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妊娠後期は妊娠28週0日からで、出産までの期間を指します。月数でいうと妊娠8か月から10か月にあたり、36週からは「臨月」とも呼ばれます。この時期の赤ちゃんの推定体重は、28週ごろの約1,200gから40週ごろの約3,100gまで、2.5倍ほどに増えます。お母さんの体には、お腹の張り、恥骨の痛み、胸やけ、眠れないといった変化が出てきます。ただし、出血、持続する腹痛、胎動の減少は様子を見ずに受診してください。この記事では、妊娠28週から40週までを1週ずつ区切って、赤ちゃんの体重の目安とお母さんの体の変化を解説します。あわせて、よくある症状への対処、受診の目安、出産までの準備をまとめます。
Q. 妊娠後期はいつからいつまでですか?
A. 妊娠28週0日から出産までです。妊娠初期は13週6日まで、妊娠中期は14週0日から27週6日までで、28週0日から先が妊娠後期になります。出産予定日は40週0日です。37週0日から41週6日までの出産を正期産といい、37週になる前の出産は早産、42週以降は過期産と呼ばれます。
- ➤28週の壁・29週の壁 → 28週を超えると、早産で生まれた場合の生存率と後遺症の割合が大きく改善する目安
- ➤赤ちゃんの体重 → 29週で約1,340g、34週で約2,120g、40週で約3,140g(日本超音波医学会の中央値)
- ➤よくある症状 → お腹の張り、恥骨痛、胸やけ(後期つわり)、むくみ、眠れない、頻尿
- ➤すぐ受診 → 出血、治まらない腹痛や張り、破水、胎動の減少、激しい頭痛

1. 妊娠後期はいつから?何か月・臨月・正期産との関係
妊娠後期は妊娠28週0日から始まります。妊娠期間は3つに分けられ、妊娠初期が13週6日まで、妊娠中期が14週0日から27週6日まで、妊娠後期が28週0日からです。厚生労働省の食事摂取基準の報告書も、妊婦の栄養をこの3区分で示しています[1]。
一般向けの資料には「初期は15週まで」と書かれているものもあります。これは、妊娠4か月(12〜15週)までを初期と数える月数ベースの古い数え方です。医学的な区分で「後期」といえば28週0日からと考えてください。妊娠中期の区切りや体の変化については妊娠中期はいつからいつまでで解説しています。
妊娠後期は何か月?8か月・9か月・10か月(臨月)
妊娠の月数は4週を1か月として数えます。妊娠後期は、妊娠8か月(28〜31週)、9か月(32〜35週)、10か月(36〜39週)にあたります。妊娠10か月はとくに「臨月」と呼ばれ、いつお産が始まってもおかしくない時期に入ったことを表します。
妊娠週数は最終月経の初日を「0週0日」として数えます。受精はそこから約2週間後なので、妊娠2週ごろにあたります。そのため、「妊娠8か月」といっても受精からは7か月弱しか経っていません。月ごとの詳しい様子は妊娠8か月、妊娠9か月、妊娠10か月の各ページで扱っています。
正期産・早産・過期産と出産予定日(40週0日)
妊娠後期のなかでも、37週0日を境に呼び方が変わります。日本産科婦人科学会は、妊娠22週から36週までの出産を早産、37週から41週までの出産を正期産としています[2]。出産予定日は40週0日で、42週を過ぎてからの出産は過期産と呼ばれます[3]。
予定日は「この日に生まれる日」ではなく、「この前後で生まれることが多い目安」です。予定日ちょうどに生まれる人は多くありません。予定日の計算方法は出産予定日の計算方法に、早く・遅く生まれやすい人の特徴は出産予定日がずれる原因にまとめています。
2. 28週の壁・29週の壁とは?早産で生まれた赤ちゃんの見通し
「28週の壁」「29週の壁」は医学用語ではありません。妊娠28週前後を超えると、早産で生まれた場合の生存率と後遺症の割合が大きく改善することを表した言い方です。体の機能が整っていく途中の時期なので、1週ごとの差が赤ちゃんの見通しに表れやすいのです。
