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着床出血はいつ起こる?性行為から何日後か、生理との違い・色や量の見た目・確かめる方法を医師が解説

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

着床出血とは、妊娠が成立した周期の生理予定日のころにみられる、少量の出血を指す呼び名です。受精卵の着床は排卵から6〜12日後に起こりますが、出血があっても見た目で生理と見分けることはできません。着床出血は起こらない人のほうが多く、出血がないことは妊娠していないことを意味しません。確かめる方法は、生理予定日の約1週間後以降に使う妊娠検査薬です。この記事では、起こる時期と日数の数え方、色・量・期間、生理や排卵出血との違い、受診の目安を研究結果をもとに解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
🩸 着床出血・妊娠超初期の出血
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 着床出血はいつ起こりますか?生理とはどう見分けますか?

A. 受精卵の着床は排卵の6〜12日後で、8〜10日目が多いとされています[1]。着床出血と呼ばれる出血は、生理予定日のころにみられることが多いと報告されています[2]。色や量には個人差があり、見た目だけで生理と確定することはできません。妊娠しているかどうかは、生理予定日の約1週間後以降に妊娠検査薬で確かめます。

  • ➤起こる時期 → 着床は排卵後6〜12日。出血は生理予定日の数日前〜当日ごろに多い
  • ➤性行為から何日後 → 排卵日との位置関係しだいで、およそ6〜17日後と幅がある
  • ➤色・量・期間 → 薄いピンク〜茶色、拭くと付く〜おりものシート程度、1〜3日が多い
  • ➤生理・排卵出血との違い → 一番の手がかりは起こる時期。見た目では確定できない
  • ➤確かめ方と受診 → 検査薬は予定日の約1週間後から。強い腹痛や多量の出血はすぐ受診

1. 着床出血とは?起こる仕組みと頻度

着床出血は医学的な診断名ではなく、妊娠が成立した周期の生理予定日前後にみられる、少量の出血をまとめて指す呼び名です。

受精卵が子宮内膜にもぐり込むときの出血と考えられている

卵管で受精した卵子は、細胞分裂を繰り返しながら数日かけて子宮へ移動し、胚盤胞と呼ばれる段階で子宮内膜にもぐり込みます。これが着床で、詳しい流れは着床のしくみで解説しています。着床出血は、このとき内膜の細い血管が傷ついて起こる出血だと説明されてきました。

💡 用語解説:胚盤胞(はいばんほう)

受精卵が分裂を重ねて、受精から5日目前後に到達する段階です。将来赤ちゃんになる細胞と、胎盤のもとになる外側の細胞層からなり、外側の細胞が子宮内膜に入り込んで着床が始まります。

ただし、この説明を直接確かめた研究は多くありません。妊娠を希望する女性221人が毎日の尿と日誌を記録した前向き研究では、尿中のホルモンから排卵日と着床日を特定したうえで、出血した日を調べています。その結果、出血は生理予定日のころに起こる傾向があり、着床の当日に起こることはまれでした。著者らは、着床そのものが出血を起こすという仮説を支持する所見は得られなかったと結論しています[2]。

妊娠すると子宮頸部(子宮の入り口)に向かう血管が増え、少しの刺激でも出血しやすくなることも知られています[3]。「着床出血」は妊娠初期の少量の出血に付けられた呼び名であり、原因がいつも着床とは限りません。

着床出血は起こらない人のほうが多い

着床出血は妊娠した人の一部にみられるもので、起こらない人のほうが多数です。先の前向き研究では、臨床的に妊娠が確認された151人のうち、妊娠8週までに1日でも出血を記録したのは14人(9%)でした[2]。

妊娠初期(おおむね妊娠13週ごろまで)全体に広げてみると、出血を経験する人はもう少し多くなります。4,510人の妊婦を追跡した地域コホート研究では、27%が妊娠初期に何らかの出血やスポッティング(点状の出血)を報告していました[4]。米国産科婦人科学会(ACOG)の患者向け資料も、妊娠初期の出血は妊婦の約15〜25%にみられるとしています[3]。

これらの数字には着床出血以外の出血も含まれます。「着床出血は4人に1人」という数字は、妊娠初期の出血全体の割合と混同されている可能性があります。着床出血に限った頻度は、定義が定まっていないため算出されていません。

着床出血があっても赤ちゃんに影響はある?

