目次
PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)は、体外受精において胚の染色体異常をスクリーニングする検査ですが、その後のNIPT(新型出生前診断)で異常が検出されるケースもあります。本記事では、PGT-Aのデメリットと、NIPTとの関係について解説します。
PGT-Aの主なデメリット
- 検査結果の限界
PGT-Aは胚の一部の細胞のみを検査するため、胚全体の状態を完全に反映しているとは限りません。そのため、正常と判断された胚でも、発生過程で異常が現れる可能性があり、NIPTなどの追加検査が必要になることがあります。 - モザイク胚の課題
PGT-Aで正常と判断された胚でも、モザイク胚(正常細胞と異常細胞が混在する胚)の場合、NIPTで陽性結果が出ることがあります。特に、PGT-Aではモザイクの割合を正確に測定することが難しく、移植後の発育に影響を与える可能性があります。 - 検査の適用範囲
PGT-Aは主に染色体数の異常(トリソミーなど)を検出するため、微細欠失や単一遺伝子疾患などの異常を検出することはできません。一方で、NIPTではより広範囲の染色体異常や遺伝子変異をスクリーニングすることができるため、PGT-Aを受けた後でも、NIPTの併用が推奨されます。 - 費用の負担
PGT-Aは高額な検査であり、1回の検査で数十万円以上の費用がかかることが一般的です。また、PGT-Aで異常が見つからなかったとしても、NIPTや追加の遺伝子検査を受ける必要があるケースもあり、最終的な費用負担がさらに増える可能性があります。 - 倫理的側面の問題
PGT-Aは胚の選別を行う検査であるため、倫理的な議論が絶えません。特に、どの異常を「適用対象」とするか、検査の結果をどのように解釈すべきかについては、国や医療機関によって異なる考え方が存在します。日本では規制が厳しく、適応対象が制限されている一方で、海外では広く実施されている国もあります。 - PGT-Aの必要性の再考
PGT-Aは、高齢の方や反復流産の経験がある方にとっては有用な検査ですが、若年層や特定の疾患を持たない方にとっては、必ずしも必要ではないケースもあります。自身の年齢や体質を考慮した上で、PGT-Aを実施するか慎重に判断することが重要です。
PGT-Aの必要性の再考
PGT-Aはすべてのカップルに必要な検査ではありません。特に以下のようなケースでは、その必要性を慎重に検討する必要があります。
- 若年層で特に不妊リスクが低い場合、PGT-Aのメリットが限定的である。
- 反復流産の経験がない場合、PGT-Aが妊娠成功率に大きく影響しない可能性がある。
- 個々の体質や遺伝的リスクを考慮し、NIPTなど他のスクリーニングと比較検討することが重要。
費用対効果の検討
PGT-Aは高額な検査であり、1回あたり数十万円の費用がかかることがあります。そのため、以下のような点を考慮して、費用対効果を検討することが重要です。
- PGT-Aを行うことで妊娠成功率がどの程度向上するのかを事前に理解する。
- PGT-A後でもNIPTや他の遺伝子検査が必要になる可能性があるため、総合的なコストを考慮する。
- 年齢や胚の状態によっては、PGT-Aの恩恵を受けにくいケースもある。
倫理的側面の理解
PGT-Aは胚の選別を行う検査であり、倫理的な問題についての議論が続いています。特に以下の点が議論の対象となることが多いです。
- 「命の選別」に関する倫理的な懸念。
- 異常と判断された胚をどのように扱うべきか。
- 医療機関ごとにPGT-Aの適用基準が異なるため、どこまで許容されるべきか。
国内外の状況比較
PGT-Aは国によって実施状況や規制が大きく異なります。以下に、日本と海外の違いを比較します。
- 日本: PGT-Aの適応範囲が制限されており、特定の条件を満たす場合のみ実施可能。
- アメリカ: 比較的自由にPGT-Aが実施されており、着床前スクリーニングが一般的に行われている。
- ヨーロッパ: 国ごとに規制が異なり、一部の国では倫理的な理由でPGT-Aが厳しく制限されている。
- アジア諸国: 日本と同様に慎重な姿勢を取る国が多いが、特定の医療機関では広範囲なスクリーニングが行われている。
