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滑脳症はNIPTでわかる?いつわかるか、エコー・胎児MRIでの見え方と当院のNIPTで調べられる原因の範囲

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

「滑脳症(かつのうしょう)は、おなかの中にいるうちにわかるの?」「NIPTで調べられるの?」。答えを先にお伝えすると、滑脳症は、妊娠の早い時期のエコーでは見つけにくい病気で、NIPTで調べられるのも原因の一部(17p13.3欠失、TUBA1Aなど)です。脳のしわがいつごろ、どの順番でできるのか、エコーや胎児MRIでどう見えてくるのか、そして当院のNIPTでどこまで調べられ、どこからは調べられないのかを、臨床遺伝専門医の立場で整理しました。東京・北青山の当院で受けられる検査の範囲は、東京のNIPT(新型出生前診断)のページにまとめています。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧠 Q. 滑脳症はNIPTでわかりますか?

原因の一部はわかります。ミラー・ディーカー症候群の原因の17p13.3欠失は双子マックスプランとインペリアルプランで、TUBA1A(滑脳症3型)はインペリアルプランで調べます。滑脳症の原因として多いLIS1(PAFAH1B1)の小さな変化とDCXは、当院のNIPTの対象外です。

📅 Q. 滑脳症はいつわかる?エコーでわかりますか?

脳のしわは妊娠中に少しずつできるため、早い時期のエコーでは判断できません。正常な赤ちゃんでも、脳の表面の溝がいつも見えるようになるのは妊娠28週ごろからです。ミラー・ディーカー症候群では、早ければ妊娠23週ごろからエコーで発達の遅れが見えたと報告されています。

🔎 Q. エコーで滑脳症を疑われたら、NIPTを受ければいい?

エコーで所見があるときは、羊水検査などの確定検査が基本です(マイクロアレイ検査と遺伝子の検査)。NIPTは、まだエコーで何も言われていない段階で、調べられる原因を先に確かめる検査です。

🧩 Q. NIPTで発達の遅れや自閉症の原因はわかりますか?

一部はわかります。当院のNIPTは、知的障害・発達の遅れ・自閉スペクトラム症を伴うことがある病気の原因(微小欠失や単一遺伝子の変化)の一部を調べられます。陰性でも、すべての原因がないとは言えません。

👪 Q. 次の子で滑脳症が起こる確率は?

原因によって違います。新しく起きた変化なら低いものの0ではなく、お母さんがDCXの変化を持つ場合は2分の1、親に染色体の均衡型転座がある場合は転座の形などによって変わります。まず原因を確かめることが出発点です。

\ 滑脳症の原因の一部まで、妊娠9週から調べられます /

📅NIPTを予約する

17p13.3欠失は双子マックス・インペリアル、TUBA1Aはインペリアルで調べます。陽性なら確定検査まで院内で受けられます。
インペリアルプラン | 双子マックスプラン

滑脳症とは? ― 脳のしわ(脳回)が少ない状態

滑脳症とは、おなかの中で脳がつくられる時期に神経細胞がうまく移動できず、脳の表面のしわ(脳回)が少なく、なめらかになる状態です。しわがほとんどない「無脳回」から、しわが少なく厚い「厚脳回」、さらに表面のすぐ下に神経細胞の帯が残る「皮質下帯状異所性灰白質」まで、幅のある一つながりの状態として捉えられています[1]。オランダの1980〜1988年の調査では、I型滑脳症の頻度は100万出生あたり11.7人(約8万5千人に1人)でした[2]。

生まれたあとには、てんかんや発達の遅れを伴うことが多いものの、その程度は原因や脳の変化の広がりによって大きく違います[3][4]。症状・治療・生まれたあとの見通しは、病気そのものを解説した滑脳症(I型滑脳症)の疾患ページにまとめています。このページでは、生まれる前にどこまでわかるかに絞ってお話しします。

💡 用語解説:無脳回・厚脳回(むのうかい・こうのうかい)

脳の表面には、ふくらみ(脳回)と溝(脳溝)が並んでいます。脳回がほとんどない状態を無脳回、数が少なく幅が広い状態を厚脳回といいます。詳しくは無脳回・厚脳回の用語解説をご覧ください。

