目次
妊娠中期は、日本産科婦人科学会の定義では妊娠14週0日から27週6日までの期間です。一方で、妊娠5か月(16週)から7か月(27週)までを妊娠中期と書く資料も多く、「14週と16週のどちらから?」と迷う方が少なくありません。この差は、週数で区切るか、月数で区切るかの違いから生まれています。この記事では、妊娠中期の正確な期間と安定期との違い、週ごとの赤ちゃんと体の変化、すぐ受診すべき症状、妊娠中期に受ける健診・検査、過ごし方までを臨床遺伝専門医が解説します。
Q. 妊娠中期はいつからいつまでですか?
A. 日本産科婦人科学会の定義では、妊娠14週0日から27週6日までです。月数で数えると妊娠4か月の後半から7か月の終わりまでにあたります。妊娠5か月(16週)から数える資料もありますが、これは月数の区切りに合わせた説明です。「安定期」は医学用語ではなく、妊娠中期と同じ意味ではありません。
- ➤期間 → 妊娠14週0日〜27週6日(約3か月半)
- ➤14週と16週 → 学会の定義は14週。16週は「5か月から」という月数での数え方
- ➤体の変化 → 心臓が送り出す血液が増え、息切れや貧血が起こりやすい時期
- ➤受診の目安 → 出血、休んでも治まらない張りや痛み、破水感、胎動の減少はすぐ連絡
- ➤健診 → 24週から2週間に1回に。血糖や貧血、超音波の検査がある
1. 妊娠中期はいつからいつまで?
妊娠中期は、妊娠14週0日から27週6日までの約3か月半です。妊娠期間は、最終月経の始まった日を「妊娠0週0日」として数え、40週0日を出産予定日とします。この約40週を初期・中期・後期の3つに分けたときの、まん中の区間が妊娠中期です。
学会の定義は「14週0日〜27週6日」
日本産科婦人科学会が2018年に発行した『産科婦人科用語集・用語解説集(改訂第4版)』は、妊娠初期を13週6日まで、妊娠中期を14週0日から27週6日まで、妊娠末期(後期)を28週0日以降とする3区分を示しています。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」もこの区分を引用しています[1]。
ここで「13週6日」「14週0日」のように日の単位まで書くのには理由があります。妊娠週数は満で数えるため、「13週」は13週0日から13週6日までの7日間を指します。初期の最終日が13週6日、中期の初日が14週0日と書けば、境目の1日がどちらに属するかで迷うことがありません。妊娠中期の約14週間のうち、前半は流産と早産の境目である22週をまたぎ、後半は早産の時期に入るため、同じ「中期」でも前半と後半で注意すべき点が変わります。
なぜ最終月経の初日から数えるのかというと、受精した日を本人が正確に知ることはほとんどできないからです。排卵の日は周期ごとに揺れますが、月経の始まった日は多くの人が覚えています。そこで、28日周期の人なら月経開始から約2週間後に排卵・受精が起こると仮定し、受精より2週間前を0週0日とする約束になっています。実際の週数は、妊娠初期の超音波検査で赤ちゃんの頭からお尻までの長さ(頭殿長)を測って確認・修正されます。週数の数え方の詳細は出産予定日の計算と妊娠週数の数え方で解説しています。
「16週から」と書かれる理由(14週と16週どっち?)
