目次
妊婦の体重増加の目安は、妊娠前のBMIで決まります。普通体重(BMI18.5以上25未満)の方なら、妊娠全体で10〜13kgが目安です。日本産科婦人科学会が2021年に示したこの目安は、以前の基準より幅が広くなり、学会自身が「個人差を考慮したゆるやかな指導を」と添えています[1]。体重が目安どおりに増えないこと自体は珍しくありませんが、急に減る・食べられない状態が続くときは受診の対象です。この記事では、目安の数字、時期ごとの増え方、増えない・減る原因、赤ちゃんへの影響や発達障害との関係、増えすぎのリスクまでを、研究データにもとづいて解説します。
Q. 妊娠中の体重は何キロ増えればよいですか?
A. 妊娠前のBMIが18.5未満なら12〜15kg、18.5以上25未満なら10〜13kg、25以上30未満なら7〜10kg、30以上なら個別に対応(上限5kgまでが目安)です。増え方には個人差があり、学会は目安を厳しく守らせる根拠は十分でないとしています。増えないことより、短期間で大きく減ることや食べられない状態が続くことのほうが注意すべきサインです。
- ➤いちばん増える時期 → 妊娠中期から後期。初期はつわりで減る人もいます
- ➤増えない・減る原因 → つわり・妊娠悪阻、食欲低下、甲状腺の病気など
- ➤赤ちゃんへの影響 → 目安より少ないと低出生体重やSGAとの関連あり。ただし中期以降に体重が戻れば影響は小さい可能性
- ➤発達障害との関係 → 関連を示す研究はあるが、因果関係はわかっていません
- ➤増えすぎ → 巨大児・帝王切開との関連。減量ではなく食事の質と活動量を見直します
1. 妊婦の体重増加の目安は?妊娠前のBMIで決まります
妊娠中にどれだけ体重が増えるとよいかは、妊娠前の体格(BMI)によって変わります。もともとやせている方は多めに、ふっくらしている方は少なめに増えるのが目安です。お母さんの体に蓄えられる脂肪や血液の量が、妊娠前の体格によって違うためです。
以前は「妊娠中は7〜12kg」「普通体型なら10〜13kg」といった数字を耳にすることが多かったと思います。現在の目安は2021年に改められたもので、同じ年に国が改定した「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」にも同じ表が載っています[2]。まず自分のBMIを確かめ、そこから目安を読み取ってください。
妊娠前のBMIの求め方
BMI(ビーエムアイ)は「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」で計算します。使うのは、妊娠がわかる前、ふだんの体重です。妊娠がわかってから測った体重は、つわりで減っていたり、すでに増えはじめていたりすることがあるため、目安を決める基準には向きません。
たとえば身長160cm・体重52kgの方なら、52÷1.6÷1.6で、BMIは約20.3です。これは18.5以上25未満の「普通体重」にあたり、体重増加の目安は10〜13kgになります。身長155cm・体重43kgの方ならBMIは約17.9で「低体重」、目安は12〜15kgです。
妊婦健診の初回に、妊娠前の身長と体重を聞かれるのはこのためです。母子健康手帳にも記入欄があります。妊娠前の体重がはっきりしない場合は、健診を受けている産婦人科で、どの値を基準にするかを確認しておくと、その後の体重の見方がぶれません。
BMI別の体重増加の目安(日本産科婦人科学会2021年)
日本産科婦人科学会は2021年、妊娠前のBMIを4つに分け、妊娠全体での体重増加の目安を下の表のように示しました。2021年6月の周知文書では、理事長と周産期委員会委員長の名前で、この目安が会員に伝えられています[1]。
📊 妊娠前のBMI別・妊娠中の体重増加の目安
| 妊娠前の体格 | BMI(kg/m²) | 体重増加の目安 |
|---|---|---|
| 低体重 | 18.5未満 | 12〜15kg |
| 普通体重 | 18.5以上25未満 | 10〜13kg |
| 肥満(1度) | 25以上30未満 | 7〜10kg |
| 肥満(2度以上) | 30以上 | 個別対応(上限5kgまでが目安) |
※日本産科婦人科学会「妊娠中の体重増加の目安について」[1]、厚生労働省「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」[2]による。
表で押さえておきたいのは、目安が「幅」で示されている点です。普通体重の方なら、10kgでも13kgでも目安の範囲内です。また、学会はこの表に「増加量を厳格に指導する根拠は必ずしも十分ではないと認識し、個人差を考慮したゆるやかな指導を心がける」という注記を付けています[1]。表の数字は合否の線ではなく、自分の増え方を考えるときの物差しと受け止めてください。
2021年に目安が変わった理由
以前の目安は、妊娠で自然に増える体重より少なく設定されていた可能性があり、見直されました。日本では1997年に決められた目安が長く使われてきましたが、学会は2019年にこれを取り下げています。その理由として、推奨値が妊娠による生理的な体重増加を下回っていた可能性と、体重を抑えることで妊娠高血圧症候群を防げるという新しいエビデンスが乏しいことが挙げられています[1]。
