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「NIPTで赤ちゃんのSMA(脊髄性筋萎縮症)も分かるの?」という疑問に、最初に結論をお伝えします。SMAの多くはSMN1遺伝子の欠失による潜性遺伝(常染色体劣性遺伝)で、お母さんの血液を使うNIPTで赤ちゃんのSMAを調べるのは難しいのが現状です。当院のNIPTにも、SMAは対象として入っていません。SMAに備えるいちばん確かな方法は、妊娠前か妊娠初期に、ご両親がSMN1の保因者かどうかを調べる保因者検査です。ご両親とも保因者であれば、羊水検査や絨毛検査で赤ちゃんを直接確かめられます。この記事では、NIPTで調べにくい理由から、保因者検査・出生前診断・新生児スクリーニングまでを、臨床遺伝専門医の立場から順に解説します。
- ➤NIPTで赤ちゃんのSMAを調べるのが難しい3つの理由と、海外の「SMAもわかる」検査の実際
- ➤当院のNIPT(ダイヤモンド56遺伝子・インペリアル最大155遺伝子)にSMAが入っていない理由
- ➤SMAに備える最適な方法=両親の保因者検査(SMN1のコピー数)と結果の読み方
- ➤両親とも保因者のときの出生前診断(羊水検査・絨毛検査)
- ➤生まれたあとに見つける新生児スクリーニングと、早期治療の意味
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. NIPTでSMA(脊髄性筋萎縮症)は分かる?
SMAの約95%は、両親から1つずつ受け継いだSMN1遺伝子が両方とも欠けていることで起こります。お母さんが保因者だと、血液中のDNAの大半を占めるお母さん自身のDNAにも欠失があるため、赤ちゃんの分だけを見分けるのが難しく、一般的なNIPTでは調べられません。当院のNIPTのどのプランにも、SMAは入っていません。
🔍 Q. ダウン症候群だけで大丈夫?
NIPTで調べられるのはダウン症候群だけではありません。当院のNIPTは、プランによって22q11.2欠失症候群などの微小欠失や、ヌーナン症候群などの単一遺伝子疾患(ダイヤモンド56遺伝子・インペリアル最大155遺伝子)まで調べられます。一方、SMAのような潜性遺伝の病気は両親の保因者検査で備えるのが確実で、NIPTと保因者検査は役割が違います。
🌸 Q. SMAを調べるいちばん確かな方法は?
妊娠前か妊娠初期に、ご両親のSMN1のコピー数を調べる保因者検査です。ご両親とも保因者なら、赤ちゃんがSMAである確率は妊娠ごとに4分の1。その場合は絨毛検査(妊娠11週ごろ〜)や羊水検査(妊娠15週ごろ〜)で赤ちゃんを直接確かめられ、当院では院内で受けられます。
NIPTでSMAはわかる?——まず結論
NIPT(新型出生前診断)は、お母さんの血液に含まれる赤ちゃん由来のDNAの断片を調べ、染色体の数の変化や、決められた範囲の遺伝子の変化があるかどうかを推定するスクリーニング検査です。SMA(脊髄性筋萎縮症)は、このNIPTの仕組みと相性が悪い病気です。SMAの原因の大部分は「SMN1遺伝子が両方とも欠けている」ことで、両親が保因者(1つだけ欠けている人)であることが前提になるからです。
お母さんが保因者の場合、血液中のDNAの大部分を占めるお母さん自身のDNAにも、SMN1の欠失があります。その中から、全体の1割前後しかない赤ちゃんのDNAについて「1つ欠けている(保因者)」のか「2つとも欠けている(SMA)」のかを見分けるのは、通常のNIPTの解析ではできません。研究段階の方法はありますが、上のお子さんの検体が必要になるなど条件が厳しく、日常の検査として広く使われてはいません[4]。