少量で短い出血は、流産のリスク上昇とは関連しないと報告されています。前向き研究では、妊娠ごく初期に出血を記録した14人のうち12人が出産に至っていました[2]。また、先の4,510人の研究では、スポッティングや少量の出血、特に1〜2日で終わる出血は流産と関連していませんでした[4]。

一方で、同じ研究では、多量の出血があった人は出血がなかった人に比べて流産のリスクが約3倍で、とくに痛みを伴う多量の出血がリスクの上昇の大部分を占めていました[4]。つまり、「少量で短い」出血と「多量・痛みを伴う」出血は、分けて考える必要があります。

これらは集団での研究結果で、個人の経過を予測するものではありません。量が多い、痛みが強いといった場合は、第9章の受診の目安を確認してください。

2. 着床出血はいつ起こる?生理予定日との関係

着床は排卵から6〜12日後に起こり、着床出血と呼ばれる出血は生理予定日の数日前〜当日ごろにみられることが多いです。着床の時期と出血の時期は、分けて考えます。

排卵から6〜12日後、生理予定日の数日前〜当日

着床の時期を詳しく調べたのが、尿中のhCG(妊娠すると胎盤のもとになる細胞がつくるホルモン)が現れた日を着床日とみなした研究です。臨床的な妊娠に至った着床の84%は排卵後8〜10日目で、12日目より後の着床はありませんでした[1]。

生理は排卵からおよそ14日後に始まるため、着床は生理予定日の数日〜1週間ほど前にあたります。一方、出血そのものは着床の当日ではなく、生理予定日のころにみられることが多いと報告されています[2]。そのため、出血が「生理が少し早く来た」「予定日ちょうどに来た」ように見えるのです。

排卵0日目
▶
受精排卵当日〜翌日
▶
着床排卵後6〜12日
▶
生理予定日排卵後約14日
▶
妊娠検査薬予定日の約1週間後〜

同じ研究では、着床が遅いほど早期に妊娠が終わる割合が高いことも示されています(9日目までの着床で13%、11日目で52%)[1]。ただし集団のデータであり、出血の日から個人の経過を予測することはできません。

妊娠週数でいうと妊娠3週〜4週はじめ(28日周期の場合)

妊娠週数は、最後の生理が始まった日を「妊娠0週0日」として数えます(妊娠週数の数え方)。生理周期が28日で、排卵が生理開始から14日目(妊娠2週0日)に起こったとすると、着床は20〜26日目、つまり妊娠2週6日〜3週5日ごろにあたります。生理予定日は妊娠4週0日で、出血は妊娠3週〜4週はじめに多い計算です。

周期が35日の人は排卵が21日目ごろになり、着床も1週間ほど後ろにずれます。週数は周期の長さで変わるため、次の生理予定日から逆算するほうが実感に合います。

生理予定日を過ぎてから出血することはある?

生理予定日を過ぎてからの出血が、妊娠初期の出血である可能性はあります。ただし、着床出血かどうかは出血の様子からは判断できません。着床の日を尿中hCGで調べた研究では、臨床的な妊娠の10%は、生理予定日の初日の時点でまだ着床していませんでした[5]。

予定日を過ぎてからの出血は、排卵が遅れた周期の生理や、ホルモンの変動による不正出血のこともあります。予定日の約1週間後以降に妊娠検査薬で確認します(第8章)。

3. 性行為から何日後?着床出血の時期の計算方法

着床出血が性行為から何日後に起こるかは、性行為と排卵日の間隔で変わり、計算上はおよそ6〜17日後と幅があります。

計算の起点は「性行為の日」ではなく「排卵日」

妊娠を希望する女性221人の毎日の記録を調べた研究では、妊娠が成立したのは、推定排卵日で終わる6日間に性交があった場合に限られていました。妊娠の確率は、排卵5日前の性交で0.10、排卵当日の性交で0.33でした[6]。

精子は女性の体内で数日間生き続けられる一方、卵子が受精できる時間は排卵後の短いあいだに限られるためです。精子の生存期間については精子の寿命、排卵日の見当のつけ方は排卵日の計算方法で解説しています。

