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PGT-Aのデメリットを詳細解説!NIPTとの関係も紹介

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)は、体外受精でできた胚の染色体の数を、子宮に戻す前に調べる検査です。流産を減らすことなどを期待して行われますが、「PGT-Aで正常胚だったのにダウン症だった」「PGT-Aをやらなきゃ良かった」と検索して、このページにたどり着く方もいます。最初に結論をお伝えします。PGT-Aは胚の一部の細胞を調べる検査で、赤ちゃんの染色体や遺伝子のすべてを確かめる検査ではありません。そのため、PGT-Aを受けて妊娠しても、妊娠後の出生前検査(NIPT・確定検査)が要らなくなるわけではありません。この記事では、PGT-Aのデメリットを原著論文と学会の文書で確かめられる範囲で整理し、妊娠後の検査をどう考えればよいかまで解説します。なお、ミネルバクリニックは体外受精とPGT-Aを行っていません。妊娠後の出生前検査を担当する臨床遺伝専門医の立場から書いています。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
🧬 PGT-A・体外受精・NIPT
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤PGT-Aのデメリット8つと、それぞれについて報告されている数字
  • ➤PGT-Aで正常胚と判定されても、ダウン症候群などが見つかることがある理由
  • ➤モザイク胚を移植したときの妊娠・流産のデータと、妊娠後の検査
  • ➤PGT-Aで出産できる割合は上がるのか(国内外の臨床試験の結果)
  • ➤PGT-Aでは調べられない病気と、妊娠後のNIPT・確定検査の役割

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. PGT-Aで正常胚だったのに、ダウン症だったということはありますか?

まれですが、あります。PGT-Aで調べるのは将来胎盤になる部分の細胞を数個だけで、赤ちゃんになる部分の細胞は調べていません。正常胚と判定された胚を移植したあとに染色体の変化が見つかった割合は、移植した胚あたり0.2〜0.7%ほどと報告されています。妊娠後にNIPTや確定検査で確かめる意味があります。

🔍 Q. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

大丈夫とは言えません。PGT-Aで分かるのは主に染色体の数の変化です。一方、子育てのストレスと最も一貫して関係していたのは、お子さんの情緒や行動の問題だと報告されています。行動の問題を伴いやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患の多くは、PGT-Aでは調べられず、三大トリソミーだけの検査では調べられません。当院のNIPTは、スタンダードプランから微小欠失を、ダイヤモンドプランとインペリアルプランでは単一遺伝子疾患まで調べられます。

⚖️ Q. PGT-Aの主なデメリットは?「やらなきゃ良かった」と感じるのはどんなときですか?

結果が赤ちゃんの染色体と一致しないことがある、モザイク胚は判断が難しい、移植できる正常胚が1つも残らないことがある、費用がかかる、微小欠失や単一遺伝子疾患は調べられない、の5つが中心です。日本の全国調査では、正常胚が1個以上得られた採卵周期は38.3%でした。出産できる割合が全体として上がるかどうかは、まだはっきりしていません。

🌱 Q. 自閉症・発達障害は、PGT-AやNIPTで分かりますか?

PGT-Aでは、原因になる微小欠失や単一遺伝子の変化は基本的に調べられません。NIPTでは一部が分かります。当院のNIPTは、自閉症・発達障害・知的障害の原因になる遺伝子や染色体の変化の一部を調べられます。ただし、陰性でも自閉症や発達障害がないとは言えず、陽性のときは確定検査が必要です。

\ ダウン症候群だけで大丈夫ですか? /

PGT-Aで染色体の数を調べた方も、当院のNIPTでは、子育ての負担につながりやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患まで調べられます。どこまで調べるかは、90分の受診枠の中で臨床遺伝専門医と一緒に決められます。

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PGT-Aの主なデメリット

PGT-Aは、受精から5〜6日目まで育った胚(胚盤胞)の外側から細胞を数個とり、染色体の数に過不足がないかを調べる検査です。染色体の数が合っている胚(正常胚)を選んで移植することで、移植1回あたりの妊娠率を上げ、流産を減らすことが期待されています。検査のしくみと流れはPGT-Aとは?費用・成功率・限界で解説しています。

一方で、米国生殖医学会(ASRM)は2024年の委員会意見で、「体外受精を受けるすべての人に一律に行う検査としてのPGT-Aの価値は示されていない」とまとめています[1]。役に立つ場面がある検査ですが、限界もはっきりしています。PGT-Aのデメリットを、報告されている数字と一緒に表にまとめます。

📋 PGT-Aのデメリット一覧

デメリット どういうことか 報告されている数字
① 検査結果の限界 調べるのは将来胎盤になる部分の細胞数個。赤ちゃんになる部分と一致しないことがある 正常胚の移植後に染色体の変化が見つかった割合:移植した胚あたり0.2〜0.7%[2][3]
② モザイク胚 正常な細胞と染色体の数が違う細胞が混ざった胚。移植するかどうかの判断が難しい 日本の全国調査で、調べた胚の11.7%[4]
③ 移植できる胚が残らない 正常胚が1つも得られず、移植に進めないことがある 正常胚が1個以上得られた採卵周期は38.3%[4]
④ 出産率が上がるとは限らない 移植1回あたりの成績は上がっても、治療を始めた人全体では差が出ていない 累積の出生率:PGT-Aあり77.2%、なし81.8%[5]
⑤ 胚への影響 細胞をとる操作(生検)が胚の負担になる可能性 胚盤胞の生検では着床率に差なし(51%と54%)[6]
⑥ 費用 保険適用ではなく、胚の数だけ検査費用がかかる 先進医療の例:検査1回・胚4個で35万円[7]
⑦ 調べられない病気がある 小さな欠失・重複や、1つの遺伝子の変化は調べられない おおむね5〜20Mbより小さい変化は検出できない[8]
⑧ 倫理的な課題 胚を選ぶ検査であり、結果の受け止め方に正解がない 検査前と移植前の2回、遺伝カウンセリングが必要[9]

