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【チェックリスト】つわりになりやすい人の特徴と原因・症状を改善するための方法

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

つわりがひどくなりやすい人には、「前回の妊娠でつわりが重かった」「母や姉妹のつわりが重かった」「双子などの多胎妊娠」「乗り物酔いや片頭痛がある」といった特徴があることが、研究で示されています。つわりの原因は長く不明とされてきましたが、2024年には、赤ちゃんと胎盤がつくるホルモン「GDF15」と、それに対するお母さんの感じやすさが、つわりの重さに大きく関わることが報告されました[1]。つわりの重さは、気持ちの弱さで決まるものではありません。この記事では、つわりがひどい人・なりやすい人の特徴をチェックリストにまとめ、原因、受診の目安、食事と生活の工夫までを解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約12分
🤰 つわりがひどい人・なりやすい人の特徴
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. つわりがひどい人・重い人の特徴は?

A. 前回の妊娠でつわりが重かった人、母や姉妹のつわりが重かった人、双子などの多胎妊娠の人、乗り物酔いや片頭痛で吐き気が出やすい人は、つわりがひどくなりやすいことがわかっています。胞状奇胎や女の子の妊娠でも重くなりやすいと報告されています。水分もとれない、体重が妊娠前より5%以上減った場合は「妊娠悪阻」の可能性があり、早めの受診が必要です。

  • ➤チェックリスト → つわりがひどくなりやすい人の特徴を7項目で確認
  • ➤なりやすい人の特徴 → 前回の妊娠・家族歴・多胎・乗り物酔い・片頭痛など
  • ➤遺伝の視点 → 母親がつわりで入院した娘は、自分も重くなる危険が約3倍
  • ➤ひどいときの受診の目安 → 水分がとれない・尿が少ない・体重が5%以上減った
  • ➤食事と生活の工夫 → 吐きづわり・食べづわり・においづわり別のポイント

つわりで吐き気に悩む女性

1. 【即実践可】つわりがひどくなりやすい人のチェックリストと代表的な症状

自分がつわりのひどくなりやすいタイプかどうかは、これまでの妊娠、家族、ふだんの体質をふり返ることで、ある程度見当をつけることができます。あらかじめ見当がついていれば、職場への相談や家事の分担、早めの受診といった準備を前もって進めることができます。

つわりがひどくなりやすい人のチェックリスト

次の項目に当てはまるものが多いほど、つわりが重くなりやすいと考えられます。ただし、当てはまらなくてもつわりが重くなる人はいますし、当てはまっても軽く済む人もいます。

✅ つわりがひどい人・なりやすい人の特徴チェックリスト

チェック項目 つわりとの関係
☐ 前回の妊娠でつわりが重かった(点滴や入院が必要だった) 次の妊娠でも重くなりやすい[7]
☐ 母または姉妹のつわりが重かった 重いつわりは家系内で起こりやすい[2][3]
☐ 今回、双子・三つ子を妊娠している 胎盤が大きく、つわりに関わるホルモンが多い[5]
☐ 乗り物酔いをしやすい 重いつわりと関連(オッズ比 約3.2)[3]
☐ 片頭痛のときに吐き気が出る 重いつわりと関連(オッズ比 約3.2)[3]
☐ ピルなどエストロゲンを含む薬で吐き気が出たことがある つわりが起こりやすい[5]
☐ 初めての妊娠である 重いつわりは初回の妊娠に多いとする報告があるが、一定しない

※胞状奇胎や赤ちゃんの性別も関係しますが、自分では判断できないため表からは除き、第3章で説明します。

つわりの代表的な症状

つわりの代表的な症状は、次のとおりです。

  • 気分が悪い(いつもより体調がすぐれない)
  • 吐き気・嘔吐
  • 胸やけ、げっぷが増える
  • 全身がだるい、日中も眠い
  • よだれ(唾液)が増える
  • 食欲がない、または食べていないと気持ち悪くなる
  • 食べ物の好みが変わる
  • においに敏感になる
  • 気分が不安定になる

つわりは「いつもと少し違う」「なんとなく体調がすぐれない」といった小さな変化から始まることが多く、空腹時に気持ち悪くなる「食べづわり」の形をとる人もいます。始まり方の詳しいパターンはつわりの始まり方で解説しています。

