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妊娠初期の体温は何度でいつまで高い?下がった・低いとき、37.5℃以上の熱の目安

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

妊娠初期の体温は、排卵後の高温期がそのまま続いている状態で、37℃前後になることも珍しくありません。一方で、妊娠5週ごろに基礎体温が下がった、もともと体温が低いまま陽性が出た、という声も多く聞かれます。体温が下がったことだけで流産かどうかは判断できません。この記事では、妊娠初期の体温が何度くらいで、いつまで高いのか、下がった・低いときの考え方、37.5℃以上の熱が出たときの受診の目安までを解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約13分
🌡 妊娠初期の体温・基礎体温
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 妊娠初期の体温は何度くらい?下がったら流産ですか?

A. 妊娠初期の基礎体温は、低温期より0.3〜0.6℃ほど高い高温期が続くのがふつうで、37℃前後になる人もいます。ただし体温には個人差や測り方による揺れが大きく、体温が下がっただけで流産とは判断できません。妊娠が順調かどうかは、出血や腹痛の有無と、産婦人科での超音波検査で確かめます。38℃以上の熱や、のどの痛み・咳などを伴う発熱は、妊娠による体温上昇とは別の原因を考えて受診してください。

  • ➤高いのはなぜ → 卵巣の黄体から出る黄体ホルモンが体温を押し上げ、妊娠するとその状態が続く
  • ➤いつまで → 妊娠初期のあいだ続き、妊娠中期に入るころから少しずつ下がることが多い
  • ➤下がった・低い → 測り方や睡眠の影響も大きい。高さより「二相に分かれているか」が大切
  • ➤受診の目安 → 38℃以上の発熱、出血や強い腹痛、水分がとれないときは産婦人科へ

1. 妊娠初期の体温は何度?高温期が続く仕組み

妊娠初期の基礎体温は、排卵後に始まった高温期がそのまま続いている状態です。基礎体温とは、朝目覚めてすぐ、体を動かす前に測る安静時の体温のことで、女性ホルモンの変化を反映して、月経周期のなかで「低温期」と「高温期」の二つの時期に分かれます。妊娠すると、本来なら生理の前に下がるはずの体温が下がらず、高い状態が続きます。

妊娠すると高温期が続く理由

排卵が終わると、卵子が飛び出したあとの卵胞が「黄体」という組織に変わり、黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌し始めます。黄体ホルモンには、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を整える働きと、脳の体温調節の中枢に作用して体温を押し上げる働きがあります。このため排卵後は体温が上がり、高温期に入ります[1]。

妊娠しなかった周期では、黄体はおよそ2週間で役目を終えて小さくなり、黄体ホルモンが減ると体温が下がって生理が始まります。一方、受精卵が着床すると、将来胎盤になる絨毛の細胞からhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが出始めます。hCGは黄体に「働き続けるように」という信号を送るため、黄体ホルモンの分泌が続き、高温期も続きます。妊娠検査薬が反応するのは、このhCGです。

黄体ホルモンは「子宮から出る」と説明されることがありますが、実際には卵巣の黄体から分泌されます。妊娠がある程度進むと、黄体ホルモンをつくる役割は黄体から胎盤へ移っていきます。この切り替わりについては次の章で説明します。

💡 用語解説:黄体と黄体ホルモン(プロゲステロン)

黄体(おうたい)は、排卵後の卵巣にできる一時的な組織で、黄色い色素を含むことからこう呼ばれます。黄体ホルモン(プロゲステロン)は、子宮内膜を妊娠に適した状態に保ち、子宮の収縮を抑える働きをもつホルモンです。体温を上げる作用もあるため、基礎体温の高温期は「黄体ホルモンが出ている時期」の目印になります。

排卵卵胞が黄体に変わる
▶
高温期黄体ホルモンで体温が上がる
▶
着床hCGが黄体を支える
▶
妊娠初期生理予定日を過ぎても高温期が続く

何度くらい?37℃を超えても多くは正常

妊娠初期の基礎体温は、低温期よりおよそ0.3〜0.6℃高いのが目安で、人によっては37℃前後になります。米国国立医学図書館の医学教科書(StatPearls)では、排卵前の低温期の基礎体温はおおむね36.1〜36.7℃(華氏97.0〜98.0°F)で、排卵後は華氏0.5〜1°F(摂氏約0.3〜0.6℃)上がり、高温期のあいだその状態が続くと説明されています[1]。

