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妊娠初期の腹痛・下腹部痛は大丈夫?左だけ・チクチクなど痛み方別の原因と受診目安

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

妊娠初期の腹痛・下腹部痛の多くは、子宮が大きくなることや、ホルモンの影響で腸の動きが変わることによって起こる痛みです。ただし、出血が増える、片側だけが強く痛む、痛みがだんだん強くなるといった組み合わせがあるときは、流産や子宮外妊娠(異所性妊娠)がないかを確かめるために、早めの受診が必要です。この記事では、左だけ・右だけといった痛む場所ごと、チクチク・ギューッといった痛み方ごとに原因と受診の目安を整理し、出血がない腹痛、妊娠超初期の腹痛、いつまで続くのかまで、臨床遺伝専門医の立場から解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約14分
🤰 妊娠初期・下腹部痛・受診目安
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 妊娠初期の腹痛は大丈夫?流産のサインですか?

A. 妊娠初期の腹痛の多くは、子宮の成長や腸の動きの変化による痛みで、腹痛だけで流産とは判断できません。危険かどうかは、痛みの強さの変化、出血の有無と量、片側だけの強い痛み、ふらつきや冷や汗といった全身の症状との「組み合わせ」で考えます。痛みが強くなっていく、出血が増える、片側が強く痛む、めまいや冷や汗がある場合は、夜間でも受診先に連絡してください。

  • ➤まず確認 → 今すぐ受診が必要なサインがあるか
  • ➤痛む場所 → 左だけ・右だけの痛みで考えること(子宮外妊娠・卵巣・虫垂炎など)
  • ➤痛み方 → チクチク・ズキズキ・ギューッ・キリキリの主な原因
  • ➤受診後 → 胎嚢・心拍の確認と、その後に考える出生前検査(NIPT)

1. 結論:妊娠初期の腹痛は多くが体の変化によるもの、見分けるのは「組み合わせ」

妊娠初期(一般に妊娠15週まで)の腹痛は、多くの人が経験する症状で、その多くは妊娠による体の変化から生じる痛みです。米国産婦人科学会(ACOG)の診療指針も、妊娠初期の性器出血や子宮の収縮に伴う痛みは、妊娠が順調に続いている場合にもよくみられると整理しています[1]。つまり「お腹が痛い」ということだけで、流産や異常があるとは判断できません。

一方で、腹痛の陰に治療を急ぐ状態が隠れていることもあります。代表的なのが、流産が進行している場合と、受精卵が子宮の外に着床する子宮外妊娠(異所性妊娠)です。どちらも腹痛そのものの性質だけでは見分けにくく、痛みの強さが時間とともにどう変わるか、出血があるか、片側に偏っているか、めまい・冷や汗などの全身の症状があるかを合わせて判断します。この記事では、この「組み合わせ」を軸に説明していきます。

目安として、短時間でおさまる、出血がない、横になると楽になる、日常生活が続けられるといった痛みは、体の変化によるものであることが多いです。反対に、休んでも痛みが強くなる、出血が増える、片側だけが強く痛むといった場合は、次の章の「今すぐ受診の目安」に当てはまるかを確認してください。

妊娠初期に腹痛が起きやすい理由

妊娠初期に腹痛が起こりやすいのは、短い期間にいくつもの変化が重なるためです。まず、子宮そのものが大きくなり始めます。妊娠前は鶏卵ほどの大きさの子宮が、妊娠初期の終わりには握りこぶしより大きくなり、骨盤の中で周りの組織を引っ張ったり押したりします。子宮の筋肉が張るような感覚や、生理痛に似た重さを感じるのはこのためです。

次に、子宮を骨盤の壁につなぎとめている靭帯(円靭帯など)が引き伸ばされます。急に立ち上がったとき、寝返りを打ったとき、くしゃみをしたときに、下腹部の横や足の付け根にピリッとした痛みが走るのは、この靭帯の伸びによるものと考えられています。

さらに、妊娠を維持するホルモンであるプロゲステロン(黄体ホルモン)には、腸の筋肉をゆるめる働きがあります。その結果、腸の動きがゆっくりになり、便秘やガスだまりが起こりやすくなります。お腹の張りやチクチクした痛みの原因として、実際にはこの腸の変化がかなりの割合を占めます。卵巣では、妊娠を支える黄体が一時的に腫れて、片側に鈍い痛みを感じることもあります。

💡 用語解説:円靭帯・プロゲステロン・黄体

円靭帯(えんじんたい)は、子宮の左右から足の付け根の方向へ伸び、子宮を支えているひも状の組織です。子宮が大きくなると引き伸ばされ、動いたときに鋭い痛みを生じることがあります。プロゲステロン(黄体ホルモン)は、子宮内膜を整えて妊娠を維持するホルモンで、腸の動きをゆるやかにする作用もあります。黄体(おうたい)は、排卵したあとの卵巣にできる組織で、妊娠初期にはプロゲステロンを分泌して妊娠を支え、一時的に腫れて黄体嚢胞(袋状のもの)になることがあります。

腹痛以外の症状もまとめて確認したい場合は、妊娠初期症状のチェックリストと気をつけることをご覧ください。

2. 今すぐ受診の目安:危険なサインのチェック

腹痛があって受診すべきか迷うときは、まず「すぐに連絡すべきサイン」があるかを確認します。ここでは、夜間でも連絡・受診してほしい症状と、診療時間内に相談すればよい症状に分けて整理します。受診先は、妊婦健診を受けている、または受ける予定の産婦人科です。まだ受診先が決まっていない場合は、近くの産婦人科か、夜間は救急の相談窓口に連絡してください。