背景には、日本の女性にやせの割合が高く、生まれる赤ちゃんの体重が小さい傾向が続いてきたことがあります。体重を厳しく抑える指導が、お母さんと赤ちゃんにとって必ずしもよい結果につながらないのではないか、という見方が強まりました。
目安が変わったことで、以前なら「増えすぎ」と言われた増え方が、いまは範囲内ということもあります。上のお子さんを妊娠したときに厳しく体重を指導された経験がある方は、今回はその数字をそのまま当てはめず、現在の目安で考え直してください。
増えた体重の内訳(体重が増えていないのにお腹が出る理由)
妊娠中に増える体重は、赤ちゃんの重さだけではありません。胎盤、羊水、大きくなる子宮と乳房、増える血液や体の水分、出産や授乳に備えて蓄えられる脂肪が合わさったものです。赤ちゃん自身の体重は、生まれるときでも3kg前後です。
そのため、体重計の数字とお腹の大きさは必ずしも一致しません。子宮は妊娠が進むにつれて大きくなり、中期以降はお腹のふくらみがはっきりしてきます。一方で、つわりで脂肪が減っていたり、むくみが少なかったりすると、体重はあまり増えていないのにお腹だけが目立つことがあります。
逆に、体重は増えているのにお腹があまり出ていないように見えることもあります。お腹の出方は、体格、腹筋、初めての妊娠かどうかによっても変わります。赤ちゃんが順調に育っているかどうかは、お腹の見た目ではなく、妊婦健診の超音波検査で確かめます。
2. 時期別の増え方|いちばん増えるのは中期から後期
妊娠中の体重は一定のペースで増えるわけではなく、初期はほとんど増えないか減ることもあり、中期から後期にかけて増え方が大きくなります。赤ちゃんが大きくなり、羊水や血液の量が増えるのが中期以降だからです。日本の妊婦さん約10万人の母子健康手帳のデータから、週数ごとの体重増加曲線もつくられています[3]。
妊娠初期:体重が減る人と太る人(つわり・食べづわり)
妊娠初期(おおむね13週まで)は、体重がほとんど変わらない人、減る人、増える人に分かれます。体重が減る主な理由はつわりです。吐き気や嘔吐で食べられる量が減り、数kg落ちることもあります。「食べているのに減る」と感じる場合でも、実際には食事量が落ちていたり、吐いた分だけ摂取が少なくなっていたりすることが多いものです。
一方、空腹になると気持ちが悪くなる「食べづわり」では、何か口に入れていないと落ち着かないため、初期から体重が増えることがあります。妊娠超初期に急に太ったように感じるのは、ホルモンの影響で体に水分がたまりやすくなったり、便秘でお腹が張ったりすることも関係します。
初期に1〜2kg程度増えても減っても、その後の中期・後期で調整がつくことがほとんどです。この時期は赤ちゃん自身がまだとても小さく、お母さんの体重の数字にこだわる必要はあまりありません。ただし、食事も水分もとれない、体重がどんどん減るといった状態は、第7章で説明する受診の目安にあたります。
妊娠中期:30週までの増え方の目安
つわりが落ち着く妊娠中期(14〜27週)は、食欲が戻り、体重が増えはじめる時期です。赤ちゃんの成長とともに羊水や血液の量も増えるため、体重は週を追うごとに増えていきます。
「1週間に何グラム」という形の目安を探す方が多いのですが、日本の学会は週ごとの増加量を公式には示していません。増え方には個人差が大きく、週単位の数字に合わせようとすると、かえって食事が不規則になりかねません。
代わりに参考になるのが、国立成育医療研究センターなどが、環境省の「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータから作成した妊娠週数別の体重増加曲線です[3]。この曲線では、学会の目安を満たすには各週数でどのくらい増えているのが望ましいかが、妊娠前の体格ごとに示されています。中期は「30週までにこのくらい」という見方で、ゆるやかに増えているかを確かめるとよいでしょう。
妊娠後期から臨月:増え方と、後期に体重が減るとき
妊娠後期(28週以降)は、赤ちゃんの体重がもっとも大きく増える時期で、お母さんの体重も増えやすくなります。体内の水分も増え、むくみが出やすくなるため、短期間で体重がはね上がることもあります。
一方で、後期に体重が増えない、あるいは減ることもあります。大きくなった子宮に胃が押し上げられ、一度にたくさん食べられなくなるためです。中期に落ち着いていた吐き気がぶり返す人もいます。臨月に入ると、むくみが引いたり、お腹が下がって食べやすくなったりして、体重の動きが変わることもあります。
後期の体重が1〜2週間ほど横ばいになる程度なら、多くは心配いりません。気をつけたいのは、急激な増加(むくみや血圧の変化を伴うことがあります)と、はっきりした減少が続く場合です。どちらも健診で相談してください。赤ちゃんの発育は、お母さんの体重とは別に、超音波で推定した体重で確かめます。
妊娠30週時点の目安表(成育医療研究センターの体重増加曲線)
日本の妊婦さん約9万7千人のデータから、学会の目安を満たすには妊娠30週でどれだけ増えているのが望ましいかが、体格ごとに算出されています。国立成育医療研究センターの発表によると、その値は下の表のとおりです[4]。
📈 妊娠30週時点の体重増加の目安(妊娠前のBMI別)
| 妊娠前のBMI | 30週での体重増加 | 最終的な目安 |
|---|---|---|
| 18.5未満 | 8.4〜11.1kg | 12〜15kg |
