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エカルディ・グティエール症候群(AGS)の遺伝子検査|原因5遺伝子と遺伝する確率、次のお子さんへの備え

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

エカルディ・グティエール症候群(AGS)の遺伝子検査

エカルディ・グティエール症候群(アイカルディ・グティエール症候群、AGS)の遺伝子検査は、この病気の原因になる5つの遺伝子(TREX1・RNASEH2A・RNASEH2B・RNASEH2C・SAMHD1)を一度に調べる検査です。赤ちゃんの脳の石灰化や発達の後戻りがあり、「生まれつきの感染症(先天性感染症)に似ているのに、感染症の検査をしても原因が見つからない」というときに、原因を確かめる手がかりになります。原因がわかれば、病名にもとづく見通しと合併症への備えが立ち、次のお子さんで同じことが起こる確率と、次の妊娠でどう備えるかも具体的に考えられるようになります。このページでは、病気の特徴・遺伝する確率・この検査でわかることとわからないことを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

エカルディ・グティエール症候群の原因になる5つの遺伝子(TREX1・RNASEH2A・RNASEH2B・RNASEH2C・SAMHD1)に、病気の原因となる変化があるかを一度に調べます。ADAR・IFIH1など、このパネルに入っていない原因遺伝子は、追加して調べることができます。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

脳の石灰化・白質の異常・発達の後戻りがあるお子さん、先天性感染症(TORCH症候群)が疑われたのに感染が見つからなかったお子さん、しもやけのような皮膚症状(凍瘡様皮疹)があるお子さん、ご家族にこの病気の方がいる方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。多くは常染色体潜性(劣性)遺伝なので、原因がわかれば次のお子さんへの確率(多くは4分の1)と、ご両親・きょうだいの検査、出生前診断の計画まで考えられます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 原因を知ることが、お子さんとご家族の次の一歩になります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

1. エカルディ・グティエール症候群(AGS)とは

エカルディ・グティエール症候群は、体の中で「インターフェロン」という炎症の物質が出続けることで、主に脳・皮膚・免疫に炎症が起こる遺伝性の病気です。多くは赤ちゃんのうちに発症し、脳の石灰化や白質の異常、発達の遅れ・後戻りを起こします。英語の Aicardi-Goutières syndrome の頭文字をとってAGSと呼ばれ、日本語では「アイカルディ・グティエール症候群」と書かれることもあります。

米国国立医学図書館の解説(MedlinePlus Genetics、2024年9月更新)は、この病気を「まれな病気」とし、文献に報告された人は500人を超えるものの、正確な患者数はわかっていないとしています。7つの原因遺伝子のいずれかに変化をもつ374人(299家系)を調べた国際的な研究は、これまでで最も大きな患者さんのまとまりの報告です[1]。病気のしくみや分類をさらに詳しく知りたい方は、エカルディ・グティエール症候群(疾患の詳しい解説)もご覧ください。このページでは、検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。

インターフェロンが働きすぎる病気(インターフェロノパチー)

AGSの原因遺伝子の多くは、細胞の中にたまった不要なDNAやRNAを分解したり、それを感知するしくみを調節したりする役目をもっています。TREX1・RNASEH2A・RNASEH2B・RNASEH2Cは、DNAやRNAを分解する酵素(ヌクレアーゼ)をつくる遺伝子です。これらがうまく働かないと不要な核酸がたまり、細胞がそれを「ウイルスの遺伝物質」と見誤って、ウイルスと戦うときに出すI型インターフェロンが出続けてしまうと考えられています(MedlinePlus Genetics)。

不要なDNA・RNAが分解されずにたまる
▶
細胞がウイルスと見誤るセンサーが反応
▶
I型インターフェロンが出続ける
▶
脳・皮膚などに炎症石灰化・白質の異常

7つの原因遺伝子のどれに変化があっても、髄液や血液でインターフェロンの働きが高まり、血液ではインターフェロンで誘導される遺伝子の働きが上がっていることが報告されています[1]。こうした「I型インターフェロンが働きすぎること」で起こる病気のグループは、I型インターフェロノパチーと呼ばれ、AGSはその代表です[2]。DNAを感知して免疫を動かすしくみはcGAS-STING経路、RNASEH2の働きに関わるDNAとRNAの複合体はRループのページで解説しています。

