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遺伝性遠位型運動ニューロパチー11型(dHMN11・SPTAN1遺伝子)とは?症状・遺伝・診断を遺伝専門医が解説

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。国際医療誌『Medical Care Review APAC』『Global Woman Leader』の2誌で表紙を飾り、「Top Prenatal Testing Service in APAC 2025」に選出されるなど、世界基準の遺伝医療を提供。

遺伝性遠位型運動ニューロパチー11型(dHMN11)は、世界でも報告例が限られるとてもまれな病気ですが、その原因であるSPTAN1遺伝子は、神経の枝(軸索)を長もちさせる「骨組み」を作る、すべての神経細胞に欠かせない遺伝子です。ですからdHMN11を理解することは、「神経の枝がなぜ弱っていくのか」という、より大きな仕組みを理解することにもつながります。この記事では、足先から始まる筋力の低下や足の変形がなぜ起こるのか、同じ遺伝子の別の変化がなぜまったく違う脳の病気を起こすのか、そして診断と遺伝の考え方を、遺伝専門医がやさしく解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約18分
🧬 下位運動ニューロン・足の変形・遺伝カウンセリング
臨床遺伝専門医監修

Q. 遺伝性遠位型運動ニューロパチー11型とは、どんな病気ですか?まず結論だけ知りたいです

A. SPTAN1という遺伝子のはたらきが半分に減ることで、足先を動かす運動神経が少しずつ弱っていく、進行のとてもゆっくりな病気です。おもに足首や足指の力が入りにくくなり、つまずきやすさ、足の変形(凹足・ハンマートゥなど)として気づかれます。感覚(しびれ・痛み)はほとんど障害されず、同じ遺伝子の別タイプの変化が起こす脳の病気(てんかんや知的障害)は原則として伴いません。多くの方は成人期を通じて歩く力を保ちます。

  • おもな症状 → 足先の筋力低下・筋やせ、垂れ足による特徴的な歩き方、凹足やハンマートゥなどの足の変形
  • 原因 → SPTAN1遺伝子のはたらきが半分になる「ハプロ不全」。神経の骨組みが足りず、いちばん長い足の神経から弱る
  • 同じ遺伝子・別の病気 → 変化のタイプが違うと、重い脳の病気(発達性てんかん性脳症など)を起こすことがある
  • 遺伝のしかた → 常染色体顕性(優性)遺伝。ただし変化を受け継いでも一生症状が出ない人(無症状保因者)もいる
  • 最近わかったこと → 同じ遺伝子の変化が「小児期発症の遠位型ミオパチー(筋の病気)」も起こすことが2025年に報告された

🧬 遺伝性遠位型運動ニューロパチー11型の基本情報

項目 内容
疾患名 遺伝性遠位型運動ニューロパチー11型(和名)/Neuronopathy, distal hereditary motor, autosomal dominant 11(英名)/略称 dHMN11・HMND11
原因遺伝子 SPTAN1(9番染色体長腕 9q34.11)/α-IIスペクトリンをコード
遺伝形式 常染色体顕性(優性)遺伝。不完全浸透(変化があっても発症しない人がいる)を伴う
OMIM表現型番号 620528
頻度・報告例数 きわめてまれ。最初の報告は3家系(2019年)で、その後も家系・孤発例の報告が少数積み重なっている段階
主な症状 下肢遠位(足先)優位の筋力低下・筋やせ、垂れ足・鶏歩、凹足・ハンマートゥ等の足の変形。感覚障害は原則なし
診断の決め手 神経伝導検査(運動神経のCMAP低下・感覚神経は正常)+次世代シーケンサーによるSPTAN1の機能喪失変異の同定
鑑別すべき疾患 他のdHMNサブタイプ、シャルコー・マリー・トゥース病2型、若年発症ALS、遺伝性痙性対麻痺、遠位型ミオパチー
再発率・保因者 親から子へ変化が伝わる確率は50%。ただし伝わっても発症しない無症状保因者が同じ家系内にいる
検査上の注意 遺伝子1文字の置き換えだけでなく、SPTAN1を含む9q34.11領域の微小欠失が原因のこともあり、コピー数解析の併用が有用

各項目の根拠と詳しい解説は、本文の該当セクションをご覧ください。

1. dHMN11とは ─ 足先から始まる、進行のゆっくりな運動神経の病気

dHMN11は、足先を動かす運動神経がゆっくり弱っていく、進行の遅い病気です。感覚は保たれ、脳のはたらきにも影響しないため、多くの方は長い年月のあいだ歩く力を保ちます。まずは「どのグループに属する病気なのか」から整理していきます。

