InstagramInstagram

パーセンタイルとは?値の意味・各数値の読み方・SDスコアとの違いを臨床遺伝専門医が解説

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。国際医療誌『Medical Care Review APAC』『Global Woman Leader』の2誌で表紙を飾り、「Top Prenatal Testing Service in APAC 2025」に選出されるなど、世界基準の遺伝医療を提供。

テストの成績表や、母子健康手帳の成長曲線、システムの応答時間の分析などで、「◯パーセンタイル」という言葉を目にすることがあります。ところが、これは「パーセント(割合)」とよく混同される言葉でもあります。パーセンタイルは「割合」ではなく「順位・位置」を表す指標です。この記事では、パーセンタイルとは何か、90や50といった各数値がどういう意味なのか、どう求めるのか、そしてよく似たSDスコア(標準偏差)との違いや、成長曲線・出生前医療での使われ方までを、臨床遺伝専門医の視点から解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約14分
📊 定義・各数値の読み方・SDスコア・成長曲線
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. パーセンタイルとは何ですか?まず結論だけ知りたいです

A. パーセンタイルとは、データを小さい順に並べたとき、ある値が全体の中でどの位置にあるか(その値以下に全体の何%が含まれるか)を示す指標です。たとえば「90パーセンタイル」は、下から数えて90%の位置にある値、つまり上位10%にあたる値を意味します。ちょうど真ん中の50パーセンタイルは中央値と同じです。似た言葉の「パーセント」は割合を表すのに対し、パーセンタイルは「順位・位置」を表す点が根本的に異なります。パーセンタイル自体は位置を示すだけで、それ単独で「正常・異常」を意味する数値ではありません。

  • ➤意味 → データを小さい順に並べたとき、全体の何%の位置にあるかを示す指標(百分位数)
  • ➤各数値の読み方 → 90=上位10%、50=中央値、25/75=四分位数。単独の正常値ではない
  • ➤求め方 → 計算式で位置を求められるが、計算方法は一つではない(方式により結果が変わる)
  • ➤SDスコアとの違い → パーセンタイルは順位、SDスコアは平均からの隔たり。正規分布を仮定すると換算できる
  • ➤医療での使われ方 → 母子手帳の成長曲線や胎児発育の評価に使われるが、帯の外=ただちに異常ではない

📊 パーセンタイルの基本情報

項目 内容
読み方・別名 パーセンタイル(percentile/百分位数)。「ぱーせんたいる」と読む
定義 データを小さい順に並べたとき、ある値が全体の何%の位置にあるか(その値以下に全体の何%が含まれるか)を示す指標
代表的な値 25・50・75パーセンタイル(=四分位数。50は中央値)/成長曲線では3〜97パーセンタイルの帯を用いる
表記・記号 「P」を用いてP90のように書くことがある(90パーセンタイルの意味)
使われる分野 統計・試験の評価、システムの応答時間分析、医療(成長曲線・胎児発育)など
似た用語との違い パーセント=割合/SDスコア(標準偏差)=平均からの隔たり。いずれもパーセンタイルとは別の指標

※本記事は一般の方と医療に関わる方の両方に向けた用語解説です。特定の検査を勧めるものではありません。

パーセンタイルの意味と90・50などの数値の読み方、SDスコアとの違いを示すインフォグラフィック

パーセンタイルは、集団の中での順位・位置を表す指標です。50パーセンタイルは中央値、90パーセンタイルは下から90%の位置を示し、SDスコアとは表し方が異なります。

1. パーセンタイルとは

パーセンタイルとは、データを小さい順に並べたとき、ある値が全体の中で下から何%目の位置にあるかを示す指標です。日本語では百分位数(ひゃくぶんいすう)ともいい、英語では percentile と書きます。たとえば「65パーセンタイル」といえば、データを小さい順に並べたときに下から65%の位置にある値を指し、その値以下に全体のおよそ65%のデータが含まれることを意味します。平均値のように「全体を代表する1つの数」ではなく、個々の値が集団の中でどのあたりに位置しているかを表すのがパーセンタイルの特徴です。

パーセンタイルが便利なのは、単位や分布のかたちが違うデータでも「集団の中での位置」という共通のものさしで比べられる点です。たとえばテストの得点、身長や体重、システムの応答時間など、性質の異なるデータでも、「この値は下から何%の位置か」という形にそろえれば、直感的に位置関係をつかむことができます。そのため、平均値だけでは見えにくい「ばらつき」や「偏り」を読み取る場面で広く使われています。

