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KBG症候群はNIPTでわかる?いつわかるか・遺伝の確率・インペリアルプランで調べられる範囲

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

「KBG症候群は、赤ちゃんがお腹にいる間に見つけられるの?」。インペリアルプランの対象疾患の一覧でこの病名を見かけた方や、ご自身・パートナー・上のお子さんがKBG症候群と診断されている方が、こうした疑問を持たれるのは自然なことです。先に結論をお伝えすると、KBG症候群の原因のうちANKRD11遺伝子の中の小さな変化は、インペリアルプランで調べられます。一方で、ANKRD11を含む染色体の一部(16q24.3)が欠けるタイプは、調べる一覧に入っていません。「NIPTでKBG症候群がすべてわかる」わけではない、という点が大切です。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. KBG症候群はNIPTでわかりますか?

一部はわかります。原因のANKRD11遺伝子の小さな変化はインペリアルプランで調べられます(ダイヤモンドプランには入っていません)。ただし、16q24.3の欠失で起こるタイプは調べる一覧に入っておらず、対象の遺伝子でも、すべての変化を見つけられるとは限りません。

🩻 Q. 妊娠中のエコーでわかりますか?

エコーだけでKBG症候群と見分けることは難しい病気です。首のむくみや羊水の多さなどが報告されることはありますが、どれもKBG症候群に特有の所見ではありません。

🧩 Q. 自閉症や発達の遅れと関係がありますか?

KBG症候群では、知的障害(多くは軽度〜中等度)や、自閉スペクトラム症・ADHDの特徴を伴うことがあります。当院のNIPTは、自閉症・発達障害・知的障害の原因になる遺伝子や染色体の変化の一部を調べられます。陰性でも、自閉症や発達の遅れがないとは言えません。

👪 Q. 親がKBG症候群だと、赤ちゃんに遺伝しますか?

親が当事者なら、妊娠ごとに2分の1の確率で受け継がれます。お母さんが当事者のときは、NIPTでは変化がお母さん由来か赤ちゃん由来かを区別できないため、絨毛検査か羊水検査で赤ちゃんを調べます。

🏥 Q. 陽性だったらどうなりますか?

NIPTはスクリーニング検査なので、陽性なら確定検査で確かめます。当院では絨毛検査(妊娠11〜13週)・羊水検査(妊娠15週から)まで院内で受けられます。

当院の東京のNIPT(新型出生前診断)では、KBG症候群の原因になるANKRD11遺伝子をインペリアルプランで調べています。臨床遺伝専門医が常駐し、陽性のときは確定検査まで院内で受けられます。

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インペリアルプランは、最大155遺伝子(202疾患)の単一遺伝子の変化まで調べます。まだ決めていない方は:
インペリアルプラン | インペリアルとダイヤモンドの違い

KBG症候群とは? ― 妊娠中に知っておきたい要点だけ

KBG(ケービージー)症候群とは、16番染色体の16q24.3という場所にあるANKRD11(アンクアールディー・イレブン)遺伝子の変化、またはこの遺伝子を含む小さな欠失によって起こる、生まれつきの病気です[2][3]。上の前歯(中切歯)が大きいことが特徴の一つで[3]、知的障害・発達の遅れ、自閉スペクトラム症やADHDの特徴、てんかんなどを伴うことがあります[1]。症状の出方には個人差が大きく、同じKBG症候群でも一人ひとり違います。

📋 KBG症候群で報告されている主な特徴

特徴 報告されている割合 対象・出典
知的障害 82%(多くは軽度〜中等度) 欧州の49人の研究で、評価できた44人のうち36人[1]
自閉スペクトラム症またはADHD 30% 同じ研究の49人のうち15人[1]
てんかん 26.5% 同じ研究の49人のうち13人[1]
上の前歯が大きい(巨歯) 80%(遺伝子の中の変化)/58%(欠失) 文献で報告された186人の分析[2]
低身長 報告により41〜83% 文献のまとめ[3]
遺伝子の診断がついた年齢 中央値11.6歳 年齢の記録があった168人[2]