すぐに(夜間でも)連絡・受診すべき症状

🚨 次のどれかがあれば、時間帯を問わず連絡を

・横になって休んでも痛みがおさまらず、だんだん強くなる
・生理の多い日と同じかそれ以上の出血、レバーのような塊が出る
・片側の下腹部だけが強く痛む、または肩の先が痛む
・めまい、ふらつき、冷や汗、気が遠くなる感じがある
・高い熱や、水分がとれないほどの嘔吐・下痢がある

これらは、流産が進行している場合や、子宮外妊娠で出血が起きている場合、卵巣がねじれている場合などにみられる症状です。とくに片側の強い痛みにふらつきや冷や汗が加わるときは、お腹の中で出血している可能性があり、救急車の利用もためらわないでください。肩の先の痛みは、お腹の中にたまった血液が横隔膜を刺激して起こることがあり、腹痛と無関係に見えても重要なサインです[2]。

診療時間内に相談すればよい症状

一方、次のような場合は、急いで夜間に受診しなくても、翌日など診療時間内に受診先へ連絡して相談する目安になります。軽い痛みが何日も続く、少量の茶色や薄いピンクのおりもの(少量の出血)がある、排尿のときにしみる、便秘が続いてお腹が張る、といった状態です。

こうした症状は多くの場合、深刻な状態ではありません。それでも、妊娠の週数や超音波の所見によって判断が変わるため、自己判断で様子を見続けるより、一度受診先に伝えておくほうが確実です。途中で痛みが強くなったり出血が増えたりした場合は、その時点で「すぐに連絡すべき症状」に切り替えて考えてください。出血の色や量による考え方は、妊娠初期の出血の原因と対処法で詳しく解説しています。

妊娠が確認できていない段階での強い腹痛

妊娠検査薬が陽性で、まだ産婦人科で子宮の中に胎嚢(赤ちゃんを包む袋)が確認されていない段階の強い腹痛は、とくに早めの受診が必要です。妊娠検査薬は、胎盤のもとになる組織が出すホルモン(hCG)に反応するため、子宮外妊娠でも陽性になります。検査薬の陽性は「妊娠している」ことは示しても、「子宮の中に正常に着床している」ことまでは示しません。

ACOGの指針は、妊娠反応が陽性で腹痛や性器出血がある人は、子宮外妊娠の可能性を念頭に評価を受けるべきだとしています[3]。妊娠がわかったばかりで片側の痛みがある場合は、健診の予約日を待たずに受診し、超音波で胎嚢の位置を確認してもらってください。

3. 流産の腹痛はどんな痛み?子宮外妊娠との違い

流産のときの腹痛は、出血を伴うことが多く、生理痛より強い痛みが波のように繰り返し、次第に強まっていくのが特徴です。一方、子宮外妊娠では、片側に偏った痛みと少量の出血から始まることが多く、お腹の中で出血が起こると急に強い痛みとふらつきが現れます。ただし、どちらも痛み方だけで区別することはできず、診断には超音波検査と血液検査が必要です。

流産のときの腹痛の特徴

妊娠初期の流産は珍しいことではなく、ACOGの指針によると、臨床的に確認された妊娠の約10%で起こります[1]。流産が進むときには、子宮が中身を外に出そうとして収縮するため、生理痛を強くしたような、下腹部の中央を締めつける痛みが周期的に起こります。この痛みは腰やお尻のほうに響くこともあります。

多くの場合、痛みと同時に性器出血がみられ、出血は鮮血に変わって量が増え、塊が混じることがあります。組織が外に出ると痛みが急に軽くなることもありますが、一部が子宮の中に残る場合もあるため、痛みが引いても受診して確認が必要です。流産には、進行の仕方によって切迫流産、進行流産、稽留流産(けいりゅうりゅうざん)などの区別があり、それぞれ症状と対応が異なります。詳しくは流産の種類をご覧ください。

なお、稽留流産のように、赤ちゃんの成長が止まっていても腹痛や出血がほとんどないまま、健診の超音波で初めてわかる流産もあります。「痛みがない=順調」とも言い切れないのが妊娠初期の難しいところで、判断の決め手はやはり超音波検査です。

出血なしの腹痛だけでは流産と判断できない理由

出血がなく、痛みも軽く短時間でおさまる腹痛は、多くが子宮の成長や腸の動きの変化によるもので、それだけで流産のサインとは言えません。進行流産では、子宮の収縮に伴う痛みと出血がみられ、経過とともに強まることがあります。出血がないまま軽い痛みだけが続く場合、原因は靭帯の伸びや便秘、ガスであることが多いのです。

妊娠初期の出血と流産との関係を調べた米国の前向き研究では、少量の出血(ティッシュに付く程度)だけでは流産との関連がはっきりせず、痛みを伴う多量の出血があった人で流産との関連が強かったと報告されています[4]。ACOGの患者向け解説も、妊娠初期の少量の出血はよくみられる一方で、痛みを伴う出血や量の多い出血は受診が必要なサインだとしています[5]。