Mb(メガベース)はDNAの長さの単位で、1Mbは100万塩基です。数字の出典は本文の各章で説明します。

以下、元になった研究を1つずつ見ていきます。当院は体外受精とPGT-Aを行っていないため、PGT-Aを受けるかどうかの最終的な判断は、治療を受けている施設の医師とご相談ください。

検査の限界 ― PGT-A正常胚でもダウン症だったのはなぜ?

胚盤胞は、赤ちゃんになる「内細胞塊(ないさいぼうかい)」と、胎盤になる「栄養外胚葉(えいようがいはいよう)」に分かれています。PGT-Aで調べるのは栄養外胚葉から採った数個の細胞で、赤ちゃんになる内細胞塊は調べていません。米国産科婦人科学会(ACOG)は、栄養外胚葉の結果が内細胞塊の遺伝的な状態を反映しないことがあり、着床前検査が陰性でも、遺伝的な異常のない赤ちゃんが生まれる保証にはならないと述べています[10]。

正常胚の判定は、どのくらい当たっているのか

PGT-Aの正確さを調べた研究をまとめた2025年の解析では、正常胚と判定された胚を移植したあとに、妊娠組織や赤ちゃんで染色体の変化が見つかった割合は0.2%(95%信頼区間0.0〜0.7%、42研究・移植した胚20,196個)でした[2]。ただし、遺伝学的な検査で確かめられた妊娠は1,367件だけです。着床しなかった胚や、検査を受けていない妊娠は確かめようがないため、著者らは実際の割合がこれより高い可能性を指摘しています[2]。

正常胚1個の移植1,997回を調べた研究では、次世代シーケンサー(NGS)を使った検査(1,151回)の誤りは、移植した胚あたり0.7%、継続妊娠・出産あたり0.1%でした。著者らは、体外受精とPGT-Aを受けるすべての人に出生前スクリーニングを勧めています[3]。

また、胚全体や内細胞塊を調べ直して判定を確かめた研究(40研究)では、正常胚の判定が合っていた割合は94.2%、染色体数の異常の判定が合っていた割合は89.2%、モザイクの判定が合っていた割合は52.8%でした[2]。正常胚の判定は高い割合で合っていますが、100%ではありません。

PGT-A正常胚のあとにダウン症候群だった報告

2026年には、PGT-Aで正常胚と判定された胚を移植し、妊娠10週のNIPTも低リスクだった40歳の女性から、21トリソミー(ダウン症候群)の赤ちゃんが生まれたという症例が報告されています。生まれたあとの染色体検査で、モザイクではない21トリソミーと確認されました[11]。著者らは、PGT-AもNIPTもリスクを下げる検査であって、ゼロにする検査ではないと結論しています[11]。

こうした報告はまれです。それでも、「正常胚だった」という結果は「可能性が低い」という意味で、診断が確定したという意味ではありません。赤ちゃんの染色体を直接確かめられるのは、妊娠後の確定検査(絨毛検査・羊水検査)だけです。

結果が食い違う理由

  • モザイク:胚の中に、染色体の数が違う細胞が一部だけ混ざっていると、採った数個の細胞がたまたま正常で、残りの部分に変化があることがあります[10]。
  • 検査の検出限界:一般的なNGSによるPGT-Aは、割合の低いモザイクや、決められた大きさより小さい変化を検出できません[8]。
  • 偽陽性・偽陰性:検査である以上、どちらの誤りも起こりえます[10]。

逆に、育つはずの胚を「異常」と判定してしまうこともある

染色体が1本まるごと多い・少ないという判定は、かなり信頼できます。判定を知らせずに胚を移植した研究では、染色体数の異常と判定された胚102個を移植して、妊娠が続いた例は1つもありませんでした[12][1]。

一方、染色体の一部だけが多い・少ないという判定(部分的な異数性)は、当たる割合が下がります。同じ胚から複数回細胞を採って調べた研究では、内細胞塊と一致した割合は、染色体まるごとの異常で97.18%、部分的な異常では70.8%でした[13]。ASRMは、出産に至った胚76個の保存検体をあとからPGT-Aで調べると、6個に1個(17.1%)がモザイクや誤った異常判定で移植されなかった計算になるという研究を紹介しています[1]。

💡 用語解説:栄養外胚葉(えいようがいはいよう)と内細胞塊(ないさいぼうかい)

胚盤胞の外側をつくる細胞の層が栄養外胚葉で、将来は胎盤になります。内側にある細胞のかたまりが内細胞塊で、赤ちゃんの体になります。PGT-Aは、赤ちゃんになる部分を傷つけないように、栄養外胚葉から細胞を採って調べます。そのため、結果は「胎盤になる部分の一部」の染色体を表しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「正常胚」は「異常なしの保証」ではありません】

