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妊娠初期でも、妊娠経過に異常がなければ、ウォーキングやストレッチなどの軽い〜中等度の運動は続けてよいと考えられています。一方で、妊娠がわかってから新しくスポーツを始める場合は原則として妊娠12週以降とされ、転倒や腹部への衝撃があるもの、体温が上がりすぎるものは避けます。妊娠に気づかずに運動してしまっても、多くの場合は過度に心配しなくてよいものの、出血や腹痛があれば受診が必要です。この記事では、妊娠初期・超初期の運動の目安、おすすめの運動と避けたい運動、気づかず激しい運動をしたときの考え方を解説します。
Q. 妊娠初期に運動しても大丈夫ですか?
A. 妊娠経過が正常で合併症がなければ、主治医に伝えたうえで軽い〜中等度の運動は続けられます。目安は「ややきつい」と感じない程度で、心拍数なら150回/分以下です。ただし、妊娠がわかってから新しくスポーツを始めるのは原則として妊娠12週以降とされています。出血、腹痛、お腹の張りなどが出たら、運動をやめて受診してください。
- ➤続けてよい運動 → ウォーキング、ストレッチ、マタニティヨガ、水泳など
- ➤避けたい運動 → 接触のある球技、転倒しやすいもの、過度に腹圧がかかる筋トレ、スキューバダイビング
- ➤強度の目安 → 心拍数150回/分以下、「ややきつい」以下
- ➤気づかず運動した → 多くは心配しすぎなくてよいが、出血・腹痛があれば受診
妊娠初期に運動をしても大丈夫?
「妊娠初期に運動をするのは良くない」と聞いたことがある方も多いでしょう。その背景にあるのは「妊娠初期は流産しやすい」という事実です。自然流産は全妊娠の10〜15%に起こり、その多くが妊娠12週未満に起こります[1]。
ただし、妊娠初期の流産の大部分は、胎児側の要因(主に染色体の数の変化など)によると考えられています[1]。安静にしていれば防げるというものではなく、適度な運動が流産の原因になるわけでもありません。一方で、妊娠初期に激しいスポーツをした場合に流産率が高くなったという報告もあるため、強度には注意が必要です[1]。
どれくらいなら大丈夫か
まず原則として、運動をすることを産科の主治医に伝えてからにしましょう。妊娠週数、母体の持病、子宮筋腫などの合併の有無、これまでの妊娠経過などは一人ひとり違うためです。
日本臨床スポーツ医学会産婦人科部会の「妊婦スポーツの安全管理基準(2019)」は、運動してもよい妊婦さんの条件として、現在の妊娠経過が正常であることに加えて、次の項目を挙げています[1]。
- 後期流産・早産の既往がないこと
- 偶発合併症・産科合併症がないこと
- 単胎妊娠で、胎児の発育に異常が認められないこと
- 妊娠成立後にスポーツを開始する場合は、原則として妊娠12週以降であること
- スポーツの終了時期は、異常が認められない場合は特に制限しない
4つ目の「12週以降」は、妊娠してから新しくスポーツを始める場合の条件です。妊娠前から続けている運動は、次の強度を守れば継続できるとされています[1]。
- 心拍数で150回/分以下、自覚的な強さとしては「ややきつい」以下が望ましい
- 長く続けて行う運動では「やや楽である」以下とする
米国産婦人科学会(ACOG)も、合併症や禁忌がなければ妊娠中の運動は安全で望ましいとし、妊娠前から運動していた人は妊娠中も続けられる、としています。目安は、中等度の有酸素運動を週に合計150分以上です[2]。
運動するときの注意点
同じ安全管理基準では、運動する環境について次のように示しています[1]。
- 暑熱環境下で行うものは避ける
- 陸上のスポーツは、平坦な場所で行うことが望ましい
- 高地の低酸素環境下での運動は、順化していない場合は避ける
- 減圧環境は避けるべきである
炎天下や高温多湿の体育館で激しく動くと体温が上がります。妊娠初期は、体温が39℃を超えるような高体温が赤ちゃんの神経管の異常のリスクを高める可能性が指摘されているため、特に注意が必要な時期です[1]。妊娠中は重心が変わってバランスを崩しやすいため、坂道や段差の多い場所より平坦な場所を選びます。高地では低酸素と運動が重なって子宮への血流が減るおそれがあります。「減圧環境」はスキューバダイビングのことで、赤ちゃんは減圧症から守られていないため、妊娠中は控えます[1]。