つまり、低温期が36.5℃前後の人なら、高温期や妊娠初期に36.8〜37.1℃くらいになっても不思議ではありません。「37℃を超えたから熱がある」とすぐに考える必要はなく、その人の低温期の体温からどのくらい上がっているかで見るのが基本です。反対に、低温期が36.0℃前後の人では、妊娠していても高温期が36℃台半ばにとどまることがあります。基礎体温の平均や高温期の目安については基礎体温の平均は何度?で詳しく解説しています。

ただし、37.5℃を超える体温が続く、だるさ以外にのどの痛みや咳がある、といった場合は、妊娠による体温上昇ではなく、感染症などによる発熱の可能性を考えます。発熱との見分け方は第6章で扱います。

体温で妊娠はわかる?高温期が何日続いたら可能性がある?

基礎体温は妊娠に気づくきっかけにはなりますが、体温だけで妊娠を確定することはできません。高温期はふつう2週間ほどで終わるため、生理予定日を過ぎても高温期が続いている場合は、妊娠の可能性があります。StatPearlsでも、予想される時期を過ぎても基礎体温が元に戻らないことは、妊娠の早い兆候になりうると説明されています[1]。

一方で、基礎体温は毎日同じ条件で測らないと正確な値が得られず、発熱、精神的なストレス、飲酒などの影響も受けます。StatPearlsは、基礎体温による排卵の判定は正確さが低い方法であり、研究によっては排卵の検出の正確さが約22%にとどまると推定されている、とも述べています[1]。体温だけで「妊娠した」「していない」を決めず、生理予定日を過ぎたら妊娠検査薬で確かめるのが確実です。一般的な妊娠検査薬は、生理予定日の約1週間後から使えるように作られています。

妊娠検査薬で陽性が出たら、次は産婦人科で子宮の中に妊娠していることを確認してもらいます。検査薬は正常な妊娠かどうかまでは判断できないためです。陽性が出たあとの流れは妊娠検査薬で陽性が出たらどうする?にまとめています。

2. 妊娠初期の体温はいつまで高い?下がるのは何週ごろ

妊娠初期の高い体温は妊娠初期のあいだ続き、妊娠中期に入るころから少しずつ下がっていくことが多いとされます。ただし下がり始める時期や下がり方には個人差が大きく、「何週になったら何度まで下がる」と決まっているわけではありません。

黄体から胎盤への切り替わりと体温

妊娠を支える黄体ホルモンは、妊娠のはじめは卵巣の黄体がつくっています。妊娠が進むと、この役割は発育してきた胎盤へ移っていきます。1970年代に行われた研究では、妊娠の早い時期に黄体を取り除くと黄体ホルモンが急に減って流産に至る一方、黄体ホルモンをつくる場所が胎盤へ十分に移ったあとでは、黄体を取り除いても妊娠が続くことが示されました[2]。この切り替わりは「黄体‐胎盤シフト」と呼ばれ、妊娠初期のうちに起こります。

「妊娠13週ごろに胎盤が完成すると、黄体ホルモンの出どころが変わって体温が下がる」と説明されることがあります。しかし黄体ホルモンの出どころは子宮ではなく卵巣の黄体であり、胎盤への切り替わりもそれより早い時期から始まります。胎盤がつくられてからも黄体ホルモンの分泌は続くため、切り替わりと同時に体温がすとんと下がるわけではありません。胎盤の成り立ちや役割は胎盤の基礎で解説しています。

体温が高い時期には、だるさや熱っぽさ、眠気を感じる人もいます。体温が落ち着いてくる時期に合わせて、こうした不快感が軽くなる人もいますが、感じ方は人それぞれです。

妊娠中期以降の体温

妊娠中期以降は、妊娠初期のような「高温期」としての体温の高さは目立たなくなり、平熱に近い体温で過ごす人が多くなります。ただし妊娠中は代謝が活発で、体が温かく感じたり汗をかきやすかったりすることがあります。

妊娠中期に37℃を超える体温が続く場合や、微熱のほかに気になる症状がある場合は、妊娠初期とは別の見方が必要です。妊娠中期の微熱については妊娠中期に体温が37℃を超えても大丈夫?をご覧ください。

基礎体温はいつまで測ればいい?