日本の新生児臨床研究ネットワーク(NRNJ)は、2003〜2012年に生まれた出生体重1,500g未満の赤ちゃんのデータを集計しています。それによると、生存率は在胎22週で41.0%、24週で81.1%でした。28週では95.8%、29週では96.7%まで上がっています。3歳時点の脳性麻痺の割合も、22週の22.4%に対して28週では8.6%でした[4]。同じネットワークの解析では、神経発達の障害は週数が進むほど少なくなり、22週の54.4%から29週の14.6%まで下がっていました[5]。
👶 在胎週数別の生存率(出生体重1,500g未満の赤ちゃん)
| 在胎週数 | 生存率 | 3歳時の脳性麻痺 |
|---|---|---|
| 22週 | 41.0% | 22.4% |
| 24週 | 81.1% | 15.1% |
| 26週 | 91.6% | — |
| 28週 | 95.8% | 8.6% |
| 29週 | 96.7% | — |
※NRNJデータベース(2003〜2012年出生)による[4]。施設や年代によって数字は変わります。—は資料に該当する数字がない項目です。
ここで注意したいのは、これが極低出生体重児の集団のデータだという点です。個々の赤ちゃんの見通しは、週数のほかに体重、生まれた理由、生まれた施設などで変わります。「28週を超えたから早産の心配はない」という意味でもありません。37週未満の出産は早産なので、張りや出血などのサインには引き続き注意が必要です。早産の定義や原因は早産とはいつからで、早産が近づいている状態については切迫早産とはで解説しています。
3. 【週数別】妊娠28週〜40週の赤ちゃんとお母さんの変化
妊娠後期の赤ちゃんは、1週間に約140〜180gずつ体重が増えます。以下は、日本超音波医学会が2026年3月に公表した新しい参照値(JSUM 2025)による、週ごとの推定体重の目安です[6]。
胎児の推定体重の目安(28週〜40週の一覧表)
⚖️ 妊娠週数別の推定胎児体重(単位:g)
| 週数 | 中央値 | 10〜90パーセンタイル |
|---|---|---|
| 28週 | 1,196 | 1,035〜1,357 |
| 29週 | 1,340 | 1,159〜1,521 |
| 30週 | 1,487 | 1,286〜1,689 |
| 31週 | 1,640 | 1,417〜1,862 |
| 32週 | 1,795 | 1,551〜2,040 |
| 33週 | 1,955 | 1,688〜2,221 |
| 34週 | 2,117 | 1,828〜2,405 |
| 35週 | 2,282 | 1,971〜2,593 |
| 36週 | 2,449 | 2,117〜2,782 |
| 37週 | 2,620 | 2,265〜2,974 |
| 38週 | 2,792 | 2,416〜3,167 |
| 39週 | 2,966 | 2,570〜3,362 |
| 40週 | 3,142 | 2,727〜3,557 |
※日本超音波医学会「胎児超音波計測の新たな参照値(JSUM 2025)」による[6]。各週0日の値です。超音波で推定した体重には誤差があり、10〜90パーセンタイルの外にいても、すぐに異常という意味ではありません。
推定体重は、頭の横幅、お腹の周囲、太ももの骨の長さを超音波で測り、計算式で求めます。推定には一定の誤差があるので、1回の数字に一喜一憂するより、健診ごとに成長曲線に沿って増えているかが大切です。成長曲線の見方は胎児の成長曲線とはで、小さめと言われたときの考え方は胎児発育不全(FGR)とはで解説しています。
妊娠28週目