主な症状と発症のしかた

374人の研究では、症状がおなかの中にいるあいだ(胎内)から始まっていた人が22.8%、生まれたあとに始まった人が68.6%でした。生まれたあとに始まる場合は、多くが生後1年以内に、それまでできていたことができなくなる形で脳症が現れます[1]。

MedlinePlus Genetics によると、早くに発症する赤ちゃんは、強いぐずり(易刺激性)や哺乳の悪さ、感染がないのに出る発熱(無菌性発熱)がみられることがあり、肝臓・脾臓の腫れや血小板の減少を伴うこともあります。脳と頭の成長がゆっくりになって頭が小さくなる(小頭症)こと、筋肉のつっぱり(痙縮)、体が勝手にねじれるように力が入るジストニア、筋肉のやわらかさ(筋緊張低下)もみられます。頭部のCTやMRIでは、脳の石灰化(カルシウムの沈着)や、脳の白質が失われる変化(白質ジストロフィー)が見つかります。

症状の重さには大きな幅があります。374人の研究では、経過がわかった285人のうち73.7%が重い障害をもっていた一方で、両側の線条体という場所が傷む型(3.6%)や、足のつっぱりが中心で痙性対麻痺のように見える型(3.4%)など、典型的でない現れ方も報告されています[1]。経過を追えた人のうち19.3%が亡くなっていました[1]。

しもやけのような皮膚症状(凍瘡様皮疹)と、そのほかの合併症

AGSでは、寒さで悪くなる、しもやけ(凍瘡)のような皮膚症状が、手の指・足の指・鼻・耳などに出ることがあります。MedlinePlus Genetics は、早くに発症する型の人の約40%にこの皮膚症状(凍瘡様皮疹)がみられるとしています。凍瘡様紅斑・凍瘡様ループスと呼ばれる皮膚症状が、この病気の手がかりになることもあります。

374人の研究では、皮膚症状のほかに、緑内障、甲状腺機能低下症、心筋症、脳の血管の炎症、末梢神経の障害、腸の炎症、全身性エリテマトーデス(SLE)を伴う人も報告されています[1]。脳だけでなく、目・甲状腺・心臓なども見ていく必要がある病気です。

「先天性感染症(TORCH症候群)」と間違われやすい理由

赤ちゃんの脳の石灰化・小頭症・肝臓や脾臓の腫れ・血小板の減少は、おなかの中で感染した場合(先天性感染症)にもみられる所見です。そのためAGSは、感染がないのに先天性感染症に似た姿になる「先天性感染症に似た病気」とされます(MedlinePlus Genetics)。別名に「偽トキソプラズマ症候群」があるのも、このためです。

赤ちゃんの脳の石灰化の原因として、まず考えられるのはTORCH症候群(TORCH感染症)です。たとえば先天性サイトメガロウイルス感染症でも脳内の石灰化がみられます。日本小児神経学会がまとめた小児慢性特定疾病の診断の手引きでも、AGSと診断するときには、サイトメガロウイルス・トキソプラズマ・風疹・単純ヘルペス・HIVなどの感染症を除外することが求められています(2026年10月時点で確認)。「感染症の検査をくり返しても原因が見つからない」ときこそ、遺伝子検査で確かめる意味があります。

「アイカルディ症候群」とは別の病気です

名前がよく似ていますが、アイカルディ症候群は、脳梁(左右の脳をつなぐ部分)がない・網膜の特徴的な変化・てんかんを伴う、主に女の子にみられる別の病気です。名前が似ているため混同されやすいのですが、原因も検査も違います。このページの検査は、エカルディ・グティエール症候群を調べるものです。

2. 遺伝のしかたと、次のお子さんへの確率

エカルディ・グティエール症候群の多くは常染色体潜性(劣性)遺伝で、ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症します。一方、IFIH1と、TREX1・ADARの一部の変化は常染色体顕性(優性)遺伝で起こります(MedlinePlus Genetics・OMIM)。どの遺伝子のどんな変化かによって、次のお子さんへの確率は大きく変わります。

🧬 遺伝のしかたと、次のお子さんへの確率

遺伝のしかた 当てはまる遺伝子 次のお子さんへの確率
常染色体潜性(劣性)遺伝 TREX1・RNASEH2A・RNASEH2B・RNASEH2C・SAMHD1・ADAR(このほかLSM11・RNU7-1) ご両親がともに保因者なら、お子さん1人ごとに4分の1
常染色体顕性(優性)遺伝 IFIH1、TREX1・ADARの一部の変化 親が変化をもっていれば、お子さん1人ごとに2分の1。お子さんで新しく起きた変化なら低いが、ゼロではない