原因の多くは遺伝子や染色体の変化です。滑脳症(皮質下帯状異所性灰白質を含む)の811人を調べた研究では、81%で原因の変化が見つかり、いちばん多かったのがLIS1(PAFAH1B1)で約40%、次いでDCXが約23%、TUBA1Aが約5%、DYNC1H1が約3%でした[1]。残りの遺伝子はそれぞれ1%以下で、約19%は原因がわからないままでした[1]。この内訳が、あとでお話しする「NIPTで調べられる範囲」を考えるときの土台になります。

滑脳症はいつわかる? ― エコー・胎児MRIで見えてくる時期

滑脳症は、妊娠の早い時期のエコーでは判断できず、エコーで変化が見えてくるのは早くても妊娠23週ごろから、しわの少なさがはっきりするのはさらに後になる病気です。理由は単純で、正常な赤ちゃんでも、脳のしわは妊娠中に少しずつ、決まった順番でできていくからです。しわがまだできていない時期には、「しわが少ない」ことを見分けようがありません。

正常な赤ちゃんの脳のしわは、いつ見えてくる?

正常な赤ちゃん50人を妊娠15.6〜29.6週にエコーで調べた研究では、脳の溝が見え始める時期と、どの赤ちゃんでもいつも見えるようになる時期は次のとおりでした[5]。

📊 正常な赤ちゃんで脳の溝がエコーで見える時期

脳の溝 見え始めた時期(早いもの) いつも見えるようになる時期
頭頂後頭溝(とうちょうこうとうこう) 18.5週 20.5週より後
鳥距溝(ちょうきょこう) 18.5週 21.9週より後
帯状溝(たいじょうこう) 23.2週 24.3週より後
脳の表面(外側)の溝 23.2週 27.9週より後

出典:Ultrasound Obstet Gynecol誌(2004年)の研究[5]。正常な赤ちゃん50人をおなかの上からのエコーで調べた研究の数字です。

つまり、妊娠20週ごろの胎児スクリーニングで「脳に異常なし」と言われても、滑脳症を否定できるわけではありません。脳の表面の溝がそろって見えるのは妊娠28週ごろからなので、しわの少なさがはっきりするのは、多くの場合それ以降です[5]。

滑脳症の赤ちゃんでは、エコーでどう見える?

ミラー・ディーカー症候群(17p13.3欠失)と診断された7人の妊娠中のエコーを見直した研究では、7人全員で、週数に比べて脳のしわの発達が遅れていたことがわかりました。一方で、妊娠中の実際の検査で滑脳症が疑われていたのは7人中3人でした。著者らは、こうした変化は早ければ妊娠23週ごろからエコーで見えるとして、疑われたときは17p13.3欠失の検査を勧めています[6]。

「疑われていたのは7人中3人」という数字は、エコーの腕の問題というより、しわができる前の時期には、比べる基準そのものがまだないことを表していると考えています。

胎児MRIは何のために行う?

国際産婦人科超音波学会(ISUOG)の指針では、胎児の脳のMRIは、専門的な脳のエコー(神経超音波検査)を補う検査と位置づけられています[7]。エコーで脳のしわの遅れが疑われたときに、脳の表面全体を詳しく見るために行われることがあります。どこで受けるかは、かかりつけの産婦人科の先生と相談してください。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「20週で異常なし」は、滑脳症の答えにならない】

滑脳症を心配される方にまず知っていただきたいと考えているのは、エコーで見ているのは「その時点でできている脳の形」だということです。脳のしわは、妊娠中に後ろから順番に、時間をかけてできていきます。しわができる前の時期には、正常な赤ちゃんと見分ける手がかりがありません。

だからこそ、原因が遺伝子や染色体の変化であれば、形が見えてくるのを待たずに、血液から先に調べるという考え方が成り立ちます。ただし、NIPTで調べられるのは原因の一部です。どの原因が調べられて、どれが調べられないのかを知ったうえで選ぶことが大切だと考えています。

滑脳症はNIPTでわかる? ― 当院のNIPTで調べられる原因の範囲

滑脳症は、原因のすべてではなく一部だけを当院のNIPTで調べられます。調べられるのは、ミラー・ディーカー症候群の原因になる17p13.3欠失(双子マックスプラン・インペリアルプラン)と、TUBA1Aの変化による滑脳症3型(インペリアルプラン)などです。滑脳症の原因として多いLIS1(PAFAH1B1)の小さな変化と、DCXの変化は、ダイヤモンドプランにもインペリアルプランにも入っていません。