推定体重は約1,200gです。ここから妊娠後期に入り、妊婦健診はおおむね2週間に1回になります[7]。赤ちゃんは起きている時間と眠っている時間のリズムができはじめ、胎動にも波が出てきます。胎動の変化に気づくために、胎動を数える方法があります。胎動10回にかかる時間を記録し、2時間たっても10回に届かなければ追加の評価を行う方法が報告されています[8]。かかりつけで方法を指示されたら、それに従ってください。お母さんはお腹が前にせり出し、背中や腰が痛みやすくなります。
妊娠29週目
推定体重は約1,340gです。ここから出産まで、赤ちゃんの体重は直線的に増えていきます。妊娠後期の推定エネルギー必要量は、妊娠前より1日あたり450kcal多く設定されています[9]。ご飯なら軽く2杯分ほどですが、量を増やすより主食・主菜・副菜の組み合わせを整えることが基本です。妊娠中期・後期の鉄の推奨量は、妊娠前より1日8.5mg多く設定されています[9]。
妊娠30週目
推定体重は約1,490gです。大きくなった子宮が横隔膜を押し上げるため、階段や会話の途中で息切れを感じやすくなります。多くの赤ちゃんは、この頃から頭を下にした姿勢(頭位)に落ち着いていきます。30週の時点で逆子と言われても、その後に自然に戻ることは少なくありません。逆子の原因や対策は逆子になる原因で解説しています。
妊娠31週目
推定体重は約1,640gです。むくみが手首の神経を圧迫して、朝に指先がしびれたりこわばったりすることがあります(手根管症候群)。多くは出産後に軽くなります。ただし、手のむくみと一緒に顔や全身が急にむくみ、血圧が上がっている場合は、妊娠高血圧症候群のサインのことがあります(第5章で説明します)。
妊娠32週目
推定体重は約1,800gです。羊水の量は妊娠22週ごろから39週ごろまで平均で約780mLとほぼ横ばいで、正常な範囲は300mL前後から2,000mL前後までと幅があります[10]。以前は「32週で羊水が最も多くなる」と書かれることもありましたが、測定研究では、この時期の量に大きな変動は見られていません。お母さんは、ホルモンの影響で歯ぐきが腫れたり出血しやすくなったりするので、歯みがきを丁寧に続けてください。
妊娠33週目
推定体重は約1,950gです。肺の機能が整ってきており、この時期以降に生まれる赤ちゃんは、自分の力で呼吸できる可能性が高くなります。とはいえ、37週になるまでは早産です。入院の荷物や、出産後の手続きに必要な書類の準備は、体が動きやすいうちに少しずつ始めておくと安心です。
妊娠34週目
推定体重は約2,120gです。子宮が膀胱を押すので、くしゃみや咳で尿がもれることがあります。尿もれと破水は見分けにくいことがあります。水のようなものが止まらずに流れ続ける、においがいつもと違うといった場合は、自己判断せずにかかりつけへ連絡してください。見分け方は破水したかも?で詳しく解説しています。
妊娠35週目
推定体重は約2,280gです。妊娠36〜37週には、腟と肛門のまわりの細菌を調べるB群溶血性レンサ球菌(GBS)検査が行われます[11]。GBSを持っていても、お母さんに症状が出ることはほとんどありません。分娩のときに抗菌薬を使うことで、赤ちゃんへの感染を防ぐのが目的です。
妊娠36週目
推定体重は約2,450gです。妊娠10か月(臨月)に入り、妊婦健診はおおむね1週間に1回になります[7]。赤ちゃんが骨盤の方へ下がってくると、胃や肺の圧迫が和らいで食べやすくなる人がいます。一方で、足の付け根や恥骨の痛み、頻尿は強くなりやすい時期です。
妊娠37週目
推定体重は約2,620gです。37週0日から正期産に入ります[2]。お腹の張りが規則的に来るようになり、だんだん間隔が短く強くなっていく場合は陣痛の始まりと考えられます。病院へ連絡する目安は施設によって違うので、健診で確認しておいてください。陣痛の兆候は陣痛はいつくる?にまとめています。
妊娠38週目