なお、「パーセンタイル」「パーセンタイル値」「パーセンタイル順位」は、日常ではほぼ同じ意味で使われます。厳密には、「パーセンタイル値」はその位置にある実際の値(たとえば身長◯cm・体重◯kg)を指し、「パーセンタイル順位」はある値が下から何%の位置にあるか(0〜100)を指します。つまり「順位」を先に決めてから、それに対応する「値」を読み取る、という関係です。ただし会話や記事の中では両者をまとめて「パーセンタイル」と呼ぶことが多く、この記事でも特に区別が必要な場面を除いて「パーセンタイル」と表記します。

具体的な場面で考えてみましょう。ある試験を100人が受けたとします。自分の結果が「75パーセンタイル」だと言われたら、それは下から数えて75番目あたり、つまり上位25%に入っていることを意味します。点数そのもの(たとえば82点)を聞いただけでは、それが良い成績なのか平均的なのかは判断できませんが、パーセンタイルが分かれば「集団の中でどのくらいの位置にいるのか」がひと目で伝わります。テストが難しくて全体の点数が低ければ、同じ82点でもパーセンタイルは高くなります。点数という絶対的な数字ではなく、集団の中での相対的な位置を教えてくれる——これが、パーセンタイルが成績評価やさまざまなデータ分析で重宝される理由です。

パーセントとパーセンタイルの違い

パーセンタイルは「パーセント」と名前が似ているため混同されがちですが、両者は根本的に異なります。パーセント(%)は「割合」を表す単位で、ある全体に対する部分の大きさを示します。たとえば「全体の20%」は、全体を100としたときの20の部分を指すだけで、それが高い側なのか低い側なのかは問いません。一方、パーセンタイルは「順位・位置」を表します。「20パーセンタイル」は、データを小さい順に並べたときに下から20%の位置にある値であり、位置そのものに意味があります。

💡 用語解説:割合(パーセント)と位置(パーセンタイル)

身長で並んだ列を思い浮かべてください。「全体の50%」は「半数の人」という割合を指すだけで、背の高い人でも低い人でもかまいません。これがパーセントです。これに対して「50パーセンタイル」は、背の低いほうから数えてちょうど真ん中に立っている人の身長を指します。つまりパーセンタイルは、列の中の「立ち位置」を表しているのです。同じ「50」でも、割合を言っているのか位置を言っているのかで、意味がまったく変わります。

中央値・四分位数との関係

パーセンタイルは、統計でよく使う中央値(メジアン)や四分位数と地続きの考え方です。50パーセンタイルは中央値そのもので、この値より小さいものと大きいものがちょうど半数ずつになる位置を指します。また、25パーセンタイルは第1四分位数、75パーセンタイルは第3四分位数にあたり、データを4等分する境目になります。第1四分位数から第3四分位数までの幅(四分位範囲)は、データの中央付近がどれくらいの範囲に散らばっているかを示す目安として使われ、箱ひげ図などで視覚的に表されます。

四分位数がデータを4等分の区切りで見るのに対し、パーセンタイルは1〜99の任意の位置を100分の1の細かさで表せます。そのため、分布の端のほう(たとえば下位数%や上位数%)まで含めて、より詳しく位置を示したいときに向いています。

2. 各パーセンタイルの読み方(90・95・50・25)

「◯パーセンタイル」という数字は、下から◯%の位置=上位(100−◯)%にあたる値と読み替えると分かりやすくなります。たとえば90パーセンタイルは下から90%の位置なので上位10%、95パーセンタイルは上位5%の位置を表します。逆に10パーセンタイルは下から10%の位置、つまり下位10%にあたります。よく使われる値を一覧にすると次のようになります。

📊 各パーセンタイルの読み方(早見表)

パーセンタイル 位置の意味 言い換え
10パーセンタイル 下から10%の位置 下位10%
25パーセンタイル 下から4分の1の位置 第1四分位数
50パーセンタイル ちょうど真ん中の位置 中央値(メジアン)
75パーセンタイル 下から4分の3の位置 第3四分位数
90パーセンタイル 下から90%の位置 上位10%
95パーセンタイル 下から95%の位置 上位5%
99パーセンタイル 下から99%の位置 上位1%

※たとえばシステムの応答時間分析では、平均値だと一部の遅い応答が埋もれてしまうため、95パーセンタイルや99パーセンタイルで「遅い側の実態」を把握することがよく行われます。

この「上位の数値の読み方」は、医療以外の場面でも役立ちます。たとえばWebサービスの応答時間(レスポンスタイム)を評価するとき、平均値だけを見ていると、一部の極端に遅い応答が全体に埋もれてしまいます。そこで95パーセンタイルや99パーセンタイルを用いると、「大多数の利用者が体感する遅さの上限」や「ごく一部で起きている極端な遅延」をとらえられます。平均が外れ値(極端な値)に引っ張られやすいのに対し、パーセンタイルは分布の特定の位置をそのまま示すため、ばらつきの大きいデータの実態把握に向いているのです。

パーセンタイルに「正常値」はある?