産婦人科で子宮の中に正常な妊娠が確認できたら、基礎体温を測り続ける必要はありません。妊娠の経過は、基礎体温ではなく、妊婦健診での超音波検査や診察で確認していくためです。

妊娠がわかってからも基礎体温をつけ続けていると、日々の小さな上下が気になって、かえって不安が強くなることがあります。体温の変化に一喜一憂してしまうようなら、測るのをやめても差し支えありません。心配なことがあるときは、体温の数字よりも、出血や腹痛などの症状の有無を目安に、かかりつけの産婦人科に相談してください。

3. 妊娠初期に体温が下がった・低いのは大丈夫?

妊娠初期に基礎体温が一時的に下がることは、それほど珍しいことではありません。体温が下がったからといって、それだけで流産と決まるわけではなく、多くは測る条件の違いや体調による揺れです。まずは体温が下がる主な理由を整理します。

体温が下がる主な理由

基礎体温は、わずか0.1〜0.2℃の違いを見る測り方なので、ちょっとした条件の変化でも数字が動きます。妊娠初期に体温が下がる理由としては、次のようなものが考えられます。

  • 体が冷えている(室温が低い、布団から体が出ていた)
  • 睡眠不足、夜中に何度も目が覚めた
  • 起きてから時間がたって測った、二度寝した
  • 口を開けて寝ていた、体温計が舌の裏に正しく当たっていなかった
  • 測る時刻がいつもと違った

人の体温は1日のなかでも変化し、一般に明け方が最も低くなります。いつもより早い時刻に測れば、それだけで低く出ることがあります。StatPearlsでも、基礎体温は毎日一定の条件で測ることが前提で、環境の影響を受けやすいと説明されています[1]。二度寝したときの測り方は二度寝したときの基礎体温の測り方で解説しています。

1日だけ下がって翌日以降は元の高さに戻るなら、測り方や体調による揺れと考えてよいことがほとんどです。数日続けて見て、全体として高温期が保たれているかどうかを確かめてください。

4週・5週・6週・7週に体温が下がったとき

妊娠4〜7週は、体温の変化で不安になりやすい時期ですが、どの週であっても「体温が下がった=流産」とは判断できません。週数ごとに、状況と考え方を整理します。妊娠週数は最終月経の開始日を0週0日として数えるため、妊娠4週はちょうど生理予定日のころにあたります。

🌡 妊娠4〜7週に体温が下がったときの考え方

週数 この時期の状況 体温が下がったときの考え方
妊娠4週 生理予定日のころ。妊娠検査薬が反応し始める 生理前の体温低下との区別はつかない。数日の推移と検査薬で確認する
妊娠5週 超音波で子宮の中に胎嚢(たいのう)が見え始める 1日だけの低下は測り方の揺れが多い。出血や腹痛がなければ予定どおり受診する
妊娠6週 胎児の心拍が確認できるようになってくる 体温より超音波の所見が重要。気になるときは受診時に伝える
妊娠7週 心拍や胎児の大きさで経過を確認する 体温は個人差が大きく、判断材料にはならない。超音波で経過を確認する

※超音波で見える時期には個人差があり、排卵が遅れた周期では週数どおりに見えないこともあります。

とくに妊娠5週は、「体温が下がった」という相談の多い時期です。この時期は胎嚢が見え始めたばかりで、次の受診まで経過がわからない不安から、体温の数字に目が向きやすくなります。しかし、この時期に体温が下がったまま妊娠が順調に続く人もいれば、体温が高いままでも流産している人もいます。体温で経過を先回りして判断しようとせず、出血や腹痛の有無に注意しながら、次の受診で超音波の所見を確かめてください。

体温の低下は流産のサイン?

妊娠初期の体温低下は、それだけでは流産のサインとはいえません。流産かどうかは、超音波検査で判断します。

早期の流産は決して少なくなく、米国産婦人科学会(ACOG)の診療指針は、妊娠と確認された妊娠のおよそ10%で妊娠初期の流産が起こり、その約半数は胎児の染色体の数の変化が原因だとしています[3]。つまり、妊娠初期の流産の多くは受精卵の段階で決まっていることが多く、体温を上げようと努力したり、安静にしたりすることで防げるものではありません。

