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胎児の障害・奇形はいつわかる?エコーと出生前検査でわかる時期を週数別に臨床遺伝専門医が解説

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

胎児の障害や奇形(形態異常)がわかる時期は、病気の種類と検査によって違います。染色体の病気はNIPTで妊娠9〜10週以降に可能性を調べられ、体の形の異常は妊娠11〜14週ごろと18〜24週ごろの超音波検査で見つかることが多く、妊娠後期や生まれてから初めてわかるものもあります。お腹の赤ちゃんに障害がないか不安になるのは、妊娠中にはごく自然なことです。この記事では、何が・いつ・どの検査でわかるのか、そして生まれる前にはわからない障害があることを、週数の順に整理します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約14分
👶 胎児の障害・奇形・出生前検査
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 胎児の障害や奇形は、妊娠何週でわかりますか?

A. 染色体の病気の可能性はNIPTで妊娠9〜10週以降、体の形の異常は妊娠11〜14週ごろの初期超音波と18〜24週ごろの中期超音波で見つかることが多いです。確定するには絨毛検査(妊娠11〜14週)や羊水検査(妊娠15〜16週以降)が必要です。発達障害の多くや、妊娠後期に現れる異常、聴覚の障害などは、生まれる前にはわかりません。

  • ➤先天異常の頻度 → 生まれつきの病気は赤ちゃん全体の約3〜5%
  • ➤エコー(超音波) → 初期・中期・後期で見つかる異常が違う
  • ➤染色体の検査 → NIPT・コンバインド・クアトロは非確定、絨毛・羊水検査は確定
  • ➤わからない障害 → 発達障害、知的障害の多く、難聴、代謝の病気など

1. 胎児の障害・奇形はいつわかる?週数別の早見表

胎児の障害や奇形がわかる時期は、「どの種類の病気を」「どの検査で」調べるかによって決まります。ひとつの検査ですべてがわかるわけではなく、妊娠の時期ごとに見えるもの・調べられるものが少しずつ違います。まずは全体像を表で確認してください。

🗓️ 妊娠週数別:胎児の障害・奇形がわかる主な検査

妊娠週数の目安 検査 主にわかること 位置づけ
9〜10週以降 NIPT(母体血の検査) 21・18・13トリソミーなどの可能性 非確定検査
11〜14週ごろ 初期超音波(NT計測を含む)・コンバインド検査 無脳症など一部の重い形態異常、染色体の病気の確率 非確定検査
11〜14週 絨毛検査 染色体の本数・構造の変化 確定検査
15週〜 クアトロテスト(母体血清マーカー) 21・18トリソミー、開放性神経管奇形の確率 非確定検査
15〜16週以降 羊水検査 染色体の本数・構造の変化 確定検査
18〜24週ごろ 中期超音波(胎児スクリーニング) 心臓・脳・背骨・顔・手足などの形態異常の多く 形の観察
28週以降 後期超音波 腎臓・尿路、脳など後から現れる変化 形の観察
出生後 新生児マススクリーニング・聴覚検査 生まれつきの代謝の病気・難聴など 生まれてからの検査

※週数は一般的な目安で、施設や検査の方法によって異なります。

表のとおり、妊娠中に「わかる」には2つの意味があります。ひとつは、血液検査などで病気の可能性や確率がわかる段階(非確定検査)です。もうひとつは、赤ちゃん由来の細胞を調べて診断が確定する段階(確定検査)です。超音波検査は体の形を直接見る検査で、見えた所見から病気が疑われることもあれば、形は正常でも病気がある場合もあります。

そのため「何週でわかりますか」という問いには、「どの病気について、どの検査で」という条件をつけて答える必要があります。次の章から、病気の種類ごとに整理していきます。

2. 「胎児の障害」には種類があり、わかる時期が違う

生まれつきの病気(先天異常)は、原因によって大きく「染色体の病気」「体の形の異常(形態異常)」「遺伝子の病気」「環境などの要因によるもの」に分けられます。原因が違えば調べる方法も違い、その結果として「わかる時期」も変わります。先天異常の原因や種類については先天異常の原因・確率・種類で詳しく解説しています。

先天異常はどのくらいの確率で起こる?