推定体重は約2,790gです。出産が近づくと、子宮の出口(子宮口)がやわらかくなりはじめ、少量の血が混じったおりもの(おしるし)が出ることがあります。おしるしのあと、数日のうちに陣痛が来ることが多いとされますが、時期には個人差があります。量が月経のように多い場合や、痛みが続く場合はすぐ連絡してください。
妊娠39週目
推定体重は約2,970gです。不規則な張りや痛み(前駆陣痛)が増える人がいます。前駆陣痛は間隔がそろわず、休むと遠のくのが特徴です。本陣痛との違いは前駆陣痛とはで解説しています。
妊娠40週目
推定体重は約3,140gです。40週0日が出産予定日です[3]。予定日を過ぎても、41週6日までは正期産の範囲です。42週を過ぎると、胎盤の働きが落ちることなどを理由に過期産として扱われます。予定日を過ぎてからの健診の間隔や、お産を促す処置を検討する時期は、かかりつけの産婦人科で相談してください[3]。
4. 妊娠後期によくある症状と対処法
妊娠後期の不調の多くは、大きくなった子宮が周りの臓器を押すことと、ホルモンの変化で起こります。多くは出産とともに軽くなりますが、受診が必要な病気のサインが隠れていることもあります。症状ごとに、起こる仕組みと対処、注意したい点を整理します。
お腹の張り|休めば治まるか、規則的か
お腹の張りは、子宮の筋肉が一時的に収縮して硬くなる状態です。妊娠後期は、歩きすぎたあと、胎動が激しいとき、夕方の疲れたときなどに張りやすくなります。横になって休むと数十分で治まる張りは、多くの場合心配ありません。
注意したいのは、休んでも治まらない張り、規則的にくり返す張り、痛みや出血を伴う張りです。37週になる前にこうした張りがあれば切迫早産、持続する強い痛みなら常位胎盤早期剥離の可能性があるため、すぐかかりつけへ連絡してください。張りの仕組みと対処は妊娠中のお腹の張りでも解説しています。
恥骨・股関節・腰の痛み|陰部のツーンとする痛み
妊娠中は、出産に備えて骨盤の関節をゆるめるホルモンが分泌されます。さらに、お腹の重みで重心が前に移るため、恥骨、股関節、腰、お尻に負担がかかります。妊娠中に骨盤まわりの痛みや腰痛のどちらか、あるいは両方が出る人は約45%と報告されています[12]。陰部がツーンと痛む、足の付け根がピキッとするといった訴えも、この骨盤まわりの痛みや、赤ちゃんの頭が下がってきた刺激によるものが多いと考えられます。
対処としては、骨盤ベルトで骨盤を支える、片足立ちや大股歩きを避ける、寝返りのときは両膝をそろえて動く、といった工夫があります。歩けないほどの痛み、発熱、出血を伴う場合は受診してください。
むくみ・こむら返り
妊娠後期は血液の量が増えるうえ、大きくなった子宮が下半身から心臓へ戻る静脈を圧迫するため、夕方になると足がむくみやすくなります。足を少し高くして休む、長時間立ちっぱなしを避ける、塩分をとりすぎないといった方法でむくみを和らげられます。夜中のこむら返りも増えますが、ふくらはぎをゆっくり伸ばすと治まります。
ただし、顔や手まで急にむくむ、1週間で体重が急に増えた、頭痛があるといった場合は、むくみが妊娠高血圧症候群の一部として出ていることがあります。家で血圧を測れる場合は測っておき、早めにかかりつけへ伝えてください。
後期つわり・胸やけ・便秘・下痢
妊娠後期に吐き気や胸やけが戻ってくることを「後期つわり」と呼ぶことがあります。主な原因は、子宮が胃を押し上げることと、胃の入り口の筋肉をゆるめるホルモンの作用で、胃酸が食道に逆流することです。前向きに追跡した研究では、胸やけなど逆流の症状は妊娠初期の26.1%から、後期には51.2%まで増えていました[13]。
少量ずつ回数を分けて食べる、食後すぐに横にならない、寝るときは上半身を少し高くする、といった方法が症状を和らげます。便秘は腸の動きが鈍くなることで起こり、下痢は出産が近づいて腸が刺激されることで起こる場合もあります。腹痛が周期的に強まる場合や、水のような下痢が続いて水分がとれない場合は受診してください。
眠れない・眠い|仰向けで寝てもいい?