時間帯は、子宮収縮が起こりにくい午前10時〜午後2時ごろが望ましいとされ、運動習慣が少ない人は週2〜3回、1回60分以内が目安です[1]。つわりで食事がとれていないときや体調がすぐれないときは無理をせず休み、運動中はこまめに水分をとりましょう。
🚨 すぐに運動をやめて受診を考えるサイン
運動中や運動後に次のような症状が出たら、すぐに中止し、必要に応じて主治医に連絡してください[1]。
- 性器出血、下腹部の痛み、お腹の張りや下腹部の重い感じ
- 立ちくらみ、頭痛、胸の痛み、息苦しさ
- ふくらはぎの痛みや腫れ
- 水っぽいおりものが流れ出る感じ
運動以外にも、妊娠初期は食べ物や薬、日常生活で気をつけたいことがあります。全体像は妊娠初期に気をつけること(してはいけないこと・食べ物・薬)にまとめています。
妊娠初期に運動するメリット

運動のメリットとしてよく挙げられるのが「むくみ」の軽減です。歩くとふくらはぎの筋肉が収縮と弛緩をくり返し、足にたまりやすい血液やリンパ液を心臓へ押し戻すポンプのように働きます。また、体を動かすことは気分転換になり、軽いつわりの時期の気分の落ち込みがやわらぐこともあります。
ほかにも、便秘の予防、ストレスの解消、体重管理、出産や産後の育児に向けた体力づくりにつながります。ACOGは、妊娠中に運動していた人では、妊娠糖尿病、帝王切開や器械分娩(吸引・鉗子分娩)が少なく、産後の回復も早かったという観察研究の結果を紹介しています。産後のうつの予防にも役立つ可能性があるとしています[2]。
赤ちゃんへの影響を調べた研究もあります。カナダのモントリオール大学の研究グループは、妊娠中期に入った女性を、中等度の有酸素運動を週3回以上行うグループと運動しないグループに分けて比較しました。その結果、運動したグループの赤ちゃんでは、生後8〜12日の脳波で脳の成熟を示す反応がみられたと報告しています[3]。ただし、参加者は18人と少なく、運動を始めたのも妊娠中期からです。この結果だけで「運動すれば赤ちゃんの脳の発達がよくなる」と言い切ることはできません。
妊娠初期に運動をするリスク
運動で大きなリスクとなるのは、転倒やけが、そしてお腹への衝撃です。転んでお腹を強く打つと、胎盤がはがれる(常位胎盤早期剥離)などにつながることがあります[1]。
また、息が切れるほど激しい運動は控えましょう。運動中は筋肉への血流が増える分、内臓への血流が減る傾向があり、強度が高すぎると子宮や胎盤への血流が減るおそれがあるためです[1]。前述のとおり、妊娠初期は体温が上がりすぎることにも注意が必要です。
強度を守った運動であれば、流産率や先天異常の頻度に影響はなかったとする報告もあります[1]。リスクを避けるポイントは「運動をやめること」より「強度と種目を選ぶこと」です。
「運動」と「安産」は関係ある?
妊娠初期から適度な運動をしていたら安産になるのか、気になる方は多いでしょう。前述のとおり、妊娠中に運動していた人では帝王切開や器械分娩が少なかったという観察研究があり[2]、運動がお産の経過によい方向にはたらく可能性は示されています。
その理由として考えられるのが「体力づくり」と「体重管理」です。お産は時間が読めず、体力を使います。また、妊娠中の体重が増えすぎると、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群、分娩時のトラブルが起こりやすくなります。適切な体重増加の幅は妊娠前の体格によって異なるため、目安は妊婦健診で確認しましょう。
ただし、運動をしていれば必ず安産になるというわけではありません。お産の経過には、赤ちゃんの向きや大きさ、骨盤の形など、運動では変えられない要素も大きくかかわります。
おすすめの運動

妊娠中に望ましいとされるのは、有酸素運動で全身を使い、楽しく長く続けられるものです。安全管理基準では、ウォーキング、水泳、ジョギング、エアロビクス、ヨガ、ピラティス、ラケットスポーツ、固定式の自転車などが挙げられています[1]。なかでも妊娠初期に始めやすいのが、ウォーキングとストレッチ・マタニティヨガです。
ウォーキング
ウォーキングのよい点は、転倒やけがのリスクが低く、特別な道具もいらないことです。これまで運動習慣がなかった人は、1回10〜15分程度の無理のない散歩から始め、体調を見ながら少しずつ延ばしていきましょう。ACOGの目安は、中等度の運動を週に合計150分以上です[2]。「会話はできるが、少し息がはずむ」くらいが中等度の強さです。