受精は排卵当日から翌日に起こるため、着床の時期は「排卵日から6〜12日後」で決まります。性行為から数えると、「性行為から排卵までの日数(0〜5日)」に「排卵から着床までの日数(6〜12日)」を足した、およそ6〜17日後が計算上の範囲です。

早見表:性行為の日と排卵日の位置関係ごとの目安

排卵日を正確に知ることは難しいため、計算上の目安として見てください。

📅 性行為の日からみた着床・生理予定日・検査の目安(28日周期・排卵14日目の場合)

性行為の日 着床の目安(性行為から) 生理予定日(性行為から) 検査薬が使える目安(性行為から)
排卵当日 6〜12日後 約14日後 約21日後〜
排卵の2日前 8〜14日後 約16日後 約23日後〜
排卵の5日前 11〜17日後 約19日後 約26日後〜

※妊娠が成立しうる性交の時期と確率は Wilcox ら[6]、着床の時期は Wilcox ら[1]による。実際の排卵日は周期ごとにずれます。

同じ「性行為から10日後」の出血でも、排卵当日の性交なら着床の時期、排卵5日前の性交ならまだ着床前です。「エッチしてから何日後か」だけで着床出血かどうかは判断できません。

体外受精の場合(初期胚移植・胚盤胞移植から何日後か)

体外受精では、培養した胚を子宮に戻します(胚移植)。胚を戻した日の胚の日齢(受精から何日目か)を、「排卵から何日目か」に置き換えて考えます。

受精から5日目前後の胚盤胞を移植した場合は、排卵後5日目ごろにあたる胚が子宮に入ることになり、着床は移植後まもない時期に起こります。受精から2〜3日目の初期胚を移植した場合は、子宮の中で胚盤胞まで育つ日数の分だけ、着床の時期が後ろにずれます。移植の方法ごとの流れは、初期胚移植の着床時期と胚盤胞移植から判定までの流れで解説しています。

いずれも計算上の考え方です。不妊治療中の出血は治療の経過や薬とあわせて判断するため、通院中の施設の指示と判定日に従ってください。

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4. 着床出血の見た目|色・量・期間の目安

妊娠初期の出血の多くは少量で、3日未満で終わります。写真は光や生地の色で見え方が変わるため、この記事では言葉と図で目安を示します。

色:薄いピンク・鮮血・茶色(茶色になる理由)

着床出血の色として、薄いピンク、赤い鮮血、茶色がよく挙げられます。ただし、色と着床出血を直接結びつけて調べた研究は見当たらず、色から着床出血かどうかを判定することはできません。以下は、出血の色が変わる一般的な理由です。

出てすぐの血液は赤く、おりものと混ざると薄いピンク色に見えます。腟の中にしばらくとどまった血液は、ヘモグロビンが酸化して茶色に変わります。茶色いおりものは古い血が混じったもので、それ自体が妊娠や異常を示すわけではありません。

気をつけたいのは、赤い出血が増えていく場合です。妊娠初期の出血を詳しく調べた研究では、多量の出血は痛みを伴うことが多く、続く期間が長く、赤い色であることが多いと報告されています[7]。赤い出血が生理のように増える場合は、着床出血と考えずに受診の目安を確認してください。

量:拭くと付く〜おりものシート程度(量のスケール図)

「着床出血」と呼ばれる出血について、量を直接定義した質の高い研究はありません。妊娠初期の出血全体では、スポッティングや少量の出血が多く報告されています。4,539人の妊婦を対象にした研究では、約4人に1人が妊娠初期に出血を経験していましたが、多量の出血はそのうち8%にとどまり、大半はスポッティングや少量の出血でした[7]。

拭いた紙に付くスポッティング
▶
おりものシートに少し少量の出血
▶
ナプキンが必要生理の少ない日程度
▶
ナプキンを頻繁に替える生理の多い日以上・受診の目安

左の2段階は、妊娠初期にみられるスポッティング〜少量出血の目安です。ただし、この量だけで着床出血と診断することはできません。右に進むほど生理やほかの原因も考え、生理の多い日より多い出血は受診の目安に当てはまります。

💡 用語解説:スポッティング(点状出血)

下着やトイレットペーパーに点状に付く程度の、ごく少量の出血です。妊娠初期のほか、排卵のころや生理の前後にもみられます。量を表す言葉で、原因を示すものではありません。