お腹が大きくなると寝返りが打ちにくくなり、夜中のトイレや足のつり、胎動で目が覚めやすくなります。夜に眠れない分、日中に強い眠気が出るのも自然なことです。昼寝で睡眠を補ってかまいません。
寝る姿勢については、妊娠28週以降に仰向けで眠りにつくと、横向きに比べて妊娠後期の死産との関連が約2.6倍だったという研究があります。5つの研究を統合した解析の結果です[14]。仰向けでは子宮が背骨の前にある太い血管を押すため、赤ちゃんへの血流が減ると考えられています。ただし、これは観察研究なので、仰向け寝が原因だと断定できるわけではありません。寝つくときは右でも左でもよいので横向きを選び、夜中に仰向けで目が覚めたら横向きに戻せば十分です。右向きと左向きで差は見られていません[14]。
息苦しさ・動悸・頻尿
子宮が横隔膜を押し上げると、肺が広がりにくくなり息苦しさを感じます。妊娠中は血液量が増えて心臓の負担も大きくなるため、軽い動悸もよく見られます。赤ちゃんが下がってくる臨月には、息苦しさは和らぐ一方で、膀胱が押されてトイレが近くなります。
トイレを減らそうと水分を控えると、脱水や便秘の原因になります。安静にしていても息が苦しい、胸が痛い、片足だけが腫れて痛いといった場合は、貧血や血栓症などの可能性もあるため、早めに受診してください。
🩺 院長コラム【「よくある症状」と「受診すべき症状」の境目】
妊娠後期の不調の多くは子宮の大きさで説明できますが、同じ「お腹の張り」「むくみ」「頭痛」でも、早産や常位胎盤早期剥離、妊娠高血圧症候群の始まりのことがあります。迷ったときの判断の軸は、休めば治まるか、だんだん強くなっていないか、ほかの症状を伴っていないかの3つだと考えています。
内科の視点では、むくみと一緒に血圧の変化を見ることが大切だと考えています。家庭用の血圧計があれば、朝晩に測って記録しておくと、健診で受診の要否を判断する材料になります。
5. 妊娠後期にすぐ受診すべきサイン
妊娠後期に、出血、治まらない腹痛や張り、破水、胎動の減少、激しい頭痛のどれかがあれば、夜間や休日でも様子を見ずにかかりつけへ連絡してください。受診前に電話で伝える内容(週数、症状の始まり、出血の量、張りの間隔)をまとめておくと、受け入れまでがスムーズです。
🚨 すぐ連絡・受診する症状と考えられる原因
| 症状 | 考えられる主な原因 |
|---|---|
| 出血、持続する強い腹痛、お腹がずっと硬い | 常位胎盤早期剥離、早産 |
| 37週前の規則的な張り | 切迫早産 |
| 水のようなものが流れ出る | 破水(前期破水) |
| 胎動が減った・感じない | 赤ちゃんの状態の変化 |
| 激しい頭痛、目が見えにくい、みぞおちの痛み | 妊娠高血圧症候群 |
| 38℃以上の発熱 | 感染症 |
※症状の出方には個人差があり、すべての症状がそろうとは限りません。迷ったら連絡してください。
胎動が減ったとき
胎動は赤ちゃんの元気さを知る手がかりです。妊娠後期には子宮の中が狭くなり、動きが「大きく蹴る」から「ぐにゅっと動く」に変わるため、回数が減ったように感じることがあります。それでも、いつも動く時間帯に、横になって集中しても動きをほとんど感じない場合は、連絡を先延ばしにしないでください。胎動10回の時間を記録する方法を導入した研究では、胎動減少を理由に受診してもらうことで、胎児死亡が減ったと報告されています[8]。受診の目安は胎動が少ない日が心配な方へにまとめています。
出血や持続する腹痛|常位胎盤早期剥離
常位胎盤早期剥離は、赤ちゃんが生まれる前に胎盤が子宮の壁からはがれてしまう状態で、100〜200分娩に1例ほど起こります[15]。性器出血、陣痛と違って間隔のない持続的な腹痛、子宮の圧痛、胎動を感じないといった症状が出ます。ただし、これらがすべてそろうとは限りません[15]。出血が少なくても胎盤の裏に血がたまっている場合があるので、出血の量で判断しないことが大切です。詳しくは常位胎盤早期剥離とはで解説しています。
頭痛・むくみの急増|妊娠高血圧症候群
