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切迫流産とは?症状・原因と赤ちゃんが助かる確率、安静の意味を専門医が解説

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

切迫流産(せっぱくりゅうざん)とは、妊娠22週未満に出血や腹痛などの流産が進みそうな徴候があるものの、子宮の中で赤ちゃんが生きていて、妊娠が続いている状態のことです[1]。「流産」という言葉が入っていますが、流産したという意味ではありません。妊娠初期の出血はおよそ4人に1人にみられるありふれた出来事で[2]、妊娠12週未満に起こる流産の多くは赤ちゃん側の染色体の数の変化によるもので、通常の日常生活や仕事などの身体活動が流産の主な原因になるとする根拠は乏しいです。この記事では、切迫流産の症状、原因、赤ちゃんが助かる確率、安静や薬の効果、赤ちゃんへの影響を、臨床遺伝専門医の立場から解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約13分
🤰 妊娠初期の出血・腹痛
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 切迫流産と言われました。赤ちゃんは助かりますか?

A. 切迫流産と診断されても、多くの妊娠はそのまま続きます。超音波で赤ちゃんの心拍が確認できていれば、その後に流産する割合はさらに低くなります[2]。妊娠初期流産では胎児側の染色体異常が主要な原因であり、切迫流産に対する一律の安静で流産を防げるという確かな根拠はありません[1][7]。出血が多いとき、強い痛みがあるときは、すぐにかかりつけの産婦人科に連絡してください。

  • ➤切迫流産 → 流産が「差し迫っている」状態で、妊娠は続いている
  • ➤主な症状 → 出血(茶色〜鮮血)、下腹部の痛み、お腹の張り、腰の痛み
  • ➤原因 → 12週未満は赤ちゃんの染色体の数の変化が中心。12週以降は子宮や感染など母体側の要因も
  • ➤安静と薬 → 流産を防ぐ効果ははっきりしていない。ただし主治医の指示には理由がある

1. 切迫流産とは?流産との違い

切迫流産とは、妊娠22週未満で、子宮の中の赤ちゃんが生きているのに、出血や腹痛など流産が進みそうな徴候がある状態を指します[1]。「切迫」は「差し迫っている」という意味で、流産がすでに起きたわけではありません。日本では妊娠22週より前に妊娠が終わることを流産と呼ぶため、切迫流産も22週未満に限って使われる言葉です[1]。

診断名としては重く聞こえますが、実際には妊娠初期の出血はめずらしいものではありません。米国の家庭医向けの総説は、妊娠第1三半期(妊娠初期のおよそ13週ごろまで)の出血はおよそ4人に1人の妊娠で起こると述べています[2]。妊娠初期に出血があって受診し、超音波で胎嚢(たいのう:赤ちゃんを包む袋)や心拍が確認されたうえで、出血の原因がはっきりしない場合に、切迫流産という診断がつくことがよくあります。

「切迫流産」と「流産」はどう違う?

いちばん大きな違いは、赤ちゃんが生きていて、妊娠が続いているかどうかです。流産は妊娠22週より前に妊娠が終わった状態を指し、日本産科婦人科学会によれば妊娠の約15%が自然流産に終わります[1]。一方、切迫流産は妊娠が継続している段階で出血や腹痛などを認める状態です。古典的な定義では子宮口が閉じていることが特徴とされますが、妊娠初期では心拍がまだ確認できない時期にも出血がみられるため、超音波所見と妊娠週数を踏まえて経過を評価します。

流産はさらに、進み方によって呼び方が分かれます。子宮の内容物が出始めて止められない状態を進行流産、すべて出てしまった状態を完全流産、一部が残った状態を不全流産といいます。症状がないまま赤ちゃんの成長が止まり、子宮の中にとどまっている状態は稽留流産(けいりゅうりゅうざん)と呼ばれます。それぞれの特徴は流産の種類で詳しく説明しています。