「妊娠中期は16週から」という説明は、月数で区切ったときの数え方です。妊娠の月数は4週(28日)をひと月として数え、0〜3週が1か月、4〜7週が2か月、12〜15週が4か月、16〜19週が5か月にあたります。昔から日本では、妊娠を10か月に分け、4か月までを初期、5〜7か月を中期、8か月以降を後期と呼ぶ習慣がありました。この数え方だと、中期の始まりは5か月の初日、つまり16週0日になります。
一方、学会の定義は「週」で区切っています。14週0日は妊娠4か月の後半にあたるため、学会の定義では4か月の途中から中期が始まることになります。どちらも間違いではなく、週で区切るなら14週から、月で区切るなら16週(5か月)からというだけの違いです。母子健康手帳や雑誌、病院のパンフレットによって書き方が違うのは、どちらの基準を使っているかが違うためです。
医療機関で検査の時期や薬の使用を判断するときは、月数ではなく週数と日数で考えます。たとえば「妊娠中期に行う検査」と言われても、施設によって想定している週数が異なることがあります。検査の予定は「何週何日ごろ」と週数で確認しておくと、取り違えが起こりません。
📅 妊娠週数と月数の対応表
| 月数 | 週数 | 学会の定義(週で区切る) | 月で区切る数え方 |
|---|---|---|---|
| 1〜3か月 | 0週〜11週 | 初期 | 初期 |
| 4か月 | 12週〜15週 | 12〜13週は初期、14〜15週は中期 | 初期 |
| 5か月 | 16週〜19週 | 中期 | 中期 |
| 6か月 | 20週〜23週 | 中期 | 中期 |
| 7か月 | 24週〜27週 | 中期 | 中期 |
| 8〜10か月 | 28週〜39週 | 後期 | 後期 |
※月数は4週をひと月として数えます。40週0日(出産予定日)は10か月を過ぎた日にあたります。
妊娠初期はいつまで?初期・中期・後期の境目
妊娠初期は、学会の定義では13週6日まで、月で区切る数え方では15週6日(4か月の終わり)までです。「妊娠初期はいつまで」と調べると12週、13週、15週と答えがばらつくのはこのためです。12週という数字は、妊娠12週以降の死産に届出が必要になるなど、制度上の区切りとして使われることがある数字で、医学上の初期の定義とは別のものです。
妊娠後期は28週0日から始まり、そのうち37週0日から41週6日までに生まれることを正期産といいます。22週0日から36週6日までの出産は早産です[2]。妊娠中期の後半(22〜27週)は、すでに早産の期間に入っている点を押さえておいてください。妊娠後期の体の変化は妊娠後期とは、早産の区切りは早産とはいつからのこと?で詳しく解説しています。
妊娠中期と安定期の違い
「安定期」は医学用語ではなく、妊娠中期と同じ意味でもありません。一般には、つわりが落ち着き、胎盤が完成して流産の心配が初期より小さくなる妊娠16週ごろからを安定期と呼ぶことが多く、終わりの時期は人によって27週までとしたり、出産までとしたりとさまざまです。
安定期という言葉は、「何をしても大丈夫になる時期」という意味ではありません。妊娠中期にも切迫早産や妊娠高血圧症候群など、注意したい病気があります。安定期の数え方や過ごし方は安定期はいつからいつまで?にまとめています。
🩺 院長コラム【週数は「日」まで意識してほしい理由】
妊娠中期が14週からか16週からかは、言葉の約束の違いにすぎません。ただ、医療の場では「中期」という言葉より、何週何日かという数字のほうがずっと大切です。検査を受けられる期間、薬の影響を考える時期、早産にあたるかどうかは、すべて週数と日数で決まるからです。
最終月経から数えた週数は、あくまで「28日周期で2週目に排卵した」という仮定にもとづく数字です。月経周期が長い方や不規則な方は、超音波で修正された週数が実際の週数になります。母子健康手帳に書かれた予定日と週数を基準に、予定を立てていただくのがよいと考えています。
2. 妊娠中期の赤ちゃんの成長(週ごとの変化)
妊娠中期は、初期にできあがった体の器官が大きく育ち、働きを整えていく時期です。初期の赤ちゃんは臓器の「形」をつくる段階にありますが、中期に入ると胎盤を通じて栄養と酸素を受け取りながら、体重を増やし、筋肉や骨、神経の働きを成熟させていきます。ここでは中期を3つの時期に分けて、赤ちゃんの様子とお母さんが気づきやすい変化を整理します。
14〜19週:胎盤が働き、胎動を感じ始める人が出てくる
妊娠中期の初めには胎盤の基本的な構造ができあがり、赤ちゃんは胎盤とへその緒を通じて酸素と栄養を受け取り、二酸化炭素や老廃物をお母さんの血液側へ渡すようになります。胎盤は、お母さんと赤ちゃんの血液が直接混ざらないまま物質を受け渡す臓器で、妊娠を続けるためのホルモンもつくっています。初期に卵巣の黄体が担っていたホルモンづくりが胎盤へ移ることも、つわりが落ち着く人が増える理由のひとつと考えられています。