遺伝性遠位型運動ニューロパチー(distal Hereditary Motor Neuronopathy、略してdHMN)は、手足の先の方(遠位)を動かす運動神経だけが選択的に、少しずつ弱っていく遺伝性の病気のグループです[1]。感覚をつかさどる神経はほとんど障害されないのが最大の特徴で、しびれや痛みを伴わないまま、手足の先の筋力が落ちて筋肉がやせていきます。感覚を伴わないことから、歴史的には「脊髄性シャルコー・マリー・トゥース病」とも呼ばれてきました。

このグループはたくさんの原因遺伝子に分かれており、その一つが今回のテーマであるSPTAN1遺伝子による11型(dHMN11)です。9番染色体の長腕(9q34.11)にあるSPTAN1の変化によって起こり、公的な疾患データベースOMIMには表現型番号620528として登録されています[2]。小児期から若年成人期にかけて発症し、おもに下肢の足先から症状が出るのが典型です。

ここで、患者さんやご家族にとって大切な点をひとつ。dHMN11は「運動ニューロン(神経細胞)の病気」ではありますが、命に関わる進行の速い病気である筋萎縮性側索硬化症(ALS)とはまったく別のものです。進行はきわめてゆっくりで、症状が長く止まって見える方も少なくありません[3]。「運動ニューロン」という言葉に驚かれるかもしれませんが、経過も見通しもALSとは大きく異なる、という点をまず知っていただければと思います。

💡 用語解説:ニューロパチーとニューロノパチー

ニューロパチー(神経障害)は神経の「枝(軸索)」そのものが傷む状態を、ニューロノパチー(神経細胞障害)は神経の「本体(細胞体)」が傷む状態を指す言葉です。dHMNは、病変の中心が脊髄の前角にある運動神経細胞の本体にあるという考え方から、英語名では「Neuronopathy」と呼ばれます。ただし実際には長い軸索の維持がうまくいかなくなることが症状の主体で、両者は地続きの現象です。この記事では、なじみのある「ニューロパチー」という呼び方も併用します。

2. SPTAN1とα-IIスペクトリン ─ 神経を長もちさせる「骨組み」の設計図

SPTAN1がつくるα-IIスペクトリンは、細胞の内側を裏打ちして形を保つ「骨組み(足場)」のタンパク質です。とくに神経では、電気信号を高速で伝えるための特別な構造を支えており、これが足りなくなると長い神経の枝が物理的に壊れやすくなります。

SPTAN1(Spectrin alpha, non-erythrocytic 1)は、赤血球以外の多くの細胞に広く存在するα-IIスペクトリンというタンパク質の設計図です[4]。2472個のアミノ酸からなる非常に大きな分子で、細胞膜のすぐ内側で網目状の骨組みをつくります。βスペクトリンという相棒とペアを組み、それが連結して巨大な網目のネットワークをつくり、アクチンという線維と結びついて細胞に強さとしなやかさを与えます。

神経細胞では、この骨組みが決定的に重要な2か所を支えています。ひとつは軸索起始部(AIS)、もうひとつはランヴィエ絞輪です。どちらも、神経が電気信号(活動電位)を発生させ、飛び石のように高速で伝えるために欠かせない場所です。ここには電位依存性ナトリウムチャネルというイオンの通り道が高密度に集められ、アンキリンGという別の足場タンパク質と、α-IIスペクトリン・βIVスペクトリンからなる骨組みが、規則正しい周期をもった格子として固定しています[5]

💡 用語解説:軸索起始部(AIS)とランヴィエ絞輪

神経細胞から伸びる長い電線を軸索といいます。その付け根で電気信号が生まれる出発点が軸索起始部(AIS)、電線の途中に一定間隔で置かれた中継ポイントがランヴィエ絞輪です。信号はこの中継ポイントを飛び石のように跳んで伝わるので、とても速く伝わります。α-IIスペクトリンの骨組みは、この出発点と中継ポイントに部品(イオンチャネル)を正しく固定し、長い電線が引っぱられる力から膜を守る役割をしています。

この骨組みは、イオンチャネルの密度を保つだけでなく、日々引き伸ばされる長い軸索を物理的なストレスから守るクッションの役目も果たしています。ヒトで最も長い神経は足の先まで1メートル以上に達します。ですから、この骨組みが不足すると、いちばん長くて負担の大きい足の神経から順に壊れやすくなる――これがdHMN11で足先から症状が始まる理由の根っこです。ご家族にとっては、「なぜ手ではなく足からなのか」「なぜゆっくり進むのか」という素朴な疑問の答えが、この分子の役割に隠れている、と理解していただければと思います。

なお、α-IIスペクトリンは神経以外でも、細胞核でのDNA修復や、免疫細胞のはたらき、心臓のイオンチャネルの配置など、多彩な役割を担うことが知られています[4]。それでもdHMN11で足の運動神経が選択的に傷むのは、長い軸索がとりわけ大量の骨組みを必要とするという「需要と供給」のアンバランスによると考えられています。