期間:数時間〜1〜3日

「着床出血」だけを対象に期間を確立した研究はありませんが、妊娠初期の出血の多くは短期間です。妊娠初期の出血を調べた研究でも、多くの出血は3日未満で終わっていました[7]。さらに、スポッティングや少量の出血で、特に1〜2日で終わるものは、流産のリスク上昇と関連していませんでした[4]。

これに対して生理の出血は、規則的な周期の女性を調べた研究で中央値5日続き、最初の3日間に多くなっていました[8]。生理が軽く短く終わる周期もあるため、期間だけでは決められません。1週間以上続く出血は着床出血とは考えにくく、受診して原因を確認してください。

塊・ドロッとした出血・生理並みの量のとき

血の塊が出る、ドロッとした出血が続く、生理並みの量になるといった場合は、着床出血と考えずに、生理やほかの原因による出血を考えます。塊は出血の量が多いときにできやすいため、量が多いサインとして受け止めます。

妊娠初期の多量の出血、とくに痛みを伴うものは、流産のリスク上昇と関連することが報告されています[4]。生理並みの出血は子宮外妊娠や化学流産でもみられます。「生理並みの量でも妊娠していた」という話は結果として妊娠が続いた例で、量の多い出血が安全という意味ではありません。

5. 着床出血と生理の違い|見分け方の比較表

着床出血と生理を見分ける手がかりは、起こる時期、量と期間、基礎体温の推移ですが、どれも確実ではありません。迷いやすい排卵出血も含めて比べます。

比較表(着床出血・生理・排卵出血の3列)

🩸 着床出血・生理・排卵出血の比較

項目 着床出血と呼ばれる出血 生理 排卵出血(中間期出血)
時期 生理予定日の数日前〜当日ごろ(着床自体は排卵後6〜12日) 生理予定日ごろ 周期の中ほど(次の生理の約2週間前)
色 薄いピンク〜鮮血〜茶色 鮮血〜暗赤色 薄いピンク〜茶色
量 拭くと付く〜おりものシート程度 徐々に増え、ナプキンが必要 ごく少量
期間 数時間〜1〜3日 3〜7日(中央値5日) 数時間〜2、3日
塊 通常はみられない 出ることがある 通常はみられない
痛み ないか軽い(着床痛は医学的に確立していない) 生理痛 排卵痛を伴うことがある
基礎体温 高温期が続く 下がって低温期になる 低温期から高温期へ移る時期

※生理の期間は Dasharathy ら[8]、出血の時期は Harville ら[2]、着床の時期は Wilcox ら[1]による。色・量は一般的な目安で、個人差があります。

もっとも頼りになるのは「時期」の行です。着床のころのチクチクした痛み(着床痛)は医学的に確立したものではなく、詳しくは着床痛は本当にあるのかで解説しています。

基礎体温で見るポイント

基礎体温をつけている場合は、出血のあとも高温期が続いているかどうかが手がかりになります。排卵後は黄体(卵巣にできる組織)から出るプロゲステロンの作用で高温期になり、妊娠しなければ体温が下がって生理が始まります。妊娠すると高温期が続きます。

見るべきなのは「何度か」ではなく「下がったかどうか」です。「36.7度以上なら妊娠」のような絶対値の目安には根拠がありません。出血の前後で体温が低温期の水準まで下がれば生理の可能性が高く、高温期のまま続けば妊娠の可能性を考えます。1日だけでなく数日の流れで判断します。基礎体温の形の読み方は基礎体温の変化(グラフ別)で詳しく紹介しています。

見た目だけでは確定できない理由

「生理だと思っていたら着床出血だった」ということは起こりえますが、出血の見た目だけで着床出血と確定することはできません。前向き研究では、妊娠ごく初期の出血は概して少量で、最終月経と取り違えるほどではなかったと報告されています[2]。一方で、生理が軽い周期もあります。

予定日のころの少量の出血は、不正出血、子宮頸部からの出血、化学流産などでも起こり、色と量が似ることがあります。胸の張りや眠気など出血以外の変化も、妊娠していない周期の生理前にみられます。出血以外のサインは妊娠超初期の症状で整理しています。確かめる方法は第8章で解説します。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「着床出血」という言葉の受け止め方】

