この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

遠位型遺伝性運動ニューロパチー(dHMN)は、感覚はほとんど保たれたまま、手足の先を動かす運動神経が少しずつ弱っていく遺伝性の病気です。つま先が上がらずつまずく(下垂足)、足の甲が高くなる(凹足)、手の筋肉がやせる、といった症状から気づかれます。原因の遺伝子は数多く、症状だけでは型を決めきれないため、原因がわからないまま病院を回る時間を、1回の遺伝子検査で短くできる可能性があります。このページでは、よく似た病気との見分け方、この16遺伝子パネル検査でわかること・わからないこと、そして原因がわかったあとにできることを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
下垂足(つま先が上がらない)や手足の先の筋力低下の原因が、遠位型遺伝性運動ニューロパチーに関わる16の遺伝子にあるかを、一度に調べます。原因がわかると、病名・見張る合併症・ご家族への遺伝のしかたが決まります。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
手足の先からゆっくり力が入りにくくなり、しびれなど感覚の症状がほとんどない方、神経伝導検査で運動神経だけに異常を言われた方、ご家族に同じ症状の方がいる方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜で、オンライン診療にも対応しています。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因の遺伝子がわかれば、お子さんやご家族へ遺伝する確率もはっきりします。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. 遠位型遺伝性運動ニューロパチー(dHMN)とは:症状と遺伝のしかた
遠位型遺伝性運動ニューロパチーは、手足の先の運動神経が主に弱り、感覚の障害はないか、あってもごく軽い遺伝性の末梢神経の病気です[1]。英語の distal hereditary motor neuropathy の頭文字をとって dHMN と呼ばれ、遺伝性運動ニューロパチー(HMN)、遠位型脊髄性筋萎縮症と呼ばれることもあります。
運動と感覚の両方の神経が障害されるシャルコー・マリー・トゥース病(CMT)とは、感覚が保たれる点で区別されます[1]。ただし、同じ遺伝子の変化がdHMNとCMTの軸索型(CMT2)のどちらの形でも現れることが多く、両者は境目のはっきりしない一続きの病気と考えられるようになっています[2][3]。
主な症状:下垂足・凹足・手の筋肉のやせ
dHMNの症状は、体の中心から遠い場所(遠位)の筋力低下と、筋肉のやせです。よくみられるのは次のような症状です。
- つま先が上がらず、つまずきやすい・スリッパが脱げやすい(下垂足)
- 足の甲が高く、土踏まずが深くなる(凹足)
- 手の筋肉がやせて、ボタンをとめる・箸を使うなどの細かい動きがしにくい
- 膝から下・手首から先の筋肉が細くなる
一方で、手足のしびれや、触った・痛いといった感覚の鈍さは目立ちません。「力は入りにくいのに、しびれはない」ことが、この病気を考えるきっかけになります。
型による違い:手から始まる型・声帯麻痺を伴う型・乳児期の重い型
原因の遺伝子によって、症状の出かたに特徴があることがわかっています。
何歳で始まり、どう進むか(寿命・予後)
発症の年齢と進み方は、原因の遺伝子によって大きく違います。大人になってから発症する型(HSPB8の型など)がある一方で[3]、IGHMBP2の型には乳児期に呼吸の筋肉まで弱くなる重い型があります[1]。このパネルで調べるGAN遺伝子による巨大軸索ニューロパチーは、幼いころに発症し、多くのお子さんが10代で車椅子を必要とするとされています[8]。
このように見通しは型ごとに違うので、「寿命はどれくらいか」「どこまで進むか」は、原因の遺伝子がわかってはじめて具体的に考えられます。原因がわからないままでは、ご本人にとってもご家族にとっても、先の計画が立てにくいのです。
遺伝する確率:顕性・潜性・X連鎖で違う