※遺伝のしかたは、MedlinePlus Genetics(2024年9月更新)とOMIMの記載による。確率は遺伝のしかたからの理論上の値で、実際の確率はご家族ごとに遺伝カウンセリングでご説明します。

多くは常染色体潜性遺伝:ご両親は保因者で、次のお子さんは4分の1

常染色体潜性(劣性)遺伝の病気では、対になった2本の遺伝子の両方に変化があるときに発症します。ご両親はそれぞれ1本ずつ変化をもつ「保因者」で、ふつうは症状がありません。この場合、次のお子さんが発症する確率は4分の1、保因者になる確率は2分の1、どちらの変化も受け継がない確率は4分の1です。上のお子さんが発症したかどうかで、次のお子さんの確率が変わることはありません。

お子さんの2本の遺伝子に、それぞれ違う変化があることもあります(複合ヘテロ接合)。その場合は、どちらの変化がお父さん由来で、どちらがお母さん由来かを、ご両親の検査で確かめることが大切です。これがわかってはじめて、次のお子さんへの確率を正しくお伝えでき、次の妊娠での出生前診断の計画も立てられます。

顕性遺伝の型と、新しく起きた変化(de novo)

IFIH1の変化や、TREX1・ADARの一部の変化による型は、常染色体顕性(優性)遺伝で起こります。親がその変化をもっていれば、お子さんへの確率は1人ごとに2分の1です。ご両親のどちらにも見つからず、お子さんで新しく起きた変化(新生突然変異・de novo)と考えられる場合は、次のお子さんへの確率は低くなりますが、ゼロではありません。

ご両親の卵子や精子のもとになる細胞(生殖細胞)にだけ変化がある「性腺モザイク」があると、次のお子さんにも同じ変化が伝わることがあるためです。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。「新しく起きた変化だから、次は心配ない」と小さく見積もらないことが大切です。

きょうだい・ご親族が保因者かどうかを知る

潜性遺伝の型では、症状のないきょうだいも、3分の2の確率で保因者です(発症していないきょうだいの場合)。保因者であってもご自身の健康には影響しないのがふつうですが、将来、結婚・妊娠を考えるときに、パートナーも同じ遺伝子の保因者かどうかで、お子さんへの確率が変わります。ご家族で原因の変化がわかっていれば、きょうだいやご親族は、その変化だけをピンポイントで調べることができます。

当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)と男性版714遺伝子には、TREX1・RNASEH2A・RNASEH2B・RNASEH2C・SAMHD1の5遺伝子が入っています(ADAR・IFIH1は入っていません。2026年10月時点の遺伝子一覧で確認)。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血して受けるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」(女性787遺伝子・男性714遺伝子。単独では受けられません)もあります。当院のNIPTは妊娠9週から、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。

3. どんな人がこの検査を受けるとよいか

赤ちゃんや小さなお子さんに、脳の石灰化・白質の異常・発達の後戻りがあり、エカルディ・グティエール症候群が疑われるときに向く検査です。原因がわかれば、病名が決まり、見ていくべき合併症と、次のお子さんへの備えが具体的になります。

受けるとよい場面

日本小児神経学会の診断の手引きでは、先天性感染症に似た早く始まる脳症・あとから頭が小さくなる小頭症・発達の遅れ・原因のわからない発熱・凍瘡様の皮疹が主な症状とされ、大脳萎縮・白質ジストロフィー・頭蓋内石灰化・髄液の細胞数の増加・髄液のインターフェロンαやネオプテリンの上昇・遺伝子解析が大事な検査所見とされています(2026年10月時点で確認)。これを踏まえ、次のような方におすすめします。

