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妊娠超初期・妊娠中の胃痛|キリキリ・みぞおちの痛みの原因と対処法、受診の目安

目次

仲田洋美 医師

この記事の著者・監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医として、出生前診断と遺伝医療に携わっています。

妊娠超初期〜妊娠初期に、胃がキリキリ痛む、みぞおちが重い・焼けるといった不快感が出ることは珍しくありません。主な背景は、妊娠で増えるプロゲステロン(黄体ホルモン)による胃腸の動きの変化、つわり、妊娠にともなう緊張や不安です。妊娠中期・後期になると、大きくなった子宮が胃を押し上げることも加わります。多くは食べ方や過ごし方の工夫で和らぎますが、吐いたものに血が混じる・黒い便が出る、発熱がある、下腹部の強い痛みや出血をともなう、妊娠中期以降にみぞおちの強い痛みと頭痛がある、といった場合は早めに受診してください。この記事では、痛み方のタイプ、生理前の胃痛との違い、時期別の原因、受診の目安、対処法、薬の注意点を臨床遺伝専門医の立場から解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
🤰 妊娠超初期〜妊娠中の胃痛
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 妊娠超初期に胃がキリキリ痛むのはなぜですか?

A. 妊娠で増えるプロゲステロンが胃腸の筋肉をゆるめ、胃の中身が送り出されにくくなったり、胃酸が食道へ逆流しやすくなったりすることが主な理由と考えられています。つわりで空腹の時間が長くなることや、緊張・不安も重なります。ただし胃痛は妊娠していなくても起こる症状で、胃痛だけで妊娠かどうかは判断できません。

  • ➤痛み方 → キリキリ・ギューッとした痛み、重い・焼けるような鈍痛、みぞおちの痛み、食後の痛みなど人によってさまざま
  • ➤原因 → 初期はホルモン・つわり・緊張、中期以降は子宮による胃の圧迫と胃酸の逆流が加わる
  • ➤生理前との違い → 症状だけでは区別できない。妊娠検査薬の添付文書に指定された時期(一般的には生理予定日の約1週間後)に確かめる
  • ➤対処法 → 少量ずつ食べる、刺激物を控える、食後すぐ横にならない。市販薬は自己判断で飲まない
  • ➤受診の目安 → 吐血・黒い便、発熱、水分もとれない嘔吐、下腹部の強い痛みや出血、中期以降のみぞおちの強い痛みと頭痛

妊娠超初期・妊娠初期の胃痛はいつから?どんな痛み?

妊娠にともなう胃の不快感は、早い人では生理予定日のころ(妊娠4週前後)から感じることがあります。ただし始まる時期や感じ方には個人差が大きく、まったく感じない人もいます。「妊娠超初期」は医学的に決まった区分ではなく、受精から生理予定日のころまで、つまり妊娠3〜4週ごろまでを指して使われることが多い言葉です。医学的には、妊娠初期は妊娠15週まで、妊娠中期は16〜27週、妊娠後期は28週以降と区切ります。

この時期は、まだ妊娠に気づいていない人も多く、「いつもの胃痛と違う気がする」という感覚から妊娠を疑う人もいます。けれども胃痛は、食べ過ぎ、ストレス、胃腸炎、生理前の体調変化でも起こるありふれた症状です。妊娠の可能性があるときは、胃痛の有無で判断せず、妊娠検査薬の添付文書に指定された時期(一般的には生理予定日の約1週間後)に確かめるのが確実です。胃痛以外に妊娠超初期に出やすい症状は、妊娠超初期症状のまとめで解説しています。

胃がキリキリ・ギューッと痛む

空腹時や食後に、胃がキリキリと差し込むように痛む、ギューッとつかまれるように痛むと表現される痛みです。妊娠初期は、つわりで吐いたり、気分が悪くて食事がとれず空腹の時間が長くなったりしやすく、胃の粘膜が胃酸の刺激を受けやすい状態になります。空腹になると気持ち悪くなる「食べづわり」の人では、空腹とキリキリした痛みが重なって感じられることもあります。

キリキリした痛みの多くは、少量でも何か口に入れる、胃を締め付けない服にする、といった工夫で軽くなります。一方で、うずくまるほどの強い痛み、時間がたっても治まらない痛み、だんだん強くなる痛みは、妊娠による変化だけで説明しようとせず、受診して原因を確かめる必要があります。妊娠中でも胃潰瘍や虫垂炎、胆のう炎などは起こり、そのときは治療が必要だからです。

胃が重い・焼けるような鈍痛(胃もたれ・胸やけ)

鋭い痛みではなく、胃が重い、張ってふくらんだように感じる、食べ物がいつまでも胃に残っている気がする、といった鈍い不快感が続くこともあります。いわゆる胃もたれで、食欲がわかない原因にもなります。

みぞおちから胸の中央にかけて熱く焼けるような感じがする場合は、胃酸が食道に逆流して起こる胸やけの可能性があります。英国の国民保健サービス(NHS)は、胸やけや消化不良は妊娠中のどの時期にも起こりうるものの、妊娠12週以降に多くなると説明しています[1]。妊娠超初期に胸やけがはっきり出る人は多くありませんが、胃が重い、むかむかする、という形の不快感は初期からみられます。