赤ちゃんは子宮の中でよく手足を動かしていますが、小さいうちはお母さんが感じ取ることはできません。最初に胎動を感じる時期は一般に14週から22週のあいだで、18〜20週ごろに初めて気づく人が多く、2人目以降の妊娠では初めての妊娠より1週間ほど早く感じる傾向があります[3]。胎盤が子宮の前側(お腹側)にあると、クッションのようになって胎動に気づきにくいこともあります[3]。19週を過ぎても胎動がわからないからといって、それだけで異常というわけではありません。
20〜23週:胎動がはっきりし、超音波で全身を確認する時期
20週を過ぎると多くの人が胎動を感じるようになり、お腹の外から手を当ててわかることもあります。赤ちゃんの体が大きくなり、頭、心臓、背骨、手足、内臓の形を超音波で見やすくなるため、妊娠中期の半ばには胎児の形をひととおり確認する超音波検査が行われます。国際産婦人科超音波学会(ISUOG)は、妊娠中期に行う胎児超音波検査の手順と観察項目をガイドラインとして示しています[4]。
この時期の超音波では、赤ちゃんの性別がわかることもあります。ただし、性別を確認することは検査の目的ではなく、赤ちゃんの向きや足の位置によっては見えないことも珍しくありません。性別がいつ、どの方法でわかるのかは赤ちゃんの性別はいつわかる?で解説しています。
22週0日からは、もし生まれた場合に「流産」ではなく「早産」と呼ばれる時期に入ります[2]。早産で生まれる赤ちゃんの見通しは週数が1週進むごとに大きく変わるため、この時期以降の出血や規則的な張りは、とくに早めの連絡が必要になります。
24〜27週:体重が増え、子宮の大きさを毎回確認する時期
妊娠中期の終わりに向けて、赤ちゃんは体重を増やし、肺や脳の成熟が進みます。お母さんのお腹もはっきりと大きくなり、健診では子宮底長(恥骨の上から子宮のいちばん上までの長さ)や腹囲を測って、赤ちゃんの育ち方の目安にします。24週以降は妊婦健診が2週間に1回になり、血糖や貧血の検査も行われます[5]。
赤ちゃんの大きさには個人差があり、超音波で計算する推定体重にも誤差があります。1回の測定で平均より小さい・大きいと言われても、それだけで判断するのではなく、何回かの健診での伸び方を見て評価します。気になる数字を言われたときは、平均からどのくらい離れているのか、次回の健診で何を確認するのかを担当医に聞いておくと安心です。
👶 妊娠中期の赤ちゃんとお母さんの変化(目安)
| 時期 | 赤ちゃん | お母さん |
|---|---|---|
| 14〜19週 (4か月後半〜5か月) |
胎盤を通じて栄養と酸素を受け取る。手足をよく動かす | つわりが落ち着く人が増える。早い人は胎動に気づき始める |
| 20〜23週 (6か月) |
体の形を超音波で見やすくなる。22週から早産の時期 | 多くの人が胎動を感じる。お腹のふくらみが目立つ |
| 24〜27週 (7か月) |
体重が増え、肺や脳の成熟が進む | 息切れ・腰痛・張りを感じやすい。健診は2週間ごと |
※胎動を感じる時期や症状の出方には個人差があります。
3. 妊娠中期の体の変化とよくある症状
妊娠中期は、つわりが落ち着いて体が楽になる一方、心臓や血液、呼吸の仕組みが大きく変わる時期です。お母さんの体は、赤ちゃんと胎盤に十分な血液を届けるため、妊娠の早い時期から循環の量を増やしていきます。その変化が、息切れ、動悸、立ちくらみ、貧血といった中期によくある症状のもとになっています。
お腹と胸が大きくなる・食欲が戻る
妊娠中期には子宮がおへその高さを超えて大きくなり、外から見ても妊娠しているとわかるようになります。お腹の出方は、体格、腹筋の量、初めての妊娠かどうか、双子かどうかなどで違い、同じ週数でも人によって差があります。皮膚が急に引き伸ばされると、お腹や胸、太ももに妊娠線(皮膚の下の組織が裂けてできる線状の跡)ができることがあり、保湿などのケアを始める人が多い時期です。
乳腺も発達し、胸が張ったり大きくなったりします。妊娠中期でも乳首から少量の分泌物がにじむことがありますが、これは母乳のもとになる分泌液で、心配のないことがほとんどです。つわりが落ち着いて食欲が戻ると、体重が急に増えやすくなります。体重の目安は第6章で説明します。
息切れ・動悸・貧血が起こりやすい理由
妊娠中期に息切れや動悸を感じやすいのは、心臓と血液の仕事量が大きく増えているためです。心臓が1分間に送り出す血液の量(心拍出量)は妊娠8週ですでに約20%増え、妊娠中を通じて約40%増加し、妊娠20〜28週ごろに最大になります[6]。ちょうど妊娠中期の後半が、心臓にとってもっとも負担の大きい時期にあたります。
血液の液体成分(血漿)は妊娠中に約50%増えますが、酸素を運ぶ赤血球の増え方はそれより小さいため、血液が薄まった状態になり、ヘモグロビン濃度が下がります[6]。これが妊娠中の「生理的な貧血」と呼ばれるものです。ここに、赤ちゃんへ鉄が優先的に送られることが重なると、鉄が足りない本当の貧血(鉄欠乏性貧血)になりやすくなります。立ちくらみ、疲れやすさ、動悸が続くときは、健診の血液検査の結果を確認してもらいましょう。