生まれつきの病気がある赤ちゃんの割合は、全体の約3〜5%とされています。こども家庭庁の出生前検査の情報ページでは、そのうち染色体の病気は25%程度と説明されています[1]。つまり、生まれつきの病気の多くは染色体以外の原因によるものです。

日本産婦人科医会の外表奇形等統計調査では、2024年に協力施設で生まれた赤ちゃん(妊娠22週以降)93,894人のうち、奇形がみられた赤ちゃんの割合は3.37%でした。多かったのは心室中隔欠損、耳瘻孔(じろうこう:耳の前の小さな穴)、心房中隔欠損、動脈管開存、口唇・口蓋裂、ダウン症候群などです[2]。米国疾病予防管理センター(CDC)も、米国では毎年33人に1人の赤ちゃんが先天異常をもって生まれると示しています[3]。

これは特別な家族にだけ起こる数字ではなく、どの妊娠にも一定の割合で起こる、いわば「ベースラインの頻度」です。一方で、その中には治療の必要がない軽いものから、生まれてすぐに手術が必要なものまで含まれています。

染色体の病気(数的異常・構造異常・微細欠失)

染色体の病気は、染色体の本数や形の変化によって、たくさんの遺伝子の働きのバランスがくずれることで起こります。ヒトの染色体はふつう2本ずつ対になって46本ありますが、ある番号の染色体が3本になる状態をトリソミーと呼びます。染色体の一部が欠けたり重複したりする構造の変化もあり、分類は染色体異常の種類で整理しています。

代表的なトリソミーの出生頻度は、厚生労働省のワーキンググループ資料で次のように示されています[4]。

🧬 代表的なトリソミーの出生頻度

病名 出生頻度 主な特徴
ダウン症候群(21トリソミー) 600〜800人に1人 発達の遅れ、先天性心疾患などの合併症
18トリソミー(エドワーズ症候群) 3,500〜8,500人に1人 成長障害、先天性心疾患など
13トリソミー(パトウ症候群) 5,000〜12,000人に1人 成長障害、重度の発達の遅れ、中枢神経の合併症

※出典:厚生労働省ワーキンググループ資料[4]。

18トリソミーと13トリソミーは、以前は「1歳まで生きる子は1割未満」と説明されることが多い病気でした。カナダ・オンタリオ州の集団データでは、1年生存率は13トリソミーで19.8%、18トリソミーで12.6%と報告されています[5]。18トリソミーの総説では5〜10%とされており[6]、調査の時期や治療方針によって数字が変わる点に注意が必要です。日本でダウン症候群をもって生まれる赤ちゃんは年間およそ2,200人(出生1万あたり約22人)と推計されています[7]。それぞれの病気の詳しい説明は、ダウン症候群、18トリソミー、13トリソミーの各ページをご覧ください。

染色体のごく小さな部分が欠ける「22q11.2欠失症候群」などは、通常の顕微鏡の検査では見えにくく、微小欠失症候群と呼ばれます。症状や重さは病気ごとに異なり、調べるには検査の種類を選ぶ必要があります。

体の形の異常(形態異常)

形態異常は、体のつくりが生まれつき典型的な形と異なる状態で、頭から手足まで体のどの部分にも起こりえます。形態異常は、命や生活に大きく関わる「大奇形」と、見た目の小さな特徴にとどまる「小奇形」に分けて考えます(詳しくは大奇形・小奇形)。代表的なものを部位別に挙げます。

  • 頭部:無脳症、水頭症、小頭症など
  • 顔面:口唇裂・口蓋裂、小眼球症など
  • 背骨:二分脊椎など
  • 心臓:心室中隔欠損、大血管転位など
  • 胸部:胸水、横隔膜ヘルニアなど
  • 腹部:臍帯ヘルニア、腹壁破裂など
  • 手足:多指症、合指症など

形態異常は、染色体の病気の一部として現れることもあれば、形態異常だけが単独で起こることもあります。出生前に形態異常を確認する意味は、生まれた直後に治療が必要な病気について、出産する施設や小児科の準備を整えられる点にあります。