🩺 院長コラム:まれな病気こそ「仕組み」から考える

dHMN11のように報告例の少ない病気では、教科書に載っている情報だけでは判断がつかないことがあります。私はこうしたとき、「この遺伝子が体の中で何をしているか」という分子のしくみに立ち返って考えるようにしています。α-IIスペクトリンが神経の骨組みを作るタンパク質だと分かれば、なぜ足先から症状が出るのか、なぜ感覚は保たれるのかが自然に理解できます。まれな病気に向き合うとき、仕組みの理解は、患者さんとご家族に見通しをお伝えするための一番の土台になると考えています。

3. 遺伝子変化の二面性 ─ 同じSPTAN1が、なぜ足の病気にも脳の病気にもなるのか

同じSPTAN1でも、変化の「タイプ」によって異なる病気として現れることがあります。dHMN11では、遺伝子のはたらきが半分に減る「機能喪失(ハプロ不全)」が主要な発症機序です。一方、特定のミスセンス変異やインフレーム変異では、作られた異常なα-IIスペクトリンの構造や機能の乱れを介して、中枢神経症状を伴う病気を起こすことがあります。

SPTAN1関連の病気で最も興味深いのは、変化の性質によって、末梢神経の病気にも、中枢神経(脳)の病気にもなりうるという点です。おおまかに2つのメカニズムに分けられます。

①ハプロ不全(機能喪失)─ dHMN11のメカニズム

dHMN11を起こすのは、SPTAN1のナンセンス変異フレームシフト変異スプライス部位変異、あるいは遺伝子全体の欠失といった「機能喪失(loss-of-function)」型の変化です[6]。最初の報告(2019年)でも、p.Arg139*、p.Gln1539* など、途中でタンパク質づくりを止めてしまう変化が複数見つかっています[1]

こうした変化をもつ遺伝子の写し(mRNA)は、細胞に備わった品質管理のしくみであるナンセンス変異依存mRNA分解(NMD)によってすばやく壊されます[1]。その結果、正常なα-IIスペクトリンの量が健康な人のおよそ半分に減ってしまいます。これが「ハプロ不全(片方の遺伝子が働かず、量が足りない状態)」です[2]

💡 用語解説:ナンセンス変異とNMD

ナンセンス変異は、タンパク質の設計図の途中に「ここで終わり」という中断の合図(終止コドン)が割り込んでしまう変化です。中途半端なタンパク質は害になりかねないため、細胞はNMD(ナンセンス変異依存mRNA分解)というしくみで、その設計図の写しを読む前に壊してしまいます。結果として、変化した側からはタンパク質がほとんど作られず、正常な側の分だけ、つまり半分だけになります。dHMN11はこの「半分では足りない」ことが原因です。

機能喪失型変異によるdHMN11では、これまで報告された症例では重い発達性てんかん性脳症を通常伴わず、主として末梢の運動神経障害として現れます[3]。一方、1メートル以上に達する足の運動神経では、生涯にわたって長い軸索の構造を維持する必要があります。α-IIスペクトリンの量が減ることで、こうした長い軸索ほど影響を受けやすい可能性があり、足先から症状が現れる「長さ依存性」の病態につながると考えられています。ただし、なぜ中枢神経症状を伴わず末梢運動神経が選択的に障害されるのか、その詳しい機序にはなお不明な点があります。

②異常タンパク質による機能障害 ─ 重い脳の病気のメカニズム

一方、SPTAN1のインフレーム欠失(例:p.Lys2083del)や特定のミスセンス変異(例:p.Arg19Trp)は、機能喪失型とは異なる道すじで病気を起こすと考えられています[7]。これらでは異常なα-IIスペクトリンが作られ、スペクトリン複合体の構造や安定性、細胞内での機能を乱す可能性があります。変異によってはドミナント・ネガティブ効果などの機序が提唱されていますが、すべての変異を同一の機序で説明できるとは限りません。

こうしたα-IIスペクトリンの構造・機能異常は中枢神経の発達や機能に大きな影響を及ぼし、変異によっては髄鞘形成異常、脳や小脳の萎縮、重い発達障害、そして治療が難しい発達性てんかん性脳症5型(DEE5、OMIM 613477、ウエスト症候群など)を引き起こします[8]。変化の位置によっては、てんかんを伴わない痙性対麻痺や小脳失調(SPG91、OMIM 620538)、あるいはより軽い発達遅滞(DEVEP、OMIM 620540)として現れることもあり、表現型の幅はとても広いことが分かっています[9]