🧬 滑脳症の主な原因と、当院のNIPTで調べられるか

原因 滑脳症の中での割合[1] 当院のNIPT
17p13.3欠失(ミラー・ディーカー症候群) LIS1を含む欠失(割合は下の注) 双子マックス・インペリアル(92種類の微小欠失・重複の1つ)
LIS1(PAFAH1B1) 約40% 遺伝子の小さな変化は対象外
DCX(X連鎖性滑脳症) 約23% 対象外
TUBA1A(滑脳症3型) 約5% インペリアル
DYNC1H1 約3% インペリアルの遺伝子一覧に入っている(一覧での病名は知的発達障害13型。滑脳症を起こす変化まで報告の対象かは、この一覧からはわからない)
そのほかの遺伝子 それぞれ1%以下 多くは対象外
原因がわからない 約19% ―

割合は滑脳症(皮質下帯状異所性灰白質を含む)811人の研究の数字です[1]。この研究のLIS1の約40%には、17p13.3欠失によるものも含まれている可能性があり、欠失だけの割合はこの表からは読み取れません。当院のNIPTの対象は、当院の遺伝子一覧(2026年11月時点)で確かめたものです。

17p13.3欠失(ミラー・ディーカー症候群)は双子マックス・インペリアルで調べる

ミラー・ディーカー症候群は、17番染色体の短い腕の先(17p13.3)が欠けることで起こり、欠ける範囲には滑脳症の原因になるPAFAH1B1(LIS1)と、重さを強めると考えられているYWHAEが含まれます[3]。この17p13.3欠失は、当院の双子マックスプランとインペリアルプランで調べる92種類の微小欠失・重複に入っています。スタンダード・プレミアム・ダイヤモンドプランでは調べません。病気そのものの解説はミラー・ディーカー症候群(17p13.3欠失)のページをご覧ください。

微小欠失・重複は、染色体の数の異常に比べて陽性的中率が低めで、当院の微小欠失・重複では項目によって60〜70%程度です。この数字は17p13.3欠失だけを取り出したものではありません。また、欠失の大きさや場所によっては見つからないこともあります。陽性なら必ず確定検査で確かめます。微小欠失の考え方は微小欠失症候群のページで解説しています。

TUBA1A(滑脳症3型)はインペリアルで調べる

TUBA1Aは、神経細胞の中の「微小管」という骨組みをつくるタンパク質の設計図です。TUBA1Aの変化による病気は常染色体顕性(優性)遺伝の形をとりますが、多くはご両親にはなく赤ちゃんで新しく起きた変化(de novo変異)によるもので、滑脳症全体の4〜5%を占めます[8]。166人をまとめた解析では、おなかの中で見つかった赤ちゃんは生まれた方より変化が強く出る傾向があり、脳梁欠損は80.0%(20人中16人)にみられました[8]。

TUBA1Aは当院のインペリアルプラン(最大155遺伝子・202疾患)に入っており、ダイヤモンドプラン(56遺伝子)には入っていません。病気の解説は滑脳症3型(TUBA1A)のページ、遺伝子の解説はTUBA1A遺伝子のページにあります。インペリアルプランでは、このほか、厚脳回を伴うことがあるバライツァー・ウィンター症候群(ACTB・ACTG1)も調べます。

💡 用語解説:de novo変異(デノボへんい)

ご両親の血液の遺伝子にはなく、赤ちゃんで新しく起きた遺伝子の変化です。家族に同じ病気の人がいなくても起こります。de novo変異はお父さんの年齢とともに増えることが知られていて、NIPTの単一遺伝子の検査は主にこの変化を調べます。詳しくは単一遺伝子疾患とNIPT(父親の年齢とde novo変異)で解説しています。

LIS1(PAFAH1B1)とDCXは当院のNIPTでは調べない

滑脳症の原因として最も多いLIS1(PAFAH1B1)の遺伝子の中の小さな変化と、2番目に多いDCXの変化は、当院のどのプランのNIPTでも調べません。811人の研究ではLIS1が約40%、DCXが約23%でしたが、LIS1の約40%には17p13.3欠失によるものが含まれている可能性があり、この2つを足した割合がそのまま「NIPTで調べない原因の割合」になるわけではありません[1]。それでも、原因として多い2つの遺伝子の変化を調べていないことに変わりはないので、NIPTが陰性でも「滑脳症の心配はない」とは言えません。遺伝子の解説はLIS1遺伝子・DCX遺伝子のページ、DCXによる病気はX連鎖性滑脳症のページにまとめています。