段差や傾斜の大きい場所、自転車が頻繁に行き交う歩道は避け、平坦で歩きやすい道を選びましょう。暑い日は日中を避け、水分を持って出かけます。
マタニティヨガ・ストレッチ
ストレッチは、筋肉を伸ばしてほぐすことで血流をよくし、腰痛や肩こり、股関節の痛みなど、妊娠中のマイナートラブルの軽減が期待できます。自宅で手軽にできるのも利点です。
マタニティヨガやピラティスを始めるときは、主治医に伝えたうえで、妊婦向けのクラスでインストラクターに教わりながら行いましょう。室温を高くしたホットヨガやホットピラティスは、体温が上がりすぎるため妊娠中は避けます[4]。また、妊娠16週ごろからは、あおむけの姿勢を長く続けると大きくなった子宮が太い静脈を圧迫し、血圧が下がることがあるため、長時間あおむけになるポーズは避けます[1]。
妊娠初期にNGな運動
適度な運動にはメリットがありますが、妊娠中は避けたほうがよい運動もあります。安全管理基準では、お腹に直接衝撃が加わるもの、落下や転倒のリスクがあるもの、人や物と激しく接触するもの、過度な腹圧がかかるものを避けるよう示しています[1]。ここでは「過度な筋トレ」「ダンス」「球技」について解説します。
過度な筋トレ
お産に備えて筋トレをしたくなるかもしれませんが、ウエイトリフティングのように重い負荷をかけて息を止め、強くいきむ動作は、お腹に過度な圧力(腹圧)がかかるため避けます[1]。心拍数が上がりすぎるほどの高強度のトレーニングも控えましょう。腹筋運動のようにあおむけで行うものは、妊娠16週ごろからは長く続けないようにします。
筋力を保ちたい場合は、自分の体重を使ったゆっくりとしたスクワットがおすすめです。方法は次のとおりです。
●スクワットの基本姿勢
- 足幅は肩幅と同じくらいに広げる
- つま先をやや外側へ向ける
- 背筋は丸めず、できるだけまっすぐ伸ばす
- 腕は胸の前でクロスする(お腹が大きくなってきたら、机などにつかまって行う)
●スクワットの方法
- 基本姿勢をつくる(正面を見る)
- 息を吸いながら上体を下げていく(膝がつま先より前に出ないようにし、膝とつま先は同じ方向に向ける。ふらつく場合は机などにつかまる)
- 息を吐きながら、膝が伸びきらない程度に立ち上がる
- 2〜3を10回くり返す
- 1分休む
- 残り2セット行う(目安は10回×3セット/日)
息を止めずに、呼吸を続けながら行うのがポイントです。
ダンス
跳んだり跳ねたりする激しいダンスやジャンプの多い運動は、転倒の危険があり、全身に衝撃が加わるため避けましょう[1]。
マタニティ向けのダンスやエクササイズのクラスは、対象となる妊娠週数を決めていることが多いので、参加前に確認し、主治医にも伝えておきましょう。
球技
バスケットボール、バレーボール、サッカー、ラグビーのように、ほかの選手や周囲のものと激しく接触する球技は、お腹を打つ危険があるため妊娠中は避けます[1]。ボールが体に当たる可能性がある点も注意が必要です。
一方、テニスや卓球などのラケットスポーツは、安全管理基準で妊娠中に望ましい運動の例に挙げられています[1]。ゴルフも接触のないスポーツで、一律に禁止されているわけではありません。ただし、夏場のラウンドは体温が上がりやすく、傾斜のある芝や長い距離の歩行では転倒や疲労に注意が必要です。これらの競技を妊娠前から続けている人は、主治医に伝えたうえで、勝ち負けにこだわって全力を出しきらず、強度を落として楽しみましょう。妊娠してから新しく始めるのは、原則として妊娠12週以降です[1]。
🏃 妊娠初期の運動の目安
| 区分 | 主な運動 | ポイント |
|---|---|---|
| 始めやすい | ウォーキング、ストレッチ、マタニティヨガ、水泳 | 「ややきつい」以下の強度で。ヨガは妊婦向けクラスで |
| 続けるなら強度を調整 | ジョギング、エアロビクス、テニス・卓球、ゴルフ | 妊娠前からの習慣があれば主治医に伝えて継続。新しく始めるのは原則12週以降 |
| 避けたい | 接触のある球技、格闘技、スキー・乗馬など転倒しやすいもの、重いウエイト、スキューバダイビング、ホットヨガ | お腹への衝撃、転倒、過度な腹圧、減圧、高体温のリスク |
※日本臨床スポーツ医学会産婦人科部会[1]、ACOG[2][4]をもとに作成。妊娠経過や合併症によって適した運動は異なります。
妊娠に気づかずに運動してしまったら?