この「変化のタイプで病気が分かれる」という関係を図にまとめました。

① ハプロ不全(機能喪失)
ナンセンス/フレームシフト
/スプライス/欠失

NMDで写しが分解

α-IIスペクトリンが約50%に

末梢神経・筋
dHMN11/遠位型ミオパチー
脳症状なし・進行ゆるやか
② 異常タンパク質による機能障害
ミスセンス
/インフレーム欠失

異常タンパク質が作られる

構造・安定性・機能の障害

中枢神経(脳)
DEE5/SPG91/発達遅滞
てんかん・知的障害など重度

図:SPTAN1の変化のタイプと、起こる病気のちがい

この二面性は、ご家族にとって大切な意味をもちます。dHMN11の原因となる機能喪失型の変化は、DEE5などで見られるてんかんや知的障害を「伴わない」タイプだからです。つまり、足の症状が中心のdHMN11と診断された場合、同じ遺伝子でも重い脳の病気とは発症のしくみが異なる、と理解していただけます。

4. 症状と足の変形 ─ 何が、どこから、どのように起こるのか

最初に気づかれるのは、たいてい足先の力の入りにくさによる歩きにくさです。足首が上がりにくくてつまずく、足首をよくくじく、走れない――こうしたサインから始まり、進行とともに凹足やハンマートゥなどの足の変形が現れます。

dHMN11で特に知っておきたいのは、同じ家系で同じ変化をもっていても、症状の重さが人によって大きく違うという点です[3]。重い歩行障害を示す方がいる一方で、高齢になっても症状がまったく出ない「無症状保因者」も確認されています。発症の年齢も幅広く、3歳、6歳といった小児期のほか、20歳前後や約30歳での発症も報告されています。

初期症状 ─ 歩き方のサイン

いちばん長い神経が支配する足先の筋力低下から始まるため、初期は歩き方の変化として気づかれます。具体的には、歩行が不安定でよく転ぶ、足首をよくくじく、走れない、動作が全体的に不器用になる、といったサインです[3]。とくに特徴的なのが「鶏歩(けいほ)」と呼ばれる歩き方です。すねの前側の筋肉(前脛骨筋)が弱ると足首を上に持ち上げにくくなり(垂れ足)、つま先が地面に引っかからないように、膝を高く上げて歩くようになります。

筋力低下の分布と足の変形

病変の中心は下肢の遠位部(ふくらはぎから下)です。足指を伸ばす筋肉やすねの前の筋肉が特に弱り、筋肉がやせていきます[2]。上肢は初期には保たれ、進行してから手の細かい動き(ボタンかけやファスナー操作)がしにくくなる程度にとどまることが多いです。下肢の腱反射(膝やアキレス腱をたたいたときの反射)は低下または消失するのが一般的です。

足先の筋肉のバランスが慢性的に崩れることで、成長の過程で特徴的な足の変形が高い頻度で生じます。具体的には、土踏まずが極端に高くなる凹足(おうそく)、足指が曲がったまま固まるハンマートゥ・クロートゥ、外反母趾、アキレス腱の短縮などです[2]。こうした変形は、靴が合わない・歩きにくいといった日常の困りごとに直結するため、早めの装具の工夫が大切になります。

🦵 下肢(病変の中心)
足首・足指の筋力低下と筋やせ/垂れ足・鶏歩/踵歩きが困難
✋ 上肢(後期に軽度)
手の細かい動きの低下/進行例で軽い筋やせ
🦶 足の変形
凹足・扁平足/ハンマートゥ・クロートゥ/外反母趾・アキレス腱短縮

図:dHMN11で見られる主な身体所見の分布

感覚は保たれ、進行はゆっくり

dHMNの定義どおり、感覚の障害は原則としてありません。一部の方で足首の振動覚がわずかに低下することはありますが、症状の主体はつねに運動です[2]。また、てんかんや知的障害、小脳失調などの脳の症状も認められません。進行はきわめてゆっくりで、長期にわたり歩く力を保つ方が多く、加齢とともに杖や足首の装具が必要になることはあっても、車いす生活に至るのはごく一部の重症例に限られます[3]。ご家族にとっては、「この先どうなるのか」という不安に対して、多くの場合ゆっくりとした経過をたどるという見通しをもてることが、少しでも支えになればと思います。

5. 遠位型ミオパチーとの重なり ─ 2025年に広がった病気の姿

近年の重要な進展として、SPTAN1の機能喪失変異が、神経だけでなく「筋肉そのものの病気(小児期発症の遠位型ミオパチー)」も起こすことが分かってきました。神経の病気と筋肉の病気の境界が、思っていたよりあいまいだった、というのが新しい理解です。

