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ダウン症のTAM(一過性骨髄異常増殖症)とは?症状と治療法・予後の最新情報

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

TAM(一過性骨髄異常増殖症)は、ダウン症候群(ダウン症)の新生児の約5〜10%にみられる血液の病気です[1]。白血病によく似た未熟な血液細胞(芽球)が一時的に増えますが、多くは治療をしなくても生後3か月ごろまでに自然に治ります[2]。一方で、一部の赤ちゃんは肝臓や心臓・肺の働きが悪くなって重症化します。また、治った赤ちゃんの約2割が4歳ごろまでに白血病(ML-DS)を発症するため、治ったあとも定期的な血液検査による経過観察が必要です[3]。この記事では、TAMの原因・症状・診断基準・治療・その後の見通しを、原著論文と国内外のガイドラインにもとづいて臨床遺伝専門医が解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
🩺 ダウン症候群・血液の病気・出生前診断
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤TAMとは何か、ダウン症候群の新生児の何%にみられるか
  • ➤原因(21トリソミーとGATA1遺伝子の変化)と、親から受け継ぐ病気ではないこと
  • ➤症状と診断基準(芽球10%超とGATA1変異)、多血症・黄疸との関係
  • ➤治療が必要な場合(少量シタラビン療法)と、経過観察でよい場合
  • ➤治ったあとに白血病(ML-DS)になる確率・治療成績と、4歳ごろまでの経過観察

⏱️ 30秒でわかる要約

🩸 Q. TAMとは?(医療用語)

TAMは「一過性骨髄異常増殖症(Transient Abnormal Myelopoiesis)」の略で、ダウン症候群の新生児の約5〜10%にみられる血液の病気です。白血病に似た芽球が増えますが、多くは生後3か月ごろまでに自然に治ります。

🔎 Q. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

大丈夫とは言えません。TAMはダウン症候群に伴う病気ですが、出生前検査で調べられる病気はほかにもあります。子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった行動の問題です。それを伴いやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患は、三大トリソミーだけの検査では調べられません。当院のNIPTはこれらの病気まで調べられます。

🏥 Q. TAMは治療が必要?

症状が軽い赤ちゃんは、治療をせずに経過をみるだけで治ります。白血球が非常に多い、肝臓の働きが悪い、胸やお腹に水がたまるなどの重い症状がある赤ちゃん(全体の1〜2割)には、少量の抗がん剤(シタラビン)を使います。

📅 Q. 治ったあと、白血病になる確率は?

TAMが治った赤ちゃんの約2割が、4歳ごろまでに骨髄性白血病(ML-DS)を発症します。発症が最も多いのは1歳台です。ML-DSは抗がん剤がよく効き、日本の臨床試験では3年全生存率87.5%と報告されています。そのため、4歳ごろまでの定期的な血液検査が勧められます。

\ ダウン症候群だけで大丈夫ですか? /

TAMのように生まれてから分かる病気とは別に、当院のNIPTは、子育ての負担につながりやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患まで妊娠中に調べられます。どこまで調べるかは、90分の受診枠の中で臨床遺伝専門医と一緒に決められます。

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1. TAM(一過性骨髄異常増殖症)とは

TAM(Transient Abnormal Myelopoiesis:一過性骨髄異常増殖症)は、ダウン症候群(21トリソミー)の赤ちゃんに、生まれてすぐの時期だけみられる血液の病気です。血液の中に「芽球」と呼ばれる未熟な細胞が増え、検査の見た目は白血病によく似ていますが、多くは自然に消えていきます。そのため「一過性」という名前がついています。海外では「一過性白血病(TL-DS)」「一過性骨髄増殖性疾患(TMD)」とも呼ばれ、日本では「一過性骨髄増殖症」と書かれることもあります。どれも同じ病気を指します。

なお、「TAM」という略語は、医療の中でも腫瘍随伴マクロファージやタモキシフェンなど、別の意味で使われることがあります。新生児やダウン症候群の話題で出てくるTAMは、この一過性骨髄異常増殖症のことです。

頻度は、ダウン症候群の新生児の約5〜10%と報告されています[1](約10%とする資料もあります[4][5])。診断の基準を広くとると頻度は上がるため、英国血液学会のガイドラインは「5〜30%」と幅をもたせて書いています[3]。TAMは、21番染色体が3本ある細胞にだけ起こる病気で、体の一部の細胞だけが21トリソミーであるモザイク型ダウン症の赤ちゃんにも起こります[3]。

💡 用語解説:芽球(がきゅう)

芽球とは、血液細胞のもとになる未熟な細胞のことです。ふだんは骨髄の中にあり、成熟して赤血球・白血球・血小板になります。TAMでは、この芽球が増えて血液の中に出てきます。なお、ダウン症候群の新生児では、TAMでなくても血液の中に少数の芽球がみられることが多く、200人を調べた英国の研究では97.5%(195人)で芽球が見つかりました[6]。「芽球がある」だけではTAMとは言えません。

🔬 TAMの基礎知識

項目 内容
正式な名前 一過性骨髄異常増殖症(Transient Abnormal Myelopoiesis)
別の呼び方 一過性白血病(TL-DS)、一過性骨髄増殖性疾患(TMD)、一過性骨髄増殖症
頻度 ダウン症候群の新生児の約5〜10%[1]
起こる赤ちゃん ダウン症候群、モザイク型の21トリソミーの赤ちゃん[3]
見つかる時期 生まれてすぐ(生後数日以内の血液検査で調べる)[3]
治るまで 多くは生後3か月以内に自然に治る[2]
治ったあと 生存した赤ちゃんの20〜23%が、のちに白血病(ML-DS)を発症[3]

