目次
破水とは、おなかの赤ちゃんを包んでいる卵膜(らんまく)が破れて、中の羊水が腟から流れ出ることです。一気に大量に出ることもあれば、少しずつ出つづけるだけのこともあり、陣痛より先に起こる場合もあります。破水したかもしれないと思ったら、清潔なナプキンを当てて、夜間や休日でも通院中の産院へ電話してください。この記事では、破水がどんな感じなのか、尿漏れやおりものとの見分け方、破水したときにすること、病院での流れと出産までの時間を順に説明します。
🚨 破水かも?今すぐやること
➤ 清潔なナプキンを当てる(タンポンは使わない)
➤ 気づいた時刻・量・色をメモする
➤ 夜間・休日でも、通院中の産院へ電話する(入浴やシャワーより先に連絡)
➤ 移動は家族の車かタクシーで(自分では運転しない)
救急車(119番)を呼ぶサイン:へその緒が出ている・触れる/出血が多い/強い腹痛が続いて動けない
ミネルバクリニックでは分娩や破水の診察は行っていません。連絡先は、妊婦健診を受けている産院です。
Q. 破水したら、まず何をすればいいですか?
A. 清潔なナプキンを当て、時刻・量・色をメモして、通院中の産院へ電話します。量が少なくても、自分の意思で止められない水分が繰り返し出るときは破水の可能性があります。破水か尿漏れかを自分で確定することはできないので、迷った時点で連絡してください。
- ➤破水とは → 卵膜が破れて羊水が流れ出ること。陣痛より先に起こることもある
- ➤どんな感じ → 一気に出る場合と少量が続く場合がある。どちらも自分では止められない
- ➤見分け方 → 尿漏れ・おりものとの違いは目安にとどまる。確定は病院の検査で行う
- ➤破水したら → ナプキン・メモ・電話・車かタクシー。救急車を呼ぶサインも確認
- ➤その後 → 多くは24時間以内に陣痛が始まる。週数によって病院での対応が変わる
1. 破水とは?卵膜が破れて羊水が流れ出ること
破水は、卵膜が破れて羊水が体の外へ出てくる状態を指します。羊水は、赤ちゃんを外からの衝撃から守り、体を動かす空間をつくり、肺や消化管の発達を助けている液体です。卵膜はその羊水と赤ちゃんを包む袋で、破れると子宮の中と腟がつながります。破水が「お産のサイン」であると同時に「連絡が必要な出来事」とされるのは、このためです。
💡 用語解説:卵膜(らんまく)
卵膜とは、子宮の中で赤ちゃんと羊水を包んでいる薄い膜のことです。内側の羊膜(ようまく)と、その外側の絨毛膜(じゅうもうまく)などが重なってできています。妊娠中は腟から子宮の中へ細菌が入るのを防ぐ壁の役割もしており、この膜が破れた状態が破水です。
破水は陣痛の途中で起こることが多いのですが、陣痛が始まる前に起こることもあります[1]。米国産科婦人科学会(ACOG)の診療指針によると、陣痛が始まる前の破水は、正期産(妊娠37週以降)の妊娠の約8%にみられます[2]。妊娠37週より前に起こるものは、全妊娠の約2〜3%です[2]。
破水そのものは痛みを伴わないことが多く、気づくきっかけは「下着が濡れた」「水が流れる感じがした」という感覚です。量や出方には幅があります。
破水はなぜ起こる?原因としくみ
正期産の破水は、卵膜が妊娠の終わりに向けて自然に弱くなることが背景にあると考えられています[2]。卵膜は薄い膜が重なった構造で、妊娠の後半になると、膜の強さを支えている成分が変化して破れやすい状態へ移っていきます。そこに陣痛やおなかの張りによる圧が加わると、子宮口に近い部分から膜が破れます。陣痛が進んで子宮口が開ききるころに破水する人が多いのは、この仕組みによるものです。
一方、妊娠37週より前の破水には、さまざまな要因が関わるとされています[2]。ただし、一人ひとりについて「これが原因」と特定できるとは限りません。重い物を持った、長く歩いた、といった日常の行動と破水との因果関係は、はっきり示されていません。感染が関わる場合も、自覚できる症状がないまま進むことが多く、事前に気づくのは困難です。破水した人が、自分の行動を原因と考える必要はありません。体質や行動との関係についての考え方は、破水から始まる人の特徴で扱っています。
破水はいつ起こる?陣痛とどちらが先?