呼吸も変わります。1分間に出入りする空気の量(分時換気量)は妊娠中に40〜50%増え、その多くは1回に吸う空気の量が増えることによるものです[6]。黄体ホルモン(プロゲステロン)が呼吸を促す方向に働くことが一因とされています。こうした変化のため、妊娠中は体に酸素が足りていても息苦しさを感じることがあり、この感覚は妊娠後期にもっとも多くみられます[6]。
💡 用語解説:心拍出量(しんぱくしゅつりょう)
心拍出量とは、心臓が1分間に全身へ送り出す血液の量のことです。「1回の拍動で送り出す量」と「1分間の心拍数」をかけ合わせて決まります。妊娠中は、子宮と胎盤に大量の血液を届ける必要があるため、この両方が増えて心拍出量が大きくなります。もともと心臓の病気がある方は、妊娠中期から後期にかけて負担が増えるため、専門の医師による管理が必要になります。
ふつうの息切れは、少し休むと落ち着き、横向きに休むなど姿勢を変えると楽になります。一方、安静にしていても息苦しい、胸が痛い、片方の足だけが腫れて痛む、動悸とともに意識が遠のく、といった場合は、妊娠による変化の範囲を超えている可能性があります。その場合は様子を見ずに、かかりつけの産婦人科へ連絡してください。
腰痛・便秘・眠気などのマイナートラブル
お腹が大きくなると体の重心が前に移り、腰を反らせた姿勢になりやすくなります。子宮が大きくなって体重が増えることと、骨盤まわりの靱帯をゆるめるホルモンの作用が重なって、妊娠中は腰痛が起こりやすく、とくに妊娠の後半に増えます[7]。重いものを持つ、長く立ち続ける、仰向けから腹筋を使って急に起き上がる、といった動作は腰とお腹の両方に負担をかけます。起き上がるときは一度横向きになり、手をついてゆっくり体を起こすと負担が少なくなります。
黄体ホルモンには腸の動きをゆるやかにする作用があり、大きくなった子宮が腸を圧迫することも加わって、妊娠中は便秘になりやすくなります。水分と食物繊維をとり、体を動かすことが基本です。市販の下剤を自己判断で使う前に、健診で相談してください。眠気やだるさ、頻尿、むくみ、こむら返り(ふくらはぎがつる)なども、妊娠中期によくみられる変化です。
つわりが続く・ぶり返す、気分の落ち込み
つわりは多くの人で妊娠中期に入るころまでに落ち着きますが、中期になっても続く人や、いったん治まったあとに吐き気がぶり返す人もいます。食事が取れない、水分も受けつけない、体重が減っていくといった状態は、つわりの範囲を超えた妊娠悪阻(にんしんおそ)の可能性があるため、我慢せずにかかりつけ医に連絡してください。中期のつわりについては妊娠中期につわりがぶり返す原因で詳しく解説しています。
体が楽になる一方で、出産や育児、仕事の調整を具体的に考え始めることで、気持ちが落ち込んだり不安が強くなったりする人もいます。眠れない、何をしても楽しめない状態が2週間以上続くときは、妊婦健診の場で伝えてください。妊娠中のこころの不調は珍しいことではなく、早く気づけば対応の選択肢が広がります。
4. 妊娠中期に受診が必要な症状(危険なサイン)
妊娠中期でも、出血、休んでも治まらないお腹の張りや痛み、破水感、胎動の減少は、次の健診を待たずにかかりつけの産婦人科へ連絡すべき症状です。厚生労働省の母性健康管理の解説でも、切迫早産のサインとしてこれらの症状が挙げられています[2]。夜間や休日でも、まず電話で相談し、指示に従ってください。
すぐに連絡したい症状
🚨 次の健診を待たずに連絡したい症状
| 症状 | 考えられること |
|---|---|
| 性器からの出血 | 少量でも、切迫流産・切迫早産、胎盤のトラブル(前置胎盤、常位胎盤早期剥離)などの確認が必要 |
| 規則的な張り、休んでも治まらない張りや痛み | 子宮の収縮が続いている状態で、切迫早産の可能性がある |
| 水のようなものが流れる・下着がぬれ続ける | 前期破水(陣痛の前に卵膜が破れる)の可能性がある |
| 胎動がいつもより明らかに少ない | 赤ちゃんの状態を確認する必要がある |
| 強い頭痛、目がチカチカする、急なむくみ | 妊娠高血圧症候群で血圧が上がっている可能性がある |
| 板のように硬いお腹と強い痛み | 常位胎盤早期剥離の可能性があり、救急での対応が必要 |
※判断に迷うときは、受診するかどうかを自分で決めずに、かかりつけの産婦人科へ電話で相談してください。
出血は量が少なくても、自己判断で様子を見ないことが大切です。茶色のおりもの程度で済むこともありますが、原因を確認できるのは診察と超音波検査だけです。水っぽいおりものと破水の区別は自分では難しいため、下着がぬれ続ける場合は清潔なナプキンを当てて連絡してください。
お腹の張りはどこまで様子を見てよい?