「着床出血」という言葉からは、受精卵が根を下ろした証拠のような印象を受けます。けれども、着床の日と出血の日を照らし合わせた研究では、両者は一致していませんでした。医学的には、妊娠初期の少量の出血について、着床が原因だと見た目だけで確定することはできません。

色や量から妊娠の有無を読み取ろうとすると、解釈が揺れます。予定日から数えた時期と、予定日の1週間後の検査薬という確かめられる情報を軸にするほうが、迷う時間を短くできます。

6. 着床出血と排卵出血の違い|起こる時期で見分ける

排卵出血は周期の中ほど、次の生理のおよそ2週間前に起こり、着床出血と呼ばれる出血は生理予定日の数日前〜当日ごろに起こります。両者を見分けるいちばんの手がかりは、起こる時期です。どちらも少量の出血であるため、色や量ではほとんど区別がつきません。

💡 用語解説:排卵出血(中間期出血)

生理と生理の中間、排卵のころに起こる少量の出血で、医学的には中間期出血と呼ばれます。ホルモンの変動による機能的な出血とされ、多くは自然に止まります。

排卵出血は、排卵の直前に卵胞から出るエストロゲン(卵胞ホルモン)が、排卵の前後で一時的に下がることで、子宮内膜の一部がはがれて起こると考えられています。基礎体温では低温期から高温期へ移るあたりにみられます。

規則的な生理周期の女性201人を調べた研究では、周期の中間に出血を経験したのは4.8%でした[8]。

前回の生理開始日から何日目の出血かを確認します。28日周期なら、14日目前後の出血は排卵出血に近く、25〜28日目ごろの出血は着床出血と呼ばれる出血や生理に近い時期です。

出血を毎周期くり返す、性交のたびに出血するといった場合は、ポリープなどの原因がないか婦人科で確認してください。

7. 着床出血と間違えやすい出血

生理予定日のころの出血には、化学流産、子宮外妊娠、絨毛膜下血腫、胞状奇胎、ポリープからの出血などもあります。見た目では区別できないため、特徴と危険なサインを知っておきます。

化学流産

化学流産は、尿や血液の検査でhCGが検出されて妊娠反応が出たあと、超音波で胎嚢(赤ちゃんを包む袋)が確認できる前に妊娠が終わることです。

化学流産は珍しいものではありません。毎日の尿検査でhCGを調べた研究では、hCGで確認された妊娠の31%が失われ、全妊娠の22%は臨床的に妊娠と認識される前に失われていました[9]。

化学流産の出血と着床出血と呼ばれる出血は、色や量で見分けることはできません。陽性のあとに生理のような出血があり、反応が薄くなる経過は化学流産を考えます。症状や経過、着床出血との違いは化学流産の症状と着床出血との違いで詳しく解説しています。

子宮外妊娠

子宮外妊娠(異所性妊娠)は、受精卵が子宮の内側以外の場所に着床する状態で、報告された妊娠の約2%を占めます。着床する場所は卵管が90%以上です[10]。卵管は胎児を育てられる構造ではないため、妊娠を続けることはできません。

子宮外妊娠でも検査薬は陽性になり、初期には少量の出血しかないこともあります。胚が大きくなると卵管が破裂し、腹腔内に大量に出血することがあります。米国では、破裂した子宮外妊娠が妊娠に関連した死亡の2.7%を占めていました[10]。

片側の強い下腹部痛、肩の痛み(おなかの中の出血が横隔膜を刺激して起こる)、ふらつきや失神は、すぐに受診が必要なサインです。詳しくは子宮外妊娠の原因と症状をご覧ください。

絨毛膜下血腫・切迫流産

妊娠初期の流産は、臨床的に確認された妊娠の約10%に起こり、流産した人の約半数はそれ以前に出血がありません[3]。流産の約50%は、胎児の染色体の数の異常など偶発的な理由によるものです[11]。そのため、出血があったかどうかと流産するかどうかは、必ずしも結びつきません。

絨毛膜下血腫は、胎盤のもとになる絨毛膜と子宮の壁のあいだに血液がたまった状態で、妊娠初期の出血の原因の一つです。7つの研究をまとめた2011年の解析では、絨毛膜下血腫がある人の自然流産は8.9%から17.6%に、早産は10.1%から13.6%に増えていました[12]。一方、その後のメタ解析では早産との有意な関連を認めない報告もあり、予後との関連は研究によって一貫していません。診断や経過は絨毛膜下血腫の原因と赤ちゃんへの影響で解説しています。