ただし、「出血がないから大丈夫」と決めつけるのも危険です。子宮外妊娠では、お腹の中で出血していても膣からの出血がほとんどないことがあります。出血がなくても、片側だけの強い痛み、だんだん強くなる痛み、ふらつきがある場合は受診してください。腹痛と出血がありながら妊娠が続いている状態は切迫流産と呼ばれ、その考え方は切迫流産とはで解説しています。

子宮外妊娠(異所性妊娠)の痛み

子宮外妊娠(異所性妊娠)は、受精卵が子宮の内側以外の場所、多くは卵管に着床した状態で、報告されている妊娠の約2%を占めます[3]。卵管は赤ちゃんが育つ空間がないため、妊娠が進むと卵管が引き伸ばされて痛みが出て、やがて破裂してお腹の中に出血することがあります。

英国の国民保健サービス(NHS)は、子宮外妊娠の症状が現れやすいのは妊娠4〜12週ごろで、下腹部の片側の痛み、性器出血や茶色いおりもの、肩の先の痛み、排尿や排便時の不快感などがみられるとしています[2]。症状がまったくないまま健診で見つかることもあります。

卵管が破裂してお腹の中に出血すると、鋭く強い痛み、めまい、顔色が悪くなる、冷や汗といった症状が急に現れます。これは命にかかわる状態で、ACOGも、子宮外妊娠の破裂による出血が妊娠に関連した死亡の原因の一つであると指摘しています[3]。早い段階で見つかれば、薬による治療や卵管を温存する手術を選べる場合もあります。症状や治療については子宮外妊娠の原因と症状で詳しく解説しています。

🔍 流産と子宮外妊娠の痛みの違い(目安)

項目 流産が進行しているとき 子宮外妊娠
痛む場所 下腹部の中央、腰・お尻に響く 下腹部の片側に偏ることが多い
痛み方 生理痛のような締めつけが波のように繰り返し、強まる 鈍い痛みから始まり、出血すると急に鋭く強くなる
出血 鮮血で量が増え、塊が混じることがある 少量の出血や茶色いおりもの。膣からの出血がほとんどないこともある
ほかの症状 組織が出ると痛みが軽くなることがある 肩の先の痛み、めまい、冷や汗、ふらつき
確認の方法 超音波で子宮内の胎嚢・心拍を確認 超音波で子宮内に胎嚢がないことを確認し、血液検査のhCGの推移と合わせて判断

※痛み方だけで区別することはできません。いずれも受診して超音波検査を受けることが必要です。

妊娠初期の流産の多くは赤ちゃん側の染色体が原因

妊娠初期の流産の約半数は、赤ちゃん側の染色体の数や構造の変化によるもので、母親の行動が原因で起こるものではありません。ACOGの指針は、妊娠初期の流産の原因として最も多いのが胎児の染色体異常であり、全体の約50%を占めると整理しています[1]。

染色体の変化の多くは、卵子や精子ができる過程で染色体がうまく分かれず、数が1本多くなったり少なくなったりすることで偶然生じます。このような受精卵は、成長の途中で発育が止まることが多く、それが妊娠初期の流産として現れます。ACOGは同じ指針のなかで、運動や仕事、性行為などが妊娠初期の流産を引き起こすという根拠はないとしています[1]。流産の原因や、どのような場合に流産しやすいかは流産しやすい人の特徴と妊娠初期の流産の原因で、染色体の変化の種類そのものは染色体異常の種類(数的異常・構造異常・モザイク)で解説しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【流産を「自分のせい」と結びつけないでほしい理由】

妊娠初期に腹痛があると、「重い物を持ったから」「仕事を休まなかったから」と、直前の自分の行動を原因として探してしまいがちです。けれども、妊娠初期の流産の多くは受精の時点で決まっている染色体の変化によるもので、その後の生活の仕方で左右されるものではありません。

現在の医学的知見では、これは誰にでも一定の確率で起こり得る生物学的な現象です。腹痛があるときに大切なのは、原因を自分に探すことではなく、危険なサインがあるかを確認し、必要なら超音波で状態を確かめることだと考えています。

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4. 痛む場所別:左だけ・右だけ・真ん中・足の付け根

痛む場所は、原因を考えるうえで大きな手がかりになります。とくに「左だけ」「右だけ」といった片側の痛みでは、子宮そのものより、子宮の左右にある卵巣や卵管、腸の病気を考える必要があります。場所ごとに、よくある原因と注意したい原因を整理します。

左側だけ痛いとき

左下腹部だけの痛みで多いのは、便秘やガスだまり、円靭帯の引きつれ、妊娠を支える黄体の腫れです。左右差のある痛みで見逃してはいけないのは、流産よりも子宮外妊娠と卵巣のねじれです。

腸のうち、便がたまりやすいS状結腸は左下腹部にあるため、妊娠初期に便秘が強くなると、左側の張りや鈍い痛みとして感じやすくなります。排便やガスが出たあとに楽になるなら、腸が原因である可能性が高いと考えられます。また、排卵した側の卵巣に黄体ができて妊娠初期に腫れると、その側に重だるい痛みを感じることがあります。

一方、左の卵管で子宮外妊娠が起きている場合も、痛みは左側に出ます。妊娠検査薬が陽性でまだ子宮内の胎嚢が確認されていない時期に左側だけの痛みが続く場合や、痛みが強まる場合は、受診して胎嚢の位置を確認してください。腫れた卵巣が根元からねじれる卵巣茎捻転(らんそうけいねんてん)では、突然の激しい片側の痛みと吐き気が起こります(詳しくは卵巣茎捻転の症状と治療)。

