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胎児の成長曲線の見方|週数別の推定体重の平均・正常範囲と、大きい・小さいと言われたときの考え方

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

胎児成長曲線(母子健康手帳では「胎児発育曲線」)は、妊婦健診の超音波検査で出したおなかの赤ちゃんの推定体重を書き込み、週数に見合った発育をしているかを確かめるグラフです。上下2本の線は平均±2SD(標準偏差)で、正期産・正常体重で生まれた赤ちゃんの約95.4%がこの範囲に入ります[1]。推定体重には±10%ほどの誤差があるため、1回の点ではなく、点を結んだ線が右肩上がりに続いているかで見ます。この記事では、週数別の平均と正常範囲の表、自分でSD値を計算する方法、推定体重の計算式、大きい・小さいと言われたときの考え方、ダウン症など染色体との関係を順に解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
👶 推定体重・平均・±2SD・胎児発育不全
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 胎児成長曲線はどこを見ればいいですか?

A. 横軸の妊娠週数に対して、推定体重の点が上下2本の線の間にあるか、そして回を重ねるごとに右肩上がりに増えているかを見ます。2本の線は平均±2SDで、正常体重で生まれた赤ちゃんの約95.4%が入る範囲です。線の外に出ることは、それだけで異常を意味しません。発育を詳しく評価するきっかけと考えてください。

  • ➤2本の線 → 平均±2SD。正期産・正常体重の赤ちゃんの約95.4%が入る範囲
  • ➤誤差 → 推定体重は±10%程度。2,000gなら1,800〜2,200g
  • ➤見るポイント → 1回の値より、点を結んだ線の向き
  • ➤小さい・大きい → 原因を調べる目安。小さい胎児には体質的に小さい場合と病的な発育制限が含まれる
  • ➤染色体 → 成長曲線ではダウン症などの染色体異常はわからない

1. 胎児成長曲線(胎児発育曲線)とは

胎児成長曲線とは、妊娠週数ごとに、おなかの赤ちゃんの推定体重の標準的な範囲を示したグラフです。横軸が妊娠週数、縦軸が推定体重(EFW:Estimated Fetal Weight)で、平均の線をはさんで上下に2本の線が引かれています。妊婦健診の超音波検査で計算した推定体重をこのグラフに書き込むと、その週数として大きめか小さめか、順調に増えているかが目で見てわかります。

このグラフは、平成24年度の母子健康手帳の改正で、手帳の後半(任意様式)に「胎児発育曲線」として掲載されるようになりました。同じ改正で、手帳の前半にある「妊娠の経過」のページにも超音波検査の結果を書き込める欄が設けられています[2]。検索では「胎児成長曲線」「胎児の成長曲線」と呼ばれることが多いのですが、医学的には「胎児発育曲線」が正式な呼び名で、指しているものは同じです。母子健康手帳の後半は自治体ごとに内容を選べる部分なので、手帳によっては載っていないこともあります。

胎児発育曲線(妊娠週数ごとの推定体重の平均と±2SDの範囲)

出典:「推定胎児体重と胎児発育曲線」保健指導マニュアル(平成23年度厚生労働科学研究費補助金研究班、2012年3月)[2]

どんな赤ちゃんのデータから作られたのか

この曲線は、正期産(妊娠37週0日〜41週6日)に正常な体重で生まれた赤ちゃんが、おなかの中にいたときに計測された推定体重から作られています。正常な体重とは、新生児の基準値で10〜90パーセンタイルの間に入ることを指します。妊娠週数ごとに推定体重の平均値を求め、その平均とばらつきから曲線を描いています[1]。

元になったのは、3,762人の赤ちゃんに対して行われた14,159回の超音波検査の計測値です。分娩はおよそ39週3日(±8日)、出生体重は平均3,118g(標準偏差378g)でした[2]。つまり、「結果として正常に生まれた赤ちゃんが、胎内でどのように大きくなっていったか」を集めた物差しです。この基準値と計測方法は、2003年に日本超音波医学会で、2005年に日本産科婦人科学会で承認され、全国で統一した方法で使われています[1][2]。

この作り方には意味があります。早産になった妊娠には、妊娠高血圧症候群や胎児発育不全などの合併症が含まれやすいため、早産で生まれた赤ちゃんの体重を基準にすると、おなかの中で順調に育っている赤ちゃんまで「大きめ」に評価されてしまいます。正常に育った赤ちゃんの胎内での値を基準にすることで、この偏りを避けています[2]。

2本の線は「平均±2SD」:約95.4%が入る範囲

上下2本の線は、平均値から標準偏差(SD)の2倍だけ上と下の位置を示しています。推定体重が週数ごとに平均を中心とした釣り鐘型(正規分布)に散らばるとき、平均±2SDの範囲には全体の約95.4%が入ります。上の線より上、下の線より下に外れるのは、それぞれ約2.3%です[1]。

ここから大切なことが2つ読み取れます。1つ目は、推定体重が2本の線の間に入っていれば、正常な体重で生まれることが期待できるという点です。2つ目は、正常な体重で生まれた赤ちゃんでも、約4.6%は胎内にいたときに線の外にいたという点です。線から外れたことは「詳しく見る必要がある」というサインであって、それだけで異常と決まるわけではありません。