「PGT-Aで正常胚だったのに」という言葉には、検査を信じて治療を続けてきた時間の重さがあると思います。臨床遺伝専門医として大切だと考えているのは、検査の名前や「正常」という言葉ではなく、その検査が「どの細胞の、何を、どの大きさまで」調べたのかを知ることです。

PGT-Aは、胎盤になる部分の細胞を数個とって、染色体の数を調べています。赤ちゃんになる部分の細胞は調べていませんし、小さな欠失や1つの遺伝子の変化も調べていません。これは検査の欠陥ではなく、検査の設計です。調べていない範囲を、妊娠後のどの検査で確かめるかを決めておくことが、結果に振り回されないための備えになると考えています。

モザイク胚の課題

モザイク胚は、染色体の数が正常な細胞と、数が違う細胞が混ざっている胚です。日本産科婦人科学会の細則では、PGT-Aの結果を、A(正常)、B(モザイク)、C(染色体数の異常や構造の異常)、D(判定不能)の4つに分けています[9]。日本の全国調査では、調べた胚42,529個のうち、Aが25.5%、Bが11.7%、Cが61.7%、Dが1.1%でした(対象の平均年齢は39.3歳)[4]。

モザイク胚を移植するとどうなるか

モザイクの割合が低い胚は、正常胚と変わらない結果が報告されています。モザイクの割合が20〜50%の胚を、判定を知らせずに移植した試験では、赤ちゃんが生まれた割合は正常胚43.4%、低い割合のモザイク(20〜30%)42.9%、中くらいのモザイク(30〜50%)42.0%で、流産の割合も12.0%、11.0%、12.7%と差がありませんでした[14]。

一方、モザイクの割合が高い胚まで含めた2,031回の移植では、着床した割合はモザイク胚45.0%、正常胚59.1%、着床後に妊娠が続かなかった割合は22.2%と8.9%でした[15]。妊娠後に出生前検査を受けた250件のうち、胚で見つかったモザイクが赤ちゃんにも続いていたのは3件(1.2%)でした[15]。

つまり、モザイク胚は正常胚より妊娠しにくく流産しやすいものの、妊娠が続いた場合、多くは赤ちゃんに同じ変化が見つかっていないということです。欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)は、モザイク胚を最初から染色体数の異常と同じに扱うことや、モザイクの割合が低い胚を廃棄することは適切でないとしています[16]。

モザイク胚で妊娠したあとの検査

ESHREは、着床前検査のあとに妊娠したすべての女性に、出生前診断についての遺伝カウンセリングを提供するよう勧めています[16]。国際着床前遺伝学的診断学会(PGDIS)は、妊娠14週以降の羊水検査が、赤ちゃんの染色体を最もよく反映するとしています。絨毛検査とNIPTは胎盤の細胞を見ているため、胎盤と赤ちゃんで染色体が食い違うと、赤ちゃんの状態を表さないことがあるからです[17]。ACOGも、モザイク胚を移植して妊娠した場合には、絨毛検査か羊水検査を強く勧めるとしています[10]。

胎盤と赤ちゃんで染色体が食い違うしくみはNIPTのモザイクとは?胎盤限局性モザイクが偽陽性・偽陰性を起こすしくみで、胚の見た目の評価(グレード)と染色体の関係は胚盤胞グレードと染色体異常の本当の関係で解説しています。

PGT-Aの必要性の再考 ― 妊娠率・出産率は上がるのか

PGT-Aは、すべてのご夫婦に必要な検査ではありません。期待されているのは「移植1回あたりの妊娠率を上げること」と「流産を減らすこと」ですが、治療を始めた人のうち、最終的に出産できる人が増えるかどうかは別の話です。主な臨床試験の結果を表にまとめます。

📊 PGT-Aの効果を調べた主な臨床試験

研究 対象 結果
STAR試験(米国ほか)[18] 25〜40歳の661人。生検できる胚盤胞が2個以上 移植1回あたりの妊娠継続:PGT-Aあり50%、なし46%(差なし)。治療を始めた人全体では41.8%と43.5%(差なし)。35〜40歳に限ると、移植1回あたり51%と37%
中国の多施設試験[5] 20〜37歳の1,212人。良好な胚盤胞が3個以上 1年間・移植3回までの累積の出生率:PGT-Aあり77.2%、なし81.8%。流産はPGT-Aあり8.7%、なし12.6%
日本の予備試験[19] 35〜42歳の171人。流産をくり返した方と、移植しても妊娠しなかった方 患者さんあたりの出生率は、流産をくり返した方で26.8%と21.1%、妊娠しなかった方で35.7%と26.0%(どちらも差なし)。移植1回あたりでは52.4%と21.6%、62.5%と31.7%でPGT-Aありが高い

「差なし」は統計的に意味のある差が認められなかったという意味です。

3つの試験に共通しているのは、移植1回あたりの成績は上がっても、治療を始めた人全体でみると出産できる割合は変わらなかったことです。日本の予備試験の著者は、PGT-Aは患者さんあたりの出生率を上げず、流産率も下げなかったと結論しています[19]。ASRMも、流産を減らす効果は「はっきりしない」としたうえで、不妊治療を受けるすべての人にPGT-Aを一律に行うことは勧められないとしています[1]。