研究によって対象の集め方が違うため、割合には幅があります。症状・診断・治療・経過についてはKBG症候群(ANKRD11遺伝子変異)の原因・症状・診断基準のページで詳しく解説しています。

表の最後の行は、出生前の検査を考えるうえで大切な数字です。遺伝子の診断がついた年齢の中央値は11.6歳で[2]、生まれてすぐにKBG症候群とわかることは多くありません。歯や顔つきの特徴、発達の様子が、成長とともに手がかりになっていく病気だといえます。

💡 用語解説:ANKRD11遺伝子と16q24.3欠失

ANKRD11(アンクアールディー・イレブン)は16番染色体の長い腕の先(16q24.3)にある遺伝子です。KBG症候群は、この遺伝子の中の小さな変化(1つの文字の置き換わりや数文字の抜けなど)で起こる場合と、遺伝子を含む染色体の一部ごと欠ける「16q24.3欠失」で起こる場合があります[2]。遺伝子の詳しい働きはANKRD11遺伝子の働きと役割をご覧ください。

KBG症候群はNIPTでわかる? ― インペリアルプランで調べられる範囲

KBG症候群は、NIPTで「一部は」わかります。当院で調べられるのはインペリアルプランだけで、対象はANKRD11遺伝子の中の小さな変化です。ダイヤモンドプラン(56遺伝子)にはANKRD11が入っておらず、スタンダード・プレミアム・双子マックスは単一遺伝子を調べません。

ここで知っておいていただきたいのは、KBG症候群の主な原因が、遺伝子の中の変化と、遺伝子を含む欠失の2つであることです。文献で報告された186人を分析した研究では、71.5%(133人)がANKRD11遺伝子の中の変化、27.4%(51人)が16q24.3の欠失でした[2]。インペリアルプランの92種類の微小欠失・重複の一覧に、16q24.3欠失は入っていません。

🧬 KBG症候群の原因と、当院のNIPTで調べる範囲

原因の種類 文献での割合[2] インペリアル ダイヤモンド スタンダード・プレミアム・双子マックス
ANKRD11遺伝子の中の小さな変化 71.5%(186人中133人) 調べる対象(すべての変化を見つけられるとは限りません) 対象外 対象外
ANKRD11を含む16q24.3の欠失 27.4%(186人中51人) 92種類の微小欠失・重複の一覧に入っていない 対象外 12種類・92種類の一覧に入っていない

割合は、文献で報告された186人を分析した研究の数字です(2つを合わせて186人中184人)[2]。インペリアルプランで調べる遺伝子の一覧は155遺伝子de novo変異NIPTで確認できます。

同じ研究では、欠失のタイプのほうが自閉スペクトラム症を伴う割合が高かった(18.7%と8.3%)と報告されています[2]。つまり、インペリアルプランで陰性でも「KBG症候群ではない」「自閉症の心配はない」とは言えません。陰性は「調べた範囲で、見つかる変化はなかった」という意味です。

インペリアルプランの単一遺伝子の精度と、結果までの日数

赤ちゃんに新しく起こった変化(de novo変異)を調べるNIPTの実測値は、インペリアルプランの検証データ(リスクの高い妊婦さん750人)で、陽性的中率96.9%・感度100%・特異度99.9%でした[7]。それでもNIPTはスクリーニング検査なので、陽性なら確定検査で確かめます。結果は基本10〜14日ですが、インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間かかります。

インペリアルプランとダイヤモンドプランのどちらを選ぶかは、インペリアルプランとダイヤモンドプランの違いで比べられます。KBG症候群まで調べたい場合は、インペリアルプランになります。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「KBG症候群はNIPTでわかる」と言い切らない理由】

KBG症候群を調べられるかと聞かれたとき、「はい、わかります」とだけお答えするのは正確ではないと考えています。主な原因には、ANKRD11遺伝子の中の小さな変化と、遺伝子を含む染色体の一部が欠けるタイプがあり、文献では後者が4人に1人ほどを占めているからです。インペリアルプランで対象にしているのは前者です。