| 18.5以上25未満 | 6.4〜9.1kg | 10〜13kg |
| 25以上30未満 | 3.8〜6.5kg | 7〜10kg |
| 30以上 | 1.9kg未満 | 個別対応(上限5kgまで) |
※30週の値は国立成育医療研究センターの発表[4]、曲線の原著はJournal of Epidemiology掲載論文[3]による。
たとえば普通体重の方が30週で7kg増えていれば、目安の範囲に入っています。30週でまだ5kgでも、残りの10週でゆるやかに増えれば最終的な目安に届く可能性はあります。表は「今の時点で大きく外れていないか」を確かめるためのもので、1kgの差で一喜一憂するためのものではありません。
🩺 院長コラム【体重の数字は「幅」で見る】
2021年の目安の改定で大事なのは、数字そのものよりも、学会が「ゆるやかな指導を」と明記した点だと考えています。以前は体重を少なく抑えることが重視されがちでしたが、根拠を見直した結果、方向が変わりました。
体重は、赤ちゃん・胎盤・羊水・血液・脂肪などを合わせた数字です。1週間ごとの増減に振り回されるより、妊娠前の体格に応じた幅の中に収まっているか、急な変化がないかを見るほうが、医学的に意味のある見方だと考えています。
3. 妊娠中に体重が増えない・減る原因
妊娠中に体重が増えない・減る原因でもっとも多いのは、つわりによる食事量の低下です。ほかに、もともとの体質や活動量、中期・後期の食欲低下、まれに甲状腺などの病気が隠れていることがあります。原因によって対応が変わるため、時期と症状をあわせて考えます。
つわり・妊娠悪阻
つわりが重くなり、体重が大きく減ったり脱水になったりした状態を「妊娠悪阻(にんしんおそ)」といいます。米国の医学事典メルクマニュアルは、通常のつわりと区別する特徴として、妊娠前の体重から5%を超える体重減少、脱水、ケトーシス(体が脂肪を分解してエネルギーを得ている状態)、電解質の異常を挙げています[5]。体重50kgの方なら、2.5kgを超えて減った状態が一つの目安です。
💡 用語解説:ケトーシス(ケトン体)
食事から十分なエネルギーがとれないと、体は蓄えていた脂肪を分解してエネルギーにします。そのときにできる物質がケトン体で、尿に出てくると「尿ケトン陽性」と表されます。つわりで食べられない状態が続いているかどうかを確かめる手がかりの一つとして、妊婦健診や受診時に尿検査で調べます。
妊娠悪阻では、軽い一過性の甲状腺機能亢進(甲状腺ホルモンが多めになる状態)がみられることがあります。また、重症の状態が16〜18週を超えて続くと、ビタミンB1不足によるウェルニッケ脳症などの重い合併症が起こりうるとされています[5]。点滴で水分や栄養を補う治療があるので、食べられない状態を我慢し続けないでください。
食べているのに減るのはなぜ?
「ちゃんと食べているのに体重が減る」という場合、多くは本人が思う以上に食事量や食事の中身が変わっています。つわりの時期は、食べられるものが果物やさっぱりしたものに偏りがちです。量は食べていても、エネルギーとして少ないことがあります。
また、妊娠前にしっかり運動をしていた方、立ち仕事や通勤で体をよく動かしている方は、消費するエネルギーが多いぶん体重が増えにくくなります。もともと食が細く、体重が増えにくい体質の方もいます。こうした場合、体重の増え方がゆっくりでも、赤ちゃんの発育が健診で順調であれば、過度に心配しなくてよいことがほとんどです。
一方、食事量が変わらないのに体重が減り続ける、動悸や汗が増えた、手が震える、といった症状を伴う場合は、次に述べる病気が隠れていないかを確かめる必要があります。
中期・後期の食欲低下
妊娠中期から後期にかけて体重が増えなくなる理由として多いのは、大きくなった子宮に胃が圧迫されることです。一度に食べられる量が減り、少し食べただけでお腹がいっぱいになったり、胸やけがしたりします。
中期につわりが落ち着いたあと、再び吐き気が出る人もいます。便秘や睡眠不足、仕事や家事の疲れで食欲が落ちることもあります。後期に「食べられなくて痩せた」と感じる場合、多くはこうした体の変化によるものです。
この時期の食欲低下には、1回の量を減らして回数を増やす食べ方が合っています(第7章で説明します)。ただし、吐き気が強く水分もとれない、急に体重が減った、お腹の張りや痛みを伴う、といった場合は、健診の日を待たずに受診してください。
病気が隠れている場合
頻度は高くありませんが、妊娠中に体重が減る原因として、甲状腺の病気などが隠れていることがあります。代表的なのは、甲状腺ホルモンが過剰になるバセドウ病です。食べているのに体重が減る、脈が速い、汗をかきやすい、手が震える、といった症状が特徴で、つわりや妊娠による変化と見分けにくいことがあります。
前に述べたとおり、妊娠悪阻でも一過性に甲状腺ホルモンが高めになることがあります[5]。どちらなのかは血液検査で調べます。甲状腺の病気は赤ちゃんの発育や妊娠経過に関わることがあるため、症状があれば早めに相談してください。詳しくは妊娠と甲状腺疾患の関係で解説しています。
ほかにも、消化器の病気、感染症、強い気分の落ち込みなどで食事がとれなくなることがあります。体重の減少に加えて、ほかの症状があるときは、つわりのせいと決めつけず、健診を受けている産婦人科で相談してください。
4. 体重が増えないと赤ちゃんにどう影響する?