💡 用語解説:標準偏差(SD)

標準偏差(SD:standard deviation、エスディー)は、データが平均からどのくらい散らばっているかを表す数値です。「平均から何SD離れているか」を表した値をSD値(偏差値に近い考え方)といい、0なら平均ちょうど、−1.5なら平均より1.5SD小さいことを意味します。正規分布では、−2.0SDが約2.3パーセンタイル、−1.5SDが約6.7パーセンタイル、+1.5SDが約93.3パーセンタイル、+2.0SDが約97.7パーセンタイルにあたります[2]。

パーセンタイルは「小さいほうから数えて何%の位置か」を示す別の物差しです。胎児や新生児の体重は同じ週数であれば正規分布に近いことが確かめられているため、胎児発育曲線ではSD値を使った評価が基本になっています[2]。両者の違いはパーセンタイルとSDスコアの違いで詳しく解説しています。

性別・初産経産・双子で曲線が分かれていない理由

平均すると、男の子は女の子より少し大きく、2人目以降の赤ちゃん(経産)は初めての赤ちゃん(初産)より少し大きくなります。双子は1人ずつで見ると単胎より少し小さいことがあります。ただし、こうした差はそれほど大きくありません[2]。

推定体重にはもともと±10%程度の誤差があるため、性別や初産・経産、胎児の数による差は、この誤差の中に埋もれてしまいます。そのため、「男女」「初産・経産」「胎児の数」で別々の曲線を作る意味はないと考えられており、母子健康手帳の曲線は1種類です[2]。男の子だから上のほう、女の子だから下のほう、と読み替える必要はありません。

出生後の「在胎期間別出生時体格標準値」とは別の基準

生まれたあとの赤ちゃんの体重は、同じ妊娠期間で生まれた新生児の出生体重から作った「在胎期間別出生時体格標準値」で評価します。日本小児科学会新生児委員会が、2011年1月1日以降に生まれた赤ちゃんに用いることを提案した基準で、性別と初産・経産で別々に作られています[2]。

胎児の基準と新生児の基準は似ていますが、比べると胎児発育曲線のほうがわずかに大きめです[2]。そのため、産科で「小さめ」と言われていた赤ちゃんが、生まれてから新生児科で「正常の体重」と言われることがあります[1]。どちらかが間違っているのではなく、物差しが違うために起こることです。

2. 推定体重(EFW)はどう計算するのか

推定体重は、超音波で赤ちゃんの頭・お腹・太ももの骨の長さを測り、「頭の重さ+胴体の重さ」として計算した値です。体重計に乗せることはできないので、計測できる長さから体積を見積もり、体重に換算しています[2]。

おなかの中の赤ちゃんは体を丸めているため、身長は生まれるまで測れません。妊娠初期は胎嚢(たいのう:赤ちゃんを包む袋)や頭殿長(とうでんちょう:頭からお尻までの長さ、CRL)で育ち具合を見ますが、妊娠中期以降は複数の部位を測って推定体重を出し、胎児発育曲線の表は妊娠18週から始まっています[1]。

エコーで測る部位:BPD・AC・FL

推定体重の計算に使う計測値は次のとおりです。エコー写真の数字の横に、この略号が書かれていることが多いので、写真と照らし合わせてみてください[2]。

📏 推定体重の計算に使う計測値

略号 日本語名(読み方) 測っているところ
BPD 児頭大横径(じとうだいおうけい) 頭のいちばん幅の広い断面で、手前の頭蓋骨の外側から反対側の頭蓋骨の内側までの距離
AC 腹部周囲長(ふくぶしゅういちょう) 胃と臍静脈が写る断面でのお腹まわりの長さ
APTD 躯幹前後径(くかんぜんごけい) 同じ断面でのお腹の厚み(腹壁から背骨まで)
TTD 躯幹横径(くかんおうけい) 同じ断面でのお腹の横幅(APTDと直交する径)
FL 大腿骨長(だいたいこつちょう) 太ももの骨の長さ(骨の両端まで写る断面で測る)

※FLは太ももの骨の「長さ」です。太さではありません。

この中で推定体重の誤差にいちばん関わるのは、お腹の計測値です。お腹は断面の取り方で形が変わりやすいため、決められた基準断面で正確に測ることが重視されています[2]。超音波で何をどこまで見ることができるかについては、胎児超音波検査(超音波胎児スクリーニング検査)の解説もご覧ください。

推定体重の計算式は2つ(どちらも同じ結果になる)

日本で標準的に使われている推定体重の式は、次の2つです。計測値の単位はcm、結果の単位はgです[2]。

📐 日本で標準的な推定体重の計算式

EFW(g)=1.07×BPD3+3.42×APTD×TTD×FL
EFW(g)=1.07×BPD3+0.30×AC2×FL

式の前半(1.07×BPD3)が頭の重さ、後半が胴体の重さにあたります。赤ちゃんは頭が大きく手足や首が短いという体の特徴があるため、体を頭と胴体に分け、それぞれの体積から重さを推定する「胎児身体モデル」で作られています。新生児の比重と体積の実測値をもとにした理論式で、超音波の計測値を集めて当てはめた回帰式ではありません[2]。

