目次
化学流産(生化学的妊娠)で出る白い塊は、剥がれた子宮内膜(脱落膜)や血のかたまりであることがあり、見た目だけで正体を決めることはできません。化学流産(かがくりゅうざん)は、妊娠検査薬で陽性になったあと、超音波で胎嚢(たいのう:赤ちゃんを包む袋)が見える前に妊娠が終わる状態を指します。胎嚢が見える前の時期なので、赤ちゃんの形をした組織が出る時期ではありません。この記事では、白い塊とレバーのような血の塊の正体、出たときの対処、月経過多との見分け方、化学流産のあとに知っておきたいことを整理します。
Q. 化学流産で出る白い塊は、赤ちゃんや胎嚢ですか?
A. 見た目だけでは判断できません。剥がれた子宮内膜(脱落膜)、血のかたまり、妊娠に由来する組織のいずれかが考えられます。化学流産は胎嚢が超音波で見える前に終わる妊娠なので、赤ちゃんの形が分かる時期ではありません。ただし、強い腹痛、肩の痛み、めまい、大量の出血があるときは、子宮外妊娠も含めて早めの受診が必要です。
- ➤白い塊 → 脱落膜、血のかたまり、妊娠に由来する組織のいずれか。外見では区別できない
- ➤レバーのような塊 → 月経でも流産でも出る。塊の有無だけで化学流産とは言えない
- ➤すぐ受診する症状 → 強い腹痛、肩の痛み、めまい、ナプキンがすぐ浸る出血、発熱
- ➤原因と自責 → 初期流産は胎児側の染色体の変化が多い。日常の行動が原因と特定された根拠は確認できていない
1. 化学流産で出てくる塊の正体
化学流産とは、妊娠検査薬で陽性になったものの、超音波検査で胎嚢が確認される前に妊娠が終わる状態です。[1][2]医学用語では「生化学的妊娠」と呼ばれ、国際的な用語集では「血液または尿中のβ-hCG(妊娠すると分泌されるホルモン)が検出されることだけで診断される妊娠」と定義されています[2]。日本では、生化学的妊娠は流産の回数には数えません[3]。
妊娠検査薬は、尿の中のhCGを検出します。hCGは着床が始まると分泌されるため、化学流産でも検査薬は陽性になります。妊娠が続かなければhCGの値は下がり、検査薬は再び陰性になります。
妊娠が続かなくなると、妊娠を支えていた子宮内膜が剥がれて、月経のような出血が起こります。このとき、出血に混じって白い塊や血の塊が出てくることがあります。塊の正体について、分かっていることと分かっていないことを分けて説明します。
白い塊・膜のような塊は何か
白い塊の正体は、見た目だけでは決められません。考えられるのは、剥がれた子宮内膜(脱落膜)、血液成分の少ない血のかたまり、妊娠に由来する組織のいずれかです。
脱落膜(だつらくまく)は、妊娠が成立したときに子宮内膜が変化してできる組織です。妊娠が続かなくなると、これが薄い膜のようにまとまって出てくることがあり、「脱落膜様の膜(decidual cast)」と呼ばれます。症例報告では、こうした膜を病理検査で調べると脱落膜だけで絨毛(じゅうもう:胎盤のもとになる組織)が見つからなかった例があり、流産と間違えられやすいと述べられています[4][5]。
💡 用語解説:脱落膜と絨毛
脱落膜は、妊娠が成立したときに子宮内膜が厚く変化してできる組織で、妊娠が続かなければ月経のように剥がれ落ちます。絨毛は、受精卵の側からできる、胎盤のもとになる組織です。絨毛が含まれているかどうかは、組織を顕微鏡で調べる病理検査で確認します。
白い塊に絨毛が含まれているかどうかは、外見では判断できません。また、化学流産で出る白い塊のうち、脱落膜と妊娠組織がそれぞれどのくらいの割合なのかを示した研究は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。白っぽい膜状、ゼリー状、細かい破片状など、見え方は人によってさまざまで、決まった形があるわけではありません。
なお、白い塊が出血とは別に、おりものとして出ることもあります。妊娠超初期のおりものの変化については、妊娠超初期のおりものの解説をご覧ください。
レバーのような血の塊は何か
レバーのような赤黒い塊は、血液が固まったものであることがあります。血の塊は月経でも流産でも出るため、塊があることだけで化学流産と判断することはできません。NICE(英国の国立医療技術評価機構)のガイドラインも、子宮外妊娠の症状の一つとして、凝血塊を伴う場合と伴わない場合がある腟出血を挙げており[6]、塊の有無は妊娠の状態を見分ける決め手にはなりません。