遺伝子(単一遺伝子)の病気

ひとつの遺伝子の変化が原因で起こる病気は「単一遺伝子疾患」と呼ばれ、種類は数千にのぼります。軟骨無形成症のような骨の病気、筋ジストロフィー、先天代謝異常症などが含まれます。受け継がれ方には顕性(優性)遺伝、潜性(劣性)遺伝、X連鎖遺伝などがあり、詳しくは遺伝形式で解説しています。

単一遺伝子疾患の多くは、染色体の本数を調べる通常の出生前検査では見つかりません。超音波で骨の短さなどの所見が出る病気もありますが、所見が出ない病気や、生まれてから症状が出る病気も多くあります。

薬・感染などの環境要因

妊娠初期に胎児の体の主な器官がつくられる時期は「器官形成期」と呼ばれ、この時期は薬や感染、放射線などの影響を受けやすいとされています。臨床的な妊娠週数ではおおむね妊娠4〜11週ごろにあたり、形態異常の原因となりうる要因は催奇形因子(テラトゲン)と呼ばれます。

ただし、妊娠に気づく前に薬を飲んでいたからといって、すぐに赤ちゃんに影響があるとは限りません。どの薬を、いつ、どれだけ使ったかで評価は大きく変わるため、心配な場合は具体的な薬の名前と服用時期をもとに主治医に確認してください。

💡 用語解説:器官形成期

器官形成期とは、臨床的な妊娠週数でおおむね妊娠4〜11週ごろに、心臓・脳・手足などの主な器官の形がつくられる時期のことです。この時期に体の形のもとが決まるため、形態異常の原因となる要因の影響を受けやすいと考えられています。器官ができあがった後は、形そのものより成長や機能への影響が中心になります。

3. エコー(超音波)で胎児の異常がわかる時期

エコー(超音波検査)で胎児の形の異常がわかる時期は、大きく「妊娠11〜14週ごろ」「妊娠18〜24週ごろ」「妊娠後期」の3段階です。赤ちゃんの体は妊娠週数とともに大きくなり、見える部位や見え方も変わっていきます。そのため、早い時期に見つかる異常と、後にならないと見えない異常があります。検査の内容は胎児超音波検査でもまとめています。

妊娠初期(11〜14週):NTと初期超音波でわかること

妊娠11〜14週ごろの超音波では、無脳症のような重い形態異常の多くと、首の後ろのむくみ(NT)などを確認できます。国際産婦人科超音波学会(ISUOG)のガイドラインは、初回の詳しいスキャンを妊娠11週0日〜14週0日に行うことを示し、いくつかの重い形態異常はほぼ全例で見つけられる一方、多くの大きな異常は妊娠後半に現れたり見つからなかったりすると説明しています[8]。

初期超音波の検出力を調べた系統的レビューでは、低リスクの妊婦さん全体で見つかった大きな形態異常の割合は約46%でした[9]。解剖学的なチェック項目を決めて観察した場合に見つかる割合が高くなることも示されています。無脳症や二分脊椎などの神経管閉鎖障害は、この時期から注目される代表的な異常です。

NTの計測は染色体の病気の確率を見積もる材料のひとつで、厚いからといって病気が確定するわけではありません。NTの基準や考え方は胎児の首のむくみ(NT)で詳しく解説しています。

💡 用語解説:NT(胎児後頸部透亮像)

NTとは、妊娠初期の胎児の首の後ろにみられる、液体がたまって黒く映る部分の厚さのことです。NTが厚いと、染色体の病気や心臓の病気などの確率が上がることが知られています。ただしNTは「確率を見積もる材料」であり、NTが厚くても元気に生まれる赤ちゃんは多くいます。正確な計測には決まった条件と技術が必要です。

妊娠中期(18〜24週ごろ):形態異常の多くが見つかる時期

妊娠中期の超音波は、心臓・脳・背骨・顔・腹部・手足などを系統立てて観察する検査で、形態異常の多くはこの時期に見つかります。ISUOGのガイドラインでは、この検査はおおむね妊娠18〜24週に行うことができるとされています。一方で、最良の機器と熟練した検者でも見逃しや後から明らかになる異常があることも明記されています[10]。