順番としては「陣痛が先、破水が後」の人が多く、「破水が先」になる人は正期産の約8%です[2]。日本の産科では、破水を起こった時期によって呼び分けます。陣痛が始まる前の破水を前期破水、陣痛が始まってから子宮口が全開になる前の破水を早期破水、子宮口が全開になるころの破水を適時破水といいます。
どちらが先でも、お産の進み方として異常というわけではありません。破水が先の場合には「陣痛を待つ時間」が生じ、その間の過ごし方と感染への注意が必要になります。待つ時間の目安や過ごし方は、破水から出産までの時間と陣痛待ちで詳しく説明しています。
お産が近いことを知らせる変化には、破水のほかに、おしるしと規則的なおなかの張りがあります。おしるしは、子宮の出口をふさいでいた粘液が、お産の直前や始まりのころに腟から出てくるものです[1]。粘り気のある少量の分泌物で、水のようにさらさら流れる破水とは性状が異なります。お産の始まり方の全体像は、陣痛の前兆のページにまとめています。
2. 破水はどんな感じ?量・色・におい・音
破水は、「ゆっくり流れ出る」場合と「急に大量に流れ出る」場合があり、どちらも自分の意思では止められません[1]。尿は、骨盤の底の筋肉に力を入れれば途中で止められることが多いのに対し、破水は膜の破れ目から流れ出るため、力を入れても止まりません。温かい水が流れる、下着やシーツが濡れている、姿勢を変えたときにまた出る、といった気づき方が代表的です。
一気に出る場合と、少量が続く場合
流れ出る量は、卵膜が破れた位置と大きさ、赤ちゃんの頭の位置によって変わります。子宮口の近くで膜が破れると、羊水がまとまって流れ出やすくなります。ただし、赤ちゃんの頭が骨盤にはまって栓の役割をすると、最初にまとまって出たあとは少量ずつになることもあります。子宮口から離れた高い位置で膜が破れた場合は、少量がちょろちょろと出つづける形になりやすく、日本ではこれを高位破水と呼びます。
少量の破水は、尿漏れや水っぽいおりものと区別がつきにくいのが実際です。「ナプキンがうっすら湿る程度が何時間も続く」「一度出たあとも下着が何度も濡れる」「立ち上がったときだけ出る」といった場合は、量が少なくても破水の可能性があります。量の多さよりも、止められないことと、繰り返し出ることのほうが手がかりになります。少量が続く破水については高位破水とはで、気づくのが遅れた場合については高位破水に気づかないまま時間が経ったらで説明しています。
逆に、一度だけ少量が出て、その後まったく出ない場合は、尿漏れやおりものであることも多いのですが、それだけで破水を否定することはできません。迷うときは、出た時刻と量を控えたうえで産院に電話し、受診が必要かを判断してもらってください。
色とにおいの目安
羊水は透明で淡い色をしており、破水した直後は少量の血液が混じることがあります[1]。血液が少し混じると薄いピンク色に見えます。この程度であれば、破水でよくみられる範囲です。
緑色や黄緑色、濁った茶色の場合は、赤ちゃんの便(胎便)が羊水に混じっている可能性があります。緑色の羊水は分娩中の5〜20%にみられ、予定日を大きく過ぎた妊娠では約27%に達します[3]。緑色の羊水でも、赤ちゃんの多くは血液が酸性に傾く状態(酸血症)にはなっていないと報告されています[3]。色だけで赤ちゃんの状態は判断できないため、色を伝えてすぐに連絡し、確認を受けてください。
💡 用語解説:羊水混濁(ようすいこんだく)
羊水混濁とは、赤ちゃんがおなかの中で出した胎便(たいべん)が羊水に混じり、羊水が緑色や黄緑色に見える状態です。妊娠週数が進むほど起こりやすくなります。羊水混濁があっても元気な赤ちゃんは多いのですが、分娩中は心拍の観察がより慎重に行われます。
においについては、嫌なにおいがする、色やにおいが変わった、という場合はすぐ知らせるよう案内されています[1][4]。においだけで尿漏れと見分けるのは難しいのが実際です。詳しくは、破水のにおい・色・尿漏れとの見分け方をご覧ください。
「パン」という音や痛みはある?