妊娠初期に出血があり、赤ちゃんの心拍が確認できて妊娠が続いている状態を切迫流産と呼びます。安静で流産を防げるかを調べたランダム化試験のまとめでは、安静にした群としなかった群で流産のリスクに有意な差はありませんでした[13]。詳しくは切迫流産とはをご覧ください。

胞状奇胎

胞状奇胎は、胎盤のもとになる絨毛が水ぶくれのように増える異常妊娠です。英国王立産婦人科医会のガイドラインは、多いきっかけを不規則な性器出血、陽性の妊娠検査、超音波所見としています[14]。

胞状奇胎は、受精のときの染色体の組み合わせの異常で起こります。全胞状奇胎の大部分は、卵子由来の核ゲノムを持たず、父親由来の染色体だけで構成された2倍体(雄核発生)です。部分胞状奇胎の多くは、父親由来の染色体が2組と母親由来が1組の3倍体です[14]。いずれも妊娠は続けられず、処置後はhCGの値を追う管理が必要です。遺伝学的な成り立ちは胞状奇胎(全胞状奇胎)で解説しています。

💡 用語解説:雄核発生(ゆうかくはっせい)

受精卵の核ゲノムが父親(精子)由来のみになる現象です。全胞状奇胎の大部分では、父親由来の染色体だけを2組持つ構成となり、胎児組織が形成されず、絨毛組織が異常に増殖します。

子宮頸管ポリープ・子宮ポリープ・そのほかの不正出血

妊娠中は子宮頸部に向かう血管が増えるため、性交のあとや内診、子宮頸がん検診のあとにスポッティングや少量の出血がみられることは珍しくありません[3]。子宮頸管ポリープも、こすれて出血しやすい病変です。ポリープの種類と対応は子宮ポリープの症状と治療で解説しています。

妊娠していない場合も、機能性出血、子宮内膜ポリープ、子宮筋腫、子宮頸がんなどで出血します。検査薬が陰性で出血をくり返す場合は、婦人科で原因を確認してください。受診の判断については不正出血の受診目安も参考になります。

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8. 着床出血かどうか確かめる方法|妊娠検査薬はいつ使う?

着床出血かどうかを確かめる方法は、生理予定日の約1週間後以降に使う妊娠検査薬です。陽性なら医療機関で妊娠の部位と経過を確認します。

生理予定日の1週間後が目安(フライングの陰性は否定にならない)

妊娠検査薬は、尿の中のhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を検出する検査です。hCGは着床後につくられ始めるため、着床前にはどんな検査でも反応しません。国内で市販されている一般用の妊娠検査薬の添付文書では、生理周期が順調な場合、生理予定日のおおむね1週間後から検査できるとされています[15]。

生理予定日の当日に検査しても、陰性になる妊娠があります。非常に感度の高い測定法で尿中hCGを調べた研究では、臨床的な妊娠の10%は予定日の初日にまだ着床しておらず、検出できる割合の上限は予定日の初日で90%、1週間後で97%と推定されました[5]。市販の検査薬では、見逃しはこれより多くなりえます。

着床出血かもしれない出血のすぐあとに検査して陰性でも、妊娠の可能性は否定できません。添付文書では、陰性や不明瞭な結果から約1週間たっても生理が始まらない場合は、再検査するか医師に相談するよう記載されています。また、子宮外妊娠などの異常妊娠でも結果が陰性になることがあるとされています[15]。検査薬の種類や使い方、結果の見方は妊娠検査薬はいつから使える?で詳しく解説しています。

陽性が出たら産婦人科へ(妊娠5〜6週の受診が目安)

検査薬で陽性が出たら、妊娠5〜6週ごろ、つまり生理予定日の1〜2週間後を目安に産婦人科を受診します。検査薬の陽性は「hCGが出ている」ことを示すだけで、妊娠が子宮の中で順調に育っているかまではわかりません。子宮外妊娠や化学流産でもhCGは作られるため、超音波で子宮の中の胎嚢を確認します。

受診が早すぎると胎嚢がまだ見えず、再受診が必要になることがあります。一般に胎嚢は妊娠5週ごろ、心拍は6〜7週ごろから確認できることが多いです。出血が多い、腹痛が強いといった場合は、週数を待たずに受診してください。