⚠️ 誤解しやすい点

パーセンタイルそのものに、単独の「正常値」や「異常値」はありません。パーセンタイルはあくまで集団の中での位置を示す指標であり、「何パーセンタイル以上・以下なら異常」と一律に決められるものではありません。医療の成長評価などでは、3〜97パーセンタイルといった基準の帯や、時間の経過に沿った変化のしかたをあわせて判断します。帯の外にあること自体が、ただちに病気を意味するわけではありません。

「パーセンタイルの正常範囲は?」「異常の目安は?」という疑問はよく検索されますが、正しくは「どの範囲を基準の帯とみなすか」「その値がどんな集団を基準にしたものか」を確認することが大切です。同じ90パーセンタイルでも、比べている集団(母集団)が違えば意味が変わります。位置を示す数字だけを切り取って、良い・悪いと判断しないことが、パーセンタイルを正しく使うコツです。

パーセンタイルの記号・略称

パーセンタイルは、頭文字をとって「P」で表記されることがあります。たとえば90パーセンタイルは「P90」、50パーセンタイルは「P50」と書きます。医療の発育曲線や統計のレポートなどで見かける表記で、いずれも「下から何%の位置か」を短く示したものです。読み方や意味は本文で説明したとおりで、記号が変わっても指している内容は同じです。

3. パーセンタイルの求め方・計算方法

パーセンタイルは計算で求められますが、注意したいのは計算方法が一つに定まっていないことです。目的やソフトによって複数の方式があり、同じデータでも端のほうでは値が少し変わることがあります。ここでは考え方の基本と、代表的な求め方の一例を紹介します。

もっとも素朴な考え方は、データを小さい順に並べ、求めたいパーセンタイルが「何番目の値」にあたるかを位置(順位)として計算する方法です。データの個数を n、求めたいパーセンタイルを p とすると、位置は次の式の一例で表せます。

位置 = (n + 1) × p / 100

たとえばデータが19個(n=19)あるとき、25パーセンタイルの位置は (19+1)×25/100 = 5 となり、小さいほうから5番目の値が25パーセンタイルにあたります。位置が整数にならない場合は、前後の値のあいだを比例で補って推定します(線形補間)。この式はあくまで代表的な一例で、実際にはほかの方式も用いられます。

💡 計算方法は一つではない

パーセンタイルの算出には、もっとも近い順位の値をとる方法(最近接順位法)や、前後の値を比例で補う方法(線形補間法)など、複数の方式があります。表計算ソフトでも、ExcelのPERCENTILE.INC(0%と100%の端点を含める方式)とPERCENTILE.EXC(端点を除く方式)では、同じデータでも結果が異なることがあります。そのため「唯一の正解の式」があるわけではなく、どの方式で計算したかによって値がわずかに変わりうる、という点を知っておくと安心です。

反対に、「ある値が全体の中で何パーセンタイルにあたるか」を求めることもできます。これをパーセンタイル順位といい、おおまかには「(その値より小さいデータの個数)÷(全体の個数)×100」で見積もれます。たとえば20人のクラスで、自分より点数が低い人が16人いれば、16÷20×100=80となり、およそ80パーセンタイル(上位20%)の位置にいると読み取れます。テストの成績表などで「あなたは全体の上位◯%です」と示されるのは、この考え方に基づくものです。ここでも算出方法にはいくつかの流儀があり、示された数字は「だいたいの位置」を表す目安として受け取るのが適切です。

4. パーセンタイルとSDスコア(標準偏差)の違い・使い分け

パーセンタイルとよく一緒に登場するのがSDスコア(標準偏差スコア、SDスコア)です。どちらも「集団の中でその値がどのあたりにあるか」を示す点は同じですが、表し方が違います。パーセンタイルが「下から何%目か」という順位で表すのに対し、SDスコアは「平均からどれだけ離れているかを標準偏差という物差しで割った値」で表し、0がちょうど平均です。国立保健医療科学院の資料でも、パーセンタイルは感覚的に分かりやすく、SDスコアは極端に平均から離れた状態(たとえば極端な低身長)を表現しやすい、と整理されています。