2. つわりとは?原因と期間・ピーク

つわりとは、妊娠初期(妊娠15週まで)に起こる吐き気や嘔吐、食欲の変化などの症状のことで、妊婦の70〜80%が経験します[4]。このうち、脱水や体重減少をともなう重いものを「妊娠悪阻(にんしんおそ)」といい、妊娠の0.3〜3%程度に起こるとされています[9]。つわり全体の解説はつわりとはにまとめています。

つわりの原因

つわりの原因として、昔から考えられてきたのがhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)です。hCGは胎盤のもとになる絨毛からつくられるホルモンで、妊娠8〜10週ごろに最も高くなり、つわりのピークと時期が重なります。hCGが多くなる双子の妊娠や胞状奇胎ではつわりが重くなりやすいことも、hCGが関わる根拠とされてきました[5]。また、hCGは甲状腺を刺激する作用も少し持つため、つわりが重い時期に一時的に甲状腺ホルモンが高くなる人もいます。この変化は多くの場合、hCGが下がるにつれて自然に落ち着きます。

一方、近年の研究で最も注目されているのがGDF15というホルモンです。GDF15は脳の中で吐き気や食欲を調節する部分(脳幹)に働くホルモンで、妊娠中のお母さんの血液中のGDF15は、そのほとんどが赤ちゃんと胎盤から出ていることがわかりました[1]。そして、血液中のGDF15が高い人ほど、つわりが重く、妊娠悪阻になりやすいことが確かめられています[1]。詳しくは第4章で説明します。

つわりになる妊婦の割合

吐き気や嘔吐を感じる妊婦は全体の70〜80%と多く[4]、つわりは妊娠ではごく一般的な症状です。そのうち点滴や入院が必要になる妊娠悪阻は、0.3〜3%程度と少数です[9]。

妊娠初期はおなかが目立たず、周りに妊娠を伝えていないことも多いため、つらさを隠して無理をしてしまいがちです。重い人では「水も飲めない」「一日中起き上がれない」状態になることもあり、我慢を続けると悪化することがあります。

つわりを感じる期間とピーク

つわりは多くの場合、妊娠5〜6週ごろに始まり、妊娠8〜12週ごろにピークを迎え、妊娠中期(16週〜27週)に入るころまでに軽くなっていきます[4]。ただし個人差は大きく、妊娠中期以降も続く人もいます。始まる時期はつわりはいつからで詳しく解説しています。

3. つわりがひどい人・なりやすい人の特徴

つわりがひどくなりやすい人の特徴は、大きく「これまでの妊娠」「家族」「今回の妊娠」「ふだんの体質」の4つに分けて考えることができます。以前は「ホルモンの変化に敏感な人」「ストレスを抱えている人」がなりやすいと説明されることが多くありましたが、現在は、より具体的な特徴が研究で確かめられています。

前回の妊娠でつわりが重かった人

前回の妊娠で重いつわりを経験した人は、次の妊娠でも重くなりやすいことがわかっています。ノルウェーの出生登録を使った研究では、最初の妊娠で妊娠悪阻のため入院した人のうち、2回目の妊娠でも入院した人は約15%で、最初の妊娠で妊娠悪阻がなかった人と比べて大きく高い割合でした[7]。入院までは至らない重いつわりも含めて調べた研究では、さらに高い再発率が報告されています。

「初めての妊娠」も、重いつわりになりやすい特徴として挙げられることがあります。ただし、2回目以降の妊娠のほうが多いとする報告もあり、研究によって結果は一定しません[5]。初めての妊娠では「どの程度なら受診すべきか」の判断がつきにくいこともあり、後述の受診の目安を参考にしてください。

母や姉妹のつわりが重かった人

母や姉妹のつわりが重かった人は、自分もつわりが重くなりやすいことがわかっています。フィンランドで妊婦2,411人を調べた研究では、母または姉妹につわりが重かった人がいる妊婦は、いない妊婦に比べて、重いつわりになるオッズが約3.2倍でした[3]。家族の中で重いつわりが続く理由は、第4章「遺伝の視点」で詳しく説明します。

双子などの多胎妊娠・胞状奇胎の人

双子や三つ子などの多胎妊娠では、つわりが重くなりやすいとされています。胎盤が大きくなるぶん、hCGやGDF15といったつわりに関わるホルモンが多くつくられるためと考えられています[5]。双子の妊娠の特徴は双子妊娠の前触れ・いつわかるかで解説しています。

また、胎盤のもとになる絨毛が異常に増える胞状奇胎でも、hCGが非常に高くなり、つわりが重くなることがあります[5]。胞状奇胎は超音波検査などで診断されるもので、自分で見分けることはできません。つわりが極端に重い場合は、こうした病気がないかも含めて産婦人科で確認してもらうことが大切です。

