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シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)とは|症状・寿命・遺伝と遺伝子検査でわかること

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)の遺伝子検査

シャルコー・マリー・トゥース病(シャルコーマリートゥース病、CMT)は、手足の末梢神経が遺伝子の変化によって傷み、足先から筋力が落ちていく病気です。日本では人口1万人に1人という報告があり、原因の遺伝子は100種類以上わかっています。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査で原因がわかれば、ご自身の体との付き合い方だけでなく、結婚や出産、ご家族の健康を考えるときにも、ずっと使える情報になります。このページでは、症状・寿命の見通し・遺伝のしかたと、原因の59遺伝子を一度に調べる遺伝子検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)と、よく似た遺伝性の感覚・自律神経・運動ニューロパチーの原因として知られる59遺伝子を一度に調べ、どの遺伝子のどんな変化が原因かを確かめます。原因がわかると、型・遺伝のしかた・気をつけたい薬がはっきりします。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

凹足やつまずきやすさ、足先・手先の筋力低下や感覚の鈍さがあり原因を知りたい方、ご家族にCMTの方がいてご自身のことを知りたい方、結婚や妊娠を考えている方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因が見つかれば、ご家族の検査や、妊娠したときの出生前診断(絨毛検査・羊水検査は院内)まで続けて考えられます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 遺伝性ニューロパチー全体を調べる検査

1. シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)とは

シャルコー・マリー・トゥース病は、遺伝子の変化によって手足の末梢神経が傷み、足や下腿・手・前腕など体の先のほうの筋肉がゆっくりやせて弱くなっていく病気です。表記は「シャルコーマリートゥース病」とも書かれ、英語の Charcot-Marie-Tooth disease の頭文字をとってCMTと呼ばれます。病名は、この病気を報告した3人の医師の名前に由来します。

末梢神経は、脳や脊髄から手足へ伸びる神経で、筋肉を動かす命令(運動神経)と、触れた・痛い・冷たいといった感覚(感覚神経)を伝えています。神経の線維が長いほど傷みの影響を受けやすいため、いちばん遠い足先から症状が出てきます。病気のしくみや研究の状況をさらに詳しく知りたい方は、シャルコーマリートゥース病(CMT)総論もご覧ください。このページでは、検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。

何人に1人の病気か

難病情報センターによると、欧米の調査では人口2,500人に1人、日本では人口1万人に1人という報告があります。男女差は基本的にないとされています(2026年10月時点の難病情報センターの情報)。数字は調べ方によって変わるため、目安として受け取ってください。

原因:100種類以上の遺伝子、いちばん多いのはPMP22

CMTの原因の遺伝子は、100種類以上わかっています。いちばん多いのはPMP22遺伝子の変化で、難病情報センターはCMTの患者さんの約40%、遺伝性疾患の解説書GeneReviewsは「全体の最大50%」をPMP22の重複が占めるとしています[1]。このPMP22の重複による型を、CMT1Aと呼びます。

難病情報センターは、違う遺伝子の変化でも似た症状になることがある一方で、同じ遺伝子の変化でも違う症状になることがある、と説明しています。見た目の症状だけで原因の遺伝子を言い当てることは難しく、ここに遺伝子検査で原因を確かめる意味があります。

型の分け方:脱髄型・軸索型・中間型

CMTは、神経のどこが傷むかで大きく分けられます。神経の線維を包む「さや」(ミエリン・髄鞘)が傷む脱髄型(CMT1、潜性遺伝のCMT4など)、神経の線維そのもの(軸索)が傷む軸索型(CMT2)、その間の中間型、そしてX染色体上の遺伝子によるX連鎖型(CMTX)です[1]。ミエリンをつくるのはシュワン細胞という細胞で、PMP22やMPZは、この細胞がつくるミエリンの成分にかかわる遺伝子です。

どの型かによって、遺伝のしかたや症状の出方が変わります。神経伝導検査で型のあたりをつけることはできますが、最終的にどの遺伝子が原因かは、遺伝子検査で確かめます。

2. 症状:足先から始まる筋力低下と、特徴的な歩き方

CMTの症状は、足や下腿の筋肉がやせて弱くなることから始まり、ゆっくり手や前腕にも広がっていきます。感覚も少しずつ鈍くなります。進み方はとてもゆっくりで、いつ始まったのかはっきりしないことも少なくありません。

初期症状:足の形・つまずき・靴が脱げる

難病情報センターによると、最初に気づくことが多いのは、足の甲が高くなる凹足などの足の変形や、筋力低下のために靴やスリッパが脱げやすい・つまずきやすいといったことです。振り返ると、子どものころから軽い症状があったとわかることもよくあります。

歩き方の特徴:鶏歩

足首を上に反らす筋肉が弱くなると、つま先が下がったままになり、つま先を引っかけないように膝を高く上げて歩くようになります。これを鶏歩(けいほ)といい、CMTでよくみられる歩き方です。足首の捻挫や骨折を起こしやすくなることもあります。