dHMNの遺伝のしかたは、常染色体顕性(優性)・常染色体潜性(劣性)・X連鎖の3つがあり、お子さんに遺伝する確率は型によって違います。このパネルの16遺伝子では、表のようになります(遺伝子ごとの内訳は4章の表)。
2. 下垂足・手足の筋力低下は遺伝? よく似た病気との見分け方
下垂足(つま先が上がらない)の原因で多いのは、腰の神経の根元(L5神経根)の障害と、膝の外側を通る腓骨神経の障害で、遺伝とは関係のないものです[11]。遺伝の病気を考えるのは、両足に左右対称に出る・何年もかけてゆっくり進む・凹足がある・ご家族に同じ症状の方がいる、といった特徴がそろうときです。急に片足だけつま先が上がらなくなった場合は、まず整形外科や脳神経内科で、腰や神経の圧迫がないか調べてもらってください。
遺伝の病気が疑われる場合も、手足の先が弱くなる病気はdHMNだけではありません。筋肉そのものの病気か、運動神経の病気か、感覚神経も侵されているかで、選ぶ検査が変わります。この見分けには、脳神経内科で行う筋電図・神経伝導検査と、血液のCK(筋肉の酵素)の値が手がかりになります。
遠位型ミオパチー(筋肉の病気)との違い
遠位型ミオパチーは、症状はよく似ていますが、原因が神経ではなく筋肉にある病気です。検査では、筋電図で筋肉そのものの異常を示す所見が出ることや、CKが上がることが多い点が、神経の病気であるdHMNとの見分けの目安になります。筋肉の病気が疑われる場合は、遠位型ミオパチーの遺伝子検査や、体の中心に近い筋肉から弱くなる肢帯型筋ジストロフィーの遺伝子検査が向いています。
🔍 手足の先が弱くなる病気の見分けの目安
※あくまで目安です。どの病気かは、診察と筋電図・神経伝導検査などの結果を合わせて、脳神経内科で判断されます。
シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)との違い
CMTとの違いは、神経伝導検査で感覚神経に異常があるかどうかです。遺伝性ニューロパチーの解説書GeneReviewsは、dHMNと遠位型脊髄性筋萎縮症をCMTの仲間として扱っており[3]、英国の研究でも、dHMNと運動優位のCMT2で多くの原因遺伝子が共通していました[2]。そのため、軽いしびれもある方や、運動神経と感覚神経のどちらもはっきりしない方は、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)の遺伝子検査のほうが向いていることがあります(選び分けは3章)。
ALS・脊髄性筋萎縮症(SMA)との違い
dHMNは、運動神経の病気という点で、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や脊髄性筋萎縮症(SMA)と重なる部分があります。このパネルで調べるDCTN1・SETX・FIG4は、ALSとの関係も報告されている遺伝子です[1][2][3]。また、IGHMBP2の型は、呼吸障害を伴う脊髄性筋萎縮症として最初に報告されました[1]。
ALSが心配な方はALSの遺伝子検査を、体の中心に近い筋肉から弱くなる・乳幼児期に始まったなどでSMAが疑われる方は、脊髄性筋萎縮症(SMA)の原因遺伝子(SMN1)を含むSMAの遺伝子検査を検討します。脊髄性筋萎縮症には、下肢優位型(BICD2)のように足から弱くなる型もあり、これはこのパネルではなくSMAパネルで調べる遺伝子です。
遺伝子検査の前に見分けたい、治療で良くなりうる病気
多巣性運動ニューロパチーは、運動神経だけが侵される免疫の病気で、免疫グロブリンの治療が効くことがあります[12]。症状がdHMNと似ていても、遺伝の病気ではありません。左右で弱さに差がある、数か月から数年で進んでいる、といった場合は、遺伝子検査の前に脳神経内科でこの病気を見分けてもらうことが大切です。同じく免疫の病気である慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)も、見分ける対象になります。
3. どんな人がこの検査を受けるとよいか
手足の先から力が入りにくくなり、感覚の症状がほとんどない方、ご家族に同じ症状の方がいる方に向いた検査です。あなたの1回の検査結果は、ご両親・きょうだい・お子さんが、ご自身のことを考える手がかりにもなります。
この検査が向いている人
- 下垂足(つま先が上がらない)・凹足・手の筋肉のやせが、ゆっくり進んでいる方