そのため、SMAに備えるなら、赤ちゃんを調べる前に、まずご両親の保因者検査でリスクがあるかどうかを確かめるのが、いちばん確かな順番です。ご両親とも保因者だと分かれば、羊水検査・絨毛検査で赤ちゃんを直接確かめられます。そして生まれたあとには、新生児スクリーニングでSMAを調べる地域が広がっています。
🧬 SMAを調べる方法の比較
| 方法 | 誰を調べるか・時期 | SMAについて分かること |
|---|---|---|
| NIPT | お母さんの採血(妊娠9週〜) | 一般的なNIPTでは調べられない。当院のNIPTも対象外 |
| 保因者検査 | ご両親(妊娠前が理想、妊娠中でも可) | SMN1のコピー数から、保因者かどうかが分かる |
| 絨毛検査・羊水検査 | 赤ちゃん(絨毛は妊娠11週ごろ〜、羊水は15週ごろ〜) | 赤ちゃんのSMN1のコピー数を直接調べ、診断できる |
| 新生児スクリーニング | 赤ちゃん(生後4〜6日ごろの足の裏の血液) | SMN1があるかどうかを調べ、発症前の治療につなげる |
SMA(脊髄性筋萎縮症)とは:原因と遺伝のしくみ
SMAは、脊髄の中で筋肉を動かす命令を伝える神経細胞(運動ニューロン)が少しずつ失われ、体幹や手足の筋力が弱くなっていく病気です。発症の時期と、到達できる運動の段階によって、生後6か月までに症状が出る1型から、大人になって発症する4型まで分けられています[1]。病気そのものの症状・分類・治療については、脊髄性筋萎縮症(SMA)総論で詳しく解説しています。この記事では「赤ちゃんのSMAをどう調べるか」に絞ってお話しします。
原因の約95%はSMN1遺伝子の両方の欠失
SMAの原因遺伝子は、5番染色体にあるSMN1遺伝子です。SMAの方の約95%は、両親から1つずつ受け継いだSMN1の、エクソン7という部分が両方とも欠けて(または似た遺伝子に置き換わって)います。残りの多くは、片方が欠失、もう片方が小さな変化(点変異)という組み合わせです[1][2]。
日本人も同じで、小児期に発症したSMAの112例を調べた国内の研究では、97.3%(109例)がSMN1のエクソン7の両方の欠失で、欠失と点変異の組み合わせは3例でした[9]。海外でも、点変異を含む例の割合は米国3.8%、ドイツ3.4%、イタリア3.2%、韓国3.0%などと報告されており、多くの国で5%以下です[10]。「欠失が中心」という点は、日本人も海外の方もほとんど変わりません。
すぐ隣には、SMN1とほとんど同じ配列のSMN2遺伝子があります。SMN2からも少量の働くたんぱく質が作られるため、SMN2のコピー数が多いほど症状が軽い傾向があり、SMN2のコピー数は重症度の目安として使われます[1]。
両親とも保因者なら、子どもがSMAである確率は4分の1
SMAは潜性遺伝(常染色体劣性遺伝)の病気です。SMN1が1つだけ欠けている人は「保因者」と呼ばれ、症状はありません。ご両親とも保因者の場合、妊娠のたびに、赤ちゃんがSMAである確率は25%(4分の1)、保因者である確率は50%、どちらでもない確率は25%です。
保因者の割合は集団によって異なります。米国の検査会社が7万2千件以上を解析した研究では、保因者は全体で約54人に1人、アジア系では約59人に1人でした[2]。一方、大阪・兵庫の調査では、日本でSMAと診断される赤ちゃんは出生約3万〜4万人に1人と見積もられています[3]。家族にSMAの方がいなくても、ご夫婦とも保因者であることは起こりうる、ということです。
💡 用語解説:潜性遺伝(常染色体劣性遺伝)と保因者
