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無頭蓋症(むとうがいしょう)は、赤ちゃんの頭の骨(頭蓋骨)ができず、脳がむき出しのまま育ってしまう病気です。脳や脊髄のもとになる「神経管」がうまく閉じないことで起こる神経管閉鎖障害の一つで、羊水にさらされた脳の組織はしだいに壊れ、無脳症へ進むと考えられています。この記事では、無頭蓋症とは何か、妊娠何週ごろにエコーでわかるのか、原因と葉酸の関係、次の妊娠で再び起こる確率を、臨床遺伝専門医が一次情報にもとづいて解説します。後半では、NIPTで18トリソミーの可能性が高いと出たあと、超音波検査で無頭蓋症が見つかった方の事例を紹介します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧠 Q. 無頭蓋症とは?
赤ちゃんの頭蓋骨ができず、脳が羊水にさらされる神経管閉鎖障害です。脳の組織はしだいに壊れて無脳症へ進むと考えられており、生まれた赤ちゃんのほとんどは生後まもなく亡くなります。
🔍 Q. いつ、どの検査でわかる?NIPTでわかる?
頭の形の異常なので、見つけるのは超音波検査(エコー)です。妊娠11〜13週ごろの超音波検査で見つかることがあります。NIPTは染色体の数の変化を調べる検査で、無頭蓋症そのものはわかりません。
🌸 Q. 葉酸を飲んでいなかったせい?次の妊娠は?
葉酸で神経管閉鎖障害の一部は減らせますが、すべては防げません。18トリソミーなど染色体の異常とともに起こることもあります。前の妊娠が神経管閉鎖障害だった場合、次の妊娠で再び起こる確率は米国のデータで2〜3%とされ、医師の管理のもとで葉酸をとることが勧められています。
無頭蓋症とは?無脳症との関係
無頭蓋症は、赤ちゃんの頭をおおう骨(頭蓋骨の上の部分)ができない状態です。脳そのものはできはじめていても、骨で守られずに羊水の中にさらされています。英語では acrania(アクラニア)と呼ばれます。
頭蓋骨ができないしくみ:神経管閉鎖障害の一つ
赤ちゃんの脳や脊髄は、妊娠のごく初期にできる「神経管」という管からつくられます。神経管の異常は受精後1か月以内(妊娠週数でいうと6週ごろまで)に起こるとされています[4]。この時期に頭側の神経管がうまく閉じないと、その外側にできるはずの頭蓋骨もつくられず、無頭蓋症になります。背中側で閉じないと二分脊椎になります。神経管閉鎖障害の全体像は神経管閉鎖障害の原因と葉酸の解説でまとめています。
妊娠週数は最後の生理の初日から数えるため、受精はおよそ妊娠2週にあたります。無頭蓋症のもとになる変化は、多くの方が妊娠に気づく前後のごく早い時期に起きているということになります。
無頭蓋症と無脳症の関係
頭蓋骨がない状態の脳は、羊水や子宮の壁にふれるうちにしだいに壊れていきます。こうして無頭蓋症 → 脳の露出(外脳症) → 無脳症と進む一連の変化が起こると考えられています。人ではまだ証明しきれていない考え方ですが、超音波検査で経過を追った報告があります[2][3]。そのため、妊娠の早い時期には「無頭蓋症」、後の時期には「無脳症」と診断名が変わることがあります。無脳症の解説は開放性神経管奇形(無脳症・二分脊椎)もご覧ください。
どのくらいの頻度か・赤ちゃんの見通し
米国疾病予防管理センター(CDC)は、米国で無脳症をもって生まれる赤ちゃんを約4,762人に1人と見積もっています[1]。妊娠中に流産や死産となることも多く、生まれた赤ちゃんもほとんどが生後まもなく亡くなります。確立した治療法はありません[1]。
💡 用語解説:神経管閉鎖障害(しんけいかんへいさしょうがい)
脳や脊髄のもとになる神経管が、妊娠初期にうまく閉じないことで起こる生まれつきの病気の総称です。頭側で起こると無頭蓋症・無脳症・脳瘤、背中側で起こると二分脊椎になります。
無頭蓋症はいつ・どうやってわかる?