妊娠高血圧症候群は、妊娠中に収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上になる状態です[16]。日本産科婦人科学会は、むくみ、頭痛、めまい、目が見えにくいといった症状に注意し、これまで経験したことのない頭痛、ろれつが回りにくい、手足が動きにくい、ふだんと違う胃の痛みや吐き気がある場合はすぐ受診するよう呼びかけています[16]。病型や治療は妊娠高血圧症候群とはで、後期に見つかることもある血糖の問題は妊娠糖尿病とはで解説しています。
6. 妊娠後期の過ごし方|体重・食事・健診・出産準備
妊娠後期は、体重の増え方と血圧の管理、健診の受診、出産と産後の準備を並行して進める時期です。体が重くなって動きにくくなるので、準備は早めに始めると無理がありません。
体重増加の目安
妊娠中の体重増加の目安は、妊娠前の体格(BMI)によって変わります。2021年に改定された「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」では、妊娠全期間を通しての目安を次のように示しています[17]。
📊 妊娠中の体重増加の目安(妊娠前の体格別)
| 妊娠前の体格(BMI) | 妊娠全期間の増加量の目安 |
|---|---|
| 低体重(18.5未満) | 12〜15kg |
| 普通体重(18.5以上25.0未満) | 10〜13kg |
| 肥満1度(25.0以上30.0未満) | 7〜10kg |
| 肥満2度以上(30.0以上) | 個別対応(上限5kgまでが目安) |
※「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」(2021年)による[17]。個人差を考慮し、ゆるやかに指導することとされています。
この目安は「1週間に何kgまで」という形では示されていません。妊娠後期に気をつけたいのは、短期間での急な増加です。むくみによる増加は妊娠高血圧症候群のサインのことがあるため、健診で指摘されたら血圧とあわせて確認してください。反対に体重が増えないときの考え方は妊娠中に体重が増えないで解説しています。
食事とカフェイン・アルコール
妊娠後期は、エネルギーとたんぱく質、鉄の必要量が増えます[9]。鉄は赤血球の材料で、不足すると貧血によるめまいや息切れの原因になります。赤身の肉や魚、大豆製品、青菜を組み合わせ、健診で貧血を指摘されたら鉄剤を併用します。
カフェインについて、厚生労働省は海外の目安を紹介しています。世界保健機関(WHO)はコーヒーを1日3〜4杯まで、英国食品基準庁は1日200mg(マグカップ2杯程度)までとしています[18]。日本独自の上限は定められていません。アルコールは妊娠のどの時期にも安全な量が示されていないため、避けるのが原則です。胎児への影響は胎児性アルコール症候群で解説しています。
妊婦健診の頻度と後期の検査
国の基準では、妊婦健診は24週から35週まではおおむね2週間に1回、36週から出産まではおおむね1週間に1回、出産までに14回程度行うとされています[7]。後期の健診では、血圧、尿、体重、むくみ、子宮の大きさ、赤ちゃんの心拍や推定体重を確認します。36〜37週にはGBS検査が行われます[11]。施設によっては、貧血の血液検査や、赤ちゃんの心拍の変化を記録するモニター(ノンストレステスト)も行います。
入院・出産準備と出産が近いサイン
入院の荷物、母子手帳と保険証、産後に必要な書類、上の子の預け先や移動手段は、33週ごろまでにそろえておくと、早めにお産が始まっても慌てずにすみます。里帰り出産の場合は、移動のタイミングを健診先と相談して決めてください。
出産が近いサインには、おしるし、前駆陣痛、赤ちゃんが下がってお腹の形が変わることなどがあります。規則的な陣痛や破水があれば、お産の始まりとして病院へ連絡します。妊娠線が気になる場合は、急な体重増加を避けて保湿を続けるのが基本です(妊娠線の予防)。
7. 妊娠後期にわかること・わからないこと|遺伝の視点
妊娠後期のエコーでわかる赤ちゃんの病気には限りがあります。一方で、後期になって初めて気づかれる病気もあります。臨床遺伝専門医の立場から、検索の多い2つの疑問に答えます。
妊娠後期にダウン症の兆候はわかる?
