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お父さんが単一遺伝子疾患をお持ちのご夫婦へ|NIPTと確定検査|ミネルバクリニック

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。2025年国際誌『Global Woman Leader』表紙抜擢など、世界基準の出生前診断と遺伝カウンセリングを提供。

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お父さんが単一遺伝子の疾患(病的バリアント)をお持ちで、これから赤ちゃんを迎えたいと考えていらっしゃるご夫婦へ。前回はお母さんご自身が疾患をお持ちの場合をお伝えしましたが、お父さんの場合はNIPTでわかることのしくみが少し変わります。この記事では、その違いと、一見お元気なお父さんから症状のあるお子さんが生まれることがある理由(浸透率や修飾遺伝子)を、臨床遺伝専門医の立場からお伝えします。

この記事でわかること
📖 読了時間:約10〜12分
📊 約7,000文字
臨床遺伝専門医監修

  • お父さん由来の変異は、なぜNIPTで「赤ちゃんのもの」と判断しやすいのか
  • 2回続けて同じ変異が見つかり、お父さんの保因が判明した実際のケース
  • 一見お元気なお父さんから症状のあるお子さんが生まれる理由(浸透率・修飾遺伝子)
  • 「症状はないけれど病的バリアントを持つ人」を何と呼ぶのか
  • NIPTで思わぬことが分かったときの受け止めと、当院のサポート体制

\ お父さんが疾患をお持ちのご夫婦のNIPT・確定検査も、専門医に直接相談できます /

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※お急ぎの方はNIPT専用ダイヤル 03-3408-3768/NIPT詳細ページ

お父さん由来の変異は「赤ちゃんのもの」と判断しやすい ― お母さんのケースとの違い

NIPTは、お母さんの血液の中に流れているDNAのかけら(cell-free DNA)を調べる検査です[1]。この中には、お母さん由来のDNAと、胎盤(赤ちゃん)由来のDNAが混ざっています。前回お伝えしたお母さんが疾患をお持ちのケースでは、お母さん由来のDNAにも同じ変化があるため、見つかった変化が母由来か赤ちゃん由来かを区別できない、というのが難しい点でした。

ところが、お父さんが疾患をお持ちの場合は事情が変わります。お父さんの病的バリアントは、お母さんの体にも血液にも存在しません。ですから、NIPTでそのお父さん型の変化が検出されたとき、それは赤ちゃん(胎児由来のDNA)から来たものと考えられます。つまり、赤ちゃんがそのバリアントを受け継いでいる可能性が非常に高い、ということになります。お母さんのケースのような「どちら由来か分からない」という問題が起きにくいのです。

ただし、NIPTはあくまで非確定的検査です。最終的に確かめるときは、絨毛検査や羊水検査といった確定検査で確認します。なお、軟骨無形成症やクルーゾン病などの多くは常染色体顕性(優性)遺伝で、お父さんがその変化を持っていれば、ふつう2分の1の確率でお子さんに受け継がれる可能性があります。

💡 用語解説:なぜ「父由来」だと胎児のものと分かるの?

妊娠中のお母さんの血液には、お母さん自身のDNAと、胎盤からこぼれ出た赤ちゃん由来のDNAが混ざって流れています。お父さんのDNAは、お母さんの血液には流れていません。そのため、お父さんだけが持っている変化がNIPTで見つかったときは、その変化は赤ちゃん由来のDNAに含まれていたと考えるのが自然です。お母さんが同じ変化を持つケースとは、ここが大きく違います。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【当事者として ― ご夫婦の迷いに寄り添いたい】

私自身も、常染色体優性遺伝性疾患を持つ当事者です。妊娠・出産のたびに、この疾患を子どもには受け継いでほしくないという思いと、それでも我が子を授かりたいという願いのあいだで揺れる気持ちを、自分のこととしてよく分かります。