しかも、欠けるタイプのほうが自閉スペクトラム症を伴う割合が高かったという報告があります。だからこそ、陰性の結果を「KBG症候群ではない」という意味に読み替えないでいただきたいのです。調べられる範囲と、調べられない範囲の両方を知ったうえでプランを選ぶことが、ご家族にとって納得のいく選択につながると考えています。

KBG症候群はいつわかる? ― エコーで見える所見と、わかる時期

妊娠中のエコーだけでKBG症候群とわかることは、ほとんど期待できません。欧州の49人の研究では、妊娠中のエコーで何らかの所見が報告されていたのは28.5%(14人)で、その中身は首の後ろのむくみ(NT)が厚い、羊水が多い、赤ちゃんの発育がゆっくり、といったものでした[1]。どれもほかの多くの原因で見られる所見で、これだけでKBG症候群と見分けることはできません。

また、特徴の一つである大きな前歯は、生まれたあとに歯が生えてから気づかれるものです。遺伝子の診断がついた年齢の中央値が11.6歳という報告からも[2]、妊娠中にKBG症候群を知る方法は、遺伝子を直接調べる検査にほぼ限られます。

📅 KBG症候群が「いつ・どうやって」わかるか

時期 方法 KBG症候群について
妊娠9週から(6〜8週は臨床研究) NIPT(インペリアルプラン) ANKRD11遺伝子の小さな変化を調べる。単一遺伝子の結果は3〜4週間
妊娠11〜13週/15週から 絨毛検査/羊水検査(確定検査) 見つかった変化、またはご家族の変化を目印に、赤ちゃん本人を調べる
妊婦健診のエコー 超音波検査 NTが厚い・羊水が多い・発育がゆっくりなどの報告はあるが、KBG症候群に特有ではない[1]
生まれてから 歯・顔つき・発達の様子+遺伝子検査 遺伝子の診断がついた年齢の中央値は11.6歳[2]

⚠️ エコーで所見を言われた方へ

エコーで赤ちゃんの形の異常や首のむくみなどを指摘されている場合は、NIPTではなく確定検査(羊水検査・絨毛検査)が基本です。KBG症候群に限らず、原因を幅広く調べるには、赤ちゃん本人の細胞を調べる検査が必要になります。どの解析を行うかは、検査前の遺伝カウンセリングでご家族の状況に合わせて選びます。NIPTは、まだエコーで何も言われていないけれど心配、という方のための検査と考えてください。

自閉症・発達障害・知的障害とKBG症候群 ― NIPTで一部わかる原因

KBG症候群は、知的障害や発達の遅れ、自閉スペクトラム症・ADHDの特徴を伴うことがある病気の一つです。欧州の49人の研究では、知的障害が82%(多くは軽度〜中等度)、自閉スペクトラム症またはADHDが30%、何らかの行動面の特徴が65%に報告されています[1]。程度には幅があり、知的な遅れがないか、ごく軽い方もいます。

お子さんの発達を心配するのは自然なことです。自閉症・発達障害・知的障害の原因はさまざまですが、その一部は染色体や遺伝子の変化が原因だとわかっていて、当院のNIPTで調べられるものがあります。KBG症候群(インペリアルプラン)もその一つです。

🧩 当院のNIPTで調べられる、自閉症・発達障害・知的障害を伴うことがある主な病気

プラン 微小欠失・重複 単一遺伝子 伴うことがある主な病気
スタンダード 6種類7疾患 ― 22q11.2欠失症候群、アンジェルマン症候群、プラダー・ウィリー症候群
プレミアム 12種類13疾患 ― スタンダードと同じ病気を含む
ダイヤモンド 12種類13疾患 56遺伝子 上の病気+レット症候群、コルネリア・デ・ランゲ症候群、CHARGE症候群
双子マックス 92種類+5Mbを超える構造異常 ― 上の微小欠失の病気+16p11.2欠失・重複
インペリアル 92種類+5Mbを超える構造異常 最大155遺伝子(202疾患) 上の病気+KBG症候群、フェラン・マクダーミッド症候群、ピット・ホプキンス症候群 など