9. 受診の目安|様子を見てよい出血・すぐ受診すべき出血

少量で1〜3日で終わり、痛みがない出血であれば、検査薬を使う時期まで経過をみることができます。強い腹痛や多量の出血を伴う場合は、すぐに受診が必要です。少量で1〜2日で終わる出血は、流産のリスク上昇と関連しないと報告されています[4]。

すぐ受診:強い腹痛・肩の痛み・生理より多い量・塊が続く・ふらつき

⚠️ すぐに受診が必要なサイン

片側またはおなか全体の強い痛み、肩の先の痛み、生理の多い日よりも多い出血、血の塊が続けて出る、立ちくらみ・ふらつき・冷や汗・意識が遠のく感じ。これらは、子宮外妊娠の破裂や流産による多量の出血で起こることがあります。

子宮外妊娠は、破裂すると腹腔内に大量に出血し、命に関わることがあります[10]。また、痛みを伴う多量の出血は流産のリスク上昇と関連しています[4]。

早めに受診:検査薬が陽性になった後の出血、1週間以上続く出血

検査薬で陽性が出たあとに出血がある場合は、子宮の中に胎嚢があるか、化学流産や子宮外妊娠ではないかを超音波で確認する必要があります。

出血が1週間以上続く、毎周期くり返す、性交のたびに出血するといった場合も、早めに受診して原因を調べます。受診の目安は不正出血はどのくらい続いたら病院へ行くべきかでも整理しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【出血を見たら「量・痛み・時期」の3つを記録する】

受診の判断に役立つのは、出血の色よりも、量、痛みの有無、生理予定日から何日目か、という3つの情報です。

日付とともにメモしておくと、受診時にそのまま伝えられます。多量の出血や強い痛みがあるときは、記録より受診を優先してください。

10. 妊娠がわかったら|出生前検査を考える時期

出生前検査には受けられる時期が決まっています。NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)は、妊婦さんの血液中の胎盤由来のDNAを調べ、赤ちゃんの染色体の数の変化などを推定する検査です。

ミネルバクリニックでは、NIPTを妊娠9週以降は通常の検査として受け付けています。妊娠6〜8週は臨床研究として受け付けています。受けられる時期の考え方は、NIPTはいつからいつまで受けられる?で詳しく解説しています。検査の内容はNIPT(新型出生前診断)のご案内をご覧ください。

出生前検査を検討される場合は、まず産婦人科で子宮の中の妊娠と週数を確認したうえで、検査の時期を合わせていくと進めやすくなります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 着床出血がなくても妊娠していることはありますか?

はい、あります。着床出血と呼ばれる出血は妊娠した人の一部にみられるもので、起こらない人のほうが多数です。前向き研究では、妊娠8週までに出血を記録した人は9%でした。生理予定日の約1週間後に妊娠検査薬で確認してください。出血以外の変化については着床完了のサインも参考になります。

Q2. 着床出血はティッシュにつく程度ですか?ナプキンは必要ですか?

典型的には、トイレットペーパーに付く程度から、おりものシートに少し付く程度の量です。多くはナプキンが必要ないか、おりものシートで足ります。ナプキンが必要な量が続く場合は生理やほかの原因を考え、腹痛やふらつきがあればすぐに受診してください。

Q3. 着床出血から何日で妊娠検査薬が陽性になりますか?

出血の日から陽性になるまでの日数は決まっていません。着床出血と呼ばれる出血は着床の日と一致しないことが多く、hCGが検査薬で検出できる量になるまでにも数日かかるためです。生理予定日の約1週間後以降に検査し、早く検査して陰性なら約1週間後に再検査します。

Q4. 生理が2〜3日で終わった・いつもより少ないのは着床出血ですか?

その可能性はありますが、生理が軽く短く終わる周期もあるため、量や日数だけでは判断できません。本来の生理予定日の約1週間後に妊娠検査薬で確認してください。基礎体温では高温期が続いているかが手がかりになります。

Q5. 着床出血が何回も出ることはありますか?

妊娠初期には、少量の出血が数日おきにくり返しみられることがあります。何度も出血する場合は、子宮頸部からの出血、絨毛膜下血腫、化学流産なども考え、陽性後にくり返す場合は産婦人科で確認を受けてください。

Q6. 高温期8日目ごろの出血は着床出血ですか?