乗り物酔いや片頭痛がある人

乗り物酔いをしやすい人や、片頭痛のときに吐き気が出る人も、つわりが重くなりやすいことがわかっています。先ほどのフィンランドの研究では、乗り物酔いのある人は重いつわりのオッズが約3.2倍、片頭痛で吐き気が出る人も約3.2倍でした[3]。ピルなどエストロゲンを含む薬で吐き気が出たことがある人も、つわりが起こりやすいとされています[5]。吐き気を起こす脳のしくみの感じやすさが、つわりと共通していると考えられています。

赤ちゃんが女の子の場合

妊娠悪阻のお母さんから生まれた赤ちゃんは、女の子の割合が高いことが報告されています[6]。米国家庭医学会の総説では、赤ちゃんが女の子の場合、重いつわりのリスクが最大で50%ほど高くなるとまとめられています[5]。ただし、これは集団で比べたときの差であり、つわりの重さで赤ちゃんの性別を判断することはできません。

食べづわりになりやすい人は?

空腹になると気持ち悪くなり、何か食べていないと落ち着かない「食べづわり」は、医学的な病名ではなく、つわりの現れ方の一つです。食べづわりになりやすい人だけを調べた研究はほとんどなく、どんな人が食べづわりになりやすいかははっきりしていません。吐き気を感じやすい体質がもとにあるという点では、ここまでに挙げた特徴が食べづわりにも当てはまると考えられます。空腹で血糖が下がると吐き気が強まりやすい人が、食べることで吐き気を紛らわせている状態と理解するとよいでしょう。

💡 ポイント:ストレスはつわりの「原因」ではない

「ストレスを感じている人はつわりになりやすい」という説明をよく見かけますが、ストレスがつわりを引き起こすことを示した確かな研究はありません。むしろ、重いつわりが続くことで気分が落ち込み、それがつらさを強めるという面が大きいと考えられています。つわりの重さを本人の気持ちのせいにしないことが大切です。

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4. 遺伝の視点:つわりの重さは体質として受け継がれる?

重いつわりは、母から娘へと家系の中で受け継がれやすいことがわかっています。そのしくみの一つとして、GDF15というホルモンに対するお母さんの「感じやすさ」が明らかになってきました。

母親が妊娠悪阻だった娘は、リスクが約3倍

ノルウェーで親子2世代の出生登録を結びつけた大規模な研究では、母親が妊娠悪阻だった妊娠で生まれた娘は、自分が妊娠したときに妊娠悪阻になる危険が約3倍でした[2]。一方、母親が妊娠悪阻だった妊娠で生まれた息子のパートナー(妻)では、危険は高くなっていませんでした。研究者たちは、妊娠悪阻のなりやすさは、おなかの赤ちゃんの遺伝子よりも、お母さん自身の遺伝的な体質により強く左右されると結論づけています(ただし、母方の家庭環境の影響も完全には否定できないとしています)[2]。

GDF15:赤ちゃんがつくるホルモンと、お母さんの感じやすさ

2024年に科学誌「Nature」に発表された研究は、つわりの重さを決めるしくみの大きな部分を説明しました[1]。要点は次のとおりです。

  • 妊娠中のお母さんの血液中のGDF15は、ほとんどが赤ちゃんと胎盤からつくられている
  • 血液中のGDF15が高いほど、つわりや妊娠悪阻になりやすい
  • 妊娠する前からGDF15がもともと低い体質の人(GDF15の量を下げる遺伝子の違いを持つ人など)は、妊娠悪阻になりやすい
  • 反対に、病気のためにふだんからGDF15が高い状態が続いているβサラセミアの女性では、つわりがほとんど起こらない

つまり、ふだんGDF15に慣れていない体に、妊娠で急に大量のGDF15が流れ込むと、強い吐き気が起こりやすいと考えられます。重いつわりは「赤ちゃん側がつくるホルモンの量」と「お母さん側の感じやすさ」の組み合わせで起こり、その感じやすさの一部は遺伝的に決まっているということです。これが、母や姉妹のつわりが重いと自分も重くなりやすい理由の一つと考えられます。