妊娠超初期は体調の変化がはっきりしないことが多く、妊娠に気づかないまま激しい運動をしてしまうことは珍しくありません。普段から運動している人ほど、いつものようにトレーニングをした後で妊娠がわかることがあります。
「どうしよう」と不安になるかもしれませんが、妊娠に気づく前の一度の運動を理由に、過度に心配しすぎる必要はありません。くり返しになりますが、妊娠初期の流産の大部分は胎児側の要因によると考えられています[1]。また、妊娠前から続けていた運動であれば、体もその強度に慣れています。
ただし、妊娠がわかった後は、これまでと同じ強度を続けるのではなく、「ややきつい」以下を目安に調整しましょう[1]。出血や腹痛、お腹の張りがある場合は、運動を控えて産婦人科を受診してください。
🩺 院長コラム【「あの運動のせい?」と自分を責めないために】
妊娠初期の流産の多くは、受精の段階で生じた染色体の数の変化など、赤ちゃん側の要因によって起こります。気づかずにした運動や日常の行動が原因とは考えにくい場合が多く、振り返って自分を責める必要はないと考えています。
そのうえで大切なのは、これからの過ごし方を整えることです。運動の強度を見直すのと同じように、赤ちゃんの染色体について知りたいと思ったときに、どのような検査があり、いつ受けられるのかを早めに知っておくことも、落ち着いて妊娠期間を過ごすための準備のひとつです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 妊娠超初期に激しい運動をしてしまいました。流産しますか?
妊娠初期の流産の大部分は胎児側の要因によると考えられており、妊娠に気づく前の一度の運動を理由に過度に心配する必要はありません。妊娠がわかった後は「ややきつい」以下の強度に調整し、出血や腹痛、お腹の張りがある場合は産婦人科を受診してください。
Q2. 妊娠初期に走ってもいいですか?
妊娠前からジョギングの習慣があり、妊娠経過に異常がなければ、主治医に伝えたうえで強度を落として続けられます。目安は心拍数150回/分以下、「ややきつい」以下です。妊娠してから新しく始める場合は、原則として妊娠12週以降とされています。
Q3. 妊娠初期にゴルフをしても大丈夫ですか?
ゴルフは接触のないスポーツで、一律に禁止されているわけではありません。妊娠前から続けている場合は、主治医に伝えたうえで強度を落として楽しみましょう。夏場の暑さや傾斜での転倒、長い距離の歩行による疲れには注意が必要です。
Q4. 妊娠中にダンスやジャンプをしてもいいですか?
跳んだり跳ねたりする激しいダンスやジャンプの多い運動は、転倒の危険や全身への衝撃があるため避けましょう。マタニティ向けのクラスは対象となる妊娠週数を決めていることが多いので、参加前に確認してください。
Q5. 妊婦が運動を始めるのはいつからがよいですか?
妊娠してから新しくスポーツを始める場合は、原則として妊娠12週以降とされています。ウォーキングやストレッチのような軽い運動は、体調を見ながら妊娠初期から取り入れられます。いずれも主治医に伝えてから始めましょう。
まとめ
妊娠初期でも、妊娠経過に異常がなければ、ウォーキングやストレッチなど軽い〜中等度の運動は続けられます。目安は心拍数150回/分以下、「ややきつい」以下の強度です。妊娠してから新しくスポーツを始める場合は、原則として妊娠12週以降とされています[1]。
お腹への衝撃や転倒のリスクがある運動、過度な腹圧がかかる筋トレ、スキューバダイビング、体温が上がりすぎる運動は避けましょう。妊娠に気づかずに運動してしまっても多くの場合は心配しすぎなくてよいものの、出血や腹痛、お腹の張りがあれば受診が必要です。運動を始める前、続ける前には、主治医に伝えておくと安心です。
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参考文献
- [1] 日本臨床スポーツ医学会 学術委員会産婦人科部会. 妊婦スポーツの安全管理基準(2019). 日本臨床スポーツ医学会誌. 2020;28(1):213-219. [日本臨床スポーツ医学会]
- [2] Physical Activity and Exercise During Pregnancy and the Postpartum Period: ACOG Committee Opinion, Number 804. Obstet Gynecol. 2020;135(4):e178-e188. [DOI]
- [3] Labonte-Lemoyne E, Curnier D, Ellemberg D. Exercise during pregnancy enhances cerebral maturation in the newborn: A randomized controlled trial. J Clin Exp Neuropsychol. 2017;39(4):347-354. [PubMed 27622854]
- [4] Exercise During Pregnancy. Frequently Asked Questions. American College of Obstetricians and Gynecologists. [ACOG]