出血が多いと、血液が子宮の中や腟にとどまっている間に固まり、塊として出てくることがあります。塊が出るときに、下腹部の重い痛みや、おなかが張る感じを伴う方もいます。塊の大きさや数についても、化学流産か月経かを分ける基準として確立したものは、今回確認した資料にはありません。
レバーのような塊が胎芽(たいが:赤ちゃんになる前の段階)だったのではないか、と心配する方もいます。これも見た目では判断できません。化学流産は、定義上、胎嚢が超音波で確認される前の妊娠です。胎嚢が超音波で初めて見えるのは妊娠約5週ごろ、心拍のある胎芽が確認できるのは約6週ごろとされています[7]。それより前の時期は、肉眼で塊として見分けられる大きさに育っていない段階と考えられます。
一方、すでに超音波で胎嚢が確認されたあとの出血や、妊娠週数が進んでからの出血は、化学流産ではなく通常の流産です。その場合の出血や排出については、流産に伴う出血と流産の自然排出で解説しています。
白い塊は赤ちゃんや胎嚢なのか
化学流産の時期に出た白い塊を、外見から「赤ちゃん」や「胎嚢」と判断することはできません。化学流産は胎嚢が超音波に映る前に終わる妊娠で、赤ちゃんの形ができている時期ではないと考えられます。妊娠週数ごとの、超音波で分かることと大きさの目安は、次の表のとおりです。
📏 妊娠週数ごとの超音波所見と胎芽の大きさの目安
※週数は最終月経の初日から数えた平均的な目安で、排卵日のずれや個人差で変わります。化学流産は、超音波で胎嚢が確認される前に終わる妊娠です。頭殿長(とうでんちょう)は、頭からおしりまでの長さです。
このように、妊娠5〜6週の時点でも、胎芽の大きさはミリ単位です。化学流産で出た塊が、赤ちゃんの形をしたものであることは考えにくいといえます。
⚠ 白い膜のような組織が出ても、子宮の中の妊娠が終わったとは限りません
子宮外妊娠でも、子宮内膜が膜のようにまとまって出てくることが知られています[4]。超音波検査では、こうした膜のある子宮外妊娠が、子宮内の妊娠と間違えられることもあると指摘されています[4]。妊娠検査が陽性で胎嚢が確認されていない時期に、強い腹痛、肩の痛み、めまいがあるときは、塊の見た目にかかわらず早めに受診してください。症状の詳しい目安は、第2章で示します。子宮外妊娠については子宮外妊娠の解説をご覧ください。
🩺 院長コラム【塊の正体は、見た目ではなく検査で確かめるものです】
白い塊が出た場合でも、医学的には、塊の見た目から中身を特定することはできません。同じように見えても、剥がれた内膜のこともあれば、血のかたまりのことも、妊娠に由来する組織のこともあります。
医学的には、確認できることと確認できないことを区別することが重要です。塊の外見だけで判断せず、症状、超音波検査、hCGの推移、必要に応じた病理検査に基づいて評価します。
画像で見比べるときの注意
「化学流産 塊 画像」と検索すると、さまざまな写真が出てきます。ただ、写真から自分の塊の正体を判断することはできません。同じように見える組織でも中身が違うことがあり、光の当たり方や水分の含み方で、色や質感も変わって見えます。また、検索で出てくる写真が、化学流産のものとは限りません。この記事に実際の写真を載せていないのは、写真が診断の手がかりにならないためです。
🔍 外見が似ていても、正体が異なる3つ
※症例報告に基づく整理で、それぞれの頻度を示す資料は確認できていません。
受診の際に、出血の様子を写真に残している方もいます。写真は診断の代わりにはなりませんが、出血の量や色の変化を医師に伝える補助にはなります。塊そのものの写真で正体が分かるわけではない点は、変わりません。
確かめる方法は、超音波検査、hCGの値の推移、症状の経過、必要に応じた病理検査です。写真で決めようとせず、これらの結果で判断します。
2. 塊が出たときの対処
塊が出たときにまず確認したいのは、塊の見た目ではなく、痛みや出血の量、ふらつきなどの症状です。受診が必要かどうかも、塊の有無ではなく症状で判断します。
まずやること
① 症状を確認します。出血の量、下腹部の痛みの強さ、めまいやふらつきがないかを見ます。強い症状があるときは、次の項で示すとおり、保管より受診を優先します。