データが正規分布(平均を中心とした左右対称の分布)に近いと仮定すると、パーセンタイルとSDスコアは互いに換算できます。日本小児科学会や産科婦人科の用語解説で示されている対応関係は、次のとおりです。

📊 パーセンタイルとSDスコアの対応(正規分布を仮定した場合)

パーセンタイル SDスコア
3パーセンタイル 約 −1.88 SD
10パーセンタイル 約 −1.28 SD
50パーセンタイル(中央値) 0 SD(正規分布では平均=中央値)
90パーセンタイル 約 +1.28 SD
97パーセンタイル 約 +1.88 SD
(参考)−1.5 SD 約 6.7パーセンタイル
(参考)±2.0 SD 約 2.3/97.7パーセンタイル

※これらはデータが正規分布していると仮定した場合の対応で、あくまで近似です。実際のデータは厳密には正規分布しないため、換算値は目安として扱います。

日本では、学力テストでおなじみの偏差値も、実はSDスコアを見やすく作り変えたものです。偏差値は「平均を50、標準偏差の1つ分を10」として計算するため、偏差値50は50パーセンタイル(平均)、偏差値60はおよそ84パーセンタイル、偏差値40はおよそ16パーセンタイルに対応します(いずれも正規分布を仮定した場合の近似)。つまり正規分布を仮定する場合、パーセンタイル・SDスコア・偏差値は、同じ「集団の中での位置」を、別々の物差しで表したものだと考えると、頭の中で整理しやすくなります。順位で見たいときはパーセンタイル、平均からの離れ具合で見たいときはSDスコアや偏差値、と使い分けられているだけなのです。

医療ではどちらを使う?

日本の小児・周産期医療では、この2つを目的で使い分けています。母子健康手帳の乳幼児の発育曲線はパーセンタイルで描かれており、保護者にも直感的に位置を伝えやすいのが利点です。一方、低身長など平均から大きく外れた状態の評価にはSDスコアが扱いやすいとされ、小児の身長評価などで広く用いられます。

胎児の発育評価では、この違いが国際的な診断基準の差にも表れています。日本の産婦人科診療ガイドラインでは胎児推定体重が基準値の−1.5SD以下(およそ6.7パーセンタイルに相当)を胎児発育不全(FGR)の目安とするのに対し、欧米(米国産科婦人科学会)では10パーセンタイル未満を基準としています。同じ「小さめ」を表すのに、日本はSD、欧米はパーセンタイルという異なる物差しを使っている、というわけです。どちらの指標も、正規分布を仮定した近似の上に成り立っている点は共通しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【数字は「位置」であって「診断」ではない】

パーセンタイルやSDスコアは、集団の中での位置をわかりやすく示してくれる便利な物差しです。ただし医学的には、これらの数値は診断そのものではなく、判断材料の一つにすぎません。とくに成長の評価では、ある一時点の数値が帯の外にあるかどうかよりも、その子なりの曲線に沿って伸びているか、基準線を急にまたいでいないか、という経過のかたちのほうが重要になります。

この結果を解釈するときに大切なのは、数字だけを切り取って良い・悪いと決めつけないことです。同じパーセンタイルでも、基準にした集団や測定の条件によって意味が変わります。数値の背景まで含めて読み解くことが、遺伝医療や周産期医療では欠かせません。

5. 医療現場でのパーセンタイル(成長曲線・母子手帳・胎児)

パーセンタイルが身近に使われている代表が、子どもの成長評価と胎児の発育評価です。ただし前章でも触れたとおり、基準の帯の外にあること自体が、ただちに異常を意味するわけではありません。ここでは母子手帳の成長曲線と、出生前の胎児発育を例に、パーセンタイルがどう使われるかを整理します。

母子手帳・乳幼児の成長曲線

母子健康手帳に載っている乳幼児の身体発育曲線は、まさにパーセンタイルのグラフです。身長・体重・頭囲について、3・10・25・50・75・90・97パーセンタイルの7本の曲線が男女別に描かれています。97パーセンタイルは、同じ月齢・性別の子ども100人を小さいほうから並べたときに97番目にあたる値、3パーセンタイルは3番目にあたる値を意味します。3パーセンタイル未満はおよそ3%、97パーセンタイルを超えるのもおよそ3%で、3〜97パーセンタイルの帯の中に全体の約94%の子どもが入る計算になります。この発育値は10年ごとに全国調査で更新されており、最新はこども家庭庁が公表した令和5年(2023年)の乳幼児身体発育調査です。