TAMの2つの分類(TAMと、症状のない「サイレントTAM」)

英国で、ダウン症候群の新生児200人を生後すぐに調べた研究(2013年)があります[6]。通常の方法でGATA1遺伝子の変異が見つかったのは8.5%(17人)で、全員が芽球10%超でした。これがTAMです。さらに、感度の高い方法(次世代シークエンサー)で調べなおすと、通常の方法では変異が見つからなかった赤ちゃんの20.4%(88人中18人)に、ごく少ない量のGATA1変異が見つかりました。症状でも血液検査の特徴でもほかの赤ちゃんと区別がつかないため、「サイレントTAM(無症候性TAM)」と呼ばれています。両方を合わせると、GATA1変異をもつ赤ちゃんは約29%でした[6]。

📊 TAM・サイレントTAMと、その後の白血病

分類 特徴 のちに白血病(ML-DS)になった人数
TAM GATA1変異があり、芽球が10%を超える。肝臓の腫れなどの症状を伴うことがある 17人中3人
サイレントTAM GATA1変異はあるが、芽球は10%以下。症状では区別できない 18人中1人
GATA1変異なし TAMではない 70人中0人

出典:Robertsら(Blood, 2013)[6]。追跡期間の中央値は33か月超です。人数の少ない研究なので、割合の目安として読んでください。

💡 TAMのポイント

・多くは治療なしで自然に治る(米国の研究では89%で血液中の芽球が自然に消えました[7])
・一部の赤ちゃんは肝臓や心臓・肺の働きが悪くなり、重症化する
・治ったあとも、4歳ごろまでは白血病(ML-DS)にならないか経過をみる

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「白血病になりやすい」という言葉だけで判断しないために】

「ダウン症候群のお子さんは白血病になりやすい」と聞いて、不安を感じる方は少なくありません。白血病になる割合が一般より高いのは事実です。ただ、「高い」という言葉だけが伝わると、実際の数字よりずっと大きな不安になってしまいます。

大切なのは、数字を順番に見ることだと考えています。TAMになる赤ちゃんはダウン症候群の新生児の5〜10%で、その多くは自然に治ります。治ったあとに白血病になるのは約2割で、その白血病は抗がん剤がよく効くタイプです。一方で、新生児期に重症化する赤ちゃんがいることも事実で、そこは隠さずにお伝えすべきだと考えています。正確な数字を知ることが、落ち着いて経過を見守るための土台になります。

2. TAMの発症メカニズム|GATA1遺伝子変異の役割

TAMは、2つの条件がそろったときに起こります。1つは21番染色体が3本あること(21トリソミー)、もう1つは、血液のもとになる細胞にGATA1遺伝子の変化が起こることです。TAMの遺伝子を網羅的に調べた日本の研究でも、TAMは「21トリソミー」と「GATA1変異1つ」で起こると考えられる、と報告されています[8]。

このGATA1の変化は、赤ちゃんの血液の細胞に、お腹の中にいる間に新しく起こるものです[9][2]。TAMが治ると変異をもつ細胞は見つからなくなり、ダウン症候群ではない赤ちゃんのさい帯血からは見つかりません[9][2]。つまり、親から受け継いだものではありません。妊娠中の生活が原因だという根拠もありません。「自分のせいでは」と考える必要はありません。

TAM発症に必要な2つの要因

① 21番染色体のトリソミー:21番染色体が1本多いと、お腹の中の赤ちゃんの肝臓で行われる造血(血液をつくる働き)が、GATA1変異が起こる前からすでに変化していることが分かっています[2]。21番染色体にある遺伝子(ERG、DYRK1A、RUNX1、ETS2など)の働きが強まることが関わると考えられています[2]。

② GATA1遺伝子の体細胞変異:GATA1は、赤血球や巨核球(血小板をつくる細胞)が育つのを調節する遺伝子です。TAMやML-DSでは、この遺伝子の前半部分に変化が起こり、通常より短いGATA1タンパク質(GATA1s)がつくられるようになります[10][2]。

💡 用語解説:体細胞変異(たいさいぼうへんい)

受精のあと、体の一部の細胞に新しく起こる遺伝子の変化のことです。卵子や精子を通じて親から子へ伝わる変化とは違い、変化が起きた細胞と、そこから増えた細胞にしかありません。TAMのGATA1変異はこのタイプなので、きょうだいに同じ変異が受け継がれることはありません。

胎児の肝臓での造血とTAM

お腹の中の赤ちゃんは、主に肝臓で血液をつくっています。TAMは、この胎児期の肝臓の造血細胞から生じる病気と考えられています[2][3]。

① 胎児期肝臓で血液がつくられる
▶
② GATA1変異造血細胞に変化が起こる
▶
③ TAM21トリソミーのもとで芽球が増える
▶
④ 生後3か月ごろまで多くは自然に消える

出生後になぜ自然に消えるのか、その仕組みははっきりとは分かっていません。分かっているのは、ほとんどの赤ちゃんで芽球が自然に消えること、そして生後6か月を過ぎてから自然に治った報告はないことです[3]。

3. TAMの症状と診断基準

TAMの症状は、まったく無症状で血液検査だけで見つかる赤ちゃんから、集中治療が必要な赤ちゃんまで幅があります。元気で、血液検査でたまたま見つかる赤ちゃんが10〜25%、全身に芽球が広がって重い状態になる赤ちゃんが10〜20%とされています[2]。