遺伝子は父親由来と母親由来の2つが1組になっています。潜性遺伝の病気は、2つとも働かないときに発症し、1つだけ働かない人(保因者)は通常症状がありません。保因者同士のご夫婦からは、両方から働かない遺伝子を受け継いだ赤ちゃんが4分の1の確率で生まれます。家族に同じ病気の人がいないことが多いのも、潜性遺伝の特徴です。
NIPTでSMAの検出が難しい3つの理由
「NIPTは遺伝子まで調べられるようになったのに、なぜSMAは難しいのか」。理由は大きく3つあります。どれも、検査会社の技術力の差というより、SMAという病気の遺伝のしくみと、NIPTの測り方の組み合わせから来るものです。
理由1:お母さんも保因者なので、赤ちゃんの分を見分けられない
NIPTで調べる血液中のDNAは、大部分がお母さん由来で、赤ちゃん由来(正確には胎盤由来)はおおむね1割前後です。赤ちゃんがSMAになるのは両親とも保因者のときなので、お母さん自身もSMN1が1つ欠けています。つまり、「お母さんの欠失」と「赤ちゃんの欠失」が同じ血液の中に混ざっている状態です。赤ちゃんのSMN1が0個なのか1個なのかの違いは、血液全体で見るとごくわずかな量の差にしかならず、通常のNIPTでは区別できません。
理由2:SMN1とSMN2がほとんど同じ配列をしている
SMN1とSMN2は、数か所の塩基を除いてほぼ同じ配列です。NIPTのような短いDNA断片を読む方法では、読んだ断片がSMN1由来なのかSMN2由来なのかを区別しにくく、SMN1だけの量を正確に数えることが難しくなります。保因者検査や確定検査でSMN1を調べるときは、両者を見分けられる専用の方法(MLPA法や定量PCRなど)でコピー数を測ります[1]。
理由3:当院のNIPTの単一遺伝子検査は、主に「新しく生じた変化」を見る検査
NIPTで単一遺伝子疾患を調べる検査は、主に、両親にはなく赤ちゃんで新しく生じた変化(de novo変異)による顕性遺伝の病気を対象にしています。お母さんの血液にはない変化が赤ちゃん由来のDNAに見つかれば、それを手がかりにできるからです。両親から受け継ぐ潜性遺伝の病気は、この考え方では捉えにくく、SMAはその代表です。
海外の「SMAもわかる」とうたう母体血検査は、何を調べているのか
米国には、お母さんの血液でSMAなどの潜性遺伝の病気について「赤ちゃんのリスクが分かる」とうたう検査があります。ただし、これは一般的なNIPTとは仕組みが違います。まずお母さんの保因者検査を行い、お母さんが保因者だった場合にだけ、同じ血液で赤ちゃんのリスクを推定するという2段階の検査です。SMAについては、お母さんがSMN1エクソン7の欠失をもつ保因者であることを確認したうえで、血液中のSMN1のDNA分子の数(コピー数)を測り、赤ちゃんの分の量の差を推定しています[11]。欠失そのものを「見る」のではなく、SMN1がどれだけあるかという量を測って、欠けているかどうかを推定する考え方です。分子を数えるために、配列の分かった人工のDNA(カウント用の目印)を検体に加えて一緒に増やし、その数と比べてもとの分子の数を割り出す方法が使われています[12]。つまり、点変異ではなく、日本人に多いのと同じ欠失を対象にした検査です。
ただし、量の差はわずかです。お母さんのSMN1は1コピーなので、赤ちゃん由来のDNAが全体の10%なら、赤ちゃんが0コピー(SMA)か1コピー(保因者)かで、血液全体のSMN1の量は1割ほどしか変わりません。論文でも、SMAの検査は量を測るために他の病気より信号が弱く、SMN1とSMN2の配列がよく似ていることで解析が難しいと書かれています。SMAのどの部分を測っているかなど、詳しい方法は公表されていません[11]。