② 塊は、保管できる場合に保管します。塊に気づいたときは、清潔な容器などに入れておくと、受診したときに医師が状態を確認する材料になります。ただし、塊の保管や持参は、今回確認した公的な資料(日本産科婦人科学会、NICE、NHS)では一律に推奨されていません。持参が必要かどうか、保管の方法は、受診先に電話で確認してください。無理に塊を探したり、触って確かめたりする必要はありません。
③ 経過をメモします。妊娠検査薬で陽性が出た日、出血が始まった日、出血の量、痛みの有無を控えておくと、受診したときに状況を伝えやすくなります。
④ トイレに流れてしまった場合。流れてしまっても、受診の要否は塊があったかどうかでは決まらず、症状で判断します。塊は確認できなくなりますが、超音波検査やhCGの検査で状態を調べることはできます。
⑤ 出血のあいだの過ごし方。流産後の出血は、NHSでは最大約2週間続くことがあるとされ[9]、RCOGでは1〜2週間ほどと説明されています[10]。RCOGは、子宮内膜の感染のリスクを高めるおそれがあるため、タンポンではなくナプキンを使うよう案内しています[10]。
すぐ受診すべき症状
次の症状があるときは、塊の見た目にかかわらず、早めに受診してください。
🚨 早めに受診したい症状
NHSは、これらの症状があるときに救急(英国では999番)へ連絡するよう案内しています[9]。日本では、夜間や休日でも産婦人科へ連絡して指示を受けてください。日本産科婦人科学会も、月経のような多めの出血や強い腹痛があるときは、夜間や休日でも産婦人科へ連絡するよう案内しています[1]。
RCOGは、流産のあとに子宮内膜の感染が起こるのは100人のうち2〜3人としています。発熱や悪臭のあるおりものを伴うときは、抗生物質で治療できるため、早めに受診してください[10]。
強い症状がなくても、妊娠検査が陽性なのに胎嚢が確認されていない段階では、子宮外妊娠の可能性を除外する必要があります。NICEは、危険因子がない人でも子宮外妊娠を考えて評価するよう述べています。その理由として、子宮外妊娠の約3分の1には、既知の危険因子がないことが挙げられています[6]。
出血の多さを、ナプキンの枚数など数値で示せる確立した基準は、今回確認した資料には見つかりませんでした。数値ではなく、めまいやふらつきの有無、出血が続いているかどうかを目安にしてください。出血が2週間を超えて続く、あるいは量が増えていくときも、受診を検討してください。
受診でわかること
受診すると、経腟超音波検査で妊娠の位置(子宮の中か外か)と胎嚢の有無を調べ、必要に応じて血液のhCGの値を測ります。NICEは、妊娠の位置の確認には経腟超音波を使うこと、hCGの値だけで妊娠の位置を判断しないこと、症状を重くみることを示しています[6]。
妊娠検査が陽性でも、超音波で妊娠が確認できない状態は「妊娠部位不明(PUL)」と呼ばれます。ESHREの用語の推奨では、PULは、症状が安定していて、尿検査が陽性、経腟超音波で妊娠が確認できない場合に限って使う言葉とされています。PULの女性は、最終的な結果が分かるまで経過をみます。結果は、子宮内の妊娠、子宮外妊娠、hCGが下がって自然に終わったもののいずれかです[11]。化学流産と呼ばれる経過は、このうち最後のものに近い状態です。
受診したときは、最終月経の開始日、妊娠検査薬が陽性になった日、出血や痛みの経過、持病や服用中の薬、過去の妊娠の経過を伝えると、医師が状態を判断しやすくなります。
排出された組織を病理検査に出すかどうかは、症状や経過をみて医療機関が判断します。組織の中身を調べるには病理検査が必要ですが、化学流産で出た白い塊を必ず調べるべきだという基準は、今回確認した資料には示されていませんでした。妊娠検査薬がいつまで陽性になるかは化学流産はいつまで陽性か、化学流産の症状や出血の特徴は化学流産の症状・出血で解説しています。
3. 生理の塊・月経過多と化学流産の見分け方
月経の量が多い方は、化学流産で出た塊を、いつもの月経の塊と考えてしまうことがあります。反対に、月経の塊を見て、化学流産だったのではないかと心配になる方もいます。
塊があるだけでは化学流産とは言えない
血の塊は、月経過多の方の月経でもよく見られます。塊があるかどうか、大きさがどうかだけで、月経と化学流産を区別する方法は、今回確認した文献には見つかりませんでした。化学流産と言えるのは、妊娠検査でhCGが検出されていた場合です[2]。