お腹の測り方には、前後径と横径を使う方法と、周囲長を使う方法があります。APTD×TTD=0.089×AC2という関係があるため、2つの式は同じ意味を持ち、どちらを使ってもかまいません。現在は腹部周囲長(AC)を使う後者の式が標準化の中心になっています[2]。

計算の例を挙げます。BPDが8.0cm、ACが28.0cm、FLが6.0cmの場合、1.07×8.03=約548g、0.30×28.02×6.0=約1,411gで、合計は約1,959gになります。これは妊娠33週0日の平均(1,980g)に近い値です。実際の健診では超音波装置が自動で計算するので、自分で計算する必要はありませんが、写真の数字がどこから来ているかを知っておくと、結果を読み違えにくくなります。

誤差は±10%:2,000gなら1,800〜2,200g

推定体重には±10%程度の誤差がつきものです。2,000gと推定された場合、実際の体重は1,800gから2,200gの範囲にあると考えます[1]。誤差の原因は大きく2つあり、1つは超音波という方法そのものの限界(体の中で音の速さが一定ではないことなど)、もう1つは測る人によるカーソル合わせのずれです[2]。

「体重が大きくなるほど誤差も大きい」と言われることがありますが、これは誤解です。誤差は割合で決まっているので、1,000gなら±100g、2,000gなら±200gの精度を持つように作られています。腹部周囲長を使った式では、出生体重に対する誤差は平均−0.01±9.63%と報告されています。小さめの赤ちゃん、大きめの赤ちゃんでも、偏りなく推定できることが確かめられています[2]。

推定体重を出せないことがある理由

妊娠後期に赤ちゃんの頭が骨盤の中に下がっていると、頭の真横から超音波を当てられず、BPDを正確に測れないことがあります。不正確な数字で計算しても判断が難しくなるだけなので、その場合は推定体重を計算しないのが正しい対応です。正確に測れた部位の計測値で発育を評価します[2]。

逆子(骨盤位)の赤ちゃんは、頭が前後に長い形をしていることがあり、BPDが短く測られて推定体重が小さめに出ることがあります。ただ、骨盤位で推定体重が統計的に意味のあるほど小さく計算されることはないとされ、プローブを押しつけないように注意して、頭位と同じ方法で推定するのが妥当と考えられています[2]。

3. 【週数別】胎児の推定体重の平均と正常範囲(18〜41週)

胎児の推定体重の平均は、妊娠28週0日で1,163g(正常範囲853〜1,473g)、36週0日で2,507g(1,927〜3,087g)、40週0日で3,125g(2,388〜3,862g)です。下の表は、母子健康手帳の胎児発育曲線の3本の線(−2SD・平均・+2SD)を数字にしたものです[1]。右端の「1SDの幅」は、自分でSD値を計算するときに使います(計算方法は次の章で説明します)。

📊 妊娠週数別の胎児の推定体重(平均と±2SD)

妊娠週数 −2SD(下の線) 平均 +2SD(上の線) 1SDの幅(目安)
18週0日 126g 187g 247g 約30g
19週0日 166g 247g 328g 約41g
20週0日 210g 313g 416g 約52g
21週0日 262g 387g 512g 約63g
22週0日 320g 469g 618g 約75g
23週0日 387g 560g 733g 約87g
24週0日 461g 660g 859g 約100g
25週0日 546g 771g 996g 約113g
26週0日 639g 892g 1,145g 約127g
27週0日 742g 1,023g 1,304g 約141g
28週0日 853g 1,163g 1,473g 約155g
29週0日 972g 1,313g 1,654g 約171g
30週0日 1,098g 1,470g 1,842g 約186g
31週0日 1,231g 1,635g 2,039g 約202g
32週0日 1,368g 1,805g 2,242g 約219g
33週0日 1,509g 1,980g 2,451g 約236g
34週0日 1,649g 2,156g 2,663g 約254g
35週0日 1,790g 2,333g 2,876g 約272g
36週0日 1,927g 2,507g 3,087g 約290g
37週0日 2,058g 2,676g 3,294g 約309g
38週0日 2,181g 2,838g 3,495g 約329g
39週0日 2,293g 2,989g 3,685g 約348g
40週0日 2,388g 3,125g 3,862g 約369g
41週0日 2,465g 3,244g 4,023g 約390g

※日本産科婦人科学会周産期委員会「胎児計測と胎児発育曲線について」の基準値[1]。1SDの幅は(+2SD−平均)÷2で算出した目安です。

表の値は各週の0日のものです。たとえば30週4日なら、30週0日と31週0日の間の値になると考えてください。週が進むほど平均値も幅も大きくなるので、同じ「200gの差」でも、24週と38週では意味がまったく違います。