みぞおちが痛む・食後に痛む

「胃痛」と言うとき、多くの人が指しているのは、おへその上、肋骨の下の真ん中あたり、つまりみぞおちの痛みです。妊娠初期のみぞおちの痛みは、胃もたれや胸やけと同じ仕組みで起こることが多く、食後に強くなる、横になると強くなる、といった特徴があります。NHSは、胸やけや消化不良の症状は食べたり飲んだりした直後に出ることが多いものの、少し時間をおいて出ることもあるとしています[1]。

妊娠中は胸やけや胃もたれが起こりやすく、一度にたくさん食べると症状が強まることがあります。ただし、妊娠しているという理由だけで胃の内容物の排出が一律に遅くなるとは言えません。つわりで空腹の時間が長く続いた後に、急いでたくさん食べるのも、胃に負担がかかりやすい食べ方です。なお、みぞおちの痛みは胃以外の臓器(胆のう、すい臓、心臓など)の病気でも起こることがあり、痛む場所だけで原因を決めることはできません。気になる症状をともなうときの見分け方は、受診の目安で詳しく説明します。

胃痛はいつまで続く?

つわりにともなう胃の不快感は、つわりが軽くなる妊娠中期の始まりごろまでに落ち着くことが多い一方、胸やけによる胃の痛みは妊娠が進むほど増えやすく、出産まで続くこともあります。同じ「胃痛」でも、原因によって続く期間が違うということです。

妊娠中の胸やけについてのレビューでは、胸やけを感じる人の割合は妊娠初期に約22%、妊娠中期に約39%、妊娠後期には60〜72%と、妊娠が進むにつれて増えると報告されています[2]。妊娠初期の胃痛が中期にいったん治まり、後期に別の形でまた出てくる、という経過をたどる人もいます。多くは出産後に自然に治まりますが、つらさが続くときは妊婦健診で相談してください。

生理前の胃痛と妊娠超初期の胃痛の違い

結論から言うと、胃痛の痛み方や場所で、生理前の胃痛と妊娠超初期の胃痛を見分けることはできません。「生理前に胃が痛いけれど、妊娠の可能性はある?」と考える人は多いのですが、どちらの時期も体の中で同じホルモンが働いているため、出てくる症状がよく似ているからです。

どちらもプロゲステロンが高い時期だから似ている

排卵が起こると、卵巣に残った黄体からプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌されます。プロゲステロンは、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を整えるホルモンで、排卵後から次の生理が来るまでの約2週間、高い状態が続きます。妊娠しなかった場合は黄体がしぼんでプロゲステロンが下がり、生理が始まります。妊娠した場合は、受精卵から分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が黄体を支え、プロゲステロンは高いまま保たれます。

つまり、生理予定日の前までは、妊娠していてもいなくても、体はプロゲステロンが高い状態にあります。プロゲステロンには胃腸の筋肉をゆるめる働きがあるため、生理前にも胃もたれや胃の不快感、便秘、眠気、胸の張りなどが出る人がいます。妊娠超初期の胃痛と、生理前の胃痛が似ているのはこのためです。生理前のイライラや体調不良(PMS:月経前症候群)は、ホルモンの量そのものより、排卵後の女性ホルモンの変動に対する体の反応の違いが関わると考えられています。

💡 用語解説:プロゲステロン(黄体ホルモン)

排卵後の卵巣(黄体)から分泌される女性ホルモンで、妊娠が成立すると妊娠初期は黄体から、その後は主に胎盤から分泌されます。子宮内膜を妊娠に適した状態に保ち、子宮の収縮を抑えて妊娠の継続を支えます。一方で、体のほかの部分の平滑筋(自分の意思で動かせない筋肉)もゆるめるため、腸の動きや食道と胃のつなぎ目の筋肉の働きに影響し、便秘や胸やけに関わります。胃もたれも起こりますが、胃からの排出が必ず遅くなるわけではありません。基礎体温を上げるのもこのホルモンの働きです。

見分けるには生理予定日後に妊娠検査薬で確かめる

生理前の胃痛か妊娠超初期の胃痛かを確かめる方法は、症状ではなく妊娠検査薬です。妊娠検査薬は尿中のhCGを検出するもので、hCGは通常、妊娠に伴って増えるホルモンですが、hCG製剤の使用や一部の病気などでも検出されることがあります。一般的な妊娠検査薬は、生理予定日の約1週間後から使えるように作られています。説明書に書かれた時期より早く使うと、妊娠していても陰性と出ることがあります。

生理予定日を過ぎても生理が来ず、検査薬で陽性が出たら、産婦人科を受診して子宮の中に妊娠しているかを確認してもらいましょう。検査薬が陽性でも、子宮の外に妊娠している(子宮外妊娠)可能性は、超音波検査で確かめるまで否定できないからです。陰性でも生理が来ない状態が続く場合は、数日〜1週間あけて再検査するか、婦人科で相談してください。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【胃痛で妊娠を占えない理由】

生理前と妊娠超初期の胃痛が区別できないのは、どちらもプロゲステロンが高い「黄体期」に起きている症状だからです。妊娠が成立してもしなくても、生理予定日まではホルモンの環境がほぼ同じで、胃腸に起こる変化も同じになります。症状に「妊娠のときだけの特徴」を探しても見つからないのは、医学的に筋の通った話だと考えています。