妊娠中の体重増加が目安より少ないと、赤ちゃんが小さく生まれる、早く生まれるといったことが起こりやすくなると報告されています。ただしこれは多くの妊婦さんを集めたときの傾向で、体重が増えにくい方の赤ちゃんが必ず小さく生まれるわけではありません。日本の研究では、つわりで一時的に痩せても、その後に体重が戻れば影響は小さい可能性も示されています。
低出生体重児・SGA・早産のリスク
妊娠中の体重増加が米国の推奨(IOM)を下回った人は、範囲内の人に比べて、SGAや早産が多かったとする大規模な解析があります。23の研究、約131万人を統合した2017年のメタ解析では、推奨より増加が少なかった人(全体の23%)で、SGAのオッズ比が1.53、早産のオッズ比が1.70でした[6]。
💡 用語解説:SGA・低出生体重児・早産
SGA(エスジーエー、small for gestational age)は、生まれた週数に比べて体重や身長が小さい赤ちゃんのことです。低出生体重児は、週数に関係なく出生体重が2,500g未満の赤ちゃんを指します。早産は妊娠22週から37週未満での出産のことです。どれも「小さい」「早い」という点では似ていますが、別々の基準で定義されています。
オッズ比1.53とは、SGAの起こりやすさが範囲内の人の約1.5倍だったという意味です。一方で、これは集団で比べた数字であり、個人の確率をそのまま表すものではありません。体重増加が少なかった人の多くは、SGAでも早産でもない赤ちゃんを出産しています。早産の定義や原因については早産とはいつからのことかで解説しています。
つわりで痩せても、中期以降に体重が戻れば影響は小さい可能性
日本のエコチル調査では、つわりや妊娠悪阻そのものより、その後に体重が取り戻せたかどうかが、赤ちゃんの発育に関わっていた可能性が示されています。正期産の単胎妊娠8,631人を調べた研究では、妊娠悪阻(全体の1.6%)とSGAの間に統計的に意味のある関連はみられませんでした(調整リスク比0.81)[7]。
約9万1千人を対象にした別の研究では、妊娠初期に体重が5%以上減った人の赤ちゃんは、中期の体重増加を考えずに比べると出生体重が66g小さく、SGAも多くなっていました(オッズ比1.29)。ところが中期の体重増加をそろえて比べると、逆に出生体重は150g大きく、SGAは少なくなっていました(オッズ比0.39)[8]。
研究者たちは、妊娠悪阻でみられる発育の遅れは、悪阻そのものではなく「後から体重が追いつかないこと」によるのではないかと考察しています[8]。初期に痩せたことを必要以上に心配するより、つわりが落ち着いたあとに少しずつ食事を戻していくことのほうが大切です。観察研究なので、因果関係まで確定したわけではない点には注意が必要です。
お母さんの体重と赤ちゃんの発育は同じではない
お母さんの体重が増えていないことと、赤ちゃんが小さいことは、同じ意味ではありません。赤ちゃんの発育は、妊婦健診の超音波検査で頭の大きさ、お腹まわり、太ももの骨の長さを測り、推定体重を計算して確かめます。
推定体重は、週数ごとの標準的な範囲を示した胎児発育曲線に当てはめて評価します。お母さんの体重がほとんど増えていなくても、赤ちゃんの推定体重が曲線の範囲内で順調に伸びていれば、発育に問題があるとは考えません。反対に、お母さんの体重が目安どおりに増えていても、赤ちゃんの発育が遅れることもあります。
推定体重が週数に比べて明らかに小さい場合は、胎児発育不全(FGR)として原因を調べることになります。原因はお母さんの栄養だけでなく、胎盤の働き、感染症、赤ちゃん自身の染色体や遺伝子の変化などさまざまです(第8章で説明します)。
DOHaD:将来の生活習慣病との関係
お腹の中や生まれて間もない時期の環境が、その子の成人後の病気のかかりやすさに関わるという考え方を、DOHaD(ドーハッド)といいます。Developmental Origins of Health and Disease の頭文字で、日本語では「健康と病気の発生起源説」などと訳されます。
この考え方は、生まれたときの体重が小さかった人に、成人後の心臓病や2型糖尿病が多いという疫学研究から始まりました。その後、胎児期の栄養環境が、代謝や体の調節の仕組みの設定に影響すると考えられるようになり、医学誌の総説でも整理されています[9]。遺伝子の配列そのものではなく、遺伝子の働き方の調節(エピジェネティクス)が関わっている可能性も研究されています。
ただし、DOHaDは集団で見た傾向を説明する考え方で、「体重が増えなかったからこの子は将来病気になる」と言えるものではありません。成長後の食生活や運動など、生まれてからの環境も大きく関わります。詳しくはDOHaD(胎児プログラミング)の解説をご覧ください。
5. 体重が増えないと発達障害になる?