心臓の病気である先天性心疾患は、先天異常の中で最も多いグループのひとつです。心臓の部屋を分ける壁の小さな穴などは、超音波では見つけにくいことがあります。

顔の異常も部位によって見え方が違います。口唇裂は見つかることが多い一方、口の中の天井部分だけが割れている口蓋裂単独は、低リスクの妊婦さんの2D超音波ではほとんど見つからないことが系統的レビューで示されています[11]。時期ごとの見え方は口蓋裂はいつわかる?にまとめています。

妊娠後期(28〜30週以降)に初めてわかる異常

中期までの超音波で異常がなくても、妊娠後期になって初めて見つかる異常があります。形は早い時期にできあがっていても、臓器が大きくなったり働き始めたりすることで、変化が目に見えるようになるためです。

英国の集団研究では、妊娠後期の定期的な発育評価の超音波を受けた妊婦さんのおよそ303人に1人で、それまで見つかっていなかった形態異常が新たに見つかりました。内訳は腎臓・尿路の異常が最も多く(その多くは腎盂の拡張で、半数以上は生後に自然に消失)、ほかに脳の異常、卵巣のう胞、骨の病気などがありました[12]。

また、赤ちゃんの成長がゆっくりになる胎児発育不全(FGR)も妊娠後半にわかることが多い所見です。原因は胎盤の働きによるものが多いものの、染色体の病気などが隠れていることもあります。

妊婦健診のエコーと胎児スクリーニング検査の違い

通常の妊婦健診のエコーは、赤ちゃんの成長や心拍、胎盤や羊水の量などを確認することが主な目的で、形態異常を系統立てて探す検査とは目的が異なります。妊婦健診で「順調です」と言われるのは、成長や経過が順調という意味であることが多く、すべての形態異常がないことを確かめたという意味ではありません。

これに対して、胎児スクリーニング(胎児ドックと呼ばれることもあります)は、決められた項目にそって頭から足まで順番に観察する検査です。時間も技術も必要なため、実施するかどうか、どこまで詳しく見るかは施設によって異なります。

エコーでダウン症はわかる?

エコーでダウン症候群を確定することはできません。エコーでわかるのは「ダウン症候群の可能性が少し高くなる所見(ソフトマーカー)」までです。米国産婦人科学会(ACOG)は、ソフトマーカーは多くの場合それ自体は病的ではなく、染色体に異常のない胎児で見つかることが最も多いため、これだけで病気の有無を区別するのは難しいと説明しています[13]。

逆に、エコーで何も指摘されなくても、ダウン症候群がないとは言えません。エコーの所見について詳しくはダウン症はエコーで指摘されない?で解説しています。

💡 用語解説:ソフトマーカー

ソフトマーカーとは、それ自体は病気ではないものの、染色体の病気がある胎児でやや多くみられる超音波の所見のことです(詳しくはソフトマーカー)。心臓の中の小さな明るい点や、腎盂の軽い拡張などがあり、染色体に異常のない赤ちゃんでもよくみられます。見つかった場合は、ほかの所見や検査結果と合わせて評価します。

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4. 染色体の病気を調べる検査と時期

染色体の病気を調べる出生前検査には、可能性を調べる「非確定検査」と、診断を確定する「確定検査」があります。非確定検査は妊婦さんの採血や超音波で行うため流産の心配はありませんが、結果は確率や可能性として示されます。確定検査は赤ちゃん由来の細胞を直接調べるため診断がつきますが、針を刺す処置が必要です。

非確定検査NIPT・コンバインド・クアトロ
▶
陽性・高確率この時点では確定しない
▶
確定検査絨毛検査・羊水検査
▶
診断の確定結果の説明を受ける

NIPT(9〜10週以降):わかること・わからないこと

NIPT(新型出生前診断)は、妊婦さんの血液に含まれる胎盤由来のDNAを調べ、妊娠9〜10週以降に21・18・13トリソミーなどの可能性を調べる検査です。日本医学会の出生前検査認証制度等運営委員会は、NIPTは病気の可能性を調べる検査で、病気の重さや症状はわからないこと、陽性でも実際には病気がない場合(偽陽性)があるため確定的検査が必要になることを説明しています[14]。