無頭蓋症は頭の「形」の異常なので、見つけるのは超音波検査(エコー)です。妊娠11〜13週ごろに行う超音波検査で、頭蓋骨が見えない、頭の形が不規則、羊水が白っぽく濁って見える、といった特徴から見つかることがあります[3]。早い時期に見つけるには、胎児の脳の見方に慣れた検査者による観察が大切だとされています[3]。妊娠初期の超音波検査でわかることと限界は胎児超音波検査とはで解説しています。
見つかった場合は、ほかの形の異常がないかもあわせて確かめます。神経管閉鎖障害は、18トリソミーなどの染色体の異常とともに起こることがあるためです(下の「原因と葉酸」で説明します)。
NIPTでわかること・エコーでわかること
NIPT(新型出生前診断)は、お母さんの血液中にある赤ちゃん由来のDNAを調べ、染色体の数の変化などを推定する検査です。18トリソミーは当院のすべてのプランで調べられますが、無頭蓋症のような形の異常はNIPTではわかりません。NIPTとエコーは、見ているものが違う検査です。
ミネルバクリニックでは、NIPTの採血の前に4Dエコーで赤ちゃんの様子を確かめます(4Dエコーは料金に含まれます)。NIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。NIPTで陽性のときは確定検査で確かめる必要があり、当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行い、主要項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。精度の考え方はNIPTの精度で解説しています。形の異常は、NIPTのあとも妊婦健診の超音波検査で確かめていきます。
無頭蓋症の原因と葉酸
原因として分かっていること
無頭蓋症・無脳症の原因は、すべてが分かっているわけではありません。CDCは、関係する要因として、妊娠初期の葉酸の不足、管理が十分でない糖尿病、一部の抗てんかん薬、高熱や体が熱くなりすぎることを挙げています[1]。多くの場合、一つの原因で説明できるものではなく、いくつもの要因が重なって起こると考えられています。
葉酸でどこまで防げるか
英国の大規模な臨床試験(MRCビタミン研究)では、前の妊娠が神経管閉鎖障害だった女性が葉酸をとると、次の妊娠で再び起こる割合が71%減りました[5][6]。この結果を受けて、日本でも厚生労働省が2000年に、妊娠を計画している女性は妊娠の1か月以上前から妊娠3か月まで、食事に加えて1日0.4mgの葉酸をとるよう情報提供を始めています[7]。葉酸のとり方は葉酸サプリメントの効果で解説しています。
一方で、CDCは「十分な葉酸で防げるのは神経管閉鎖障害のすべてではなく一部」とし、防げる可能性を約半数と見積もっています[4]。葉酸をとっていても起こることはあり、葉酸をとっていなかったことだけで原因が決まるわけではありません。
18トリソミーなど染色体の異常とともに起こる場合
神経管閉鎖障害の一部は、染色体の数の異常をともなっています。米国で出生前に見つかった神経管閉鎖障害を調べた研究では、染色体を調べた145例のうち10例(7%)に染色体の数の異常があり、そのうち7例が18トリソミーでした。ほかの形の異常もあわせ持つ場合は24%、神経管閉鎖障害だけの場合は約2%と、差が大きいことも示されています[8]。
18トリソミーは、卵子や精子ができるときに染色体がうまく分かれない「染色体不分離」で起こることがほとんどで、なぜ不分離が起こるのかは分かっていません[9]。このため、染色体の異常をともなう場合は、原因の考え方も、次の妊娠への見通しの立て方も変わってきます。上の研究の著者も、正確な診断と再発の見通しのために赤ちゃんの染色体を調べることを勧めています[8]。
次の妊娠で再び起こる確率と準備
前の妊娠が神経管閉鎖障害だった場合、次の妊娠で再び起こる確率は、米国のデータで2〜3%とされています[5]。神経管閉鎖障害のない妊娠より高いため、次の妊娠に向けた準備が勧められます。
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葉酸は医師の管理のもとで:厚生労働省は、前の妊娠が神経管閉鎖障害だった方は、医師の管理のもとで妊娠前から葉酸をとるよう示しています[7]。米国では1日4mgという多い量が勧められています[5]。量は自己判断で増やさず、主治医と相談してください。
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前回の原因を整理する:前回の妊娠で18トリソミーなどの染色体の異常があったかどうかで、再発の見通しは変わります。染色体の検査結果があれば、遺伝カウンセリングで個別に確かめることをお勧めします。
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次の妊娠の検査を考えておく:形の異常は超音波検査で、染色体の数の変化はNIPTや確定検査で確かめます。どの検査で何がわかるかを、妊娠前から知っておくと迷いが少なくなります。