TAMの主な症状

🩺 TAMの赤ちゃんにみられる症状・検査の異常

症状・検査の異常 みられる割合
肝臓の腫れ(肝腫大) 約40%
脾臓の腫れ(脾腫) 約30%
白血球の増加(26,000/μL超) 約50%
血小板の減少(15万/μL未満) 約50%
肝機能検査の異常 約25%
血液の固まり方の異常(凝固異常) 10〜25%
皮膚の発疹 約11%
心臓や肺のまわりに水がたまる(心嚢液・胸水) 約9%
上の症状がどれもない 約10%

出典:英国血液学会のガイドライン(2018年)[3]。血小板の減少は、TAMではないダウン症候群の新生児でも約50%にみられます。別の臨床試験(102人)では、腹水が17%、胎児水腫が7%でした[11]。

黄疸について:黄疸は、TAMがなくてもダウン症候群の新生児によくみられます[2]。英国の研究では、黄疸がみられた割合はTAMの赤ちゃんで76.4%(17人中13人)、GATA1変異のない赤ちゃんでも47.1%(70人中33人)でした[6]。黄疸だけでTAMかどうかは判断できません。

TAMではなくても血液検査に変化が出る(多血症・血小板減少)

ダウン症候群の新生児は、TAMでなくても血液検査の値が変わりやすいことが知られています。米国で、生後1週間以内に血液検査を受けたダウン症候群の新生児158人を調べた研究では、検査値のうち好中球の増加が80%、血小板の減少(15万/μL未満)が66%、多血症(ヘマトクリット65%超など)が33%でみられ、血液像で芽球が確認されたのは6%(9人)でした[12]。「多血症と言われた」「血小板が少ないと言われた」ことが、そのままTAMや白血病を意味するわけではありません。TAMかどうかは、次に説明する芽球の割合とGATA1遺伝子の検査で判断します。

TAMの診断方法

英国血液学会のガイドラインは、ダウン症候群(またはその疑いが強い)すべての新生児に、生後3日以内に血算(血球の数)と血液像(顕微鏡で血液の細胞を見る検査)を行うよう勧めています[3]。芽球が10%を超えている場合や、症状からTAMが疑われる場合は、血液でGATA1遺伝子の変異を調べます[3]。

🧪 TAMの診断に使う検査

検査 目的
血算(CBC) 白血球・赤血球・血小板の数を調べる
血液像(血液塗抹標本) 芽球があるか、何%あるかを顕微鏡で確かめる
GATA1遺伝子の検査 芽球が10%を超える場合などに行い、診断を確かめる
肝機能・凝固の検査 肝臓の働きや出血しやすさを調べ、重症度を判断する
フローサイトメトリー 芽球の性質を調べる検査。必要に応じて追加する

出典:英国血液学会のガイドライン(2018年)[3]

💡 診断のポイント

TAMの診断に、骨髄の検査はふつう必要ありません。TAMでは、骨髄よりも血液の中のほうが芽球が多いためです[3]。一方、のちに白血病(ML-DS)が疑われたときは、骨髄の検査が必要になります[3]。

TAMの診断基準

TAMの診断基準は、世界で1つに統一されているわけではありません。WHO分類では「ダウン症候群の新生児で、血液の中の芽球が増えている状態」とされ、芽球が何%以上という数字は決められていません[3]。そのため、研究によって対象の赤ちゃんが少しずつ違い、頻度の数字に幅が出ます。現在よく使われているのは、英国血液学会のガイドラインの基準です[3]。

📋 英国血液学会のガイドラインによる診断基準

名前 基準
TAM(TL-DS) GATA1遺伝子の変異があり、血液の中の芽球が10%を超える
サイレントTAM GATA1遺伝子の変異があり、生後1週間以内の血液の中の芽球が10%以下

出典:英国血液学会のガイドライン(2018年)[3]

日本では、TAMとダウン症候群に伴う骨髄性白血病は、WHO分類の「ダウン症関連骨髄増殖症」にまとめられています[5]。実際の診断は、血液像・症状・GATA1遺伝子の検査の結果を合わせて、新生児科や小児血液の専門医が行います。

4. TAMの治療法|リスク層別化に基づくアプローチ

TAMの赤ちゃん全員に治療が必要なわけではありません。命にかかわる症状がなければ経過観察、ある場合は少量の抗がん剤(シタラビン)を検討する、というのが現在の基本的な考え方です[3][13]。

リスク層別化による見通しの違い

米国の小児がん研究グループ(COG)は、TAMの新生児135人の経過をもとに、診断時の状態で3つのグループに分けています[14]。

📊 診断時の状態による3つのグループ

グループ 診断時の状態 割合 全生存率
低リスク 肝腫大も、命にかかわる症状もない 38% 92%±8%
中リスク 肝腫大だけがある 40% 77%±12%
高リスク 肝腫大と、命にかかわる症状の両方がある 21% 51%±19%

出典:Gamisら(Blood, 2011)[14]。この研究では21%の赤ちゃんが亡くなりましたが、TAMが原因だったのは10%でした。数字は集団の平均で、一人ひとりの見通しをそのまま表すものではありません。