研究チームは、妊娠前にあらかじめGDF15に体を慣らしておく方法や、GDF15の働きを抑える方法が、将来の予防や治療につながる可能性を示しています[1]。ただし、現時点では研究段階であり、つわりの重さを遺伝子検査で予測したり、GDF15を使って予防したりする方法は、まだ実用化されていません。今できることは、家族歴を手がかりに、重くなる可能性を見込んで準備しておくことです。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【つわりの重さは「気の持ちよう」ではありません】

重いつわりは長いあいだ「精神的なもの」「気の持ちよう」と言われてきました。けれども、母から娘へと受け継がれやすいこと、そして赤ちゃん側のホルモンとお母さん側の感じやすさで重さが決まることがわかった今、その見方は改めるべきだと考えています。

だからこそ、家族歴は大切な情報です。母や姉妹のつわりが重かった方は、妊娠がわかったら早めに職場や家族と分担を相談し、水分がとれなくなる前に産婦人科を受診する準備をしておくことが、つらい時期を乗り切る助けになると考えています。

5. つわりの「重い」「軽い」の分類と、ひどいときの受診の目安

つわりが重いか軽いかは、「水分や食事がとれているか」「体重が減っているか」「日常生活ができるか」で判断します。目安を表にまとめます。

📋 つわりの「重い」「軽い」の目安

項目 重い 軽い
吐き気・嘔吐 一日中吐き気があり、何度も吐く 吐き気はあるが、休めば落ち着く
水分・食事 水を飲むだけで気持ち悪い、食べても吐いてしまう 食欲は落ちるが、食べられるものはある
体重 妊娠前より減り続けている 大きくは減っていない
日常生活 起き上がれない、仕事や家事ができない 工夫すれば日常生活を送れる

つわりが重くなり、脱水や栄養不足を起こした状態が妊娠悪阻です。米国産婦人科学会(ACOG)は、ほかの病気が原因ではない持続する嘔吐に、飢餓状態のサイン(尿中ケトン体)や、妊娠前の体重からの5%以上の減少をともなう場合を、妊娠悪阻の目安としています[9]。体重50kgの人なら2.5kg、60kgの人なら3kgの減少が5%にあたります。

⚠️ こんなときは、かかりつけの産婦人科へ早めに相談を

  • 水分をとっても吐いてしまい、ほとんど飲めない
  • 半日以上おしっこが出ない、または色がとても濃い
  • 体重が妊娠前より5%以上減った
  • 立ちくらみ、ふらつき、動悸がある
  • 吐いたものに血が混じる、強い腹痛や発熱がある
  • ぼんやりする、目の動きや歩き方がおかしい

脱水が進むと点滴が必要になり、入院して治療することもあります。我慢せず、早めに受診することが重症化を防ぐいちばんの方法です。詳しくは妊娠悪阻とはで解説しています。

6. 【母子別】つわりによる健康影響

キッチンのにおいがつらくて鼻をつまむ女性

ふつうのつわりであれば、お母さんにも赤ちゃんにも大きな影響はありません。注意が必要なのは、つわりが重くなって妊娠悪阻になった場合です。

お母さんへの影響|妊娠悪阻に注意

妊娠悪阻になると、何度も吐くことで脱水や、体内のナトリウム・カリウムなどのバランスが崩れる電解質異常が起こります。食事がとれない状態が続くと、体は脂肪を分解してエネルギーにするため、尿にケトン体が出るようになります。脱水で血液が濃くなると、足の静脈に血栓ができやすくなることもあります。

最も注意が必要なのが、ビタミンB1(チアミン)不足によるウェルニッケ脳症です。意識がぼんやりする、目の動きがおかしい、ふらついて歩けないといった症状が出る病気で、命に関わったり、後遺症が残ったりすることがあります。ACOGも、長く嘔吐が続く妊婦には、点滴の前にビタミンB1を補うよう勧めています[9]。

赤ちゃんへの影響|ふつうのつわりなら心配いらない

「食べられないと赤ちゃんが育たないのでは」と心配になる人は多いですが、ふつうのつわりであれば、赤ちゃんの成長に影響することはほとんどありません。妊娠初期の赤ちゃんはまだとても小さく、必要な栄養もわずかだからです。

一方、妊娠悪阻については、複数の研究をまとめた解析で、低出生体重児(2,500g未満)、在胎週数に比べて小さく生まれる赤ちゃん(SGA)、早産がやや多くなることが報告されています[8]。「赤ちゃんには影響がないから」と我慢するのではなく、重いつわりはきちんと治療を受けることが、お母さんと赤ちゃんの両方を守ることにつながります。

つわりの重さで赤ちゃんの病気はわかる?