📋 切迫流産・流産・切迫早産の違い

項目 切迫流産 流産 切迫早産
時期 妊娠22週未満 妊娠22週未満 妊娠22週以降37週未満
赤ちゃんの状態 生きていて、妊娠が続いている 妊娠が終わった(または終わりつつある) 生きていて、妊娠が続いている
主な症状 出血、下腹部痛、お腹の張り 出血、下腹部痛、組織の排出。症状がない場合(稽留流産)もある 規則的なお腹の張り、出血、破水
その後 多くは妊娠が続く 経過をみる、薬、手術など 治療で妊娠を延ばすことを目指す

※流産・切迫流産の定義は日本産科婦人科学会[1]による。

切迫早産との違い

切迫早産は、妊娠22週以降37週未満に早産になりかけている状態で、切迫流産とは時期が異なります。切迫流産の出血の多くは妊娠初期に起こり、その背景には赤ちゃん側の染色体の問題が大きく関わっています。これに対して切迫早産では、子宮の収縮、子宮頸管が短くなること、感染などが主な問題になり、張り止めの薬や入院管理など、対応の考え方も変わります。

同じ「切迫」という言葉が付くため混同されやすいのですが、妊娠22週を境に別の状態として扱われると覚えておくと整理しやすくなります。切迫早産の原因や治療は切迫早産とはで解説しています。

💡 用語解説:胎嚢・胎芽・心拍

胎嚢(たいのう)は、妊娠のごく初期に超音波で見える、赤ちゃんを包む袋です。その中に胎芽(たいが:赤ちゃんのもとになる部分)が見え、やがて心臓の拍動(心拍)が確認できるようになります。心拍がいつ見えるかは、妊娠週数の数え方のずれや超音波の方法によって前後します。心拍がまだ見えない時期に出血があった場合は、1〜2週間後にもう一度超音波で確認して判断することが一般的です。

2. 切迫流産の症状|出血・腹痛はどの程度で受診する?

切迫流産の主な症状は、性器からの出血と下腹部の痛みです。そのほか、お腹の張り、腰の重さや痛みを感じることもあります。ただし、症状の強さと妊娠の経過は必ずしも一致しません。少量の出血が数日続いても妊娠が順調に続くことは多く、反対に、出血がほとんどないまま稽留流産がわかることもあります。

出血の量と色の見方

出血の色は、茶色、ピンク色、鮮やかな赤(鮮血)とさまざまです。茶色やこげ茶色の出血は、時間がたって酸化した血液であることが多く、子宮の中にたまっていた古い血液が少しずつ出てきている場合によくみられます。鮮血は、いま出血が起きていることを示します。

切迫流産と診断された182人の経過を追った研究では、出血の量や出血した回数は、その後に流産するかどうかと明らかな関連を示しませんでした[3]。一方で、日本産科婦人科学会は、妊娠初期に少量の出血や軽い腹痛がみられることはしばしばあり、少量の出血であればまず自宅で安静にしてよいとしています[1]。量や色だけで結末を予測することはできないので、出血の様子は記録しておき、次の受診で主治医に伝えるのが現実的です。

腹痛・腰痛・お腹の張りの特徴

切迫流産の腹痛は、生理痛に似た下腹部の鈍い痛みや、キューッと締めつけられるような痛みとして感じられることが多いです。腰のだるさや、お腹の張りを伴うこともあります。妊娠初期は子宮が大きくなり始め、子宮を支える靱帯が引っぱられるため、正常な妊娠でも軽い下腹部痛や腰痛はよくみられます。

注意したいのは、痛みが強くなっていく場合、片側だけが強く痛む場合、肩の痛みやふらつきを伴う場合です。これらは切迫流産よりも、次に説明する子宮外妊娠などの緊急性の高い病気を考える手がかりになります。

⚠️ すぐにかかりつけの産婦人科に連絡したいサイン

生理の多い日よりも多い出血が続く/レバーのような大きな血の塊が何度も出る/我慢できないほど強い腹痛、片側だけの強い痛み/肩の痛み、めまい、冷や汗、気が遠くなる感じ/38度以上の発熱や、においの強いおりもの。夜間や休日でも、かかりつけ医の緊急連絡先に電話してください。