どのプランでも、対象の病気のすべての変化を見つけられるとは限りません。脆弱X症候群など、NIPTでは調べられない原因もあります。

こうした単一遺伝子疾患は1つひとつはまれですが、わずか30遺伝子・25疾患を合わせただけでも、約600人に1人(0.17%)の頻度になると報告されています[4][5]。これは30の遺伝子に絞って調べた研究での数字なので、実際にはこれより多いと考えています。ダウン症候群の出生頻度(米国の全国推計〔2004〜2006年の出生〕で約700人に1人)[6]より多い頻度です。当院のインペリアルプランでは、最大155遺伝子のde novo変異を対象にしています(ダイヤモンドプランは56遺伝子)。

超音波検査で赤ちゃんの異常が疑われた妊婦さんを対象にした研究では、染色体の検査に加えて単一遺伝子の病気も調べると、見つかった病気の数が約1.6倍(61件→98件、60.7%増)に増えたと報告されています[8]。

ただし、正直にお伝えしておきたい限界もあります。陰性でも、自閉症・発達障害・知的障害がないとは言えません。原因の多くはまだわかっておらず、NIPTで調べられない原因もあります。また、陽性になっても、症状の程度までは予測できません。

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多くは赤ちゃんに新しく起こる変化 ― 次の子の確率と、親が当事者のとき

KBG症候群の多くは、ご両親にはない変化が赤ちゃんで新しく起こる(de novo)ことで生じます。欧州の49人の研究では、親の検査まで行えた40人のうち35人が新しく起きた変化、5人が症状のある親から受け継いだものでした[1]。家族にKBG症候群の方がいなくても起こりうる、ということです。

💡 用語解説:de novo(デノボ)変異と性腺モザイク

de novo変異は、ご両親の血液の遺伝子にはなく、赤ちゃんで初めて見つかる変化です。ただし、ご両親の卵子や精子のもとになる細胞の一部だけに同じ変化がある性腺モザイクのことがあるため、次のお子さんの確率は低いものの0ではありません。

上の子がKBG症候群(親は変化を持っていない)とき

ご両親の検査で同じ変化が見つからなければ、次のお子さんが同じ病気になる確率は低いと考えられます。ただし、性腺モザイクの可能性があるため0とは言えません。上のお子さんの変化がわかっていれば、次の妊娠ではその変化を目印に絨毛検査・羊水検査で調べることができます。

お父さんがKBG症候群の当事者のとき

KBG症候群は常染色体顕性遺伝なので、親が当事者なら妊娠ごとに2分の1の確率で赤ちゃんに受け継がれます。お父さんの変化はお母さんの血液にはないため、お父さんの変化がANKRD11遺伝子の中にあれば、インペリアルプランのNIPTで見つかったときに「赤ちゃんが受け継いだもの」と判断しやすくなります(お母さんが同じ変化を持っていないことが前提)。それでもNIPTは非確定的な検査なので、確定は絨毛検査・羊水検査で行います。お父さんの原因が16q24.3の欠失の場合など、プランの対象に入っていないときは、検査前の遺伝カウンセリングでご家族の状況に合わせて検査を選びます。詳しくはお父さんが単一遺伝子疾患をお持ちのご夫婦へをご覧ください。

お母さんがKBG症候群の当事者のとき

時間に余裕があれば、まずお母さんご本人の遺伝子検査で、原因の変化を特定しておくのが基本です。お母さん自身が変化を持っている場合、通常のNIPTでは、見つかった変化がお母さん由来か赤ちゃん由来かを区別できません。妊娠週数などで余裕がないときは、NIPTで対象の変化の有無をチェックすることがありますが、これは赤ちゃんが受け継いだかを判定するためではなく、確定検査で調べる目印を把握するためです。KBG症候群は、遺伝子の中のさまざまな変化や欠失で起こるため[2]、NIPTでお母さんの変化を決められるとは限りません。赤ちゃんを調べるのは、その変化を目印にした絨毛検査(妊娠11〜13週)か羊水検査(妊娠15週から)です。