PGT-Aの正常胚を移植したときの妊娠率・流産率

日本産科婦人科学会の全国調査(移植6,080回)では、移植1回あたりの臨床妊娠率は68.8%、妊娠12週まで続いた割合は56.3%、妊娠あたりの流産率は10.4%でした[4]。正常胚を移植しても、妊娠が続くのは半分強で、およそ10回に1回は流産になります。この調査にはPGT-Aを受けない比較のグループがなく、著者らは「累積の出生率を上げるかどうかは、まだ分からない」と述べています[4]。

移植できる胚が1つも残らないことがある

同じ全国調査では、生検を行った採卵周期のうち、正常胚が1個以上得られたのは38.3%でした。残りの61.7%では、染色体数の異常の胚かモザイク胚しか得られていません[4]。日本の予備試験でも、PGT-Aを受けたグループで行われた移植は、流産をくり返した方41人で21回、妊娠しなかった方42人で24回でした[19]。年齢が上がるほど正常胚の割合は下がります[4]。

「PGT-Aをやらなきゃ良かった」と感じやすい4つの場面

ここまでのデータから、PGT-Aを受けたあとに後悔につながりやすい場面は、次の4つに整理できます。

  • 移植できる胚がなくなった:採卵と検査の費用をかけたのに、移植に進めなかった場合です。
  • モザイク胚と言われて迷った:移植するか、次の採卵をするか、答えが1つに決まらない場合です。
  • 正常胚を移植しても妊娠しなかった・流産した:正常胚でも、妊娠が続くのは半分強です。
  • 妊娠後に、PGT-Aでは調べていない病気が見つかった:微小欠失や単一遺伝子の変化は、PGT-Aの対象外です。

どれも、検査を受ける前に「起こりうること」として知っていれば、受け止め方が変わります。4つ目にあたる実例は、PGT-Aのデメリットとは?体外受精で妊娠した女性の実体験で紹介しています。

日本でPGT-Aの対象になる方

日本産科婦人科学会の細則では、PGT-Aの対象を、①体外受精・胚移植の不成功をくり返している不妊症のご夫婦、②流産・死産をくり返している不育症のご夫婦、③女性が高年齢の不妊症のご夫婦(2025年9月の時点では35歳以上が目安)としています[9]。①②の「くり返している」は、連続していなくても2回以上あれば対象になります[20]。ご夫婦のどちらかに染色体の構造の変化(均衡型転座など)がある場合は、別の検査(PGT-SR)の対象です[9]。

胚への影響

PGT-Aでは、胚から細胞を採ります(生検)。この操作が胚の負担になるかどうかは、採る時期によって違います。同じ患者さんの胚を2つ移植し、片方だけ生検した試験では、受精3日目ごろ(分割期)の生検では着床して育った割合が30.4%と50%で、生検した胚のほうが低くなりました。一方、胚盤胞の時期の生検では51%と54%で、差はありませんでした[6]。現在のPGT-Aが胚盤胞で行われているのは、このためです。

別の試験でも、胚盤胞を生検したグループと生検していないグループで、着床して育った割合は47.9%と45.8%で差がありませんでした[12]。ただし、日本産科婦人科学会は「生検による胚へのダメージが着床率の低下や流産率の上昇を起こす可能性はある」と説明しており[20]、ASRMも栄養外胚葉の生検の影響は十分に分かっていないとしています[1]。生検の技術は施設や担当者によって差が出る点にも注意が必要です。

また、生検しても結果が出ないことがあります。ASRMによると、判定できない結果は0.86〜3.8%で起こります[1]。その場合にどうするか(もう一度生検するかどうかなど)は、治療を受けている施設と決めることになります。

妊娠中・出産への影響

着床前検査を受けた妊娠では、通常の体外受精・顕微授精の妊娠と比べて、妊娠高血圧症候群が多かったという解析があります(すべての種類の着床前検査と、生検の時期をまとめた解析)[21]。一方、PGT-Aと胚盤胞の生検に絞って12の研究・56,113人の出生をまとめた2026年の解析では、妊娠高血圧症候群、早産、低出生体重などに意味のある差は認められませんでした[22]。結論はまだ一致しておらず、著者らも、まれな合併症についてはさらに研究が必要だとしています[22]。

費用対効果の検討

PGT-Aは、公的医療保険の対象になっていません。一部の大学病院では、国が認めた「先進医療B」として行われており、その場合は保険診療の体外受精と組み合わせて受けられます[7][23]。厚生労働省の資料では、先進医療として行う場合の検査費用は、検査1回・胚4個で35万円とされています(2025年に告示された徳島大学病院の例)[7]。

先進医療を行っている施設以外では、PGT-Aは自費診療です。日本では、保険診療と保険外の診療を組み合わせることは原則として認められておらず、組み合わせると全体が自由診療の扱いになります[23]。このため、自費でPGT-Aを受けると、採卵から移植までの費用も自費になるのが原則です。制度や金額は変わることがあるので、治療を受ける施設で必ず確認してください。

費用を考えるときは、次の3点を確かめておくと判断しやすくなります。ASRMも、治療費や保険の仕組みが施設や地域で大きく違うため、PGT-Aの費用対効果は一律には示しにくいとしています[1]。

  • 検査費用は胚1個ごとにかかるのか、生検や凍結の費用は別なのか
  • 先進医療として受けられる施設か、すべて自費になる施設か
  • 正常胚が1つも得られなかった場合に、次にどうするか(もう一度採卵するのか、モザイク胚を移植するのか)

