目次
流産の出血は、下着に付く程度の少量から、生理より多くレバーのような血の塊を伴うものまで幅があります。出血の量や色だけで、流産かどうか、今すぐ病院へ行くべきかを決めることはできません。判断の手がかりになるのは、出血が止まらないか、強い腹痛や片側の激しい痛みがないか、ふらつき・めまいがないかといった体全体の状態です。ナプキンがすぐに染みるほどの出血、強い腹痛、肩の痛み、気が遠くなる感じがあるときは、夜間・休日でも受診してください。この記事では、流産の出血量・色・続く日数の目安、血の塊が出たときの対応、流産以外で出血する原因、受診時に行う検査を、臨床遺伝専門医の立場から整理します。
Q. 流産の出血はどのくらいで、いつ病院へ行けばよいですか?
A. 流産の出血は、少量の点状出血から生理より多い出血まで人によって大きく違います。量が少なくても流産していることがあり、多くても妊娠が続くことがあります。1時間にナプキン2枚以上が2時間続けて染みる出血、強い腹痛、肩の痛み、ふらつきがあれば救急受診の目安です。生理のように多めの出血や強い腹痛があれば、夜間・休日でも産婦人科へ連絡してください。
- ➤出血量 → 少量から生理以上まで幅がある。多い出血と痛みの組み合わせは流産のリスクと関連する
- ➤色 → ピンク・赤・茶色とさまざまで、色だけでは流産かどうか判断できない
- ➤期間 → 流産が終わったあとの出血は、多くは最大2週間ほどで落ち着く
- ➤血の塊 → 固まった血液か妊娠組織かは見た目では区別できない。保存して受診する
- ➤原因 → 早期流産の多くは受精卵の染色体の数の変化で、本人の行動が原因ではない
1. まず確認:すぐ受診が必要な流産の出血
妊娠中に出血したとき、最初に確認したいのは「出血の量が多すぎないか」「強い痛みがないか」「体がふらつかないか」の3点です。流産の主な症状は性器出血で、点状のピンク・赤・茶色の出血から、ナプキンに染みる赤い大量の出血まで現れ方はさまざまです[1]。一方で、妊娠中の出血や腹痛はほかの原因でも起こり、必ずしも重い状態とは限りません[1]。そのため、出血の有無そのものより、体に危険なサインが重なっていないかを先に見ることが、受診の判断では役に立ちます。
危険なサインを確認する理由は2つあります。1つは、流産が進むときに子宮の中の組織が出きらず、出血が多い状態が続くことがあるためです。もう1つは、子宮外妊娠(異所性妊娠)のように、流産とよく似た出血で始まり、お腹の中で出血が起こる病気が隠れていることがあるためです。英国国立医療技術評価機構(NICE)のガイドラインは、異所性妊娠の症状として、腹痛や骨盤の痛み、塊を伴う性器出血、肩先の痛み、めまいや失神、排便時の痛みなどを挙げています[2]。
今すぐ受診・救急要請が必要なサイン
次のどれか1つでも当てはまるときは、夜間・休日であっても、すぐに医療機関を受診するか救急要請をしてください。英国の国民保健サービス(NHS)は、妊娠中の性器出血に加えて、お腹の強い痛み、肩の痛み、気分が悪い・気が遠くなる・めまいがする・意識を失う、ナプキンを当ててすぐに染みるほどの大量出血のいずれかがあれば、救急要請をするよう案内しています[1]。
🚨 すぐに受診・救急要請が必要なサイン
・1時間にナプキン2枚以上が、2時間続けて染みるほどの出血
・お腹の強い痛み、特に片側だけの激しい痛み
・肩先の痛み
・めまい、立ちくらみ、気が遠くなる、意識が遠のく
・38℃以上の発熱や、においの強いおりもの(感染が疑われる)
大量出血の目安として、米国家庭医学会の総説は「1時間に2枚以上のナプキンが2時間続けて染みる」出血を挙げています[3]。ただし、これはあくまで目安です。この量に届かなくても、強い痛みやふらつきがあれば、それだけで受診の理由になります。肩の痛みやふらつきは、お腹の中で出血しているときに現れることがあるサインで、性器からの出血が少なくても見過ごさないでください。
翌日〜早めに受診したい出血
生理のような多めの出血や強い腹痛がある場合、日本産科婦人科学会は、夜間や休日であっても産婦人科へ連絡するよう案内しています。一方で、軽い出血や腹痛であれば、自宅で安静にして様子を見てよいとしています[4]。
救急の目安には当たらないものの、早めに受診を考えたいのは、少量でも出血が数日続いている場合、少量の出血に生理痛のような下腹部の痛みが続いている場合、以前の健診で稽留流産(けいりゅうりゅうざん)と診断されていて出血が始まった場合などです。まだ妊娠の確認(子宮の中の胎嚢の確認)ができていない時期の出血も、子宮外妊娠との区別が必要になるため、早めに連絡しておくと、受診のタイミングを医療機関と相談できます。夜間であれば、まず分娩を扱う医療機関や、かかりつけの産婦人科の夜間連絡先に電話で状況を伝え、受診の必要性の指示を受ける方法があります。