ACOGの診療指針では、NIPT(cfDNA検査)の検出率は21トリソミーで99%超、18トリソミーで98%、13トリソミーで99%、偽陽性率は合計0.13%とされています[13]。日本のNIPTコンソーシアムの約3万人のデータでは、陽性と判定された人のうち実際に病気があった割合(陽性的中率)は、21トリソミー96.5%、18トリソミー82.8%、13トリソミー63.6%でした[15]。

一方で、NIPTで調べられるのは主に染色体の本数の変化で、体の形の異常の多く、単一遺伝子疾患、発達障害などはわかりません。検査の詳細はNIPTトップページでご確認ください。

コンバインド検査・クアトロテスト

コンバインド検査は妊娠初期にNTの計測と採血を組み合わせる検査、クアトロテストは妊娠中期に採血だけで行う検査で、どちらも染色体の病気の確率を計算する非確定検査です。ACOGの指針では、21トリソミーの検出率は、初期のコンバインド検査で82〜87%、クアトロテストで81%とされています(偽陽性率5%の条件)。また、クアトロテストはおおむね妊娠15週0日から22週6日に行う検査として示されています[13]。

📊 非確定検査の比較

検査名 時期の目安 対象 方法
NIPT 9〜10週以降 21・18・13トリソミーなど 採血
コンバインド検査 11〜13週ごろ 21トリソミー、18トリソミーなど NT計測+採血
クアトロテスト 15週〜 21・18トリソミー、開放性神経管奇形 採血

※検査の対象項目や実施時期は、施設や検査会社によって異なります。

コンバインド検査はダウン症候群だけでなく、18トリソミーも評価の対象に含む検査です。どちらの検査も結果は「1/○○」のような確率で示され、一定の基準より高い場合に確定検査を検討します。詳しくはコンバインド検査とクアトロテストの各ページで解説しています。

確定検査:絨毛検査と羊水検査

染色体の病気を確定するには、胎盤の組織を採る絨毛検査(妊娠11〜14週)か、羊水を採る羊水検査(妊娠15〜16週以降)が必要です。出生前検査認証制度等運営委員会の説明では、流産のリスクは羊水検査で0.3%、絨毛検査で1%とされ、羊水検査の結果はおおむね2〜3週間(迅速検査なら1週間以内)でわかります[16][17]。

一方、2019年のメタ解析では、全対象をまとめた処置関連流産リスクは羊水検査で0.30%、絨毛検査で0.20%と推計されました。さらに、染色体異常の背景リスクが同程度の群に限定すると、羊水検査0.12%、絨毛検査−0.11%で、いずれも統計学的に有意な上乗せは示されませんでした[18]。英国王立産婦人科医協会(RCOG)のガイドラインも、処置に伴う流産の上乗せは0.5%を下回る可能性が高いとし、絨毛検査は妊娠10週0日より前、羊水検査は15週0日より前には行わないよう示しています[19]。

絨毛検査は胎盤の細胞を調べるため、胎盤と赤ちゃんの染色体が一致しない「胎盤性モザイク」が1%程度あり、疑われる場合は羊水検査で確認します[17]。また、確定検査で調べられるのは主に染色体の変化で、すべての病気がわかるわけではありません。ミネルバクリニックでは、NIPTから確定検査の羊水検査・絨毛検査まで院内で行っています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「陽性」と「診断」は別のものです】

非確定検査の「陽性」は、診断ではありません。陽性的中率は、病気の種類や妊婦さんの年齢などによって変わります。同じ「陽性」という言葉でも、その重みは一律ではないと考えています。

だからこそ、非確定検査を受ける前に「陽性だったら次に何をするか」を知っておくことが大切だと考えています。確定検査の時期には限りがあり、結果を待つ時間も必要です。検査は順番と時間軸で考えるものだと考えています。