お父さんが疾患をお持ちのご夫婦も、同じように悩まれることが多いと感じています。私の役割は、特定の答えへ導くことではなく、正確な情報をお伝えし、ご夫婦がご自身の意思で選んでいけるよう寄り添うことだと思っています。

実際にあったケース ― 2回続けて同じ変異、そしてお父さんの保因が判明

ある常染色体顕性(優性)遺伝性疾患をめぐる、実際のお話です。最初の妊娠のとき、当院のNIPTで赤ちゃんにある遺伝子の病的バリアントが見つかりました。このときは絨毛検査[2]・羊水検査[3]といった確定検査できちんと確認しました。

その後、二人目の妊娠のときにも、NIPTで同じ遺伝子の、まったく同じ変異が見つかりました。今回は前回の経緯があったため、ご夫婦のお考えで、確定検査は行わないという選択をされました。

2回続けて同じ変異が見つかったことから、「これは偶然ではなく、ご両親のどちらかから受け継がれているのではないか」と考え、お父さんを調べました。すると、お父さんがこの病的バリアントを持っていることが分かったのです。お父さんは一見お元気で、日常生活にもまったく問題はありませんでした。「症状がないのに、病的な変化を持っている」――この一見ふしぎな現象には、きちんとした理由があります。次の章でご説明します。

一見健康なお父さんから、症状のあるお子さんが生まれるのはなぜ? ― 浸透率と修飾遺伝子

同じ変異でも、症状が出る人と出ない人がいる ― 浸透率

同じ病的バリアントを持っていても、症状が出る人と出ない人がいます。この現象を、遺伝学では浸透率(penetrance)と呼びます[4]。変異を持つ人が必ず発症するわけではなく、100%未満の人にしか症状が出ないことを「不完全浸透」といいます。今回のお父さんは、まさにこの不完全浸透にあたると考えられます。

こうした「病的バリアントは持っているけれど、症状が出ていない方」を、非発症保因者と呼びます。常染色体顕性(優性)疾患では「変化を持つ=発症する」と思われがちですが、実際には症状がまったく目立たない方もいらっしゃいます。

💡 用語解説:浸透率・表現度・非発症保因者

浸透率(penetrance)…ある変異を持つ人のうち、実際に症状が出る人の割合。100%未満なら「不完全浸透」。

表現度(expressivity)…症状が出た人どうしの「重さのばらつき」。同じ変異でも、軽い人から重い人までさまざま。

非発症保因者…病的バリアントを持つけれど、症状が出ていない人。今回のお父さんはこれにあたります。

遺伝的背景が半分入れ替わる ― 修飾遺伝子の影響

では、なぜ浸透率や症状の重さに差が出るのでしょうか。大きな要因のひとつが修飾遺伝子です。これは、主たる原因遺伝子とは別に、症状の出方を強めたり弱めたりする他の遺伝子のことです。病気は「変異があるかどうか」だけでなく、その変異と、他の遺伝的背景の組み合わせで出方が決まります。

お父さんは、たまたま症状を抑える方向の修飾遺伝子の組み合わせ(有利な遺伝的背景)を持っていて、症状が目立たなかった可能性があります。ところが、お子さんはゲノムの半分をお母さんから受け継ぐため、修飾遺伝子の組み合わせ――つまり遺伝的背景――がお父さんとは入れ替わります。

その結果、お父さんで症状を抑えていた組み合わせが、お子さんにそのまま受け継がれるとは限りません。逆に、お母さん側から症状を強める方向の要素が加わることもあります。だから、同じバリアントでもお子さんでは症状が強く出る(重くなる)ことが、よくあるケースとして起こりうるのです。

このほか、お父さんが体の一部の細胞だけに変化を持つモザイクのために症状が軽く、全身に変化を持つお子さんでは症状が出やすい、という場合もあります。また一部の疾患では、世代を経るごとに症状が早く・強く出る現象が知られています。いずれも、遺伝カウンセリングでお一人おひとりの状況に合わせてご説明します。