破水のときに「パン」「ポン」という音や、はじけるような感覚があったと話す人もいますが、まったく感じない人もいます。どのくらいの割合の人が音や感覚を自覚するのかを調べた、まとまったデータは見当たりません。膜が破れる位置や羊水の量によって、体感が変わるためと考えられます。したがって、「音がしなかったから破水ではない」とは言えませんし、「音がしたから破水だ」とも言い切れません。
痛みについても同じです。卵膜には痛みを感じる神経がないため、膜が破れること自体は痛みを伴わないのがふつうです。破水の前後におなかの張りや痛みを感じる場合、それは子宮の収縮によるものです。破水のあとに規則的な痛みが始まれば陣痛の可能性があります。痛みが強く続く場合や出血を伴う場合は、第4章で述べる急ぐべきサインにあたります。判断の材料になるのは、音や痛みの有無よりも、水分が止められずに出ていることと、繰り返し出ることです。
3. 破水・尿漏れ・おりものの見分け方
破水、尿漏れ、おりものを、自分で確実に見分ける方法はありません。妊娠後期は、大きくなった子宮が膀胱を圧迫するため、くしゃみや咳、立ち上がる動作で尿が漏れやすくなります。おりものも妊娠中は量が増え、水っぽくなることがあります。下の表は一般的な傾向を並べたもので、当てはまらない破水もあります。
🔍 破水・尿漏れ・おりものの違い(目安)
| ポイント | 破水 | 尿漏れ | おりもの |
|---|---|---|---|
| 止められるか | 力を入れても止められない | 力を入れると止まることが多い | 出たり止まったりする |
| 出方 | 一気に出る、または少量が続く。姿勢を変えるとまた出る | くしゃみ・咳・立ち上がりで出やすい | 量やタイミングに個人差が大きい |
| 性状 | さらさらした水状 | さらさらした水状 | 粘り気がある。水っぽいこともある |
| 色 | 透明〜淡い色。血が混じるとピンク色 | 透明〜黄色 | 白っぽい、透明、黄色がかるなど |
| におい | ほとんどないことが多い | アンモニア臭があることが多い | 酸っぱいにおいがすることがある |
※表は目安です。
自分で確かめられること、確かめられないこと
自分で確かめられるのは、「力を入れて止められるか」「その後もまた出るか」「色やにおいはどうか」までです。ナプキンを当てておくと、量や色、その後も出ているかどうかを産院に伝えやすくなります。おりものについて迷う方は、破水とおりものの違いも参考にしてください。
一方で、破水かどうかの確定は自宅ではできません。羊水は弱アルカリ性(pH7.1〜7.3)で、腟の中はふだん酸性です。この差を利用して、試験紙の色で調べる方法が病院で使われています[2]。この試験紙は、血液や精液、消毒薬が混じったときや、細菌性腟症があるときには、破水していなくても陽性になります[5]。漏れた羊水がわずかなときは、破水していても陰性になることがあります[2]。
市販の試験紙を使って自宅で調べても、この限界は変わりません。陰性だったから破水ではない、と判断する材料にはしないでください。「尿漏れだったら恥ずかしい」とためらう方もいますが、産院にとって破水かどうかの確認はよくある相談です。結果が尿漏れだったとしても、受診したことに問題はありません。
病院ではどう調べる?破水の検査
病院では、腟鏡(ちつきょう)という器具で腟の中を直接見て、子宮の出口から羊水が流れ出ていないか、腟の奥に水がたまっていないかを確認します[2][5]。これが診断の基本です。見ただけでは分からないときに、先ほどのpH試験紙や、採った液を乾かして顕微鏡でシダの葉のような結晶ができるかを見る検査を組み合わせます[5]。羊水に多く含まれるタンパクを検出する検査キットが、補助的に使われることもあります[2]。
あわせて、超音波で羊水の量と赤ちゃんの向きを、分娩監視装置で赤ちゃんの心拍とおなかの張りを確認します。指を入れる内診は、お産が差し迫っている場合を除いて控えるのが原則とされています[5]。腟の中の細菌を子宮の近くへ運んでしまうおそれがあるためです。