出血しても切迫流産とは限らない

妊娠初期の出血には、切迫流産以外にもいくつかの原因があります。米国の総説は、妊娠第1三半期の出血の主な原因として、絨毛膜下血腫(じゅうもうまくかけっしゅ)、胎芽の成長の停止、胎芽が見えない妊娠(枯死卵)、不全流産、子宮外妊娠、絨毛性疾患(胞状奇胎など)を挙げています[2]。医学書のメルクマニュアルは、このうち最も危険なのは子宮外妊娠で、頻度が高いのは流産だとしています[4]。

子宮外妊娠(異所性妊娠)は、受精卵が子宮以外の場所、多くは卵管に着床した状態です。大きくなると卵管が破れ、お腹の中で大量に出血することがあります。胞状奇胎(ほうじょうきたい)は、胎盤のもとになる絨毛が異常に増える病気で、受精のときの染色体の組み合わせの異常が原因です。このほか、子宮の出口にできる頸管ポリープや、子宮腟部のびらんからの出血もあります[4]。どれに当たるかは超音波と診察でしか区別できないため、自分で「切迫流産だろう」と決めつけないことが大切です。

💡 用語解説:絨毛膜下血腫

絨毛膜下血腫(じゅうもうまくかけっしゅ)は、胎盤のもとになる絨毛膜と子宮の壁のあいだに血液がたまった状態です。妊娠初期の出血の原因としてよくみられ、超音波で三日月形の黒い影として見えます。多くは自然に吸収されますが、血腫が大きい場合は経過を慎重にみます。切迫流産と診断される人の中には、この血腫が出血の原因になっている人が少なくありません。

3. 切迫流産の原因|動きすぎやストレスのせい?

切迫流産でみられる出血や腹痛の原因は多様で、原因を特定できないこともあります。一方、妊娠12週未満に流産へ至った場合は胎児側の染色体異常が主要な原因です。妊娠週数が進むと、子宮の形、感染、血腫、子宮頸管など母体側・胎盤側の要因も相対的に重要になります。まず妊娠初期流産と染色体の関係から説明します。

妊娠12週未満の流産:赤ちゃんの染色体の変化

妊娠12週未満の流産では、胎児側の染色体異常が主要な原因です。日本産科婦人科学会によると、12週未満に流産した組織の染色体を調べると約80%に異常が見つかります[1]。日本産婦人科医会の研修資料は、臨床的に流産と診断されるものの50〜70%に染色体異常を伴い、妊娠第1三半期の流産に限ると55%、第2三半期では35%と、時期が進むにつれて割合が下がると説明しています[5]。数字に幅があるのは、調べた時期や検査の方法が研究ごとに違うためですが、妊娠初期ほど赤ちゃん側の原因が大きいという点は共通しています。

見つかる異常の中身にも特徴があります。流産でみられる染色体異常のうち約60%は常染色体のトリソミー(本来2本ある染色体が3本ある状態)で、その中で最も多いのは16番染色体のトリソミーです。X染色体が1本しかないXモノソミーが約20%、染色体の組が3組そろってしまう3倍体が約15%を占めます[5]。16トリソミーは生まれてくることがほとんどない組み合わせで、妊娠のごく初期に成長が止まります。

💡 用語解説:トリソミー・モノソミー

ヒトの細胞には、父と母から1本ずつ受け継いだ23組46本の染色体があります。ある番号の染色体が3本になった状態をトリソミー、1本しかない状態をモノソミーといいます。染色体には多数の遺伝子がのっているため、本数が変わると遺伝子の量のバランスが崩れ、多くの場合は赤ちゃんが育つことができません。21トリソミー(ダウン症候群)のように出生に至るものは、トリソミー全体から見ると一部です。

染色体の数の変化はなぜ起こる?