🔬 用語解説:修飾遺伝子・エピスタシス

修飾遺伝子は、主たる原因遺伝子の働きを後押ししたり、和らげたりする別の遺伝子です。複数の遺伝子が影響し合うこうしたしくみをエピスタシス(遺伝子間相互作用)と呼びます。「変異が見つかった=必ず発症する」ではなく、「変異と他の遺伝的背景の組み合わせで出方が決まる」と理解しておくことが、遺伝カウンセリングの基本になります。

NIPTで「思わぬこと」が分かったとき ― 受け止めと、ご家族へのサポート

NIPTは赤ちゃんのことを調べる検査ですが、今回のように、結果としてお父さんご自身が病的バリアントを持っていたという「思わぬこと」が分かる場合があります。これはお父さんご自身の健康や、血縁のある方々にも関わりうる、とてもデリケートな情報です。

こうした情報は、プライバシーに十分配慮しながら、遺伝カウンセリングでご一緒に整理していきます。何をどこまで調べ、どう受け止めるかも含めて、当院は特定の選択へ誘導することはせず、ご夫婦がご自身の意思で選んでいけるよう寄り添います。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【それでも、いちばん大切なこと】

NIPTで思いがけないことが分かると、ご夫婦は大きく動揺されます。お父さんが病的バリアントを持っていたと知ったときも、そうでした。けれど、検査で分かることが増えても、いちばん大切なのは「おなかのお子さんが健康に生まれてきてほしい」というご夫婦の願いだと、私はいつも感じています。

その願いに、専門医として寄り添いたい。分からないことや不安なことは、どうかお二人だけで抱え込まず、ご相談ください。一緒に整理していきましょう。

当院でできること ― 検査・確定検査とサポート体制

当院は2025年6月に産婦人科を併設し、NIPTから確定検査(絨毛・羊水検査)まで院内で行える体制を整えました。確定検査は基本的に日曜日か祝日に行っており、大抵の項目は検査後3日以内に結果をお返しできるよう努めています(マイクロアレイ検査は約2週)。

🏥 当院の検査・サポート体制

臨床遺伝専門医が運営

カウンセリングから検査、結果のご説明まで、専門医が一貫して関わります

産婦人科併設(2025年6月〜)

NIPTから確定検査までを院内で。検出された変化の確認まで一貫して対応します

日曜・祝日に検査

確定検査は基本的に日曜日か祝日に実施。遠方の方も予定を立てやすくなります

主要項目は3日以内

大抵の項目は検査後3日以内に結果返却を目標(マイクロアレイは約2週)

中立・非指示的な相談

特定の選択へ誘導せず、ご夫婦がご自身で選べるよう情報をお伝えします

院内完結で転院不要

不安な時間を最小限に。落ち着いて次の一歩を考えていただけます

遺伝カウンセリングでは、検査を受けるかどうかも含めて、ご夫婦が納得して選べるように、中立的な立場で情報をお伝えします。当院でNIPTを受けられた方は、互助会(8,000円)により陽性時の羊水検査費用が全額補助されます。費用や保証のしくみは、下記の記事でくわしくご説明しています。

まとめ

お父さんが単一遺伝子疾患をお持ちの場合のNIPTについて、要点を整理します。

📌 重要ポイントのまとめ
  • 判断のしやすさ:父由来の変化はお母さんの血液にないため、NIPTで検出されれば赤ちゃんが受け継いでいる可能性が非常に高い(確定は確定検査で)
  • 遺伝のしかた:常染色体顕性(優性)なら、お父さんが持っていればふつう2分の1で受け継がれる可能性
  • 非発症保因者:症状が出ていなくても病的バリアントを持つことがある(不完全浸透)
  • 重くなる理由:修飾遺伝子と遺伝的背景の入れ替わりにより、お子さんで症状が強く出ることがある
  • 当院の姿勢:思わぬ情報もプライバシーに配慮して整理し、中立・非指示的にご夫婦の決定に寄り添う

検査で分かることが増えても、いちばん大切なのは、おなかのお子さんが健康に生まれてきてほしいというご夫婦の願いです。気がかりなことがあれば、どうかお二人だけで抱え込まず、ご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. お父さんが単一遺伝子疾患を持つ場合、子どもに遺伝しますか?