重い症状があるとき:少量シタラビン療法

英国血液学会のガイドラインは、次のような命にかかわる症状がある赤ちゃんには、早めにシタラビンを使うことを勧めています[3]。

🏥 治療を検討する「命にかかわる症状」

・白血球が10万/μLを超える
・肝臓の働きの悪化(直接ビリルビンの上昇、腹水、著しい肝腫大)
・呼吸や哺乳を妨げるほどの肝臓・脾臓の腫れ
・胎児水腫
・胸水、心嚢液
・腎不全
・出血を伴う凝固異常(DIC)
・多臓器不全

💡 用語解説:シタラビン

シタラビンは、白血病の治療に使われる抗がん剤です。細胞がDNAをつくる働きを妨げて、増えすぎた芽球を減らします。TAMで使う量は、白血病の治療で使う量よりずっと少量です。

使う量と期間は、研究によって少し違います。英国血液学会のガイドラインは1日1〜1.5mg/kgを5〜7日間[3]、ドイツを中心とした臨床試験は1日1.5mg/kgを7日間[11]、日本のTAM-10研究では1日1.0〜1.5mg/kg(中央値6日間)が使われていました[1]。効果については、次のように報告されています。

💊 少量シタラビン療法の効果を調べた研究

研究 結果
ドイツ(146人)[15] 重症化しやすい条件のある赤ちゃんで、シタラビン(0.5〜1.5mg/kg)を使ったグループは、使わなかったグループより5年無イベント生存率が高かった(52%±12% と 28%±11%)
ドイツ中心の臨床試験(102人)[11] 症状のある赤ちゃんの早期死亡(生後6か月以内)は12%±5%で、それ以前の33%±7%より少なかった
日本 TAM-10研究(167人)[1] 白血球が10万/μL以上の36人では、少量シタラビン療法で生存が改善した(早期死亡の累積発生率は31%と62%、P=0.017)

日本小児血液・がん学会のガイドライン(2016年版)も、「重症例は少量シタラビン療法が考慮される」としています(推奨グレード2C)[13]。副作用として、少量でも白血球(好中球)や血小板が大きく減ることがあり、臨床試験では重い好中球減少が32%、重い血小板減少が26%でみられました[11]。そのため、治療は血液検査をくり返しながら慎重に行われます。

症状が軽いとき:経過観察

命にかかわる症状がない赤ちゃんは、治療をせずに、血算と肝機能(直接ビリルビンを含む)の検査をくり返しながら、自然に治るのを待ちます[3]。米国の研究では、経過観察となった赤ちゃんの血液中の芽球は診断から中央値36日で消え、そのほかの症状も中央値49日でなくなりました[14]。英国血液学会のガイドラインによると、この研究では108人中106人で芽球が自然に消えています[3]。

💡 白血病を「予防」するための治療について

TAMが治ったあとに白血病(ML-DS)になるのを防ぐ目的で、シタラビンを使う方法も試されましたが、効果は確かめられていません。臨床試験では、5年間にML-DSを発症した割合は19%±4%で、それ以前の22%±4%と変わりませんでした[11]。現在は、予防のための治療ではなく、定期的な血液検査で経過をみる方針がとられています[3]。

5. ダウン症と白血病の関係|TAMからML-DSへの進展

ダウン症児における白血病リスク

ダウン症候群の子どもは、急性白血病になる割合が一般の10〜20倍とされています[4]。デンマークでダウン症候群の2,814人を追跡した研究では、白血病の発生は0〜4歳で一般の56倍、5〜29歳で10倍でした[16]。倍率は大きく見えますが、白血病になった人の割合に直すと、5歳までに2.1%(およそ50人に1人)、30歳までに2.7%です[16]。また、同じ研究では、白血病以外のがん(固形がん)は一般の半分ほどでした[16]。

なかでも多いのが、巨核芽球という細胞が増える「急性巨核芽球性白血病(AMKL)」で、ダウン症候群では一般の400〜500倍起こりやすいと推定されています[17][4]。ダウン症候群の子どもに起こる骨髄性白血病を、まとめて「ML-DS」と呼びます。ML-DSになるのは、ダウン症候群の子どもの約1.5%(5歳まで)です[2]。

💡 用語解説:ML-DS(ダウン症候群に伴う骨髄性白血病)

Myeloid Leukemia associated with Down Syndromeの略です。多くは急性巨核芽球性白血病(AMKL)で、日本の臨床試験では72人中67人(93%)がAMKLでした[18]。発症が最も多いのは1歳台で、4歳を過ぎるとまれです[3]。血小板などが少しずつ減っていく時期(骨髄異形成症候群に似た状態)を経て、ゆっくり始まることが多いのが特徴です[3]。

TAMが治った赤ちゃんの一部は、のちにML-DSを発症します。主な研究の数字を並べます。

📊 TAMのあとに白血病になった割合

研究 対象 白血病になった割合
日本 TAM-10研究[1] 167人 4年間で17.3%
米国 COG A2971[14] 135人 16%(診断から中央値441日)
米国 POG-9481[7] 48人 19%(平均20か月)
ドイツ AML-BFM[15] 146人 23%(29人。論文の記載のとおり)
英国血液学会のガイドラインの集計[3] TAMから生存した323人 22%(71人)

まとめると、TAMが治った赤ちゃんの約2割がML-DSを発症します。逆にいえば、約8割は白血病になりません。サイレントTAMまで含めて、GATA1変異をもって生まれた赤ちゃん全体でみると、割合はもっと低く、5〜10%程度と見積もられています[3][2]。