妊娠で初めて大きく変わるのは、受精卵がつくるhCGです。だからこそ、妊娠の判定はhCGを測る検査薬に任せ、胃痛は「体調の変化の一つ」として、強さと一緒に出ている症状で受診が必要かどうかを判断するのが合理的だと考えています。

妊娠初期に胃が痛くなる原因

妊娠初期の胃痛には、ホルモンによる胃腸の動きの変化、つわり、精神的な緊張や不安が関わっていると考えられています。一方で、感染性胃腸炎や胃炎、胃潰瘍など、妊娠とは関係なく起こる病気が原因のこともあります。ここでは、妊娠に関係する主な原因を解説します。

プロゲステロン(黄体ホルモン)の影響

妊娠すると、主に次の3つのホルモンが増えます。

🔬 妊娠初期に増える主なホルモンと胃の症状との関わり

ホルモン 主な働き 胃の症状との関わり
hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン) 黄体を支えて妊娠の初期を維持する。妊娠検査薬はこれを検出する つわり(吐き気)との関連が指摘されている
エストロゲン(卵胞ホルモン) 子宮や乳腺の発育を助ける つわりとの関連が指摘されている
プロゲステロン(黄体ホルモン) 子宮内膜を妊娠に適した状態に保つ 胃腸や食道の筋肉をゆるめ、胃もたれ・胸やけにつながる

このうち、胃もたれや胸やけに関わりが深いのがプロゲステロンです。妊娠中の胸やけについてのレビューは、プロゲステロンやその代謝物が増えると平滑筋がゆるみ、胃の緊張と動きが低下し、食道と胃のつなぎ目にある下部食道括約筋の圧が下がると説明しています[2]。下部食道括約筋がゆるむと胃酸が食道へ逆流しやすくなり、胸やけやみぞおちの焼けるような痛みとして感じられます。一方、胃もたれがあっても、妊娠に伴う胃からの排出の遅れが原因とは限りません。妊娠初期に胃からの排出時間の有意な変化を認めなかった研究もあります。

💡 用語解説:下部食道括約筋

食道と胃のつなぎ目を取り囲む筋肉で、ふだんは締まっていて、胃の中の食べ物や胃酸が食道へ戻らないようにしています。飲み込むときだけゆるんで食べ物を胃へ通します。この筋肉の締まりが弱くなると、胃酸が食道へ逆流し、胸やけや、みぞおちから胸にかけての焼けるような痛みが起こります。妊娠中はホルモンの影響と、子宮が大きくなることによるお腹の圧の上昇の両方で、逆流が起こりやすくなります。

不快な症状の原因にもなるプロゲステロンですが、妊娠には欠かせないホルモンです。受精卵が着床しやすいように子宮内膜を整え、着床後は子宮内膜を厚く保ち、子宮の収縮を抑えて妊娠の継続を支えます。胃の不調は、このホルモンが働いていることの裏返しでもあります。

つわりによる空腹・嘔吐

つわり(妊娠中の吐き気・嘔吐)は、胃痛の大きな背景の一つです。米国産婦人科学会(ACOG)の診療指針は、妊娠中の吐き気・嘔吐はほとんどの場合妊娠9週より前に始まるとしています[3]。つわりで食事がとれず空腹の時間が長くなると、胃酸が空っぽの胃を刺激してキリキリした痛みを感じやすくなります。吐くことを繰り返すと、胃酸で食道やのどがひりひりしたり、腹筋が疲れてみぞおちのあたりが痛んだりすることもあります。

反対に、つわりがつらい時期にようやく食べられたものを一度にたくさん食べると、胃が膨らんで負担がかかり、食後の胃もたれや痛みにつながります。つわりの始まる時期や仕組み、症状の種類についてはつわり(悪阻)とはで詳しく解説しています。

精神的な緊張や不安

妊娠がわかる前後の時期は、本当に妊娠しているのか、妊娠は順調に進むのか、仕事や生活はどう変わるのかなど、期待と不安が入り混じりやすい時期です。緊張や不安が続くと自律神経のバランスが乱れ、胃の動きや胃酸の分泌に影響して、胃痛や胃もたれを悪化させることがあります。

ストレスが胃痛の「引き金」になることはありますが、ストレスだけが原因と決めつけると、治療が必要な病気を見落とすおそれがあります。妊娠中の胃痛は、ホルモン、つわり、緊張がいくつも重なって起こることが多いと考え、強さと一緒に出ている症状を確認することが大切です。

妊娠中期・後期の胃痛(妊婦の胃痛)の原因

妊娠中期・後期の胃痛は、ホルモンの影響に加えて、大きくなった子宮が胃を押し上げることで、胃酸の逆流(胸やけ)が起こりやすくなることが主な原因です。妊娠初期の胃痛がつわりと一緒に落ち着いたあと、妊娠中期の後半から後期にかけて、今度は胸やけとして胃の痛みを感じる人は少なくありません。

大きくなった子宮が胃を押し上げる

妊娠が進むと子宮はお腹の上のほうまで大きくなり、胃や腸を上へ押し上げます。妊娠中の胸やけについてのレビューは、大きくなった子宮が胃の内容物を圧迫することで、妊娠が進むにつれて胸やけが悪化しうると述べています[2]。NHSも、胸やけや消化不良の原因として、ホルモンの変化と、大きくなる赤ちゃんが胃を押すことの両方を挙げています[1]。