ダウン症候群(21トリソミー)は、エコーだけでは確定できません。妊娠中期のエコーで見られる所見を統合した解析によると、所見がまったく見られなくても、可能性は約8分の1に下がるだけでゼロにはなりません[19]。逆に、エコーで指摘される所見があっても、ダウン症候群とは限りません。羊水過多や十二指腸閉鎖など、後期に見つかって染色体を調べるきっかけになる所見もあります。どの所見がどのくらい手がかりになるかはダウン症はエコーで指摘されない?で解説しています。
染色体の数の変化を妊娠中に調べる方法には、お母さんの血液を使うNIPT(新型出生前診断)と、羊水検査などの確定検査があります。NIPTは妊娠10週ごろから受けられる検査で、詳しくはNIPTとはをご覧ください。
後期のエコーで初めて見つかる病気|軟骨無形成症
妊娠後期になってから初めて気づかれる病気の代表が、軟骨無形成症(なんこつむけいせいしょう)です。FGFR3という遺伝子の変化で骨の伸びが抑えられる病気で、2万6,000〜2万8,000人に1人の頻度で生まれます。約80%は両親とも平均的な身長で、親から受け継いだのではなく、新たに生じた遺伝子の変化(新生突然変異)によって起こります。この新生突然変異はすべて父親由来で、父親の年齢が高いことと関連しています[20]。
赤ちゃんの手足の骨は妊娠24〜26週ごろまでは正常に見えることがあり、太ももの骨の短さとして指摘されるのは、それ以降、とくに妊娠後期になってからのことが多いと報告されています[21]。病気の詳細は軟骨無形成症とはで、親から受け継がない遺伝子の変化については新生突然変異(de novo変異)とはで解説しています。
💡 用語解説:新生突然変異(de novo変異)
両親の体の細胞にはない遺伝子の変化が、精子や卵子ができる過程で新たに生じ、子どもに現れたものを新生突然変異といいます。両親は病気でなく家族歴もないため、妊娠前に予測できません。精子のもとになる細胞は生涯分裂を続けるため、父親の年齢が上がるほど一部の新生突然変異は増えやすくなります。
こうした病気の一部は、妊娠初期にNIPTで調べる方法があります。父親由来の新生突然変異で起こる病気を対象にしたde novo変異NIPTや、骨系統疾患をNIPTで調べる可能性と限界について解説しています。後期に病気がわかった場合も、生まれる施設や出生後の治療の準備に役立てることができます。
🩺 院長コラム【「後期にならないとわからない病気」があるということ】
妊娠後期の健診で「赤ちゃんの手足が少し短い」と言われて、初めて遺伝の病気を意識するご家族もいます。軟骨無形成症のように、両親に原因がなく、父親の精子の中で新たに起きた変化で生じる病気は、家族歴からは予測できません。
遺伝の病気を考えるときは、「親から受け継ぐもの」と「新たに生じるもの」を分けて理解することが大切だと考えています。後期に所見を指摘された場合は、確定診断の方法や出生後の見通しを、臨床遺伝専門医の説明を受けながら整理することをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q1. 妊娠後期は何週から何週までですか?
妊娠28週0日から出産までです。月数では妊娠8か月から10か月にあたり、36週からは臨月と呼ばれます。37週0日から41週6日までの出産が正期産、42週以降が過期産です。
Q2. 28週の壁・29週の壁とはどういう意味ですか?
医学用語ではなく、28週前後を超えると早産で生まれた場合の生存率や後遺症の割合が大きく改善することを表した言い方です。日本の極低出生体重児のデータでは、生存率は22週で41.0%、28週で95.8%、29週で96.7%でした。ただし37週未満の出産は早産であり、28週を超えても早産のサインには注意が必要です。
Q3. 妊娠29週の赤ちゃんの体重はどのくらいですか?
日本超音波医学会の参照値(JSUM 2025)では、妊娠29週0日の推定体重の中央値は約1,340g、10〜90パーセンタイルは約1,160〜1,520gです。超音波による推定には誤差があるため、成長曲線に沿って増えているかを健診で確認します。
Q4. 妊娠後期の危険なお腹の張りはどんな張りですか?
休んでも治まらない張り、規則的にくり返す張り、痛みや出血を伴う張り、お腹がずっと硬いままの状態です。37週前の規則的な張りは切迫早産、持続する強い痛みや出血は常位胎盤早期剥離の可能性があるため、すぐかかりつけへ連絡してください。
Q5. 妊娠後期に仰向けで寝てしまっても大丈夫ですか?