そして、PGT-Aを受けても、妊娠後の出生前検査の費用は別に必要になることがあります。次の章以降で説明するとおり、PGT-Aは妊娠後の検査の代わりにはならないからです。

倫理的側面の理解

PGT-Aは、移植する胚を選ぶための検査です。そのため、「命の選別にあたるのではないか」という議論が続いています。モザイク胚や、性染色体の数に変化がある胚のように、妊娠が続く可能性がある胚をどう扱うかについて、1つの正解はありません。日本産科婦人科学会も、染色体のモザイクなどが疑われる胚は、妊娠が続く可能性があるのに移植に選ばれにくくなることを、検査の課題として挙げています[20]。

こうした点をふまえ、日本産科婦人科学会の細則は、検査を受ける前と、結果が出て胚を移植する前の2回、遺伝カウンセリングを行うことを求めています[9]。結果を聞いてから考えるのではなく、検査の前に「モザイク胚だったらどうするか」「正常胚がなかったらどうするか」をご夫婦で話し合っておくことが大切です。遺伝カウンセリングの役割は遺伝カウンセリングとはで解説しています。

国内外の状況比較

PGT-Aの位置づけは、国や学会によって違います。学会の文書で確かめられる範囲を表にまとめます。

🌏 PGT-Aについての国内外の学会の考え方

国・地域 学会の文書 内容
日本 日本産科婦人科学会の細則[9] 対象を、胚移植の不成功をくり返す方、流産・死産をくり返す方、高年齢の不妊症の方に限っている。公的医療保険の対象外で、一部の施設で先進医療として行われている[7]
米国 ASRMの委員会意見(2024年)[1]、ACOGの委員会意見(2020年)[10] 不妊治療を受けるすべての人に一律に行うことは勧められない。PGT-Aを受けた人にも、ほかの妊婦さんと同じように出生前の検査を提案する
欧州 ESHREの推奨(2020年・2022年)[8][16] 検査で検出できない変化を明示するよう求めている。モザイク胚を最初から染色体数の異常と同じに扱わない

どの学会も、PGT-Aを「受ければ安心できる検査」とは位置づけておらず、限界を説明したうえで選ぶ検査としています。

NIPTとの関係と注意点 ― PGT-Aを受けても出生前検査は要らなくならない

この記事の結論です。PGT-Aを受けて妊娠しても、妊娠後の出生前検査(NIPT・確定検査)が要らなくなるわけではありません。ACOGは、PGT-Aを受けたすべての人に、ほかの妊婦さんと同じように、染色体の数の異常についての確定検査またはスクリーニング検査を提案すべきだとしています[10]。理由は2つあります。1つは、ここまで見てきたとおりPGT-Aの結果が赤ちゃんの染色体と一致しないことがあること。もう1つは、PGT-Aがそもそも調べていない病気があることです。

PGT-Aでは調べられない病気

ESHREは、一般的なNGSによるPGT-Aでは、決められた大きさ(検証に使われるのは5〜20Mb)より小さい変化、染色体のセットがまるごと多い状態(三倍体など)、割合の低いモザイクを検出できないとしています[8]。ACOGも、現在の着床前検査はすべての微小欠失・微小重複を検出できるわけではなく、新しく起きた遺伝子の変化(新生突然変異)も検出しないと明記しています[10]。

🔬 PGT-A・NIPT・確定検査の違い

PGT-A NIPT 確定検査(絨毛検査・羊水検査)
受ける時期 胚を移植する前 妊娠中(当院は妊娠9週から。妊娠6〜8週は臨床研究) 妊娠中(絨毛検査のほうが早い時期に、羊水検査は妊娠15週ごろ以降に行うのが一般的)
調べるもの 胚の、胎盤になる部分の細胞数個 お母さんの血液に流れている胎盤由来のDNA 絨毛(胎盤の組織)または羊水中の赤ちゃん由来の細胞
分かること 染色体の数の変化と、大きな部分的な過不足 プランにより、染色体の数の変化、微小欠失・重複、単一遺伝子の変化 染色体の数と構造。マイクロアレイ検査を加えると微小欠失・重複も
限界 赤ちゃんになる部分は調べていない。小さな欠失や単一遺伝子は対象外 スクリーニング検査。陽性のときは確定検査が必要 おなかに針を刺して行う検査。当院では主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出る

3つの検査は、時期も、調べる細胞も、分かる範囲も違います。PGT-Aは移植する胚を選ぶための検査、NIPTと確定検査は妊娠している赤ちゃんについて知るための検査で、役割が重なっていません。着床前診断とNIPTの違いは着床前診断でダウン症は防げる?NIPTとの違いと限界で、体外受精で妊娠したあとにどこまで調べるかは体外受精後の染色体異常リスクと拡大NIPTの必要性で詳しく解説しています。

単一遺伝子の変化は、PGT-Aでは分からない

PGT-Aは染色体の「数」を見る検査なので、1つの遺伝子の中で起きた変化は調べていません。こうした単一遺伝子疾患は1つひとつはまれですが、わずか30遺伝子・25疾患を合わせただけでも、約600人に1人(0.17%)の頻度になると報告されています[24][25]。これは、ダウン症候群の出生頻度(全体で約700人に1人)と同じくらいの数字です。当院のインペリアルプランでは、最大155遺伝子のde novo変異を対象にしています(ダイヤモンドプランは56遺伝子)。