「推定体重1,400gは何週ごろ?」という疑問に表で答えると、平均で見れば29週0日(1,313g)と30週0日(1,470g)の間です。一方、正常範囲で見ると、1,400gは28週0日(853〜1,473g)から32週0日(1,368〜2,242g)まで、どの週でも2本の線の間に入ります。体重から週数を逆算しても答えは1つに決まらない、ということがこの表からわかります。

赤ちゃんの体重の増え方は時期によって違います。正常に発育している赤ちゃんの体重は、1日あたり妊娠14〜15週で約5g、妊娠20週で約10g、妊娠32〜34週で約30〜35g増え、その後は増える割合が少しずつ小さくなります。出生時体格標準値で見ても、体重がいちばん増えるのは妊娠34〜36週ごろで、1週間あたり約200gとされています[2]。

4. 胎児成長曲線への入力・記入のしかた

記入するのは、「妊娠○週○日」の位置に「推定体重○g」の点を打ち、前回の点と線で結ぶ、という作業だけです。母子健康手帳の曲線に手で書き込んでも、アプリや入力サイトに数字を入れても、考え方は同じです[2]。

エコー写真を受け取るEFWの数字を確認
▶
横軸に妊娠週数手帳の実際の週数・日
▶
縦軸に推定体重交点に点を打つ
▶
前回の点と結ぶ線の向きを見る

エコー写真のどこを見る?

エコー写真には、推定体重(EFWと表示されることが多い)のほか、BPD、AC、FLなどの計測値が並んでいます。表示の形式は超音波装置の機種によって違います。推定体重の欄が見つからないときは、健診のときに担当の先生に尋ねてください。

注意したいのは、写真に「GA」「AGE」などと並んで表示される週数です。機種によっては、計測値から換算した「○週○日相当」が表示されることがあります。これは妊娠週数がはっきりしない場合の参考値で、発育の評価には使えません[2]。横軸には、母子健康手帳に書かれている実際の妊娠週数(出産予定日から数えた週数)を使ってください。

母子健康手帳の曲線に点を打つ手順

まず、横軸で健診日の妊娠週数を探します。○週3日なら、○週の目盛りと次の週の目盛りのほぼ真ん中です。そこから真上にたどり、縦軸の推定体重の高さに点を打ちます。2回目以降は、前回の点と直線で結びます。

担当の先生から「頭は小さめだけど背が高そうだから、実際の体重はもっとあると思う」と言われたり、上の子が推定より大きく生まれた経験があったりしても、書き込むのは先生が実際に測った推定体重です。推定体重は各部位を総合した値なので、自分で補正して書き入れる必要はありません[2]。

双子や三つ子の場合も、同じ曲線に1人ずつ、区別がつくように印を変えて点を打ちます。ただ、おなかの中で赤ちゃん同士の位置が入れ替わることがあり、毎回確実に1人ずつ区別できるとは限りません[2]。

アプリや入力サイトを使うときの注意

推定体重を入力するとグラフを描いてくれるアプリやサイトもあります。使うときは、次の3点を確かめてください。1つ目は、使っている基準値が日本の胎児発育曲線(日本超音波医学会・日本産科婦人科学会の基準値)かどうかです。海外の基準値を使ったものでは、同じ体重でも位置が変わります。2つ目は、引かれている線が±2SDなのか、別のパーセンタイルの線なのかです。3つ目は、週数の入力が「○週0日」に丸められていないかです。

どのツールを使っても、推定体重の誤差(±10%)が消えるわけではありません。グラフの見た目がきれいでも、1回の点で一喜一憂しないという原則は変わりません。

自分でSD値を計算する方法

SD値は「(推定体重−その週の平均)÷1SDの幅」で計算できます。1SDの幅は、上の表の「+2SD(上の線)−平均」を2で割った値です。−2.0から+2.0の間なら、2本の線の間に入っています[1]。

たとえば、妊娠32週0日で推定体重が1,600gだったとします。32週0日の平均は1,805g、1SDの幅は(2,242−1,805)÷2=218.5gです。(1,600−1,805)÷218.5=約−0.94で、SD値は約−0.9です。平均より少し小さめですが、2本の線の間に十分入っています。

週の途中の日(○週3日など)は、前後の週の平均と1SDの幅を目で補ってください。超音波装置によってはSD値を自動で表示するものもあり、施設で使われている値と、自分で計算した値が小数点以下でずれることがあります。大切なのは小数点以下の違いではなく、2本の線の間にあるか、前回と比べて位置が大きく変わっていないかです。

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5. 成長曲線の正しい読み方

胎児成長曲線は、1回の点がどこにあるかより、点を結んだ線がどちらに向かっているかを見るグラフです。発育の評価は、1回の計測値だけでなく、複数回の値を曲線上に並べて総合的に判断します[2]。

1回の点ではなく「線の向き」を見る

2本の線の間の、少し下のあたりを右肩上がりに進んでいく赤ちゃんは、まったく正常な発育をしていると評価できます。一方、妊娠30週までは2本の線の真ん中あたりにいたのに、32週以降だんだん下の線に近づき、37週以降は下の線を下回る、という経過は、胎児発育不全(FGR)の典型的なパターンのひとつです[2]。