受診のときは、当てていたナプキンをそのまま持参すると、色や量を確認してもらえます[1]。
🩺 院長コラム【見分けようとするより、電話を】
破水かどうかを自分で見分けようとして、色やにおいを調べたり、試験紙を買おうとしたりする方がいます。検査の精度を扱う立場から言うと、病院で使う試験紙でさえ、血液が少し混じるだけで結果が変わります。自宅での判定に確かさは求められません。
判断に使う時間を、電話に使ってください。「何週で、いつから、どのくらい、何色の水が出ているか」を伝えれば、受診が必要かどうかは産院が判断します。
4. 破水したらどうする?今すぐやること
破水したかもしれないと思ったら、ナプキンを当てる、状況をメモする、産院へ電話する、車かタクシーで向かう、の順に動きます。破水と確定してからではなく、疑った時点で連絡するのが基本です。
清潔なナプキンを当て、入浴より先に連絡する
最初にすることは、清潔なナプキンを当てることです。タンポンは使わないでください[1]。ナプキンを当てておくと、流れ出た量や色を産院が確認できます。量が多いときは、バスタオルを重ねて当てたり、腰に巻いたりしてください。下着や衣類が濡れていれば、乾いたものに替えます。
入浴やシャワーについては、国によって案内が分かれています。英国国立医療技術評価機構(NICE)の指針は、破水後の入浴やシャワーは感染の増加と関連しないと伝えるよう勧めています[4]。一方、日本の産院の多くは、破水したら入浴を控えるよう案内しています。どちらの立場でも共通しているのは、体を洗うことより連絡が先、という点です。
濡れた体を拭いて着替える程度にとどめ、入浴やシャワーに時間を使わずに電話してください。その後どうするかは、通院中の産院の指示に従うのが確実です。なお、性交は感染と関連する可能性があるとされているため、破水が疑われるときは避けてください[4]。
病院へ電話する
電話では、妊娠週数、水が出はじめた時刻、量、色、おなかの痛みや張り、胎動の様子を伝えます。落ち着いて話せないときのために、下の例をそのまま読み上げてもかまいません。
📞 そのまま読める電話の例
「妊娠◯週◯日の(名前)です。◯時ごろから、水のようなものが出ています。量は(下着が濡れる程度/ナプキンがいっぱいになる程度)で、色は(透明/ピンク/黄色/緑)です。おなかの痛みは(ある/ない)、胎動は(いつもどおり/少ない気がする)です。受診したほうがよいでしょうか。」
電話の前に、次のことをメモしておくと伝えやすくなります。出産予定日、破水に気づいた時刻、その後も出ているか、色とにおい、出血の有無、最後に胎動を感じた時刻、妊婦健診で指摘されていること(逆子、前置胎盤、B群溶血性レンサ球菌が陽性だった、など)です。
産院からは、すぐ来るように言われることがほとんどです。入院の荷物と、母子健康手帳、診察券、健康保険の資格を確認できるもの(マイナ保険証など)を持って向かってください。
車かタクシーで移動する
産院へは、家族の運転する車かタクシーで向かいます。自分で運転することは避けてください。移動中に陣痛が始まったり、羊水がまとまって流れ出たりして、運転に集中できなくなるおそれがあるためです。徒歩や電車、バスでの移動も、途中で動けなくなったときの対応が難しいので避けます。家族がすぐに戻れないときは、帰りを待たずにタクシーを呼んでください。
座席にはバスタオルや防水シートを敷いておくと、羊水が出ても慌てずにすみます。妊婦向けに事前登録を受け付けているタクシー(いわゆる陣痛タクシー)に登録しておくと、行き先を伝える手間が省けます。防水シートを用意している会社もあります。登録していない場合は、配車を頼むときに、破水していて産院へ向かうことを伝えてください。乗車中は、後部座席で楽な姿勢をとります。横になれるなら、横になってかまいません。産院に着いたら、時間外の入口と受付の場所を電話で聞いたとおりに進みます。
救急車を呼ぶべきサイン