同じ指針は、性器出血や子宮の収縮による下腹部の痛みといった流産によくみられる症状が、正常な妊娠でもよく起こると指摘しています[3]。症状だけでも判断できないため、流産かどうかは、超音波で胎嚢の大きさや胎児の大きさ、心拍の有無を測り、決められた基準に照らして判断します。この基準は、誤って「流産」と診断してしまわないよう、十分に余裕をもって定められています[4]。

また、流産のなかには、出血や腹痛などの症状がないまま、超音波で初めてわかる「稽留(けいりゅう)流産」もあります。この場合、体温がしばらく高いままのこともあります。流産の種類と特徴は流産の種類で、出血や腹痛があるときの切迫流産については切迫流産とはで解説しています。妊娠検査薬が陽性になったあと、超音波で胎嚢が確認される前に妊娠が終わる化学流産のときの体温の変化は、化学流産したときの基礎体温にまとめています。

⚠ 体温より、こんな症状があるときは早めに受診

生理の多い日のような量の出血がある、血のかたまりが出た、我慢できない下腹部の痛みがある、片側の下腹部が強く痛む、めまいや立ちくらみがひどい。こうした症状があるときは、体温の変化にかかわらず、妊娠を診ている産婦人科へ連絡してください。夜間や休日でも、医療機関の指示に従って受診してください。

ホルモン補充周期(凍結胚移植)では体温があてにならない

不妊治療で、黄体ホルモンの薬を使って子宮内膜を整える周期では、基礎体温は妊娠の目安になりません。凍結胚移植などで行われるホルモン補充周期では、自分の黄体の代わりに、腟剤や注射、内服薬で黄体ホルモンを補います。

この場合、体温は自分の体の状態ではなく、薬の種類や量、使うタイミングの影響を受けます。薬の使い方によって体温が上がりにくかったり、逆に妊娠していなくても高温が続いたりすることがあり、自然周期と同じ読み方はできません。移植後の妊娠判定は、医療機関が指定した日の血液検査などで行われるため、その結果を待つのが確実です。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【体温は「状態」ではなく「目安」】

基礎体温は、黄体ホルモンが出ているかどうかを家庭で知るための便利な方法ですが、0.1℃単位の値は睡眠や室温で簡単に動きます。妊娠がわかったあとの基礎体温は、妊娠の経過を判定するための指標ではありません。

妊娠初期の流産の多くは受精卵の染色体の変化によるもので、体温を上げようとする努力で防げるものではありません。妊娠の経過を確認するうえで重要なのは、基礎体温の上下そのものではなく、超音波の所見と、出血や腹痛などの症状です。

4. 基礎体温が下がったのに妊娠していた・低いまま妊娠できたケース

「基礎体温が下がったのに妊娠していた」「低いまま陽性が出た」ということは実際に起こります。よくみられるパターンを3つに分けて、なぜそうなるのかを説明します。

生理予定日ごろに1日だけ下がり、翌日戻った

高温期が続いていたのに、生理予定日ごろに突然体温が下がり、「今回はだめだった」と思ったら、翌日にはまた高温期の高さに戻っていた。その後、生理が来ないまま妊娠検査薬で陽性が出た、というパターンです。

この場合、1日だけの低下は、測った時刻、睡眠、室温などによる揺れと考えるのが自然です。体温は1日のなかでも上下し、布団から出ていた、いつもより早く目が覚めた、という程度でも0.2〜0.3℃違って見えることがあります。大事なのは1日の値ではなく数日の流れで、高温期が保たれていれば妊娠の可能性は残っています。

「着床のときに一時的に体温が下がる(インプランテーションディップ)」という話を見かけることがありますが、妊娠の予測に使えるほどの医学的な根拠は示されていません。1日の低下を着床のサインとも、失敗のサインとも受け取らないほうがよいと考えます。

もともと体温が低く、高温期も低めだった

普段から平熱が低く、高温期でも36℃台半ばまでしか上がらないため、「無排卵ではないか」「妊娠しにくいのでは」と心配していたが、妊娠していた、というパターンです。

基礎体温の絶対値には個人差があり、低温期が36.0℃前後の人もいれば、36.7℃前後の人もいます[1]。高温期の「高さ」は、その人の低温期からどのくらい上がったかで判断するもので、37℃に届かないから高温期がない、ということにはなりません。体温が低いこと自体が妊娠しにくさや流産の原因になる、という根拠は示されていません。また、よく言われる「体を温めると妊娠しやすくなる」という考え方にも、医学的な根拠はありません。