次の妊娠への不安と、再発率の考え方は次の妊娠が怖い方へ|再発率とNIPTでわかることでも解説しています。
事例:NIPTで18トリソミー陽性、エコーで無頭蓋症が見つかった方
ここからは、NIPTで18トリソミーの可能性が高いと出たあと、無頭蓋症が見つかった方の経過を紹介します。個人が特定されないよう、年齢や時期などの細部は省いています。
この方は、赤ちゃんの染色体の状態を早めに知りたいと考え、妊娠初期にNIPTを受けました。結果は18トリソミー陽性でした。その後に行った詳しい超音波検査で、無頭蓋症も見つかりました。上で説明したとおり、神経管閉鎖障害は18トリソミーとともに起こることがあります[8]。
18トリソミーとは
18トリソミー(エドワーズ症候群)は、通常2本ある18番染色体が3本ある状態です。心臓の病気や発育の遅れなど、体のいろいろな部分に症状が出ます。生まれた赤ちゃんで1週間を超えて生きるのは約半数、1歳を超えるのは5〜10%と報告されています[9]。病気の詳しい解説はエドワーズ症候群(18トリソミー)総論を、長く生きている例の報告は18トリソミーの寿命と長期生存例をご覧ください。
なお、NIPTはスクリーニング検査です。NIPTで陽性のときは、羊水検査・絨毛検査といった確定検査で赤ちゃんの染色体を確かめるのが原則です。陽性のあとの流れはNIPT陽性だったらどうする?で、確定検査をせずに判断した場合の考え方はNIPT陽性・18トリソミー|羊水検査をしない選択とエコーで解説しています。
次の妊娠では
この方はその後、再び妊娠し、前回の経験から大きな不安を抱えながら、もう一度NIPTを受けました。結果はすべて陰性で、その後、出産されています。
ただし、NIPTの陰性は「調べた範囲の病気の可能性が低い」という意味で、無頭蓋症のような形の異常まで否定するものではありません。次の妊娠でも、染色体はNIPTや確定検査で、形の異常は超音波検査でと、検査を組み合わせて確かめることが大切です。
「私のせい?」と自分を責めてしまう方へ
無頭蓋症や18トリソミーがわかったとき、「葉酸を飲んでいなかったからでは」「何かいけないことをしたのでは」と自分を責める方は少なくありません。この事例の方も、前の妊娠では葉酸を意識してとっていたのに、今回はあまり意識していなかったことを思い出し、自分を責めていたそうです。
医学的な事実を整理すると、次のことが言えます。
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18トリソミーは、卵子や精子ができるときの染色体の分かれ方の誤りで起こることがほとんどで、その誤りが起こる理由は分かっていません[9]。妊娠中の行動で起こるものではありません。
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葉酸で防げる神経管閉鎖障害は一部で、すべてではありません[4]。とくに染色体の異常をともなう場合は、葉酸の不足だけで説明できるものではありません。
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神経管の異常は受精後1か月以内という、妊娠に気づく前後のごく早い時期に起こります[4]。
原因を知ることは、自分を責めるためではなく、次の妊娠で何を確かめればよいかを決めるために役立ちます。妊娠を続けるかどうかの判断や、その後の気持ちの揺れについては、NIPT陽性時の中絶はいつまで?と中絶後の心の反応でも解説しています。
🩺 院長コラム【「検査で見ているもの」を知っておく】
無頭蓋症と18トリソミーが同じ赤ちゃんに見つかるとき、それぞれを見つけるのは別の検査です。18トリソミーは染色体の数を調べる検査で、無頭蓋症は超音波検査で見つかります。どちらか一つの検査だけで、赤ちゃんのすべてがわかるわけではありません。
臨床遺伝専門医として大切にしているのは、「どの検査で、何を調べ、何を調べていないか」を正確に知っていただくことです。そのうえで、葉酸のように妊娠前からできることと、検査で確かめられることを分けて考えると、次の妊娠に向けて何をすればよいかが見えやすくなると考えています。
🏥 染色体はNIPTで、形はエコーで。両方を確かめたい方へ
ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医がNIPTを担当し、採血の前に4Dエコーで赤ちゃんの様子を確かめます。陽性なら羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられ、陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料です。互助会で確定検査の費用も補助されます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 無頭蓋症とは何ですか?無脳症とは違うのですか?