そのほかに起こりうること

一部の方では、視神経や聴神経がかかわったり、背骨の変形が出たりすることがあります。まれに、生まれたときやそのすぐ後から症状がはっきりしている重い型もあります(難病情報センター)。どんな症状が出やすいかは原因の遺伝子によって違うため、原因がわかっていると、気をつけて見ておくべきところが絞れます。

3. 発症年齢・進み方・寿命の見通し

CMTは一般に命にかかわる病気ではなく、寿命に大きな影響を与える病気でもないとされています。一方で、症状の重さには幅があり、車椅子を使う方は約20%、寝たきりになる方は約1%とされています(2026年10月時点の難病情報センターの情報)。

何歳ごろ発症するか

難病情報センターによると、多くは0歳から20歳ごろまでに発症しますが、50〜60歳ごろにも発症のピークがあります。子どものころに気づく方も、大人になってから、あるいは中高年になってから症状がはっきりする方もいる病気です。

寿命は短くなるか

難病情報センターは、CMTは一般に致死的な病気ではなく、寿命に大きな影響を与える病気でもないとしています。GeneReviewsでも、脱髄型のCMT1で寿命は短くならないとされています[1]。多くの方は自力で、または杖を使って歩くことができ、仕事を続けている方も多い病気です。

治療と、生活の中でできること

2026年10月時点で、CMTに明確な効果があると科学的に証明された治療はありません。CMT1Aに対してアスコルビン酸(ビタミンC)を使った臨床試験も行われましたが、効果は証明されませんでした(難病情報センター)。

そのうえで、合う靴や装具、足のケア、リハビリや適度な運動で、生活の動きを保つことが勧められています。足の変形が強い場合は手術が検討されることもあり、太りすぎに気をつけることも大切です(難病情報センター)。「治す薬がないから、検査しても意味がない」ではなく、原因がわかると次に書く「避けたい薬」や、研究が進んだときの情報を受け取りやすくなります。

⚠️ 避けたい薬:ビンクリスチン

GeneReviewsは、ビンクリスチンを含むがんの化学療法は末梢神経を特に傷つけやすく、CMTを大きく悪化させることがあるとしています[1]。がんの治療を受けるとき、新しい薬を処方されるときは、CMTであることを必ず医師に伝えてください。遺伝子検査で原因がはっきりしていると、ご自身で説明するときの確かな手がかりになります。

4. 遺伝のしかた:型によって違う

CMTの遺伝のしかたには、常染色体顕性(優性)遺伝・常染色体潜性(劣性)遺伝・X連鎖遺伝の3つがあり、お子さんに受け継がれる確率は型によって違います[1]。どの型かは、原因の遺伝子がわかってはじめてはっきりします。

常染色体顕性遺伝:お子さんへは2分の1

CMT1AやCMT2Aなど多くの型は常染色体顕性(優性)遺伝です。対になった遺伝子の片方に変化があれば発症しうるため、親がこの型のCMTの場合、お子さん1人ごとに2分の1の確率で原因の変化を受け継ぎます[1]。性別には関係しません。

常染色体潜性遺伝:ご両親とも保因者なら4分の1

CMT4などは常染色体潜性(劣性)遺伝です。対になった遺伝子の両方に変化があると発症します。ご両親がともに保因者(片方だけに変化があり、症状のない方)の場合、お子さん1人ごとに、発症する確率が4分の1、保因者になる確率が2分の1、どちらでもない確率が4分の1です[1]。ご両親に症状がなくても起こりうるのが、この型の特徴です。

X連鎖遺伝:GJB1遺伝子によるCMTX1など

X染色体の上にある遺伝子が原因の型をX連鎖遺伝といいます。代表はGJB1遺伝子によるCMTX1です。男性はX染色体を1本、女性は2本もつため、親の性別とお子さんの性別によって、受け継がれる確率や症状の出方が変わります。具体的な確率は、ご家族の状況をうかがって遺伝カウンセリングでご説明します。

家族歴がなくても:新しく起きた変化と性腺モザイク

ご家族にCMTの方がいなくても、CMTになることはあります。顕性遺伝の型でも、ご本人の代で新しく起きた変化(新生突然変異・de novo)のことがあります。ただし、ご両親を調べないと「家族歴がない」とは言い切れず、GeneReviewsは親の生殖細胞にだけ変化がある可能性にも触れています[1]。

親御さんの卵子や精子のもとになる細胞(生殖細胞)の一部にだけ変化がある状態を性腺モザイクといいます。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。「新しく起きた変化だから、次のお子さんは大丈夫」と小さく見積もらないことが大切です。

⚠️ 「自分が軽いから、子どもも軽い」とは言えません

CMTは、同じ遺伝子の変化でも違う症状になることがある病気です(難病情報センター)。GeneReviewsは、顕性の中間型CMTでは、同じ家族の中で神経伝導検査の値が脱髄型の範囲になる人と軸索型の範囲になる人がいるほど、幅があるとしています[1]。親御さんが軽い症状で気づいていなくても、お子さんの症状が同じ程度になるとは限りません。だからこそ、ご家族の誰かがCMTとわかったときは、知ったうえで計画することに意味があります。