単一遺伝子の病気は、まとめるとまれではない

滑脳症の原因になる遺伝子のように、単一遺伝子の病気は1つひとつはまれですが、わずか30遺伝子・25疾患を合わせただけでも約600人に1人(0.17%)と報告されています[9][10]。これは30の遺伝子に絞って調べた研究での数字なので、実際にはこれより多いと考えています。ダウン症候群の出生頻度(米国の全国推計〔2004〜2006年の出生〕で約700人に1人)より多い頻度です[11]。

超音波検査で赤ちゃんの異常が疑われた妊婦さんを対象にした研究では、染色体の検査に加えて単一遺伝子の病気も調べると、見つかった病気の数が約1.6倍(61件→98件、60.7%増)に増えたと報告されています[12]。インペリアルプランの単一遺伝子のde novo変異NIPTは、高リスクの妊婦さん750人の検証データで、陽性的中率96.9%・感度100%・特異度99.9%でした[13]。それでも対象の遺伝子のすべての変化を見つけられるとは限らず、陽性なら確定検査で確かめます。

📋 滑脳症に関係するプランの違い

プラン 17p13.3欠失 TUBA1A 結果までの目安
スタンダード・プレミアム 調べない 調べない 基本10〜14日
ダイヤモンド 調べない 調べない(56遺伝子に入っていない) 基本10〜14日(単一遺伝子も)
双子マックス 調べる 調べない 基本10〜14日
インペリアル 調べる 調べる 基本10〜14日(単一遺伝子の結果だけ3〜4週間)

料金はプランごとのページとNIPTの費用・料金のページでご確認ください。料金には臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリング、NIPTでの性別判定、4Dエコー(来院の場合)が含まれます。ダイヤモンドとインペリアルの違いはインペリアルプランとダイヤモンドプランの比較にまとめています。

\ 調べられる原因と、調べられない原因を知ってから選ぶ /

📅NIPTを予約する

90分の受診枠の中で、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行います。まだ決めていない方は、プランごとの範囲からご覧ください。
インペリアルとダイヤモンドの違い | NIPTの費用・料金

エコーで滑脳症を疑われたら? ― NIPTではなく確定検査が基本

エコーや胎児MRIで脳のしわの遅れがすでに疑われているときは、NIPTではなく、羊水検査などの確定検査で赤ちゃんの染色体と遺伝子を直接調べるのが基本です。NIPTはスクリーニング検査で、調べられる原因も一部に限られます。形の変化が見えている段階で、原因を確かめるための検査ではありません。

🧪 マイクロアレイ検査

17p13.3欠失など、染色体の小さな欠失・重複を調べます。結果は2週間ほどです。

🧬 遺伝子の検査

LIS1・DCX・TUBA1Aなど、滑脳症の原因になる遺伝子の変化を調べます。

👨‍⚕️ 遺伝カウンセリング

結果の意味と、これからの選択肢を臨床遺伝専門医と考えます。

当院では確定検査まで院内で受けられます。絨毛検査は妊娠11〜13週、羊水検査は妊娠15週から行っています。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。羊水でマイクロアレイ検査を行うなら、妊娠18週くらいが適していると考えています。確定検査は基本的に日曜日(月曜日が祝日のときは月曜日)に行っています。2つの検査の違いは絨毛検査と羊水検査の違い、検査の内容は羊水検査・絨毛検査のページをご覧ください。

エコーで何も言われていない段階では、NIPTで調べられる原因(17p13.3欠失、TUBA1Aなど)を先に確かめておくという使い方ができます。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。受けられる時期の上限は設けていません。ただし、人工妊娠中絶ができるのは通常妊娠満22週未満です(出典:日本医師会「医の倫理の基礎知識 2018年版【生殖医療】D-5」https://www.med.or.jp/doctor/rinri/i_rinri/d05.html)[14]。上限がないことは、どの時期でも結果で妊娠を続けるかを選べるという意味ではありません。受ける時期と結果の生かし方は、検査前の遺伝カウンセリングで一緒に考えます。

⚠️ 陰性でも言えないこと

NIPTが陰性でも、LIS1・DCXなど調べていない原因や、原因がわからない滑脳症は否定できません。妊娠の後半になってエコーで脳のしわの遅れを指摘されたときは、NIPTの結果にかかわらず、主治医と確定検査を含めて相談してください。