ダウン症候群(21トリソミー)の赤ちゃんを妊娠している場合、hCGが高くなりやすく、つわりが重くなりやすいとする報告があります[5]。しかし、つわりが重い人の大多数は赤ちゃんに異常がありませんし、反対につわりが軽い、またはない人の赤ちゃんに異常が多いわけでもありません。つわりの重さや有無で、赤ちゃんの染色体の病気を判断することはできません。つわりがない場合についてはつわりがない人の特徴で解説しています。赤ちゃんの染色体について知りたい場合は、NIPT(新型出生前診断)などの出生前検査で調べることになります。

\ 赤ちゃんの染色体が気になる方は、臨床遺伝専門医にご相談ください /

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7. 【タイプ別】つわり症状に合わせた3つの食事のポイント

食欲がなく食パンを少しずつ食べる女性

つわりの時期の食事は、栄養バランスよりも「食べられるものを、食べられるときに、少しずつ」が基本です。つわりのタイプ別に、食事のポイントをまとめます。

症状①:吐きづわり

吐き気が強く、食べると吐いてしまうタイプです。胃が空でも吐き気がすることがあります。

  • 口にできそうなものを中心に食べる
  • 冷たいもの、においの少ないものを選ぶ
  • 1回の量を減らし、回数を増やして少しずつ食べる
  • 食べられないときも、水分だけはこまめにとる

温かい料理は湯気でにおいを強く感じやすいため、冷ましたものや冷たいもののほうが食べやすいことがあります。水分がとれなくなったら、それが受診のサインです。

症状②:食べづわり

空腹になると気持ち悪くなり、常に何かを口にしていたくなるタイプです。

  • 食事を小分けにして、空腹の時間をつくらない
  • 1回の量を減らし、よくかんで食べる
  • 塩分や脂肪の多いもの、甘いものばかりにならないようにする
  • ガムやスルメなど、口に長く入れておけるものを活用する

食べづわりそのものが赤ちゃんに悪いわけではありません。ただし、妊娠中の体重が増えすぎると、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群のリスクが高まるため、体重の増え方は妊婦健診で確認してもらいましょう。

症状③:においづわり

ご飯の炊けるにおい、香水や柔軟剤、人のにおいなど、さまざまなにおいで気持ち悪くなるタイプです。

  • 冷たいものを食べ、においを感じにくくする
  • 調理は家族に頼む、総菜やレトルト食品、宅配を活用する
  • マスクをする、換気をこまめにする

8. つわり症状を軽くする3つの方法

つわりでつらそうに横になる妊婦

食事のほかにも、日常の工夫でつわりのつらさを和らげることができます。

方法①:服装を工夫する

おなかや胃を締めつける服は、吐き気を強めることがあります。ゆったりした服や、肌触りのよい素材の服を選びましょう。においが服に残るのがつらい人は、においのつきにくい素材の上着を選ぶのも一つの方法です。

方法②:休む時間と気分転換の時間をつくる

つわりの時期は、とにかく無理をしないことが大切です。横になれるときは休み、体調のよい時間帯に短い散歩をするなど、気分を切り替えられる時間をつくりましょう。体を動かすのは、無理のない範囲にとどめてください。

方法③:周りに協力してもらう

妊娠初期は周りに伝えていないことも多く、ひとりで抱え込みがちです。パートナーや家族には、買い物や料理などの家事、上の子の世話などを頼みましょう。「何をしてほしいか」「何がつらいか(苦手なにおいなど)」を具体的に伝えると、協力してもらいやすくなります。仕事をしている人は、つらいときに休めるよう、早めに職場へ相談しておくと安心です。特に、前回の妊娠や家族のつわりが重かった人は、重くなる前に準備しておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. つわりがひどい人・重い人の特徴は?

前回の妊娠でつわりが重かった人、母や姉妹のつわりが重かった人、双子などの多胎妊娠の人、乗り物酔いや片頭痛で吐き気が出やすい人は、つわりがひどくなりやすいことがわかっています。胞状奇胎や、赤ちゃんが女の子の場合も重くなりやすいと報告されています。

Q2. つわりは遺伝しますか?

重いつわりは家系の中で起こりやすいことがわかっています。ノルウェーの研究では、母親が妊娠悪阻だった妊娠で生まれた娘は、自分も妊娠悪阻になる危険が約3倍でした。赤ちゃんと胎盤がつくるホルモンGDF15に対するお母さんの感じやすさが、遺伝的な体質として関わっていると考えられています。

Q3. 食べづわりになりやすい人は?