新しく起きる遺伝子の変化(de novo変異)は、父親の年齢が1歳上がるごとに約2個ずつ増えると報告されています[26]。体外受精では、ご夫婦の年齢が高いことも少なくありません。お母さんの年齢で増える染色体の数の変化をPGT-Aで調べていても、お父さんの年齢で増える遺伝子の変化は、別の検査でないと分かりません。インペリアルプランと同じ155遺伝子・202疾患を対象にした研究(超音波検査で異常があった妊娠750例)では、陽性的中率96.9%、感度100%、特異度99.9%でした[27]。

PGT-AのあとのNIPTで陽性が出たら

正常胚を移植した妊娠では、もともと染色体の数の変化がある可能性が低いため、NIPTで陽性が出たときに本当に陽性である割合(陽性的中率)は下がります。正常胚1個を移植してNIPTを受けた1,139人の研究では、陽性は8人で、確定検査で本当に染色体の変化があったのは1人でした[28]。

これは「PGT-AのあとのNIPTは意味がない」ということではありません。陽性が出たら、確定検査で確かめてから考えるということです。当院では、確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられます。反対に、NIPTが陰性でも、まれですが偽陰性の可能性はあります[11]。NIPTの精度の考え方はNIPTの精度・確率は?感度・特異度と陽性的中率で解説しています。

自閉症・発達障害・知的障害もNIPTで一部わかる ― PGT-Aでは調べられない範囲

不妊治療を経て授かった赤ちゃんの発達を心配するのは、自然なことです。自閉症・発達障害・知的障害の原因はさまざまで、多くは特定できませんが、一部は染色体や遺伝子の変化で起こります。知的障害の遺伝的な原因で最も多いのはダウン症候群です。そのほかに、染色体のごく小さな欠失や重複が原因として見つかることがあり、発達の遅れや知的障害、自閉スペクトラム症のある方を染色体マイクロアレイ検査で調べると、約15〜20%で原因が見つかります[29]。

この小さな欠失・重複と、1つの遺伝子の変化は、PGT-Aでは基本的に調べられません。一部の自閉症・発達障害・知的障害の原因は、当院のNIPTで分かります。

ダウン症候群だけを調べればよいわけではない

出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんとご家族の暮らしに大きくかかわりますが、中身は病気によって違います。たとえば、自閉スペクトラム症の特徴を伴う割合は、レット症候群61%、コルネリア・デ・ランゲ症候群43%、アンジェルマン症候群34%、CHARGE症候群30%、ダウン症候群16%、22q11.2欠失症候群11%と報告されています[30]。ダウン症候群は、出生前検査で調べるほかの病気と比べると、この割合が少ないほうです。

ご家族の子育てのストレスを比べた研究をまとめた総説では、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群などのご家族は、ダウン症候群のご家族よりストレスが高く、ストレスと最も一貫して関係していたのは、お子さんの情緒や行動の問題でした[31]。スミス・マゲニス症候群とプラダー・ウィリー症候群は当院のすべてのプランで、ウィリアムズ症候群はインペリアルプランと双子マックスプランで調べられます。PGT-Aで染色体の数を調べたあとも、どこまで調べるかを考える意味があります。

🧩 当院のNIPTで調べられる範囲(プラン別)

プラン 微小欠失・重複 単一遺伝子 自閉症・発達障害・知的障害を伴うことがある主な病気
スタンダード
(単胎・双胎)
6種類7疾患 ― 22q11.2欠失症候群、プラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群、スミス・マゲニス症候群、1p36欠失症候群
プレミアム
(単胎のみ)
12種類13疾患 ― 上の5つに加えて、9p欠失症候群、ジェイコブセン症候群、18q欠失症候群など
ダイヤモンド
(単胎のみ)
12種類13疾患 56遺伝子 プレミアムの範囲に加えて、レット症候群、コルネリア・デ・ランゲ症候群、CHARGE症候群、ソトス症候群
双子マックス
(単胎・双胎)
92種類+5Mbを超える構造異常 ― 上の微小欠失に加えて、ウィリアムズ症候群、16p11.2欠失・重複など
インペリアル
(単胎のみ)
92種類+5Mbを超える構造異常 最大155遺伝子・202疾患 上のすべてに加えて、フェラン・マクダーミッド症候群、ピット・ホプキンス症候群など

ただし、NIPTにも限界があります。NIPTは自閉症そのものを診断する検査ではありません。陽性のときは確定検査が必要で、微小欠失・重複は染色体の数の異常より陽性的中率が低め(項目によって60〜70%程度)です。陰性でも、自閉症・発達障害・知的障害がないとは言えません。脆弱X症候群のようにNIPTでは調べられない原因もあり、症状の程度を予測することもできません。詳しくは自閉症はNIPTでわかりますか?をご覧ください。

\ PGT-Aで調べていない範囲を、妊娠後に確かめたい方へ /

PGT-Aでは調べられない微小欠失症候群や、一部の自閉症・発達障害・知的障害の原因まで、当院のNIPTで調べられます。陽性の場合も、確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられます。

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ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ

PGT-Aで染色体の数を調べた方ほど、「ダウン症候群はもう調べたから」と、妊娠後の検査を範囲の狭いものにしがちです。けれども、出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんとご家族の暮らしに大きくかかわるものです。前の章で見たとおり、子育てのストレスと関係が深い行動の問題を伴いやすい病気には、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患が多く含まれます[31]。三大トリソミーだけを調べる検査では、これらの病気は調べられません。

体外受精とPGT-Aにすでに費用をかけてきた方にとって、検査の値段は切実です。そこで、値段を「調べられる病気の数」で割って考えてみます。三大トリソミーだけを調べる検査を仮に10万円とすると、1つの病気あたりは約3万3千円です。当院のインペリアルプランは、全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、202の単一遺伝子疾患を調べるので、数えられる病気だけで320になり、1つの病気あたりは約1,700円です。

プラン 主に調べる範囲 数えた病気の数 1つの病気あたり
三大トリソミーだけを調べる検査
(仮に10万円とした場合)
13・18・21トリソミー 3 約33,333円
スタンダード
(220,000円)
13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患 14 約15,714円
プレミアム
(264,000円)
13・18・21・15・16・22トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失12種類13疾患 23 約11,478円
ダイヤモンド
(407,000円)
プレミアムの範囲+単一遺伝子56 79 約5,152円
双子マックス
(440,000円)
全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常 114+α 約3,860円
インペリアル
(550,000円)
全常染色体の数の異常、性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常、単一遺伝子202疾患 320+α 約1,719円

※価格は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込価格です。最新の料金は料金ページをご確認ください。
※病気の数は、数の異常・微小欠失・重複・単一遺伝子疾患を1つずつ数えたものです。性染色体の数の異常は4種類(ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群)として数えています。5Mbを超える構造異常は数に入れていないため、双子マックスとインペリアルは実際にはさらに多くの変化を調べています。
※「三大トリソミーだけを調べる検査」は計算のための仮の例で、特定の施設の価格ではありません。

調べられる病気の数が多いほど良い検査、というわけではありません。調べる範囲が広がると、陽性になる可能性も、確定検査が必要になる場面も増えます。PGT-Aのあとは陽性的中率が下がることも、先ほど説明したとおりです。だからこそ、検査前の遺伝カウンセリングでプランを選びます。90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、どのプランが合うかを一緒に考えます。

ミネルバクリニックのNIPT

ミネルバクリニックは体外受精とPGT-Aを行っていませんが、体外受精で妊娠した方の出生前検査を担当しています。PGT-Aを受けた方に知っておいていただきたい当院の体制は、次のとおりです。

  • 受けられる時期:妊娠9週から。妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。早い週数では、赤ちゃん由来のDNAが少なく、再検査になることがあります。
  • 検査前:90分の受診枠の中で、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行います。PGT-Aの結果(正常胚・モザイク胚)をふまえて、調べる範囲を決めます。
  • 結果まで:基本は10〜14日です。インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間かかります。
  • 陽性のとき:陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料です。確定検査(絨毛検査・羊水検査)も院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。
  • 費用の備え:羊水検査互助会(カトレア会・8,000円)は、陽性のときの確定検査の費用を、上限なしで補助します。安心検査結果保障制度(6,000円)は、再検査が必要になったのに流産して再検査ができず、結果が出なかったときに検査代金(諸費用を除く)を返金する制度です。
  • 遠方の方:オンラインNIPTでは、Zoomで遺伝カウンセリングを受け、全国110か所の提携施設で採血できます。

モザイク胚を移植して妊娠した方は、NIPTだけでなく、羊水検査を視野に入れて計画を立てることをお勧めします。NIPTと絨毛検査は胎盤の細胞を見ているためです。確定検査については羊水検査・絨毛検査のページで説明しています。ご予約はWEBのほか、NIPT専用ダイヤル(03-3408-3768)でも受け付けています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【検査を重ねることは、疑うことではありません】

「PGT-Aを受けたのに、また検査を受けるのか」と感じるのは、自然なことです。けれども、PGT-Aと妊娠後の検査は、同じものを二度調べているわけではありません。PGT-Aは移植する胚を選ぶために、胎盤になる細胞の染色体の数を見ています。妊娠後の検査は、いま育っている赤ちゃんについて、PGT-Aが見ていない範囲まで確かめます。役割が違う検査を組み合わせることは、前の検査を疑うことではないと考えています。

一方で、どこまで調べるかに「これが正しい」という答えはありません。調べる範囲を広げれば、陽性が出て確定検査を考える場面も増えます。大切なのは、検査の名前で選ぶのではなく、何が分かって何が分からないのかを知ったうえで、ご夫婦で決めることだと考えています。そのための時間を、検査の前にとっていただきたいのです。

まとめ

  • PGT-Aは、胎盤になる部分の細胞を数個調べる検査です。正常胚と判定されても、妊娠後に染色体の変化が見つかることがまれにあります。
  • モザイク胚は判断が難しく、妊娠した場合は羊水検査が勧められています。
  • 移植1回あたりの成績は上がっても、治療を始めた人全体で出産できる割合が上がるとは示されていません。正常胚が1つも得られないこともあります。
  • 微小欠失・重複や単一遺伝子の変化は、PGT-Aでは基本的に調べられません。
  • PGT-Aを受けて妊娠しても、妊娠後の出生前検査(NIPT・確定検査)が要らなくなるわけではありません。陽性が出たら、確定検査で確かめてから考えます。

🏥 PGT-Aで調べていない範囲を、妊娠後に確かめるために

ダウン症候群だけでなく、PGT-Aでは調べられない微小欠失症候群や、一部の自閉症・発達障害・知的障害の原因まで、当院のNIPTで調べられます。臨床遺伝専門医が常駐し、陽性の場合も確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられます。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。まだ決めていない方は、料金とプランのページで調べられる範囲を見比べてみてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. PGT-Aで正常胚と言われたのに、ダウン症だったということはありますか?