  • ●頭部のCT・MRIで、脳の石灰化(とくに大脳基底核)や白質の異常を指摘されたお子さん
  • ●先天性感染症(TORCH症候群)が疑われたが、感染症の検査で原因が見つからなかったお子さん
  • ●生後しばらく順調だったのに、強いぐずり・発熱・発達の後戻りが出てきたお子さん
  • ●髄液検査で、細胞数の増加やインターフェロンαの上昇を指摘されたお子さん
  • ●寒さで悪くなる、しもやけのような皮膚症状(凍瘡様皮疹)がくり返し出るお子さん
  • ●上のお子さんがエカルディ・グティエール症候群と診断された、または同じような症状で亡くなったご両親で、次の妊娠を考えている方
  • ●ご家族でこの病気の原因がわかっていて、ご自身が保因者かどうかを知りたい方

上のお子さんがすでに亡くなっている場合でも、保存されている検体があれば原因を調べられることがあります。検体がない場合は、ご両親の保因者検査から考える方法もありますので、遺伝カウンセリングでご相談ください。

この検査より別の検査が向いている場合

エカルディ・グティエール症候群を強く疑うなら、まずこの検査です。一方で、症状がAGSらしくないときや、パネルに入っていない遺伝子まで調べたいときは、次の検査のほうが向いていることがあります。比べているのは検査の種類で、どれが合うかはお子さんの症状と画像所見で変わります。

🔍 症状に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
乳幼児期の脳症に、脳の石灰化・白質の異常・凍瘡様皮疹などが重なり、AGSを強く疑う このページの検査(5遺伝子)
白質の異常が中心で、ADARまで含めて原因を広く調べたい 白質脳症NGS遺伝子検査(69遺伝子。AGSの遺伝子のうちTREX1・RNASEH2A・RNASEH2B・RNASEH2C・SAMHD1・ADARの6つを含む)
発熱・皮疹など、炎症の症状が中心 自己炎症性症候群の遺伝子検査(56遺伝子。AGSの7遺伝子をすべて含む)
感染をくり返すなど、免疫の病気も考えたい 包括的原発性免疫不全症NGSパネル遺伝子検査(596遺伝子。AGSの7遺伝子をすべて含む)
生まれたときから白質の髄鞘(神経を包む膜)ができにくい 低髄鞘性白質ジストロフィーNGSパネル遺伝子検査(64遺伝子。AGSの遺伝子は含まない)
頭が小さいこと(小頭症)が中心で、ほかの所見が少ない 小頭症NGS遺伝子パネル検査
大人になってから、脳ドックなどで脳の石灰化を指摘された 家族性特発性基底核石灰化症 遺伝子検査
症状が広く、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)

※遺伝子数・含まれる遺伝子は、2026年10月時点の各検査ページの遺伝子一覧で確認。どの検査が合うかは、遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

\ 原因がわかれば、次のお子さんへの備えを具体的に考えられます /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

ご両親とも保因者とわかった場合、次の妊娠での羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます(2025年6月から産婦人科を併設)。

海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

4. 調べる5つの遺伝子と、それぞれでわかる病気

この検査では、エカルディ・グティエール症候群の原因になる5つの遺伝子(TREX1・RNASEH2A・RNASEH2B・RNASEH2C・SAMHD1)を一度に調べます。病気の型は、原因の遺伝子ごとに1型〜9型に分けられ、この検査で調べるのは1型〜5型です。

🧬 エカルディ・グティエール症候群遺伝子パネルで調べる5遺伝子

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた 遺伝子の主な働き
TREX1 エカルディ・グティエール症候群1型(AGS1) 常染色体潜性(一部の変化は顕性) DNAを分解する酵素(ヌクレアーゼ)
RNASEH2B エカルディ・グティエール症候群2型(AGS2) 常染色体潜性 RNase H2という、DNA・RNAを分解する酵素の部品
RNASEH2C エカルディ・グティエール症候群3型(AGS3) 常染色体潜性 RNase H2の部品
RNASEH2A エカルディ・グティエール症候群4型(AGS4) 常染色体潜性 RNase H2の部品
SAMHD1 エカルディ・グティエール症候群5型(AGS5) 常染色体潜性 核酸の扱いに関わり、免疫の働き方に関係する

※病気の型と遺伝のしかたはOMIM、遺伝子の働きはMedlinePlus Geneticsと元の検査内容による。対象遺伝子は2026年10月21日に検査のおおもとの一覧と照合済み。