NIPTを受ける方は全員、2つの互助会に加入します。カトレア会は陽性のときの確定検査(絨毛検査・羊水検査)の費用を補助し(今は補助の上限なし)、安心検査結果保障制度は、再検査が必要になったのに流産して再検査ができず結果が出なかったときに備える互助会です。陽性なら、陽性後の遺伝カウンセリングを何度でも無料で受けられます。NIPTの陽性からの流れはNIPT陽性後の確定検査で解説しています。

次の子で滑脳症が起こる確率は? ― 親が当事者のとき・前のお子さんが滑脳症のとき

次のお子さんで滑脳症が起こる確率は、前のお子さんの滑脳症が何によって起きたかで大きく変わります。原因がわからないままでは確率を言えないため、まず原因を確かめることが出発点です。

👪 原因ごとの、次のお子さんでの確率の考え方

前のお子さんの原因 ご両親の状況 次のお子さんでの確率
LIS1の変化・TUBA1Aの変化 ご両親に同じ変化がない(新しく起きた変化) 低いが0ではない(性腺モザイクの可能性)[4][8]
LIS1の変化 親が同じ変化を持っている 妊娠ごとに2分の1[4]
17p13.3の欠失(ミラー・ディーカー症候群) 親が染色体の均衡型転座を持っている 転座の形(どの染色体のどこで入れ替わっているか)などで変わり、一律には言えない
DCXの変化 お母さんがDCXの変化を持っている 妊娠ごとに2分の1で受け継ぐ[15]
DCXの変化 お母さんの血液では見つからない 低いが0ではない(症状のないお母さんの最大10%に性腺モザイクがあると考えられている)[15]

性腺モザイクとは、血液の検査では見つからなくても、卵子や精子をつくる細胞の一部に同じ変化を持っている状態です。モザイクの親では、確率はお子さん1人あたり最大で2分の1になります。

ミラー・ディーカー症候群では、親の染色体を調べる意味がある

ミラー・ディーカー症候群の多くは親から受け継いだものではありませんが、症状のない親が染色体の均衡型転座を持っていて、それが赤ちゃんで不均衡になって起こることがあります[3]。前のお子さんがミラー・ディーカー症候群だった場合は、ご両親の染色体検査で均衡型転座があるかを確かめることが、次の妊娠の確率を知る手がかりになります。均衡型転座がある場合の確率は、転座の形などによって変わるので、その結果をもとに遺伝カウンセリングで考えます。

お母さん自身にDCXの変化がある(皮質下帯状異所性灰白質)とき

DCXの病気はX連鎖性の遺伝で、男の子では滑脳症として、女の子では多くが皮質下帯状異所性灰白質として現れ、女性の症状の幅は非常に広いことが知られています[15]。お母さんがDCXの変化を持っている場合、妊娠ごとに2分の1の確率で赤ちゃんに受け継がれます[15]。

お母さんがその病気の当事者で、まだ遺伝子検査を受けていない場合は、時間に余裕があれば、まずお母さん本人の遺伝子検査で原因の変化を特定します。基本は妊娠前に特定しておくほうがよいと考えています。お母さん自身が変化を持っている場合、通常のNIPTでは、その変化がお母さん由来か赤ちゃん由来かを区別できません。さらにDCXは当院のNIPTの対象外です。そのため、特定した変化を目印にして、絨毛検査(妊娠11〜13週)か羊水検査(妊娠15週から)で赤ちゃんを調べる流れになります。詳しくはお母さんが単一遺伝子の病気の当事者のときのNIPTと確定検査をご覧ください。お父さんが当事者の場合はお父さんが単一遺伝子の病気の当事者のときのNIPTで解説しています。

それでも、親の病気とは別に、赤ちゃんに新しく起こる単一遺伝子の病気や染色体の変化もあるので、NIPTは基本的に受けたほうがよいと考えています。ご家族の状況に合わせた検査の組み合わせは、検査前の遺伝カウンセリングで選びます。

前のお子さんが滑脳症で、原因がまだわかっていないとき

次の妊娠の前に、前のお子さんの原因を調べておくことで、妊娠中に何を目印に調べればよいかが決まります。前のお子さんの検体で原因が見つかれば、その変化を目印にした絨毛検査・羊水検査ができます[4][15]。滑脳症の原因になる複数の遺伝子をまとめて調べる検査は滑脳症NGS遺伝子パネル検査で解説しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「次も同じことが起こるのでは」という不安には、原因で答える】