多くが常染色体顕性(優性)遺伝のため、お父さんがその遺伝子の変化をお持ちの場合、ふつう2分の1(50%)の確率でお子さんに受け継がれる可能性があります。受け継がなかった場合は、その疾患にはなりません。

Q2. お父さんの変異が赤ちゃんにあるか、NIPTで分かりますか?

お母さんがその変化を持っていない場合、NIPTで検出されたお父さん型の変化は赤ちゃん由来と考えられ、受け継いでいる可能性が非常に高くなります。ただしNIPTは非確定的検査のため、最終的には絨毛検査・羊水検査で確認します。

Q3. お父さんは症状がないのに、なぜ子どもに症状が出ることがあるのですか?

同じ変異でも症状の出方には差があり(浸透率・表現度)、その差を左右する修飾遺伝子が関わっています。お子さんはゲノムの半分をお母さんから受け継ぐため遺伝的背景が入れ替わり、お父さんで症状を抑えていた組み合わせが受け継がれるとは限らないため、症状が強く出ることがあります。

Q4. 症状がないのに病的バリアントを持つ人を、何と呼びますか?

病的バリアントを持つけれど症状が出ていない方を「非発症保因者」と呼びます。これは浸透率が100%に達しない「不完全浸透」という現象によるもので、常染色体顕性(優性)疾患でも起こりえます。

Q5. 確定検査は必ず受けないといけませんか?

受けるか受けないかは、ご夫婦がお決めになることです。本文でご紹介したケースでも、最初の妊娠では確定検査で確認し、次の妊娠では前回の経緯をふまえて受けないという選択をされました。どちらも間違いではなく、当院は中立的な立場で情報をお伝えします。

Q6. NIPTでお父さんの保因が分かった場合、その情報はどう扱われますか?

お父さんご自身の健康や血縁の方にも関わりうるデリケートな情報のため、プライバシーに十分配慮しながら、遺伝カウンセリングでご一緒に整理します。何をどこまで調べ、どう受け止めるかも、ご夫婦の意思を尊重して進めます。

Q7. 確定検査(絨毛・羊水検査)は、いつ・どのくらいで結果が出ますか?

絨毛検査は羊水検査より早い週数で受けられます。当院では大抵の項目について検査後3日以内に結果をお返しできるよう努めています(マイクロアレイ検査は約2週間)。検査は基本的に日曜日か祝日に行っています。

🏥 ミネルバクリニックへのご相談

お父さんが疾患をお持ちで、お子さんを迎えることを考えていらっしゃるご夫婦は、臨床遺伝専門医が在籍するミネルバクリニックへ、どうぞお気軽にご相談ください。

🏥 お父さんが疾患をお持ちのご相談も承ります
お急ぎの方は、NIPT専用ダイヤル 03-3408-3768
✓ 臨床遺伝専門医が在籍する稀有な体制
✓ 産婦人科併設で、NIPTから確定検査まで院内対応(2025年6月〜)
✓ 確定検査は基本的に日曜・祝日に実施、主要項目は3日以内
✓ 中立・非指示的な遺伝カウンセリングで、ご夫婦の決定に寄り添います

関連記事

参考文献

  1. 出生前検査認証制度等運営委員会「NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)とは」[公式サイト]
  2. 出生前検査認証制度等運営委員会「絨毛検査とは」[公式サイト]
  3. 出生前検査認証制度等運営委員会「羊水検査とは」[公式サイト]
  4. Frontiers in Genetics「Incomplete Penetrance and Variable Expressivity: From Clinical Studies to Population Cohorts」(2022)[論文]

プロフィール

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。
2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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