横になって休むと30分〜1時間ほどで治まり、回数も少ない張りは、妊娠中期によくある生理的な張りであることが多いです。子宮は筋肉でできているため、歩いたり体勢を変えたり、膀胱がいっぱいになったりしたときに、一時的に硬くなることがあります。
注意したいのは、張りが規則的にくり返す、安静にしても治まらない、だんだん強くなる、痛みや出血を伴う、という場合です[2]。こうした張りは子宮の収縮が続いているサインで、子宮の出口(子宮頸管)が短くなったり開いたりすることがあります。何分おきに張っているかを時計で確認しておくと、電話で状況を伝えやすくなります。張りの見分け方と対処法は妊娠中期にお腹の張りを感じるのはなぜ?で解説しています。
妊娠中期に気をつけたい病気
切迫早産:妊娠22週から37週未満で出産に至ることを早産といい、早産になりかかっている状態を切迫早産といいます[2]。子宮の収縮、出血、破水感などがサインになります。胎動がいつもより明らかに少ない場合も、胎児の状態確認が必要なため産婦人科へ連絡してください。子宮頸管が短くなっていると健診で指摘された場合は、仕事や家事の量を減らすよう指示されることがあります。詳しくは切迫早産とはをご覧ください。
妊娠中期の流産:流産の多くは妊娠初期に起こりますが、22週未満の中期にも起こることがあります。子宮頸管が痛みなく開いてしまう子宮頸管無力症や、感染などが原因になることがあります。くわしくは妊娠中期の流産で解説しています。
妊娠高血圧症候群:妊娠20週以降に高血圧がみられる状態、または高血圧に蛋白尿を伴う状態で、収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上が目安になります[8]。以前は「妊娠中毒症」と呼ばれていましたが、現在は高血圧を中心にした病気としてこの名称に統一されています。多くは自覚症状がないため、毎回の健診での血圧測定と尿検査が見つけるきっかけになります[8]。詳しくは妊娠高血圧症候群とはで解説しています。
妊娠糖尿病:妊娠中に初めて発見または発症した、糖尿病に至っていない糖代謝異常です。胎盤から出るホルモンが血糖を下げるインスリンの働きを弱めるため、妊娠中期以降に血糖が上がりやすくなります。そのため、妊娠初期の血糖検査に加えて、妊娠中期にもスクリーニング検査が行われます[9]。詳しくは妊娠糖尿病とはをご覧ください。
💡 用語解説:子宮頸管(しきゅうけいかん)
子宮頸管は、子宮の下の端にある細い筒状の部分で、出産まで赤ちゃんを子宮の中に保つ「出口の扉」の役割をしています。ふだんは長く閉じていますが、子宮の収縮や感染などがあると、早い時期から短くなったり開いたりすることがあります。妊娠中期の健診では、経腟超音波でこの長さを測ることがあり、短くなっている場合は早産のリスクを考えて管理が強化されます。
5. 妊娠中期の妊婦健診と検査
妊娠中期の妊婦健診は、23週までは4週間に1回、24週からは2週間に1回が目安です。厚生労働省の「妊婦に対する健康診査についての望ましい基準」は、出産までに14回程度の健診を想定し、時期ごとの間隔と検査内容を示しています[5]。多くの自治体では、この基準に沿って妊婦健診の費用を助成する受診券が配られています。
健診の間隔と毎回行うこと
健診では毎回、子宮底長、腹囲、血圧、むくみ、尿検査(糖と蛋白)、体重を確認します[5]。妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病は自覚症状が乏しいため、この毎回の測定が早く気づくための仕組みになっています。健診の間隔は、妊娠初期から23週まではおおむね4週間に1回、24週から35週まではおおむね2週間に1回、36週以降は1週間に1回です[5]。妊娠中期の後半から健診が増えるのは、早産や妊娠高血圧症候群が起こりやすい時期に入るためです。
🩺 妊婦健診の間隔と主な検査(国の基準)
| 時期 | 間隔 | この時期に行う主な検査 |
|---|---|---|
