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化学流産の確率は20代同士だと30%|リスクが上昇する3つの原因を紹介

化学流産という言葉は普段普通に生活しているとあまり聞き慣れませんが、最近では高齢出産の増えるとともに不妊治療を受けるカップルが増えてきたことや、妊娠検査薬の感度が上がったことにより耳にする機会が増えてきました。

近年の研究で、健康なカップルでも30〜40%と高い確率で起こっていることが判明したため、徐々に化学流産という呼び名から生化学的妊娠という呼び名に変わりつつあります。このように、化学流産をどう扱うかについてはっきりとした答えは出ていませんし、女性の体への負担も少ないので、化学流産が起こってしまっても気にしすぎずリラックスした状態で妊活をするようにしましょう。

この記事では、化学流産が起こる確率とリスクが上昇する原因について詳しくご紹介します。

化学流産とは

化学流産は妊娠3〜5週目頃までに受精卵が子宮内膜から剥がれ落ちてしまっている、つまり超音波検査を受けられる妊娠5〜6週目より前に妊娠が継続できなくなっている状態のことです。

化学流産が起こる主な原因は受精卵の染色体異常だといわれており、このような受精卵はほとんどの場合着床できないか、着床したものの継続できずに剥がれ落ちてしまいます。

特に、常染色体に異常がある受精卵のおよそ9割は体外に排出され、自然淘汰されてしまうといわれています。体外に排出されるときは、通常の生理と同じような出血が起こるため自覚症状もほとんどなく、妊娠に敏感な方以外は気が付かないケースがほとんどです。

化学流産が起こる確率

化学流産は、年齢が若く健康に問題のないカップルでも30〜40%程度の確率で起こる現象です。受精卵が着床したものの着床を継続できなかったために、妊娠が成立しなかった状態を指します。化学流産の考え方については現在、国によって考え方に違いがあり、日本やアメリカでは化学流産を臨床的妊娠や他の流産に含めないという考え方ですが、欧州では化学流産も流産に含めるべきだと考えています。

ここでは、化学流産が起こる確率について詳しくご紹介します。

20代〜30代前半の健康なカップルでも30〜40%

化学流産の原因となる染色体異常の受精卵は、一般の受精卵にもかなりの頻度で認められており、体に何の異常もなく年齢が若い20〜30代前半のカップルでも30〜40%の確率で起こっています。一般的に、年齢が上がると卵子も老化し染色体異常の確率が増えるため、30代後半以上のカップルではさらに化学流産の確率が上がってしまいます。

最近は高齢出産の著名人も増えているため、排卵や生理が正しく起こっていれば妊娠、出産できると思っている方も多いですが、実はそうではありません。妊娠、出産は染色体異常が起こっていない元気な卵子を持っている人だけができることであり、たとえ閉経していなくても卵子に妊娠能力がなければ妊娠、出産はできないのです。

質のよい卵子はそれだけ数が少なく、貴重な存在です。このことからも、赤ちゃんがこの世に生まれてくることは、それだけで奇跡のようなことだということがわかります。

化学流産と普通の流産の違い

そもそも流産とは、妊娠したにもかかわらず妊娠22周目以前の早い段階で赤ちゃんが亡くなってしまうことです。流産にはさまざまな分類があり、それぞれに違う特徴があります。以下は、代表的な流産の種類をまとめたものです。

人口流産、いわゆる人工妊娠中絶も流産に含まれますが、ここでは自然流産の種類についてのみご紹介します。

稽留流産(けいりゅうりゅうざん)

胎児は死亡しているものの、出血や腹痛などの自覚症状が起こっていない状態。病院での診察で確認されるケースがほとんどです。子宮内容除去手術を行うか自然排出を待つかは、医師の判断や患者さんの要望によって選択します。

進行流産

子宮内容物が体外に出て出血がはじまっている状態。流産の進行具合によって、完全流産や不全流産に分類されます。完全流産は子宮内容物が自然と体外に出て症状も治っているケースが多く、不全流産は子宮内容物の排出がはじまっているものの、まだ子宮内に残存している状態です。

流産は回数によっても名称に違いがあり、2回目の流産を反復流産、3回以上繰り返す場合は習慣流産と呼びます。化学流産は、自然流産の中でも非常に早い段階で起こる流産であり、一般的な流産との違いは妊娠の進行具合にあります。

受精卵の状態で流産してしまうため、医学的には流産としてカウントされません。また、生理のように自然と体外に排出されるので、特別な処置を必要としないのも特徴です。

化学流産の兆候

流産の前兆としてあるのが出血です。ただし、着床出血の場合もあるので断定はできません。

しかも化学流産の場合、そのような症状は現れません。自覚症状がないので気づかないまま流産していたケースもあります。また、化学流産が起きる前は通常の妊娠と同じです。

そのため人によってはつわりの症状が現われる場合もあります。もし生理予定日から1週間が過ぎても吐き気が起きたり、嘔吐をしたりしたら妊娠検査薬を使うか産婦人科で診察を受けてください。

どんな原因であれ、流産をするのは女性にとってショックな出来事です。やり場のない怒りや悲しみが出てくるのは当然です。だからこそ周りの人が精神面のケアとサポートしてあげてください。