2025年に国際的な多施設共同研究として正式に発表された報告では、下肢遠位の筋力低下があるのに原因が長らく分からなかった14家系20名の患者から、SPTAN1の機能喪失変異が同定されました[10]。これらの患者では、次のような特徴が確認されています。

まず電気生理学的な検査(針筋電図)では、純粋な神経由来の変化だけでなく、筋肉由来(ミオパチー性)の変化が混ざって観察されました[10]。筋肉のMRIやCTでは、下肢の前側のコンパートメントの脂肪への置き換わりと、とくに長母趾伸筋(足の親指を伸ばす筋肉)が選択的に障害されるという特徴が見られました。さらに筋生検では、軽いジストロフィー性の変化を伴うミオパチー像と、慢性的な神経由来の変化が混在していました。

重要なのは、患者さんの筋組織を用いた分子解析で、NMDによる変異mRNAの分解と、それに伴うα-IIスペクトリンの量の低下(ハプロ不全)が直接証明されたことです[10]。骨格筋でも、スペクトリンの骨組みは筋線維をつつむ膜(筋鞘)の安定に関わっています。つまりα-IIスペクトリンが半減すると、神経の軸索が壊れるだけでなく、筋肉そのものも弱くなりうる、という本質的なもろさが示されたのです。

この発見は、患者さんとご家族にとって実際的な意味をもちます。足先の筋力低下という同じ症状でも、「神経の病気」と診断されるか「筋肉の病気」と診断されるかは、検査の切り口によって変わりうる、ということです。だからこそ、SPTAN1という遺伝子まで含めて調べることが、正しい診断への近道になります。なお、SPTAN1を含む9q34.11領域がまるごと欠けることで遠位型ミオパチーが起こる家系も報告されており、遺伝子1文字の変化だけでなく、より大きな欠失も念頭に置く必要があります[11]

6. 診断の進め方 ─ 神経の検査から遺伝子検査へ

診断は、まず神経の電気の流れを調べる検査で「運動神経が傷んでいて、感覚神経は保たれている」ことを確認し、そのうえで次世代シーケンサーによる遺伝子検査でSPTAN1の変化を見つける、という流れで進みます。

dHMN11の確定診断には、診察に加えて、電気生理学的検査・画像検査・遺伝子検査を組み合わせます。順を追って見ていきましょう。

STEP 1 神経伝導検査(NCS)
運動神経では複合筋活動電位(CMAP)の振幅が低下(=運動神経の枝が脱落)。感覚神経(SNAP・SCV)は正常。この「運動だけ・感覚は正常」がCMT2型との重要な分かれ目です。
STEP 2 針筋電図(EMG)
足先の筋肉に慢性の神経原性変化(脱神経と再神経支配のサイン)。近年は一部でミオパチー性の変化が混ざることも分かってきました。
STEP 3 遺伝子検査(NGS)
遺伝性ニューロパチー/CMT/遠位型ミオパチーの多遺伝子パネル、または全エクソーム・全ゲノム解析でSPTAN1の機能喪失変異を同定。コピー数変異(CNV)解析で9q34.11の微小欠失も確認します。

図:dHMN11の診断ステップ

神経伝導検査では、腓骨神経など下肢の運動神経でCMAPの振幅がはっきり低下します。これは運動神経の枝が脱落していることを直接反映しています。一方で運動神経の伝導速度は概ね保たれるため、髄鞘(神経の絶縁被膜)が主に傷むCMT1型のような病気とは区別できます[2]。そして感覚神経は電気生理学的に完全に保たれます。この「感覚は正常」という所見が、感覚も傷むCMT2型と分けるうえでの決定的な手がかりになります。

遺伝子検査は、次世代シーケンサー(NGS)を用いた解析が中心です[2]。遺伝性ニューロパチーやCMT、遠位型ミオパチーを網羅した多遺伝子パネル検査が第一選択となることが多く、陰性の場合や表現型が非典型的な場合には全エクソーム解析(WES)・全ゲノム解析(WGS)に進みます。ここで大切なのは、SPTAN1では1文字の置き換えだけでなく、遺伝子全体や9q34.11領域の微小欠失が原因になることがある点です。まれにSPTAN1と隣接するてんかん原因遺伝子STXBP1を含む広い欠失が生じることもあるため、コピー数変異(CNV)解析やマイクロアレイの併用が診断の役に立ちます。ご家族にとっては、「一度の検査で見つからなくても、調べ方を変えると分かることがある」という点を知っておいていただくと安心につながります。

7. 似た病気との区別 ─ 正しい診断のための鑑別

足先の筋力低下を起こす病気は他にもあり、症状だけでは見分けがつきにくいことがあります。感覚が保たれているか、上位運動ニューロンのサイン(痙縮など)があるか、進行の速さはどうか、が区別の手がかりになり、最終的には遺伝子検査で確定します。