- 神経伝導検査で、運動神経には異常があるが感覚神経は保たれていると言われた方
- 声の出しにくさ(声帯の麻痺)を伴う方
- ご家族に、同じように手足の先が弱くなった方がいる方
- 遺伝の病気と言われたが、原因の遺伝子がわかっていない方
- 結婚・妊娠を考えていて、ご家族の病気が自分や子どもに関係するか知りたい方
見た目の症状や家族歴だけでは、どの遺伝子が原因か、そもそも遺伝の病気かどうかもわかりません。遺伝子検査は、やってみないとわからないことが多い検査です。
ほかの検査のほうが向いている場合
運動神経の病気を広く調べたいなら、遺伝子の数はSMAの遺伝子パネル検査(29遺伝子)のほうが多くなります。この検査の16遺伝子のうち11は、SMAパネルにも含まれています。この検査の特徴は、DNMT1・FIG4・GAN・SETX・MEGF10という、ALSに似た型・感覚の症状を伴うことがある型・筋肉の病気と重なる遺伝子も一緒に調べられることです。英国の研究では、dHMNの患者さんで見つかった原因に、AARSやBICD2など、このパネルには入っていない遺伝子も含まれていました[2]。症状と検査結果に合わせて、次の表から選びます(比べているのは検査の種類です)。
🔍 症状に合わせた検査の選び方
※遺伝子の数と共通する遺伝子は、2026年10月時点の当院の各検査ページの遺伝子リストで数えたものです。どの検査が合うかは、遺伝カウンセリングで症状と検査結果をうかがって一緒に決めます。
4. 調べる16遺伝子と、それぞれでわかる病気
この検査では、遠位型遺伝性運動ニューロパチーとそれに近い病気に関わる16の遺伝子を、一度に調べます。遺伝子によって、関係する病気と遺伝のしかたが違います。
この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
5. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、16の遺伝子にある小さな変化と、遺伝子の一部や全体がなくなる・増える変化(欠失・重複)です。一方で、原因が見つからない方も少なくありません。
わかること
- 16の遺伝子の、たんぱく質の設計図にあたる部分と、その境目の、1文字の変化や小さな挿入・欠失
- 遺伝子1つ全体、または2つ以上続く区画(エクソン)の欠失・重複(料金に含まれます。区画1つだけの欠失・重複は、見つからないことがあります)
見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。読み取りが不十分な部分は、サンガー法という別の方法で読み直します。調べる範囲の99%以上を、20回以上重ねて読み取る精度で検査します。
わからないこと(検査の限界)
- 16以外の遺伝子の変化(dHMNの原因遺伝子は、このパネルの外にもあります)
- 同じ配列が異常に長く繰り返される変化(リピート伸長)、染色体の一部が入れ替わる変化(転座・逆位)
- 遺伝子の働きを調節する部分や、設計図から離れた部分(イントロンの奥)の変化
- 体の一部の細胞だけにある変化(モザイク)
運動ニューロパチーでは、今わかっている遺伝子で原因を説明できるのは全体の20〜40%程度というのが、2020年の総説での一般的な見方です[1]。英国の研究でも、dHMNの患者さんで原因が見つかったのは32.5%でした[2]。陰性(変化が見つからない)でも、遺伝の病気ではないとは言えません。そのときは、次の検査を一緒に考えます(6章)。
また、検査の目的とは別の病気の原因が見つかることがあります(二次的所見)。その扱いは当院の二次的所見の開示方針に沿ってご説明します。
意義がまだわからない変化(VUS)
見つかった変化が病気の原因かどうか、今の知識では判断できないことがあります。これをVUS(臨床的意義不明のバリアント)と呼びます。VUSは、それだけで診断を確定したり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、あとから「原因」や「問題のない変化」に分類が変わることがあります。ご希望により、VUSを報告に含めない設定(無料)も選べます。
6. 病的変異が見つかったら、次にできること
原因の遺伝子がわかると、病名が決まり、見張る合併症や、ご家族・お子さんへの遺伝のしかたが具体的になります。わかるだけで終わらず、次に何ができるかを、立場ごとにまとめます。