5. どんな人がこの検査を受けるとよいか

足先・手先の筋力低下や感覚の鈍さがあってCMTかどうかを確かめたい方、ご家族にCMTの方がいる方、結婚や妊娠を考えている方に向く検査です。症状や家族歴だけでは型も遺伝のしかたも決められないので、迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。

症状があり、原因を確かめたい方

凹足、つまずきやすさ、鶏歩、足先や手先の筋肉のやせ、手足の感覚の鈍さなどがあり、神経内科などでCMTが疑われている方です。原因がわからないまま病院を回る時間を、1回の検査で短くできる可能性があります。GeneReviewsは、PMP22の重複・欠失を最初に調べ、そこで見つからなければ複数の遺伝子をまとめて調べるパネル検査に進む、という順番を示しています[1]。このパネルは59遺伝子とPMP22の重複・欠失を一緒に調べるため、この2つの段階を1回の検査でまとめて行えます(第7章)。

ただし、全員に原因が見つかるわけではありません。陰性だった場合にも次の選択肢があることは、第8章でご説明します。

ご家族にCMTの方がいて、ご自身のことを知りたい方(発症前の検査)

CMTは大人になってから、ときには50〜60歳ごろに症状がはっきりすることもある病気です。症状のない方が、将来発症する可能性を調べる検査を「発症前の検査(予測的検査)」といいます。当院は、ライフステージごとに患者さんの人生をサポートするという考え方で診療しており、知りたいと願う方を拒むことはしません。遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合は、その意思を尊重して検査まで行います。知らないでいる選択も、同じように尊重します。

先が見えないまま過ごすより、わかったうえで、仕事・結婚や出産・住まい・ご家族の介護の準備など、これからの人生を計画したいと考える方もいます。英国でハンチントン病の発症前検査を受けた人の理由として最も多かったのは「不確実さを減らすため」(70.5%)でした[2]。病気は違いますが、「知って計画を立てたい」という思いは、CMTのご家族にも通じるものだと考えています。

一方で、結果を知ったあとの気持ちの変化は、陽性でも陰性でも起こりえます。当院では、結果をお伝えしたあとも、遺伝カウンセリングで相談を続けていただけます。なお、日本医学会のガイドライン(2022年改定)は、成年期以降に発症する病気の未成年者への発症前の検査は、原則として本人が成人して自分で判断できるまで延期すべきとしています。お子さんの検査については、この考え方を踏まえてご相談ください。

結婚・妊娠を考えている方

結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。CMTの当事者の方にとっても、きょうだいにCMTの方がいる方にとっても、ご自身が原因の変化をもっているか、どの型でどう遺伝するのかを妊娠の前に知っておくと、選べることが増えます。あなたの1回の検査結果は、ご両親・きょうだい・お子さんが、自分のことを考える手がかりにもなります。潜性遺伝の型なら、パートナーが同じ遺伝子の変化をもっているかを調べることもできます(第8章)。

この検査より別の検査が向いている場合

CMTを疑うなら、まずこの検査です。ただ、症状の出方によっては、次の検査のほうが向いていることがあります。比べる相手は検査の種類で、どれが合うかは遺伝カウンセリングで一緒に決めます。

🔍 症状に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
足先・手先の筋力低下と感覚の鈍さ、凹足、家族にCMTの方 このページの検査(CMT 59遺伝子パネル)
感覚の障害だけでなく、遺伝性ニューロパチー全体を広く調べたい 遺伝性ニューロパチーNGS遺伝子パネル検査
感覚はほぼ保たれ、足先の筋力低下が中心 遠位型遺伝性運動ニューロパチー遺伝子検査
神経ではなく筋肉の病気が疑われ、手先・足先から弱くなる 遠位型遺伝性ミオパチー遺伝子検査
大人になってから手足のしびれが出て、家族にアミロイドーシスの方 トランスサイレチン関連遺伝性アミロイドーシス遺伝子検査
神経・筋の病気だが型をしぼれない 神経筋疾患遺伝子パネル検査
神経以外の症状も多く、病気をしぼれない/パネルで原因が見つからなかった 全エクソーム検査(WES)

※圧迫でくり返し神経のまひが起こる場合は、PMP22の欠失による遺伝性圧脆弱性ニューロパチー(HNPP)も考えます。PMP22はこのパネルの対象遺伝子です。

\ あなたの1回の検査が、ご家族の手がかりにもなります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で受けられます(2025年6月から産婦人科を併設)。

海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。

ご家族の検査を考えている方は、遺伝カウンセリングを予約する(ご希望があれば検査まで受けられます) | どの検査がよいか迷う方へ

6. 調べる59遺伝子と、それぞれの遺伝子でわかる病気

この検査では、CMTのほか、遺伝性の感覚ニューロパチー・感覚自律神経ニューロパチー・遠位型運動ニューロパチーの原因として知られる59遺伝子をまとめて調べます。下の表は、遺伝子ごとに、関係する病気と遺伝のしかたをまとめたものです。1つの遺伝子が、CMT以外の病気にかかわっていることも少なくありません。