胃が押されて入る量が少なくなるため、少し食べただけで胃がいっぱいになる、食後に苦しくなる、横になると胃の中身が上がってくる感じがする、といった症状が出やすくなります。特に夜、寝る前に食べると、横になったときに逆流が起こりやすく、夜中に胃の痛みや胸やけで目が覚める人もいます。

胸やけ(胃酸の逆流)が増える

前の章で触れたとおり、妊娠中の胸やけは妊娠が進むにつれて増え、妊娠後期には60〜72%の人が経験すると報告されています[2]。同じレビューは、妊娠中の胸やけの頻度を17〜45%と報告した研究があることも紹介しており、数字の幅は調査の方法や時期の違いによるものです[2]。いずれにしても、妊娠中の胃の痛みとしては、胸やけによるものが最もよくみられるタイプの一つです。

胸やけによる痛みは、みぞおちから胸の中央にかけての焼けるような痛み、酸っぱいものが口まで上がってくる感じ、げっぷ、のどの違和感などとして現れます。ほとんどは出産後に治まりますが、NHSは、飲み込みにくさ、声のかすれ、治らない咳、体重減少、お腹の痛みや腫れなどをともなう場合は、助産師や医師に相談するよう勧めています[1]。

中期以降に見逃してはいけないみぞおちの痛み

妊娠中期以降に、みぞおちや右の肋骨の下に強い痛みが続き、ひどい頭痛、目がチカチカする・見えにくい、急な顔や手足のむくみなどをともなう場合は、胸やけではなく妊娠高血圧症候群(子癇前症)やHELLP症候群の可能性があります。NHSは、肋骨の下の続く痛みに、強い頭痛や見え方の問題が加わる場合は子癇前症の徴候として、すぐに産科へ連絡するよう求めています[4]。

これらは胃薬では治らず、母体と赤ちゃんの両方にとって急いで対応が必要な状態です。胸やけと思っていた痛みがいつもと違う、胃薬を飲んでも治まらない、血圧が高いと言われている、といった場合は、時間外でもかかりつけの産科に連絡してください。

💡 用語解説:HELLP症候群

妊娠中期以降や出産前後に起こる重い合併症で、名前は溶血(Hemolysis:赤血球が壊れる)、肝酵素の上昇(Elevated Liver enzymes)、血小板の減少(Low Platelets)の頭文字からとられています。妊娠高血圧症候群と関連して起こることが多く、みぞおちや右上腹部の痛み、吐き気・嘔吐が最初の症状になることがあるため、胃炎や胸やけと間違えられやすい病気です。診断には血液検査が必要で、産科での速やかな管理が必要になります。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「場所」より「一緒に出ている症状」を見る】

みぞおちの痛みは、胃の病気だけでなく、胆のう、すい臓、肝臓、時には心臓の病気でも起こります。妊娠中はさらに、子宮外妊娠の出血が上腹部や肩に痛みとして響いたり、HELLP症候群がみぞおちの痛みから始まったりします。痛む場所が同じでも、原因はまったく違うことがあるというのが、内科医として腹痛を考えるときの基本だと考えています。

だからこそ、痛みの場所だけで「胃だから大丈夫」と判断せず、出血、発熱、頭痛、見え方の異常、尿の量、痛みの強さと続く時間を一緒に確認してください。いつもの胃もたれと違うと感じたら、それ自体が受診を考える理由になると考えています。

こんな胃痛は要注意!受診の目安

次のような症状があるときは、妊娠による胃の不調ではなく、治療が必要な病気が隠れている可能性があります。妊娠中は、胃・腸・胆のうの病気に加え、子宮外妊娠(異所性妊娠)や流産、妊娠高血圧症候群など妊娠そのもののトラブルも見分ける必要があるため、痛む場所と一緒に出ている症状を確認しましょう。

🚨 受診を急いだほうがよい胃痛・腹痛のサイン

一緒に出ている症状 考えられること(例) 対応
吐いたものに血が混じる、黒っぽい便が出る 胃・十二指腸の潰瘍や出血 すぐに受診
発熱、下痢や嘔吐を繰り返す 感染性胃腸炎など 早めに受診(脱水に注意)
水分もとれないほど吐く、尿が少ない、体重が減る 妊娠悪阻(重いつわり) 早めに産婦人科へ
みぞおちの痛みが右下腹部へ移る、右わき腹が痛む 虫垂炎 すぐに受診
脂っこい食事の後の右上腹部〜みぞおちの強い痛み 胆石・胆のう炎 受診
下腹部の片側の強い痛み、性器出血、肩の痛みやふらつき 子宮外妊娠(異所性妊娠)、流産 すぐに受診
妊娠中期以降のみぞおち〜右上腹部の強い痛みに、頭痛・目がチカチカする・急なむくみをともなう 妊娠高血圧症候群、HELLP症候群 すぐにかかりつけの産科へ連絡