次の健診まで様子を見てよい出血と、記録しておきたいこと
下着やトイレットペーパーに付く程度の少量の出血で、痛みやふらつきがなく、増えていかない場合は、次の健診まで様子を見られることが多いです。妊娠初期の少量の出血はよくあり、点状の出血や軽い出血は流産と関連しなかったという前向き研究もあります[5]。とはいえ、自己判断に迷ったら、健診を待たずにかかりつけへ電話で相談してかまいません。
様子を見る間は、出血が始まった日時、1日に使ったナプキンの枚数とサイズ、色、塊の有無と大きさ、腹痛の場所と強さ、体温を簡単にメモしておくと、受診のときに状況を正確に伝えられます。スマートフォンで出血の写真を撮っておくのも一つの方法です。こうした情報は、医師が進行流産か、子宮外妊娠か、それ以外の出血かを考える手がかりになります。
2. 流産の出血はどのくらい?出血量の目安
流産の出血量に「これくらい」という決まった量はありません。少量の点状出血で終わる人もいれば、生理の多い日を超える量と血の塊が出る人もいます。出血量を左右するのは、妊娠週数、流産の進み方、子宮の中の組織がどれだけ残っているか、といった条件です。量だけを見て「流産かどうか」を判断できないのは、このためです。
🩸 出血量と受診の目安
| 出血の量 | 目安となる状態 | 受診の目安 |
|---|---|---|
| 少量 | 下着やトイレットペーパーに付く程度、おりものに混じる程度 | 痛み・ふらつきがなければ次の健診まで様子を見られることが多い。迷ったら電話で相談 |
| 生理程度〜多め | 生理の多い日のような量、ナプキンを何度も替える | 夜間・休日でも産婦人科へ連絡 |
| 大量 | 1時間にナプキン2枚以上が2時間続けて染みる、当ててすぐ染みる | すぐに受診・救急要請 |
※受診の目安は日本産科婦人科学会[4]、NHS[1]、米国家庭医学会の総説[3]をもとに整理。強い腹痛、肩の痛み、ふらつきがあれば、量にかかわらず受診してください。
生理と比べた出血量
妊娠初期の出血が生理と同じかそれ以上に多く、特に痛みを伴う場合には、流産のリスクが高くなることが知られています。米国で妊娠初期の女性4,510人を追跡した前向きコホート研究では、27%の人が妊娠初期に出血を経験し、そのうち大量の出血は8%でした。生理並みかそれ以上の大量出血は、流産のリスク上昇と関連しており(調整オッズ比3.0、95%信頼区間1.9〜4.6)、痛みを伴うとさらに関連が強くなりました。これに対して、点状の出血や軽い出血は流産と関連していませんでした[5]。
この結果が示しているのは、「出血したから流産」でも「量が少ないから大丈夫」でもない、という点です。オッズ比は集団で見たときのリスクの差を表す数字で、一人ひとりの流産の確率を示すものではありません。流産が進むときの出血は、子宮の中で亡くなった胎嚢や絨毛(じゅうもう)といった組織がはがれて出てくる過程で多くなり、組織が出たあとは減っていくのが一般的な経過です。出血のピークは、組織が出る前後にあることが多いと理解しておくと、経過の見通しを立てやすくなります。
妊娠週数が進むほど出血は多くなりやすい
妊娠週数が進むほど子宮と胎盤のもとになる組織が大きくなるため、流産のときの出血も多くなりやすい傾向があります。妊娠5〜6週ごろの流産では、生理より少し多い程度の出血で経過することも少なくありません。一方、妊娠10週を過ぎたころの流産では、組織が大きく、出血量や塊の大きさも増えることがあります。
妊娠12週以降の後期流産では、陣痛のような周期的な痛みとともに組織が出ることがあり、出血も多くなる場合があります。「6週の流産の出血量はどのくらいか」といった週数ごとの具体的な数値については、信頼できる一次データで示された量はなく、個人差も大きいため、ここでは数値を挙げません。週数にかかわらず、先ほどの受診の目安に当てはまるかどうかで判断してください。
稽留流産で出血が始まったとき
稽留流産と診断されて自然に出るのを待っている間に出血が始まったら、流産が進み始めたサインと考えられます。NICEのガイドラインは、流産の管理として、まず7〜14日間の待機を第一の選択とし、その期間を過ぎても出血や痛みが始まらない場合や、出血や痛みが続く・増える場合には再度の超音波検査を行うとしています[2]。