次のいずれかがあるときは、ためらわずに119番で救急車を呼んでください。通常の破水では救急車は必要なく、車やタクシーでの移動で足ります。
🚑 救急車を呼ぶサイン
➤ へその緒が腟から出ている、または触れる
➤ 生理の多い日を超えるような出血がある
➤ 強い腹痛が続いておさまらない、おなかが板のように硬い
➤ 赤ちゃんの体の一部が見える、いきみたい感じが強くて動けない
へその緒が赤ちゃんより先に出てくる状態を臍帯脱出(さいたいだっしゅつ)といい、全分娩の0.1〜0.6%に起こります[6]。英国王立産婦人科学会(RCOG)の指針は、病院の外で起きた場合はただちに救急車を呼ぶこと、到着を待つあいだは、両ひざと胸を床につけてお尻を高く上げる姿勢をとることを勧めています[6]。出ているへその緒は、できるだけ触らず、押し戻そうとしないでください[6]。
💡 用語解説:臍帯脱出(さいたいだっしゅつ)
臍帯脱出とは、破水のあとに、へその緒(臍帯)が赤ちゃんより先に子宮の出口や腟へ下がってくる状態です。へその緒が赤ちゃんの体と産道の間に挟まれると、赤ちゃんへ届く血液が減ってしまいます。逆子のときや、赤ちゃんの頭がまだ骨盤に下がっていないときに起こりやすいとされています。
救急車を呼ぶかどうか迷うときは、産院に電話で状況を伝え、どうすべきかを尋ねてください。
すぐ伝えるべき危険なサイン
救急車を呼ぶほどではなくても、次のような変化があれば、電話ですぐ伝えてください。羊水が緑色や茶色に濁っている、嫌なにおいがする、熱がある、寒気がする、胎動が少ない、出血が増えてきた、という場合です。
色やにおいの変化と発熱は、子宮の中の感染を疑う手がかりです。NICEの指針は、破水後に陣痛を待つあいだ、起きている時間は4時間ごとに体温を測り、羊水の色やにおいが変わったらすぐ知らせるよう勧めています[4]。
💡 用語解説:絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)
絨毛膜羊膜炎とは、卵膜(絨毛膜と羊膜)に細菌が感染して炎症が起きた状態です。破水すると腟の細菌が子宮の中へ入りやすくなるため、破水から時間が経つほど起こりやすくなります。発熱、おなかの痛み、羊水のにおいの変化などが手がかりになります。
胎動は、破水したからといって急になくなるものではありません。いつもより明らかに少ない、しばらく感じない、というときは、破水の有無にかかわらず連絡が必要です。胎動の減り方の目安は、胎動が少ないと感じたらで説明しています。
5. 破水の種類|時期と場所で呼び方が変わる
破水の呼び方には、「いつ起こったか」で分ける方法と、「卵膜のどこが破れたか」で分ける方法の2つがあります。たとえば「陣痛前に、高い位置で破れた破水」は、時期でいえば前期破水、場所でいえば高位破水にあたります。
時期による違い:前期破水・早期破水・適時破水
🗓 起こる時期による破水の分類
| 名称 | 起こる時期 | 特徴 |
|---|---|---|
| 前期破水 | 陣痛が始まる前 | 陣痛を待つ時間が生じる。妊娠週数によって対応が変わる |
| 早期破水 | 陣痛が始まってから、子宮口が全開になる前 | お産の途中の破水。多くはそのままお産が進む |
| 適時破水 | 子宮口が全開になるころ | もっとも多い形。このあと赤ちゃんが生まれる |
3つのうち、家で気づいて対応を迫られるのは、主に前期破水です。英語では prelabor rupture of membranes(PROM)と呼ばれ、陣痛が始まる前の破水を指します[2]。37週より前に起こった場合は、週数に応じて対応が変わります。原因や管理の詳細は、前期破水とはで解説しています。
早期破水は、名前が前期破水と似ていますが、陣痛が始まったあとの破水です。すでに入院していることが多く、産院の管理のもとでお産が進みます。適時破水は、子宮口が全開になって赤ちゃんの頭が下がってくるころに起こる破水です。陣痛が進んでも破水しないときには、医師や助産師が卵膜を破ることがあります[1]。これは人工破膜と呼ばれる処置です。