| 妊娠初期〜23週 | おおむね4週間に1回 | 血液型、感染症(B型・C型肝炎、HIV、梅毒、風疹など)、血糖、血算、子宮頸がん検診、超音波2回 |
| 24〜35週 | おおむね2週間に1回 | 血糖、血算、超音波(各1回) |
| 36週〜出産 | おおむね1週間に1回 | 血算、超音波(各1回) |
※HTLV-1抗体検査は妊娠初期〜30週、B群溶血性レンサ球菌(GBS)検査は33〜37週に行います。実際の時期は施設によって異なります[5]。
妊娠中期に行う主な検査
妊娠中期の後半には、血糖と血算(貧血の有無などを調べる血液検査)を行います[5]。血糖については、妊娠初期の随時血糖に加えて、妊娠中期にブドウ糖液を飲んで1時間後の血糖を測る50gグルコースチャレンジテストでスクリーニングを行い、基準を超えた場合は75gブドウ糖負荷試験で診断する方法が用いられています[9]。血算では、先に述べた生理的な貧血に鉄欠乏が重なっていないかを確認し、必要に応じて鉄剤が処方されます。
超音波検査では、赤ちゃんの推定体重や羊水の量、胎盤の位置、子宮頸管の長さなどを確認します。胎盤が子宮の出口を覆う位置にあると中期の超音波で言われることがありますが、子宮が大きくなるにつれて胎盤の位置が相対的に上へ移っていくことも多く、最終的な判断は後期の超音波で行われます。
遺伝の視点:週数と出生前検査の時期
出生前検査を考えるときは、妊娠中期という言葉ではなく、何週何日かという正確な週数が、受けられる検査を左右します。NIPT(新型出生前診断)は母体の血液で赤ちゃんの染色体の数の変化を調べる検査で、妊娠初期から受けられます。NIPTは非確定検査のため、陽性だった場合は羊水検査などの確定検査で確認する必要があり、その確定検査を受けられる時期が妊娠中期に重なります。
羊水検査は、お腹に細い針を刺して羊水を採り、その中の赤ちゃん由来の細胞で染色体などを調べる確定検査で、一般に妊娠15週以降に行われます。検査に伴う流産リスクは非常に低いもののゼロではなく、施設や報告によって推定値が異なります[10]。結果が出るまでには一定の日数がかかります。NIPTの結果を受けて確定検査を考える場合、何週の時点で結果がそろうかが、その後の選択を考えるうえで大切になります。妊娠中期の半ばに行う胎児超音波検査では、心臓や脳、手足などの形を観察し、形の特徴から染色体や遺伝子の病気が疑われることもあります[4]。
月経周期が長い方では、最終月経から数えた週数より実際の週数が数日〜1週間以上遅れていることがあります。検査を予約する前に、初期の超音波で修正された週数(母子健康手帳に書かれた予定日から逆算した週数)を確認しておいてください。検査の種類と時期の全体像は胎児の障害はいつわかる?妊娠中の検査方法で整理しています。
🩺 院長コラム【確定検査までの時間を逆算しておく】
NIPTは結果が出るまでの日数が比較的短い検査ですが、陽性だった場合に行う確定検査は、受けられる時期が決まっており、結果が出るまでにも時間がかかります。NIPTを受ける週数が遅くなるほど、確定検査の結果を受け取る時期も後ろへずれていきます。
出生前検査は、受けるかどうか、受けた結果をどう考えるかを、ご夫婦で決めていく検査です。その時間を確保するためにも、検査は週数に余裕をもって計画していただくのがよいと考えています。ミネルバクリニックでは常駐する臨床遺伝専門医が、NIPTの結果の説明から院内での確定検査まで対応しています。
6. 妊娠中期の過ごし方
妊娠中期は体調が比較的落ち着き、出産と産後に向けた準備を進めやすい時期です。ただし、体の中では循環や代謝が大きく変わっています。体重、運動、仕事、移動について、無理のない範囲を決めておくことが大切です。
体重増加の目安(妊娠前のBMI別)
妊娠中の体重増加は、妊娠前の体格(BMI)によって目安が異なります。厚生労働省は2021年に、日本産科婦人科学会の指針にもとづいて目安を改め、以前より多めの増加を許容する数字を示しました[11]。やせた状態での妊娠や体重増加が少なすぎることが、赤ちゃんが小さく生まれることにつながる点が重視されたためです。