このパネルに入っていない遺伝子と、追加して調べる方法

このパネルには、ADAR(6型)・IFIH1(7型)・LSM11(8型)・RNU7-1(9型)は入っていません。ADARとIFIH1は、374人の研究でも原因遺伝子として扱われた、確立した原因遺伝子です[1]。イタリアでAGSと臨床的に診断された51人を調べた研究では、ADAR・IFIH1を含む7遺伝子を調べて48人に原因が見つかりました[3]。LSM11とRNU7-1は、2020年に新しく報告された原因遺伝子です[4]。

このパネルに入っていないADAR・IFIH1などの遺伝子も、追加して調べることができます。遺伝カウンセリングのときにご相談ください。必要な遺伝子を選んで組み合わせるカスタマイズ遺伝子パネル検査のほか、ADARとIFIH1がどちらも入っている自己炎症性症候群の遺伝子検査(56遺伝子)を選ぶ方法もあります。

なお、ADARは皮膚の色素の病気である遺伝性対側性色素異常症の原因遺伝子でもあります。くわしくはADAR遺伝子のページで解説しています。

5. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、5つの遺伝子の中の小さな変化(1つの文字の置き換わりや、小さな挿入・欠失)と、ご希望に応じて調べる大きめの欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

  • ●調べる場所:遺伝子のうち、たんぱく質の設計図になる部分(コード領域)と、その境目(スプライス部位)を読みます。それより離れた場所(遺伝子の働きを調節する領域や、境目から20塩基より奥の部分)の変化は、ほとんど調べられません。
  • ●大きめの欠失・重複:遺伝子まるごと1つの欠失・重複(血液・頬の粘膜)と、2つ以上続くエクソンの欠失・重複(血液のみ)は見つけられます。1つのエクソンだけの欠失・重複は、ふつうは見つけられません。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
  • ●見つけられない変化:染色体の一部が入れ替わる転座や逆位、同じ配列の繰り返しが長くなる変化(リピート伸長)は、この検査では見つけられません。
  • ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)を見つけることは目的にしていません。がんの組織を調べる検査ではありません。
  • ●調べていない遺伝子:ADAR・IFIH1・LSM11・RNU7-1は入っていません(第4章)。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、エカルディ・グティエール症候群ではないとは言い切れません。この検査で調べていない遺伝子や、見つけられない種類の変化が原因のこともあります。

遺伝子の検査では、同じ場所を何回も読み重ねて確かさを高めます。この検査では、調べる範囲の99%以上を、20回以上読み重ねています。読み取りの質が十分でなかった変化は、サンガー法という別の方法で確かめます。

6. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。

病的変異が見つかったら、次にできること

病気の原因となる変化(病的変異)が見つかると、病名が確定し、お子さんの見通しと合併症への備え、ご家族の検査、次の妊娠の計画まで、具体的に考えられるようになります。わかるだけで終わらないよう、立場ごとにできることをまとめます。

① ご本人(お子さん):病名が確定すると、症状に合わせた治療やリハビリ、栄養や呼吸のケアの方針が立てやすくなります。この病気は緑内障・甲状腺機能低下症・心筋症などを伴うことがあるため[1]、目・甲状腺・心臓なども見ていく手がかりになります。治療や研究中の薬(第7章)については、小児神経などの専門の医療機関でご相談ください。小児慢性特定疾病などの制度を使うときにも、原因が確定していることが手がかりになります。

② ご両親(症状のない保因者):お子さんで2本とも変化が見つかった場合、ご両親がそれぞれ1本ずつもっているか(保因者か)を確かめます。保因者はふつう健康に影響しませんが、次のお子さんへの確率(多くは4分の1)がはっきりします。顕性遺伝の型で、ご両親のどちらにも見つからなければ、新しく起きた変化と考えられ、ご両親のせいではないことがはっきりします(それでも、次のお子さんへの確率はゼロではありません。第2章)。

③ 次のお子さんを考えるとき:ご家族で原因の変化がわかっていれば、次の妊娠で、赤ちゃんに同じ変化があるかを調べる出生前診断を計画できます(下の「次の妊娠を考えている方」)。海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考える方には、英語の検査結果をお渡しできます。どれも、ご家族が選ぶものです。出生前診断を受けずに出産することも、そのまま選べる選択肢です。

④ ご家族(きょうだい・ご親族):きょうだいやご親族は、ご家族で見つかった変化だけをピンポイントで調べて、保因者かどうかを知ることができます。症状のない方の検査は、ご本人の同意のもとで行います。