着床は排卵の6〜12日後に起こり、8〜10日目が多いとされているため、高温期8日目ごろの出血は時期としては着床のころにあたります。ただし原因が着床かどうかは確かめられず、検査薬もまだ反応しません。排卵後の体の変化は排卵1週間後の症状でも解説しています。

Q7. 着床出血のあとに着床しない(妊娠が続かない)ことはありますか?

あります。着床してhCGが出始めたあと、妊娠が臨床的に確認される前に終わる化学流産は珍しくなく、尿中hCGを毎日調べた研究では、検出された妊娠の22%がこの段階で終わっていました。ごく初期の妊娠喪失には胚の染色体異常などが関与しますが、個々の原因を特定できないことも多くあります。

Q8. 着床出血の量が多いのは双子だからですか?

着床出血の量と双子の妊娠を結びつける医学的な根拠は見当たりません。双子かどうかは超音波で胎嚢の数を確認してわかります。量の多い出血は、受診の目安にあてはまるかを確認してください。

まとめ

着床出血は、妊娠が成立した周期の生理予定日のころにみられる少量の出血を指す呼び名です。受精卵の着床は排卵の6〜12日後で8〜10日目が多い一方、出血は着床の当日ではなく予定日のころに多く、着床が原因だという直接の証拠は乏しいことがわかっています[1][2]。起こらない人のほうが多く、出血の有無で妊娠を判断することはできません。

性行為から何日後かは、排卵日との関係でおよそ6〜17日後と幅があり、色や量、期間でも生理や排卵出血と確実には見分けられません。確かめる方法は、生理予定日の約1週間後以降に使う妊娠検査薬です[15]。強い腹痛、肩の痛み、生理より多い出血、ふらつきがあるときは、すぐに受診してください。

🏥 妊娠がわかったら、出生前検査の時期もご確認ください

ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医がNIPT(新型出生前診断)を行っています。妊娠9週以降は通常の検査として、妊娠6〜8週は臨床研究として受け付けています。検査の内容と受けられる時期をご確認のうえ、ご予約ください。

参考文献

  • [1] Time of implantation of the conceptus and loss of pregnancy. N Engl J Med. 1999;340(23):1796-1799. [DOI]
  • [2] Vaginal bleeding in very early pregnancy. Hum Reprod. 2003;18(9):1944-1947. [PubMed 12923154]
  • [3] Bleeding During Pregnancy (FAQ). American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG). [ACOG]
  • [4] Association between first-trimester vaginal bleeding and miscarriage. Obstet Gynecol. 2009;114(4):860-867. [PubMed 19888046]
  • [5] Natural limits of pregnancy testing in relation to the expected menstrual period. JAMA. 2001;286(14):1759-1761. [PubMed 11594902]
  • [6] Timing of sexual intercourse in relation to ovulation. Effects on the probability of conception, survival of the pregnancy, and sex of the baby. N Engl J Med. 1995;333(23):1517-1521. [PubMed 7477165]
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  • [9] Wilcox AJ, Weinberg CR, O\’Connor JF, et al. Incidence of early loss of pregnancy. N Engl J Med. 1988;319(4):189-194. [DOI]
  • [10] ACOG Practice Bulletin No. 193: Tubal Ectopic Pregnancy. Obstet Gynecol. 2018;131(3):e91-e103. [PubMed 29470343]
  • [11] ACOG Practice Bulletin No. 200: Early Pregnancy Loss. Obstet Gynecol. 2018.
  • [12] Tuuli MG, Norman SM, Odibo AO, Macones GA, Cahill AG. Perinatal outcomes in women with subchorionic hematoma: a systematic review and meta-analysis. Obstet Gynecol. 2011;117(5):1205-1212. [DOI]
  • [13] Bed rest during pregnancy for preventing miscarriage. Cochrane Database Syst Rev. 2010;(10):CD003576. [DOI]
  • [14] Management of Gestational Trophoblastic Disease. Green-top Guideline No. 38. Royal College of Obstetricians and Gynaecologists (RCOG). 2020. [DOI]
  • [15] 一般用医薬品 添付文書(一般用ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンキット:妊娠検査薬). 医薬品医療機器総合機構(PMDA). [PMDA]

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プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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