そのため、妊娠検査薬を使っていなければ、化学流産が起きたことに気づかない方もいます。1988年の研究では、妊娠を望む健康な女性221人を、毎日の尿中hCG測定で追跡しました。確認された198件の妊娠のうち、22%は臨床的に妊娠と診断される前に終わっていました[12]。この22%は、当時の非常に感度の高い測定を毎日行った結果で、対象も妊活中の女性です。現在の一般的な妊娠検査薬での割合や、個人が化学流産になる確率を示すものではありません。
月経過多の方は、もともと月経のたびに塊が出るため、化学流産で塊が出ても、いつもの月経と区別がつきにくくなります。妊娠を希望している場合は、月経予定日を過ぎても月経が来ないときや、いつもと違う経過のときに妊娠検査薬を使っておくと、あとから振り返りやすくなります。
化学流産と生理を分けるヒント
月経予定日ごろに、塊を伴う多めの出血があったとき、判断の手がかりになるのは妊娠検査の結果です。次の表のような点を、あわせて確認します。
🩸 化学流産と月経を分ける手がかり
※どれか一つで決められるものではなく、基礎体温は測定の誤差もあるため補助的な情報です。
決め手は、妊娠検査で陽性が出ていたかどうかです。陽性の記録がないと、あとから月経と化学流産を見分けることは難しくなります。基礎体温の見方は化学流産の基礎体温、月経と間違えやすい着床出血との違いは化学流産の症状・出血、流産後の月経予定日については化学流産後の生理予定日で解説しています。
月経過多の目安と受診のタイミング
月経過多は、月経の出血が多くて生活に支障が出る状態です。NICEのガイドラインは、月経過多を「身体的、社会的、感情的、または物質的な生活の質を損なう、過多な月経出血」と定義しています[13]。経血量を何mL以上とするような数値ではなく、生活への支障を重くみた定義です。次のような状態が続くときは、婦人科の受診を検討してください。
- ナプキンがすぐに浸り、頻繁に交換しなければならない
- 大きな血の塊が繰り返し出る
- 出血のために、仕事や外出が難しい
- めまい、動悸、息切れなど、貧血が疑われる症状がある
月経過多の背景には、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープなどの子宮の病気や、ホルモンバランスの乱れなどがあります。子宮筋腫は子宮筋腫の解説、子宮腺筋症は子宮腺筋症の解説、子宮内膜ポリープは子宮内膜ポリープの解説をご覧ください。
月経過多が続くと、体から鉄分が失われて貧血になることがあります。貧血があると、めまい、動悸、息切れ、疲れやすさなどが出ます。こうした症状があるときは、月経の量が多いかどうかにかかわらず、貧血の有無を確認するために受診できます。
月経過多の治療にはホルモン剤などが使われることがあります。妊娠を希望しているときは、そのことを医師に伝えたうえで、治療法を選びます。子宮の病気の種類や大きさによっては、妊娠や妊娠の経過に影響することがあります。妊娠を考えている方も、月経過多が続くときは、受診して原因を確かめることができます。
4. 化学流産と分かったあとに知っておきたいこと
原因の多くは偶発的な染色体の変化・自責しない
化学流産の原因は、はっきり分かっていないことが多く、化学流産だけを対象に原因を調べた研究は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。一方、初期の流産全般では、胎児側の染色体の数の変化が原因になることが多いことが知られています。日本産科婦人科学会は、流産した組織の染色体の約80%に異常がみられるとしており[1]、不育症管理に関する提言は、流産の60〜80%が胎児の染色体異常によるとしています[3]。
染色体の数の変化は偶然に起こることが多く、避ける確立した方法は確認されていません。染色体の数の異常については、染色体の数的異常とはで解説しています。ただし、上の割合は臨床的に確認された初期流産のデータで、化学流産に限ったものではありません。対象の集団、検査の方法、妊娠週数によっても割合は変わるため、一つの数字に決めることはできません。
年齢が上がると、流産の割合も高くなります。生殖補助医療(ART)のデータでは、流産率は20〜24歳で14.5%、35〜39歳で24.6%、40〜44歳で39.6%と報告されています[3]。これは体外受精などを受けた方の集計で、化学流産の割合ではなく、個人の確率でもありません。