場所による違い:高位破水と低位破水
卵膜が子宮口の近くで破れたものを低位破水、子宮口から離れた高い位置で破れたものを高位破水と呼びます。低位破水は羊水がまとまって出やすく、破水したことに気づきやすい形です。高位破水は、破れ目が小さいことや、破れ目が赤ちゃんの体と子宮の壁の間に挟まれることで、少量ずつしか出ないことがあります。そのため、破水に気づくのが遅れやすいとされています。
高位破水は、日本の産科でよく使われる呼び方です。破れた位置を外から確かめることは難しく、実際には「少量が続く破水」をこう呼んでいることが多いと考えてください。量が少なくても、卵膜が破れて子宮の中と腟がつながっている点は同じで、連絡と受診が必要なことに変わりはありません。
「高位破水は自然にふさがる」と書かれていることがありますが、自然に起こった破水でそうなることを前提にはできません。少量で止まったように見えても、受診して確認を受けてください。破水かどうか、羊水がどのくらい残っているかは、診察と超音波で確かめられます。
6. 破水したらどうなる?病院での流れと出産までの時間
破水が先に起こった場合、多くの人は24時間以内に陣痛が始まります。ただし、その割合は資料によって幅があります。
⏱ 破水から陣痛が始まるまでの時間
※いずれも妊娠37週以降の、陣痛前の破水についての数字です。対象や集計方法が異なるため、値に差があります。
数字に開きはありますが、「半数以上の人は1日以内に陣痛が始まり、始まらない人も一定数いる」という点は共通しています。
妊娠37週以降の場合
妊娠37週以降の破水では、母子の状態を確認したうえで、陣痛が自然に始まるのを待つか、薬で陣痛を起こす(分娩誘発)かを決めます。NICEは、24時間まで待つ方法と、すぐに誘発する方法のどちらも選択肢とし、約24時間たっても陣痛が始まらなければ誘発を勧めるとしています[4]。ACOGも、母子の状態に問題がなければ12〜24時間待つことは妥当としています[2]。
待つ時間に目安があるのは、破水からの時間が長くなるほど感染の危険が高まるためです[4]。NICEによると、重い新生児感染症が起こる割合は、破水していない場合の0.5%に対し、陣痛前に破水した場合は1%です[4]。複数の臨床試験をまとめたコクランレビューでは、早めに分娩を計画する方法は、待つ方法とくらべて、帝王切開を増やさずに母体の感染を減らす可能性があると報告されています[7]。
日本では、破水が確認されたら入院して管理する施設が一般的です。抗菌薬を使うかどうか、いつ誘発を始めるかは、妊娠週数、B群溶血性レンサ球菌の検査結果、感染の兆しの有無、施設の方針によって異なります。
妊娠37週未満の場合
妊娠37週より前の破水では、赤ちゃんが早く生まれることによる未熟性の問題と、妊娠を続けることによる感染の危険とを、週数ごとにはかって方針を決めます。日本の産婦人科診療ガイドライン(産科編2023)では、子宮内の感染がなければ妊娠34週までは妊娠の継続をはかり、34週以降は分娩誘発または陣痛を待つ方針とされています[8]。感染がある場合は、早めの分娩を目指します[8]。
妊娠の継続をはかる場合は入院となり、感染を防ぐための抗菌薬や、赤ちゃんの肺の成熟を促すステロイドの使用が検討されます[8]。破水から出産までの期間は、破水した週数が早いほど長くなる傾向があります[2]。それでも、37週未満の破水では、少なくとも半数の人が破水から1週間以内に出産に至ります[2]。
週数が早い破水ほど、新生児集中治療室(NICU)のある施設での管理が必要になります。通院中の産院から、より高度な施設へ搬送されることもあります。妊娠37週未満で破水が疑われたときは、量が少なくても、様子を見ずにすぐ連絡してください。ガイドラインは定期的に改訂されるため、実際の方針は主治医の説明を確認してください。早産については別のページで説明しています。