出血が始まったあとは、数時間から数日かけて、強い下腹部痛とともに血の塊や組織が出てくるのが典型的な経過です。組織が出ると痛みがやわらぎ、出血も少しずつ減っていきます。反対に、出血が多いまま減らない、痛みが治まらないといった場合には、組織が子宮の中に残っている可能性があるため、受診してください。自然排出を待つ期間やその間の過ごし方は、稽留流産の自然排出の解説で詳しくまとめています。
💡 用語解説:稽留流産(けいりゅうりゅうざん)
稽留流産とは、子宮の中で赤ちゃん(胎芽・胎児)が亡くなっているのに、出血や腹痛などの症状がないまま組織が子宮の中にとどまっている状態です。ご本人に自覚症状がないため、多くは健診の超音波検査で心拍が確認できないことなどから見つかります。その後、自然に組織が出てくるのを待つか、手術で子宮の中の組織を取り除くかを、医師と相談して選びます。
🩺 院長コラム【量より「止まるかどうか」と体のサイン】
出血時の受診判断では、量と色そのものだけでなく、出血が止まっていく流れにあるのか、痛みやふらつきを伴っているのかという点が重要です。
ナプキンの枚数、塊の有無、痛みの場所を簡単にメモしておくと、電話で相談するときにも状況を正確に伝えられます。数字や記録は、医療者が受診の緊急度や次に必要な対応を判断する手がかりになります。
3. 流産の出血の色|鮮血・茶色・黒っぽい出血の意味
流産の出血の色は、ピンク、鮮やかな赤、茶色、黒っぽい赤とさまざまで、色だけで流産かどうかを判断することはできません。NHSも、流産の出血として、ピンク・赤・茶色の点状の出血から、ナプキンに染みる赤い大量の出血までを挙げています[1]。色は、血液が体の外に出るまでにかかった時間や、おりものとの混ざり方によって変わります。
茶色い出血は流産のサイン?
茶色い出血は、子宮や腟の中にしばらくとどまっていた血液が酸化した色であることが多く、茶色だから流産とも、茶色だから大丈夫とも言えません。妊娠初期には、着床のころの少量の出血、子宮の入り口(子宮頸部)からの出血、絨毛膜下血腫(じゅうもうまくかけっしゅ)などでも茶色いおりものが見られます。これらの多くは妊娠が続きます。
一方で、稽留流産では、明らかな出血がないまま茶色のおりものが続いたあとで、診断がつくこともあります。茶色の出血が数日以上続く場合や、量が増えてきた場合、腹痛を伴うようになった場合には、次の健診を待たずに受診を考えてください。茶色かどうかよりも、量の変化と痛みの有無のほうが、判断の手がかりとして役に立ちます。
鮮血が出たとき
鮮やかな赤い血は、いま出血していることを示す色です。量が多い、止まらない、痛みを伴う場合には、流産が進行している可能性も考えて受診してください。ただし、鮮血であっても、子宮頸部のポリープやびらんからの出血、性交のあとの出血のように、妊娠そのものとは関係なく、少量で自然に止まるものもあります。
鮮血が少量で、痛みもなく、すぐに止まった場合は、かかりつけに連絡して受診のタイミングを相談すれば足りることが多いです。反対に、鮮血がナプキンにどんどん染みる、塊を伴う、下腹部の強い痛みがあるといった場合は、第1章の受診の目安に従ってください。
色だけでは流産かどうか判断できない理由
色と流産の関係を調べた一次研究はほとんどなく、医学的に「この色なら流産」と言える基準はありません。流産かどうかは、超音波検査で子宮の中の胎嚢や心拍を確認し、必要に応じて血液中のhCGの値の推移を見て、医師が判断します。
色が判断材料にならないのは、同じ流産でも、出血が始まった直後は鮮血、時間がたつと茶色というように、経過の中で色が変わるためです。黒っぽい赤い血も、子宮の中にたまっていた血液が出てきた色で、色そのものが重さを示すわけではありません。色は受診時に伝える情報の一つとして記録し、判断は量と痛み、体の状態で行ってください。
💡 用語解説:hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)
hCGは、妊娠すると胎盤のもとになる絨毛の細胞から分泌されるホルモンです。市販の妊娠検査薬は、尿の中のこのホルモンを検出しています。妊娠初期の血液中のhCGは一定の速さで増えていくため、流産や子宮外妊娠が疑われるときには、数日あけて測定し、増え方や減り方を比べることで診断の手がかりにします。流産が終わるとhCGは下がっていき、やがて検査で検出されなくなります。
4. 流産の出血は何日続く?