親の病気とは別に、赤ちゃんに新しく起こる単一遺伝子の病気もあるため、NIPTは基本的に受けたほうがよいと院長は考えています。流れの詳細は単一遺伝子疾患のあるお母さんのNIPTと確定検査にまとめています。

NIPTで陽性だったら? ― 確定検査の流れと、受ける時期の考え方

インペリアルプランでANKRD11の変化が見つかったら、その変化を目印に確定検査で赤ちゃんを調べます。NIPTで陽性でも、それだけでKBG症候群と決まるわけではありません。

① 遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医がプラン選びから説明
▶
② 4Dエコー・採血妊娠9週から
▶
③ 結果単一遺伝子は3〜4週間
▶
④ 陽性なら確定検査絨毛・羊水検査も院内で

当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。インペリアルプランの単一遺伝子の結果は3〜4週間かかるため、たとえば妊娠9週で受けると、結果が出るのはおおむね12〜13週ごろです。陽性だったときに絨毛検査(妊娠11〜13週)にするか、羊水検査(妊娠15週から)にするかは、受けた週数と結果が出た時期で変わります。違いは絨毛検査と羊水検査の違いで解説しています。

当院では、NIPTを受けられる時期の上限は設けていません。ただし、人工妊娠中絶ができるのは通常妊娠満22週未満です(出典:日本医師会「医の倫理の基礎知識 2018年版【生殖医療】D-5」[11])。受ける時期と、結果を出産や生まれたあとの準備にどう生かすかは、検査前の遺伝カウンセリングで一緒に考えます。

陽性の場合も、確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられます。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。確定検査は基本的に日曜日(月曜日が祝日のときは月曜日)に行っています。陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料で、NIPTを受ける方は全員、羊水検査互助会(カトレア会)で確定検査の費用の補助(補助の上限なし)を受けられます。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【家族歴がないことは「関係ない」理由になりにくい】

KBG症候群の多くは、ご家族に同じ病気の方がいない赤ちゃんに、新しく起こる変化で生じます。そのため、家族歴がないことは、この病気の可能性を下げる理由にはなりにくいと考えています。一般に、父親の年齢とともに、赤ちゃんのゲノム全体で新しく起こる変化の数が増えることが知られています[12]。KBG症候群に限った数字ではありませんが、単一遺伝子まで調べる意味はそこにあると考えています。

一方で、インペリアルプランの単一遺伝子の結果には3〜4週間かかります。陽性だったときに、どの確定検査を、いつ受けるか。そこまで見通してから受ける時期を決めていただくことが大切だと考えています。調べるかどうか、どこまで調べるかは、結果をどう生かしたいかによってご家族ごとに違ってよいものです。

1つの病気あたりで考える ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ

「ダウン症候群だけが心配」という方は少なくありません。けれども、出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんとご家族の暮らしに大きくかかわるものです。そして、ご家族の子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった「行動の問題」だと分かっています[9]。こうした行動の問題を伴いやすい病気には、ダウン症候群ではなく、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患が多く含まれます[9][10]。三大トリソミーだけを調べる検査では、これらの病気は調べられません。

出生前検査は、その後の人生を左右するかもしれない検査です。『安さ』だけで選んで大丈夫でしょうか。

三大トリソミーだけを調べる検査を仮に10万円とすると、1つの病気あたりは約3万3千円です。

当院のインペリアルプランは、全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、202の単一遺伝子疾患を調べます。性染色体の数の異常も含めて、数えられる病気だけで320になり、1つの病気あたりは約1,719円です。さらに、5Mbを超える欠失・重複はすべての染色体が対象なので、数えきれないほどの変化を調べていることになります。数えられる分だけでも、これだけの範囲を調べられます。