ML-DS発症の三段階モデル

日本の研究グループがTAMとML-DSの遺伝子を網羅的に調べた結果、ML-DSは、TAMの細胞に新しい遺伝子の変化が加わって生じることが分かりました[8]。

第1段階21トリソミー(胎児期の造血が変化)
▶
第2段階GATA1変異が起こる(TAM)
▶
第3段階別の遺伝子の変化が加わる(ML-DS)

第3段階で加わる変化として、コヒーシンという複合体の遺伝子(RAD21、STAG2など)がML-DSの53%、CTCFが20%、EZH2などのエピゲノム調節因子が45%、JAKファミリーやRAS経路など細胞の信号伝達にかかわる遺伝子が47%で見つかっています[8]。

ML-DS発症のリスク因子

どの赤ちゃんが白血病になりやすいかを予測する研究も進んでいます。

・治ったあとに残るわずかな芽球(微小残存病変):日本のTAM-10研究では、3か月の時点の検査で検出された赤ちゃんの45.0%が白血病を発症し、検出されなかった赤ちゃんでは16.0%でした[1]。ドイツを中心とした臨床試験でも、12週の時点で検出された赤ちゃんは46%±15%、検出されなかった赤ちゃんは13%±5%でした[11]。

・GATA1変異のタイプ:日本の66人の研究では、短いGATA1タンパク質がつくられる量が少ないタイプの変異で、ML-DSへ進む割合が高いと報告されています[19]。

ただし、これらは研究で分かってきた傾向で、一人ひとりの将来を言い当てるものではありません。こうした因子があってもなくても、次の章で説明する定期的な血液検査が基本になります。

ML-DSの治療成績

ML-DSは、抗がん剤がよく効く白血病です。そのため日本のガイドラインは、ダウン症候群ではない子どもの急性骨髄性白血病よりも弱めた治療を行うことを強く勧めています[13]。

💚 ML-DSの治療成績

臨床試験 人数 成績
日本 JPLSG AML-D05[20] 72人 3年無イベント生存率83.3%±4.4%、3年全生存率87.5%±3.9%
日本 小児AML共同治療研究会[18] 72人 寛解率97.2%、4年無イベント生存率83%±9%
米国 COG AAML0431[21] 204人 5年無イベント生存率89.9%、5年全生存率93.0%

一方で、再発した場合や治療が効きにくい場合の成績は下がります(米国の試験では5年全生存率34.3%)[21]。見通しの全体像を知っておくための数字として、あわせて挙げておきます。

6. TAMの予後と長期フォローアップ

TAMの見通しは、「生まれてすぐの時期を乗り切れるか」と「治ったあとに白血病にならないか」の2つに分けて考えます。

TAMの短期予後に影響する要因

英国血液学会のガイドラインが主な研究をまとめたところ、TAMと診断された398人のうち75人(19%)が生後6か月以内に亡くなっていました(研究ごとの幅は15〜23%)[3]。ただし、その中にはTAM以外の原因で亡くなった赤ちゃんも含まれ、TAMが直接の原因だったのは半分ほどとされています[2][14]。日本のTAM-10研究(2011〜2014年に登録された167人)では、生後9か月未満で亡くなった赤ちゃんは22人(13%)で、4年全生存率は81%でした[1]。

亡くなる原因として多いのは、肝臓の働きが保てなくなること(肝不全)と、心臓・肺の働きの悪化です[22][2]。これまでの研究で、次のような場合に重症化しやすいことが分かっています[15][22][7][13]。

🏥 重症化しやすい条件

・白血球数が非常に多い(10万/μL以上)
・早産
・腹水
・出血しやすい状態
・ビリルビンや肝酵素の値が高い
・自然に治っていかない

日本の70人の研究では、正期産で白血球が10万/μL未満の赤ちゃんの早期死亡は7.7%(39人中3人)、早産で白血球が10万/μLを超える赤ちゃんでは54.5%(11人中6人)でした[22]。同じTAMでも、生まれたときの状態によって見通しが大きく違うことが分かります。

長期フォローアップの重要性

TAMが治ったあとも、ML-DSにならないかを確かめるための経過観察が必要です。英国血液学会のガイドラインは、TAM・サイレントTAMのどちらの赤ちゃんにも、次の間隔での診察と血液検査を勧めています[3]。

📅 TAMが治ったあとの経過観察の目安

時期 間隔 内容
2歳まで 3か月ごと 診察、血算、血液像
2歳から4歳まで 6か月ごと 診察、血算、血液像

出典:英国血液学会のガイドライン(2018年)[3]。GATA1変異が見つかった赤ちゃんは5歳まで経過をみるべきだとする研究者の意見もあります[6]。実際の間隔や期間は、主治医の方針に従ってください。

ML-DSの始まりで最初に(ときには唯一)現れる変化は、血小板の数が下がってくることだとされています[3]。血液検査でこうした変化が見つかった場合は、骨髄の検査などに進みます[3]。定期的な血液検査は、この変化を早い段階でとらえるためのものです。

7. 実症例から学ぶTAMの経過

TAMの経過は、赤ちゃんによって大きく違います。3つの経過を紹介します。

症例1:自然に治った低リスクのTAM

生後2日目の男児。出生時の染色体検査でダウン症候群と診断され、血液検査で白血球の増加と芽球が認められました。肝臓の軽い腫れはありましたが、命にかかわる症状はなく、低リスクのTAMと判断されて経過観察となりました。生後3週間で芽球は自然に減り始め、2か月後には血液検査が正常になりました。現在4歳で、定期的な経過観察を続けていますが、白血病の発症はなく過ごしています。