化学流産のリスクが上昇する3つの原因

喫煙している女性

化学流産は、誰にでも起こる可能性がある病態ですので、誰のせいでもありません。ただ、これからご紹介するケースは化学流産のリスクを上昇させている可能性があるので、妊活をしている方は参考にしてみてください。

ここでは、化学流産のリスクが上昇する3つの原因についてご紹介します。

喫煙

タバコの有害物質は、黄体形成や受精卵の着床を妨げるといわれており、化学流産のリスクを高める可能性があります。一般的に、喫煙している女性は卵巣を刺激するエストロゲンの分泌量が低いため、喫煙しない女性と比較すると流産率が高くなってしまうのです。

また、喫煙は男性の精子数や精子の運動率、奇形率にも影響することがわかっているため、化学流産のリスクを下げるためにもカップルで禁煙することをおすすめします。

肥満、痩せすぎ

BMI(体重と身長のバランスで肥満度を判定する国際的な基準)が25以上になると、着床に影響が出て化学流産しやすくなる可能性があります。

また、それと同じようにBMIが18.5以下の女性も痩せすぎによって着床しにくい体になってしまうので、化学流産のリスクを下げるには適正体重をキープしておくことが大切です。肥満や痩せすぎは、臨床的妊娠においても着床後の受精卵発育不全や合併症などのリスクを上昇させる恐れがあるので、妊娠を望んでいる方は適度な運動と規則正しい食生活を心がけるようにしましょう。

年齢によるもの

女性の年齢は、受精卵の質を決定づける重要なものです。年齢が上がるにつれ受精卵の染色体異常のリスクが高まるため、それに伴って化学流産の可能性も高まってしまうのです。

また、女性の年齢が40歳になる頃には化学流産が明らかに増えることもわかっており、出産できる割合もかなり低くなってきます。これは受精卵の染色体異常だけではなく、いわゆる着床の窓のズレによるものも少なからずあるといわれています。

着床の窓とは、子宮内膜が受精卵を受け入れるための条件が揃い、着床可能になるタイミングのことです。受精卵が子宮内に着床できる能力と、子宮内膜が受精卵を着床させるための能力を発揮するタイミングがズレていると、受精卵は着床できないといわれています。

女性の年齢が上がるとともに受精卵と着床の窓にズレが生じ、同期性が失われることも、化学流産のリスクを高めていると考えられるのです。化学流産は本来着床の窓にズレがないことの証明でもありますが、化学流産にいたるひとつの可能性として考えられるので、気になる方はERA検査などの受検をおすすめします。

化学流産後はどうなる

化学流産の原因は染色体の先天性異常によるものがほとんどです。次の妊娠に影響を与える可能性はありませんので次の生理がきたら妊活を再開しても構いません。

ただ、3回連続で早期流産となった場合は不育症の可能性があります。原因は胎児の染色体異常によるものと言われています。不育症であっても無事に妊娠出産できた例がいくつもありますが、病院で検査を受けて原因を探っておきましょう。

化学流産後は妊娠しやすくなる?

化学流産をすると、「妊娠しやすくなる」「反対に妊娠しにくくなる」と両方の説がインターネット上で流れています。しかしながらどちらも医学的根拠はありません。流産により、残っている残留物がなくなり流産後は子宮内がきれいになって妊娠しやすいとは言われていますが、こちらも確証がないのでなんとも言えません。そもそも化学流産の原因は染色体異常によるものです。一度化学流産になったからといって、次も流産するとは限らないので気にしないでください。

化学的流産は、言葉では「流産」とありますが、医学的には流産にカウントされません。「流産してから次の妊娠までの期間」と「次回に妊娠する確率」には、科学的な関連性はないと言われていますので気にせずに妊活をしてください。

まとめ

化学流産が起こる確率とリスクが上昇する原因について詳しくご紹介しました。化学流産は、少し遅めの生理として認識されることも多いため、起こっているすべての数を把握することはできません。

そのため、化学流産が起こる確率はさらに高い可能性もありますが、本来化学流産は妊娠検査薬を正しく使用していればあまり気づくことのない病態であるため、確率ばかりを気にせずゆっくりと赤ちゃんが宿るのを待ちましょう。市販されている妊娠検査薬に「生理予定日の1週間後から使用できます」との注意書きがある理由は、化学流産を区別するためです。

赤ちゃんを望んでいる方は、少しでも早く妊娠しているかを知りたいという思いから、生理予定日になる前に妊娠検査薬を使い、化学流産の事実を知ることになってしまうことがあります。

本文でもご紹介した通り、化学流産は若い健康なカップルでもかなり高い確率で起こっている病態であり、防ぐことはできません。流産という言葉の響きから悪い方向に考えてしまい、再び妊娠することは不可能なのかと心配になってしまう方もいるかもしれませんが、化学流産は次の妊娠に影響することはないので、安心して妊活に励んでください。

東京の「ミネルバクリニック」は臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設であり、たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。妊娠初期からの出生前診断を受ける医療機関にお悩みの方は、知識・経験・実績とも「第三者から認証されている」臨床遺伝専門医が診療している「ミネルバクリニック」まで是非、ご相談ください。

 

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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