※表は代表的な例です。このほか、痛みが強い、休んでも治まらない、いつもと違うと感じる場合も受診してください。

妊娠中の虫垂炎と胆のう炎は、妊娠に関係なく起こる外科の病気の代表です。画像診断についてのレビューは、急性虫垂炎は妊娠のおよそ1,500件に1件(約0.07%)に起こり、妊娠中に手術が必要になる産科以外の緊急疾患として最も多いと報告しています[5]。同じレビューは、大きくなった子宮に押されて虫垂の位置が変わるため、虫垂炎の妊婦さんの最大25%は典型的な右下腹部の痛みを訴えないとしています[5]。妊娠が進むほど「右下腹部が痛くないから虫垂炎ではない」とは言えなくなるということです。また、妊娠中に胆石が見つかる人は12%を超えるものの、症状が出る胆道の病気は0.1〜0.3%と多くはなく、急性胆のう炎は妊娠中の産科以外の手術の理由として2番目に多いと報告されています[5]。

下腹部の痛み・出血をともなうとき

胃痛だと思っていても、実は下腹部の痛みであることもあります。妊娠初期には、子宮が大きくなり始めることなどで下腹部に軽い痛みや張りを感じることがあり、多くは心配のないものです。ただしNHSは、腹痛に性器出血や少量の出血、規則的な痛みや張り、腰の痛み、いつもと違うおりものや水っぽいものが出る、といった症状をともなう場合や、30〜60分休んでも強い痛みが治まらない場合は、すぐに医療機関へ連絡するよう勧めています[4]。

⚠ 妊娠初期の下腹部痛・肩の痛み・出血

妊娠がわかったばかりの時期に、下腹部の片側の強い痛みや性器出血、肩の先の痛み、ふらつきがある場合は、子宮外妊娠(異所性妊娠)の可能性も考えます。NHSは、子宮外妊娠の徴候として、妊娠4〜12週ごろの出血と肩の先の痛みを挙げています[4]。お腹の中で出血すると、横隔膜が刺激されて肩に痛みが響くことがあるためです。胃痛と思い込まず、夜間や休日でも医療機関に連絡してください。

子宮外妊娠の症状が出る時期や痛み方、受診したときの検査については、子宮外妊娠は痛い?原因や症状で詳しく解説しています。

胃痛は流産のサイン?

みぞおちのあたりの胃痛そのものが、流産のサインというわけではありません。流産のときに出やすいのは、生理痛のような下腹部の痛みと性器出血です。NHSも、妊娠24週より前の流産の徴候として、下腹部の痛み(けいれんのような痛み)と出血を挙げています[4]。胃の痛みやむかつきは、むしろ妊娠にともなうホルモンの変化でよく起こる症状です。

ただし、「胃が痛い」と感じていた痛みが、だんだん下腹部に広がる、出血が加わる、片側だけが強く痛む、といった場合は、流産や子宮外妊娠の可能性を考える必要があります。痛みの場所が変わったり、出血が加わったりしたときは、かかりつけの産婦人科に連絡してください。妊娠初期の流産の多くは赤ちゃん側の染色体の変化が原因で起こり、胃痛や食事、仕事などお母さんの行動が原因になるものではないことも知っておいてください。

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妊娠初期のみぞおちの痛み・胃痛の対処法

妊娠中の胃痛や胸やけは、症状が軽ければ、食べ方と過ごし方の工夫で和らぐことが多いとされています。NHSは、1日3回の多めの食事より少量を回数多く食べること、寝る前3時間以内に食べないこと、食べるときは背筋を伸ばして座ること、寝るときは頭と肩を高くすることなどを勧めています[1]。つわりで食べられるものが限られる時期でも、取り入れやすいものから試してみてください。

刺激物を避ける

香辛料の多い料理、脂っこい料理、コーヒーなどのカフェイン飲料、炭酸飲料は、胃酸の分泌を促したり、下部食道括約筋をゆるめて胃酸の逆流を起こしやすくしたりするため、胃が痛むときは控えめにしましょう。NHSも、胸やけを起こしやすい飲食物として、香辛料や脂肪の多い食べ物、カフェインを含む飲み物を挙げています[1]。冷たい飲み物で胃が不快になる人は、常温〜温かいものにすると楽になることがあります。

ただし、つわりで冷たいものしか口にできない場合は、無理に我慢する必要はありません。つわりの時期は、食べられるものを食べられるときに口にすることを優先しましょう。妊娠中の胸やけについてのレビューは、特定の食事制限が効果的だと示したランダム化比較試験はないとしており[2]、「これを食べてはいけない」と厳しく考えすぎる必要はありません。自分の症状が強くなる飲食物を見つけて減らす、という考え方で十分です。

消化の良いものを少量ずつ食べる

胃の調子が悪いときは、脂質や食物繊維の少ない、消化の良い食べ物を選ぶと胃の負担を減らせます。お粥や雑炊、うどん、鶏ささみや白身魚、豆腐、バナナやりんごなどが代表的です。胃もたれや胸やけがあるときは、一度にたくさん食べるより、1回の量を減らして回数を増やすほうが胃が重くなりにくくなります。

空腹で胃がキリキリする人は、クラッカーや小さなおにぎりなど、つまみやすいものを手元に置いておくと、空腹の時間を短くできます。つわりで温かい料理のにおいがつらい場合は、十分にやわらかくしたものを冷ましてから食べると食べやすくなります。