非確定検査が陽性でも「障害がある」とは限らない理由

非確定検査で陽性になっても、実際に病気がある割合(陽性的中率)は、その病気がどのくらいの頻度で起こるかによって変わります。ACOGは、陽性的中率は検査を受ける集団の有病率に左右され、有病率が低いほど陽性結果が偽陽性である可能性が高くなると説明しています[13]。

たとえば、同じNIPTでも、21トリソミーより頻度の低い13トリソミーでは陽性的中率が低くなります。また、妊婦さんの年齢が若いほど染色体の病気の頻度は低いため、同じ陽性でも実際に病気がある割合は下がります。数字の読み方はNIPTの精度・確率で詳しく解説しています。

💡 用語解説:陽性的中率

陽性的中率とは、検査で陽性と判定された人のうち、実際にその病気がある人の割合のことです。検査そのものの精度(感度・特異度)が同じでも、病気の頻度が低い集団では偽陽性の割合が相対的に増えるため、陽性的中率は下がります。そのため、陽性的中率は病気の種類や年齢ごとに分けて考えます。

5. 生まれる前にはわからない障害もある

出生前検査には、妊娠中から確実にわかる病気、ある程度わかる病気、まったくわからない病気があります。出生前検査認証制度等運営委員会も、妊娠中に病気がわかっていた赤ちゃんの割合はよくわかっていないと説明しています[20]。ここでは、出生前にはわからない、あるいはわかりにくい代表的な障害を整理します。

発達障害(自閉スペクトラム症・ADHD)は妊娠中にわかる?

自閉スペクトラム症(ASD)やADHDなどの発達障害を、妊娠中の検査で診断することはできません。CDCは、ASDを診断するための血液検査のような医学的検査はなく、医師は子どもの発達の経過と行動を見て診断すること、2歳ごろには経験のある専門家による診断が信頼できるものになりうることを示しています[21]。

発達障害は、生まれた後の行動や発達の様子から初めてわかるもので、NIPTや羊水検査、エコーで調べることはできません。ただし、染色体の病気の症状のひとつとして発達の遅れが現れる場合は、その染色体の病気を出生前に調べられることがあります。発達障害と染色体の関係は神経発達障害と知的障害で、生まれた後の見分け方は自閉症の赤ちゃんの特徴で解説しています。

知的障害は妊娠中にわかる?

知的障害は、原因が染色体の病気であれば出生前にその可能性を調べられることがありますが、多くの場合は妊娠中にはわかりません。知的障害の原因はさまざまで、染色体の本数の変化のほか、微細な欠失・重複、単一遺伝子の変化、原因がわからないものまで含まれます。

原因がわからない発達の遅れや知的障害のある人を染色体マイクロアレイで調べると、15〜20%で原因が見つかるとされています[22]。逆にいえば、多くは染色体の検査だけでは原因がわからないということです。知的障害がいつ、どのようにわかるかは知的障害児が生まれる確率といつわかるかで詳しく解説しています。

生まれてからわかる障害(聴覚・先天代謝異常など)

耳の聞こえ(先天性難聴)や、体の中の代謝の働きに関わる病気は、生まれた後の検査で見つかるのが一般的です。日本では、すべての新生児を対象に、生まれつきの代謝の病気など20疾患を調べる新生児マススクリーニングが行われています[23]。詳しくは新生児スクリーニングをご覧ください。

先天性難聴は1,000人に1人程度の頻度で生まれるとされ、新生児聴覚検査で早く見つけて療育につなげる体制づくりが進められています[24]。これらの病気は赤ちゃんの体の形には現れないため、妊娠中のエコーでは見つけられません。

家族に遺伝の病気がある場合は、通常の検査では調べられないことがある

家族に遺伝性の病気がある場合、その病気は通常のNIPTや羊水検査の染色体分析では調べられないことがあります。単一遺伝子疾患を出生前に調べるには、家族の遺伝子の変化があらかじめわかっていることが前提になるのが一般的で、妊娠してから準備を始めると時期に間に合わないこともあります。