右側だけ痛いとき(虫垂炎との見分け)

右下腹部だけの痛みでも、左側と同じく、円靭帯の引きつれ、黄体の腫れ、子宮外妊娠、卵巣茎捻転が考えられます。右側でこれらに加えて考えなければならないのが虫垂炎(いわゆる盲腸)です。

虫垂炎は、みぞおちやへその周りの痛みから始まって右下腹部に移っていく、発熱や吐き気を伴う、歩いたり咳をしたりすると右下腹部に響く、といった経過をたどることが多い病気です。妊娠中は子宮が大きくなるにつれて虫垂の位置が上に押し上げられるため、典型的な場所からずれて痛むこともあります。ACOGは、妊娠中であっても必要な手術は妊娠の時期にかかわらず行うべきであり、手術をためらって治療を遅らせてはならないとしています[6]。右下腹部の痛みに発熱が加わる、痛みがどんどん強くなるといった場合は、産婦人科か救急を受診してください。

下腹部の真ん中が痛いとき(生理痛のような痛み)

下腹部の真ん中が生理痛のように重く痛むのは、多くが子宮が大きくなることによる痛みです。子宮は骨盤の中央にあるため、子宮の筋肉が引き伸ばされたり張ったりすると、へその下あたりに生理痛に似た重さや締めつけを感じます。妊娠がわかる前後の時期に「生理が来そうな痛み」を感じる人が多いのも、このためです。

ただし、流産が進むときの痛みも、下腹部中央の生理痛のような痛みとして現れます。見分けるポイントは、出血を伴うかどうかと、痛みが波のように繰り返しながら強まっていくかどうかです。生理前の痛みと妊娠初期の痛みの違いについては、生理がきそうでこない・生理前と妊娠初期の違いで詳しく扱っています。

足の付け根・恥骨のあたりが痛いとき(円靭帯)

足の付け根や恥骨の横に、動いたときだけピリッと走る痛みは、子宮を支える円靭帯が引き伸ばされる痛み(円靭帯痛)であることが多いです。急に立ち上がる、寝返りを打つ、くしゃみや咳をするといった動作で起こり、数秒から数分でおさまるのが特徴です。円靭帯痛は子宮が大きくなる妊娠中期に目立つとされますが、妊娠初期から感じる人もいます。

動作をゆっくりにする、くしゃみの前に体を少し前かがみにする、横になるときは膝を軽く曲げるといった工夫で和らぐことがあります。安静にしていても痛みが続く、痛みが強くなる、発熱や出血を伴うといった場合は、靭帯以外の原因を考えて受診してください。

おしっこのときに痛いとき(膀胱炎)

排尿のときに下腹部がしみるように痛む、トイレが近いのに少ししか出ない、尿が濁る、残尿感があるといった症状は、膀胱炎を疑うサインです。妊娠中は、ホルモンの作用で尿の通り道がゆるみ、大きくなる子宮に膀胱が押されることもあって、尿路感染症が起こりやすくなります。

妊娠初期は頻尿そのものがよくある症状なので、「トイレが近い」だけなら心配はいりません。しかし、排尿時の痛みや濁りを伴う場合は、放置すると腎臓まで感染が広がる(腎盂腎炎)ことがあるため、早めに受診してください。妊娠中でも使える抗菌薬で治療できます。背中や腰の片側の痛みと発熱が加わる場合は、腎盂腎炎を考えて当日中に受診が必要です。

📍 痛む場所別の主な原因と受診の目安

痛む場所 よくある原因 注意したい原因と受診の目安
左だけ 便秘・ガス、円靭帯、黄体の腫れ 子宮外妊娠、卵巣茎捻転。痛みが強まる・続く、胎嚢が未確認なら受診
右だけ 円靭帯、黄体の腫れ、便秘 子宮外妊娠、卵巣茎捻転、虫垂炎。発熱・吐き気・歩くと響く痛みは受診
真ん中 子宮が大きくなる痛み 出血を伴い、痛みが波のように強まるなら流産の進行を考えて受診
足の付け根 円靭帯痛(動作で数秒〜数分) 安静でもおさまらない、発熱・出血を伴うなら受診
排尿時 膀胱炎 排尿時痛・濁りは早めに受診。背中の痛みと発熱は当日受診

※目安です。痛みの強さが増す、出血が増える、ふらつきがある場合は、場所にかかわらず早めに受診してください。

5. 痛み方別:チクチク・ズキズキ・ギューッ・キリキリ

痛み方の表現は人によって異なりますが、「どんな痛みか」を言葉にしておくと、原因の見当をつけやすくなり、受診したときにも状況が伝わりやすくなります。ここでは、よく使われる4つの表現ごとに主な原因を整理します。

チクチク・ピリピリ

チクチク・ピリピリした短い痛みは、妊娠初期に最もよく聞かれる表現です。原因として多いのは、子宮が大きくなるときの引きつれ、円靭帯の伸び、腸のガスの移動です。数秒から数分でおさまり、出血がなく、繰り返してもだんだん強くならない場合は、体の変化による痛みであることがほとんどです。

妊娠がわかる前後のチクチクを「着床痛」と呼ぶことがありますが、着床そのものが痛みを起こすという医学的な根拠ははっきり示されていません。チクチクする痛みがあることで、妊娠が順調かどうかを判断することはできない点も知っておいてください。