正確な診断のためには、似た症状を示す病気を一つずつ除外していく必要があります[1]。おもな鑑別のポイントを整理します。

似た病気 見分けのポイント
他のdHMNサブタイプ HSPB8・HSPB1・GARSなど多くの原因遺伝子があり、症状だけでの区別はほぼ不可能。遺伝子パネル検査での確定が必須です。
CMT2型(軸索型) 足先の筋力低下と筋やせはそっくりですが、CMT2は感覚神経も傷むため、しびれや感覚鈍麻を伴います。SNAPの評価が決め手です。
若年発症ALS ALSは上位・下位の両方の運動ニューロンが進行性に傷みます。dHMN11では通常、痙縮などの上位運動ニューロン徴候はなく、進行も圧倒的にゆっくりです。
遺伝性痙性対麻痺(SPG91) 同じSPTAN1でも、特定のミスセンス変異は下肢の痙縮を特徴とするSPG91を起こします。dHMN11は逆に、力が抜ける弛緩性の麻痺と筋やせが中心です。
遠位型ミオパチー 前述のとおりSPTAN1の機能喪失変異は筋の病気も起こし、症状が重なります。筋生検・筋MRI・遺伝子検査を組み合わせて評価します。

とくにSPG30をはじめとする遺伝性痙性対麻痺は、下肢の症状という点で紛らわしいことがありますが、詳しい神経学的診察で「力が抜けるタイプ(弛緩性)」か「つっぱるタイプ(痙性)」かを見分けることで区別できます[9]。ご家族にとっては、こうした鑑別のプロセスを知っておくことで、「なぜいくつも検査をするのか」が腑に落ちやすくなると思います。似た病気を一つずつ丁寧に除外することが、正しい診断と適切な対応への近道です。

8. 遺伝と暮らし ─ 遺伝カウンセリングで大切にしたいこと

dHMN11は常染色体顕性(優性)遺伝で、親から子へ変化が伝わる確率は50%です。ただし「変化を受け継いでも、必ず発症するとは限らない」という点が、この病気の遺伝カウンセリングで最も大切なところです。

dHMN11は常染色体顕性(優性)遺伝の形をとるため、患者さんからお子さんへ変化が受け継がれる確率は50%です[2]。ただし、遺伝カウンセリングで最も大切な、そして最も難しいのが、この病気特有の不完全浸透と、症状の重さの大きな幅(表現度の多様性)です。

同じ家系のなかで、まったく同じ変化をもっていても、ある人は小児期から重い歩行困難になる一方で、別の人は高齢になっても電気生理学的な異常すら示さず、完全に無症状のままということが数多く報告されています[3]。この事実は、発症前の遺伝子検査を考えるときに「変化が見つかっても、一生涯にわたって必ずしも重い症状が出るとは限らない」という複雑な状況を生みます。

💡 用語解説:不完全浸透と無症状保因者

不完全浸透とは、病気の原因となる遺伝子の変化をもっていても、必ずしも発症するとは限らない現象のことです。変化をもちながら症状が出ていない人を無症状保因者と呼びます。dHMN11ではこの傾向が強く、同じ家系内でも発症する人としない人が混在します。ですから遺伝子検査の結果は、「発症する・しない」を白黒つけるものではなく、あくまで一つの情報として、慎重に受け止める必要があります。

こうした特徴があるため、発症前診断を行う際には、結果がもたらす意味を十分に時間をかけて共有し、検査を受けるかどうかの意思決定を継続的に支えることが欠かせません。当院では臨床遺伝専門医が、こうした見通しの難しさも含めてていねいに情報提供を行う姿勢を大切にしています。検査結果の数値だけでなく、それをどう受け止め、どう暮らしていくかまでを一緒に整理していくことが、遺伝医療の役割だと考えています。遺伝カウンセリングの考え方や、臨床遺伝専門医の役割についても、あわせてご覧いただけます。

🩺 院長コラム:「結果が出ても、白黒はつかない」という誠実さ

遺伝子検査は、ときに「発症するかどうかを教えてくれるもの」と期待されます。けれどdHMN11のように不完全浸透を伴う病気では、変化が見つかっても将来の発症を言い切ることはできません。私はこの「わからなさ」を隠さずにお伝えすることが、かえってご本人やご家族の納得につながると考えています。曖昧さを正直に共有したうえで、それでも今できる備えを一緒に考える。それが遺伝医療の誠実なかたちだと思っています。

9. 治療と研究の展望 ─ 今できることと、これからの可能性

現時点でdHMN11の根本原因を治す薬はまだありませんが、装具療法やリハビリテーション、必要に応じた整形外科的な手術によって、歩く力と生活の質を長く保つことは十分に可能です。研究面では、不足したα-IIスペクトリンを補うアプローチが将来の治療戦略として検討されています。

