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【妊娠初期】こんなおりものの変化は危険?受診すべき変化やセルフケアについて解説

妊娠初期はホルモンバランスが崩れるため、おりものが変化することは異常ではありません。ただし、中には危険なおりものの変化も含まれるため、安易に考えるのは危険です。

そこでこの記事では、妊娠初期のおりものについて、以下の内容をお伝えします。

  • ・妊娠初期とおりものの基礎知識
  • ・おりものの異常な変化とセルフケアの方法

おりものについて正しく学び、異常の早期発見と対処ができるようになりましょう。

妊娠初期とは?

妊娠初期とは「妊娠成立〜妊娠13週目まで」のことです。

妊娠成立の期間、つまり受精卵が子宮内膜着床する時期のことを「妊娠超初期」と表現することもありますが、この呼び方については医学的な根拠はありません。

妊娠したお母さんの体は、妊娠継続や無事出産日を迎えるためにさまざまな変化をします。そして、急激な体の変化に適応しきれず、つわりなどの妊娠初期症状が現れるのです。

そこでこの章では「妊娠初期症状が始まる時期」「具体的な妊娠初期症状20選」について詳しく解説します。

性行為後|妊娠初期症状はいつから始まる?

妊娠初期症状は性行為後「1〜2週間後」から現れると言われており、症状が現れるまでの細かな流れは、以下のとおりです。

  • ・妊娠0週0日:最終月経初日
  • ・妊娠2週目:排卵があり、性行為にて受精
  • ・妊娠3週目:受精卵が子宮内膜に着床(妊娠成立)
  • ・妊娠4週目:妊娠初期症状が現れ始める

妊娠期の初日(妊娠0週0日)は「最終月経初日」であり、その後は「4週間=1ヶ月」として約10ヶ月の妊娠生活が始まります。

性行為で射精された精子は1〜2日以内に卵子と卵管で出会い、受精卵が誕生します。受精卵は5〜7日かけて卵管から子宮内膜に移動して着床します。この時点で妊娠が成立し、妊娠初期症状の原因となるホルモン分泌が始まるのです。

具体的な妊娠初期症状20選

具体的な妊娠初期症状については「【チェックリスト】妊娠超初期症状20選と生理前症状との違い・注意点を解説」の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

あなたの症状と照らし合わせると「本当に妊娠しているか?」を確認することができます。

おりものとは?

帯下と腹部の痛みを抱えた女性の手、または悪臭を伴う退院、帯下治療のための家庭療法

おりものとは、以下の3つが混じった粘液性の液体のことです。

  • ・子宮頸部・子宮内膜の分泌物や古い細胞
  • ・膣壁の分泌物や古い細胞
  • ・バルトリン腺・皮脂腺・汗腺からの分泌物

女性ホルモンに影響されて一定周期で変化することがわかっています。病気や体調・生理現象などを詳しく知るための指標として非常に重要であるため、この章でおりものに関する基礎知識をしっかりと確認しておきましょう。

おりものの役割

おりものの主な役割は、以下の2つです。

  • ・自浄作用により膣内を清潔に保つこと
  • ・受精がスムーズに行われるための手助けをすること

膣内に居るデーテルライン桿菌(かんきん)という常在菌は、乳酸を分解して膣内を酸性に保つ自浄作用としての役割があります。病原菌などの侵入・増殖を防ぎ、膣の奥の子宮内にいる赤ちゃんが安全に育つために外敵から守る働きがあるのです。

また、受精がスムーズに行われるための手助けをするという重要な役割もあります。先に解説した通り、通常膣内は酸性に保たれています。

しかし、排卵前後は精子が卵子のいる卵管まで行きやすいように膣内をアルカリ性に変化させ、分泌物を増やし精子が動きやすくする働きがあることもわかっています。排卵日が近づくと透明で粘性の強い分泌物が出るのは、このためです。

妊娠初期のおりものの特徴

妊娠初期のおりものの変化は、以下のとおりです。

  • ・量:粘り気はなく増える
  • ・色:白・クリーム・ピンク色など様々
  • ・ニオイ:酸っぱい

妊娠初期は酸っぱい臭いのする粘り気がないおりもので、妊娠前から量が増える傾向にあります。

色は一般的には白っぽく濁り、黄色味がかったクリーム色様になりますが、着床出血(受精卵が子宮内膜に潜り込む際、小さな傷ができることが原因)で血が混じりピンク色になることもあります。