ズキズキ

ズキズキと脈打つような痛みや、同じ場所が持続して痛む場合は、チクチクよりも注意して経過を見ます。片側の卵巣が腫れているとき、便秘で腸が強く張っているとき、膀胱炎のときなどにみられます。

ズキズキする痛みが片側に続き、時間とともに強くなる場合は、子宮外妊娠や卵巣茎捻転の可能性を否定するために受診が必要です。とくに胎嚢がまだ確認されていない時期であれば、健診の予定を待たずに受診してください。

ギューッと締めつける・生理痛のような痛み

お腹がギューッと締めつけられる、生理痛のように重く痛むといった表現は、子宮の筋肉に関係する痛みで多く聞かれます。妊娠初期は子宮が大きくなる過程で、子宮が一時的に張ったり縮んだりするため、短時間のギューッとした痛みはよくあります。

注意したいのは、この締めつける痛みが一定の間隔で繰り返し、回を追うごとに強くなり、出血を伴う場合です。これは子宮が中身を外に出そうとして収縮している、つまり流産が進行しているサインである可能性があります。痛みの間隔と強さ、出血の量をメモして、受診先に連絡してください。

キリキリ・下痢を伴う痛み

お腹全体や、へその周りがキリキリと痛み、下痢や吐き気を伴う場合は、胃腸炎(感染性腸炎)や食べ物の影響など、腸の不調を考えます。便秘でたまった便が動くときにも、差し込むような強い腹痛が一時的に起こります。

胃腸炎そのものが直接赤ちゃんに影響することは多くありませんが、下痢や嘔吐で水分がとれなくなると脱水になりやすく、妊娠初期のつわりと重なると体力を大きく消耗します。発熱がある、水分がとれない、血便が出る、半日以上症状が続くといった場合は受診してください。生ものや加熱不十分な肉が原因の食中毒には、妊娠中に注意が必要なものもあります。

6. 妊娠超初期(生理予定日前後)の腹痛:着床痛と生理前の痛み

生理予定日の前後、まだ妊娠検査薬で確認できるかどうかという時期(妊娠3〜4週ごろ)の下腹部痛は、妊娠によるものか、生理前の痛みかを痛み方だけで区別することはできません。妊娠していても、生理前と同じように子宮のあたりが重くなったり、チクチクしたりすることがあるためです。

この時期の痛みを「着床痛」と表現することがありますが、前の章でも触れたとおり、着床によって痛みが起こるという明確な医学的根拠は示されていません。着床の時期と痛みの関係については着床痛は本当にあるのかで詳しく解説しています。

妊娠かどうかを判断する確実な方法は、生理予定日を過ぎてから妊娠検査薬を使うことです。痛みの感じ方で見分けようとするより、生理の遅れと検査薬の結果で確認するほうが確実です。生理前の症状と妊娠初期の症状の違いは生理がきそうでこないときの考え方で、胸の張りや体温の変化など、この時期のほかの症状は妊娠超初期の症状でまとめています。

なお、妊娠検査薬が陽性になった直後の時期は、子宮外妊娠がまだ見分けられない時期でもあります。陽性になったあとに片側の痛みが強くなる場合は、第2章の「妊娠が確認できていない段階での強い腹痛」を参考に、早めに受診してください。

7. 腹痛の原因になるその他の病気

妊娠初期の腹痛には、妊娠による体の変化や流産・子宮外妊娠のほかに、もともとあった婦人科の病気や、妊娠に伴ってできる変化が関係することがあります。ここでは代表的なものを整理します。

ルテイン嚢胞・卵巣の腫れと、卵巣茎捻転

妊娠初期には、妊娠を支えるホルモンの影響で卵巣に液体のたまった袋(嚢胞)がみられることがあります。代表的なのは排卵後の黄体が腫れてできる黄体嚢胞で、多くは妊娠の経過とともに自然に小さくなります。hCGが著しく高い場合などには、両側卵巣に多発するルテイン嚢胞がみられることもあります。痛みがない場合も多く、健診の超音波で偶然見つかることもあります。

問題になるのは、腫れて重くなった卵巣が根元からねじれる卵巣茎捻転です。卵巣への血流が途絶えるため、突然の激しい片側の痛み、吐き気や嘔吐が起こり、緊急の手術が必要になることがあります。卵巣の嚢胞そのものについては卵巣嚢胞とはで、ねじれた場合の症状や治療は卵巣茎捻転の症状と治療で解説しています。

子宮筋腫

子宮筋腫は子宮の筋肉にできる良性のこぶで、妊娠をきっかけに初めて見つかることもあります。妊娠中は、筋腫が大きくなったり、血流が不足して内部が変性したりすることで、筋腫のある場所に一致した痛みが出ることがあります。

筋腫による痛みは、多くの場合、安静や痛み止めで経過をみますが、使える薬は妊娠の時期によって異なるため、主治医の指示に従ってください。筋腫があるとわかっている人は、痛みが出たときに筋腫が原因なのか、別の原因なのかを超音波で確認してもらうと判断がしやすくなります。病気そのものは子宮筋腫とはをご覧ください。

絨毛膜下血腫

絨毛膜下血腫(じゅうもうまくかけっしゅ)は、赤ちゃんを包む膜(絨毛膜)と子宮の壁の間に血液がたまった状態です。妊娠初期の出血や腹痛をきっかけに超音波で見つかることが多く、出血を伴わずに健診で見つかることもあります。