ご本人(症状がある方)
- 型に合わせて見張る:声帯の麻痺が起こりうる型(SLC5A7・TRPV4)では声やのどの症状、呼吸の筋肉が弱りうる型(IGHMBP2)では呼吸の状態を、脳神経内科などで定期的に確かめる目安になります[1]。
- 似た病気との区別に役立つ:原因となる遺伝子の変化が見つかれば、ALSや免疫の病気などとの鑑別に役立ちます。ただし、遺伝子の変化だけでほかの病気をすべて除外できるわけではなく、症状や神経伝導検査などの結果と合わせて判断します。
- 装具・リハビリの計画:下垂足には短下肢装具などで歩きやすくする方法があります。見通しがわかれば、仕事や住まいの準備も含めて先の計画を立てやすくなります。
- 研究中の治療を知る:2020年の総説では、一部の遺伝子(GARS1など)で、動物や細胞での治療研究が紹介されています[1]。今すぐ使える治療ではありませんが、原因の遺伝子がわかっていることが、将来の治験に参加する前提になります。
治療やリハビリは、脳神経内科・リハビリテーション科など専門の医療機関で受けていただきます。
ご家族:症状のない方の検査
ご本人の原因の変化がわかれば、ご両親・きょうだい・お子さんが同じ変化をもっているかを、その1か所だけピンポイントで調べられます。症状のない方の検査は、ご本人が理解し同意したうえで行う予測的検査(発症前の検査)です。知ることも、知らないでいることも、どちらも選べます。親やきょうだいが発症したことで、つまずくたびに「自分も始まったのでは」と不安を抱えながら暮らしている方もいます。そうした方とは、検査の前後に時間をかけて考えます。
子どもを持つときの選択肢
遺伝のしかたがわかれば、お子さんへの確率と、とれる選択肢が具体的になります。
- 潜性遺伝の型(IGHMBP2・ASAH1など):パートナーが同じ遺伝子の保因者かを調べると、お子さんへの確率がわかります。当院の拡大版保因者スクリーニングでは、IGHMBP2は女性版787遺伝子・男性版714遺伝子・女性版1009遺伝子・男性版911遺伝子のすべてに、ASAH1は女性版1009遺伝子・男性版911遺伝子に含まれています。ATP7A(X連鎖)は女性版787遺伝子・1009遺伝子に含まれています。GAN・FIG4・SETX・MEGF10・SLC5A7は含まれていません(2026年10月時点の遺伝子一覧で確認)。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります。保因者のしくみは劣性遺伝(潜性遺伝)とはで解説しています。
- 出生前診断:ご家族の原因の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。病気の重さや国内の指針を踏まえて判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください(単一遺伝子疾患の出生前診断)。
- 着床前遺伝学的検査(PGT-M):日本でも、日本産科婦人科学会の指針(2026年9月改定)にもとづく審査を経て、PGT-Mが行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。
- 何もしないで産むことも、そのまま選べる選択肢です。どの選択も尊重します。
この16遺伝子は、当院のNIPT(ダイヤモンドプラン・インペリアルプラン)の対象遺伝子には含まれていません。
陰性・VUSだったとき
陰性の場合は、症状と検査結果を見直して、遺伝子の範囲が広いSMAの遺伝子検査やCMTの遺伝子検査、多くの遺伝子のエクソン領域を広く調べる全エクソーム検査(WES)などを考えます。VUSの場合は、ご家族の検査結果や今後の研究で分類が変わることがあるので、それだけで判断せずにご説明します。結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、次にどうするかを一緒に考えます。
7. 日本の制度(2026年10月時点)
「遠位型遺伝性運動ニューロパチー」という病名は、厚生労働省の指定難病の資料と小児慢性特定疾病の病名の解説には出てきません。厚生労働省の指定難病検討委員会の資料では、シャルコー・マリー・トゥース病(指定難病10)は脱髄型・軸索型・中間型に分けて説明され、診断の項目に遺伝子の異常が含まれています。小児慢性特定疾病では、神経・筋疾患の「遺伝性運動感覚ニューロパチー」が対象です。