家系に遺伝性の病気がある方は、妊娠前、または妊娠のできるだけ早い時期に、どの検査で何を調べられるかを確認してください。詳しくは単一遺伝子疾患の出生前診断で解説しています。

6. 赤ちゃんの障害が心配なときにできること

赤ちゃんの障害が心配なときは、まず「何を知りたいのか」と「どの検査でそれがわかるのか」を分けて考えると、選べる検査がはっきりします。すべてを調べられる検査はないため、検査で何がわかり、何がわからないかを知ったうえで選ぶことが前提になります。

検査を受ける前に考えておきたいこと

出生前検査を受ける前には、次の点を整理しておくと、結果が出たときに慌てずにすみます。

  • 調べたいのは、染色体の病気か、体の形の異常か、特定の遺伝の病気か
  • 非確定検査で陽性だった場合、確定検査を受けるかどうか
  • 確定検査が受けられる時期と、結果が出るまでの期間
  • 結果がわかった後、どのような準備や選択肢があるか

出生前検査は、結果によっては重い判断が必要になることがある検査です。検査を受けるかどうか、どの検査を選ぶかは、ご夫婦で話し合って決めるものであり、正解はひとつではありません。結果の意味を正しく理解するために、遺伝カウンセリングで臨床遺伝専門医から説明を受けることができます。

⚠️ 知っておきたいこと

出生前検査で「異常なし」という結果でも、生まれつきの病気がないことを保証するものではありません。検査で調べた範囲について、異常が見つからなかったという意味です。反対に、非確定検査の「陽性」も診断ではありません。

ミネルバクリニックでできること

ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングのもとで、NIPTから確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で行っています。非確定検査で陽性となった場合も、確定検査までを同じ施設で進められます。

家族に遺伝性の病気がある場合や、以前の妊娠で染色体の病気が見つかった場合などは、どの検査で何を調べられるかを事前に確認したうえで、検査の方法を選びます。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「わからないこと」を知ることも大切です】

出生前検査の説明では、「何がわかるか」に目が向きがちです。けれども、検査を選ぶうえで同じくらい大切なのは「何がわからないか」を知ることだと考えています。

生まれつきの病気は約3〜5%の赤ちゃんにみられ、その多くは染色体以外の原因によるものです。検査で調べられる範囲を正しく理解したうえで、ご自身に合った検査を選ぶことが大切だと考えています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 奇形児は妊娠何週目でわかりますか?

体の形の異常(形態異常)は、妊娠11〜14週ごろの初期超音波で一部が、妊娠18〜24週ごろの中期超音波で多くが見つかります。妊娠後期や生まれてから初めてわかるものもあります。染色体の病気の可能性はNIPTで妊娠9〜10週以降に調べられ、確定には絨毛検査や羊水検査が必要です。

Q2. エコーで「異常なし」と言われれば安心してよいですか?

エコーで異常が見つからなかったことは大切な情報ですが、すべての病気がないことを意味するわけではありません。最良の条件でも見逃しや後から現れる異常があり、染色体の病気は形に現れないこともあります。

Q3. 発達障害は出生前診断でわかりますか?

自閉スペクトラム症やADHDなどの発達障害を、妊娠中の検査で診断することはできません。発達障害は、生まれた後の行動や発達の経過から診断されます。

Q4. 知的障害は妊娠中にわかりますか?

原因が染色体の病気であれば、出生前にその可能性を調べられることがあります。ただし知的障害の原因はさまざまで、多くは妊娠中の検査ではわかりません。

Q5. NIPTが陰性なら障害はないと考えてよいですか?

NIPTの陰性は、調べた染色体の病気の可能性が低いという意味です。体の形の異常の多く、単一遺伝子疾患、発達障害などはNIPTでは調べられないため、それらがないことを示すものではありません。

Q6. 奇形が起こりやすいのは妊娠のどの時期ですか?