妊娠中の体重増加が少ないことと、子どもの発達障害(神経発達症)との関連を示した研究はありますが、結果は一貫しておらず、因果関係はわかっていません。体重が増えなかったことが原因で発達障害になる、とは言えない段階です。研究の中身と限界を分けて見ていきます。
研究で示されていること
スウェーデンの大規模な研究で、妊娠中の体重増加が少なすぎる場合と多すぎる場合の両方で、子どもの自閉スペクトラム症(ASD)がわずかに多いという結果が出ています。妊娠前が普通体重の人に限ると、増加が不十分な場合のオッズ比は1.22、過剰な場合は1.23でした[10]。
同じスウェーデンの約5万8千人の子どもを追った2023年の研究では、体重の増え方の「時期」に注目しています。中期の体重増加がゆっくり(週0.25kg)だった場合、中央値(週0.57kg)に比べて神経発達症全体が約9%多く、後期の増加が急(週1kg)だった場合は、中央値(週0.51kg)に比べて神経発達症全体が約28%多いという結果でした[11]。スウェーデン全国の子どもを対象にした別の研究でも、体重増加の不足と子どもの知的発達症との関連が報告されています[12]。
これらの数字は、関連の大きさとしては小さいものです。オッズ比1.22は、ASDの起こりやすさが約1.2倍だったという意味で、ASDの子どもの多くは体重増加と関係なく生まれています。
観察研究では因果関係まではわからない
これらはすべて観察研究で、体重増加が発達障害を引き起こしたのか、別の要因が両方に関わっているのかは区別できません。たとえば、お母さんの体質、持病、生活環境、家族の遺伝的な背景などが、体重の増え方と子どもの発達の両方に影響している可能性があります。
こうした影響を減らすために、同じお母さんから生まれたきょうだいどうしで比べる方法があります。前述の研究でも、体重増加が異なるきょうだいを比べたところ、増加不十分のオッズ比は1.12で、統計的に意味のある差ではなくなりました(95%信頼区間0.68〜1.84)[10]。研究者は体重増加と自閉スペクトラム症の関連は完全には否定されないと考察していますが、確かな結論は出ていません。
2023年の研究は、きょうだい比較を行っていないことを限界として挙げています[11]。「妊娠中に体重が増えなかったから、この子は発達障害になる(なった)」と考える根拠はありません。
発達障害の要因として大きいのは遺伝的要因
発達障害の起こりやすさには、遺伝的な要因が大きく関わっていることがわかっています。スウェーデンの200万組以上のきょうだいを分析した研究では、自閉スペクトラム症の遺伝率は約83%と推定されました[13]。遺伝率は「集団の中での違いのうち、遺伝で説明される割合」を表す数字です。
💡 用語解説:遺伝率
遺伝率とは、ある集団の中で見られる特徴の違いが、どのくらい遺伝的な違いで説明できるかを示す割合です。「その人が遺伝で発症する確率」ではありません。遺伝率83%は、自閉スペクトラム症になるかどうかの個人差の多くが遺伝的な要因と関係している、という集団レベルの意味で、残りは一人ひとり異なる環境の要因と考えられています。
ここでいう遺伝的な要因は、親から受け継いだものに限りません。精子や卵子ができる過程で新しく生じた変化(新生突然変異)や、染色体の一部が欠けたり重複したりする変化も含まれます。発達障害と染色体・遺伝子の関係は神経発達障害と知的障害で、妊娠中にわかるかどうかは発達障害は妊娠中にわかるのかで解説しています。
🩺 院長コラム【「関連がある」と「原因である」は別の話】
体重増加と発達障害の研究は、数字だけが切り取られて広まりやすいテーマです。オッズ比1.2という数字は、集団で比べたときのわずかな差であり、きょうだいで比べると差がはっきりしなくなることもあります。臨床遺伝専門医として文献を読むと、この分野は「関連は指摘されているが、原因とまでは言えない」段階だと考えています。
発達障害の起こりやすさには遺伝的な要因が大きく関わっています。妊娠中の体重増加が少なかったことだけを、発達障害の原因とみなすことはできません。
6. 体重が増えすぎたときのリスクと「増やさない方法」
体重増加が目安を大きく上回ると、赤ちゃんが大きくなりすぎる、帝王切開が増えるといったことと関連するとされています。ただし対策は「減量」ではありません。妊娠中のダイエットは赤ちゃんに必要な栄養まで減らしてしまうため、勧められません。食事の中身と体の動かし方を見直して、増え方をゆるやかにすることが基本です。
妊娠糖尿病・妊娠高血圧症候群・巨大児・帝王切開
第4章で紹介したメタ解析では、推奨を上回って体重が増えた人(全体の47%)で、LGA(週数に比べて大きい赤ちゃん)のオッズ比が1.85、巨大児が1.95、帝王切開が1.30でした[6]。赤ちゃんが大きくなりすぎると、分娩に時間がかかったり、帝王切開が必要になったりしやすくなります。
妊娠中の体重は、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群とも一緒に語られることが多い項目です。妊娠前から肥満がある方は、これらの病気に注意して経過をみることになります。
一方で、日本産科婦人科学会は、体重の増加を抑えることで妊娠高血圧症候群を防げるという新しいエビデンスは乏しいとしています[1]。「体重さえ抑えれば妊娠高血圧症候群を防げる」わけではありません。血圧や尿たんぱくの検査を含めた妊婦健診を定期的に受けることが、これらの病気の早期発見につながります。