破水したのに陣痛がこないとき
破水したのに陣痛がこないことは、珍しくありません。陣痛がこないこと自体が赤ちゃんの異常を意味するわけではありません。ただ、破水した状態が続くため、感染の兆しがないかを確認しながら待つことになります。
待っているあいだに確認するのは、体温、羊水の色とにおい、胎動です[4]。発熱や羊水の変化があれば、待機をやめて分娩を進めます。一定の時間を過ぎても陣痛が始まらない場合は、分娩誘発が行われます。
間隔がばらばらで、休むとおさまるおなかの張りは前駆陣痛と呼ばれ、お産につながる本陣痛とは区別されます。破水している場合は、張りが前駆陣痛か本陣痛かにかかわらず、産院の指示に従って受診してください。
🩺 院長コラム【「24時間以内に何%」の読み方】
破水から陣痛までの時間について、ある資料は「24時間以内に60%」、別の資料は「約95%」と書いています。どちらかが誤りというわけではなく、対象にした人や数え方が違うために数字が変わります。
もう一つお伝えしたいのは、これらは集団をまとめた数字で、一人ひとりの陣痛がいつ始まるかを予測するものではない、という点です。私は遺伝診療で確率の説明をする機会が多いのですが、集団の割合を個人の予定表のように読むと、外れたときに戸惑いが大きくなります。「多くは1日以内。そうでない場合の方針も決まっている」と理解しておくのがよいと思います。
7. 破水に備えて準備しておくこと
破水はいつ、どこで起こるか予測できないため、妊娠後期に入ったら、連絡先・移動手段・持ち物の3つを決めておくと慌てずにすみます。
連絡先は、産院の代表番号だけでなく、夜間・休日の連絡先を携帯電話に登録しておきます。家族にも同じ番号を伝え、本人が電話できないときに代わりにかけてもらえるようにします。移動手段は、家族の車が使える時間帯と使えない時間帯を確認し、使えないときのためにタクシー会社の番号を控えるか、陣痛タクシーの登録を済ませておきます。上のお子さんがいる場合は、預け先も決めておきます。
持ち物としては、夜用のナプキン、バスタオル、防水シートが役に立ちます。NHSも、外出時にはナプキンを持ち歩き、寝具には防水のシートを敷いておくことを勧めています[1]。これらをまとめた「破水セット」が市販されていますが、手元のもので代用できます。入院の荷物は早めにまとめ、玄関など持ち出しやすい場所に置いておきます。
なお、破水を確実に防ぐ方法は確立していません。
8. 羊水検査のあとに水っぽいものが出たら
羊水検査を受けたあとに水っぽいものが腟から出てきた場合は、検査を受けた医療機関へすぐ連絡してください。羊水検査は、おなかから細い針を刺して羊水を採る検査です。針が卵膜を通るため、検査のあとに羊水が少量漏れ出ることがあります。臨床試験をまとめたコクランレビューによると、妊娠中期の羊水検査のあとに羊水の漏出がみられたのは1.7%で、検査を受けなかった群の0.4%より多い結果でした[9]。この数字は1件の試験に基づくものです。
羊水検査後の漏出は、自然に起こる破水とは経過が異なります。国際産婦人科超音波学会(ISUOG)の指針は、羊水検査後の漏出では卵膜が自然にふさがることが多く、同じ週数で自然に破水した場合とくらべて経過がよいと述べています[10]。とはいえ、漏出が続くかどうか、感染の兆しがないかは、診察で確かめる必要があります。
検査のあとに、水っぽいものが出る、おなかの張りや痛みが強い、出血する、熱が出る、といった変化があれば連絡が必要です。羊水検査に伴う流産や感染の頻度については、羊水検査のリスクで説明しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 少量でも破水の可能性はありますか?
はい、あります。破水は一気に大量に出るとは限らず、少量が出つづけるだけのこともあります。自分の意思で止められない水分が繰り返し出るときは、量が少なくても通院中の産院へ連絡してください。
Q2. 破水か尿漏れか分からないときはどうすればいいですか?