体の主な器官がつくられる妊娠初期の「器官形成期」(臨床的な妊娠週数でおおむね妊娠4〜11週ごろ)は、薬や感染などの影響を受けやすい時期とされています。ただし、この時期に薬を使ったからといって必ず影響があるわけではなく、薬の種類・時期・量によって評価が変わります。

まとめ

胎児の障害や奇形がわかる時期は、病気の種類と検査によって違います。染色体の病気はNIPTで妊娠9〜10週以降に可能性を調べられ、確定には絨毛検査(妊娠11〜14週)や羊水検査(妊娠15〜16週以降)が必要です[14][16][17]。体の形の異常は、妊娠11〜14週ごろと18〜24週ごろの超音波で多くが見つかりますが、妊娠後期や生まれてからわかるものもあります[8][10][12]。

生まれつきの病気は赤ちゃんの約3〜5%にみられ、その多くは染色体以外の原因によるものです[1]。発達障害や知的障害の多く、難聴や代謝の病気などは、生まれる前にはわかりません。検査で何がわかり、何がわからないかを知ったうえで、検査を選んでください。

🏥 NIPT・出生前診断をご検討の方へ

ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングのもとで、NIPTから確定検査の羊水検査・絨毛検査まで院内で行っています。検査でわかること・わからないことを確認したうえで、検査の方法をお選びいただけます。

参考文献

  • [1] 出生前検査でわかること. こども家庭庁 出生前検査認証制度等啓発事業. [こども家庭庁]
  • [2] 2024年 外表奇形等統計調査結果. 日本産婦人科医会(横浜市立大学先天異常モニタリングセンター). [ICBDSR日本支部]
  • [3] Data and Statistics on Birth Defects. Centers for Disease Control and Prevention. [CDC]
  • [4] NIPTの対象とされるトリソミーについて. 第2回 母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)の調査等に関するワーキンググループ資料. 厚生労働省, 2019. [厚生労働省]
  • [5] Survival and Surgical Interventions for Children With Trisomy 13 and 18. JAMA. 2016;316(4):420-428. [DOI]
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  • [12] How often do we incidentally find a fetal abnormality at the routine third-trimester growth scan? A population-based study. Am J Obstet Gynecol. 2020;223:919.e1-919.e13. [DOI]
  • [13] Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities: ACOG Practice Bulletin, Number 226. Obstet Gynecol. 2020;136(4):e48-e69. [PubMed 32804883]
  • [14] NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査). 一緒に考えよう、お腹の赤ちゃんの検査. 出生前検査認証制度等運営委員会. [出生前検査認証制度等運営委員会]
  • [15] Current status of non-invasive prenatal testing in Japan. J Obstet Gynaecol Res. 2017. [DOI]
  • [16] 羊水検査. 一緒に考えよう、お腹の赤ちゃんの検査. 出生前検査認証制度等運営委員会. [出生前検査認証制度等運営委員会]
  • [17] 絨毛検査. 一緒に考えよう、お腹の赤ちゃんの検査. 出生前検査認証制度等運営委員会. [出生前検査認証制度等運営委員会]
  • [18] Risk of miscarriage following amniocentesis or chorionic villus sampling: systematic review of literature and updated meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2019;54(4):442-451. [DOI]
  • [19] Amniocentesis and chorionic villus sampling: Green-top Guideline No. 8. Royal College of Obstetricians and Gynaecologists. BJOG. 2022;129:e1-e15. [DOI]
  • [20] 赤ちゃんの病気について. 一緒に考えよう、お腹の赤ちゃんの検査. 出生前検査認証制度等運営委員会. [出生前検査認証制度等運営委員会]
  • [21] Screening for Autism Spectrum Disorder. Centers for Disease Control and Prevention. [CDC]
  • [22] Consensus Statement: Chromosomal Microarray Is a First-Tier Clinical Diagnostic Test for Individuals with Developmental Disabilities or Congenital Anomalies. Am J Hum Genet. 2010;86:749-764. [PubMed 20466091]
  • [23] 新生児マススクリーニングについて. こども家庭審議会 成育医療等分科会(第2回)資料. こども家庭庁, 2023. [こども家庭庁]
  • [24] すべての新生児が聴覚スクリーニング検査を受けて確実に早期療育につながる体制の実現に向けて. 日本産婦人科医会 母子保健部会, 2019. [厚生労働省掲載]

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プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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