検査の限界
PGT-Aは胚の染色体異常をスクリーニングする有用な方法ですが、その精度には限界があります。PGT-Aでは胚の一部の細胞を検査するため、胚全体の状態を完全に反映しているわけではありません。
- PGT-Aでは胚盤胞の外層(栄養外胚葉)の細胞を採取して分析するため、胎児になる細胞(内部細胞塊)の染色体異常を正確に評価できない可能性があります。
- 一部の異常が胚盤胞の外層にのみ存在し、胎児には影響を及ぼさないケースもあるため、PGT-Aで異常と判断された胚でも発育が可能なことがあります。
- 逆に、PGT-Aで正常と判断された胚でも、NIPTなどの出生前診断で異常が検出される場合があるため、慎重な判断が求められます。
胚への影響
PGT-Aは胚から細胞を採取するため、胚そのものにダメージを与えるリスクが指摘されています。
- 細胞を採取する過程で胚にストレスがかかり、発育が阻害される可能性がある。
- 特に、発育初期の胚はデリケートなため、細胞除去による影響が長期的な発育にどのような影響を与えるかについては、未解明の部分もある。
- 胚の一部の細胞のみを解析するため、検査結果が100%正確ではなく、誤判定による移植可否の判断ミスが生じることがある。
費用対効果
PGT-Aは高額な検査であり、実施には慎重な判断が求められます。
- 検査費用は1回あたり数十万円に及ぶため、特に若年層では費用対効果が低いと考えられる。
- 年齢や不妊の原因によっては、PGT-Aを行わなくても妊娠率に大きな影響を及ぼさないケースもある。
- PGT-Aで正常と判断された胚でも、NIPTなどの追加検査が必要になる場合があり、総合的なコストがさらに高額になる可能性がある。
NIPTとの関係と注意点
PGT-Aを受けたからといって、すべての遺伝的リスクを排除できるわけではありません。特に以下の点に注意が必要です。
- PGT-Aでは見逃される異常がNIPTで発見される可能性がある。
- NIPTはより広範囲の染色体異常を検出できるため、PGT-A後でも推奨される。また、ミネルバクリニックでは染色体異常だけでなく、主に精子側の突然変異による遺伝子の異常も検査することが可能です。
- PGT-AとNIPTの違いを理解し、適切な検査を選択することが重要。
ミネルバクリニックのNIPT
当院では、高精度なNIPTを提供しています。PGT-Aを受けた方でも、NIPTを併用することでより包括的なスクリーニングが可能です。詳細は以下のページをご覧ください。
まとめ
PGT-Aは有用な検査ですが、その限界を理解し、NIPTなどの他のスクリーニングと組み合わせることが重要です。遺伝的な不安を最小限に抑えるためにも、信頼できる情報をもとに適切な判断をしましょう。
関連コンテンツ
- NIPTとは?検査の詳細について
→ NIPTの仕組みや検査方法、検出できる異常について詳しく解説しています。 - PGT-AをしていてもNIPTを受けたほうがいい理由
→ PGT-Aでは検出できない微細欠失症候群や新生突然変異(デノボ変異)について詳しく解説し、妊娠後の出生前検査の重要性を説明しています。
PGT-Aに関する詳細な情報や、NIPTとの関連性についてさらに知りたい方は、以下の関連記事をご覧ください。
ミネルバクリニックでは、PGT-AやNIPTを通じて、妊娠を希望する方がより安心して妊娠・出産に臨めるようサポートしています。検査についてのご相談や不安がある方は、ぜひ専門の医師にご相談ください。

ミネルバクリニックでは、「健やかなお子さまを迎えてほしい」という想いを持つ臨床遺伝専門医の院長のもと、東京都港区青山にてNIPT検査を提供しています。少子化が進む現代において、より健康なお子さまを望むのは自然なことです。そのため、当院では世界最先端の特許技術を活用し、高精度かつ多様な疾患の検査を提供できる信頼性の高い検査会社を、遺伝専門医が厳選しています。さらに、全国どこからでもオンライン診療に対応し、採血はお近くの提携医療機関で受けることも可能です。
ミネルバクリニックでは、NIPTに関する無料カウンセリングを提供しています。まずはお気軽にご相談ください。
無料カウンセリングを予約する