流産が終わったあとの出血は、多くの場合、最大2週間ほどで落ち着きます。NHSは、流産のあとに性器出血や点状の出血が最大2週間ほど続くことがあると案内しています[1]。出血がどのくらい続くかは、出血が始まってから組織が出るまでの期間と、組織が出たあとの期間に分けて考えると整理しやすくなります。
出血が始まってから組織が出るまで
出血が始まってから組織が出るまでの日数には個人差が大きく、数時間で出る人もいれば、数日かかる人もいます。出血が少量で始まり、しばらくしてから痛みが強くなって、血の塊とともに組織が出てくるのが典型的な流れです。
稽留流産の診断から自然に出てくるまでの期間も、人によって大きく異なります。NICEのガイドラインでは、待機の期間を7〜14日間とし、その後も出血が始まらない場合は再度の評価を行うとしています[2]。出血が始まってから何日で出るかを一つの数字で示すことはできないため、「強い痛みのあとに塊が出て、その後痛みがやわらいだか」を目安に経過を見ていきます。
流産が終わったあとの出血はいつまで続くか
自然に組織が出たあとや、手術で子宮の中の組織を取り除いたあとも、少量の出血はしばらく続くのが一般的です。組織が出たあとは、生理の終わりのような少量の出血や茶色のおりものに変わりながら、徐々に止まっていきます。
流産のあとの確認として、NICEのガイドラインは、待機で経過を見た場合や薬で流産を完了させた場合に、流産から3週間後に自宅で尿の妊娠検査を行い、陽性であれば個別の診療のために受診するよう勧めています[2]。3週間たっても妊娠検査が陽性であれば、組織が残っている可能性や、まれな病気の可能性を確認する必要があります。流産のあとの生理がいつ来るかについては、流産後の生理の解説で扱っています。
出血が長引くとき(不全流産)
出血が2週間を超えて続く、いったん減った出血がまた増える、においの強いおりものや発熱がある、といった場合は、子宮の中に組織が残っている不全流産や感染の可能性があるため、受診してください。不全流産は、流産した組織の一部が子宮の中に残っている状態で、出血や腹痛がだらだらと続く原因になります[4]。
残った組織が自然に出ることもありますが、出血が多い場合や感染が疑われる場合には、手術で子宮の中の組織を取り除くことがあります。どのような場合に手術が必要になるか、その方法などは、流産手術が必要なケースの解説で詳しく説明しています。
5. 血の塊が出たら流産?
血の塊が出たからといって、必ず流産しているとは限りません。塊が、固まった血液(凝血塊)なのか、胎嚢や絨毛などの妊娠組織なのかは、見た目だけでは区別できないためです。NICEのガイドラインも、塊を伴う性器出血や組織の排出を、流産や子宮外妊娠を評価するときに確認すべき症状として扱っています[2]。
レバーのような塊の正体
レバーのような暗い赤色でぷるぷるした塊の多くは、子宮や腟の中にたまった血液が固まった凝血塊です。出血量が多いと、血液が体の外に出る前に固まるため、大きな塊になります。生理の量が多い日に塊が出るのと同じ仕組みで、塊が出ること自体は出血量が多いことを示しています。
一方、流産のときには、胎嚢や絨毛といった妊娠組織が、血液の塊と一緒に、あるいは単独で出てくることがあります。絨毛は白っぽいふわふわした組織、胎嚢は膜に包まれた袋のような組織に見えることがありますが、血液に覆われていると区別は難しくなります。塊や組織の見た目の違いについては、化学流産で出る塊の正体の解説で詳しく扱っています。
💡 用語解説:凝血塊(ぎょうけつかい)と絨毛(じゅうもう)
凝血塊は、血管の外に出た血液が固まってできた塊のことで、レバーのような暗い赤色でやわらかいのが特徴です。絨毛は、受精卵が子宮の壁に根を張るようにして伸ばす組織で、のちに胎盤になります。流産のときに排出される組織には、この絨毛や胎嚢が含まれます。見た目だけで両者を区別するのは難しく、病理検査や超音波検査で確認します。
塊が出たときにすること
血の塊や組織のようなものが出たら、可能であれば清潔な容器やビニール袋に入れて保存し、受診の際に持参してください。持参した組織を医師が確認することで、妊娠組織が出たかどうかを判断する手がかりになります。医療機関によっては、流産した組織の染色体を調べる検査を行う場合もあります。
トイレで気づかずに流してしまっても、受診すれば超音波検査で子宮の中の状態を確認できます。流してしまった場合でも、超音波検査で子宮内の状態を確認できます。塊が出たあとに、出血がどんどん増える、強い痛みが続く、ふらつくといった場合は、塊の保存よりも受診を優先してください。塊が出て痛みがやわらぎ、出血が減ってきた場合でも、組織が出きったかどうかは超音波検査でしか確認できないため、落ち着いた時点で受診して確認しておくとよいでしょう。
6. 流産の種類で出血はどう違う?
