)。
次のお子さんの確率と、出生前診断
原因がわかっていれば、次の妊娠で赤ちゃんに同じ変化があるかを調べる出生前診断を計画できます。当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。日本産科婦人科学会の見解(2013年)では、新生児期・小児期に発症する重い病気について、お母さんがX連鎖遺伝の病気の保因者の場合や、ご夫婦がともに常染色体潜性遺伝の病気の保因者の場合などが、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の対象として示されています。成人になってから発症する病気では、出生前診断ができるかどうかも含めて、妊娠を考える段階から当院でご相談いただけます。
妊娠を考えている方:保因者検査
常染色体潜性遺伝・X連鎖遺伝の病気では、妊娠の前にご自身やパートナーが保因者かどうかを知っておくと、選べることが増えます。当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子など)には、ABCD1・ARSA・ASPA・GALC・PLP1・EIF2B5・MLC1・CYP27A1などの遺伝子が含まれています(2026年10月時点の当院の遺伝子一覧で確認)。含まれていない遺伝子もあるため、対象かどうかは遺伝子一覧でご確認ください。入口は遺伝子ブライダルチェックのページです。
妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」(女性787遺伝子・男性714遺伝子)もあります。NIPTと同時にだけ受けられる検査で、単独では受けられません。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。
陰性だったとき・VUSが見つかったとき
原因が見つからなかった場合でも、遺伝性の白質脳症が否定されるわけではありません(第6章)。症状に合わせて、全エクソーム検査(WES)など範囲の広い検査を考えます。VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合(二次的所見)の扱いは、当院の二次的所見の開示方針に沿ってご説明します。
8. 日本の制度(2026年10月時点)
白質脳症は、病気ごとに指定難病・小児慢性特定疾病の対象になっています。「白質脳症」という名前でひとまとめに指定されているわけではないため、原因の病気がわかることが、制度を使うための手がかりになります。
📋 主な指定難病(難病情報センター・厚生労働省の資料で2026年10月に確認)
※医療費の助成を受けるには、それぞれの病気の認定基準を満たし、申請する必要があります。
小児慢性特定疾病でも、「遺伝子異常による白質脳症」として、カナバン病・アレキサンダー病・先天性大脳白質形成不全病・皮質下嚢胞をもつ大頭型白質脳症・白質消失症が対象になっています。異染性白質ジストロフィー・クラッベ病・副腎白質ジストロフィーなども、先天性代謝異常の中に含まれています(小児慢性特定疾病情報センターで2026年10月に確認)。
保険で受けられる遺伝学的検査については、2023年12月の中央社会保険医療協議会の資料で、副腎白質ジストロフィー、先天性大脳白質形成不全症、CADASIL、神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症、カナバン病、那須・ハコラ病などが対象として挙げられていました。対象は改定のたびに変わることがあり、臨床症状や他の検査で診断がつかない場合などの条件もあるため、最新の扱いは主治医にご確認ください。当院の検査は自費で、69の遺伝子をまとめて調べ、2〜3週間で結果をお伝えし、検査の前後に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行います。
9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
結果までは2〜3週間で、検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などから選べます。唾液・口の内側の粘膜・血液のいずれでも、オンライン診療で受けることができます。
ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取・発送お支払い後にキット送付
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えや品質の低下を防ぐため、キットが届く前にご自身で検体を採らないでください。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
10. 院長コラム
🩺 院長コラム【原因がわからないままにしない】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。白質脳症は、同じ「白質の異常」に見えても、原因の遺伝子によって経過も、治療の選択肢も、ご家族への影響もまったく違う病気の集まりです。病名がつかないままでは、次に何をすればよいかも、次のお子さんをどう考えればよいかも決められません。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、きょうだいのお子さんの病気をきっかけに念のため検査を受けた方に、まったく別の遺伝子の病的な変化が、体の一部の細胞だけにある状態(モザイク)で見つかったことがあります。ご本人は発症していませんでしたが、卵子や精子のもとになる細胞にもその変化があれば、お子さんが発症することがある病気でした。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで次の妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 白質脳症とはどんな病気ですか?
脳の白質(神経の線維が集まり、情報を伝える部分)が主に傷む病気をまとめた呼び名です。原因には、生まれつきの遺伝子の変化によるもの(遺伝性白質脳症・白質ジストロフィー)と、薬・感染症・血圧・加齢などによる後天性のものがあります。この検査は、遺伝性のものの原因を調べる検査です。
Q2. 白質脳症の初期症状は?
病気の種類と発症する年齢で大きく違います。乳幼児では、運動の発達の遅れや後戻り、頭が大きいこと、けいれんなどで気づかれることがあります。成人では、歩きにくさ、もの忘れ、気分や性格の変化、片頭痛や脳梗塞などで始まる病気があります。症状だけで病気を決めることはできないため、MRIと遺伝子検査を組み合わせて確かめます。
Q3. 白質脳症の余命・寿命は?
原因となる病気によって大きく異なり、ひとまとめに言うことはできません。乳幼児期に急に進む病気もあれば、成人になってからゆっくり進む病気もあります。原因の遺伝子がわかると、その病気の経過の見通しや、気をつけたい合併症を具体的に考えられるようになります。
Q4. 白質脳症は治りますか?
多くの遺伝性白質脳症では、原因そのものを治す治療はまだありません。一方で、副腎白質ジストロフィーの造血幹細胞移植や、脳腱黄色腫症のケノデオキシコール酸のように、早い段階で始めることで経過を変えられる治療がある病気もあります。そのため、原因を早く知ることに意味があります。
Q5. 白質脳症は遺伝しますか?
遺伝性白質脳症は、病気によって常染色体潜性遺伝・常染色体顕性遺伝・X連鎖遺伝のいずれかで受け継がれます。お子さんや、次に生まれるお子さんで同じ病気が起こる確率は、原因の遺伝子と遺伝のしかたで決まります。原因がわかると、ご家族ごとの確率を具体的にお伝えできます。
Q6. 白質脳症は難病(指定難病)ですか?
白質脳症という名前でひとまとめに指定されているわけではなく、病気ごとに指定されています。たとえば副腎白質ジストロフィー、CADASIL、アレキサンダー病、先天性大脳白質形成不全症、カナバン病、進行性白質脳症(白質消失病・皮質下嚢胞をもつ大頭型白質脳症など)は指定難病です(2026年10月時点)。医療費の助成を受けるには、認定の条件を満たす必要があります。
Q7. 抗がん剤などの薬で起きた白質脳症も、この検査でわかりますか?
わかりません。薬・感染症・高血圧などによる後天性の白質脳症は、生まれつきの遺伝子の変化が原因ではないため、この検査の対象ではありません。白質の異常の原因がはっきりしない場合に、遺伝性の病気かどうかを確かめるのがこの検査の役割です。
Q8. 検査で原因が見つからなかったらどうなりますか?
原因が見つからなくても、遺伝性の白質脳症が否定されるわけではありません。この検査で調べていない遺伝子や、見つけにくい種類の変化が原因のこともあるためです。症状に合わせて、全エクソーム検査など範囲の広い検査を考えます。結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、次の選択肢をお伝えします。
🧬 一度の検査で、原因とご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。白質脳症の原因がわかれば、早く始めたい治療や合併症への備えだけでなく、ご家族の検査や、次のお子さんの確率と妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
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