症例2:重症で、治療を行っても回復が難しかったTAM

妊娠30週を過ぎて赤ちゃんの腎臓の異常を指摘され、帝王切開で出産。染色体検査でダウン症候群と診断されました。出生後に血小板の減少が見つかり、詳しい検査の結果、高リスクのTAMと分かりました。肝臓の働きが急に悪くなり、腹水と胸水がたまって呼吸の状態も悪化しました。シタラビンによる治療が行われましたが状態は改善せず、生後3週間でNICUにて亡くなりました。

症例3:TAMが治ったあと、経過観察で骨髄異形成症候群(MDS)が見つかった例

生後5日目の女児。出生時の血液検査でTAMと診断されましたが、症状は軽く、自然に治りました。その後も定期的な経過観察を続けていたところ、1歳4か月の血液検査で血球の減少と芽球が見つかり、骨髄の検査で骨髄異形成症候群(MDS)への移行が確認されました。化学療法が行われ、現在は寛解を維持しています。TAMが自然に治っても、定期的な経過観察が大切であることを示す経過です。

8. 出生前診断とTAM|NIPTでわかること

先に結論をお伝えすると、NIPT(新型出生前診断)を含め、出生前の検査で「TAMになるかどうか」「将来白血病になるかどうか」を知ることはできません。TAMの原因になるGATA1変異は、赤ちゃんの血液の細胞にあとから起こる変化だからです。NIPTで分かるのは、TAMの前提になるダウン症候群(21トリソミー)などの可能性です。

NIPTでわかること・わからないこと

🧬 NIPTでわかること・わからないこと

区分 内容
NIPTでわかること ダウン症候群(21トリソミー)・18トリソミー・13トリソミーの可能性/性染色体の数の異常の可能性/プランによって、微小欠失症候群や単一遺伝子の病気の一部
NIPTでわからないこと TAMになるかどうか/GATA1遺伝子の体細胞変異があるかどうか/将来白血病になるかどうか

NIPTによるダウン症候群の検出率は99.7%、偽陽性率は0.04%と報告されています(単胎妊娠の研究をまとめた解析)[23]。精度の高い検査ですが、確定診断ではなく、まれですが偽陰性の可能性はあります。陽性の場合は、羊水検査や絨毛検査で確かめることが必要です。当院では確定検査まで院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。

なお、まれに、お腹の中でTAMが見つかることがあります。新生児期に診断されるTAMのうち、生まれる前に診断がついているのは5%未満で[3]、多くは妊娠後期の超音波検査で、赤ちゃんの肝臓や脾臓の腫れ(報告された39人の79.5%)、胎児水腫(同30.8%)をきっかけに疑われます[24]。

NIPTでダウン症が判明した場合に知っておくべきこと

妊娠中にダウン症候群と分かっていれば、生まれてすぐに血液検査(血算と血液像)を受ける予定を立てられます。新生児科や小児血液の専門医がいる施設で出産するかどうかを、あらかじめ産科の主治医と相談しておくこともできます。出生前検査は、こうした準備のために使える検査でもあります。ダウン症候群のある方の寿命についてはダウン症の寿命・死因・老化で、教育・就労・支援制度についてはダウン症の子は将来どうなる?日本の教育や就労・支援で解説しています。

ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ

TAMはダウン症候群の赤ちゃんに起こる病気なので、ここまで読んで「ダウン症候群だけ分かればよい」と感じた方もいるかもしれません。けれども、出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんとご家族の暮らしに大きくかかわるものです。ご家族の子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった「行動の問題」だと報告されています[25]。こうした行動の問題を伴いやすい病気には、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患が多く含まれます[25][26]。三大トリソミーだけを調べる検査では、これらの病気は調べられません。

出生前検査は、その後の人生を左右するかもしれない検査です。「安さ」だけで選んで大丈夫でしょうか。

調べられる範囲の広さを実感するために、費用を「調べられる病気の数」で割ってみます。三大トリソミーだけを調べる検査を仮に10万円とすると、1つの病気あたりは約3万3千円です。当院のインペリアルプランは、全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、202の単一遺伝子疾患を調べます。性染色体の数の異常も含めて、数えられる病気だけで320になり、1つの病気あたりは約1,700円です。5Mbを超える欠失・重複はすべての染色体が対象なので、実際にはさらに多くの変化を調べています。

🧮 1つの病気あたりで考えると

プラン 主に調べる範囲 数えた病気の数 1つの病気あたり
三大トリソミーだけを調べる検査
(仮に10万円とした場合)
13・18・21トリソミー 3 約33,333円
スタンダード
(220,000円)
13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患 14 約15,714円
プレミアム
(264,000円)
13・18・21・15・16・22トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失12種類13疾患 23 約11,478円
ダイヤモンド
(407,000円)
プレミアムの範囲+単一遺伝子56 79 約5,152円
双子マックス
(440,000円)
全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常 114+α 約3,860円
インペリアル
(550,000円)
全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常、単一遺伝子202疾患 320+α 約1,719円

※価格は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込価格です。最新の料金は料金ページをご確認ください。
※病気の数は、数の異常・微小欠失・重複・単一遺伝子疾患を1つずつ数えたものです。性染色体の数の異常は4種類(ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群)として数えています(性染色体を調べるのはスタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・インペリアル。双子マックスは調べません)。5Mbを超える構造異常は数に入れていないため、双子マックスとインペリアルは実際にはさらに多くの変化を調べています。
※「三大トリソミーだけを調べる検査」は計算のための仮の例で、特定の施設の価格ではありません。