このように経過を追っていくと、発育が止まってはっきりわかるよりも前の段階で、胎児発育不全の可能性に気づいて対応を考えることができます[2]。推定体重の一時点の値ではなく、発育の推移(成長の軌跡)を使って胎児発育不全を分類する考え方は、研究でも検討されています[3]。

「妊娠○週相当」の表示を週数のずれと読まない

エコーの結果に「妊娠○週○日相当」と表示されると、「2週も小さいの?」と心配になるかもしれません。具体例で考えます。妊娠36週3日の計測で推定体重が2,181gと出たとき、装置に「34週1日相当」と表示されることがあります[2]。

これをそのまま「発育が2週遅れている」「34週分しか育っていない」と受け取るのは誤りです。推定体重による発育の評価(縦軸)と、妊娠週数による成熟の評価(横軸)を混同しているためです。この例を36週3日の値としてSD値で評価すると−1.34SDで、平均よりは小さめですが2本の線の間に入っており、正常範囲の発育です[2]。赤ちゃんの成熟度にいちばん影響するのは妊娠週数なので、推定体重が軽くても、週数が進んでいる赤ちゃんのほうが成熟しています[2]。

前回より推定体重が減った・急に増えたとき

「前回より推定体重が減った」「1週間で200gも増えた」ということは、赤ちゃんの発育が正常でも起こります。胎児の体重が実際に減ることは通常ありえないので、多くは推定の誤差によるものです[2]。

例を挙げます。妊娠32週でA先生が1,900g、34週でB先生が1,800gと推定したとします。±10%の誤差を考えると、32週の実際の体重は1,710〜2,090g、34週は1,620〜1,980gの範囲にあります。この2回の結果からは、1,700g前後で停滞しているのか、1,750gから1,950gへ順調に増えているのかは判断できません。どちらにしても2本の線の間にあると考えられるため、少し時間をおいてもう一度評価するのがよいとされています[2]。曲線をつないで線がでこぼこしても、全体の流れが上向きであれば心配ないと考えられています[2]。

予定日(妊娠週数)が正しいことが前提

発育の評価は、妊娠週数(出産予定日)が正しいことが前提です[2]。妊娠週数は通常、最終月経の初日を起点に計算しますが、妊娠初期の超音波検査で赤ちゃんの大きさと週数にずれがないかを確かめ、ずれていれば週数を修正するのが一般的です[2]。横軸がずれていれば、点の位置も正しくなりません。

そのため、発育に異常がありそうなときは、まず妊娠初期に頭殿長(CRL)などで週数が確認されているかを見直します[2]。妊娠初期から健診に通っていれば週数の確認はすでに済んでいるので、発育が小さめでも予定日は変わりません[2]。週数の決め方はエコーで妊娠週数を確認する方法で詳しく解説しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【1つの点より、点の並び方を見てください】

推定体重は、10%前後の誤差を前提にした「推定」です。1回の数字が平均より少ない、前回より減った、という一点だけで発育を判断することは、医学的にも勧められていません。2本の線の間にあるか、点を結んだ線が右肩上がりに続いているか、という2つを見るのが基本だと考えています。

もうひとつ大切なのは、横軸の週数そのものが正しいかどうかです。発育の評価は週数の上に成り立っているので、妊娠初期に週数がどう確認されたかは、後半の推定体重を読むうえでも土台になります。数字の意味を分けて考えることが、成長曲線を正しく使う出発点だと考えています。

6. 曲線より小さい・下回ると言われたら

推定体重が下の線(−2SD)を下回ったときは、①1〜2週間あけて計測をくり返す、②母体・子宮・胎盤・臍帯・羊水に発育を妨げる問題がないか調べる、③赤ちゃんにほかの異常がないか詳しく調べる、のいずれか、または組み合わせで対応するのが一般的です。どの方法を選ぶかは、担当の産婦人科の先生とよく相談して決めます[1]。

下の線ぎりぎり・下回る・だんだん近づく、の3パターン

「小さい」と言われる状況は、成長曲線の上では大きく3つに分けられます[2]。

📉 小さめと言われる3つのパターンと考え方

曲線上の位置 考え方
下の線の内側ぎりぎりを推移 小さめながらも成長している状態。そのまま経過を見てよいと考えられている
下の線より下にある 赤ちゃんが小さい可能性が高い。母体・子宮・胎盤・臍帯・胎児のどこに原因があるかを調べる
真ん中あたりから、だんだん下の線に近づく 途中まで正常だった発育が、何らかの理由で伸びにくくなっている可能性。次の計測で下回れば原因を調べる

※「推定胎児体重と胎児発育曲線」保健指導マニュアル第7章の考え方をもとに整理[2]

「小さめ」は「未熟児」とは違います。赤ちゃんの発育の評価にはある程度の時間がかかるため、1週間程度たってから検査をくり返して判断します。今回の検査が小さめでも、その後の推定体重が右肩上がりになっていれば、時間をかけて見守ることになります[2]。