dHMNの方が、症状や検査結果によってこれらの制度の対象になるかどうかは、主治医の判断と各制度の認定の条件によります。原因の遺伝子がわかっていることは、診断名を考えるときの大切な材料になります。
8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、説明を聞いて納得してから、受けるかどうかを決めていただきます。
ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
検体の採取血液・唾液・頬の粘膜
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
オンライン診療では、ビデオ通話で遺伝カウンセリングを行ったあとに、検体を当院にお送りいただきます。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。検体の取り違えや品質の問題を防ぐため、キットが届く前にご自身で検体を採らないでください。
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方はNIPT/遺伝子検査結果の見かたで解説しています。
9. 院長コラム
🩺 院長コラム【「しびれがない」ことも、大切な手がかりです】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
遠位型遺伝性運動ニューロパチーは、CMT・ALS・脊髄性筋萎縮症・筋肉の病気と症状が重なり、同じ遺伝子が複数の病名に関わります。だからこそ、「しびれはない」「声が出にくい」「家族の誰が、何歳ごろから」といった一つひとつの情報が、どの検査を選ぶかの大切な手がかりになると考えています。そのうえで、選んだ検査で何が調べられ、何が調べられないのかまで知っておくことが、結果を正しく受け止める準備になります。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。知ったうえで考えたい方には、ご家族の検査から出生前診断まで、当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 遠位型遺伝性運動ニューロパチーとは何ですか?
手足の先を動かす運動神経が主に弱り、感覚の障害はないか、あってもごく軽い遺伝性の末梢神経の病気です。つま先が上がらない(下垂足)、凹足、手の筋肉のやせなどから気づかれます。原因の遺伝子は多く、遺伝のしかたも型によって違います。
Q2. 下垂足(つま先が上がらない)は遺伝しますか?
下垂足の原因で多いのは、腰の神経の根元(L5神経根)の障害や腓骨神経の障害で、遺伝とは関係のないものです。両足に左右対称に出る、何年もかけてゆっくり進む、凹足がある、ご家族に同じ症状の方がいる、といった場合は、遠位型遺伝性運動ニューロパチーなどの遺伝の病気を考えます。
Q3. 遠位型ミオパチーやALSとはどう違いますか?
遠位型ミオパチーは、原因が神経ではなく筋肉にある病気で、筋電図や血液のCKの値が見分けの手がかりになります。ALSとは運動神経の病気という点で重なり、このパネルで調べるDCTN1・SETX・FIG4はALSとの関係も報告されています。どの病気かは、脳神経内科での検査結果と合わせて判断します。
Q4. CMTやSMAのパネル検査とどちらを選べばよいですか?
しびれなど感覚の症状もあればCMTの遺伝子検査(59遺伝子+PMP22の重複・欠失)、運動神経だけの病気を広く調べたい・乳幼児期に始まったならSMAの遺伝子検査(29遺伝子)が向いています。この検査の16遺伝子のうち11は、それぞれのパネルにも含まれています。ALSに似た型や、軽い感覚症状を伴う型まで一度に見たいときは、この検査が向いています。
Q5. 子どもに遺伝する確率は?
原因の遺伝子と遺伝のしかたで違います。常染色体顕性遺伝の型では、親の一方が変化をもっていればお子さん1人あたり2分の1です。常染色体潜性遺伝の型では、ご両親とも保因者のとき4分の1です。X連鎖の型では、お母さんが保因者のとき、男の子1人あたり2分の1で発症する可能性があります。
Q6. 家族に遺伝の病気があると、結婚に差し支えますか?