⑤ 当院でのその後:結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、ご両親・ご家族の検査、保因者検査、出生前診断の計画まで、次に何をするかを一緒に考えます(遺伝カウンセリング料は第8章)。

陰性だったとき

5つの遺伝子に原因が見つからなかった場合でも、エカルディ・グティエール症候群の可能性は残ります(第5章)。症状と画像の所見に合わせて、ADAR・IFIH1などを追加して調べる、白質脳症や自己炎症性症候群のより広いパネル検査、全エクソーム検査(WES)などを考えます(第3章の表)。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき

VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査や出生前診断に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合の伝え方は、当院の二次的所見の開示方針のとおりです。

次の妊娠を考えている方:出生前診断と保因者検査

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。この病気で出生前診断をどのように進められるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。

原因がわからないままでは、出生前に何を調べればよいかを決められません。上のお子さんの原因を確かめておくことが、次の妊娠に備えるための出発点になります。ご夫婦がどの変化をもっているかは、保因者検査や、ご家族で見つかった変化をピンポイントで調べる検査で確かめます。

海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます

PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因遺伝子の確定、英語の検査結果のご用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠後の絨毛検査・羊水検査(院内)です。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。

欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の推奨[7]では、PGT-Mの準備に、病気の原因と確かめられた遺伝子の変化と、その内容が書かれた元の報告書が必要とされています。さらに、受精卵から取れるDNAはごくわずかで、変化を直接読むだけでは2本あるうちの片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあるため、変化のある場所の両側にある目印(多型マーカー)で「変化をもつ染色体」を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます。どちらの染色体に変化が乗っているかを決めるには、ご夫婦に加えて、病気の有無がわかっている血縁者のDNAが必要です。潜性遺伝の病気では、患者さん(2つの変化をもつ方)・保因者・保因者でない方のDNAが目安とされています[7]。

ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。血縁者の協力が得られない場合、ご夫婦で目印を調べたうえで、治療の周期の受精卵などを調べて変化の乗った染色体を決める方法も挙げられていますが、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります[7]。海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。

臨床遺伝専門医としての判断をお伝えすると、意義がまだわからない変化(VUS)は病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。潜性遺伝の病気では、ご夫婦それぞれがどの変化をもっているかを確かめておく必要があります。海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もってご確認ください。

⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です

PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの推奨[8]は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています。当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。絨毛検査・羊水検査は院内で行っており、海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。

日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)」に関する指針(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます。この指針の「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、申請の時点で有効な治療法がないか、治療法があっても高度かつ侵襲度の高いもの、とされています。対象になるかどうかは審査で個別に決まります。

PGT-Mの対象になる病気は、国によって違います。日本では学会が症例ごとに審査しており、学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち、37件が審査継続中でした(2026年9月発表)。英国では公的機関(HFEA)がPGT-Mを行ってよい病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気が載っています(2026年9月17日更新の一覧で2,067)。米国では、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[9]。どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。くわしくは海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へで解説しています。

7. 日本の制度と治療研究(2026年10月時点)

エカルディ・グティエール症候群は、小児慢性特定疾病の対象疾病に掲載されており、指定難病325「遺伝性自己炎症疾患」にも、含まれる、または深く関連する病名として挙げられています(2026年10月時点で確認)。治療は症状に合わせたものが中心ですが、インターフェロンの働きを抑える方向の研究が進んでいます。

小児慢性特定疾病・指定難病

小児慢性特定疾病情報センターの対象疾病(神経・筋疾患)に「エカルディ・グティエール(Aicardi-Goutières)症候群」が掲載されています。診断の手引きでは、遺伝子解析は大事な検査所見のひとつとして位置づけられています。また、難病情報センターの「遺伝性自己炎症疾患(指定難病325)」のページでは、この病気に含まれる、あるいは深く関連する病名として、エカルディ・グティエール症候群が挙げられています。ただし同じページにあるとおり、これらの病名であっても医療費助成の対象にならないことがあるため、主治医にご確認ください。助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たして申請する必要があります。

治療と研究中の薬(JAK阻害薬・逆転写酵素阻害薬)

小児慢性特定疾病情報センターの解説では、治療は現時点では対症療法が中心で、神経症状にはリハビリテーションや医療的ケアを行い、炎症の症状や合併する自己免疫の病気には、免疫を抑えたり調整したりする治療が効く可能性があるとされています。