ただし、着床出血の量は極わずかであるため、一時的かつ色もそれほど濃くはありません。そのため、「ピンク色の織物が続く」「色が濃くなった」などの症状があれば、病気の可能性も含めて早めに産婦人科を受診しましょう。

また、おりものの変化には個人差があります。そのため、おりものの変化で気になることがあれば、妊婦健診で相談しておくと安心して過ごせます。

妊娠初期と生理前のおりものの違い

妊娠初期と生理前のおりものの決定的な違いは、「量」と「性状」です。

妊娠初期はホルモンの関係で量が増えるのに対して、生理前は減る傾向にあります。また、性状についても、妊娠初期は粘り気がなくなりますが、生理前は粘り気が強く黄色味がかった色になります。よく「下着に着くと気になる程の濃さ」と表現されます。

また、生理前は妊娠初期のおりものよりも酸っぱく、キツい臭いになるのも特徴です。

これらの変化を確認した後、通常の生理周期で確認できる出血があれば、生理だったと確認できるでしょう。

【時期別】生理周期におけるおりものの変化

おりものの変化には女性ホルモンの分泌が深く関わっています。

おりものと女性ホルモンの関係を表した以下のグラフをご覧ください。

生理周期
アカチャンホンポ/妊娠超初期のおりものの特徴とは?より画像引用)

そして、おりものの変化は以下の4つの時期に分けて考えることができます。

  • ・卵胞期
  • ・排卵期
  • 黄体
  • ・生理前

時期別に見た具体的な変化については「【生理前】おりものの役割や特徴・時期別の変化や注意点を解説」の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

参考資料:アカチャンホンポ/妊娠超初期のおりものの特徴とは?

危険|おりものの6つの異常な変化【※要受診】

pms の想像上の問題、ホルモンの不均衡による頭痛に苦しむ女性

おりものの種類によっては早めに対処しないと命に関わることがあります。

発症後に後悔しないためも、この章で解説する以下の6つの危険なありものの変化について知っておきましょう。

  • ・変化①:白い塊なら「膣カンジダ症
  • ・変化②:黄色で臭うなら「膣トリコモナス症」
  • ・変化③:量が増えて不正出血があるなら「淋菌感染症」
  • ・変化④:排卵期以外でも出血があるなら「子宮がん
  • ・変化⑤:量が増えて水っぽいなら「性器クラミジア感染症」
  • ・変化⑥:臭いがキツいなら「細菌性膣症」

では、1つずつ解説します。

変化①:白い塊なら「膣カンジダ症」

おりものがカッテージチーズ様で白い塊なら「膣カンジダ症」の可能性があります。

膣カンジダ症とはもともと何らかが原因で膣の中にいるカンジダ菌が増殖して発症する性感染症のことです。

具体的な症状は、以下のとおりです。

  • ・外陰部のかゆみや発赤
  • ・刺激への過敏反応
  • ・灼熱感
  • ・性交痛(性行為時に痛みが出るもの)
  • ・排尿時痛

また、妊娠中に胎児への影響はないと考えられていますが、分娩で産道感染するリスクがあります。産道で感染すると鵞口瘡(赤ちゃんの口の周りに白いカスが発生する)や皮膚がかぶれるカンジダ皮膚炎になることもあります。

抗菌薬で治療可能であり予後も良好であるため、ご安心ください。

変化②:黄色で臭うなら「膣トリコモナス症」

おりものが黄色で臭うなら「膣トリコモナス症」の可能性があります。

膣トリコモナス症とは、膣がトリコモナス菌に感染する状態です。トリコモナス菌自体は、下着やバスタオル・トイレの便座など身近に存在しており、性行為の経験がない女性や子どもでも時々感染するケースもあります。

生理前のような酸っぱい臭いとは違い、生ごみが腐ったような悪臭と泡状のおりものが確認できれば、膣トリコモナス症の可能性が高いでしょう。

感染した女性の1/3〜1/2は自覚症状に乏しく気づいていないこともあります。一方で以下の症状が強く出ることもあります。

  • ・外陰部のかゆみ
  • ・刺激に過敏
  • ・灼熱感
  • ・膣内の発赤

また、感染による炎症が卵管までいくと、流産や早産・不妊症の原因になるため、注意が必要です。

変化③:量が増えて不正出血があるなら「淋菌感染症」

おりものの量が増えて不正出血があるなら「淋菌感染症」の可能性があります。

淋菌感染症とは性行為により男性は尿道や肛門、女性は膣で発症する感染症のことです。
男性は早くから症状が現れるのに対して、女性は無症状であることが多く、発見が遅れるのが特徴です。