その検証研究では、SMAで「高リスク」と判定された14例のうち、実際にSMAだったのは5例でした。SMAだった赤ちゃん5例はすべて高リスクと判定されましたが、5例だけでは、どのくらいの割合で見逃すのか(感度)はまだ分かりません。別の研究でもSMAの赤ちゃんは4例で、SMAに限った感度・特異度は示されていません[13]。また、入口のお母さんの保因者検査で「2+0」型などの保因者を拾えなければ、赤ちゃんの検査には進みません。生まれたあとの確認も、新生児スクリーニングの結果や症状の有無にたよった例があります。SMAは、調べた病気の中で判定不能の割合がいちばん高く、低リスクと出ても「4,000人に1人」より低くは言えない設計でした[11]。米国の保険会社にも、この種の検査を「研究段階」と位置づけ、保険の対象外としているところがあります。判定は推定で、高リスクと出ても約3例に1例しか実際のSMAではなかったため、診断には絨毛検査・羊水検査が必要です。この検査は日本では一般に受けられず、当院でも扱っていません。
💡 研究段階の方法:ハプロタイプ解析によるSMAの非侵襲的出生前診断
英国の研究グループは、SMN1の周りの多数の塩基の違いを手がかりに、赤ちゃんがどちらの親の染色体を受け継いだかを推定する方法(相対ハプロタイプ量解析)で、SMAの出生前診断ができたと報告しています。ただし対象は16妊娠と少なく、すでにSMAのお子さんがいて、その検体と両親の検体が必要という条件があり、二卵性双胎には使えないなどの制限もあります[4]。一般の妊婦さんがNIPTのように受けられる検査ではありません。
当院のNIPTではSMAは調べられる?
当院のNIPTで単一遺伝子疾患まで調べられるのは、ダイヤモンドプラン(56遺伝子)とインペリアルプラン(最大155遺伝子202疾患)です。対象は、ヌーナン症候群、軟骨無形成症、CHARGE症候群、ソトス症候群、レット症候群など、主に新しく生じた変化で起こる病気で、SMN1(SMA)はどちらの遺伝子リストにも入っていません。つまり、当院のNIPTでは、どのプランでも赤ちゃんのSMAは調べられません。
そこで当院では、NIPTと同時に受けられる拡大版保因者スクリーニング「ファミリーセーフティ プラス」を用意しています。ご夫婦それぞれの血液で、女性787遺伝子・男性714遺伝子を調べる検査で、SMAや脆弱X症候群のように、NIPTでは捉えにくい潜性遺伝・X連鎖性の病気を対象にしています。NIPTと同じ日に採血でき、結果は検体到着後3〜4週間ほどで出ます(単独での受検は受け付けていません)。
🧬 NIPTと保因者検査の役割の違い
| 項目 | NIPT(ダイヤモンド・インペリアル) | 保因者検査(ファミリーセーフティ プラス) |
|---|---|---|
| 調べる人 | 赤ちゃん(お母さんの血液中のDNA) | ご夫婦それぞれ |
| 得意な病気 | 染色体の数の変化・微小欠失・新しく生じた変化による単一遺伝子疾患 | 潜性遺伝・X連鎖性の病気(SMA、脆弱X症候群など) |
| SMA | 対象外 | 対象 |
| 結果の意味 | 赤ちゃんに可能性が高いかどうか(陽性なら確定検査) | 赤ちゃんに受け継がれる可能性がある病気があるか |
※どちらも陽性・保因者の結果が出たときは、臨床遺伝専門医が結果を説明し、必要に応じて院内で絨毛検査・羊水検査を行います。
SMAを調べる最適な方法は「両親の保因者検査」
米国産科婦人科学会(ACOG)は、妊娠を考えている方と妊娠中の方すべてに、SMAの保因者検査を提案するよう勧めています[5]。米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)も2021年の指針で、家族歴の有無にかかわらず、妊娠前・妊娠中のすべての方にSMAを含む保因者検査を提供することを勧めています[6]。SMAは、赤ちゃんを調べるより先に、ご両親を調べることで備える病気だということです。