成長曲線を読むときのポイントは、一時点の位置だけを見て一喜一憂しないことです。その子なりのカーブに沿って伸びているか、基準線を急にまたいで上下していないかという経過のかたちが重視されます。帯の外にあっても健康な子は多く含まれており、帯の中でも急な変化があれば注意が必要になることもあります。数値はあくまで、経過と合わせて読むための目安です。

成長曲線を描く大きな利点は、やせや肥満といった栄養状態の変化や、低身長・高身長などの成長のかたよりを、目で見て早めに気づける点にあります。数か月ごとに測って点を結んでいくと、その子なりの成長の個性が一本の線として見えてきます。パーセンタイルの帯は、この線がどのあたりを通っているか、途中でカーブが変わっていないかを読み解くための「背景のものさし」として働きます。保護者にとっても位置を直感的につかみやすいことが、母子健康手帳でパーセンタイルが採用されている理由の一つです。

胎児発育・出生前での使われ方

妊娠中は、超音波検査で推定した胎児の体重(推定体重)を妊娠週数ごとの基準と照らし合わせ、発育の程度を評価します。ここでもパーセンタイルやSDスコアが使われます。SGA(small for gestational age)は、在胎週数に対して出生時の体格が小さいことを示す統計的な分類です。一方、胎児発育不全(FGR)は、胎児が本来の発育能を十分に発揮できていない病的な状態を指し、SGAとFGRは同義ではありません。前章のとおり、日本では胎児推定体重−1.5SD以下がFGRを疑う目安の一つとして用いられ、海外では10パーセンタイル未満を基準に含めるガイドラインがあります。

生まれたあとの出生時体重の評価にも、パーセンタイルが使われます。在胎週数ごとの基準に照らして、在胎期間別出生時体格標準値に照らして、出生体重が10パーセンタイル未満の場合をLFD(light for date)、90パーセンタイル以上の場合をHFD(heavy for date)とし、その間の範囲をAFD(appropriate for date)として扱う分類があります。妊娠中の胎児発育から出生後の評価まで、一貫して「同じ週数の集団の中での位置」を見ている、という点は共通しています。ここでも、位置を示す数値は評価の出発点であり、赤ちゃんの状態全体とあわせて判断されます。

⚠️ 小さめ=すべて病気、ではない

推定体重が基準より小さくても、小さいという数値だけでFGRと診断されるわけではありません。胎児の大きさに加えて、発育の推移、羊水量、臍帯動脈などの血流評価、母体・胎児の状態を合わせて、体質的に小さい可能性と病的な発育制限(FGR)を評価します。SGAは主として出生後に在胎週数に対する出生時体格を表す用語であり、FGRとは区別して考える必要があります。集団の基準から個人のリスクを一律に断定することはできません。数値が気になるときは、自己判断せず妊婦健診で主治医に相談することが大切です。

📖 妊娠中の検査や、胎児の発育・染色体に関する検査について詳しく知りたい方は、当院のNIPT(新型出生前診断)や遺伝カウンセリングの解説もあわせてご覧ください。

検査を受けるかどうかを含め、決めるのはご本人です。当院では臨床遺伝専門医が中立の立場で、何が分かり何が分からないのか、どんな選択肢があるのかを整理してご説明しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 90パーセンタイル(値)とはどういう意味ですか?

90パーセンタイルとは、データを小さい順に並べたとき、下から90%の位置にある値のことです。言い換えると、その値は上位10%にあたります。たとえば身長が90パーセンタイルなら、同じ年齢・性別の100人のうち、小さいほうから数えて90番目あたりの背の高さ、という意味になります。中央(真ん中)は50パーセンタイルで、これは中央値と同じです。

Q2. パーセンタイルに正常値・正常範囲はありますか?

パーセンタイルそのものには、単独の「正常値」や「異常値」はありません。パーセンタイルは集団の中での位置を示す指標だからです。医療の成長評価などでは、3〜97パーセンタイルといった基準の帯や、時間の経過に沿った変化のしかたをあわせて判断します。帯の外にあること自体が、ただちに病気を意味するわけではありません。

Q3. パーセンタイルとパーセントの違いは何ですか?

パーセント(%)は「割合」を表し、全体に対する部分の大きさを示します。一方、パーセンタイルは「順位・位置」を表し、データを小さい順に並べたときに下から何%の位置にあるかを示します。たとえば「50パーセント」は半数という割合ですが、「50パーセンタイル」はちょうど真ん中に位置する値(中央値)を指します。同じ数字でも意味が異なります。

Q4. パーセンタイルとSDスコアは、どちらを使いますか?