染色体の数の変化の多くは、卵子や精子ができる過程の「減数分裂」で、染色体がうまく分かれないこと(染色体不分離)によって起こります。減数分裂は、46本の染色体を半分の23本に分けて卵子や精子をつくる特別な細胞分裂です。このとき対になった染色体が正しく左右に分かれず、片方に2本とも入ってしまうと、その卵子や精子が受精してできた受精卵はトリソミーやモノソミーになります。

この分離の誤りは、とくに卵子で起こりやすく、卵子の染色体異常は母体の年齢が上がるほど増えることが知られています[5]。卵子は、お母さん自身が胎児だったころから減数分裂の途中で止まったまま長い年月を過ごし、排卵の直前に分裂を再開します。年齢とともに染色体を引き分ける仕組みが弱くなることが、年齢による増加の背景にあると考えられています。詳しい仕組みは卵子で染色体異常が起こる理由と母体年齢の関係で解説しています。

大切なのは、こうした染色体の数は受精した時点ですでに決まっているという点です。日本産科婦人科学会も、赤ちゃんの染色体異常はほとんどが偶然のできごとだと説明しています[1]。妊娠がわかったあとのお母さんの行動で、赤ちゃんの染色体の本数が変わることはありません。

妊娠12週以降:母体側の要因

妊娠週数が進むと、流産に占める胎児染色体異常の割合は低下し、母体側・胎盤側など他の要因の相対的な重要性が増します[5]。代表的なものは、子宮の形の異常(子宮奇形)、子宮筋腫、絨毛膜下血腫、腟や子宮頸管の感染症、子宮頸管が早く開いてしまう頸管無力症、甲状腺などのホルモンの病気、抗リン脂質抗体症候群などの自己免疫や血液凝固の異常です。

これらの中には、妊娠前や妊娠中に見つけて対応できるものもあります。とくに流産を2回以上くり返している場合は、不育症として原因を調べることが検討されます。夫婦のどちらかが染色体の構造の変化(均衡型転座など)を持っていると、流産をくり返すことがあります。詳しくは不育症とはと不育症の原因になる染色体異常で解説しています。

動きすぎ・仕事・ストレスは原因になる?

妊娠初期の切迫流産や流産について、家事や仕事で動いたこと、ストレスを感じたことが主な原因になると考える根拠は乏しいです。ここまで説明したとおり、12週未満の流産の大部分は受精の時点で決まっている染色体の数の変化によるもので[1]、その後の生活の仕方で変わるものではありません。通常の日常生活や仕事などの身体活動が、妊娠初期流産の主な原因になるとする根拠は乏しいとされています。

一方で、絨毛膜下血腫がある場合や出血が多い場合には、主治医から「しばらく無理をしないように」と言われることがあります。これは動いたことが原因だったという意味ではなく、出血が増えたときにすぐ休める状態にしておく、という経過観察上の配慮と受け止めてください。血腫と活動の関係については絨毛膜下血腫と動きすぎの関係、ストレスについてはストレスは流産の原因になる?で詳しく扱っています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【出血したのは、あなたのせいではありません】

妊娠初期の流産の多くは、受精した瞬間に決まっている染色体の数の変化によるものです。臨床遺伝専門医として染色体の成り立ちを考えると、妊娠がわかってから後のお母さんの行動で、その結末が左右されることはほとんどないと考えています。

妊娠初期流産の多くは胎児側の染色体異常と関連し、通常の日常生活や仕事などの身体活動が主な原因になるとする根拠は乏しいとされています。原因を検討するときは、直前の行動だけに因果関係を求めず、妊娠週数や超音波所見など医学的情報に基づいて評価することが重要です。

4. 切迫流産で赤ちゃんが助かる確率

切迫流産と診断されても、多くの妊娠はそのまま続きます。見通しを大きく左右するのは、超音波で赤ちゃんの心拍が確認できているかどうかと、お母さんの年齢です。「助かる確率」は研究によって対象が違うため数字に幅がありますが、代表的なデータを順に見ていきます。

出血した妊娠全体で見た見通し

妊娠初期に出血した人全体で見ると、およそ半数が流産に至ると報告されています[2]。ただし、この「出血した人全体」には、受診した時点ですでに赤ちゃんの成長が止まっていた人や、子宮外妊娠だった人も含まれます。切迫流産は「赤ちゃんが生きていることが確認できた人」に限った診断なので、この数字をそのまま当てはめることはできません。