保因者検査の考え方や、ほかに対象になる病気については保因者スクリーニング検査とはで、妊娠前に受ける検査の種類は妊娠前遺伝子検査(保因者検査)でまとめています。
保因者検査ではSMN1の「コピー数」を数える
SMAの保因者検査では、SMN1が何コピーあるかを数えます。1コピーなら保因者、2コピー以上なら保因者である可能性は低い、と判断します。ただし、2コピーでも保因者の可能性はゼロにはなりません。片方の染色体にSMN1が2つ並び、もう片方には0個という人(いわゆる「2+0」の保因者)は、合計すると2コピーに見えるからです。また、SMAの方の約2%は、親から受け継いだのではなく、新しく生じた変化によるものです[1]。
📊 SMN1のコピー数と、保因者である確率の目安(アジア系のデータ)
| SMN1のコピー数 | 判定 | 保因者である確率の目安 |
|---|---|---|
| 0コピー | SMA(発症者)に相当 | — |
| 1コピー | 保因者 | 保因者 |
| 2コピー | 保因者の可能性は低い | 約806人に1人 |
| 3コピー以上 | 保因者の可能性はさらに低い | 約5,600人に1人 |
※米国の検査会社の解析で、アジア系の方の検査前の保因者頻度(約59人に1人)をもとに計算された「検査後に残る確率」です[2]。日本人で同じ数字になるとは限りません。
いつ受ける?——妊娠前が理想、妊娠中なら早いほど選択肢が広がる
保因者検査は、妊娠前に受けるのが理想です。結果が分かっていれば、妊娠が分かった時点で、絨毛検査を受けるかどうかを落ち着いて考えられます。妊娠中に受ける場合は、ご夫婦同時に受けると、結果がそろうまでの時間を短くできます。絨毛検査は妊娠11週ごろから受けられるので、そこから逆算して、なるべく早い時期に受けることをお勧めします。
両親とも保因者なら:羊水検査・絨毛検査で赤ちゃんを確かめる
ご両親ともSMN1の保因者だと分かった場合、赤ちゃんがSMAかどうかは、絨毛検査(妊娠11週ごろ〜)または羊水検査(妊娠15週ごろ〜)で赤ちゃんの細胞を採り、SMN1のコピー数を直接調べることで確かめられます[1]。これは推定ではなく、診断のための検査(確定検査)です。必要に応じて、重症度の目安になるSMN2のコピー数もあわせて調べます。
当院では、絨毛検査・羊水検査を院内で行っています。それぞれの検査の流れや注意点は、絨毛検査についてと羊水検査・絨毛検査で解説しています。結果をどう受け止め、どう選ぶかは、ご夫婦の考え方によって違います。臨床遺伝専門医が、SMAの今の治療の状況も含めて情報をお伝えし、ご夫婦が納得して選べるよう支えます。
⚠️ 上のお子さんやご家族にSMAの方がいる場合
ご家族のSMAの原因が「SMN1の両方の欠失」なのか「欠失+点変異」なのかで、調べる方法が変わります。ご家族の遺伝子検査の結果があれば、妊娠前の相談時にお持ちください。原因がまだ確定していない場合は、SMN1・SMN2を含むSMA遺伝子パネル検査で原因を調べることから始めます。
生まれたあとに見つける:SMAの新生児スクリーニング
SMAは、治療の進歩が大きい病気です。日本でも、ヌシネルセン(スピンラザ)、オナセムノゲン アベパルボベク(ゾルゲンスマ)、リスジプラム(エブリスディ)が使えるようになりました。そして、症状が出る前に治療を始めるほど、運動機能の経過がよいことが報告されています。症状が出る前に治療を始めた乳児を追跡した研究では、SMN2を2〜3コピーもつ赤ちゃんの多くが、介助なしに歩けるようになっていました[7]。