胎児発育不全の主な原因

胎児が週数に比べて小さい場合でも、胎児発育不全(FGR)と直ちに同義ではありません。現在は、推定胎児体重(EFW)や腹囲(AC)が小さい胎児には、体質的に小さい胎児と、何らかの病因によって本来の成長が制限されたFGRの両方が含まれると考え、胎児血流なども含めて評価します[4]。2012年の保健指導マニュアルでは、当時FGRとされた胎児の約70%は特に原因のない体質的なものと記載されていましたが、現在の概念では、このような体質的に小さい胎児と病的なFGRを区別して考えます[4]。病的な発育制限の要因として、次のようなものが知られています[2]。

💡 用語解説:胎児発育不全(FGR)

胎児発育不全(たいじはついくふぜん、FGR:fetal growth restriction)は、何らかの病因によって、おなかの赤ちゃんの本来の成長が制限されている状態を指します。以前は「子宮内胎児発育遅延(IUGR)」と呼ばれていました。週数に比べて小さい胎児には、体質的に小さい場合も含まれるため、「小さい」ことだけでFGRと決めるのではなく、推定体重や腹囲の程度、経時的な成長、胎児・母体の血流などを含めて評価します[4]。

赤ちゃん側の要因としては、染色体異常、形態の異常、先天性感染症、多胎があります。形態異常が見つかった赤ちゃんの約2割に胎児発育不全がみられ、特に先天性心疾患では平均体重が小さくなることが報告されています。先天性感染症は胎児発育不全の5〜10%を占め、風疹ウイルスでは約4割、サイトメガロウイルスでは約半数に胎児発育不全がみられると報告されています。双子では、1絨毛膜性(一卵性)双胎で約30%、2絨毛膜性(二卵性)双胎で約20%とされています[2]。サイトメガロウイルスについては先天性サイトメガロウイルス感染症で解説しています。染色体異常については第8章で詳しく取り上げます。

お母さん側の要因で最もよく知られているのは、妊娠高血圧症候群です。妊娠中に高血圧になると15〜24%に、妊娠高血圧腎症では28〜48%に胎児発育不全がみられると報告されています。このほか、腎臓の病気、全身性エリテマトーデスなどの膠原病、抗リン脂質抗体、チアノーゼ性心疾患や肺の病気による低酸素状態も原因になります[2]。生活習慣では、喫煙によって胎児の体重が5〜9%減ることが報告されており、多量の飲酒は胎児性アルコール症候群を来して高度の発育不全の原因になります[2]。妊娠中の飲酒や喫煙の影響も参考にしてください。

胎盤・臍帯の要因として、前置胎盤、周郭胎盤、絨毛膜下血腫、臍帯の結び目や付着部位の異常、過捻転などが挙げられています。詳しく調べても母体や赤ちゃんに原因が見つからないときは、もともと小さい赤ちゃんなのか、胎盤や臍帯の働きに問題があるのかを考えることになります[2]。

どんな検査をするのか

胎児が小さいと言われて大きな病院で検査を勧められた場合、多くはまず、分娩監視装置で赤ちゃんの心拍数を記録する胎児心拍数モニタリングや超音波検査を行い、赤ちゃんの状態が悪くないことを確認します。そのうえで原因を探すために、お母さんの血液検査や、子宮・胎盤・臍帯・赤ちゃんの専門的な超音波検査を進めていきます[2]。

下の線を下回る誤差・週数を再確認
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1〜2週あけて再計測伸びているかを見る
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母体・胎盤・臍帯・羊水原因を調べる
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赤ちゃんの詳しい検査形態・状態の評価

赤ちゃんの発育が完全に止まってしまった場合や、重い胎児発育不全で赤ちゃんに届く酸素が足りていない徴候がある場合には、それ以上おなかの中にいても発育が期待しにくく、少し早めに生まれたほうがよいと判断されることもあります。胎児の頭の発育は特に大切と考えられています[2]。具体的な方針は、担当の産婦人科の先生とよく相談してください。

生活面でできること

「小さい」原因の中には、お母さんの生活習慣が関係するものもあります。代表的なのが喫煙と極端なダイエットです。たばこに含まれるニコチンは胎盤の血流を低下させ、赤ちゃんに酸素や栄養を送る血液が減ることで胎児発育不全が起こります。禁煙することで発育が改善される場合があるため、妊娠中は禁煙することが勧められています[2]。

極端なダイエットも赤ちゃんの発育を妨げるので、避けてください。妊娠中の体重増加の目安は妊娠前の体格によって変わるため、健診での指導に沿って考えます。また、「小さく産んで大きく育てる」という考え方で、生まれてから無理に多く飲ませることは、将来のメタボリックシンドロームのリスクを高める可能性があると考えられており、母乳を中心にゆっくり成長していくほうがよいとされています[2]。

7. 曲線より大きい・上回ると言われたら

推定体重が上の線(+2SD)を上回るとき、いちばん多い原因は、お母さんに糖尿病またはその体質がある場合です。このほか、赤ちゃん自身の体質や遺伝的な要因、赤ちゃんの病気で大きめになる場合もあります[2]。

いちばん多い原因は母体の糖代謝(妊娠糖尿病)