いつもより高温期が低い周期で陽性になった

普段の周期と比べて高温期の体温が低めで、生理予定日にはうっすら出血もあったため、妊娠は無理だと思っていたが、その後生理が来ず陽性が出た、というパターンです。

基礎体温の高さは周期ごとにも揺れ、同じ人でも「今月は高めの高温期」「今月は低めの高温期」ということがあります。低めの高温期でも、低温期との差がはっきりしていれば排卵は起きていると考えられます。また、妊娠初期には少量の出血がみられることがあり、生理予定日ごろの少量の出血が、そのまま妊娠の継続を否定するわけではありません。ただし、出血が続く、量が多い、腹痛を伴う場合は受診してください。

大切なのは高さより「周期全体の推移」

基礎体温で大切なのは体温の高さそのものではなく、低温期と高温期の二つの時期に分かれる傾向があるかなど、周期全体の推移を見ることです。低温期から高温期への上昇は排卵後の黄体ホルモン作用を反映する手がかりになりますが、基礎体温だけで排卵の有無や黄体機能を診断することはできません[1]。グラフにして「だいたい二つの段に分かれていればよい」というくらいの見方で十分です。

一方、低温期ばかりで高温期がない場合は排卵が起きていない可能性があり、高温期が短い、または途中で不安定になる場合は黄体の働きが弱い可能性があります。こうしたときは、基礎体温表を持って婦人科に相談してください。グラフのパターンごとの読み方は基礎体温グラフの見方で解説しています。

💡 用語解説:二相性(にそうせい)

二相性とは、基礎体温のグラフが低温期と高温期の二つの段に分かれて見える状態を指します。排卵後の黄体ホルモン作用を反映する手がかりですが、基礎体温だけで排卵の有無を確定することはできません。反対に、段が明瞭に分かれない状態を一相性と呼びますが、グラフだけで無排卵と診断することもできません。

5. 生理前と妊娠初期の体温の違い

生理前と妊娠初期は、どちらも黄体ホルモンによる高温期なので、体温の高さだけでは区別がつきません。違いが出るのは「高温期が終わるかどうか」です。

妊娠していない周期では、高温期はおよそ2週間続いたあと体温が下がり、その前後に生理が始まります。妊娠した周期では、hCGが黄体を支えるため、生理予定日を過ぎても体温が下がらず、高温期が続きます[1]。そのため、生理予定日より前の時点で体温を見ても、妊娠しているかどうかは判断できません。

生理前に体温が下がり始めるタイミングや、何日前から変化するかについては生理前の基礎体温の変化で解説しています。胸の張りや下腹部の違和感など、体温以外の症状も生理前と妊娠初期で似ているため、症状からの見分けも難しいのが実際です。症状全体の違いは生理がきそうでこない・下腹部痛は妊娠の前触れ?を、妊娠初期に出やすい症状の一覧は妊娠超初期の症状をご覧ください。

📊 生理前と妊娠初期の基礎体温の違い

項目 生理前(妊娠していない) 妊娠初期
体温を上げている仕組み 黄体ホルモン 黄体ホルモン(hCGが黄体を支える)
高温期の長さ およそ2週間で終わる 生理予定日を過ぎても続く
生理予定日ごろの体温 下がって生理が始まる 高いまま(1日の揺れはありうる)
確かめる方法 生理が来るか 予定日の約1週間後から妊娠検査薬、その後超音波

※体温の高さそのもの(何度か)では区別できません。

6. 妊娠初期に体温が高い・37.5℃以上の熱があるとき

妊娠初期の体温上昇は37℃前後までのことが多く、37.5℃以上が続く場合や38℃以上になる場合は、妊娠によるものではなく感染症などによる発熱を考えます。妊娠初期は熱っぽさを感じやすい時期ですが、「妊娠しているから熱っぽいのだろう」と決めつけず、ほかの症状とあわせて見分けることが大切です。

妊娠による熱っぽさと風邪・感染症の見分け方

妊娠初期の熱っぽさは、黄体ホルモンによる体温上昇で起こるもので、体がぽかぽかする、だるい、眠いといった感覚が中心です。体温は高温期の範囲にとどまり、日によって大きく上下することは少なく、のどの痛みや咳、鼻水、関節の痛みなどは伴いません。