急に増えたときに気をつけること
1週間ほどの短い期間で体重が急に増えたときは、食べすぎよりも、体に水分がたまる「むくみ」が原因のことがあります。妊娠後期はもともとむくみが出やすい時期ですが、顔や手までむくむ、指輪がきつくなる、といった変化を伴う場合は注意が必要です。
むくみが強く体重が急増しているとき、頭痛、目がちかちかする、みぞおちの痛みなどがあるときは、妊娠高血圧症候群の症状の可能性があります。健診の日を待たずに、かかっている産婦人科に連絡してください。家庭で血圧を測れる場合は、その記録もあわせて伝えると判断の助けになります。
反対に、年末年始や帰省などで食事量が増えた、産休に入って活動量が減った、といったはっきりした理由があって少し増えた程度なら、あわてて食事を抜く必要はありません。その後の食事と生活を整えて、増え方をゆるやかに戻していけば十分です。
減量ではなく、食事の質と活動量を見直す
「妊娠中に体重を増やさない方法」として勧められるのは、食事を減らすことではなく、食事の中身を整えることと、体を動かす習慣を保つことです。妊娠中は、赤ちゃんの成長のために妊娠していないときより多くのエネルギーが必要になります(第7章参照)。食事を極端に減らすと、赤ちゃんに必要な栄養まで足りなくなるおそれがあります。
見直しやすいのは、甘い飲み物やお菓子、揚げ物など、量のわりにエネルギーが多いものを減らすことです。主食・主菜・副菜をそろえ、野菜や海藻、きのこでかさを増やすと、満足感を保ちながら増え方をゆるやかにできます。塩分を控えることは、むくみの予防にもつながります。食べてよいもの・気をつけたいものは妊娠中にOK/NGな食べ物にまとめています。
体を動かす習慣も大切です。医師から安静を指示されていなければ、散歩や家事、マタニティ向けの軽い運動を続けてください。運動を始める時期や量の目安は妊娠中期の運動で解説しています。
7. 体重が増えない・減るときの対処法と受診の目安
体重が増えないときは、食べられるものを食べられるときに少しずつとること、同じ条件で体重を測って変化を記録することが基本です。妊娠中に必要なエネルギーは、妊娠していないときに比べて、初期で1日50kcal、中期で250kcal、後期で450kcal多いとされています[14]。中期でおにぎり1個強、後期で軽い食事1回分ほどの上乗せです。
食べられるものを食べられるときに(分割食)
つわりや胃の圧迫で一度にたくさん食べられないときは、1日の食事を5〜6回に分ける「分割食」が向いています。1回の量を減らすことで吐き気や胃もたれが起こりにくくなり、空腹で気持ちが悪くなる食べづわりの対策にもなります。
つわりの時期は、栄養のバランスより「食べられるもの」を優先してかまいません。果物、ゼリー、冷たいご飯のおにぎり、クラッカー、スープなど、口に入るものを少しずつとってください。水分がとれていることが何より大切です。つわりが落ち着いてから、主食・主菜・副菜をそろえた食事に戻していけば十分です。
妊娠後期の食欲低下にも同じ方法が使えます。3食をきちんと作るのが負担なら、市販のお惣菜や冷凍食品を利用してもかまいません。ヨーグルト、チーズ、ゆで卵、ナッツなど、少量でたんぱく質やエネルギーをとれるものを手元に置いておくと、合間に食べやすくなります。
同じ条件で体重を測る
体重の変化を自宅で確認する場合は、できるだけ同じ時間・同じ条件で測ると比較しやすくなります。朝起きてトイレを済ませたあと、朝食の前など、条件をそろえやすい時間を決めておく方法があります。夜は1日の食事や水分、むくみの影響を受けやすいため、測定条件をそろえて経過を見ることが大切です。
1日ごとの数字にはばらつきがあるので、1週間の平均や、週ごとの変化で見るようにします。母子健康手帳や体重記録アプリにつけておくと、健診で相談するときに、いつからどのくらい変化したかを具体的に伝えられます。
数字を気にしすぎると、かえって食事がとれなくなったり、気分が落ち込んだりすることがあります。体重計に乗るのが負担に感じるときは、測る頻度を週に数回に減らしてもかまいません。記録は健診で相談するための材料で、毎日の合否を決めるものではありません。
すぐ受診したほうがよいサイン
妊娠前の体重から5%を超えて減ったとき、水分もとれないとき、尿がほとんど出ないときは、健診の日を待たずに受診してください。これらは妊娠悪阻の特徴で、点滴などの治療が必要になることがあります[5]。
⚠️ 早めの受診を考えたいサイン
・妊娠前の体重から5%を超えて減った(50kgの方なら2.5kg超)
・水分をとってもすぐ吐いてしまう、半日以上尿が出ない
・ふらつき、強いだるさがある
・食べているのに体重が減り続け、動悸・汗・手の震えがある
・短期間の急な体重増加に、強いむくみ・頭痛・目のちかちかを伴う
・胎動が少ない、お腹の張りや痛みが続く
こうした症状がなく、体重がゆっくり増えている、あるいは横ばいという程度であれば、次の妊婦健診で相談すれば十分なことがほとんどです。健診では体重だけでなく、血圧、尿検査、赤ちゃんの発育をあわせて確認します。
8. 遺伝の視点:胎児発育不全で染色体・遺伝の病気を調べる場面