インターフェロンの信号を細胞の中に伝えるJAK-STAT経路を抑えるJAK阻害薬(バリシチニブ)については、米国でAGSの患者さんを対象にした研究の結果が2020年に報告されています[6]。日本では、AGSなどの患者さんを対象にしたバリシチニブの臨床試験が登録されていましたが、2024年11月に中止となっています(臨床研究等提出・公開システム jRCT2031200152、2026年10月確認)。また、逆転写酵素の働きを抑える薬(逆転写酵素阻害薬)を使った小規模な研究も、2018年に報告されています[5]。

これらはまだ研究段階の治療で、すべての患者さんに効果が確かめられたものではありません。使えるかどうかや最新の研究・治験の状況は、時期によって変わるため、小児神経などの専門の医療機関にご確認ください。当院は治療を行っていません。374人の研究では、発症から1年以内に測った髄液のインターフェロンの働きが、その後の障害の程度と関係していたと報告されており、著者らは多くの患者さんに治療の機会となる時期があるとしています[1]。原因を早く確かめておくことは、こうした研究の情報を主治医と検討するための手がかりになります。

8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、オンライン診療でもお受けしています。この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取キットはお支払い後
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
調べる遺伝子 TREX1・RNASEH2A・RNASEH2B・RNASEH2C・SAMHD1(5遺伝子)
検査費用 税込330,000円(塩基配列の解析と、欠失・挿入の解析を含む)
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 2〜3週間
オプション 至急:結果までの期間が約7日短くなります(55,000円)/VUS除外(無料)
検体 血液(EDTA採血管4ml×2本)、抽出したDNA、頬の内側の粘膜(口腔粘膜)、唾液
オンライン診療 唾液・口腔粘膜・血液のいずれでも可能。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします

※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

オンライン診療では、ビデオ通話で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただきます。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。検体の取り違えを防ぎ、検査に使える質の検体を確実に届けていただくためです。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。結果の報告書の読み方は、遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。遺伝カウンセリングについては遺伝カウンセリングとはもご覧ください。

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9. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【保因者であることは、誰のせいでもありません】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

エカルディ・グティエール症候群の多くは潜性遺伝で、ご両親は健康な保因者です。保因者であることは、ご両親が何かをしたからでも、何かをしなかったからでもありません。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。

赤ちゃんの脳に石灰化があると、まず感染症が疑われ、検査がくり返されることがあります。それ自体は大切な手順ですが、感染が見つからないまま時間が過ぎると、ご家族は「なぜ」という問いを抱えたままになってしまいます。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。

原因がわかれば、お子さんの見通しを主治医と話し合う手がかりになり、ご両親やきょうだいの検査、次の妊娠での出生前診断まで、具体的な計画を立てられます。当院では、原因の確定から、ご家族の検査、羊水検査・絨毛検査まで、続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. エカルディ・グティエール症候群とはどんな病気ですか?

体の中でI型インターフェロンという炎症の物質が出続けることで、主に脳・皮膚・免疫に炎症が起こる遺伝性の病気です。多くは赤ちゃんのうちに発症し、脳の石灰化や白質の異常、発達の遅れ・後戻りを起こします。374人を調べた国際的な研究では、症状が胎内から始まっていた人が22.8%、生まれたあとに始まった人が68.6%でした。アイカルディ・グティエール症候群、AGSとも呼ばれます。

Q2. エカルディ・グティエール症候群は遺伝しますか?次の子どもに遺伝する確率は?

多くは常染色体潜性(劣性)遺伝で、ご両親がともに保因者の場合、次のお子さんが発症する確率はお子さん1人ごとに4分の1です。IFIH1と、TREX1・ADARの一部の変化は常染色体顕性(優性)遺伝で起こり、親が変化をもっていれば2分の1、お子さんで新しく起きた変化なら低くなりますがゼロではありません。どの遺伝子のどんな変化かで確率が変わるため、原因を確かめることが大切です。

Q3. TORCH症候群(先天性感染症)とはどう違いますか?

脳の石灰化・小頭症・肝臓や脾臓の腫れ・血小板の減少などはTORCH症候群にもみられますが、エカルディ・グティエール症候群では感染が見つからず、原因は遺伝子の変化です。日本小児神経学会がまとめた診断の手引きでも、サイトメガロウイルス・トキソプラズマ・風疹・単純ヘルペス・HIVなどの感染症を除外することが求められています。感染症の検査で原因が見つからないときは、遺伝子検査で確かめる意味があります。

Q4. アイカルディ症候群と同じ病気ですか?