食べづわりになりやすい人だけを調べた研究はほとんどなく、はっきりしたことはわかっていません。吐き気を感じやすい体質がもとにあると考えられるため、前回の妊娠や家族のつわりが重かった、乗り物酔いや片頭痛があるといった特徴が、食べづわりにも当てはまると考えられます。

Q4. つわりがひどいと赤ちゃんに影響しますか?

ふつうのつわりであれば、赤ちゃんの成長に影響することはほとんどありません。ただし、脱水や体重減少をともなう妊娠悪阻では、低出生体重や早産がやや多くなると報告されています。重いつわりは我慢せず、治療を受けることが大切です。

Q5. どのくらいひどくなったら受診すべきですか?

水分をとっても吐いてしまう、半日以上おしっこが出ない、体重が妊娠前より5%以上減った、ふらつきや動悸がある場合は、かかりつけの産婦人科へ早めに相談してください。ぼんやりする、目の動きや歩き方がおかしい場合はすぐに受診が必要です。

Q6. つわりの重さで赤ちゃんの性別や病気はわかりますか?

わかりません。集団で比べると、女の子の妊娠やダウン症候群の妊娠でつわりが重くなりやすいという報告はありますが、一人ひとりのつわりの重さから性別や染色体の病気を判断することはできません。赤ちゃんの染色体について知りたい場合は、NIPTなどの出生前検査で調べます。

まとめ:つわりがひどくなりやすい人は、早めの準備を

ベッドで休む女性

つわりがひどくなりやすい人の特徴は、前回の妊娠でつわりが重かった、母や姉妹のつわりが重かった、双子などの多胎妊娠、乗り物酔いや片頭痛がある、などです。重いつわりは家系の中で起こりやすく、赤ちゃんと胎盤がつくるホルモンGDF15と、それに対するお母さんの感じやすさが関わることがわかってきました[1][2]。

つわりの重さは気持ちの問題ではありません。チェックリストに当てはまる人は、妊娠がわかったら早めに家族や職場と相談し、水分がとれない、体重が5%以上減ったといったときには、かかりつけの産婦人科を受診してください。

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つわりの重さや有無で、赤ちゃんの染色体の病気を判断することはできません。赤ちゃんの染色体について知りたい方には、妊娠10週から受けられるNIPTがあります。ミネルバクリニックでは、常駐する臨床遺伝専門医が検査の前後のご説明を行っています。

参考文献

  • [1] Fejzo M, Rocha N, Cimino I, et al. GDF15 linked to maternal risk of nausea and vomiting during pregnancy. Nature. 2024;625(7996):760-767. [PubMed 38092039]
  • [2] Vikanes A, Skjaerven R, Grjibovski AM, Gunnes N, Vangen S, Magnus P. Recurrence of hyperemesis gravidarum across generations: population based cohort study. BMJ. 2010;340:c2050. [PubMed 21030362]
  • [3] Laitinen L, Nurmi M, Ellilä P, Rautava P, Koivisto M, Polo-Kantola P. Nausea and vomiting of pregnancy: associations with personal history of nausea and affected relatives. Arch Gynecol Obstet. 2020;302(4):947-955. [PubMed 32653947]
  • [4] Lee NM, Saha S. Nausea and vomiting of pregnancy. Gastroenterol Clin North Am. 2011;40(2):309-334. [PubMed 21601782]
  • [5] Herrell HE. Nausea and vomiting of pregnancy. Am Fam Physician. 2014;89(12):965-970. [AAFP]
  • [6] Askling J, Erlandsson G, Kaijser M, Akre O, Ekbom A. Sickness in pregnancy and sex of child. Lancet. 1999;354(9195):2053. [PubMed 10636378]
  • [7] Trogstad LI, Stoltenberg C, Magnus P, Skjaerven R, Irgens LM. Recurrence risk in hyperemesis gravidarum. BJOG. 2005;112(12):1641-1645. [DOI]
  • [8] Veenendaal MV, van Abeelen AF, Painter RC, van der Post JA, Roseboom TJ. Consequences of hyperemesis gravidarum for offspring: a systematic review and meta-analysis. BJOG. 2011;118(11):1302-1313. [PubMed 21749625]
  • [9] American College of Obstetricians and Gynecologists. ACOG Practice Bulletin No. 189: Nausea and Vomiting of Pregnancy. Obstet Gynecol. 2018;131(1):e15-e30. [DOI]

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プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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