感染したことに気づかず放置すると、不妊症や全身感染症などの重篤な症状に陥るケースもあります。また、細菌では淋菌の抗菌薬耐性化が社会問題となっており、抗菌薬での治療が難しいこともあるのです。

具体的な症状は、以下のとおりです。

  • ・発熱
  • ・下腹部痛
  • ・子宮頸管炎

また、流産や早産のリスクを高めたり、胎児に感染すると「目・関節・血液」などの炎症を引き起こしたりするなど重篤な状態になるリスクも十分あります。

参考資料
NIID 国立感染症研修所/淋菌感染症とは
横浜市/淋菌感染症(淋病)について

変化④:排卵期以外でも出血があるなら「子宮がん」

おりものに血が混じったり、排卵期以外でも出血が続いたりするなら「子宮がん」や「子宮筋腫」などの婦人科疾患の可能性があります。

HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染することで発症すると考えられており、近年子宮頸がんワクチンが一般化したことで有名になりました。

子宮がんとはその名の通り子宮にできるがんで、子宮頸部なら「子宮頸がん」と呼ばれます。妊婦に関わらず、性行為の経験がない若い女性からお年寄りまで、女性なら誰でも発症する可能性があります。

HPV感染率
子宮頸がん予防情報サイト/もっと守ろう.jp 子宮頸がんの原因は何でしょうか?より画像引用)

具体的な症状は、以下のとおりです。

  • ・不正出血
  • ・性交時出血

また、がんの進行具合によっては分娩どころか、子宮摘出をしなければならず、今後妊娠ができなくなる可能性もある非常に危険な状態です。そのため、不正出血や茶褐色などのおりものが現れたら迷わず産婦人科を受診しましょう。

参考資料
公益財団法人 日本対がん協会/婦人科がんなどから女性を守る基金
子宮頸がん予防情報サイト/もっと守ろう.jp 子宮頸がんの原因は何でしょうか?

変化⑤:量が増えて水っぽいなら「性器クラミジア感染症」

おりものの量が増えて水っぽいなら「性器クラミジア感染症」の可能性があります。

性器クラミジア感染症は性行為により発症する代表的な性感染症の一つで、国立感染症研究所によると妊婦の「3〜5%」が保菌者であることもわかります。

具体的な症状は、以下のとおりです。

  • ・発熱
  • ・下腹部痛
  • ・子宮頸管炎

男性に比べて女性は症状に乏しく、場合によっては無症状のこともあります。近年、女性の感染者数が増加傾向であり、不妊症の原因にもなりうることから深刻な問題になりつつあります。

参考資料
厚生労働省/性器クラミジア感染症
NIID 国立感染症研究所/性器クラミジア感染症とは

変化⑥:臭いがキツいなら「細菌性膣症」

おりものが魚のような生臭いキツい臭いや、サラッとしたおりものが大量に排出されるなら「細菌性膣症」の可能性があります。

他の性感染症にかかっている方、複数の性行為パートナーがいる方、子宮内避妊具を使用している方で感染しやすいと言われています。

具体的な症状は、以下のとおりです。

  • ・外陰部のかゆみ
  • ・刺激に敏感

細菌性膣症になると骨盤内炎症性疾患などの重篤な症状を発症することもあるため、注意が必要です。また、胎児を包む羊膜に感染すると早産を誘発したり、子宮内感染になったりすることもあります。

おりものの変化に合わせた2つのセルフケア

便器に座って生理用ナプキンを交換する女性。 清潔さと健康のためにサニタリーを交換する時間とサイクル。

おりものの変化によってはセルフケアで改善できるものもあります。

具体的なセルフケアは、以下の2つです。

  • ・セルフケア①:洗いすぎない
  • ・セルフケア②:通気性の良い下着を使う

医学的な根拠を含めて解説しますので、ご活用いただけると嬉しいです。

セルフケア①:洗いすぎない

おりものの変化が気になるからといって、洗いすぎると性感染症の原因になったり、今ある症状を悪化させたりする可能性があります。

なぜなら、膣内を外敵から守るバリア機能まで壊してしまう恐れがあるからです。

膣にはデーデルライン桿菌(かんきん)と呼ばれる乳酸菌(善玉菌)があり、この菌が乳酸を作ることで膣内を酸性に保ち、外敵の侵入・増殖を防いでいます。

特に膣内まで洗うとこれらの菌が死滅して病原菌などの雑菌が膣内に入り、感染症となりデリケートゾーンのニオイやかゆみ、おりものの異常の原因になります。また、感染症になるとおりものの変化に加えて、最悪のケースだと流産や死産になることもあるのです。