目的によって使い分けます。パーセンタイルは順位で表すため感覚的に分かりやすく、母子健康手帳の発育曲線などで使われます。SDスコアは平均からの隔たりを標準偏差で表すため、平均から大きく外れた状態(極端な低身長など)の評価に向いています。正規分布を仮定すると両者は換算でき、たとえば50パーセンタイル=0SD、3パーセンタイル=約−1.88SDに対応します(近似)。

Q5. 成長曲線で、うちの子が3パーセンタイル未満/97パーセンタイル以上でした。問題ですか?

帯の外にあること自体は、ただちに異常を意味しません。3〜97パーセンタイルの帯は目安であり、帯の外にも健康なお子さんは多く含まれます。大切なのは、一時点の値よりも、その子なりのカーブに沿って伸びているか、基準線を急にまたいでいないかという経過です。気になるときは自己判断せず、乳幼児健診や医療機関で相談してください。胎児の発育について詳しくは、胎児発育不全(FGR)の解説もご覧ください。

Q6. パーセンタイルの求め方(計算方法)は?

データを小さい順に並べ、求めたいパーセンタイルが何番目の値にあたるかを計算します。位置を求める式の一例は「(n+1)×p/100」(nはデータの個数、pはパーセンタイル)で、位置が整数にならない場合は前後の値を比例で補います。ただし計算方法は一つではなく、Excelでも PERCENTILE.INC と PERCENTILE.EXC で結果が異なることがあります。どの方式で求めたかによって、値がわずかに変わりうる点に注意してください。

まとめ

パーセンタイルは、データを小さい順に並べたときの「位置」を示す指標です。90パーセンタイルは上位10%、50パーセンタイルは中央値というように、各数値は「下から何%の位置か」で読み解けます。「割合」を表すパーセントとは別物であり、それ単独で正常・異常を意味する数値ではありません。計算方法は一つに定まっておらず、方式によって端のほうの値が変わりうる点も知っておくと役立ちます。

医療の場面では、母子健康手帳の成長曲線や胎児の発育評価にパーセンタイルが使われ、よく似たSDスコア(標準偏差)とともに、目的に応じて使い分けられています。いずれも正規分布を仮定した近似の上に成り立つ物差しであり、数値はあくまで判断材料の一つです。とくに成長の評価では、一時点の位置よりも経過のかたちが重視されます。数字の背景まで含めて読み解くことが、パーセンタイルという指標を正しく活かすうえで大切です。

まとめると、パーセンタイルを読むときのポイントは3つです。第一に、「下から何%の位置か」を表す順位の指標であり、割合を示すパーセントとは別物であること。第二に、それ単独では正常・異常を意味せず、基準となる集団や経過とあわせて解釈すること。第三に、SDスコアや偏差値と同じく、集団の中での位置を別の物差しで言い換えたものだということです。この3点をおさえておけば、成績表でも成長曲線でも、数字にふりまわされずに落ち着いて読み取ることができます。

参考文献

  • [1] こども家庭庁「令和5年乳幼児身体発育調査 結果の概要」2024. [こども家庭庁]
  • [2] 国立保健医療科学院「乳幼児身体発育曲線の活用・実践ガイド」2021. [国立保健医療科学院]
  • [3] 日本小児科学会「『新生児委員会報告:新しい在胎期間別出生時体格標準値』の修正について」(パーセンタイル値とSDスコアの対応). [日本小児科学会]
  • [4] 日本小児内分泌学会「日本人小児の体格の評価」(Isojima T, et al. Clin Pediatr Endocrinol. 2016;25:71-76). [日本小児内分泌学会]
  • [5] 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン 産科編2023」(胎児発育不全の診断:胎児推定体重−1.5SD以下).
  • [6] 日本産科婦人科学会「産科婦人科用語集・用語解説集」(正規分布を仮定したSD値とパーセンタイル値の対応).
  • [7] Microsoft サポート「PERCENTILE.INC 関数/PERCENTILE.EXC 関数」(計算方式による差).

関連記事

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

お電話での受付可能
診療時間
午前 10:00~14:00
(最終受付13:30)
午後 16:00~20:00
(最終受付19:30)
休診 火曜・水曜

休診日・不定休について

クレジットカードのご利用について

publicブログバナー
 
medicalブログバナー
 
NIPTトップページへ遷移