これに対して風邪やインフルエンザなどの感染症では、体温が短期間で上がり、のどの痛み、咳、鼻水、寒気、節々の痛みといった症状が加わります。周りに同じ症状の人がいることも手がかりになります。米国の催奇形性情報サービス(MotherToBaby)は、発熱を38.3℃(101°F)を超える一時的な体温上昇としています[5]。鼻水だけが続く場合の考え方は妊娠超初期の鼻水で、熱っぽさと一緒に寒気を感じるときは妊娠超初期に寒気を感じる理由で解説しています。

🔍 妊娠による熱っぽさと感染症による発熱の違い

項目 妊娠による熱っぽさ 感染症などによる発熱
体温 高温期の範囲(37℃前後まで) 37.5℃以上、38℃を超えることも
経過 毎日ほぼ同じ高さで続く 短期間で上がる、日によって大きく変わる
ほかの症状 だるさ、眠気、ほてり のどの痛み、咳、鼻水、寒気、節々の痛み
対応 無理をせず休む 産婦人科や内科に相談・受診する

※両方が重なることもあります。迷うときは受診先に電話で相談してください。

受診の目安

次のようなときは、体温の数字だけで様子を見ずに、医療機関に相談してください。受診先は、妊娠を診ている産婦人科、またはかかりつけの内科です。受診の際は、妊娠していること(または妊娠の可能性があること)と、最終月経の開始日を必ず伝えてください。

  • 38℃以上の熱がある
  • 37.5℃以上の熱が2日以上続いている
  • のどの痛み、咳、息苦しさなど、ほかの症状がある
  • 吐き気や食欲不振で水分がとれない、尿が少ない
  • 出血や強い下腹部の痛みを伴っている
  • 周りにインフルエンザなどの感染症の人がいる

感染症によっては、妊娠中に使える治療薬があるものや、早めの対応が勧められるものもあります。発熱外来などを受診する場合も、妊娠中であることを伝えておくと、使える薬を考えて診察してもらえます。

熱が出たときの薬と過ごし方

妊娠中に熱が出たときは、市販の解熱鎮痛薬を自己判断で飲まず、医師や薬剤師に相談してください。解熱鎮痛薬のなかには、妊娠中に使うと胎児に影響が出るおそれのあるものがあり、市販の風邪薬や鎮痛薬にも同じ成分が含まれていることがあります。

妊娠中の発熱に対しては、多くの医療者がアセトアミノフェンを第一に選ぶ解熱薬と考えており、必要なときに、効果のある最少量を使うことが勧められています[5]。米国母体胎児医学会(SMFM)は2025年9月の声明で、アセトアミノフェンは妊娠中の痛みや発熱の治療に適した薬であるとし、治療されない発熱は、とくに妊娠初期には流産や先天異常、早産のリスクを高めると述べています[6]。

一方、同じ2025年9月に米国食品医薬品局(FDA)は医師向けの通知を出し、妊娠中のアセトアミノフェン使用と子どもの自閉スペクトラム症やADHDとの関連を報告する研究が蓄積しているとしました。そのうえで、因果関係は確立しておらず反対の結果の研究もあることを明記し、軽い発熱の日常的な使用は控えめにすることを医師に求めています[7]。薬をまったく使わないことが正解というわけではなく、熱の高さや原因に応じて医師と相談しながら使うことが大切です。

過ごし方としては、水分をこまめにとり、体を休めることが基本です。汗をかいたら着替え、暑いときは首や脇を冷やすと楽になります。妊娠初期の生活上の注意点は妊娠初期症状のチェックリストや生活上の注意点にまとめています。

💡 妊娠初期の高熱と赤ちゃんへの影響

赤ちゃんの脳や脊髄のもとになる神経管は、妊娠6週に入るころまでに閉じます[5]。この時期の母体の高熱や体の過熱と、神経管がうまく閉じない神経管閉鎖障害との関連は、複数の研究をまとめたメタ解析で報告されています[8][9]。ただし、報告されているリスクの上昇は小さく、関連がみられなかった研究もあり、熱そのものと熱の原因になった病気のどちらが影響したのかを区別するのは難しいとされています[5]。一度熱が出たことで赤ちゃんに問題が起こると決まるわけではありません。神経管閉鎖障害と葉酸の関係は葉酸でダウン症・二分脊椎は防げる?で解説しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【熱は「我慢」より「相談」】

妊娠中は薬を避けたいという気持ちから、高い熱を我慢してしまう人がいます。しかし専門学会の声明が示すように、とくに妊娠初期には、治療されない発熱そのもののリスクも考える必要があります。薬を使うかどうかは「使う・使わない」の二択ではなく、熱の高さや原因をふまえた医学的な判断だと考えています。

2025年には解熱薬をめぐる発表が相次ぎましたが、因果関係はまだ確立していません。ニュースの見出しだけで判断せず、妊娠していることを伝えたうえで医師と相談してください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 着床すると体温はどうなりますか?