プラン 主に調べる範囲 数えた病気の数 1つの病気あたり
三大トリソミーだけを調べる検査
(仮に10万円とした場合)
13・18・21トリソミー 3 約33,333円
スタンダード(220,000円) 13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患 14 約15,714円
プレミアム(264,000円) 13・18・21・15・16・22トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失12種類13疾患 23 約11,478円
ダイヤモンド(407,000円) プレミアムの範囲+単一遺伝子56 79 約5,152円
双子マックス(440,000円) 全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常 114+α 約3,860円
インペリアル(550,000円) 全常染色体の数の異常、性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常、単一遺伝子202疾患 320+α 約1,719円

※価格は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込価格です。最新の料金は料金ページをご確認ください。※病気の数は、数の異常・微小欠失・重複・単一遺伝子疾患を1つずつ数えたものです。性染色体の数の異常は4種類(ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群)として数えています(性染色体を調べるのはスタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・インペリアル。双子マックスは調べません)。5Mbを超える構造異常は数に入れていないため、双子マックスとインペリアルは実際にはさらに多くの変化を調べています。※『三大トリソミーだけを調べる検査』は計算のための仮の例で、特定の施設の価格ではありません。

調べる範囲が広がると、陽性になる可能性も、確定検査が必要になる場面も増えます。「病気の数が多いほど良い検査」というわけではありません。どこまで調べたいかはご家族によって違うため、検査前の遺伝カウンセリングでプランを選ぶことを大切にしています。NIPTの料金に含まれるもの(遺伝カウンセリング・性別判定・来院の場合の4Dエコー)と、それ以外にかかる費用はNIPTの検査費用以外にかかる費用と保障制度で確認できます。

🏥 KBG症候群まで調べられる範囲から、NIPTのプランを選ぶ

インペリアルプランでは、KBG症候群(ANKRD11)を含む最大155遺伝子(202疾患)の単一遺伝子の変化と、92種類の微小欠失・重複まで調べられます。臨床遺伝専門医が常駐し、陽性なら絨毛検査・羊水検査まで院内で受けられます。

まだ決めていない方は:NIPTの施設選びで後悔しないためのポイント | インペリアルプランの詳細 | 来院が難しい方はオンラインNIPT(Zoomでのカウンセリング+全国110か所の提携施設で採血)

よくある質問(FAQ)

Q1. KBG症候群はNIPTでわかりますか?

一部はわかります。原因のANKRD11遺伝子の中の小さな変化は、当院のインペリアルプランで調べられます。ただし、ANKRD11を含む16q24.3の欠失で起こるタイプは92種類の微小欠失・重複の一覧に入っておらず、対象の遺伝子でも、すべての変化を見つけられるとは限りません。陽性なら絨毛検査・羊水検査で確かめます。

Q2. ダイヤモンドプランでもKBG症候群を調べられますか?

調べられません。ダイヤモンドプランの56遺伝子にはANKRD11が入っていません。当院でKBG症候群の原因の遺伝子を調べるのはインペリアルプランだけです。スタンダード・プレミアム・双子マックスは単一遺伝子を調べません。

Q3. 妊娠中のエコーでKBG症候群はわかりますか?

エコーだけでKBG症候群と見分けることは難しい病気です。欧州の49人の研究では、妊娠中のエコーで首の後ろのむくみ、羊水が多い、発育がゆっくりなどの所見が報告されたのは28.5%で、どれもKBG症候群に特有の所見ではありません。エコーで所見を指摘されている場合は、確定検査(羊水検査・絨毛検査)が基本です。

Q4. NIPTで陰性なら、KBG症候群や自閉症の心配はありませんか?

そうとは言えません。陰性は「調べた範囲で見つかる変化はなかった」という意味です。16q24.3の欠失で起こるKBG症候群は一覧に入っておらず、自閉症・発達障害・知的障害の原因の多くはNIPTでは調べられません。当院のNIPTで調べられるのは、その原因の一部です。

Q5. 夫(または私)がKBG症候群です。赤ちゃんに遺伝する確率は?

KBG症候群は常染色体顕性遺伝なので、親が当事者なら妊娠ごとに2分の1の確率で受け継がれます。お母さんが当事者の場合、NIPTでは見つかった変化がお母さん由来か赤ちゃん由来かを区別できないため、できれば妊娠前にお母さんの変化を特定し、その変化を目印に絨毛検査(妊娠11〜13週)か羊水検査(妊娠15週から)で赤ちゃんを調べます。

Q6. 上の子がKBG症候群でした。次の子の確率は?

