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「妊娠検査薬でくっきり陽性が出れば、化学流産になる可能性は低い?」
化学流産は、妊娠を心待ちにしている方が気にされることの多い病態です。
一般的に、正常な妊娠を確定できるのは子宮内に胎嚢や胎芽、心拍が確認できたときとされています。しかしそれより前でも、妊娠検査薬が陽性であれば妊娠している可能性が高いと判断できるため、ほとんどの方が自分のお腹に新しい命が宿ったことに喜びを感じることでしょう。
ただし、妊娠検査薬はあくまでもhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)に試薬が反応したということであり、正常な妊娠かどうかまでは判断できないので注意しなければいけません。
この記事では、妊娠検査薬でくっきり陽性でも化学流産になる可能性や原因、化学流産以外で妊娠検査薬がくっきり陽性になるケース、そして不要な心配をしないための対策法についてご紹介します。
妊娠検査薬でくっきり陽性が出たものの、化学流産してしまわないか心配な方はぜひ最後まで読んでみてください。
妊娠検査薬でくっきり陽性でも化学流産になる可能性と原因について
そもそも化学流産とは、妊娠検査薬や病院での血液検査で妊娠反応が出たものの、超音波検査で胎嚢などが確認される前に流産してしまった状態のことです。妊娠検査薬が一般的に販売されるようになり、広く使用されるようになったことから、注目されるようになりました。
インターネット上では、化学流産になる場合は妊娠検査薬の線が薄いという話をよく目にするため、くっきりと陽性と出ていれば化学流産にならないと思われている方もいるようです。
そこでここでは、妊娠検査薬でくっきり陽性でも化学流産になる可能性や原因についてご紹介します。
くっきり陽性でも化学流産になる可能性と原因
結論から申し上げると、妊娠検査薬でくっきり陽性でも化学流産になる可能性はあります。
化学流産は、受精卵が子宮内膜に着床したものの、早い段階で流産してしまった状態です。そのため、受精卵が子宮内膜に着床した時点でhCGの分泌ははじまっており、それに伴って尿中にも混じることになります。
つまり冒頭でもご紹介した通り、妊娠検査薬の陽性反応は、ただ単にhCGが体内で産生されているということを示しているのです。
尿中のhCGが少ない場合、ラインの色が薄くなる可能性もありますが、妊娠検査薬では判定結果の色の濃さに関係なくラインが出ていれば陽性と判定されます。
また、その反対に妊娠検査薬を使用するタイミングによっては、hCGの尿中濃度がすでに高まっている場合もあります。くっきりと陽性と出ていても、妊娠の継続が確定しているわけではないので、化学流産が起こる可能性はあるといえるでしょう。
さらにいえば、胎児死亡後もhCGが分泌され続けることもよく起こります。もし胎児死亡と同時にhCGの分泌がストップしても、尿中にはその後もかなり長期間にわたりhCGが混じっているため、妊娠検査薬で陽性が出続けるケースもあるでしょう。
化学流産が起こる時期
一般的に、化学流産が起こるのは受精卵が着床する妊娠3〜4週目頃から、超音波検査で胎嚢が確認できる妊娠5〜6週目頃以降だといわれています。この時期に妊娠が中断してしまうと、化学流産となるのです。
とくに最近では、妊活をされている方が妊娠検査薬を正しいタイミングよりも早く使用するフライング検査や、生理予定日から使用できる早期妊娠検査薬を使用するケースも増えています。それに伴い、化学流産に気づく方が増えているのです。
国によって考え方は異なりますが、日本は化学流産を一般的な妊娠に含めないという立場をとっています。そのため、今回化学流産をしたからといって、次もまた化学流産が起こるとは限りませんし、若く健康なカップルでもよく起こることです。
化学流産が起こったことを知ってしまったとしても、あまり悩みすぎないようにしましょう。
化学流産以外で妊娠検査薬がくっきり陽性になるケース
妊娠検査薬で濃い色の線がくっきり出て陽性を確認したものの妊娠が継続しないのは、化学流産に限ったことではありません。
なぜなら、現在市販されている妊娠検査薬は正しく使用することで、99%以上の高確率で正しい判定結果が得られるからです。この場合の正しい判定結果とは、尿中のhCGを検出したということであり、正常な妊娠であるとは限らない点に注意しなければいけません。