お母さんの血糖が高くなりやすいと、多くのブドウ糖が胎盤を通って赤ちゃんに移ります。赤ちゃんは血糖を下げるためにインスリンというホルモンを多く分泌し、その結果として体重が増えます[2]。もともと糖尿病ではなくても、その体質がある人が妊娠すると、妊娠中だけ血糖値が高くなることがあり、これを妊娠糖尿病と呼びます[2]。

胎児が大きいと言われた場合によく行われるのは、ブドウ糖負荷試験などのお母さんの検査と、赤ちゃんの専門的な超音波検査です。妊娠糖尿病とわかった場合は、食事療法やインスリン治療で血糖値を保つことで、巨大児にならないようにできる場合があります[2]。一般に、第1子より第2子のほうが出生体重は大きくなる傾向がありますが、合併症や性別なども影響するため、赤ちゃん一人ひとりの発育を計測して評価していきます[2]。

ダイエットはしない:検査と食事療法の考え方

「大きいと言われたから、運動や食事制限をしたほうがいいのでは」と考える方もいますが、自己判断のダイエットはやめてください。糖尿病や妊娠糖尿病の方も、赤ちゃんの発育に必要な栄養はしっかりとる必要があり、食事療法は専門家の指導に沿って行います。妊娠中の過度なダイエットは、お母さんの体調を悪くし、赤ちゃんにも悪影響を及ぼしかねません[2]。

上の線の内側ぎりぎりを推移している場合や、真ん中あたりから上の線に近づいてきた場合は、計測の誤差も考えに入れて経過を見ます。2本の線の間で推移していれば、心配ないと考えられています[2]。上の線から外れた場合、赤ちゃんが大きいと難産になりやすいことや、赤ちゃんに合併症が起きやすいことがあるため、分娩の時期や方法は、お母さんと赤ちゃんの状態を見ながら担当医が判断します[2]。生まれてから授乳を減らして赤ちゃんにダイエットさせることは、成長や脳の発達に悪影響を及ぼしかねないため、通常どおり母乳を中心に授乳することが大切とされています[2]。

8. 【遺伝の視点】成長曲線とダウン症・染色体異常

胎児成長曲線は体重の物差しであり、ダウン症などの染色体異常を見つけるための検査ではありません。胎児発育不全のうち、染色体異常が原因のものは2〜7%程度とされています[2]。「小さい」と言われたことと、染色体異常を直接結びつける必要はありません。一方で、早い時期から目立つ発育不全では、染色体の関与を考える場面もあります。

ダウン症の赤ちゃんは成長曲線で小さく出る?

ダウン症候群(21トリソミー)の赤ちゃんでは、約30%に胎児発育不全がみられると報告されていますが、その程度は軽く、特に妊娠34週以降に目立ちやすいとされています[2]。言い換えると、ダウン症候群の赤ちゃんの多くは、成長曲線の上では2本の線の間で育っていきます。成長曲線が正常範囲だからダウン症候群ではない、小さめだからダウン症候群かもしれない、のどちらも言えないということです。

「お腹が小さい」「FLが短い」といった言葉からダウン症候群を心配する声もありますが、こうした情報だけで判断できないことは、ダウン症の予兆とされる噂の検証で詳しく解説しています。病気そのものについてはダウン症候群(21トリソミー)をご覧ください。

18トリソミー・13トリソミー・三倍体

ダウン症候群と違い、18トリソミー(エドワーズ症候群)と13トリソミー(パトウ症候群)では胎児発育不全になる割合が高く、それぞれ80%程度、50%程度と報告されています[2]。このほか、三倍体(さんばいたい:染色体のセットが通常の2組ではなく3組ある状態)や45,X(ターナー症候群)も、胎児発育不全を来す染色体異常として知られています[2]。

これらの染色体異常では、体重だけでなく、心臓などの形態の異常を伴うことが多くあります。超音波で見られる特徴については、18トリソミーの胎児エコーでわかる特徴、13トリソミーのエコーでわかる特徴で解説しています。

早い時期からの発育不全で考えること

染色体異常では、妊娠の早い時期から胎児発育不全がみられることが多く、早期に発症した胎児発育不全のうち約25%を染色体異常が占めるとされています[2]。妊娠後半になってから下の線に近づくパターンと、妊娠中期の早い段階から小さいパターンとでは、考える原因の順番が変わってきます。

また、赤ちゃん本体の染色体は正常でも、胎盤の細胞にだけ染色体の数の変化がある「限局性胎盤モザイク(CPM)」が、胎盤の働きを通じて発育に影響することがあります。この関係は限局性胎盤モザイクと胎児発育不全の関係で詳しく解説しています。

成長曲線では染色体異常はわからない:確かめる方法

赤ちゃんの染色体を調べる方法は、成長曲線とはまったく別のものです。お母さんの血液で調べる非確定的検査のNIPT(新型出生前診断)と、羊水や絨毛を採って調べる確定検査(羊水検査など)があります。NIPTは確定検査ではないので、陽性の場合は羊水検査などで確かめる必要があります。

NIPTは妊娠初期に受ける検査で、受けられる時期は妊娠週数で決まります。成長曲線と同じく、ここでも妊娠週数が正しく確定していることが前提になります。検査を受けるかどうかは、それぞれの検査で何がわかり、何がわからないかを理解したうえで決めるものです。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「小さい」と「染色体」を短絡させない】