多くは経過とともに吸収されますが、絨毛膜下血腫がある妊娠についての研究をまとめた解析では、血腫がない場合と比べて流産のリスクがおよそ2倍になると報告されています[7]。ただし、これは集団全体でみた傾向で、血腫の大きさや出血量、週数によって見通しは一人ひとり異なります。医師の指示に従って過ごしてください。詳しくは絨毛膜下血腫の原因と赤ちゃんへの影響で解説しています。

胃腸炎・便秘

妊娠中の便秘はよくある症状で、妊娠中の便秘の頻度を世界の研究から集計した解析も報告されています[8]。プロゲステロンで腸の動きがゆるやかになることに加えて、つわりで食事量や水分量が減ること、体を動かす機会が減ることも便秘を招きます。便秘による腹痛は、お腹の張り、左下腹部の鈍い痛み、ガスが動くときの差し込むような痛みとして現れ、排便やガスが出ると楽になるのが特徴です。

胃腸炎では、キリキリした痛みに下痢や嘔吐、発熱が加わります。どちらも子宮の病気ではありませんが、症状が強いと子宮の張りを感じやすくなり、流産の痛みとの区別が難しくなることがあります。出血がないか、痛みの中心が子宮のあたりかお腹全体か、排便で変化するかを確認しておくと、受診したときに役立ちます。

8. いつから・いつまで?週数別の目安

妊娠初期の腹痛は、妊娠がわかる前後の時期から始まり、多くは子宮が骨盤から出てお腹のほうへ大きくなっていく妊娠12〜15週ごろに落ち着いていきます。ただし個人差が大きく、痛みを感じない人もいれば、妊娠中期以降も靭帯の痛みが続く人もいます。時期ごとの変化の目安を表にまとめます。

📅 妊娠週数ごとの体の変化と腹痛の目安

時期 よくある体の変化 痛みの例 とくに注意したいこと
3〜4週(生理予定日前後) ホルモンの変化が始まる 生理前のような重さ、チクチク 痛みでは妊娠か生理前かを区別できない
5〜8週 胎嚢・心拍が見えてくる、つわり・便秘が増える 生理痛のような痛み、張り、ガス、片側の鈍い痛み 胎嚢の位置が確認できるまでは子宮外妊娠に注意
9〜12週 子宮の成長が進む 靭帯の引きつれ、動いたときの痛み、便秘の痛み 出血を伴う周期的な痛みは流産の進行を考える
13〜15週 子宮がお腹のほうへ出てくる、つわりが落ち着く人も 張りや痛みが減ることが多い。足の付け根の痛みは続くこともある 16週以降の腹痛は妊娠中期の考え方で判断する

※週数は妊娠週数(最終月経の開始日を0週0日とする数え方)です。目安であり、個人差があります。

妊娠5〜8週は、胎嚢と心拍が超音波で確認できるようになる一方で、流産も子宮外妊娠も症状が出やすい時期です。この時期の腹痛は、痛みの強さと出血に注意しながら、健診で胎嚢の位置と心拍を確認していくことが基本になります。

妊娠16週を過ぎてからの腹痛は、子宮の張りの考え方や注意すべき病気が妊娠初期と異なります。妊娠中期以降の痛みについては妊娠中期の腹痛をご覧ください。

9. 自宅でできる対処と避けたいこと(自己判断で市販薬を飲まない)

第2章の「今すぐ受診の目安」に当てはまらない軽い痛みであれば、次のような工夫で楽になることがあります。いずれも痛みの原因を治すものではなく、体の変化による痛みを和らげるための方法です。

まず、横になって楽な姿勢で休みます。横向きに寝て膝を軽く曲げると、お腹の筋肉と靭帯の緊張がゆるみやすくなります。深くゆっくり呼吸をすることで、痛みに対する体のこわばりもほぐれます。冷えが気になるときは、腹巻きやひざ掛けなどでお腹と腰をやさしく温めてください。ただし、高温のカイロを長時間同じ場所に当てるのは低温やけどの原因になるため避けます。

便秘やガスが原因と思われるときは、こまめな水分補給と、野菜・海藻・果物などの食物繊維、ヨーグルトなどの発酵食品を無理のない範囲でとります。つわりで食べられない時期は、食べられるものを少しずつで構いません。医師から安静を指示されていなければ、短い散歩など軽く体を動かすことも腸の動きを助けます。

💊 市販薬は自己判断で飲まない

妊娠初期は、赤ちゃんの体の基本的な形がつくられる時期です。痛み止めや胃腸薬、便秘薬のなかには、妊娠中に使えるものと避けたほうがよいもの、使える時期が限られるものがあります。手元の市販薬を自己判断で飲まずに、受診先の医師か薬剤師に確認してください。妊娠に気づく前に薬を飲んでしまった場合も、自己判断で心配を膨らませずに、飲んだ薬の名前と時期を伝えて相談してください。

避けたいのは、強い痛みや出血があるのに「様子を見れば治まるはず」と我慢を続けることです。夜間や休日で迷うときは、受診先の産婦人科の連絡先や、地域の救急相談窓口に電話で相談する方法もあります。受診して何も問題がなかった場合でも、それは無駄な受診ではありません。超音波で子宮の中の状態を確かめられたことは、その後の経過を考えるうえでの確かな情報になります。

10. 受診するときに伝えることと、受診後の流れ

受診のときは、痛みの様子を短いメモにまとめておくと、診察がスムーズになります。完璧に説明しようとする必要はありません。受診後は、超音波で胎嚢と心拍を確認し、妊娠の経過を追っていくことになります。