産院に電話して、いつから、どのくらい、何色の水が出ているかを伝えてください。破水かどうかの確定は自宅ではできず、病院の検査で行います。結果が尿漏れだったとしても、受診したことに問題はありません。
Q3. 破水したらシャワーを浴びてもいいですか?
シャワーや入浴より先に、産院へ連絡してください。英国の指針は入浴やシャワーが感染を増やすとはしていませんが、日本の産院の多くは破水後の入浴を控えるよう案内しています。その後は産院の指示に従ってください。
Q4. 破水したのに陣痛が来ません。大丈夫ですか?
破水のあとすぐに陣痛が始まらないことは珍しくありません。ただし、陣痛がなくても破水後の管理は必要です。自宅で様子を見つづけず、産院の指示を受けてください。
Q5. 破水すると「パン」と音がしますか?
音やはじけるような感覚があったと話す人もいますが、まったく感じない人もいます。音がしなかったからといって、破水ではないとは言えません。
Q6. 羊水が緑色だった場合は危険ですか?
緑色の羊水は、赤ちゃんの便が混じっている可能性を示します。色だけでは赤ちゃんの状態を判断できないため、色を伝えて、すぐ産院へ連絡してください。
Q7. 夜中でも病院に電話していいですか?
はい。破水が疑われるときは、夜間や休日でも連絡してください。朝まで待つ必要はありません。
Q8. どんな場合に救急車を呼ぶべきですか?
へその緒が腟から出ている・触れる、出血が多い、強い腹痛が続いて動けない、赤ちゃんの体の一部が見える、という場合は119番で救急車を呼んでください。それ以外の破水では、車やタクシーでの移動で足ります。
Q9. 破水してから何時間で出産になりますか?
妊娠37週以降で陣痛より先に破水した場合、多くの人は24時間以内に陣痛が始まります。割合は資料によって6割から9割以上と幅があります。陣痛が始まらないときは分娩誘発が検討されます。
Q10. ピンク色や血が混じるのはなぜですか?
破水した直後は、少量の血液が羊水に混じってピンク色に見えることがあります。生理の多い日を超えるような出血がある場合は、すぐに救急車を呼んでください。
Q11. ミネルバクリニックで破水の診察は受けられますか?
いいえ、当院では分娩や破水の診察は行っていません。この件についてのご予約・お問い合わせもお受けしていません。破水が疑われるときは、妊婦健診を受けている産院へすぐ連絡してください。
まとめ
破水とは、卵膜が破れて羊水が流れ出ることです。一気に出る場合も、少量が続く場合もあり、どちらも自分の意思では止められません。陣痛より先に破水する人は、正期産の約8%です[2]。
破水したかもしれないと思ったら、清潔なナプキンを当て、時刻・量・色をメモして、夜間や休日でも通院中の産院へ電話してください。移動は家族の車かタクシーを使い、へその緒が出ている、出血が多い、強い腹痛が続く、という場合は救急車を呼びます。
破水、尿漏れ、おりものを自分で確実に見分けることはできません。迷った時点で連絡してください。
🏥 破水かもしれないと感じている方へ
当院では、分娩および破水の診察・治療を行っておりません。
この件についてのご予約・お問い合わせはお受けしておりません。
破水が疑われる場合は、妊婦健診を受けている産院へ、夜間・休日でもすぐに電話してください。
この記事は破水について正しく知っていただくための解説であり、当院での診療をご案内するものではありません。なお、当院が行っている出生前検査については、NIPT(新型出生前診断)のページでご案内しています。
参考文献
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- [2] Prelabor Rupture of Membranes: ACOG Practice Bulletin, Number 217. Obstet Gynecol. 2020;135(3):e80. [Obstetrics & Gynecology]
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- [8] 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会 編集・監修. 産婦人科診療ガイドライン―産科編2023. CQ303 前期破水の取り扱いは? [Mindsガイドラインライブラリ]
- [9] Amniocentesis and chorionic villus sampling for prenatal diagnosis. Cochrane Database Syst Rev. 2017. [PMC6483702]
- [10] ISUOG Practice Guidelines: invasive procedures for prenatal diagnosis. International Society of Ultrasound in Obstetrics and Gynecology. [ISUOG]