着床すると絨毛の細胞からhCGが出始め、黄体ホルモンの分泌が続くため、高温期がそのまま続きます。着床のときに体温が一時的に下がる(インプランテーションディップ)という話がありますが、妊娠の予測に使えるほどの根拠は示されていません。着床のサインとして言われる症状は着床完了5つのサインで整理しています。

Q2. 高温期10日目に体温が下がりました。妊娠の可能性はありますか?

可能性はあります。1日だけの低下は測り方や睡眠による揺れのことが多く、翌日以降に高温期の高さへ戻れば妊娠の可能性は残っています。数日の推移を見て、生理予定日の約1週間後に妊娠検査薬で確かめてください。

Q3. 普通の体温計で妊娠しているかわかりますか?

わかりません。普通の体温計は0.1℃単位で測るものが多く、基礎体温のわずかな変化を見るのには向いていません。また、基礎体温計を使っても、体温だけで妊娠を確定することはできません。妊娠の確認は妊娠検査薬と産婦人科での超音波検査で行います。

Q4. 稽留流産でも体温は高いままですか?

高いままのこともあります。稽留流産は、出血や腹痛がないまま、超音波検査で胎児の成長が止まっていることがわかる流産で、しばらく体温が下がらない場合があります。体温が高いことは妊娠が順調である証明にはならず、下がることも流産の証明にはなりません。経過は超音波で確認します。

Q5. 排卵後に体温がなかなか上がりません。妊娠していないということですか?

そうとは限りません。排卵後の体温がゆっくり上がる周期でも、妊娠していることはあります。高温期の上がり方と妊娠の関係は高温期に体温がゆっくり上昇する原因で解説しています。高温期がない周期が続く場合は、婦人科に相談してください。

Q6. 妊娠初期に38℃の熱が出ました。赤ちゃんに影響はありますか?

妊娠初期の高熱と神経管閉鎖障害との関連は研究で報告されていますが、リスクの上昇は小さく、関連がみられなかった研究もあります。一度熱が出たことで問題が起こると決まるわけではありません。治療されない発熱のリスクも指摘されているため、自己判断で我慢せず、妊娠していることを伝えて医療機関に相談してください。

まとめ

妊娠初期の基礎体温は、排卵後に卵巣の黄体から出る黄体ホルモンによって上がった高温期が、hCGの働きで生理予定日を過ぎても続いている状態です。低温期より0.3〜0.6℃ほど高いのが目安で、37℃前後になる人もいます[1]。高い体温は妊娠初期のあいだ続き、妊娠中期に入るころから落ち着いていくことが多いものの、時期には個人差があります。

妊娠4〜7週に体温が下がることは珍しくなく、多くは測り方や体調による揺れです。体温の低下だけでは流産と判断できず、妊娠の経過は超音波検査で確かめます[3][4]。基礎体温が低めでも、低温期と高温期に分かれる傾向があっても、基礎体温だけで妊娠経過や排卵の状態を判断することはできません。一方、38℃以上の熱や、37.5℃以上の熱が続くとき、出血や強い腹痛があるときは、妊娠していることを伝えて医療機関に相談してください。

📘 この記事について

この記事は、妊娠初期の体温の変化を正しく知っていただくための一般的な解説であり、個別の症状の診断や、診察のご案内をするものではありません。体温の変化や発熱、出血・腹痛が気になるときは、妊娠の経過を診ている産婦人科にご相談ください。

参考文献

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  • [2] Csapo AI, Pulkkinen MO, Wiest WG. Effects of luteectomy and progesterone replacement therapy in early pregnant patients. Am J Obstet Gynecol. 1973;115(6):759-765. doi:10.1016/0002-9378(73)90517-6. [PubMed 4688578]
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プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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