推定体重が小さめと言われると、染色体の病気を心配される方がいます。しかし胎児発育不全の多くは原因のない体質的なもので、染色体異常が占める割合は一部です。一方、ダウン症候群の赤ちゃんの多くは成長曲線の範囲内で育ちます。体重の物差しで染色体を推し量ることはできない、というのが医学的な結論だと考えています。

臨床遺伝専門医としては、知りたいことに合った検査を選ぶことが大切だと考えています。発育を見るのが成長曲線、染色体の数を見るのがNIPTや確定検査です。それぞれの検査が答えられる問いと答えられない問いを分けて理解しておくことが、結果に振り回されないための土台になります。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 双子や三つ子の場合はどう記入しますか?

単胎と同じ胎児発育曲線に、1人ずつ区別がつくように印を変えてプロットします。1人ひとりが2本の線の間にあるか、全体として右肩上がりか、2人の体重差が大きくなっていないかを見ます。ただし、おなかの中で赤ちゃんの位置が入れ替わることがあり、毎回確実に区別できるとは限りません。

Q2. 男の子と女の子で基準は違いますか?

胎児発育曲線は男女共通です。平均的には男の子のほうが少し大きいものの、推定体重の誤差(±10%程度)の中に埋もれる程度の差なので、男女で別の曲線を作る意味はないと考えられています。

Q3. パーセンタイルとSD値はどう違いますか?

パーセンタイルは小さいほうから数えて何%の位置かを、SD値は平均から標準偏差の何倍離れているかを表します。胎児の体重は同じ週数なら正規分布に近いため、胎児発育曲線ではSD値を使います。−2.0SDは約2.3パーセンタイル、+2.0SDは約97.7パーセンタイルにあたります。

Q4. 毎回の健診で推定体重を測らなくても大丈夫ですか?

発育が順調でほかに異常がなければ、毎回の健診で超音波検査を行う医学的な必要性は大きくないとされています。体重の発育をとらえるには、特に異常がなければ妊娠中に5回程度の計測で十分と考えられています。

Q5. 上の線のぎりぎり内側を推移しているときはどうすればいいですか?

胎児計測には誤差があるため、経過を見ます。赤ちゃんの発育には個人差があり、2本の線の間で推移している場合も、経時的な増え方やほかの所見と合わせて評価します。上の線を超えた場合は、妊娠糖尿病の有無などを調べることがあります。

Q6. 成長曲線が正常範囲なら、ダウン症の心配はありませんか?

成長曲線は体重の物差しで、染色体異常の有無はわかりません。ダウン症候群の赤ちゃんで胎児発育不全がみられるのは約30%で程度も軽く、多くは正常範囲で育ちます。染色体を調べるには、NIPTや羊水検査など別の検査が必要です。

まとめ

胎児成長曲線(胎児発育曲線)は、正期産・正常体重で生まれた赤ちゃんの胎内での推定体重から作られた物差しで、上下2本の線は平均±2SD、約95.4%の赤ちゃんが入る範囲を示しています[1]。推定体重は頭・お腹・太ももの骨の長さから計算した値で、±10%程度の誤差があります[2]。

読むときは、1回の点の位置より、点を結んだ線が右肩上がりに続いているかを見ます。「○週相当」の表示は発育の評価には使わず、横軸には正しく確定した妊娠週数を使います。下の線を下回ったときは、計測をくり返しながら原因を調べ、上の線を上回ったときは、まず妊娠糖尿病の有無を確認するのが一般的です。小さい胎児には体質的に小さい場合と病的な発育制限が含まれ、染色体異常は原因の一部です。成長曲線では染色体異常はわからないため、気になることは担当の産婦人科の先生に尋ね、染色体を知りたい場合は目的に合った検査を選んでください。

🏥 NIPT(新型出生前診断)をお考えの方へ

ミネルバクリニックは、常駐する臨床遺伝専門医がNIPT(新型出生前診断)と遺伝カウンセリングを行う、遺伝診療の専門クリニックです。妊婦健診や分娩は行っていないため、推定体重や成長曲線についてのご質問は、かかりつけの産婦人科でご確認ください。赤ちゃんの染色体を調べる検査をご検討の方は、検査でわかること・わからないことをご理解いただいたうえでお申し込みください。

参考文献

  • [1] 日本産科婦人科学会 周産期委員会. 胎児計測と胎児発育曲線について. [日本産科婦人科学会]
  • [2] 「推定胎児体重と胎児発育曲線」保健指導マニュアル. 平成23年度厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)「地域における周産期医療システムの充実と医療資源の適正配置に関する研究」. 2012年3月. [日本産科婦人科学会]
  • [3] The role of growth trajectories in classifying fetal growth restriction. [PubMed 23969791]
  • [4] 日本産科婦人科学会. 産婦人科診療ガイドライン産科編2026 パブリックコメント資料:胎児SGAおよびFGRの概念・診断基準. [日本産科婦人科学会]

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プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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