流産は、進み方や症状によっていくつかの種類に分けられ、種類ごとに出血の現れ方が違います。日本産科婦人科学会は、症状や進み具合によって、稽留流産、進行流産、完全流産、不全流産に分類し、流産の手前の状態として切迫流産を説明しています[4]。種類そのものの詳しい説明は流産の種類の解説にまとめており、ここでは出血に注目して整理します。
📋 流産の種類と出血・腹痛の違い
| 種類 | 状態 | 出血 | 腹痛 |
|---|---|---|---|
| 切迫流産 | 赤ちゃんは子宮の中で生存しているが、流産しかかっている徴候がある | 少量〜中等量 | ないか、軽いことが多い |
| 進行流産 | 子宮の出口が開き、流産が進んでいる | 増えていく。塊を伴うことが多い | 強い下腹部痛 |
| 稽留流産 | 赤ちゃんは亡くなっているが、組織が子宮の中にとどまっている | ないことが多い | ないことが多い |
| 不全流産 | 組織の一部が子宮の中に残っている | だらだらと続く | 続くことがある |
| 完全流産 | 組織がすべて自然に出た | 減っていく | 治まっていく |
| 化学流産 | 妊娠反応は出たが、超音波で胎嚢が確認される前に妊娠が終わる | 生理と区別がつかないことが多い | 生理痛程度のことが多い |
※分類は日本産科婦人科学会[4]による。出血・腹痛は典型的な傾向で、個人差があります。
この表で押さえておきたいのは、切迫流産と、それ以外の流産との違いです。切迫流産は、出血や腹痛はあっても赤ちゃんが子宮の中で生きている状態で、流産とは違います。妊娠が続いている状態の出血について、赤ちゃんが助かる見込みや安静の意味などは、切迫流産の解説で詳しく説明しています。また、化学流産の出血の特徴や着床出血との違いは、化学流産の出血の解説を参照してください。
出血がないのに流産していることもある(稽留流産)
出血や腹痛がまったくなくても、流産していることがあります。その代表が稽留流産です。日本産科婦人科学会は、稽留流産を、出血や腹痛がないまま子宮の中で赤ちゃんが亡くなっている状態と説明しています[4]。つわりが急に軽くなったといった変化に気づく人もいますが、つわりの強さには個人差があり、それだけで流産を判断することはできません。
稽留流産の多くは、健診の超音波検査で、胎嚢が大きくならない、心拍が確認できない、あるいは確認できていた心拍が見えなくなったといった所見から見つかります。「出血がないから大丈夫」とも、「出血したから流産」とも言い切れないのは、このためです。出血の有無にかかわらず、妊娠が順調かどうかは健診の超音波検査で確認されます。
7. 流産以外で妊娠初期に出血する原因
妊娠初期の出血は珍しいものではなく、出血しても多くの場合は妊娠が続きます。米国家庭医学会の総説によると、妊娠初期に出血を経験する人は約25%です[3]。前述の前向き研究でも、妊娠初期の出血は27%で、点状の出血や軽い出血は流産と関連していませんでした[5]。流産以外で出血する主な原因は次のとおりです。
1つ目は着床に伴う出血です。受精卵が子宮内膜にもぐり込む時期に少量の出血が起こることがあり、生理予定日の前後と重なるため、生理と見分けにくいことがあります。2つ目は子宮頸部からの出血です。妊娠すると子宮の入り口の粘膜が充血して出血しやすくなり、頸管ポリープ(子宮の入り口にできる良性のできもの)やびらん、腟炎、性交のあとの刺激で出血することがあります[3]。
3つ目は絨毛膜下血腫です。胎盤のもとになる絨毛膜と子宮の壁の間に血液がたまる状態で、妊娠初期の出血の原因になります[3]。系統的レビューとメタ解析では、絨毛膜下血腫がある妊婦では流産の割合が8.9%から17.6%に上昇し、オッズ比は2.18でした[6]。ただし、これは集団での比較で、絨毛膜下血腫があっても多くの妊娠は続きます。
4つ目は子宮外妊娠(異所性妊娠)です。受精卵が子宮の中以外(多くは卵管)に着床した状態で、進行すると卵管が破れてお腹の中で大量に出血することがあります。性器からの出血は少なくても、片側の強い腹痛、肩の痛み、ふらつきがあれば緊急の受診が必要です[2]。
5つ目は胞状奇胎(ほうじょうきたい)です。受精の際の異常によって絨毛が異常に増える病気で、最も多い症状は不正出血です[7]。hCGが非常に高くなる、つわりが強いといった特徴があり、超音波検査で見つかります。治療後もhCGの値を追って経過を見る必要があります。