前のお子さんが滑脳症だったご家族の不安は、「次も同じことが起こるのではないか」という一点に集まりがちです。その答えは、原因によって「低いものの0ではない」から「2分の1」まで大きく違い、親の均衡型転座のように一律に言えない場合もあります。だから、確率を考える前に原因を確かめることが何より大切だと考えています。

原因が新しく起きた変化だとわかれば、ご両親のどちらかのせいで起きたものではないこともはっきりします。原因の変化がわかっていれば、次の妊娠ではその変化を目印に、早い時期から赤ちゃんを調べることもできます。ご自身に合った選択を考えるための材料として、まず原因を知ることをおすすめしています。

発達の遅れや自閉症の原因は、NIPTでどこまでわかる?

知的障害・発達の遅れ・自閉スペクトラム症を伴うことがある病気の原因の一部は、当院のNIPTで調べられます。滑脳症もてんかんや発達の遅れを伴うことが多い病気ですが[3][4]、発達の遅れにつながる原因は滑脳症のほかにもたくさんあります。当院のNIPTが調べる微小欠失・重複や単一遺伝子の病気には、こうした病気が含まれています。

🧩 発達の遅れ・自閉スペクトラム症を伴うことがある病気の例とプラン

プラン 微小欠失・重複 単一遺伝子 病気の例
スタンダード 6種類7疾患 ― 22q11.2欠失症候群、アンジェルマン症候群、プラダー・ウィリー症候群
ダイヤモンド 12種類13疾患 56遺伝子 上の病気+レット症候群、コルネリア・デ・ランゲ症候群、CHARGE症候群
インペリアル 92種類+5Mbを超える欠失・重複 最大155遺伝子(202疾患) 上の病気+ミラー・ディーカー症候群、16p11.2欠失・重複、フェラン・マクダーミッド症候群、ピット・ホプキンス症候群

双子マックスプランは、インペリアルと同じ92種類の微小欠失・重複と5Mbを超える欠失・重複を調べ、単一遺伝子は調べません。

ただし、陰性でも、自閉症や発達の遅れがないとは言えません。原因の多くはNIPTで調べられないもので、症状の重さもNIPTではわかりません。詳しくは一部の自閉症・発達障害の原因はNIPTでわかるで解説しています。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり何がわからないか、陽性だったときに次に何が起こるかを、検査を受ける前に確かめます。遺伝カウンセリングとはのページもあわせてご覧ください。施設を選ぶときに確かめたいことは、調べられる範囲・陽性のあとの確定検査・検査前後の遺伝カウンセリングの3つだと考えています。

1つの病気あたりで考える ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ

「ダウン症候群だけが心配」という方は少なくありません。けれども、出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんとご家族の暮らしに大きくかかわるものです。そして、ご家族の子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった「行動の問題」だと分かっています[16]。こうした行動の問題を伴いやすい病気には、ダウン症候群ではなく、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患が多く含まれます[16][17]。三大トリソミーだけを調べる検査では、これらの病気は調べられません。

出生前検査は、その後の人生を左右するかもしれない検査です。『安さ』だけで選んで大丈夫でしょうか。

三大トリソミーだけを調べる検査を仮に10万円とすると、1つの病気あたりは約3万3千円です。

当院のインペリアルプランは、全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、202の単一遺伝子疾患を調べます。性染色体の数の異常も含めて、数えられる病気だけで320になり、1つの病気あたりは約1,719円です。さらに、5Mbを超える欠失・重複はすべての染色体が対象なので、数えきれないほどの変化を調べていることになります。数えられる分だけでも、これだけの範囲を調べられます。

プラン 主に調べる範囲 数えた病気の数 1つの病気あたり
三大トリソミーだけを調べる検査
(仮に10万円とした場合)
13・18・21トリソミー 3 約33,333円
スタンダード(220,000円) 13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患 14 約15,714円
プレミアム(264,000円) 13・18・21・15・16・22トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失12種類13疾患 23 約11,478円
ダイヤモンド(407,000円) プレミアムの範囲+単一遺伝子56 79 約5,152円
双子マックス(440,000円) 全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常 114+α 約3,860円
インペリアル(550,000円) 全常染色体の数の異常、性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常、単一遺伝子202疾患 320+α 約1,719円