子宮の中に胎嚢が確認できた出血のある妊婦さんを対象にした大規模な試験では、見通しがもっとよくなります。英国で行われたPRISM試験は、妊娠12週未満に出血があり、超音波で子宮内の妊娠が確認された女性4,000人あまりを対象にした臨床試験です。ここでは、薬を使わなかった(偽薬の)グループでも72%が出産に至っていました[6]。この試験には、心拍がまだ確認できない時期の人も含まれています。

心拍が確認できたあとの見通し

超音波で子宮の中に心拍のある胎芽が確認できると、その後に流産する割合は大きく下がります。米国の家庭医向けの総説は、心拍が確認されたあとの流産は、35歳以下では約2%、35歳を超える女性では約16%だとしています[2]。

切迫流産と診断された182人を追った英国の研究では、全体の流産率は14.3%でした[3]。つまり、この研究では8割以上の妊娠が続いたことになります。心拍の確認は、切迫流産の見通しを考えるうえで最も重要な情報のひとつです。心拍数と流産リスクの関係については胎児心拍数と流産リスクの関係でも解説しています。

📊 研究で報告されている見通しの目安

対象 報告された数字 出典
妊娠初期に出血した人全体 約半数が流産(受診時にすでに成長が止まっていた例を含む) 米国の総説[2]
出血があり子宮内妊娠を確認(12週未満) 偽薬グループで72%が出産 PRISM試験[6]
切迫流産と診断された182人 流産率14.3% コホート研究[3]
超音波で心拍を確認したあと 流産は35歳以下で約2%、35歳超で約16% 米国の総説[2]

※対象や時期が研究ごとに異なるため、数字を直接比べることはできません。ご自身の見通しは、超音波の所見をふまえて主治医に確認してください。

年齢と出血した時期による違い

切迫流産の見通しは、お母さんの年齢と、出血が起きた妊娠週数によっても変わります。先ほどの182人の研究では、31〜40歳の流産率は27.1%で、21〜30歳の7.1%より高くなっていました[3]。これは、年齢とともに卵子の染色体の数の変化が増えることと矛盾しない結果です[5]。

出血の時期では、妊娠6週より前の出血で流産率が29%と最も高く、妊娠第1三半期の出血全体では15%、第2三半期の出血では5.6%でした[3]。ごく初期の出血ほど、まだ心拍が確認できない段階の妊娠や、染色体の変化を持つ妊娠が含まれやすいためと考えられます。反対に、同じ研究では、出血の量や回数、これまでの出産回数、過去の流産歴は、流産率に明らかな影響を示しませんでした[3]。

5. 切迫流産の診断と治療|安静は意味がない?

切迫流産の診断は、内診と超音波検査で行います。妊娠初期の切迫流産に対して、安静や薬で流産を防げるという確かな根拠は、現時点ではありません[1]。それでも主治医が安静や経過観察を指示するのには理由があります。ここでは、受診したときに何が行われるのか、安静と薬についてわかっていることを整理します。

受診したときの流れ

出血や腹痛で受診すると、まず出血の場所と量、子宮の出口が開いていないかを内診で確認し、続いて超音波で子宮の中を調べます。超音波では、胎嚢が子宮の中にあるか(子宮外妊娠ではないか)、胎芽と心拍が見えるか、胎嚢の大きさが週数に合っているか、絨毛膜下血腫がないかを確認します。

出血・腹痛量・色・痛みを記録
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内診出血の場所・子宮口
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超音波胎嚢・心拍・血腫
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経過観察1〜2週後に再確認

心拍が見えない時期で週数がはっきりしない場合には、すぐに結論を出さず、1〜2週間ほどあけて再度超音波で確認するのが一般的です。子宮外妊娠が疑われる場合には、血液中のhCG(妊娠で増えるホルモン)の値の推移も参考にします。