ここでは、化学流産以外で妊娠検査薬がくっきり陽性になるケースについてご紹介します。
稽留流産
稽留流産とは、けいりゅうりゅうざんと読み、多くの場合妊娠12週未満に起こります。出血や腹痛などはないものの、超音波検査で胎児の発育が停止していると診断された状態です。
胎児の発育が停止する現象が起きる時期は、まだ妊婦さん本人に自覚症状はありません。しかししばらくすると妊娠を自然に終わらせるための子宮収縮や出血、腹痛などが起きて徐々に完全流産へと移行するか、手術によって内容物を除去することになります。
稽留流産の場合も、化学流産と同様に受精卵の着床後はhCGが分泌されており、妊娠検査薬を使用するとはっきりと陽性反応が出ます。
異所性妊娠
異所性妊娠とは、いわゆる子宮外妊娠のことで、受精卵が子宮内膜以外に着床してしまった状態です。もっとも多いのは卵管に着床するケースで、胎芽や胎児がそこで発育してしまうこともあります。
異所性妊娠でも、正常な妊娠と同じように生理がこなくなり、妊娠検査薬では陽性反応が出ます。中には、正常な妊娠同様つわりの症状が出ることも。
頻度は全妊娠の1%程度とそれほど多くはありません。しかし、妊娠検査薬だけでは正常な妊娠と異所性妊娠の区別はつけられないため、妊娠6週目をすぎても超音波検査で胎嚢が確認できない場合は、異所性妊娠の可能性を疑って検査を行うことになるでしょう。
その他
市販の妊娠検査薬で陽性反応が出る時期は、正常な妊娠と異常妊娠との区別が非常に難しいうえに、初期流産なども起こりやすいトラブルの多い時期です。
これまでご紹介してきたように、妊娠検査薬でくっきり陽性が出てもなんらかのトラブルが起こっていることもあります。妊娠検査薬で陽性を確認したら、生理予定日から5週経過したことを確認後、婦人科やレディースクリニックを受診するようにしましょう。
以下は、正常妊娠とすでにご紹介したケース以外で妊娠検査薬が陽性になるケースです。
- 排卵誘発剤を内服して間もない
- 不妊治療の一環でhCG注射を打っている
- 胞状奇胎
- hCG産生腫瘍
- 閉経期
- 尿中のタンパクや糖の濃度が高い
とくに注意すべきなのは、卵巣がんや子宮頸がん、肺がん、胃がんなどの妊娠検査薬に反応するhCGを産生する「hCG産生腫瘍」です。女性の場合、無症状であることも多いので、hCG産生腫瘍の可能性があると判断されたら、医師の指示に従って然るべき検査を受けましょう。
不要な心配をしないための対策法
妊娠検査薬は、あくまでも妊娠の可能性を調べるものです。妊娠を待ち望んでいる場合、くっきりと陽性が出ると非常に嬉しいですが、子宮内で胎嚢と心拍が確認されるまでは正常妊娠であるかはわかりません。
以下は、妊娠検査薬の使用で不要な心配をしないための3つの対策法です。
- フライング検査をしない
- 化学流産は防げないことを理解する
- 妊娠しやすい体づくりをしておく
化学流産の多くは、フライング検査によって判明します。現在の精度の高い妊娠検査薬のおかげで早く正確に妊娠していると気付けますが、その反面知らなくてよい化学流産がわかってしまうこともあるため、おすすめできません。
実際のところ、知らないうちに化学流産をしている女性は多く、その後もとくに問題なく次の生理がくれば、すぐに妊娠もできます。あまり気にせず、次の妊娠に向けて生活習慣を整えたり、ストレスをためないようにしたりなど、妊娠しやすい体づくりをしておいた方がよいでしょう。
また、適切な時期に病院を受診して胎嚢が見えないと医師に言われ、不安を感じることもあるかもしれません。その際は医師の指示に従ってきちんと検査を受けたり、体調の変化に注意したりするようにしましょう。
まとめ
妊娠検査薬でくっきり陽性でも化学流産になる可能性や原因、化学流産以外で妊娠検査薬がくっきり陽性になるケース、そして不要な心配をしないための対策法についてご紹介しました。
妊娠検査薬で薄い線ではなく、くっきりと陽性反応が出たら、大抵の方が確実に妊娠していると思われることでしょう。
線の濃さにかかわらず妊娠検査薬で陽性反応が出たら体内でhCGが分泌されていることを示していますが、正常な妊娠であるかは別の問題です。
とくにフライング検査で陽性が出た場合は、化学流産になる可能性もあるので、より正確な結果を知るためにも、生理予定日から1週間以上経ってから再度妊娠検査薬で検査をすることをおすすめします。
妊娠をきちんと確定させるためにも、妊娠検査薬で陽性と判定されたら早めに産婦人科を受診するようにしましょう。