症候群の名前でいうと、スタンダードプランから22q11.2欠失症候群、プラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群などの微小欠失を、ダイヤモンドプランとインペリアルプランではレット症候群やコルネリア・デ・ランゲ症候群など、単一遺伝子の病気の一部を調べられます。病気の数が多いほど良い検査、ということではありません。調べる範囲が広がると、陽性になる可能性も、確定検査が必要になる場面も増えます。微小欠失は数の異常より陽性的中率が低め(項目によって60〜70%程度)で、陽性なら必ず確定検査が必要です。だからこそ、検査前の遺伝カウンセリングで、ご家族に合うプランを選びます。

知的障害の遺伝的な原因で最も多いのはダウン症候群ですが、染色体の微細な欠失・重複が原因として見つかることもあります(マイクロアレイ検査で約15〜20%)[27]。当院のNIPTは、自閉症・発達障害・知的障害の原因になる染色体や遺伝子の変化の一部を調べられます。ただし、自閉症そのものを診断する検査ではなく、陰性でも自閉症・発達障害・知的障害がないとは言えません(詳しくは自閉症はNIPTでわかりますか?)。

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9. ミネルバクリニックのサポート体制

ミネルバクリニックは、臨床遺伝専門医が運営する、遺伝子検査を専門とするクリニックです。TAMや白血病の治療を行う施設ではなく、分娩も行っていません。TAMの治療と経過観察は、新生児科・小児血液の専門医が担当します。当院が担当するのは、妊娠中の検査(NIPT・確定検査)と遺伝カウンセリングです。

🏥 当院のNIPTで受けられること

項目 内容
遺伝カウンセリング 常駐する臨床遺伝専門医が、90分の受診枠の中で行います
確定検査 2025年6月から産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます
陽性のとき 陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料です
互助会 羊水検査互助会(カトレア会・8,000円)が、陽性時の確定検査の費用を補助します(補助の上限なし)。安心検査結果保障制度(6,000円)は、再検査が必要になったのに流産して再検査ができなかったときに、検査代金(諸費用を除く)を返金する制度です
来院が難しい方 オンラインNIPT(Zoomでの遺伝カウンセリングと、全国110か所の提携施設での採血。採血料は施設ごとに別にかかります)

検査の方式の違いはCOATE法とは?従来法との違いで解説しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【ピアサポートと医療情報のバランスについて】

ダウン症候群のお子さんを育てるご家族にとって、同じ経験をもつ方との交流(ピアサポート)は大きな支えになります。日々の工夫や気持ちの支えは、医療者には代わりのできないものです。

一方で、TAMのように経過の幅が大きい合併症については、ほかのお子さんの経過がそのまま当てはまるとは限りません。自然に治ったお子さんの話も、厳しい経過をたどったお子さんの話も、どちらも事実ですが、お子さんの見通しを左右するのは、診断時の状態と検査の結果です。医学的な判断は主治医や専門医に、日々の暮らしの工夫や気持ちの支えはピアサポートに、と役割を分けて頼ることが大切だと考えています。

🏥 出生前検査で調べられるのは、ダウン症候群だけではありません

ミネルバクリニックのNIPTは、スタンダードプランから13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失(6種類7疾患)を調べられます。陽性のときは確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。まだ決めていない方は、プランと料金のページからご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. TAMとは、医療用語で何の略ですか?

TAMは「一過性骨髄異常増殖症(Transient Abnormal Myelopoiesis)」の略です。ダウン症候群(ダウン症)の新生児の約5〜10%にみられる血液の病気で、白血病に似た未熟な細胞(芽球)が一時的に増えますが、多くは生後3か月ごろまでに自然に治ります。なお、医療の分野では「TAM」が腫瘍随伴マクロファージやタモキシフェンの略として使われることもあります。新生児やダウン症候群の話題で出てくるTAMは、一過性骨髄異常増殖症のことです。

Q2. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

ダウン症候群だけを調べれば大丈夫、とは言えません。TAMはダウン症候群の赤ちゃんに起こる病気ですが、出生前検査で調べられる病気はダウン症候群だけではありません。知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究では、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族は、ダウン症候群のご家族より子育てのストレスが高く、ストレスを最も強く左右していたのは知的障害の程度よりも行動の問題でした。こうした病気は三大トリソミーだけを調べる検査ではわかりません。当院ではスタンダードプランから22q11.2欠失症候群やプラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群などの微小欠失を、ダイヤモンドプラン・インペリアルプランでは単一遺伝子疾患まで調べられます。どこまで調べるかは、検査前の遺伝カウンセリングで決められます。

Q3. TAMはすべてのダウン症の子どもに発症しますか?

いいえ。TAMと診断されるのは、ダウン症候群の新生児の約5〜10%です。発症には、21トリソミーに加えて、赤ちゃんの血液の細胞にGATA1遺伝子の変化が起こることが必要です。感度の高い方法で調べると、症状のない赤ちゃんを含めて約29%にGATA1遺伝子の変異が見つかったという英国の報告があり、症状のないタイプは「サイレントTAM」と呼ばれています。

Q4. TAMの治療は必ず必要ですか?