食後すぐ横にならない・寝るときは上半身を高くする

食べた直後に横になると、胃の中身が食道へ逆流しやすくなります。食後しばらくは座って過ごし、寝る前の食事は控えめにしましょう。胸やけで夜中に目が覚める人は、枕やクッションで頭と肩を少し高くして寝ると楽になることがあります[1]。NHSは、左を下にして寝ることも助けになるとしています[1]。

お腹まわりを締め付ける服やベルトは、胃を圧迫して不快感を強めることがあります。妊娠初期はまだお腹が目立たない時期ですが、胃の不快感があるときは、ゆったりした服装を選ぶと楽になります。

緊張や不安を抱え込まない

心身の緊張をほぐすことは、胃の不快感をやわらげる助けになります。次のような方法を、無理のない範囲で取り入れてみてください。

🛁 胃の不快感をやわらげる過ごし方

方法 ポイント
ぬるめのお湯にゆっくり浸かる 長湯や熱すぎるお湯は避け、気分が悪くなったらすぐ上がる
不安をパートナーや身近な人と共有する 話すことで気持ちが整理され、家事の分担など具体的な負担を減らすきっかけにもなる
ゆったりした服装にする お腹まわりを締め付ける服やベルトは、胃を圧迫して不快感を強めることがある
香りでリラックスする アロマテラピーは妊娠中の効果や安全性の根拠が十分ではない。使うなら香りを楽しむ程度にとどめ、精油を肌に直接使ったり口にしたりしない

不安が強く眠れない、気分の落ち込みが続くといった場合は、妊婦健診を受けている医療機関や自治体の相談窓口に相談してください。

妊娠中に胃薬や痛み止めは飲める?

妊娠中でも使える胃薬はありますが、市販薬を自己判断で飲むのは避け、妊婦健診を受けている医療機関か、妊娠中であることを伝えたうえで薬剤師に相談してから使ってください。市販の胃薬や痛み止めには、妊娠中に向かない成分を含むものがあるからです。

胃薬を使うときの注意

妊娠中の胸やけについてのレビューは、まず食べ方や姿勢など生活の工夫を行い、それで不十分な場合に胃酸を中和する制酸薬などを検討するという順序を示しています[2]。同じレビューは、胃酸の分泌を抑える薬についても、利用できる研究の範囲では妊娠中の使用で大きな問題は示されていないとしていますが[2]、どの薬をどのくらい使うかは、妊娠週数や症状に合わせて医師が判断するものです。

💊 制酸薬と鉄剤・葉酸は時間をずらす

胃酸を中和する制酸薬は、鉄剤や葉酸のサプリメントの吸収を妨げることがあります。NHSは、葉酸や鉄のサプリメントを飲んでから2時間以内は制酸薬を飲まないよう勧めています[1]。妊娠中は鉄剤や葉酸を飲んでいる人が多いため、胃薬を使うときは飲む時間を2時間ほどずらしてください。

つわりがひどく食事や水分がとれない場合には、産婦人科で吐き気止めや点滴などの治療が行われます。産婦人科で処方される薬の種類や注意点は、つわりに処方される薬で解説しています。

痛み止め(解熱鎮痛薬)は妊娠週数で注意が変わる

胃が痛いときに、市販の痛み止めを飲もうと考える人もいるかもしれません。しかし、イブプロフェンやロキソプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、胃の粘膜を荒らして胃痛を悪化させることがあるうえ、妊娠中は使う時期に注意が必要な薬です。米国食品医薬品局(FDA)は、NSAIDsは赤ちゃんの腎臓に影響して羊水が少なくなることがあるとして、妊娠20週以降は使用を避けるよう勧告しています[6]。さらに妊娠30週ごろ以降は、赤ちゃんの心臓の近くにある血管(動脈管)が早く閉じてしまうおそれがあるため、使用を避けるべきだとしています[6]。

一方で、妊娠高血圧症候群の予防などの目的で、医師の指示のもと低用量アスピリンが使われることがあり、FDAもこれは例外としています[6]。処方されている薬を自己判断でやめることはせず、気になることは処方した医師に確認してください。胃痛を痛み止めでごまかすと、治療が必要な病気のサインを見逃すことにもつながるため、痛みが強いときは薬を探すより先に受診を考えてください。

なんとなく気持ち悪い・吐き気や胃のむかつきがあるとき

胃痛とともに「なんとなく気持ち悪い」「胃がむかむかする」「吐き気がする」と感じる場合は、つわりの始まりであることが多いです。ACOGの診療指針は、妊娠中の吐き気・嘔吐は多くの妊婦さんが経験し、ほとんどの場合は妊娠9週より前に始まるとしています[3]。多くは妊娠中期に入るころまでに軽くなっていきます。

妊娠超初期に出る胃のむかつきは、妊娠に伴うホルモンの変化やつわりなどが関わると考えられています。ただし、hCGの増加や胃の動きの低下だけで説明できるものではありません。空腹になるとむかむかする、においで気持ち悪くなる、朝起きたときに特に気分が悪い、など現れ方は人によって違います。吐き気が軽いうちは、次のような工夫で過ごしやすくなることがあります。