安静の効果についてわかっていること

妊娠初期の切迫流産に対して、ベッドでの安静が流産を減らすことを示した質の高い研究はありません。系統的レビューで知られるコクラン共同計画は、心拍が確認され出血のある妊婦さんへの安静を検証した研究を集めましたが、見つかったのは2件・84人分だけで、安静によって流産が統計的に有意に減ることは示されませんでした。レビューの著者らは、流産予防のために安静を勧める方針を支持する質の高い根拠は不十分だと結論しています[7]。日本産科婦人科学会も、安静にしたり薬を使ったりしても流産を予防する効果はなさそうだと説明しています[1]。

では「安静にしなかったから流産した」ということになるのかといえば、そうではありません。安静の効果が証明されていないということは、裏を返せば、動いたことで流産が起きたとも言えないということです。ただし、出血が多いときや血腫が大きいときに安静を勧められるのは、出血量の増加に気づきやすくし、急な出血があってもすぐ対応できるようにするという意味もあります。自宅安静といっても寝たきりを指すとは限らず、身の回りのことはしながら、重い物を持つ、長時間立ち続けるといった負担を控えるよう指示されることも多いです。具体的な範囲は、出血の量や超音波の所見に応じて主治医に確認してください。

薬(プロゲステロン)の効果

妊娠を維持するホルモンであるプロゲステロン(黄体ホルモン)の薬については、大規模な臨床試験が行われています。先ほど紹介したPRISM試験では、妊娠12週未満に出血のある女性に腟から使うプロゲステロン製剤か偽薬を使ってもらいました。出産に至った割合はプロゲステロンのグループで75%、偽薬のグループで72%で、統計的にはっきりした差は認められませんでした[6]。

ただし、過去の流産の回数で分けて見ると、流産を3回以上経験していた女性では、出産に至った割合がプロゲステロンのグループで72%、偽薬のグループで57%と差がみられました[6]。この結果を受けて、英国の国立医療技術評価機構(NICE)の指針は、子宮内妊娠が確認され、出血があり、過去に流産の経験がある女性に腟用プロゲステロンを勧め、心拍が確認できれば妊娠16週まで続けるとしています[8]。日本での薬の使い方は施設や状況によって異なるため、主治医の方針に従ってください。

入院が必要になる場合と、仕事の休み方

妊娠初期の切迫流産の多くは外来での経過観察になりますが、出血量が多い場合、強い痛みが続く場合、大きな血腫がある場合などには入院して経過をみることがあります。妊娠中期に入ってからの切迫流産で、子宮の収縮や子宮頸管の変化を伴う場合にも、入院して管理することがあります。

働いている方が主治医から休養や業務の軽減を指示された場合は、「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」を使う方法があります。このカードは、医師などが働く妊婦さんへの指示内容を事業主に正確に伝えるための様式で、事業主はカードの記載内容に応じた措置を講じる必要があります。厚生労働省のカードでも、妊娠中の症状の例として切迫流産が挙げられています[9]。休業中の収入の補償については、加入している健康保険や勤務先の制度によって扱いが異なるため、勤務先の担当部署に確認してください。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「効果が証明されていない」という言葉の読み方】

切迫流産に対する一律の安静については、流産予防効果を支持する質の高い根拠が十分ではありません。一方、妊娠初期流産では胎児側の染色体異常が主要な原因であり、生活上の活動制限だけで予防できるものではありません。

安静を守れなかったことだけを流産の原因とみなす医学的根拠はありません。一方、子宮外妊娠のように早期の診断が必要な病気が隠れていることがあるため、出血や痛みが強い場合は速やかな医療機関への連絡・受診が重要です。

6. 切迫流産と赤ちゃんへの影響|障害やダウン症との関係

切迫流産そのものが、赤ちゃんの染色体の数を変えたり、ダウン症などの染色体の病気を引き起こしたりすることはありません。受精時に成立する染色体数の異常は切迫流産によって生じるものではありません。なお、受精後の細胞分裂エラーによってモザイクが生じることはあります。ただし、出血と赤ちゃんの染色体の問題は、原因と結果ではなく「同じ妊娠で重なって見えることがある」という関係にあります。この点を分けて考えると、不安の整理がしやすくなります。