遺伝の病気があることが、結婚できない理由になるわけではありません。お子さんへの確率は病気とご家族ごとに違い、検査で、ご自身が変化をもっているか、パートナーが保因者か、お子さんへの確率はどれくらいかがわかります。知ったうえで、出生前診断なども含めて、おふたりで選ぶことができます。
Q7. 陰性なら遺伝の病気ではないのですか?
いいえ。運動ニューロパチーでは、今わかっている遺伝子で原因を説明できるのは全体の20〜40%程度とされています。この検査は16の遺伝子を調べるもので、ほかの遺伝子の変化や、リピート伸長などの変化はわかりません。陰性のときは、範囲の広いパネル検査や全エクソーム検査などを一緒に考えます。
Q8. 費用は保険がききますか?
当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。この検査の費用は税込330,000円で、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。下垂足や手足の先の筋力低下の原因がわかれば、見張る合併症や似た病気との区別だけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、絨毛・羊水からの胎児の出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
- [1] Beijer D, Baets J. The expanding genetic landscape of hereditary motor neuropathies. Brain. 2020;143(12):3540-3563. [DOI: 10.1093/brain/awaa311]
- [2] Bansagi B, Griffin H, Whittaker RG, et al. Genetic heterogeneity of motor neuropathies. Neurology. 2017;88(13):1226-1234. [DOI: 10.1212/WNL.0000000000003772](PMID: 28251916)
- [3] Bird TD. Charcot-Marie-Tooth Hereditary Neuropathy Overview. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 1993-2026 (Last revision 2025 Nov 20). [NCBI Bookshelf NBK1358](PMID: 20301532)
- [4] Barwick KE, Wright J, Al-Turki S, et al. Defective presynaptic choline transport underlies hereditary motor neuropathy. Am J Hum Genet. 2012;91(6):1103-1107. [DOI: 10.1016/j.ajhg.2012.09.019](PMID: 23141292)
- [5] Zhou J, Tawk M, Tiziano FD, et al. Spinal muscular atrophy associated with progressive myoclonic epilepsy is caused by mutations in ASAH1. Am J Hum Genet. 2012;91(1):5-14. [DOI: 10.1016/j.ajhg.2012.05.001](PMID: 22703880)
- [6] Beetz C, Pieber TR, Hertel N, et al. Exome sequencing identifies a REEP1 mutation involved in distal hereditary motor neuropathy type V. Am J Hum Genet. 2012;91(1):139-145. [DOI: 10.1016/j.ajhg.2012.05.007](PMID: 22703882)
- [7] Logan C, Lucke B, Pottinger C, et al. Mutations in MEGF10, a regulator of satellite cell myogenesis, cause early onset myopathy, areflexia, respiratory distress and dysphagia (EMARDD). Nat Genet. 2011;43:1189-1192. [DOI: 10.1038/ng.995]
- [8] Shirakaki S, Roshmi RR, Yokota T. Genetic Approaches for the Treatment of Giant Axonal Neuropathy. J Pers Med. 2023;13(1):91. [DOI: 10.3390/jpm13010091]
- [9] Chen S, Du J, Jiang H, et al. Ataxia with oculomotor apraxia type 2 caused by a novel homozygous mutation in SETX gene, and literature review. Front Mol Neurosci. 2022;15:1019974. [DOI: 10.3389/fnmol.2022.1019974]
- [10] Van Maldergem L. Berardinelli-Seip Congenital Lipodystrophy. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2003 (Updated 2016 Dec 8; retired chapter). [NCBI Bookshelf NBK1212]
- [11] Carolus AE, Becker M, Cuny J, Smektala R, Schmieder K, Brenke C. The interdisciplinary management of foot drop. Dtsch Arztebl Int. 2019;116(20):347-354. [DOI: 10.3238/arztebl.2019.0347]
- [12] Rajabally YA, Englezou C, Cluett G, et al. Diagnosis and Management of Multifocal Motor Neuropathy in the United Kingdom: A Multicentre Survey. J Peripher Nerv Syst. 2025;30(2):e70018. [DOI: 10.1111/jns.70018]
関連記事