受診前メモ(例)

次の項目を書き出しておくと、医師が原因を絞り込みやすくなります。スマートフォンのメモでも十分です。

📝 受診前に書き出しておきたいこと

項目 書き方の例
いつから 昨日の夜から/3日前から時々
どこが 下腹部の真ん中/左だけ/右だけ/足の付け根/肩の先
どんな痛み チクチク/ズキズキ/生理痛みたい/ギューッと締めつける/張る感じ
どのくらい ずっと続く/波がある(何分おきか)/動いたときだけ
ほかの症状 出血(色・量・塊の有無)/発熱/嘔吐/下痢/排尿時の痛み/ふらつき
妊娠の状況 最終月経の開始日、検査薬が陽性になった日、胎嚢・心拍の確認の有無、不妊治療の有無

受診したら:胎嚢・心拍の確認

妊娠初期の腹痛で受診すると、まず経腟超音波で、子宮の中に胎嚢があるか、その中に赤ちゃん(胎芽)と心拍が見えるかを確認します。子宮の中に胎嚢が確認できれば、子宮外妊娠の可能性は大きく下がります。あわせて、出血の出どころ、卵巣の腫れ、血腫の有無なども確認します。

妊娠のごく早い時期には、一度の超音波で判断がつかないことがあります。米国の超音波の専門家による診断基準は、胎嚢の大きさや心拍が見えるかどうかで判断がつかない場合には、日をあけて超音波を再検査し、慌てて結論を出さないよう示しています[9]。「来週もう一度確認しましょう」と言われるのは、この基準に沿った対応です。

腹痛・出血で受診受診前メモを持参
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胎嚢の位置を確認子宮外妊娠の除外
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胎児心拍を確認必要なら日をあけて再検査
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妊娠初期の検査を検討出生前検査(NIPT)など

心拍が確認できたら考えたい出生前検査(NIPT)

心拍が確認できて妊娠の経過が見えてきたら、妊娠初期に受けられる出生前検査について知っておく時期でもあります。その代表がNIPT(新型出生前診断)です。NIPTは、お母さんの血液に含まれる、胎盤から流れ込んだ赤ちゃん由来のDNAの断片を調べ、ダウン症候群(21トリソミー)などの染色体の数の変化の可能性を調べる検査です。採血だけで行えるため、流産のリスクはありません。

第3章で、妊娠初期の流産の約半数は赤ちゃん側の染色体の変化によるものだと説明しました。流産に至らずに妊娠が続く染色体の変化もあり、NIPTはそうした変化の可能性を妊娠の早い段階で知るための検査です。ただし、NIPTは可能性を調べる非確定的な検査で、陽性の場合は羊水検査などの確定検査で確認する必要があります。受けるかどうかは、検査でわかること・わからないことを理解したうえで、ご本人とご家族が決めることです。

ミネルバクリニックのNIPTは、胎児の心拍を確認してから行っています。心拍の確認を先に行う理由はNIPTにおいて胎児の心拍を確認してから検査をすることの重要性で、検査の内容や受けられる時期はNIPT(新型出生前診断)のページで詳しく説明しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【腹痛の確認と、出生前検査の情報は別々に整理する】

妊娠初期の腹痛で受診し、心拍が確認できると、多くの方はそこで一区切りを感じます。一方で、妊娠初期は出生前検査を受けるかどうかを考え始める時期とも重なっています。腹痛の心配と検査の検討が同じ時期に重なるため、情報が混ざりやすいのです。

腹痛の診察は妊娠の経過を診ている産婦人科で、出生前検査は検査の意味と限界を説明できる専門の医療機関で、と役割を分けて考えると整理しやすくなります。臨床遺伝専門医としては、検査を受けるかどうかにかかわらず、染色体の変化について正確な情報を持ったうえで選ぶことが大切だと考えています。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 流産の腹痛はどんな痛みですか?

流産が進むときの腹痛は、生理痛を強くしたような下腹部中央の締めつける痛みが、波のように繰り返しながら強まっていくことが多く、鮮血の出血や塊を伴うのが特徴です。ただし、痛み方だけで流産かどうかは判断できず、超音波で子宮の中の状態を確認する必要があります。出血が増える、痛みが強まる場合は受診してください。

Q2. 生理痛と妊娠初期の腹痛の違いは?

痛み方だけで区別することはできません。妊娠初期も子宮が大きくなる過程で、生理痛に似た重さや締めつけを感じることがあるためです。妊娠かどうかは、生理予定日を過ぎてから妊娠検査薬で確認するのが確実です。生理前の症状との違いは「生理がきそうでこない・生理前と妊娠初期の違い」の記事で詳しく解説しています。

Q3. 左だけの腹痛は流産の可能性がありますか?

左右どちらか片側だけの痛みは、流産よりも、便秘やガス、円靭帯の伸び、黄体の腫れで起こることが多い症状です。片側の痛みで見逃してはいけないのは子宮外妊娠と卵巣茎捻転で、子宮内の胎嚢がまだ確認できていない時期の片側の痛みや、強まる痛み、ふらつきを伴う痛みは早めに受診してください。

Q4. 出血なしの腹痛は大丈夫ですか?