切迫流産とダウン症・染色体異常の関係

染色体の数に変化のある妊娠は、その多くが妊娠初期に成長を止め、その過程で出血を伴うことがあります。流産した組織の約6割にみられるトリソミーの多くは、生まれてくることがない組み合わせです[5]。つまり、染色体の数の変化を持つ妊娠の多くは、切迫流産の段階を経て流産に至るか、症状のないまま稽留流産として見つかります。

一方、21トリソミー(ダウン症候群)は、トリソミーの中では生まれてくることがある組み合わせです。ダウン症候群の赤ちゃんを妊娠していても、妊娠中にとくに症状がない場合がほとんどで、出血があったかどうかで見分けることはできません。切迫流産があったからダウン症の可能性が高い、出血がなかったから安心、とはどちらも言えないということです。ダウン症の胎児と流産の関係についてはダウン症胎児の流産メカニズムと自然流産率、血腫との関係は絨毛膜下血腫とダウン症の関連性で詳しく扱っています。

妊娠が続いたあとに気をつけたいこと

妊娠初期に出血があった妊娠では、その後の経過で、早産や低出生体重などの頻度がやや高くなることが報告されています。メルクマニュアルは、妊娠初期の出血が低出生体重、早産、死産、周産期死亡と関連すると記載しています[4]。ただし、これは集団で見たときの傾向で、切迫流産を経験した人の多くは、その後とくに問題なく出産に至ります。

妊娠が安定期に入ったあとも、定期的な妊婦健診を欠かさず受けることが大切です。お腹の張りが規則的に続く、出血がまた始まる、水っぽいおりものが続くといった変化があれば、切迫早産の可能性も考えて早めに受診してください。

赤ちゃんの染色体について知りたいとき

妊娠が続いたあとで、赤ちゃんの染色体について知りたいと考える場合には、出生前検査という選択肢があります。母体の血液で赤ちゃんの染色体の数の変化の可能性を調べるNIPT(新型出生前診断)や、確定診断を目的とした羊水検査などがあります。検査を受けるかどうかは、それぞれの検査でわかることとわからないことを理解したうえで決めるものです。

流産をくり返している場合には、夫婦の染色体検査を含めた不育症の検査が検討されます。検査の結果が本人や家族にとってどういう意味を持つのかを専門医と整理する場として、遺伝カウンセリングがあります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 切迫流産は何週から何週まで?何週に多い?

切迫流産は妊娠22週未満に使われる診断名です。妊娠22週以降に早産になりかけている状態は切迫早産と呼ばれます。出血は妊娠初期に多く、妊娠第1三半期の出血はおよそ4人に1人の妊娠でみられます。

Q2. 切迫流産から助かる確率は?

多くの妊娠はそのまま続きます。切迫流産と診断された182人を追った研究では流産率は14.3%で、心拍が確認されたあとの流産は35歳以下で約2%、35歳を超えると約16%とする総説があります。年齢や出血の時期によって見通しは変わるため、超音波の所見をふまえて主治医に確認してください。

Q3. 切迫流産で安静にするのは意味がない?

妊娠初期の切迫流産で、安静が流産を減らすことを示した質の高い研究はありません。ただし、出血が多いときや血腫が大きいときに安静を勧められるのは、出血の変化に気づきやすくし、すぐ対応できるようにするためでもあります。安静の範囲は主治医の指示に従ってください。

Q4. 動きすぎやストレスが原因で切迫流産になる?

妊娠12週未満の流産の大部分は、受精の時点で決まっている赤ちゃんの染色体の数の変化によるもので、日本産科婦人科学会も赤ちゃんの染色体異常はほとんどが偶然のできごとだと説明しています。通常の日常生活や仕事などの身体活動が主な原因になるとする根拠は乏しいです。

Q5. 切迫流産になると赤ちゃんに障害が残る?ダウン症と関係がある?