研究では、妊娠28週以降に仰向けで眠りにつくことと後期死産との関連が示されています。寝つくときは左右どちらかの横向きを選び、夜中に仰向けで目が覚めたら横向きに戻せば十分です。右向きと左向きで差は見られていません。
Q6. 妊娠後期の体重は1週間に何kgまで増えてよいですか?
国の指針は1週間ごとの上限ではなく、妊娠前の体格別に妊娠全期間の増加量の目安(普通体重なら10〜13kgなど)を示しています。後期に短期間で急に増えた場合はむくみや妊娠高血圧症候群のサインのことがあるため、健診で血圧とあわせて確認してください。
Q7. 妊娠後期にダウン症の兆候はわかりますか?
エコーだけではダウン症候群を確定も否定もできません。所見がまったくなくても可能性はゼロにはならず、所見があってもダウン症候群とは限りません。染色体を調べるには、NIPTや羊水検査などの検査が必要です。
まとめ
妊娠後期は妊娠28週0日から出産までの期間で、妊娠8か月から10か月(臨月)にあたります[1]。37週0日から正期産に入り、40週0日が出産予定日です[2][3]。赤ちゃんの推定体重は28週の約1,200gから40週の約3,140gまで増え[6]、28週前後を超えると早産で生まれた場合の見通しも大きく改善します[4]。
お腹の張り、恥骨痛、胸やけ、むくみ、眠れないといった症状の多くは子宮の大きさとホルモンの変化によるもので、出産とともに軽くなります。ただし、出血、治まらない腹痛、破水、胎動の減少、激しい頭痛は、様子を見ずに連絡してください。寝るときは横向きを選び、体重は短期間の急な増加に注意しながら、出産と産後の準備を早めに進めていきましょう。
🧬 赤ちゃんの染色体・遺伝について知りたい方へ
ミネルバクリニックは、常駐する臨床遺伝専門医が、NIPT(新型出生前診断)と遺伝子検査、遺伝カウンセリングを行うクリニックです。染色体の病気や、父親由来の新生突然変異で起こる病気など、検査でわかることとわからないことを説明したうえで検査を行っています。妊娠経過の症状については、かかりつけの産婦人科にご相談ください。
参考文献
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- [2] 早産・切迫早産. 公益社団法人日本産科婦人科学会. [日本産科婦人科学会]
- [3] 予定日を過ぎているのに、生まれない!(予定日超過). 国立成育医療研究センター 産科. [国立成育医療研究センター]
- [4] 極低出生体重児NRNJデータベース VLBW(2003-2012)から得られたエビデンス Vol 1(2021改訂版). 新生児臨床研究ネットワーク. [NRNJ]
- [5] Neurodevelopmental outcomes of very low birth weight infants in the Neonatal Research Network of Japan: importance of neonatal intensive care unit graduate follow-up. Clin Exp Pediatr. 2021;64(7):313-321. [PMID 33171036]
- [6] 胎児超音波計測の新たな参照値の公表(JSUM 2025). 公益社団法人日本超音波医学会. 2026. [日本超音波医学会]
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- [9] 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書. 厚生労働省. 2024. [厚生労働省]
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- [11] 妊娠初期や中期にGBS陽性に対して抗菌薬治療を行った場合の妊娠末期の対応は? 公益社団法人日本産婦人科医会. 2026. [日本産婦人科医会]
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- [14] An Individual Participant Data Meta-analysis of Maternal Going-to-Sleep Position, Interactions with Fetal Vulnerability, and the Risk of Late Stillbirth. EClinicalMedicine. 2019;10:49-57. [PubMed 31193832]
- [15] 胎盤がはがれる、常位胎盤早期剥離について. 国立成育医療研究センター 産科. [国立成育医療研究センター]
- [16] 妊娠高血圧症候群. 公益社団法人日本産科婦人科学会. [日本産科婦人科学会]
- [17] 適正な体重増加量について|妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針. 国立健康・栄養研究所. [国立健康・栄養研究所]
- [18] 食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~. 厚生労働省. [厚生労働省]
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