ご両親の検査で同じ変化が見つからなければ、上のお子さんの変化は新しく起きたもの(de novo)と考えられ、次のお子さんの確率は低くなります。ただし、卵子や精子のもとになる細胞の一部だけに変化がある性腺モザイクの可能性があるため、0とは言えません。上のお子さんの変化を目印に、絨毛検査・羊水検査で調べることができます。

Q7. NIPTで陽性だったらどうなりますか?

NIPTはスクリーニング検査なので、見つかった変化を目印に確定検査(絨毛検査・羊水検査)で赤ちゃんを調べます。当院では確定検査まで院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料で、羊水検査互助会(カトレア会)が確定検査の費用を補助します(補助の上限なし)。

Q8. NIPTは何週から受けられますか?結果はいつわかりますか?

当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。結果は基本10〜14日ですが、インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間かかります。陽性だったときの確定検査の時期まで見通して、受ける時期を決めることをおすすめします。

関連記事

参考文献

  • [1] Natural history of KBG syndrome in a large European cohort. Hum Mol Genet. 2022;31(24):4131-4142. PMID 35861666. [DOI 10.1093/hmg/ddac167]
  • [2] Comprehensive analysis of clinical spectrum and genotype associations in Chinese and literature reported KBG syndrome. Transl Pediatr. 2021;10(4):834-842. [DOI 10.21037/tp-20-385]
  • [3] Two Novel Mutations of ANKRD11 Gene and Wide Clinical Spectrum in KBG Syndrome: Case Reports and Literature Review. Front Genet. 2020;11:579805. PMID 33262785. [DOI 10.3389/fgene.2020.579805]
  • [4] Mohan P, et al. Ultrasound Obstet Gynecol. 2022;59(1):33-39. [DOI 10.1002/uog.23756]
  • [5] Non-invasive prenatal sequencing for multiple Mendelian monogenic disorders using circulating cell-free fetal DNA. Nat Med. 2019;25(3):439-447. [DOI 10.1038/s41591-018-0334-x]
  • [6] Parker SE, Mai CT, Canfield MA, et al. Birth Defects Res A Clin Mol Teratol. 2010;88(12):1008-1016. [PubMed 20878909]
  • [7] Chen S, Xu W, Zhang L, et al. Expanded noninvasive prenatal screening for dominant single-gene disorders: proof-of-concept, performance, and challenges. Am J Obstet Gynecol. 2025;233(6):673.e1-673.e21. PMID 40550458. [DOI 10.1016/j.ajog.2025.06.043]
  • [8] Zhang J, Wu Y, Chen S, et al. Prospective prenatal cell-free DNA screening for genetic conditions of heterogenous etiologies. Nat Med. 2024;30(2):470-479. [DOI 10.1038/s41591-023-02774-x]
  • [9] Fitzgerald J, Gallagher L. Parental stress and adjustment in the context of rare genetic syndromes: A scoping review. J Intellect Disabil. 2022;26(2):522-544. PMID 33866895. [DOI 10.1177/1744629521995378]
  • [10] Arron K, Oliver C, Moss J, Berg K, Burbidge C. The prevalence and phenomenology of self-injurious and aggressive behaviour in genetic syndromes. J Intellect Disabil Res. 2011;55(2):109-120. [DOI 10.1111/j.1365-2788.2010.01337.x]
  • [11] 日本医師会「医の倫理の基礎知識 2018年版【生殖医療】D-5」 [日本医師会]
  • [12] Kong A, Frigge ML, Masson G, et al. Rate of de novo mutations and the importance of father’s age to disease risk. Nature. 2012;488(7412):471-475. [DOI 10.1038/nature11396]

※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・検査の選択を示すものではありません。検査については臨床遺伝専門医にご相談ください。

プロフィール

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

Google公認:仲田洋美 公式プロフィール

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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