まれですが、あります。PGT-Aは将来胎盤になる部分の細胞を数個調べる検査で、赤ちゃんになる部分の細胞は調べていません。正常胚と判定された胚を移植したあとに染色体の変化が見つかった割合は、移植した胚あたり0.2〜0.7%ほどと報告されています。2026年には、PGT-Aで正常胚、NIPTも低リスクだった妊娠で、21トリソミーの赤ちゃんが生まれた症例も報告されています。PGT-AもNIPTもリスクを下げる検査で、ゼロにする検査ではありません。

Q2. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

大丈夫とは言えません。PGT-Aで分かるのは主に染色体の数の変化です。ご家族の子育てのストレスと最も一貫して関係していたのは、お子さんの情緒や行動の問題だと報告されています。行動の問題を伴いやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患の多くは、PGT-Aでは調べられず、三大トリソミーだけの検査では調べられません。当院のNIPTは、スタンダードプランからプラダー・ウィリー症候群やスミス・マゲニス症候群などの微小欠失を、ダイヤモンドプランとインペリアルプランでは単一遺伝子疾患まで調べられます。

Q3. 「PGT-Aをやらなきゃ良かった」と後悔するのは、どんなときですか?

移植できる正常胚が1つも残らなかったとき、モザイク胚と言われて移植するか迷ったとき、正常胚を移植しても妊娠しなかった・流産したとき、妊娠後にPGT-Aでは調べていない病気が見つかったとき、の4つが代表的です。日本の全国調査では、正常胚が1個以上得られた採卵周期は38.3%で、正常胚を移植しても妊娠あたり10.4%は流産していました。検査の前に、起こりうることとして知っておくことが大切です。

Q4. PGT-Aの正常胚を移植したときの妊娠率と流産率はどのくらいですか?

日本産科婦人科学会の全国調査(移植6,080回)では、移植1回あたりの臨床妊娠率は68.8%、妊娠12週まで続いた割合は56.3%、妊娠あたりの流産率は10.4%でした。米国の臨床試験でも、移植1回あたりの妊娠継続は約50%です。正常胚を移植しても、必ず妊娠・出産に至るわけではありません。

Q5. モザイク胚と言われました。移植しても大丈夫ですか?

モザイクの割合が低い胚(20〜50%)は、正常胚と同じくらいの割合で赤ちゃんが生まれたという臨床試験があります。割合が高い胚まで含めると、正常胚より着床しにくく、流産しやすくなります。妊娠が続いた場合、胚のモザイクが赤ちゃんに続いていたのは出生前検査を受けた250件中3件(1.2%)でした。移植するかどうかは、染色体の種類や割合によって変わるため、治療を受けている施設で遺伝カウンセリングを受けて決めてください。妊娠した場合は、羊水検査が勧められています。

Q6. PGT-Aの生検で、胚が傷つくことはありますか?

胚盤胞の時期に行う生検では、着床して育つ割合に差がなかったという臨床試験があります(生検あり51%、なし54%)。受精3日目ごろの生検では、30.4%と50%で、生検した胚のほうが低くなりました。ただし、日本産科婦人科学会は、生検による胚へのダメージが着床率の低下や流産率の上昇を起こす可能性はあると説明しています。

Q7. PGT-Aの費用はいくらですか?保険は使えますか?

PGT-Aは公的医療保険の対象ではありません。一部の大学病院では先進医療として行われており、厚生労働省の資料では検査1回・胚4個で35万円とされています。先進医療を行っている施設以外では自費診療で、採卵から移植までの費用も自費になるのが原則です。金額は施設によって違うため、治療を受ける施設で確認してください。当院はPGT-Aを行っていません。

Q8. PGT-Aを受けて妊娠しました。NIPTや羊水検査は必要ですか?

PGT-Aを受けても、妊娠後の出生前検査が要らなくなるわけではありません。米国産科婦人科学会は、PGT-Aを受けたすべての人に、ほかの妊婦さんと同じように出生前の検査を提案すべきだとしています。PGT-Aの結果が赤ちゃんの染色体と一致しないことがあるうえ、微小欠失や単一遺伝子の変化はPGT-Aで調べていないからです。モザイク胚を移植した場合は、羊水検査が勧められています。

Q9. PGT-AやNIPTで、自閉症や発達障害は分かりますか?

PGT-Aでは、原因になる微小欠失や単一遺伝子の変化は基本的に調べられません。NIPTでは一部が分かります。当院のNIPTは、自閉症・発達障害・知的障害の原因になる遺伝子や染色体の変化の一部を調べられます。ただし、NIPTは自閉症そのものを診断する検査ではなく、陰性でも自閉症や発達障害がないとは言えません。陽性のときは確定検査が必要です。

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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。PGT-Aを受けるかどうかは治療を受けている施設の医師と、妊娠後の出生前検査については、検査前の遺伝カウンセリングでご確認ください。ミネルバクリニックは体外受精・PGT-Aを行っていません。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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