※価格は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込価格です。最新の料金は料金ページをご確認ください。※病気の数は、数の異常・微小欠失・重複・単一遺伝子疾患を1つずつ数えたものです。性染色体の数の異常は4種類(ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群)として数えています(性染色体を調べるのはスタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・インペリアル。双子マックスは調べません)。5Mbを超える構造異常は数に入れていないため、双子マックスとインペリアルは実際にはさらに多くの変化を調べています。※『三大トリソミーだけを調べる検査』は計算のための仮の例で、特定の施設の価格ではありません。

最新の料金はNIPTの費用・料金のページでご確認ください。病気の数が多いほどよい検査、ということではありません。調べる範囲が広がると、陽性になる可能性も、確定検査が必要になる場面も増えます。どこまで調べたいかは、ご家族によって違います。90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、どのプランが合うかを一緒に考えます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 滑脳症はNIPTでわかりますか?

原因の一部はわかります。ミラー・ディーカー症候群の原因の17p13.3欠失は双子マックスプランとインペリアルプランで、TUBA1Aの変化による滑脳症3型はインペリアルプランで調べます。滑脳症の原因として多いLIS1(PAFAH1B1)の小さな変化とDCXの変化は当院のNIPTの対象外なので、陰性でも滑脳症がないとは言えません。

Q2. 滑脳症はいつわかりますか?

脳のしわは妊娠中に少しずつできるため、早い時期のエコーでは判断できません。正常な赤ちゃんでも、脳の表面の溝がいつも見えるようになるのは妊娠28週ごろからです。ミラー・ディーカー症候群の研究では、早ければ妊娠23週ごろからエコーでしわの発達の遅れが見えたと報告されています。

Q3. 妊娠20週のエコーで異常なしと言われました。滑脳症の心配はありませんか?

妊娠20週ごろは、正常な赤ちゃんでも脳の表面(外側)のしわがまだほとんどできていない時期なので、その時点のエコーで滑脳症を否定することはできません。しわの少なさがはっきりするのは、多くの場合もっと後の時期です。気になる場合は、かかりつけの産婦人科の先生にご相談ください。

Q4. エコーで滑脳症を疑われました。NIPTを受ければいいですか?

エコーで所見があるときは、羊水検査などの確定検査で、マイクロアレイ検査と遺伝子の検査を行うのが基本です。NIPTは調べられる原因が一部に限られるスクリーニング検査です。当院では確定検査まで院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。

Q5. 滑脳症は遺伝しますか?次の子の確率は?

原因によって違います。LIS1やTUBA1Aの変化の多くは赤ちゃんで新しく起きたもので、次のお子さんの確率は低いものの0ではありません。お母さんがDCXの変化を持っている場合は、妊娠ごとに2分の1の確率で赤ちゃんに受け継がれます。親に染色体の均衡型転座がある場合は、転座の形などによって確率が変わり、一律には言えません。まず前のお子さんの原因を確かめることが出発点です。

Q6. 滑脳症は何人に1人の割合で起こりますか?

オランダの1980〜1988年の調査では、I型滑脳症は100万出生あたり11.7人(約8万5千人に1人)でした。まれな病気ですが、原因になる遺伝子や染色体の変化はいくつもあり、その一部は当院のNIPTで調べられます。

Q7. NIPTで発達の遅れや自閉症の原因はわかりますか?

一部はわかります。当院のNIPTは、知的障害・発達の遅れ・自閉スペクトラム症を伴うことがある病気の原因の一部(微小欠失や単一遺伝子の変化)を調べられます。陰性でも、自閉症や発達の遅れがないとは言えません。

Q8. NIPTは何週から受けられますか?結果はいつわかりますか?

当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。結果は基本10〜14日で、インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけ3〜4週間かかります。ダイヤモンドプランは単一遺伝子も10〜14日です。

🏥 滑脳症の原因の一部を、生まれる前に調べる

17p13.3欠失(ミラー・ディーカー症候群)は双子マックス・インペリアル、TUBA1A(滑脳症3型)はインペリアルで調べます。臨床遺伝専門医が常駐し、陽性なら確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられます。

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来院が難しい方は、オンラインNIPT(Zoomでのカウンセリング+全国110か所の提携施設で採血)もご利用いただけます。

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参考文献

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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・検査の選択を示すものではありません。検査については臨床遺伝専門医にご相談ください。

プロフィール

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

Google公認:仲田洋美 公式プロフィール

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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