🧬 シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)59遺伝子パネルの対象遺伝子

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた
AARS(現在の名前:AARS1) CMT 軸索型2N(CMT2N)
発達性てんかん性脳症29型
スフェロイドを伴う遺伝性びまん性白質脳症2型
毛髪硫黄欠乏症8型(非光線過敏性)
顕性
潜性
顕性
潜性
AIFM1 X連鎖性CMT 4型(CMTX4・カウチョック症候群)
複合酸化的リン酸化欠損症6型
X連鎖難聴5型(末梢神経障害を伴う)
X連鎖性脊椎骨端骨幹端異形成症(低髄鞘性白質ジストロフィーを伴う)
X連鎖(潜性)
X連鎖(潜性)
X連鎖(潜性)
X連鎖(潜性)
ATL1 遺伝性感覚ニューロパチー1D型(HSN1D)
遺伝性痙性対麻痺3型(SPG3)
顕性
顕性
ATP7A X連鎖性遠位型遺伝性運動ニューロパチー
メンケス病
オクシピタル・ホーン症候群
X連鎖(潜性)
X連鎖(潜性)
X連鎖(潜性)
BSCL2 遠位型遺伝性運動ニューロパチー顕性13型
遺伝性痙性対麻痺17型(SPG17)
先天性全身性脂肪萎縮症2型
進行性脳症(脂肪萎縮を伴う/伴わない)
顕性
顕性
潜性
潜性
COX6A1 CMT 潜性中間型D(CMTRID) 潜性
DHTKD1 CMT 軸索型2Q(CMT2Q)
α-アミノアジピン酸・α-ケトアジピン酸尿症
顕性
潜性
DNAJB2 遠位型遺伝性運動ニューロパチー潜性5型 潜性
DNM2 CMT 顕性中間型B(CMTDIB)
CMT 軸索型2M(CMT2M)
中心核ミオパチー1型
致死性先天性拘縮症候群5型
顕性
顕性
顕性
潜性
DNMT1 遺伝性感覚ニューロパチー1E型(HSN1E)
常染色体顕性小脳性運動失調・難聴・ナルコレプシー
顕性
顕性
DYNC1H1 CMT 軸索型2O(CMT2O)
下肢優位型脊髄性筋萎縮症1型(SMALED1)
複合性皮質形成異常13型(CDCBM13)
顕性
顕性
顕性
EGR2 CMT 脱髄型1D(CMT1D)
先天性低髄鞘性ニューロパチー1型
デジェリン・ソッタス症候群
顕性
潜性
顕性・潜性
ELP1 家族性自律神経失調症(遺伝性感覚自律神経性ニューロパチー3型)
髄芽腫(なりやすさ)
潜性
顕性・潜性
FGD4 CMT 脱髄型4H(CMT4H) 潜性
FIG4 CMT 脱髄型4J(CMT4J)
筋萎縮性側索硬化症11型
ユニス・バロン症候群
両側側頭後頭多小脳回
潜性
顕性
潜性
潜性
GAN 巨大軸索ニューロパチー1型 潜性
GARS(現在の名前:GARS1) CMT 軸索型2D(CMT2D)
遠位型遺伝性運動ニューロパチー顕性5型
乳児型脊髄性筋萎縮症(ジェームス型)
顕性
顕性
顕性
GDAP1 CMT 脱髄型4A(CMT4A)
CMT 軸索型2K(CMT2K)
CMT 潜性中間型A(CMTRIA)
声帯麻痺を伴う潜性軸索型CMT
潜性
顕性・潜性
潜性
潜性
GJB1 X連鎖性CMT 1型(CMTX1)
デジェリン・ソッタス症候群
X連鎖(顕性)
顕性・潜性
GNB4 CMT 顕性中間型F(CMTDIF) 顕性
HINT1 ニューロミオトニアを伴う軸索型ニューロパチー 潜性
HSPB1 CMT 軸索型2F(CMT2F)
遠位型遺伝性運動ニューロパチー顕性3型
顕性
顕性
HSPB8 CMT 軸索型2L(CMT2L)
遠位型遺伝性運動ニューロパチー顕性2型
縁取り空胞を伴う筋原線維性ミオパチー13型
顕性
顕性
顕性
IGHMBP2 CMT 軸索型2S(CMT2S)
遠位型遺伝性運動ニューロパチー潜性1型
潜性
潜性
INF2 CMT 顕性中間型E(CMTDIE)
巣状分節性糸球体硬化症5型
顕性
顕性
KIF1A 遺伝性感覚自律神経性ニューロパチー2C型(HSN2C)
遺伝性痙性対麻痺30A型
遺伝性痙性対麻痺30B型
NESCAV症候群
潜性
顕性
潜性
顕性
KIF1B CMT 軸索型2A1(CMT2A1)
神経芽腫(なりやすさ)
褐色細胞腫(なりやすさ)
顕性
顕性
顕性
KIF5A 遺伝性痙性対麻痺10型(SPG10)
新生児難治性ミオクローヌス
筋萎縮性側索硬化症25型
顕性
顕性
顕性
LITAF CMT 脱髄型1C(CMT1C) 顕性
LMNA CMT 軸索型2B1(CMT2B1)
エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー2型
エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー3型
拡張型心筋症1A型
家族性部分性脂肪萎縮症2型
ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群
マルーフ症候群
下顎肢端異形成症A型
拘束性皮膚障害2型
心臓手症候群スロベニア型
LMNA関連先天性筋ジストロフィー
潜性
顕性
潜性
顕性
顕性
顕性
顕性
潜性
顕性
顕性
顕性
LRSAM1 CMT 軸索型2P(CMT2P) 顕性・潜性
MARS(現在の名前:MARS1) CMT 軸索型2U(CMT2U)
間質性肺・肝疾患
毛髪硫黄欠乏症9型(非光線過敏性)
遺伝性痙性対麻痺70型
顕性
潜性
潜性
潜性
MED25 CMT 軸索型2B2(CMT2B2)
バーゼル・ヴァナガイト・スミリン・ヨセフ症候群
潜性
潜性
MFN2 CMT 軸索型2A2A(CMT2A2A)
CMT 軸索型2A2B(CMT2A2B)
視神経萎縮を伴う遺伝性運動感覚ニューロパチー6A型
多発性対称性脂肪腫症
顕性
潜性
顕性
潜性
MPZ CMT 脱髄型1B(CMT1B)
CMT 軸索型2I・2J(CMT2I・CMT2J)
CMT 顕性中間型D(CMTDID)
デジェリン・ソッタス症候群
ルシー・レヴィ症候群
先天性低髄鞘性ニューロパチー2型
アディー瞳孔
顕性
顕性
顕性
顕性・潜性
顕性
顕性
顕性
MTMR2 CMT 脱髄型4B1(CMT4B1) 潜性
NDRG1 CMT 脱髄型4D(CMT4D) 潜性
NEFL CMT 脱髄型1F(CMT1F)
CMT 軸索型2E(CMT2E)
CMT 顕性中間型G(CMTDIG)
顕性
顕性
顕性
NGF 遺伝性感覚自律神経性ニューロパチー5型(HSAN5) 潜性
NTRK1 先天性無痛無汗症(遺伝性感覚自律神経性ニューロパチー4型) 潜性
PDK3 X連鎖性CMT 6型(CMTX6) X連鎖(顕性)
PLEKHG5 CMT 潜性中間型C(CMTRIC)
遠位型脊髄性筋萎縮症(潜性4型)
潜性
潜性
PMP22 CMT 脱髄型1A(CMT1A)
CMT 1E型(難聴を伴う)
遺伝性圧脆弱性ニューロパチー(HNPP)
デジェリン・ソッタス症候群
ルシー・レヴィ症候群
顕性
顕性
顕性
顕性・潜性
顕性
PRPS1 X連鎖性CMT 5型(CMTX5)
アーツ症候群
X連鎖難聴1型
PRPP合成酵素活性亢進症
X連鎖(潜性)
X連鎖(潜性)
X連鎖(潜性)
X連鎖(潜性)
PRX CMT 脱髄型4F(CMT4F)
デジェリン・ソッタス症候群
潜性
顕性・潜性
RAB7A CMT 2B型(CMT2B) 顕性
REEP1 遺伝性痙性対麻痺31型(SPG31)
遠位型遺伝性運動ニューロパチー5B型
遠位型脊髄性筋萎縮症(潜性6型)
顕性
顕性
潜性
RETREG1 遺伝性感覚自律神経性ニューロパチー2B型(HSAN2B) 潜性
SBF1 CMT 脱髄型4B3(CMT4B3) 潜性
SBF2 CMT 脱髄型4B2(CMT4B2) 潜性
SH3TC2 CMT 脱髄型4C(CMT4C)
軽症の正中神経単ニューロパチー
潜性
顕性
SLC12A6 末梢神経障害を伴う脳梁欠損症(アンダーマン症候群)
CMT 軸索型2II(CMT2II)
潜性
顕性
SPTLC1 遺伝性感覚自律神経性ニューロパチー1A型(HSAN1A)
若年性筋萎縮性側索硬化症27型
顕性
顕性
SPTLC2 遺伝性感覚自律神経性ニューロパチー1C型(HSAN1C) 顕性
TRIM2 CMT 軸索型2R(CMT2R) 潜性
TRPV4 CMT 2C型(CMT2C)
遠位型遺伝性運動ニューロパチー8型
肩甲腓骨型脊髄性筋萎縮症
メタトロピック異形成症
コズロウスキー型脊椎骨幹端異形成症
マロトー型脊椎骨端骨幹端異形成症
短体幹症3型
パラストレマティック小人症
家族性指関節症・短指症
大腿骨頭壊死症2型
顕性
顕性
顕性
顕性
顕性
顕性
顕性
顕性
顕性
顕性
TTR 遺伝性トランスサイレチンアミロイドーシス
高サイロキシン血症(トランスサイレチンの異常による)
手根管症候群1型
顕性
顕性
顕性
WNK1 遺伝性感覚自律神経性ニューロパチー2A型(HSAN2A)
偽性低アルドステロン症2C型
潜性
顕性
YARS(現在の名前:YARS1) CMT 顕性中間型C(CMTDIC)
乳児期発症の多系統(神経・内分泌・膵臓)疾患2型
顕性
潜性