そこで、生まれてすぐにSMAを見つける新生児スクリーニングが日本でも広がっています。大阪府では2021年2月に試験的な検査が始まり、生後4〜6日に採る足の裏の血液で、SMN1があるかどうかを調べています[3]。2024年10月からは、国(こども家庭庁)の「新生児マススクリーニング検査に関する実証事業」として、参加する自治体でSMAと重症複合免疫不全症(SCID)が従来の検査に加えられ、同意すれば追加費用なしで受けられるようになっています[8]。
ただし、実施状況は都道府県によって異なり、参加には同意が必要です。出産する地域でSMAの新生児スクリーニングを受けられるかは、分娩する医療機関で確認してください。新生児スクリーニングは「生まれたあとに早く見つける」ための検査で、妊娠中に赤ちゃんの状態を知りたい場合は、保因者検査と出生前診断の組み合わせになります。
🩺 院長コラム【「NIPTで分かる」より「どの検査で分かるか」】
NIPTで調べられる範囲は、この数年で大きく広がりました。だからこそ、「NIPTを受ければ遺伝の病気はひととおり分かる」と受け取られてしまうことを、臨床遺伝専門医として心配しています。SMAは、その誤解がいちばん起こりやすい病気の一つだと考えています。
SMAは、赤ちゃんの血液を調べるより先に、ご両親を調べることで備える病気です。そして今は、治療が進み、新生児スクリーニングも広がっています。どの検査で、何が分かり、何が分からないのか。それを正確に知ったうえで検査を組み合わせることが、遺伝専門のクリニックとしての役割だと考えています。
ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ
SMAはNIPTでは調べられませんが、だからといってNIPTで分かることがダウン症候群だけ、というわけではありません。当院のNIPTは、プランによって、22q11.2欠失症候群などの微小欠失や、ヌーナン症候群・ソトス症候群などの単一遺伝子疾患まで調べられます。NIPTの料金を「1つの病気あたり」で考えると、次のようになります。
💡 1つの病気あたりで考える
※料金は事前学習動画を見て来院された場合の当日割引後の税込価格です。最新の料金はNIPTの費用・料金でご確認ください。「三大トリソミーのみ」は計算のための仮の例で、特定の施設の価格ではありません。病気の数は、数の異常・微小欠失・重複・単一遺伝子疾患を1つずつ数え、性染色体の数の異常は4種類として数えています(双子マックスは性染色体を調べません)。5Mbを超える構造異常は数に含めていません。どのプランでもSMAは対象外です。
調べる範囲が広がるほど、陽性になって確定検査が必要になる場面も増えます。NIPTはスクリーニング検査なので、陽性のときは確定検査で確かめることが前提です。当院では陽性のカウンセリングは何度でも無料で、確定検査(絨毛検査・羊水検査)も院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。NIPTで赤ちゃんの染色体や新しく生じた変化を調べ、SMAのような潜性遺伝の病気は保因者検査で備える。この2つを組み合わせると、調べられる範囲を大きく広げられます。
🏥 NIPTと保因者検査を、臨床遺伝専門医と一緒に選ぶ
ミネルバクリニックには臨床遺伝専門医が常駐し、NIPT(ダイヤモンド56遺伝子・インペリアル最大155遺伝子)と保因者検査(女性787・男性714遺伝子)を同じ日の採血で受けられます。陽性や保因者の結果が出たときは、絨毛検査・羊水検査まで院内で対応します。NIPT専用ダイヤル:03-3408-3768
よくある質問(FAQ)
Q1. NIPTでSMA(脊髄性筋萎縮症)は分かりますか?