⚖️ 妊娠中の体重増加の目安(妊娠全期間)
| 妊娠前の体格 | BMI | 体重増加の目安 |
|---|---|---|
| 低体重 | 18.5未満 | 12〜15kg |
| ふつう | 18.5以上25.0未満 | 10〜13kg |
| 肥満(1度) | 25.0以上30.0未満 | 7〜10kg |
| 肥満(2度以上) | 30.0以上 | 個別に対応(上限5kgまでが目安) |
※BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)。目安は個人差を考慮したゆるやかな指導とされています[11]。
この表は妊娠全体での増加量の目安で、「1か月に何kgまで」という決まった数字が示されているわけではありません。妊娠中期はつわりが終わって増え方が大きくなりやすい時期なので、健診ごとの体重の推移を見て、担当医から指摘があればその指示に従ってください。急に体重が増えたときは、食べすぎだけでなく、むくみや妊娠高血圧症候群の始まりのこともあります。
運動・仕事・旅行の考え方
健診で問題を指摘されていなければ、ウォーキングやマタニティヨガ、水中運動など、息が上がりすぎない程度の運動は体重管理や腰痛の予防に役立ちます。お腹を強く打つおそれのある運動、転倒しやすい運動、仰向けで長く行う運動は避けてください。運動中にお腹の張りや出血、めまいを感じたら中止します。
仕事を続ける場合、男女雇用機会均等法にもとづいて、妊婦健診のための時間の確保や、医師の指導にもとづく通勤緩和・休憩などの措置を勤務先に求めることができます。旅行は中期に計画されることが多いですが、行き先の医療機関を確認し、母子健康手帳と保険証を持ち歩いてください。長時間同じ姿勢で座り続けると足の静脈に血栓ができやすくなるため、こまめに歩いたり足首を動かしたりすることも大切です。安定期の過ごし方は安定期はいつからいつまで?で詳しく扱っています。
妊娠中期にやっておきたいこと
体調が落ち着いている妊娠中期は、後期に入ると難しくなる準備を進めておくのに向いています。次のような項目を、体調と相談しながら少しずつ進めてください。
- 歯科健診を受け、むし歯や歯周病の治療を済ませておく(後期はお腹が大きく、長時間の治療姿勢がつらくなる)
- 母親学級・両親学級に参加し、出産の流れを知っておく
- 産休・育休の時期や手続きを勤務先に確認する
- 出産する施設の分娩予約、里帰り出産の場合は転院の時期を決める
- 出産費用、産後の生活費、保育園や子育て支援の情報を確認する
- 赤ちゃんの寝る場所や必要な育児用品を考えておく
- 引っ越しなど大きな予定は、お腹が大きくなる前に済ませる
妊娠中期は、出生前検査を考えている方にとっては、検査を受けられる時期の最後の数週間にあたることがあります。検査を受けるかどうかを考えている場合は、受けられる週数の期限を早めに確認しておいてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 妊娠中期はいつからいつまでですか?
日本産科婦人科学会の定義では、妊娠14週0日から27週6日までです。月数でいうと妊娠4か月の後半から7か月の終わりまでにあたります。28週0日からは妊娠後期です。
Q2. 妊娠中期は14週からと16週から、どっちが正しいですか?
週で区切る学会の定義では14週から、月で区切る数え方では5か月の初日である16週からです。どちらも間違いではなく、区切り方の違いです。検査や受診の時期を考えるときは、月数ではなく「何週何日」で確認してください。
Q3. 妊娠5ヶ月は妊娠中期ですか?
はい。妊娠5か月は16週0日から19週6日までで、学会の定義でも月で区切る数え方でも妊娠中期にあたります。妊娠4か月(12〜15週)は、学会の定義では14週から中期、月で区切る数え方では初期に入ります。
Q4. 妊娠中期の危険なサインは何ですか?