重いものを持った、仕事を続けた、ストレスがあった、といったことを原因として考えてしまう方もいます。NHSの原因のページは、流産の原因について、妊娠の経過そのものの問題であることが多いとし、危険因子として年齢、持病、喫煙、飲酒などを挙げていますが、日常の動作や仕事、ストレスは挙げていません[14]。喫煙や飲酒は、流産との関連が指摘されているもので、一つひとつの流産の原因だと特定できるものではありません。化学流産は着床して間もない時期に起こるため、日常の行動との関係を示す確かな根拠は、今回確認した範囲ではありません。原因を自分の行動に結びつけて責める必要はないと考えます。
🩺 院長コラム【原因を探しすぎて、自分を責めないために】
流産の原因は、一つに特定できないことが少なくありません。初期流産では胎児側の染色体の変化が関与することが多く、個々の日常行動と流産との因果関係を特定できない場合があります。
初期流産では、胎児側の染色体の変化が関与することが多いとされています。個々の流産について、重いものを持ったこと、仕事、ストレスなどの日常行動を原因と特定できる根拠は確認されていません。
次の生理と次の妊娠
NHSは、流産のあとは症状がおさまり、気持ちの準備ができたら、また妊娠を試みてよいとしています[9]。RCOGも、体と心の準備ができたらすぐに試みてよいとしています[10]。月経の再開は、NHSでは最大8週間かかることがあり、量や周期が元に戻るまでには数か月かかることもあると説明されています[9]。これらは流産全般についての案内で、化学流産に限った待機期間の基準は、今回確認した資料にはありません。個別の状況は、医師に確認してください。
妊娠を希望している場合は、次の月経が始まった日を記録しておくと、次の周期の目安になり、受診したときにも経過を伝えやすくなります。
化学流産では、hCGが検出されたことから、着床が始まっていたと考えられます。ただし、次の妊娠が難しいという意味ではありません。NHSは、流産を経験した女性の多くが、その後の妊娠に成功するとしています[9]。
日本では、化学流産は流産の回数に数えません[3]。ただし、生化学的妊娠を3回以上繰り返す場合は、不育症に準じた検査を行うとされています[3]。化学流産を繰り返す場合は化学流産を繰り返す理由、流産後の妊娠の一般的な注意点は流産後の妊娠についてをご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 化学流産で白い塊が出たら、どうすればいいですか?
まず、痛みの強さ、出血の量、めまいの有無を確認してください。強い腹痛、肩の痛み、めまい、ナプキンがすぐに浸るほどの出血、発熱があるときは、夜間や休日でも産婦人科へ連絡して早めに受診してください。症状が軽い場合でも、妊娠検査で陽性が出ていたなら、経過を伝えて受診し、塊を持参する必要があるかどうかを受診先に確認してください。
Q2. 化学流産の白い塊は、胎嚢(赤ちゃん)ですか?
見た目だけでは判断できません。化学流産は、胎嚢が超音波で見える前に終わる妊娠です。胎嚢が見え始めるのは約5週ごろで、それより前の時期に赤ちゃんの形ができているとは考えにくいといえます。白い塊は、剥がれた子宮内膜(脱落膜)や血のかたまりであることも、妊娠に由来する組織であることもあります。子宮外妊娠でも膜状の組織が出ることがあるため、症状が強いときは受診してください。
Q3. 生理のときに血の塊が多く出るのは、化学流産ですか?
塊があるだけでは、化学流産とは言えません。血の塊は、月経過多の方の月経でもよく見られます。手がかりになるのは、妊娠検査で陽性が出ていたかどうかです。塊が繰り返し出て生活に支障があるときは、月経過多の可能性があるため、婦人科で原因を確かめられます。
Q4. レバーのような血の塊は、胎芽ですか?
見た目では判断できません。レバーのような塊は、血液が固まったものであることがあります。化学流産の時期は、超音波で胎嚢が見える前で、肉眼で塊として見分けられる大きさの胎芽に育っていない段階と考えられます。ただし、すでに胎嚢が確認されたあとの出血や、妊娠週数が進んでからの出血は、化学流産ではなく通常の流産です。
Q5. 塊をトイレに流してしまいましたが、大丈夫ですか?