🔬 妊娠初期に出血する主な原因
| 原因 | 出血の特徴 | 注意したい点 |
|---|---|---|
| 着床に伴う出血 | 少量で、数日以内に止まることが多い | 生理予定日の前後と重なり、見分けにくい |
| 子宮頸部からの出血 | 少量の鮮血。性交や内診のあとに出やすい | 頸管ポリープ・びらん・腟炎などが原因 |
| 絨毛膜下血腫 | 茶色〜赤い出血が続くことがある | 集団では流産の割合が上がるが、多くは妊娠が続く |
| 子宮外妊娠 | 少量のことも多い | 片側の強い腹痛・肩の痛み・ふらつきは緊急 |
| 胞状奇胎 | 不正出血が続く | hCGが高い。超音波検査で診断 |
出血しても妊娠が続くことは少なくない
妊娠初期に出血しても、その多くは妊娠が続きます。特に、少量の出血や点状の出血は、流産のリスクの上昇とは関連しないと報告されています。前述の研究では、妊娠初期に何らかの出血があっても、出血全体として見ると流産との関連ははっきりせず(オッズ比1.1)、リスクの上昇と関連していたのは、生理並みかそれ以上の大量の出血、特に痛みを伴う出血でした[5]。
生理のような出血があったあとで妊娠が続いていた、という経過も珍しくありません。妊娠が続いている状態での出血の原因や、生理との見分け方については、妊娠初期に生理のような出血があっても妊娠が続くケースや、妊娠初期の出血の特徴の解説で扱っています。いずれにしても、妊娠が続いているかどうかは、超音波検査で確認するまで分かりません。出血に気づいたら、第1章の目安に沿って受診を判断してください。
8. 受診したら何をする?エコー・hCG・血液型
出血して受診すると、主に経腟超音波検査(エコー)、血液中のhCGの測定、血液型の確認が行われます。これらの検査で、妊娠が子宮の中で続いているか、流産が進んでいるか、組織が残っていないか、子宮外妊娠ではないかを確認します。
経腟超音波検査では、子宮の中の胎嚢の有無、胎芽や心拍の有無、子宮の中に残っている組織の有無を確認します。妊娠のごく初期で胎嚢が見えない時期には、血液中のhCGを数日あけて測り、増え方を比べます。hCGが順調に増えない場合や、胎嚢が子宮の中に見えないのにhCGが高い場合には、子宮外妊娠の可能性を考えて、さらに詳しく調べます。内診では、子宮の出口(子宮口)が開いているかどうか、出血が子宮の中からか子宮頸部からかを確認します。
Rh(D)陰性の方は忘れずに伝える
血液型がRh(D)陰性の方は、流産したときに、抗D免疫グロブリンという注射の対象になることがあるため、受診時に忘れずに伝えてください。母親がRh(D)陰性で、赤ちゃんがRh(D)陽性の場合、流産の際に赤ちゃん側の血液が母体に入ると、母体に抗体ができ、次の妊娠で赤ちゃんに影響することがあります。これを防ぐのが抗D免疫グロブリンです。
日本産科婦人科学会は、Rh(D)陰性の場合は抗D免疫グロブリン注射が必要であるとしています[4]。日本の産婦人科診療ガイドライン(2017年版)では、妊娠7週以降まで赤ちゃんの生存が確認できた自然流産の後などに投与するとしています[8]。一方で、海外の指針では扱いが異なり、NICEは手術で流産を処置した場合に投与し、薬だけで処置した場合や完全流産では投与しないとしています[2]。米国産科婦人科学会は2024年に、妊娠12週未満の流産や人工妊娠中絶では、投与を省略してよいとする見解を示しました[9]。
このように、投与するかどうかは、妊娠週数や処置の方法、国や施設の方針によって判断が分かれます。ご自身がRh(D)陰性であることを伝えたうえで、投与の必要性は担当の医師の判断を仰いでください。流産や中絶のあとの注射の意味や、次の妊娠への影響については、Rhマイナスの方の抗D免疫グロブリンの解説で詳しく扱っています。
9. 流産の出血は自分のせい?原因と次の妊娠
妊娠初期の流産の多くは、受精卵の染色体の数の変化によって起こるもので、仕事や運動、ストレス、出血前の行動が原因ではありません。日本産科婦人科学会は、妊娠12週未満の早期流産では赤ちゃんの異常が最も多い原因で、流産した組織の染色体を調べると約80%に異常が見つかると説明し、これは受精の段階で偶然に起こることで、母体の行動が原因ではないとしています[4]。
早期流産の多くは受精卵の染色体の数の変化