無頭蓋症は、赤ちゃんの頭蓋骨ができず、脳が羊水にさらされている状態で、神経管閉鎖障害の一つです。むき出しの脳はしだいに壊れ、無脳症へ進むと考えられているため、妊娠の早い時期には無頭蓋症、後の時期には無脳症と呼ばれることがあります。
Q2. 無頭蓋症は妊娠何週でわかりますか?
妊娠11〜13週ごろの超音波検査で、頭蓋骨が見えない、頭の形が不規則、羊水が白っぽく見えるといった特徴から見つかることがあります。早い時期に見つけるには、胎児の脳の見方に慣れた検査者による観察が大切だとされています。
Q3. 無頭蓋症はNIPTでわかりますか?
わかりません。NIPTは染色体の数の変化などを調べる検査で、無頭蓋症のような形の異常は超音波検査で確かめます。ただし、無頭蓋症は18トリソミーなどの染色体の異常とともに起こることがあり、18トリソミーはNIPTで調べられます。
Q4. 無頭蓋症は葉酸を飲まなかったせいですか?
葉酸の不足は要因の一つですが、それだけで決まるものではありません。CDCは、十分な葉酸で防げる神経管閉鎖障害はすべてではなく一部としています。18トリソミーなどの染色体の異常をともなう場合は、染色体の分かれ方の誤りが関わっており、葉酸の不足だけでは説明できません。
Q5. 次の妊娠で無頭蓋症が再発する確率はどのくらいですか?
前の妊娠が神経管閉鎖障害だった場合、次の妊娠で再び起こる確率は米国のデータで2〜3%とされています。厚生労働省は、この場合は医師の管理のもとで妊娠前から葉酸をとるよう示しています。前回に染色体の異常があったかどうかで見通しが変わるため、遺伝カウンセリングで個別に確かめることをお勧めします。
Q6. 無頭蓋症の赤ちゃんは、生まれたあと生きられますか?
無頭蓋症・無脳症では、妊娠中に流産や死産となることが多く、生まれた赤ちゃんもほとんどが生後まもなく亡くなります。確立した治療法はありません。
関連記事
参考文献
- [1] Centers for Disease Control and Prevention. About Anencephaly. [CDC]
- [2] Wilkins-Haug L, Freedman W. Progression of exencephaly to anencephaly in the human fetus—an ultrasound perspective. Prenat Diagn. 1991;11(4):227-233. [PubMed 1896409]
- [3] Santana EFM, Araujo Júnior E, Tonni G, Costa FDS, Meagher S. Acrania-exencephaly-anencephaly sequence phenotypic characterization using two- and three-dimensional ultrasound between 11 and 13 weeks and 6 days of gestation. J Ultrason. 2018;18(74):240-246. [DOI 10.15557/JoU.2018.0035]
- [4] Centers for Disease Control and Prevention. Recommendations for the use of folic acid to reduce the number of cases of spina bifida and other neural tube defects. MMWR Recomm Rep. 1992;41(RR-14). [CDC MMWR]
- [5] Centers for Disease Control. Use of folic acid for prevention of spina bifida and other neural tube defects—1983-1991. MMWR. 1991;40(30):513. [CDC MMWR]
- [6] MRC Vitamin Study Research Group. Prevention of neural tube defects: results of the Medical Research Council Vitamin Study. Lancet. 1991;338(8760):131-137. [DOI 10.1016/0140-6736(91)90133-A]
- [7] 厚生労働省. 神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について. 2000年12月28日. [厚生労働省]
- [8] Hume RF, Drugan A, Reichler A, Lampinen J, Martin LS, Johnson MP, Evans MI. Aneuploidy among prenatally detected neural tube defects. Am J Med Genet. 1996;61(2):171-173. [DOI]
- [9] Cereda A, Carey JC. The trisomy 18 syndrome. Orphanet J Rare Dis. 2012;7:81. [DOI 10.1186/1750-1172-7-81]
※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。妊娠中の検査結果や次の妊娠については、主治医・専門医にご相談ください。