お母さんの体重とは別に、赤ちゃん自身が週数に比べて小さいと判断された場合(胎児発育不全)、その原因として染色体や遺伝子の変化が見つかることがあります。ここでは、どのような場合に遺伝学的な検査が検討されるのかを整理します。
胎児発育不全の原因に染色体の変化があることもある
胎児発育不全は、超音波で推定した体重やお腹まわりが週数の10パーセンタイル未満(同じ週数の赤ちゃん100人のうち小さいほうから10番目未満)の場合をいいます。米国母体胎児医学会(SMFM)の2020年の指針はこの定義を採用し、原因の検索として、赤ちゃんの形の異常の有無や、発育不全が見つかった時期を重視しています[15]。
原因の多くは胎盤の働きの低下ですが、一部に赤ちゃんの染色体の変化が関わっています。代表的なのは18トリソミー(18番染色体が3本ある状態)や三倍体(染色体の組がまるごと1組多い状態)です。胎盤の細胞の一部にだけ染色体の変化がある限局性胎盤モザイク(CPM)も、胎盤の働きを通して発育に影響することがあります。
💡 用語解説:シルバー・ラッセル症候群
シルバー・ラッセル症候群は、胎児期から生後にかけての成長の遅れを特徴とする病気です。多くは11番染色体の一部で、父母どちらから受け継いだかによって遺伝子の働き方が決まる仕組み(ゲノムインプリンティング)に異常が起こって生じます。配列の変化ではなく働き方の目印(メチル化)の異常が主な原因のため、診断の第一歩はメチル化解析です。
早い時期に見つかる発育不全や、ほかの形の異常を伴う発育不全では、こうした染色体・遺伝子の変化が関わっている割合が高くなります。一方、お母さんの体重が増えないことが、赤ちゃんの染色体の変化の原因になるわけではありません。二つは別の問題として考えます。胎児発育不全の原因や診断基準は胎児発育不全(FGR)とはで詳しく解説しています。
どの検査で調べるか
胎児発育不全の原因として染色体の変化を調べる場合、中心になるのは羊水検査と、その羊水を使った染色体マイクロアレイ検査です。SMFMの指針は、発育不全に形の異常や羊水過多を伴う場合は週数に関係なく、形の異常がなくても32週未満に見つかった原因不明の発育不全では、マイクロアレイを含む確定検査を提案するよう推奨しています[15]。
マイクロアレイは、通常の染色体検査(G分染法)では見えない小さな欠失や重複まで調べられる検査で、指針では通常の染色体検査に加えて4〜10%で新たに原因が見つかるとされています[15]。羊水検査を行う場合は、感染症(サイトメガロウイルス)の検査もあわせて検討されます。検査の詳細はマイクロアレイ染色体検査をご覧ください。
妊娠初期に受けられるNIPT(新型出生前診断)は、お母さんの血液で赤ちゃんの染色体の変化の可能性を調べる非確定的な検査で、発育不全の原因を確定するものではありません。また、出生前に調べる羊水検査と、生まれたあとに赤ちゃんの血液で調べる検査は、目的もわかることも異なります。どの検査が適しているかは、発育不全の程度や時期によって変わります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 妊娠中に何キロ太るとまずいですか?
一律の上限はなく、妊娠前のBMIによって目安が変わります。普通体重(BMI18.5以上25未満)なら10〜13kg、肥満1度(25以上30未満)なら7〜10kg、肥満2度以上(30以上)なら個別に対応し、上限5kgまでが目安です。目安を大きく上回ると、巨大児や帝王切開との関連が報告されています。短期間で急に増えたときは、むくみや血圧の変化がないか健診で確認してください。
Q2. 1ヶ月・1週間に何キロ増えていいですか?
日本の学会は、1ヶ月や1週間あたりの増加量の目安を公式には示していません。参考になるのは妊娠週数別の体重増加曲線で、たとえば普通体重の方なら妊娠30週で6.4〜9.1kg増えていれば、最終的な目安(10〜13kg)に沿った増え方とされています。週ごとの数字より、この幅に収まっているかを見てください。
Q3. 体重が増えていないのにお腹が出るのはなぜですか?
妊娠中に増える体重は、赤ちゃんのほかに胎盤・羊水・子宮・乳房・血液・脂肪などを合わせたものです。子宮が大きくなればお腹は出てきますが、つわりで脂肪が減っていると、体重はあまり増えないことがあります。赤ちゃんの発育は、お腹の見た目や体重ではなく、健診の超音波検査で確かめます。
Q4. 双子の場合、体重増加の目安はありますか?
日本には双子妊娠の公式な目安はありません。米国の医学研究所(IOM)が2009年に示した暫定的な目安では、妊娠前が普通体重なら17〜25kg、過体重なら14〜23kg、肥満なら11〜19kgとされていますが、やせ型の方については情報が不足しているとして目安が示されていません。多胎妊娠は個別に管理されるため、健診を受けている産婦人科の指示に従ってください。
Q5. 妊娠中にダイエットしてもいいですか?
勧められません。妊娠中は赤ちゃんの成長のため、妊娠していないときより多くのエネルギーが必要で、食事を極端に減らすと必要な栄養まで不足するおそれがあります。体重の増え方が気になる場合は、減量ではなく、甘い飲み物やお菓子を控える、主食・主菜・副菜をそろえる、体を動かす習慣を保つ、といった見直しをしてください。
Q6. 妊娠中に体重が増えない体質はありますか?