流産は、確認された妊娠のおよそ10〜15%に起こる、珍しくない出来事です。米国産科婦人科学会は、早期流産が臨床的に確認された妊娠の10%に起こり、そのおよそ半数が胎児の染色体異常によるとしています[10]。複数の研究をまとめた2021年の報告では、流産は確認された妊娠の15.3%に起こり、女性の10.8%が1回、1.9%が2回、0.7%が3回以上の流産を経験していると推定されています[11]。日本産科婦人科学会も、妊娠の約15%が流産に終わり、40歳を過ぎると40%以上が流産するとしています[4]。
早期流産の原因となる染色体の変化で最も多いのは、特定の染色体が1本多いトリソミーなどの、染色体の数の変化です。卵子や精子ができる過程で染色体が均等に分かれなかったことで起こり、母体の年齢が上がるほど卵子で起こりやすくなります。染色体の異常の割合が研究によって約半数から約8割まで幅があるのは、組織の調べ方や対象となった集団の違いによるものです。いずれにしても、流産の出血は、すでに妊娠が続けられない状態になったあとで、子宮が組織を外に出そうとする過程で起こるもので、出血を止めれば流産を防げるというものではありません。
流産を繰り返すときに考える検査
流産は1回だけなら偶然の要素が大きいものの、2回以上繰り返す場合には、夫婦側の要因がないかを調べることが検討されます。流産や死産を2回以上繰り返す状態は不育症と呼ばれ、子宮の形、血液の固まりやすさ、甲状腺などのホルモン、夫婦の染色体の構造などを調べます。
夫婦のどちらかが、染色体の一部が入れ替わっていても遺伝情報の過不足がない「均衡型転座」を持っている場合、見た目や健康には影響がなくても、受精卵に染色体の過不足が生じて流産を繰り返すことがあります。こうした場合の検査の方法や考え方は、夫婦の染色体検査の解説で扱っています。
次の生理と次の妊娠
流産のあとの次の妊娠について、日本産科婦人科学会は、前回の流産から次の妊娠までの間隔が短くても流産の確率は高くならず、避妊期間を必ずしも設ける必要はないとしています。[4]以前は「生理を何回か待ってから」と言われることもありましたが、現在は、体と気持ちの準備が整ったタイミングで考えてよいという考え方が一般的です。ただし、出血が続いている間や、組織が残っている可能性がある間は、まず受診して流産が完了したことを確認してください。
次の妊娠に向けた注意点は流産後の妊娠の解説で扱っています。また、次の妊娠で赤ちゃんの染色体について知りたいと考える方には、妊婦さんの採血で胎児の染色体の変化を調べるNIPT(新型出生前診断)という検査があります。NIPTは流産を防ぐ検査ではなく、結果が陽性の場合は確定検査が必要になる非確定的な検査です。
🩺 院長コラム【出血を止められなかった、と考えなくていい理由】
早期流産の多くは、受精卵に生じた染色体の数の変化など、妊娠初期の発生過程に由来します。出血は流産の経過として起こる症状であり、通常の仕事や運動などの行動が早期流産の原因になったと考える医学的根拠はありません。
ただし、流産を2回以上繰り返す場合には、夫婦の染色体の構造など、検査で確認できる要因が見つかることがあります。流産を繰り返す場合には、不育症として原因の評価を検討します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 出血が止まったら、流産ではないと考えてよいですか?
出血が止まったことだけで、流産ではないと判断することはできません。切迫流産で出血が止まり、そのまま妊娠が続くこともあれば、組織が出たあとに出血が止まる完全流産のこともあります。また、稽留流産のように出血がないまま流産していることもあります。妊娠が続いているかどうかは、超音波検査で確認してください。
Q2. 血の塊をトイレに流してしまいました。どうすればよいですか?
流してしまっても問題はありません。受診すれば、超音波検査で子宮の中に組織が残っているかどうかを確認できます。次に塊や組織のようなものが出たら、可能であれば清潔な容器やビニール袋に入れて保存し、受診の際に持参してください。出血が増える、強い痛みがある、ふらつく場合は、保存よりも受診を優先してください。
Q3. 流産の出血と生理は、どう見分けますか?
出血の量や色だけで見分けることは難しいです。妊娠検査薬で陽性が出ていた、生理予定日を過ぎてから出血した、いつもの生理より痛みや量が強い、塊や組織のようなものが出た、という場合は流産の可能性も考えられます。妊娠の可能性がある状態で出血したら、医療機関で確認してください。
Q4. 心拍が確認できたあとに出血したら、流産ですか?