出血がなく、軽く短時間でおさまる腹痛は、多くが子宮の成長や腸の動きの変化による痛みです。ただし、子宮外妊娠ではお腹の中で出血していても膣からの出血がほとんどないことがあります。出血がなくても、片側の強い痛み、だんだん強くなる痛み、めまいや冷や汗がある場合は受診してください。

Q5. チクチクするのは着床痛ですか?

着床によって痛みが起こるという明確な医学的根拠は示されていません。妊娠初期のチクチクした痛みは、子宮の引きつれ、円靭帯の伸び、腸のガスなどでも起こります。チクチクする痛みの有無で、妊娠しているかどうかや妊娠が順調かどうかを判断することはできません。

Q6. 妊娠初期の腹痛はいつ頃なくなりますか?

個人差はありますが、子宮が骨盤からお腹のほうへ出てくる妊娠12〜15週ごろに、張りや痛みが落ち着く人が多いです。足の付け根の円靭帯の痛みは、子宮が大きくなる妊娠中期以降も続くことがあります。妊娠16週以降の腹痛は、妊娠中期の考え方で判断します。

Q7. 痛いときに市販薬は飲めますか?

自己判断で飲まずに、受診先の医師か薬剤師に確認してください。痛み止めや胃腸薬、便秘薬のなかには、妊娠中に使えるものと避けたほうがよいもの、使える時期が限られるものがあります。症状が強い場合は、薬で抑えるより先に受診して原因を確認することを優先してください。

Q8. 腹痛があるとき、仕事や性行為は控えたほうがいいですか?

米国産婦人科学会の指針では、仕事や運動、性行為が妊娠初期の流産を引き起こすという根拠はないとされています。ただし、腹痛や出血があるときは体を休め、性行為は症状が落ち着くまで控えるのが一般的です。医師から安静を指示されている場合や、切迫流産と診断されている場合は、その指示に従ってください。

まとめ

妊娠初期の腹痛・下腹部痛の多くは、子宮が大きくなることや円靭帯の伸び、プロゲステロンによる腸の動きの変化から生じる痛みで、腹痛だけで流産とは判断できません[1]。危険かどうかは、痛みの強さの変化、出血の有無と量、片側だけの強い痛み、めまいや冷や汗といった全身の症状の組み合わせで考えます。

左だけ・右だけの痛みでは、流産よりも子宮外妊娠と卵巣茎捻転に注意が必要で、右側では虫垂炎も考えます。妊娠検査薬が陽性でまだ胎嚢が確認されていない時期の強い片側の痛みは、子宮外妊娠の可能性を念頭に早めに受診してください[3]。受診して胎嚢と心拍が確認できたら、妊娠初期に受けられる出生前検査について、正確な情報をもとに考えていく時期に入ります。

🏥 妊娠初期の出生前検査(NIPT)をお考えの方へ

ミネルバクリニックは、臨床遺伝専門医が診療する遺伝医療の専門クリニックです。胎児の心拍を確認したうえでNIPT(新型出生前診断)を行い、結果の説明から、陽性の場合の確定検査まで院内で対応しています。
なお、腹痛や出血の診察は、妊娠の経過を診ている産婦人科で受けてください。

参考文献

  • [1] American College of Obstetricians and Gynecologists’ Committee on Practice Bulletins—Gynecology. ACOG Practice Bulletin No. 200: Early Pregnancy Loss. Obstet Gynecol. 2018;132(5):e197-e207. doi:10.1097/AOG.0000000000002899. [PubMed 30157093]
  • [2] Ectopic pregnancy – Symptoms. National Health Service (NHS). [NHS]
  • [3] American College of Obstetricians and Gynecologists’ Committee on Practice Bulletins—Gynecology. ACOG Practice Bulletin No. 193: Tubal Ectopic Pregnancy. Obstet Gynecol. 2018;131(3):e91-e103. doi:10.1097/AOG.0000000000002560. [PubMed 29470343]
  • [4] Hasan R, Baird DD, Herring AH, Olshan AF, Jonsson Funk ML, Hartmann KE. Association between first-trimester vaginal bleeding and miscarriage. Obstet Gynecol. 2009;114(4):860-867. doi:10.1097/AOG.0b013e3181b79796. [PubMed 19888046]
  • [5] Bleeding During Pregnancy. American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG). [ACOG]
  • [6] American College of Obstetricians and Gynecologists’ Committee on Obstetric Practice. ACOG Committee Opinion No. 775: Nonobstetric Surgery During Pregnancy. Obstet Gynecol. 2019;133(4):e285-e286. doi:10.1097/AOG.0000000000003174. [PubMed 30913200]
  • [7] Tuuli MG, Norman SM, Odibo AO, Macones GA, Cahill AG. Perinatal outcomes in women with subchorionic hematoma: a systematic review and meta-analysis. Obstet Gynecol. 2011;117(5):1205-1212. doi:10.1097/AOG.0b013e31821568de. [PubMed 21508763]
  • [8] Salari N, Mohamadi S, Hemmati M, et al. Global prevalence of constipation during pregnancy: a systematic review and meta-analysis. BMC Pregnancy Childbirth. 2024;24:836. doi:10.1186/s12884-024-07057-y. [DOI 10.1186/s12884-024-07057-y]
  • [9] Doubilet PM, Benson CB, Bourne T, et al. Diagnostic criteria for nonviable pregnancy early in the first trimester. N Engl J Med. 2013;369(15):1443-1451. doi:10.1056/NEJMra1302417. [PubMed 24106937]

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プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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