いいえ。命にかかわる症状がなければ、治療をせずに血液検査をくり返しながら自然に治るのを待ちます。治療(少量シタラビン療法)が検討されるのは、白血球が10万/μLを超える、肝臓の働きが悪い、胸やお腹に水がたまる、胎児水腫がある、出血しやすいなど、重い症状がある場合です。治療が必要かどうかは、症状と検査結果をもとに新生児科・小児血液の専門医が判断します。

Q5. TAMが治った後も定期検査は必要ですか?

はい。TAMが治った赤ちゃんの約2割が、のちに白血病(ML-DS)を発症するためです。英国血液学会のガイドラインは、2歳までは3か月ごと、2歳から4歳までは6か月ごとの診察と血液検査(血算と血液像)を勧めています。ML-DSの発症が最も多いのは1歳台で、4歳を過ぎるとまれです。実際の間隔や期間は主治医の方針に従ってください。

Q6. ダウン症の新生児が多血症や血小板減少と言われました。TAMですか?

それだけではTAMとは言えません。ダウン症候群の新生児は、TAMでなくても血液検査の値が変わりやすく、米国の158人の研究では、生後1週間以内の検査値のうち好中球の増加が80%、血小板の減少が66%、多血症が33%でみられました。TAMかどうかは、血液中の芽球の割合(10%を超えるか)とGATA1遺伝子の検査で判断します。検査の結果は主治医に確認してください。

Q7. ダウン症の白血病(ML-DS)の初期症状は何ですか?

ML-DSはゆっくり始まることが多く、最初の変化は血液検査で血小板の数が下がってくることだとされています。血小板が減ると、あざや鼻血などの出血が目立つことがあります。ただし、症状が出る前に血液検査で見つかることが多いため、TAMを経験したお子さんには4歳ごろまでの定期的な血液検査が勧められています。気になる症状があれば、次の検査を待たずに主治医に相談してください。

Q8. ダウン症児の白血病(ML-DS)の治療成績はどうですか?

ML-DSは抗がん剤がよく効く白血病で、ダウン症候群ではない子どもの急性骨髄性白血病より弱めた治療が行われます。日本の全国規模の臨床試験(72人)では3年無イベント生存率83.3%、3年全生存率87.5%、米国の臨床試験(204人)では5年無イベント生存率89.9%、5年全生存率93.0%と報告されています。一方で、再発した場合の成績は下がります。

Q9. TAMの自然治癒はなぜ起こるのですか?

はっきりした仕組みは、まだ分かっていません。TAMは、お腹の中の赤ちゃんの肝臓で行われる造血から生じる病気と考えられています。分かっているのは、ほとんどの赤ちゃんで芽球が自然に消えること、多くは生後3か月以内に治ること、生後6か月を過ぎてから自然に治った報告はないことです。

Q10. TAMと診断されたら、どの病院で治療を受けるべきですか?

新生児集中治療室(NICU)があり、小児血液・がんを専門とする医師がいる施設(こども病院、大学病院、小児がん拠点病院など)での管理が勧められます。重い症状がある場合は、少量シタラビン療法や全身の管理が必要になるためです。治ったあとも4歳ごろまで通院が続くので、通いやすさも含めて主治医と相談してください。ミネルバクリニックはTAMや白血病の治療を行う施設ではありません。

Q11. TAMは遺伝しますか?次の子どもにも発症する可能性はありますか?

TAMの原因になるGATA1遺伝子の変化は、赤ちゃんの血液の細胞にお腹の中で新しく起こるもの(体細胞変異)で、親から受け継ぐものではありません。そのため、TAMになったお子さんがいても、それを理由に次のお子さんがTAMになりやすくなるわけではありません。ただし、ダウン症候群そのものの再発率は、標準型・転座型などの型によって違います。次の妊娠を考えるときは、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングで確認してください。

Q12. TAMは出生前に診断できますか?

NIPTや羊水検査で、TAMになるかどうかを知ることはできません。これらの検査で分かるのは、TAMの前提になるダウン症候群(21トリソミー)などです。まれに、妊娠後期の超音波検査で赤ちゃんの肝臓や脾臓の腫れ、胎児水腫が見つかり、TAMが疑われることがあります。生まれる前に診断がついているのは、新生児期に診断されるTAMの5%未満です。

まとめ

TAM(一過性骨髄異常増殖症)は、ダウン症候群の新生児の約5〜10%にみられる血液の病気です。21トリソミーと、赤ちゃんの血液の細胞に起こるGATA1遺伝子の変化が重なって発症します。

📝 TAMについてのまとめ

・TAMはダウン症候群・モザイク型21トリソミーの赤ちゃんに、生まれてすぐの時期にみられる
・多くは治療なしで、生後3か月ごろまでに自然に治る
・一部の赤ちゃんは重症化し、重い症状があるときは少量シタラビン療法を検討する
・治った赤ちゃんの約2割が、4歳ごろまでに白血病(ML-DS)を発症する
・そのため、2歳までは3か月ごと、4歳までは6か月ごとの血液検査が勧められている
・ML-DSは抗がん剤がよく効き、日本の臨床試験で3年全生存率は87.5%と報告されている

TAMの診断と治療、その後の経過観察は、新生児科・小児血液の専門医が行います。ご家族にとって大切なのは、生まれてすぐの血液検査の結果を主治医に確認することと、治ったあとも4歳ごろまで定期的な血液検査を続けることです。次の妊娠でダウン症候群の再発率が気になる方は、ダウン症は遺伝する?2人目の再発率と転座型のリスクをご覧ください。

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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。お子さんの診断・治療・経過観察については、主治医(新生児科・小児血液の専門医)にご相談ください。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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