心拍が確認できたあとの出血でも、必ず流産とは限りません。妊娠初期の出血は約4人に1人が経験し、少量の出血や点状の出血は流産のリスクの上昇と関連しないと報告されています。一方で、生理並みかそれ以上の出血、特に痛みを伴う出血は流産のリスクの上昇と関連しています。出血量と痛みの有無を確認し、受診の目安に当てはまるかどうかで判断してください。
Q5. 夜間や休日に出血したら、救急に行くべきですか?
1時間にナプキン2枚以上が2時間続けて染みるほどの出血、強い腹痛や片側だけの激しい痛み、肩の痛み、めまい・ふらつきがあれば、夜間・休日でも受診するか救急要請をしてください。日本産科婦人科学会は、生理のように多めの出血や強い腹痛がある場合も、夜間・休日であっても産婦人科へ連絡するよう案内しています。軽い出血や腹痛であれば、自宅で安静にして様子を見てよいとされています。
Q6. 流産のあと、出血が止まってからまた出ることはありますか?
少量の出血が止まったり出たりしながら落ち着いていくことはあります。ただし、いったん減った出血が再び多くなる、2週間を超えて続く、発熱やにおいの強いおりものがある場合は、組織が残っている不全流産や感染の可能性があるため受診してください。流産から3週間後に妊娠検査が陽性の場合も、受診して確認が必要です。
Q7. 流産の診察や処置は、ミネルバクリニックで受けられますか?
いいえ、当院では流産の診断・処置(手術を含む)は行っておりません。この件についてのご予約・お問い合わせもお受けしておりません。出血があるときや流産が疑われるときは、かかりつけの産婦人科、または夜間・休日に対応している産婦人科へご連絡ください。
まとめ
流産の出血は、少量の点状出血から生理より多い出血まで幅があり、色もピンク・赤・茶色とさまざまです。量や色だけで流産かどうかを判断することはできず、受診の判断では、出血が止まっていくか、強い腹痛や肩の痛み、ふらつきがないかを確認します。1時間にナプキン2枚以上が2時間続けて染みる出血や、強い痛み、ふらつきがあれば、夜間・休日でも受診してください[1][3]。
流産が終わったあとの出血は、多くは最大2週間ほどで落ち着きます。血の塊が出たら保存して受診し、出血が長引く場合は組織が残っていないかを確認します。Rh(D)陰性の方は、受診時に忘れずに伝えてください。早期流産の多くは受精卵の染色体の数の変化によるもので、出血を止められなかったことが原因ではありません[4]。流産を繰り返す場合には、不育症の検査で原因を調べる方法があります。
🏥 流産の診察・処置をお考えの方へ
当院では、流産の診断・処置(手術を含む)を行っておりません。
この件についてのご予約・お問い合わせはお受けしておりません。
出血があるときや流産が疑われるときは、かかりつけの産婦人科、または夜間・休日に対応している産婦人科へご相談ください。
この記事は流産の出血について正しく知っていただくための解説であり、当院での診療をご案内するものではありません。なお、流産を繰り返す場合など、染色体を含めた遺伝学的な評価が必要と判断された場合に限り、遺伝カウンセリングが関係することがあります。
参考文献
- [1] Miscarriage. NHS. [NHS]
- [2] Ectopic pregnancy and miscarriage: diagnosis and initial management (NICE guideline NG126). National Institute for Health and Care Excellence. [NICE]
- [3] First Trimester Bleeding: Evaluation and Management. Am Fam Physician. 2019;99(3):166-174. [AAFP]
- [4] 流産・切迫流産. 公益社団法人 日本産科婦人科学会. [日本産科婦人科学会]
- [5] Association between first-trimester vaginal bleeding and miscarriage. Obstet Gynecol. 2009;114(4):860-867. [PubMed 19888046]
- [6] Perinatal outcomes in women with subchorionic hematoma: a systematic review and meta-analysis. Obstet Gynecol. 2011;117(5):1205-1212. [PubMed 21508763]
- [7] Gestational Trophoblastic Disease (Green-top Guideline No. 38). Royal College of Obstetricians and Gynaecologists. [RCOG]
- [8] Rhガイドライン(産婦人科診療ガイドライン産科編2017より). 公益社団法人 日本産婦人科医会. [日本産婦人科医会]
- [9] ACOG Clinical Practice Update: Rh D Immune Globulin Administration After Abortion or Pregnancy Loss at Less Than 12 Weeks of Gestation. Obstet Gynecol. 2024;144(6):e140-e143. [Obstet Gynecol]
- [10] ACOG Practice Bulletin No. 200: Early Pregnancy Loss. Obstet Gynecol. 2018;132:e197-e207. [PubMed 30157093]
- [11] Miscarriage matters: the epidemiological, physical, psychological, and economic costs of early pregnancy loss. Lancet. 2021;397(10285):1658-1667. [PubMed 33915094]