そのため、おりものが気になっても清潔に洗うのは外陰部までにしましょう。また、トイレ後に温水洗浄(ビデ機能)で洗いすぎるのにも注意しましょう。

セルフケア②:通気性の良い下着を使う

「おりものが増える妊娠初期に通気性が良い下着やおりものシートを使わないと、漏れたニオイが気になる」という方も多いのではないでしょうか?

しかし、実は通気性の悪い下着や織物シートは、おりものの変化を悪化させる原因になるのです。

そこで、おりものが気になる方に以下の2つのセルフケアを紹介します。

  • ・通気性の良い下着を使う
  • ・おりものシートを使わない

常に陰部が蒸れた状態になると細菌が繁殖しやすく、陰部の感染症の原因になります。また、膣内の常在菌のバランスが崩れることで自浄作用(膣のバリア機能)が失われ、感染症を助長しかねません。

そのため、通気性の良い下着を使い、陰部を乾燥状態に保てるように心がけましょう。

また「緩めの下着で通気性を確保すること」や「おりものシートを使わないこと」も細菌から陰部を守る方法の一つです。

【インタビュー】妊娠初期のおりもの変化に関する体験談

インタビューした方のプロフィールは、以下のとおりです。

Aさん
・28歳(当時)
・助産師歴4年
・妊娠初期(おそらく妊娠5〜6週目とのこと)
・おりものの量が急激に水のようなおりものが急激に増えた

私の知人の助産師が経験した妊娠初期のおりものの変化です。

一般の方よりはおりものの変化に詳しいはずなのに、なかなか産婦人科に受診できなかったことを後悔したと話していました。

受診が遅れた理由として「症状に乏しく」「性感染症である確信ができなかったこと」とのこと。そして、一般の方は助産師や看護師などの専門家以上に強い不安を抱えながら過ごしていることがわかったと話していました。

3日間様子を見てもおりものの量が減らなかったため受診したところ、夫婦で「性器クラミジア感染症」と診断され、治療したとのことでした。Aさんが早めに受診したこともあり、胎児への健康被害や不妊症になることはありませんでした。

このことからも、おりものの変化が気になった際は、すぐに産婦人科に相談することが重要であるとわかります。性感染症の他にも子宮がんなど母子ともに命の危険にさらされる危険な病気が潜んでいる可能性もゼロではありません。

まとめ: おりものは体の変化を知らせる重要なサイン

自宅のソファに座っている女性 背中と腰の痛み、突起、30年後の背中の問題

以上、妊娠初期のおりものの役割や具体的な変化について学びましたね。

おりものとは、子宮頸部・子宮内膜や膣壁からの分泌物や古い細胞にバルトリン腺・皮脂腺・汗腺からの分泌物が混じった粘液性の液体のことです。

そして、以下の2つの重要な役割がありました。

  • ・自浄作用により膣内を清潔に保つこと
  • ・受精がスムーズに行われるための手助けをすること

妊娠初期はホルモンバランスの崩れからおりものの性状が変化しやすい時期でもあります。そのため、正常なおりものよりもこの記事で解説した異常なおりものについて知っておくことが重要です。

  • ・白い塊なら「膣カンジダ症」
  • ・黄色で臭うなら「膣トリコモナス症」
  • ・量が増えて不正出血があるなら「淋菌感染症」
  • ・排卵期以外でも出血があるなら「子宮がん」
  • ・量が増えて水っぽいなら「性器クラミジア感染症」
  • ・臭いがキツいなら「細菌性膣症」

これらのおりものの変化があった際は、母子ともに健康被害が出る前に、速やかに産婦人科を受診しましょう。

おりものは体の変化を知らせてくれる重要なサインです。わずかな変化も見逃さず、安全に妊娠生活を送れる働きかけが大切なのです。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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