流してしまったこと自体で、受診が必要になるわけではありません。受診の要否は、塊の有無ではなく症状で判断します。強い腹痛、肩の痛み、めまい、大量の出血、発熱があるときは受診してください。塊が確認できなくても、超音波検査やhCGの検査で状態を調べることができます。
Q6. 化学流産に気づかない人はいますか?
います。妊娠検査薬を使っていなければ、化学流産が起きても、いつもの月経として過ぎることがあります。1988年の研究では、妊娠を望む健康な女性221人を毎日の尿中hCG測定で追跡し、確認された198件の妊娠のうち22%が、臨床的に妊娠と診断される前に終わっていました[12]。ただし、この研究は妊活中の女性を対象に、非常に感度の高い測定で行われたもので、個人の確率を示すものではありません。
まとめ
化学流産で出る白い塊は、剥がれた子宮内膜(脱落膜)、血のかたまり、妊娠に由来する組織のいずれかが考えられますが、見た目だけでは正体を決められません。化学流産は胎嚢が超音波で見える前に終わる妊娠なので、赤ちゃんの形が分かる時期ではありません。塊の有無だけでは月経との区別もつかず、判断の手がかりになるのは、妊娠検査で陽性が出ていたかどうかです。
受診の要否は、塊の見た目ではなく症状で決めます。強い腹痛、肩の痛み、めまい、ナプキンがすぐに浸るほどの出血、発熱があるときは、子宮外妊娠も含めて早めに受診してください。原因の多くは胎児側の染色体の変化とされ、日常の行動が原因と特定された根拠は確認できていません。化学流産の全体像は化学流産に気がつくきっかけをご覧ください。
📘 この記事について
この記事は、化学流産で出る塊について、現在確認できる医学的な情報をまとめた解説です。個別の症状の診断を行うものではありません。強い腹痛、肩の痛み、めまい、大量の出血、発熱があるときは、夜間や休日でも、お近くの産婦人科または救急へ連絡してください。当院(ミネルバクリニック)は、臨床遺伝専門医が診療する遺伝診療のクリニックです。
参考文献
- [1] 日本産科婦人科学会. 流産・切迫流産(市民向け解説). [JSOG]
- [2] Zegers-Hochschild F, et al. The International Glossary on Infertility and Fertility Care, 2017. Hum Reprod. 2017;32(9):1786-1801. doi:10.1093/humrep/dex234 [Hum Reprod]
- [3] 「不育症管理に関する提言」改訂委員会. 不育症管理に関する提言2025. [こども家庭庁]
- [4] Pingili R, Jackson W. Decidual Cast. The Internet Journal of Gynecology and Obstetrics. 2007;9(1). [ISPUB]
- [5] Siddiqui B, et al. Decidual casts: Dilemma for clinicians, relief for patients – A case series. Indian J Obstet Gynecol Res. 2023;10(1):99-102. doi:10.18231/j.ijogr.2023.023 [IJOGR]
- [6] National Institute for Health and Care Excellence (NICE). Ectopic pregnancy and miscarriage: diagnosis and initial management (NG126). [NICE NG126]
- [7] Doubilet PM, et al. Diagnostic criteria for nonviable pregnancy early in the first trimester. N Engl J Med. 2013;369:1443-1451. doi:10.1056/NEJMra1302417 [eScholarship]
- [8] Robinson HP, Fleming JE. A critical evaluation of sonar “crown-rump length” measurements. Br J Obstet Gynaecol. 1975;82:702-710. [PubMed 1182090]
- [9] NHS. Miscarriage. [NHS]
- [10] Royal College of Obstetricians and Gynaecologists (RCOG). Early miscarriage(患者向け情報). [RCOG]
- [11] ESHRE Working Group on Ectopic Pregnancy, et al. Terminology for describing normally sited and ectopic pregnancies on ultrasound: ESHRE recommendations for good practice. Hum Reprod Open. 2020;2020(4):hoaa055. doi:10.1093/hropen/hoaa055 [Hum Reprod Open]
- [12] Wilcox AJ, et al. Incidence of early loss of pregnancy. N Engl J Med. 1988;319(4):189-194. doi:10.1056/NEJM198807283190401 [PubMed 3393170]
- [13] NICE. Heavy menstrual bleeding: assessment and management (NG88). [NICE NG88]
- [14] NHS. Miscarriage – Causes. [NHS]