※遺伝のしかた:顕性=常染色体顕性(優性)遺伝、潜性=常染色体潜性(劣性)遺伝、X連鎖=X連鎖遺伝。病名と遺伝のしかたは、OMIMの情報(UniProt・HPOを通じて確認)とGeneReviews[1]による。CMTは「CMT 軸索型2N」のように型の名前で表記した。遺伝子名は検査の対象遺伝子リストの表記で、現在の正式名が違うものは(現在の名前)を添えた。

CMTの原因として多いのは、PMP22(CMT1A、HNPP)、GJB1(CMTX1)、MPZ(CMT1B)、MFN2(CMT2A)などで、GeneReviewsはGDAP1・GJB1・HINT1・MFN2・MPZ・PMP22を、よく原因になる遺伝子として挙げています[1]。これらはすべてこのパネルに含まれています。

7. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、59遺伝子の中の小さな変化(1文字の変化や、小さな挿入・欠失)と、遺伝子1つ分をまるごと含む欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

わかること:PMP22の重複も含めて

遺伝子のうち、たんぱく質の設計図になる部分(エクソン)と、そのつなぎ目のまわりを読みます。あわせて、欠失・重複の解析(料金に含まれます)で、遺伝子1つ分をまるごと含む増減(コピー数の変化)を調べます。CMT1Aの原因であるPMP22の重複や、HNPPの原因であるPMP22の欠失は、PMP22遺伝子をまるごと含む増減なので、この解析の対象になります。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。

わからないこと

  • ●パネルに入っていない遺伝子:CMTの原因遺伝子は100種類以上ありますが、このパネルで調べるのは59遺伝子です。たとえば、GeneReviewsがよく原因になる遺伝子として挙げるSORD遺伝子は、このパネルに含まれていません[1]。
  • ●小さな欠失・重複:エクソン1つ分だけの欠失・重複は、見つかることもありますが、ふだんは検出の対象外です。
  • ●見つけにくい種類の変化:染色体の一部が入れかわる転座や逆位、同じ配列のくり返しが長くなる変化(リピート伸長)、遺伝子の働きを調節する領域や、エクソンから離れたイントロンの奥の変化は調べられません。よく似た配列(偽遺伝子など)がある場所は、読み分けが難しいことがあります。
  • ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(体細胞モザイク)を見つけるための検査ではありません。がんの組織の検査にも使えません。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の知識ではまだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、上のような理由でCMTを否定することはできません。
専門家向け:検査の技術的な条件

検査対象の遺伝子の99%以上の領域を、20回以上読み取る精度(≥99% at 20x)で調べます。同じ場所を何度も読むほど、読み間違いを減らせます。品質が基準に届かなかった場所や確認が必要な変化は、サンガー法という別の方法で読み直します。遺伝子1つ分の欠失・重複は頬粘膜スワブと血液の検体で、エクソン2つ以上が連続する大きさの欠失・重複は血液の検体でのみ検出の対象になります。

8. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたもご覧ください。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。

陽性だったとき:病名・型がはっきりし、次の一手が決まる

原因の遺伝子がわかると、CMTのどの型かがはっきりし、遺伝のしかたが決まります。病名がわかると、気をつけたい薬(ビンクリスチンなど)、見ておくべき合併症、使える制度(指定難病)が決まります。遺伝子によっては、CMT以外の病気(第6章の表)にもかかわるため、必要な診療科につなぐ手がかりにもなります。研究が進んだときに、ご自身の型に関係する情報を受け取りやすくなるのも、原因がわかっていることの利点です。

ご家族への影響と、ご家族が検査を受けるとき

ご家族の中で原因がわかっていると、ほかのご家族は同じ変化だけを調べることで、受け継いでいるかどうかを確かめられます。顕性遺伝やX連鎖の型なら、ご両親・きょうだい・お子さんが同じ変化をもっている可能性があります。症状のないご家族の検査は発症前の検査になるため、検査の前に遺伝カウンセリングで、知ることの意味をよく考えていただきます(第5章)。

陰性だったとき

原因が見つからなかった場合でも、CMTではないとは言えません(第7章)。症状や神経伝導検査の結果に合わせて、全エクソーム検査(WES)など、より広く調べる検査を考えます。GeneReviewsも、パネルで原因が見つからない場合に全エクソーム・全ゲノムの検査を考える、という順番を示しています[1]。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき

VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査や出生前診断に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的と別の病気の原因が見つかった場合(二次的所見)の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

妊娠を考えている方:保因者検査と出生前診断

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。羊水検査・絨毛検査は院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に考えるため、妊娠を考えている段階からご相談ください。