現在、dHMN11の根本原因(α-IIスペクトリンのハプロ不全)を標的とした治療薬は確立されておらず、対症療法と支持療法が中心となります。ただし、進行がゆっくりであることを活かして、生活の質を長く保つ工夫が数多くあります。

理学療法・作業療法では、筋力低下の進行を遅らせ、関節が固まるのを防ぐためのストレッチや関節可動域訓練、過負荷を避けた適切な運動が勧められます[3]。垂れ足や鶏歩に対しては、足関節装具(AFO)や整形外科用インソールの早めの導入が、歩行の安定を大きく改善し、転倒による二次的なけがを減らすうえでとても有効です[3]。重度のアキレス腱の拘縮や足の変形が進んで、保存的な方法では歩行や靴の着用に大きな支障が出る場合には、腱延長術などの整形外科的手術が検討されることもあります。こうした介入は、ご本人が「自分の足で歩き続ける」ことを支える、実際的で意味のある手立てです。

研究面では、病態のかぎを握る動物モデルが理解を支えています。ゼブラフィッシュを用いた研究では、この遺伝子が末梢神経のナトリウムチャネルの集積や髄鞘形成に発生初期から不可欠であることが示されています[4]。またマウスでは、ドミナント・ネガティブ効果を再現したSpna2 R1098Q変異マウスが、ヒトのてんかん性脳症や失調、痙性対麻痺の症状を模倣する貴重なモデルとして機能しています[12]

dHMN11の主な原因である「NMDによるハプロ不全」という病態機序からは、将来的な研究方向としていくつかのアプローチを理論的に考えることができます。たとえば、特定のナンセンス変異に対するリードスルー、NMD経路の調節、あるいは正常な側の遺伝子の発現を高める方法などです。ただし、これらはdHMN11に対する確立した治療法や臨床開発中の標準的治療を意味するものではなく、現時点では病態機序から考えられる研究上の可能性です。神経や筋肉の中のα-IIスペクトリン量を必要なレベルまで回復させることができれば、軸索の変性や筋鞘の崩壊を未然に防げる可能性があり、今後の研究の進展が期待されます。現時点ではいずれも研究段階ですが、原因が明確に分かっている病気であることは、将来の治療開発にとって大きな強みです。

📌 このページを読んだあなたへ

この記事にたどり着いた方は、たとえば「足先の力が入りにくい・つまずきやすいと指摘された」「ご家族にdHMN11やSPTAN1の変化が見つかった」「遺伝子検査の結果をどう受け止めればよいか迷っている」といった状況かもしれません。次に確認しておくとよい観点を挙げておきます。

遺伝形式と再発率:常染色体顕性で子への伝達は50%。ただし不完全浸透があり、伝わっても発症しない場合があります。

原因遺伝子の理解:まずはSPTAN1遺伝子ハプロ不全の考え方を押さえると、他の症状との違いが理解しやすくなります。

似た病気との区別:感覚症状があるならCMT(総論)との鑑別が、脳の症状を伴うなら別タイプのSPTAN1関連疾患の可能性が論点になります。

確定診断の選択肢:神経伝導検査と遺伝子検査(CNV解析を含む)の組み合わせが診断のかぎになります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 遺伝性遠位型運動ニューロパチー11型(dHMN11)とは、どんな病気ですか?

SPTAN1という遺伝子のはたらきが半分に減ることで、足先を動かす運動神経が少しずつ弱っていく、進行のとてもゆっくりな遺伝性の病気です。おもに足首や足指の力が入りにくくなり、つまずきやすさや足の変形(凹足・ハンマートゥなど)として気づかれます。感覚(しびれ・痛み)はほとんど障害されず、同じ遺伝子の別タイプの変化が起こす脳の病気(てんかんや知的障害)は原則として伴いません。命に関わる進行の速い病気であるALSとはまったく別のもので、多くの方は成人期を通じて歩く力を保ちます。

Q2. 子どもに遺伝しますか?必ず発症するのでしょうか?

dHMN11は常染色体顕性(優性)遺伝の形をとるため、患者さんからお子さんへ変化が受け継がれる確率は50%です。ただし、この病気は不完全浸透といって、変化を受け継いでも必ずしも発症するとは限りません。同じ家系のなかで、まったく同じ変化をもっていても、重い歩行困難になる人と、高齢まで無症状の人が混在することが報告されています。したがって「変化がある=必ず発症する」とは言えず、結果の受け止め方については臨床遺伝専門医とよくご相談いただくことをおすすめします。

Q3. ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは違うのですか?