違う病気です。アイカルディ症候群は、脳梁がない・網膜の特徴的な変化・てんかんを伴う、主に女の子にみられる病気です。名前が似ているため混同されやすいのですが、原因も検査も違います。このページの検査は、エカルディ・グティエール症候群を調べるものです。

Q5. このパネルに入っていないADARやIFIH1も調べられますか?

調べられます。このパネルにはADAR(6型)・IFIH1(7型)・LSM11(8型)・RNU7-1(9型)は入っていませんが、追加して調べることができます。必要な遺伝子を選んで組み合わせるカスタマイズ遺伝子パネル検査や、ADARとIFIH1がどちらも入っている自己炎症性症候群の遺伝子検査を選ぶ方法もあります。遺伝カウンセリングのときにご相談ください。

Q6. 治療法はありますか?

現時点では、症状に合わせた治療やリハビリテーション、医療的ケアが中心です。インターフェロンの信号を抑えるJAK阻害薬や、逆転写酵素阻害薬を使った研究が報告されていますが、まだ研究段階の治療です。使えるかどうかや最新の研究・治験の状況は、小児神経などの専門の医療機関にご確認ください。当院は治療を行っていません。

Q7. 次の妊娠で出生前診断はできますか?

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。この病気で出生前診断をどのように進められるかは個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。原因がわからないままでは出生前に調べる的を決められないため、まず上のお子さんの原因を確かめることが出発点になります。

Q8. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?

はい。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。また、ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。潜性遺伝の病気では、患者さん・保因者・保因者でない方など血縁者のDNAが必要になることがあります。

🧬 原因を知ることが、お子さんとご家族のこれからの計画になります

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。エカルディ・グティエール症候群の原因がわかれば、お子さんの合併症への備えだけでなく、ご両親・きょうだいの検査や、次の妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Crow YJ, Chase DS, Lowenstein Schmidt J, et al. Characterization of human disease phenotypes associated with mutations in TREX1, RNASEH2A, RNASEH2B, RNASEH2C, SAMHD1, ADAR, and IFIH1. Am J Med Genet A. 2015;167A(2):296-312. [DOI: 10.1002/ajmg.a.36887](PMID: 25604658)
  • [2] Crow YJ, Manel N. Aicardi-Goutières syndrome and the type I interferonopathies. Nat Rev Immunol. 2015;15(7):429-440. [DOI: 10.1038/nri3850](PMID: 26052098)
  • [3] Garau J, Cavallera V, Valente M, et al. Molecular genetics and interferon signature in the Italian Aicardi Goutières syndrome cohort: report of 12 new cases and literature review. J Clin Med. 2019;8(5):750. [DOI: 10.3390/jcm8050750]
  • [4] Uggenti C, Lepelley A, Depp M, et al. cGAS-mediated induction of type I interferon due to inborn errors of histone pre-mRNA processing. Nat Genet. 2020;52(12):1364-1372. [DOI: 10.1038/s41588-020-00737-3](PMID: 33230297)
  • [5] Rice GI, Meyzer C, Bouazza N, et al. Reverse-transcriptase inhibitors in the Aicardi–Goutières syndrome. N Engl J Med. 2018;379(23):2275-2277. [DOI: 10.1056/NEJMc1810983](PMID: 30566312)
  • [6] Vanderver A, Adang L, Gavazzi F, et al. Janus kinase inhibition in the Aicardi–Goutières syndrome. N Engl J Med. 2020;383(10):986-989. [DOI: 10.1056/NEJMc2001362](PMID: 32877590)
  • [7] ESHRE PGT-M Working Group, Carvalho F, Moutou C, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the detection of monogenic disorders. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa018. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa018]
  • [8] ESHRE PGT Consortium Steering Committee, Carvalho F, Coonen E, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the organisation of PGT. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa021. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa021]
  • [9] Nakasato K, Yamamoto BA, Kato K. Evaluating standards for ‘serious’ disease for preimplantation genetic testing: a multi-case study on regulatory frameworks in Japan, the UK, and Western Australia. Hum Genomics. 2022;16:16. [DOI: 10.1186/s40246-022-00390-3]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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