性器からの出血、規則的にくり返す張りや休んでも治まらない張り・痛み、水のようなものが流れる破水感、胎動の明らかな減少は、切迫早産などのサインのことがあります。強い頭痛や目がチカチカする症状、急なむくみは妊娠高血圧症候群の可能性があります。いずれも次の健診を待たずに、かかりつけの産婦人科へ連絡してください。
Q5. 妊娠中期のお腹の張りはどれくらいまでなら大丈夫ですか?
横になって休むと30分〜1時間ほどで治まり、回数も少ない張りは、生理的な張りであることが多いです。規則的にくり返す、安静にしても治まらない、だんだん強くなる、痛みや出血を伴う場合は、子宮の収縮が続いている可能性があるため連絡してください。
Q6. 妊娠中期の体重は1か月に何キロまで増えてよいですか?
国の目安は妊娠全期間での増加量で示されており、妊娠前のBMIが18.5以上25.0未満の方で10〜13kgです。1か月あたりの決まった上限は示されていないため、健診ごとの体重の推移を見て、担当医の指示に従ってください。急な増加はむくみや妊娠高血圧症候群のこともあります。
Q7. 妊娠中期になってもつわりが続くことはありますか?
あります。多くの人は妊娠中期に入るころまでに落ち着きますが、中期まで続く人や、いったん治まってからぶり返す人もいます。食事や水分が取れない、体重が減っていく場合は、妊娠悪阻の可能性があるため、かかりつけの産婦人科に連絡してください。
まとめ
妊娠中期は、日本産科婦人科学会の定義では妊娠14週0日から27週6日までの期間です[1]。「16週から」とする説明は、妊娠5か月から数える月数での区切りで、どちらの基準かによって始まりが2週ずれます。安定期は医学用語ではなく、妊娠中期と同じ意味ではありません。
妊娠中期は心拍出量や血液量が大きく増える時期で、息切れや貧血、腰痛が起こりやすくなります[6][7]。22週からは早産の時期に入り[2]、24週からは健診が2週間に1回になります[5]。出血、治まらない張りや痛み、破水感、胎動の減少は、次の健診を待たずにかかりつけの産婦人科へ連絡してください。出生前検査を考えている場合は、確定検査を受けられる時期も含めて、正確な週数をもとに計画を立てることが大切です。
🧬 NIPT・出生前検査をご検討の方へ
ミネルバクリニックでは、常駐する臨床遺伝専門医がNIPT(新型出生前診断)の検査前の説明から結果の説明までを担当し、陽性の場合の羊水検査・絨毛検査も院内で行っています。検査を受けられる週数や流れは、NIPTのページでご確認いただけます。妊娠経過の症状については、かかりつけの産婦人科にご相談ください。
参考文献
- [1] 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版)「2 対象特性 2-1 妊婦・授乳婦」(妊娠期の区分:産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第4版を引用). [厚生労働省PDF]
- [2] 切迫早産(妊娠22週以降). 母性健康管理に関する用語辞典. 働く女性の心とからだの応援サイト(厚生労働省). [厚生労働省]
- [3] Landess M, Christman M, Mikes BA. Fetal Movement. StatPearls. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing. [NCBI Bookshelf]
- [4] Salomon LJ, et al. ISUOG Practice Guidelines (updated): performance of the routine mid-trimester fetal ultrasound scan. Ultrasound Obstet Gynecol. 2022;59(6):840-856. doi:10.1002/uog.24888. [Wiley]
- [5] 妊婦に対する健康診査についての望ましい基準(平成27年3月31日厚生労働省告示第226号). こども家庭庁. [こども家庭庁PDF]
- [6] Soma-Pillay P, Nelson-Piercy C, Tolppanen H, Mebazaa A. Physiological changes in pregnancy. Cardiovasc J Afr. 2016;27(2):89-94. doi:10.5830/CVJA-2016-021. PMID: 27213856. [PMC]
- [7] 腰痛症. 母性健康管理に関する用語辞典. 働く女性の心とからだの応援サイト(厚生労働省). [厚生労働省]
- [8] 妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症). 母性健康管理に関する用語辞典. 働く女性の心とからだの応援サイト(厚生労働省). [厚生労働省]
- [9] 妊娠と妊娠糖尿病. 国立成育医療研究センター. [国立成育医療研究センター]
- [10] 羊水検査. KOMPAS(慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト). [KOMPAS]
- [11] 厚生労働省子ども家庭局母子保健課長通知(子母発0331第4号, 令和3年3月31日). 妊娠中の体重増加指導の目安. 日本産科婦人科学会ウェブサイト掲載. [日本産科婦人科学会PDF]