切迫流産そのものが赤ちゃんの染色体の数を変えたり、ダウン症を引き起こしたりすることはありません。染色体の数は受精の時点で決まっているためです。一方、妊娠初期に出血があった妊娠では、その後に早産や低出生体重の頻度がやや高くなると報告されているため、定期的な妊婦健診を続けることが大切です。

Q6. 茶色いおりものや少量の出血は切迫流産ですか?

茶色い出血は時間がたった古い血液であることが多く、妊娠初期にはしばしばみられます。それだけで切迫流産かどうかはわからず、子宮外妊娠や頸管ポリープなど別の原因のこともあります。少量であれば次の受診で伝えてよいことが多いですが、量が増える、痛みが強くなるといった場合はすぐにかかりつけ医に連絡してください。

Q7. 切迫流産で仕事は休める?

主治医から休養や業務の軽減を指示された場合は、母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)を使って勤務先に伝える方法があります。事業主はカードの記載内容に応じた措置を講じる必要があります。休業中の収入の扱いは健康保険や勤務先の制度によって異なるため、勤務先に確認してください。

Q8. ミネルバクリニックで切迫流産の検査や治療はできますか?

いいえ、当院では切迫流産の検査・診断・治療は行っておりません。この件についてのご予約・お問い合わせもお受けしていません。出血や腹痛がある場合は、妊婦健診を受けているかかりつけの産婦人科にご相談ください。

まとめ

切迫流産は、妊娠22週未満に出血や腹痛がありながら、赤ちゃんが生きていて妊娠が続いている状態です[1]。妊娠初期の出血はおよそ4人に1人にみられ[2]、切迫流産と診断されても多くの妊娠はそのまま続きます。超音波で心拍が確認できれば、その後に流産する割合はさらに低くなります[2][3]。

妊娠12週未満の流産の多くは、受精の時点で決まる赤ちゃんの染色体の数の変化によるもので[1][5]、通常の日常生活や仕事などの身体活動が流産の主な原因になるとする根拠は乏しく、切迫流産に対する一律の安静で流産を防げるという確かな根拠もありません[6][7]。出血が多いとき、強い痛みや片側の痛み、ふらつきがあるときは、子宮外妊娠などの可能性もあるため、すぐにかかりつけの産婦人科に連絡してください。

🏥 切迫流産の検査・治療をお考えの方へ

当院では、切迫流産の検査・診断・治療を行っておりません。
この件についてのご予約・お問い合わせはお受けしておりません。
出血や腹痛がある場合は、妊婦健診を受けている産婦人科(かかりつけの医療機関)へご相談ください。

この記事は病気を正しく知っていただくための解説であり、当院での診療をご案内するものではありません。なお、他の診療の過程で具体的な遺伝学的評価が必要と判断された場合に限り、遺伝カウンセリングが関係することがあります。

参考文献

  • [1] 公益社団法人 日本産科婦人科学会. 流産・切迫流産. [日本産科婦人科学会]
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  • [4] Downs SG, Heine RP. Vaginal Bleeding During Early Pregnancy. Merck Manual Professional Version. [Merck Manual]
  • [5] 公益社団法人 日本産婦人科医会. 研修ノート 2.染色体異常. [日本産婦人科医会]
  • [6] Coomarasamy A, et al. Progesterone to prevent miscarriage in women with early pregnancy bleeding: the PRISM RCT. Health Technol Assess. 2020;24(33):1-70. doi:10.3310/hta24330. PMID:32609084. [DOI 10.3310/hta24330]
  • [7] Aleman A, Althabe F, Belizán JM, Bergel E. Bed rest during pregnancy for preventing miscarriage. Cochrane Database Syst Rev. 2005;(2):CD003576. doi:10.1002/14651858.CD003576.pub2. [Cochrane]
  • [8] National Institute for Health and Care Excellence (NICE). Ectopic pregnancy and miscarriage: diagnosis and initial management (NG126). Recommendations 1.5.2–1.5.3. [NICE]
  • [9] 厚生労働省. 母健連絡カード(母性健康管理指導事項連絡カード)について. 妊娠・出産をサポートする女性にやさしい職場づくりナビ. [厚生労働省]

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プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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