潜性遺伝の型では、パートナーが同じ遺伝子の変化をもっているかが大切です。妊娠の前なら拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子、さらに女性版1009遺伝子・男性版911遺伝子)、妊娠中ならNIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」(女性787遺伝子・男性714遺伝子。単独では受けられません)があります。CMTの原因遺伝子がそれぞれの対象かどうかは、各ページの遺伝子一覧でご確認ください。

また、このパネルの遺伝子のうちLMNAは当院のNIPTのダイヤモンドプランとインペリアルプランで、DYNC1H1とKIF1Aはインペリアルプランで、赤ちゃんに新しく起きた変化(de novo)を調べる対象遺伝子に入っています。NIPTで調べるのは、これらの遺伝子に赤ちゃんの代で新しく起きた変化で、ご家族から受け継ぐCMTの原因を調べる検査ではありません(たとえばLMNAによるCMT2B1は潜性遺伝です)。当院のNIPTは妊娠9週から、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。

海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます

PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。海外でPGT-Mを受けたいというお問い合わせは多く、当院では、その前提になる原因遺伝子の確定と、英語の検査結果をご用意できます。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因遺伝子の確定、英語の検査結果の用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠後の絨毛検査・羊水検査です。

欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の指針は、PGT-Mの準備として、病気の原因と確かめられた遺伝子の変化があること、変化の内容が書かれた元の報告書があること、そしてご家族の検体を挙げています[3]。受精卵から取れるDNAはごくわずかで、変化を直接読むだけでは、2本あるうちの片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあります。そのため、変化のある場所の両側にある目印(多型マーカー)で、「変化をもつ染色体」を家系の中でたどるハプロタイプ解析を組み合わせます[3]。

ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。指針の目安は、顕性遺伝の型では患者さん少なくとも1人(できれば2人)、および/または発症していない方1人、潜性遺伝の型では患者さん(2つの変化をもつ方)・保因者・保因者でない方、X連鎖の型では患者さん、および/または発症していない方(保因者と確かめられた方が望ましい)のDNAです[3]。血縁者がいない場合について、指針はご夫婦の目印を調べたうえで受精卵や1個の精子を調べる方法を挙げていますが、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります。また、新しく起きた変化(de novo)で、これまでに妊娠歴のないご夫婦では、一般的なハプロタイプ解析の方法は使えないとされています[3]。海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。

臨床遺伝専門医としての判断をお伝えすると、意義がまだわからない変化(VUS)は病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。潜性遺伝の型では、ご夫婦それぞれがどの変化をもっているかを確かめておく必要があります。また、海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もって確認してください。

⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です

PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[4]。当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でも、院内の絨毛検査・羊水検査についてご相談いただけます。

日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます。この指針の「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、申請の時点で有効な治療法がないか、治療法があっても高度かつ侵襲度の高いもの、とされています。成人に達する前に生存が危ぶまれるわけではないものの、日常生活が著しく損なわれる状態が現れる疾患は、その病気の専門医の意見書などを追加で出す仕組みになっています。審査は症例ごとに行われ、学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち、37件が審査継続中でした(2026年9月発表)。

英国では、公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気が載っています(2026年9月17日更新の一覧で2,067)。シャルコー・マリー・トゥース病は、45の型が、PGT-Mを行ってよい病気としてこの一覧に載っています(2026年9月時点)。型ごとに載っているため、すべての型が含まれるわけではありません。米国では、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[5]。米国生殖医学会(ASRM)の倫理委員会は2024年、大人になってから発症する病気に対するPGT-Mも倫理的に許容されうるとする意見を出しています[6]。どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。くわしくは海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へで解説しています。

9. 日本の制度(2026年10月時点)

シャルコー・マリー・トゥース病は、指定難病10に指定されています。難病情報センターの情報(2025年12月更新)で確認しました。また、小児慢性特定疾病でも、神経・筋疾患の「遺伝性運動感覚ニューロパチー」(シャルコー・マリー・トゥース病を含む)として対象になっています(小児慢性特定疾病情報センター、2026年10月時点で確認)。

医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
検体の採取唾液・口の粘膜・血液
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検査内容 59遺伝子の配列(料金に含まれる)/欠失・重複の解析(料金に含まれる)
検査費用 税込330,000円
結果までの期間 2〜3週間
オプション 至急(結果までの期間が約7日短くなります):55,000円
VUS除外(意義がまだわからない変化を報告に含めない):無料
検体 血液(EDTAの採血管4ml×2本)、抽出DNA(3μg)、頬粘膜スワブ、唾液
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
オンライン診療 唾液・口の内側の粘膜・血液のいずれでも可能。血液の場合は全国の提携医療機関で採血

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

オンライン診療(ビデオ通話での診療)では、遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただきます。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。決められた手順で採らないと、検体の取り違えや、品質が足りず検査ができないことにつながるためです。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ 名前がつくと、次の一手が決まります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

臨床遺伝専門医が常駐し、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

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11. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「親が軽いから大丈夫」では、計画は立てられない】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。シャルコー・マリー・トゥース病は、同じ遺伝子の変化でも症状の出方が違うことがあり、中高年になってから症状がはっきりする方もいる病気です。だからこそ、「親は軽いから」「家族に車椅子の人はいないから」という印象だけで、結婚や出産のことを決めてしまわないでほしいと考えています。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、家族歴が濃いものの、ご本人は大学を卒業して会社に勤めていた方が、念のため検査を受けたところ、染色体の微小欠失が見つかったことがあります。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。原因がわかれば、避けたい薬、ご家族の検査、パートナーの検査、そして妊娠したときの出生前診断まで、具体的に計画できます。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. シャルコー・マリー・トゥース病(シャルコーマリートゥース病)は寿命に影響しますか?