はい、まったく別の病気です。dHMN11は下位運動ニューロンだけが、しかもきわめてゆっくり傷む病気で、痙縮などの上位運動ニューロン徴候は通常みられません。一方ALSは、上位・下位の両方の運動ニューロンが進行性に傷み、経過も速い病気です。dHMN11は進行が非常にゆっくりで、症状が長く止まって見える方も多く、多くの患者さんが成人期後期まで歩く力を保ちます。「運動ニューロンの病気」という言葉は共通していても、経過も見通しも大きく異なります。

Q4. 同じSPTAN1の病気なのに、てんかんや知的障害を伴う人がいるのはなぜですか?

変化の「タイプ」が違うからです。dHMN11を起こすのは、遺伝子のはたらきが半分に減る機能喪失(ハプロ不全)タイプの変化で、これまで報告されたdHMN11では重い発達性てんかん性脳症を通常伴わず、主として末梢の運動神経障害として現れます。一方、特定のミスセンス変異やインフレーム変異では、異常なα-IIスペクトリンの構造や機能の乱れを介して、発達性てんかん性脳症(DEE5)などの中枢神経疾患を起こすことがあります。同じSPTAN1でも、変異の性質によって発症のしくみと表現型が異なるのです。

Q5. どうやって診断するのですか?

まず神経伝導検査で、運動神経が傷んでいて感覚神経は保たれていることを確認します。この「運動だけ・感覚は正常」という所見が、感覚も傷むCMT2型と分ける重要な手がかりです。次に針筋電図で慢性の神経原性変化を確認し、最終的には次世代シーケンサーを用いた遺伝子検査でSPTAN1の機能喪失変異を同定します。SPTAN1では1文字の変化だけでなく、9q34.11領域の微小欠失が原因になることもあるため、コピー数変異(CNV)の解析を併用すると診断の役に立ちます。

Q6. 治療法はありますか?

現時点で根本原因を治す薬はまだ確立されていませんが、生活の質を長く保つための手立ては数多くあります。理学療法・作業療法によるストレッチや関節可動域訓練、垂れ足に対する足関節装具(AFO)やインソールの早めの導入は、歩行の安定を大きく改善し、転倒によるけがを減らします。足の変形が進んだ場合には整形外科的手術が検討されることもあります。研究面では、不足したα-IIスペクトリンを補うアプローチ(リードスルー薬やNMDの調節など)が将来の治療戦略として検討されていますが、いずれも現時点では研究段階です。

Q7. 足先の筋力低下があります。神経の病気ですか、それとも筋肉の病気ですか?

SPTAN1の機能喪失変異は、神経の病気(dHMN11)だけでなく、小児期発症の遠位型ミオパチー(筋肉の病気)も起こすことが2025年に報告されました。針筋電図では神経由来と筋肉由来の変化が混ざり、筋MRIでは長母趾伸筋が選択的に障害されるなどの特徴が見られます。つまり同じ足先の筋力低下でも、検査の切り口によって「神経」と診断されるか「筋肉」と診断されるかが変わりうるため、SPTAN1という遺伝子まで含めて調べることが正しい診断につながります。

Q8. 発症前に遺伝子検査を受けるべきでしょうか?

これは一律に「受けるべき」とお答えできる問いではありません。dHMN11は不完全浸透を伴うため、変化が見つかっても生涯にわたって必ず症状が出るとは限らず、結果が「発症する・しない」を白黒つけてくれるわけではないからです。だからこそ、検査を受けるかどうかは、結果がもたらす意味を十分に理解したうえで、ご本人の意思で決めていただくことが大切です。臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングで、見通しの難しさも含めて情報を整理し、納得のいく形で意思決定できるよう伴走します。

🏥 遺伝性の運動ニューロパチー・筋疾患の遺伝子診断のご相談

dHMN11・SPTAN1関連疾患をはじめとする遺伝性の末梢神経・筋疾患に関する
遺伝子検査と遺伝カウンセリングは
臨床遺伝専門医が在籍するミネルバクリニックにご相談ください。

参考文献

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  • [3] Nonsense mutations in alpha-II spectrin in three families with juvenile onset hereditary motor neuropathy. Brain. 2019. [Brain 142(9):2605]
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  • [5] αII Spectrin Forms a Periodic Cytoskeleton at the Axon Initial Segment and Is Required for Nervous System Function. J Neurosci. 2017. [PMC5700417]
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  • [8] OMIM #613477. DEVELOPMENTAL AND EPILEPTIC ENCEPHALOPATHY 5; DEE5. Johns Hopkins University. [OMIM 613477]
  • [9] OMIM #620538. SPASTIC PARAPLEGIA 91, AUTOSOMAL DOMINANT, WITH OR WITHOUT CEREBELLAR ATAXIA; SPG91. Johns Hopkins University. [OMIM 620538]
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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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