もともと食が細い方、活動量が多い方などでは、体重がゆっくりしか増えないことがあります。赤ちゃんの発育が健診で順調であれば、目安の下限に届かないことだけで過度に心配する必要はないことがほとんどです。ただし、食べているのに体重が減り続け、動悸や汗、手の震えなどがある場合は、甲状腺の病気などがないか調べることがあります。
Q7. ミネルバクリニックで妊娠中の体重管理や妊婦健診は受けられますか?
いいえ、当院では妊婦健診や妊娠中の体重管理・栄養指導は行っておらず、この件についてのご予約・お問い合わせもお受けしていません。体重の増え方が気になる場合は、妊婦健診を受けている産婦人科でご相談ください。
まとめ
妊婦の体重増加の目安は、妊娠前のBMIが18.5未満なら12〜15kg、18.5以上25未満なら10〜13kg、25以上30未満なら7〜10kg、30以上なら個別対応(上限5kgまで)です。学会は、目安を厳しく守らせる根拠は十分でないとして、ゆるやかな指導を求めています[1]。体重は中期から後期にかけて増え、初期はつわりで減る人もいます。
体重増加が目安より少ないと、SGAや早産との関連が報告されていますが[6]、日本の研究では、つわりで痩せても中期以降に体重が戻れば影響は小さい可能性が示されています[8]。発達障害との関連を示す研究はあるものの、因果関係はわかっていません。増えすぎが心配なときは、減量ではなく食事の中身と活動量を見直してください。赤ちゃん自身の発育が週数に比べて小さい場合は、胎児発育不全として、染色体などの原因を調べることがあります。
🏥 妊娠中の体重管理・妊婦健診についてお考えの方へ
当院では、妊婦健診や妊娠中の体重管理・栄養指導を行っておりません。
この件についてのご予約・お問い合わせはお受けしておりません。
体重の増え方が気になる場合は、妊婦健診を受けている産婦人科へご相談ください。
この記事は妊娠中の体重について正しく知っていただくための解説であり、当院での診療をご案内するものではありません。なお、胎児発育不全などで具体的な遺伝学的評価が必要と判断された場合に限り、遺伝カウンセリングが関係することがあります。
参考文献
- [1] 公益社団法人日本産科婦人科学会. 妊娠中の体重増加の目安について(令和3年6月1日). [日本産科婦人科学会]
- [2] 厚生労働省. 妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針(2021年3月改定)の概要. [こども家庭庁]
- [3] Gestational Weight Gain Growth Charts Adapted to Japanese Pregnancies Using a Bayesian Approach in a Longitudinal Study: The Japan Environment and Children’s Study. J Epidemiol. 2023;33(5):217-226. [J-STAGE]
- [4] 国立研究開発法人国立成育医療研究センター. 10万人の妊婦健診情報から「妊娠中の体重増加曲線」を作成 妊娠中の体重管理の参考になることを期待(2021年9月28日). [国立成育医療研究センター]
- [5] Hyperemesis Gravidarum. Merck Manual Professional Edition. [Merck Manual]
- [6] Association of Gestational Weight Gain With Maternal and Infant Outcomes: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA. 2017;317(21):2207-2225. [PubMed 28586887]
- [7] Relationship between hyperemesis gravidarum and small-for-gestational-age in the Japanese population: the Japan Environment and Children’s Study (JECS). BMC Pregnancy Childbirth. 2016;16:247. [PubMed 27561599]
- [8] Lack of catch-up in weight gain may intermediate between pregnancies with hyperemesis gravidarum and reduced fetal growth: the Japan Environment and Children’s Study. BMC Pregnancy Childbirth. 2022;22:199. [PubMed 35279131]
- [9] Gluckman PD, Hanson MA, Cooper C, Thornburg KL. Effect of In Utero and Early-Life Conditions on Adult Health and Disease. N Engl J Med. 2008;359(1):61-73. doi:10.1056/NEJMra0708473. [PubMed 18596274]
- [10] Maternal body mass index during early pregnancy, gestational weight gain, and risk of autism spectrum disorders: Results from a Swedish total population and discordant sibling study. Int J Epidemiol. 2015;44(3):870-883. [PubMed 26045508]
- [11] Chen S, Fan M, Lee BK, et al. Rates of maternal weight gain over the course of pregnancy and offspring risk of neurodevelopmental disorders. BMC Med. 2023;21(1):108. doi:10.1186/s12916-023-02799-6. [PubMed 36959571]
- [12] Lee PMY, Tse LA, László KD, Wei D, Yu Y, Li J. Association of maternal gestational weight gain with intellectual developmental disorder in the offspring: a nationwide follow-up study in Sweden. BJOG. 2022;129(4):540-549. doi:10.1111/1471-0528.16887. [PubMed 34455681]
- [13] Sandin S, Lichtenstein P, Kuja-Halkola R, Hultman C, Larsson H, Reichenberg A. The Heritability of Autism Spectrum Disorder. JAMA. 2017;318(12):1182-1184. doi:10.1001/jama.2017.12141. [PubMed 28973605]
- [14] 厚生労働省.「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書. [国立保健医療科学院 掲載PDF]
- [15] Society for Maternal-Fetal Medicine (SMFM); Martins JG, Biggio JR, Abuhamad A. Society for Maternal-Fetal Medicine Consult Series #52: Diagnosis and management of fetal growth restriction. Am J Obstet Gynecol. 2020;223(4):B2-B17. doi:10.1016/j.ajog.2020.05.010. [SMFM]