難病情報センターは、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)は一般に命にかかわる病気ではなく、寿命に大きな影響を与える病気でもないとしています。遺伝性疾患の解説書GeneReviewsでも、脱髄型のCMT1で寿命は短くならないとされています。一方で、症状が進むと歩きにくさが出ることがあり、車椅子を使う方は約20%、寝たきりになる方は約1%とされています(2026年10月時点の難病情報センターの情報)。

Q2. 何人に1人くらいの病気ですか?

難病情報センターによると、欧米の調査では人口2,500人に1人、日本では人口1万人に1人という報告があります(2026年10月時点の難病情報センターの情報)。

Q3. 初期症状はどんなものですか?

多くは足先から始まります。足の甲が高くなる凹足、つまずきやすい、靴やスリッパが脱げやすい、つま先が上がりにくく膝を高く上げて歩く(鶏歩)などで気づくことが多く、振り返ると子どものころから軽い症状があったとわかることもよくあります。手足の感覚が鈍くなることもあります。

Q4. 子どもに遺伝する確率は?

型によって違います。常染色体顕性(優性)遺伝の型では、お子さん1人ごとに2分の1の確率で原因の変化が受け継がれます。常染色体潜性(劣性)遺伝の型では、ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症します。X連鎖の型では、親の性別とお子さんの性別で確率が変わります。どの型かは遺伝子検査で原因を確かめるとわかります。

Q5. シャルコー・マリー・トゥース病は治りますか?

2026年10月時点で、CMTに明確な効果があると科学的に証明された治療はありません。合う靴や装具、足のケア、リハビリ、適度な運動で生活の動きを保つことが中心で、足の変形が強い場合は手術が検討されることもあります。太りすぎに気をつけることも勧められています。

Q6. 指定難病ですか?

はい。シャルコー・マリー・トゥース病は指定難病10に指定されています。小児慢性特定疾病でも「遺伝性運動感覚ニューロパチー」として対象になっています(2026年10月時点)。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たして申請する必要があります。

Q7. 避けたほうがよい薬はありますか?

GeneReviewsは、ビンクリスチンを含むがんの化学療法が末梢神経を特に傷つけやすく、CMTを大きく悪化させることがあるとしています。新しい薬を処方されるときや、がんの治療を受けるときは、CMTであることを必ず医師に伝えてください。原因の遺伝子がわかっていると、こうした説明がしやすくなります。

Q8. 検査で原因が見つからなければ、CMTではないということですか?

いいえ。CMTの原因遺伝子は100種類以上わかっていますが、このパネルで調べるのは59遺伝子です。調べていない遺伝子や、この検査では見つけにくい種類の変化が原因の場合は、陰性でもCMTを否定できません。症状に合わせて、全エクソーム検査などの次の検査を考えます。

Q9. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?

はい。海外でPGT-Mを受けるなど英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。なお、当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。また、ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。

🧬 人生に一度の遺伝子検査を、ご自身とご家族のこれからに

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。シャルコー・マリー・トゥース病の原因がわかれば、型と遺伝のしかた、避けたい薬がはっきりし、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果もお渡しできます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Bird TD. Charcot-Marie-Tooth Hereditary Neuropathy Overview. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 1998 (Last revision 2025 Nov 20). [NCBI Bookshelf NBK1358]
  • [2] Baig SS, et al. 22 Years of predictive testing for Huntington’s disease: the experience of the UK Huntington’s Prediction Consortium. Eur J Hum Genet. 2016;24(10):1396-1402. [DOI: 10.1038/ejhg.2016.36]
  • [3] ESHRE PGT-M Working Group, Carvalho F, Moutou C, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the detection of monogenic disorders. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa018. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa018]
  • [4] ESHRE PGT Consortium Steering Committee, Carvalho F, Coonen E, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the organisation of PGT. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa021. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa021]
  • [5] Nakasato K, Yamamoto BA, Kato K. Evaluating standards for ‘serious’ disease for preimplantation genetic testing: a multi-case study on regulatory frameworks in Japan, the UK, and Western Australia. Hum Genomics. 2022;16:16. [DOI: 10.1186/s40246-022-00390-3]
  • [6] Ethics Committee of the American Society for Reproductive Medicine. Use of preimplantation genetic testing for monogenic adult-onset conditions: an Ethics Committee opinion. Fertil Steril. 2024;122:607-611.

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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