一般的なNIPTでは分かりません。SMAの約95%はSMN1遺伝子が両方とも欠けていることで起こり、赤ちゃんがSMAになるのは両親とも保因者のときです。お母さん自身もSMN1が1つ欠けているため、血液中のDNAから赤ちゃんの分だけを見分けることができません。当院のNIPT(ダイヤモンド56遺伝子・インペリアル最大155遺伝子を含む)も、SMAは対象外です。
Q2. NIPTはダウン症候群だけで大丈夫ですか?
NIPTで調べられるのはダウン症候群だけではありません。当院のNIPTは、プランによって22q11.2欠失症候群などの微小欠失や、ヌーナン症候群などの単一遺伝子疾患まで調べられます。一方、SMAのような潜性遺伝の病気はNIPTでは調べられないため、両親の保因者検査で備えます。調べる範囲は、検査前の遺伝カウンセリングで相談して選んでください。
Q3. SMAの出生前診断はできますか?
できます。ご両親ともSMN1の保因者と分かっている場合、絨毛検査(妊娠11週ごろ〜)または羊水検査(妊娠15週ごろ〜)で赤ちゃんの細胞を採り、SMN1のコピー数を直接調べて診断します。当院では絨毛検査・羊水検査を院内で行っています。上のお子さんやご家族にSMAの方がいる場合は、その方の遺伝子検査の結果があると、より確実に調べられます。
Q4. SMAの保因者検査はいつ受ければいいですか?妊娠中でも受けられますか?
妊娠前に受けるのが理想ですが、妊娠中でも受けられます。妊娠中の場合は、ご夫婦同時に受けると結果がそろうまでの時間を短くでき、両親とも保因者だったときに絨毛検査(妊娠11週ごろ〜)を選べる余裕が生まれます。当院の拡大版保因者スクリーニング(ファミリーセーフティ プラス)はNIPTと同じ日に採血でき、結果は検体到着後3〜4週間ほどで出ます。
Q5. 保因者検査でSMN1が2コピーなら、保因者ではないと考えてよいですか?
可能性はかなり低くなりますが、ゼロにはなりません。片方の染色体にSMN1が2つ並び、もう片方に0個という保因者は、合計で2コピーに見えるためです。アジア系のデータでは、2コピーの方が保因者である確率は約806人に1人と計算されています。また、SMAの約2%は新しく生じた変化によるもので、両親とも保因者でなくても起こることがあります。
Q6. SMAは新生児スクリーニングで調べられますか?
調べられる地域が広がっています。2024年10月から、国(こども家庭庁)の実証事業として、参加する自治体で生後4〜6日ごろの足の裏の血液を使ったSMAの検査が加えられ、同意すれば追加費用なしで受けられます。実施状況は地域によって異なるため、分娩する医療機関で確認してください。症状が出る前に治療を始めるほど経過がよいことが報告されています。
Q7. 家族にSMAの人がいなくても、保因者検査を受ける意味はありますか?
あります。SMAは潜性遺伝のため、保因者には症状がなく、家族にSMAの方がいないことがほとんどです。保因者はアジア系で約59人に1人と報告されており、米国の産婦人科学会や臨床遺伝・ゲノム学会は、家族歴にかかわらず、妊娠を考えている方や妊娠中の方にSMAの保因者検査を提供することを勧めています。
Q8. 海外のNIPTではSMAが分かると聞きました。日本人には使えませんか?
米国には、お母さんの保因者検査とセットで、SMAの赤ちゃんのリスクを血液から推定する検査があります。調べているのはSMN1の欠失で、日本人に多いのと同じ型です。ただし、検証研究ではSMAで高リスクと判定された14例のうち実際にSMAだったのは5例で、SMAの赤ちゃんが5例と少ないため見逃しの割合(感度)はまだ分からず、判定不能も多く、診断には絨毛検査・羊水検査が必要です。日本では一般に受けられず、当院でも扱っていません。日本でSMAに備えるなら、ご両親の保因者検査が確実です。
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参考文献
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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。SMAの保因者検査や出生前診断については、臨床遺伝専門医にご相談ください。