🍙 吐き気・胃のむかつきがあるときの工夫

工夫 具体例
空腹の時間をつくらない クラッカーやおにぎりなど、つまみやすいものを手元に置き、少量ずつ回数を分けて食べる
においの強いものを避ける 温かい料理のにおいがつらいときは、冷ましたものや冷たいものを選ぶ
水分をこまめにとる 一度に飲めないときは、少量ずつ口に含む。氷やゼリー飲料なども利用する
サプリメントの飲み方を見直す 鉄を含むサプリメントで気分が悪くなる場合は、飲み方や種類を医師に相談する

※つわりへのしょうがや鍼(つぼ押し)などの効果は、研究によって結果が分かれており、はっきりした結論は出ていません[7]。

妊娠初期の吐き気・嘔吐への対策を調べたコクランのシステマティックレビューは、しょうが、鍼やつぼ押し、ビタミンB6、各種の薬などについて研究を集めて検討しましたが、どの方法についても効果を示す根拠は限られており、質の高い研究が不足していると結論しています[7]。自分に合いそうな方法を試すのはかまいませんが、効果がはっきりしないものに頼りすぎず、つらいときは医療機関に相談してください。

一方、水分もとれないほど吐く、尿の量が明らかに減る、体重が減ってきた、ふらつくといった場合は、妊娠悪阻(重いつわり)の可能性があります。点滴や薬による治療が必要になることがあるため、我慢せず早めに産婦人科を受診してください[3]。

💡 用語解説:妊娠悪阻(にんしんおそ)

つわりが重くなり、食事や水分がとれずに脱水や栄養不足、体重減少が起こった状態です。尿にケトン体(体が脂肪を分解してエネルギーを作るときに出る物質)が出る、体重が妊娠前より大きく減る、などが目安になります。ふつうのつわりとは区別され、点滴による水分・電解質の補給、ビタミンB1の補充、吐き気止めなどの治療が必要になることがあります。我慢を続けると体への負担が大きくなるため、早めの受診が大切です。

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胃痛やつわりがつらくても、NIPTはオンラインで受けられる

赤ちゃんの染色体について調べるNIPTに関心があっても、胃痛やつわりなどで医療機関へ出向くのがつらい時期もあります。ミネルバクリニックでは、オンラインでの遺伝カウンセリングと、お住まいの近くの医療機関での採血を組み合わせたNIPTを用意しています。

NIPTとは

NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査、新型出生前診断とも呼ばれます)は、妊婦さんの血液に含まれる赤ちゃん由来のDNAの断片を調べ、ダウン症候群(21トリソミー)などの染色体の病気の可能性を調べる検査です。採血だけで受けられ、検査そのものによる流産のリスクはありません。ただし、NIPTは可能性を調べる非確定的検査で、陽性の場合は羊水検査などの確定検査で確認する必要があります。

日本では、日本医学会の出生前検査認証制度等運営委員会が認証した「認証施設」と、認証を受けていない「非認証施設」でNIPTが行われています。運営委員会の情報サイトは、認証施設のNIPTは妊娠9〜10週以降に採血し、ダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーの3つについて可能性を調べる検査だと説明しています[8]。非認証施設ではこれ以外の項目を調べられるところも多い一方、施設によっては検査前後の遺伝カウンセリングが十分に受けられないこともあります。検査を受ける施設を選ぶときは、検査内容だけでなく、結果が陽性だった場合の説明や確定検査までの支援体制も確認しましょう。

ミネルバクリニックでは、妊娠9週以降のNIPTを受け付けています(妊娠6〜8週は臨床研究として受け付けています)。胃痛やつわりの有無は、NIPTの結果には影響しません。

オンラインでの遺伝カウンセリング

オンラインでの遺伝カウンセリングは、自宅から受けられるため、移動や待ち時間の負担を減らせます。胃痛やつわりがつらい妊婦さんや、小さなお子さんがいて遠出が難しい妊婦さんでも受けやすい方法です。遺伝カウンセリングは常駐する臨床遺伝専門医が行い、検査でわかること・わからないこと、陽性だった場合の選択肢を説明します。採血は、ミネルバクリニックが案内するお住まいの近くの医療機関で行います。対象となる地域や採血できる医療機関は、予約時に確認してください。

ミネルバクリニックのNIPT検査の流れ

オンラインNIPTを希望する場合の、予約から結果までの流れです。

ご予約WEBフォーム・問診票
▶
遺伝カウンセリング検査プランを決定
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採血近くの医療機関で
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結果開示陽性時は遺伝カウンセリング

ご予約

WEBフォームから申し込みます。予約が確定したら、案内に沿って検査費用の支払いと問診票の記入を行います。

遺伝カウンセリング

臨床遺伝専門医である院長が遺伝カウンセリングを行います。検査でわかること・わからないことや、陽性だった場合の選択肢の説明を受けたうえで、最終的な検査プランを選びます。基本検査(13・18・21トリソミー)以外の項目を追加した場合は、差額の支払いが必要です。

採血

ミネルバクリニックから検査キットが届きます。お住まいの近くの医療機関で採血を受け、採血後の検体はご自身でミネルバクリニックへ返送します。採血できる医療機関の案内や手配も相談できます。詳細は事前に資料で案内されます。

検体発送〜検査結果開示

検体はミネルバクリニックから検査会社へ発送され、検査の進み具合に応じてメールで連絡が届きます。結果は患者さま用のマイページで確認できます。陽性だった場合は、確定検査を含めた今後の選択肢について、遺伝カウンセリングで説明を受けられます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 妊娠超初期の胃痛はいつから始まりますか?

早い人では生理予定日のころ(妊娠4週前後)から胃の不快感に気づくことがありますが、始まる時期や感じ方には個人差があり、まったく感じない人もいます。胃痛は妊娠していなくても起こるため、胃痛の有無で妊娠を判断することはできません。

Q2. 胃痛だけで妊娠しているかわかりますか?

わかりません。生理前も妊娠超初期もプロゲステロンが高い時期で、胃の症状がよく似ているためです。妊娠の可能性があるときは、生理予定日を過ぎてから妊娠検査薬で確かめ、陽性なら産婦人科を受診してください。

Q3. 妊娠初期に市販の胃薬や痛み止めを飲んでもよいですか?

市販薬には妊娠中に向かない成分を含むものもあるため、自己判断で飲まず、妊婦健診を受けている医療機関か、妊娠中であることを伝えたうえで薬剤師に相談してください。イブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬は、妊娠20週以降は使用を避けるよう米国食品医薬品局が勧告しています。制酸薬は、鉄剤や葉酸のサプリメントと2時間ほどずらして飲むよう勧められています。

Q4. 妊娠初期の胃痛は流産のサインですか?

みぞおちのあたりの胃痛そのものが、流産のサインというわけではありません。流産で出やすいのは下腹部の痛みと性器出血です。下腹部の痛みに出血をともなう場合や、下腹部の片側の強い痛みがある場合は、流産や子宮外妊娠(異所性妊娠)の可能性もあるため、すぐに医療機関に連絡してください。

Q5. 妊娠中期以降のみぞおちの痛みで気をつけることは?

妊娠が進むと、大きくなった子宮が胃を押し上げるため胸やけが起こりやすくなります。一方、みぞおちから右上腹部にかけての強い痛みに、頭痛や目がチカチカする、急なむくみなどをともなう場合は、妊娠高血圧症候群やHELLP症候群の可能性があるため、すぐにかかりつけの産科へ連絡してください。

Q6. 妊娠中の胃痛は赤ちゃんに影響しますか?

ホルモンやつわりによる胃痛や胸やけそのものが、赤ちゃんに悪い影響を与えるという根拠は示されていません。ただし、水分や食事がとれない状態が続く妊娠悪阻や、虫垂炎・胆のう炎・妊娠高血圧症候群など治療が必要な病気が隠れている場合は、早めの対応が必要です。痛みが強い、続く、ほかの症状をともなう場合は受診してください。

まとめ

妊娠超初期・妊娠初期の胃痛は、キリキリした痛み、重い・焼けるような鈍痛、みぞおちの痛み、食後の痛みなど、感じ方がさまざまです。主な背景は、プロゲステロンによる胃腸の動きの変化、つわり、緊張や不安で、妊娠中期・後期には大きくなった子宮による胃の圧迫と胸やけが加わります[1][2]。生理前の胃痛とは症状で区別できないため、妊娠の確認は添付文書に指定された時期の妊娠検査薬で行いましょう。

少量ずつ食べる、刺激物を控える、食後すぐ横にならない、寝るときは上半身を高くする、といった工夫で和らぐことが多い一方、吐血や黒い便、発熱、水分もとれない嘔吐、下腹部の強い痛みや出血、妊娠中期以降のみぞおちの強い痛みと頭痛をともなう場合は、妊娠による変化と決めつけず、早めに受診してください。胃薬や痛み止めは自己判断で使わず、医師や薬剤師に相談してから使いましょう。

🧬 NIPTを考えている方へ

ミネルバクリニックでは、常駐する臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングとあわせてNIPTを提供しています。つわりや胃痛で外出がつらい時期でも、オンラインでの遺伝カウンセリングと近くの医療機関での採血で受けることができます。妊娠9週以降の方を受け付けています(妊娠6〜8週は臨床研究として受付)。

参考文献

  • [1] Indigestion and heartburn in pregnancy. NHS. [NHS]
  • [2] Vazquez JC. Heartburn in pregnancy. BMJ Clin Evid. 2015;2015:1411. [PMC4562453]
  • [3] American College of Obstetricians and Gynecologists. ACOG Practice Bulletin No. 189: Nausea and Vomiting of Pregnancy. Obstet Gynecol. 2018;131(1):e15-e30. [PubMed 29266076]
  • [4] Stomach pain in pregnancy. NHS. [NHS]
  • [5] Masselli G, Bonito G, Gigli S, et al. Imaging of Acute Abdominopelvic Pain in Pregnancy and Puerperium—Part II: Non-Obstetric Complications. Diagnostics. 2023;13(18):2909. [PMC10528125]
  • [6] FDA recommends avoiding use of NSAIDs in pregnancy at 20 weeks or later because they can result in low amniotic fluid. U.S. Food and Drug Administration. 2020. [FDA]
  • [7] Matthews A, Haas DM, O’Mathúna DP, Dowswell T. Interventions for nausea and vomiting in early pregnancy. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(9):CD007575. [PubMed 26348534]
  • [8] 出生前検査認証制度等運営委員会. NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)とは. [出生前検査認証制度等運営委員会]

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プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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