目次
投稿日: 2021年6月14
流産後の生理は、多くの場合、流産から8週以内に戻ってきます。化学流産では、生理予定日ごろの出血そのものが流産にあたり、そのあとは普段の周期に近い間隔で次の生理が来ることが多いと考えられます。また、流産後の最初の周期でも排卵は起こり得るため、「最初の生理は必ず無排卵」というわけではありません。妊娠検査薬の陽性が続くのに生理がこない場合や、出血・腹痛・発熱が強い場合は、時期を待たずに産婦人科を受診してください。この記事では、流産の種類ごとの生理の戻り方、生理がこない・遅れるときに考えること、受診の目安を、医学的な根拠に沿って解説します。
Q. 流産後の生理はいつ来ますか?
A. 多くは流産から8週以内です。化学流産では生理予定日ごろの出血が流産そのもので、次の生理は普段の周期に近いことが多いと考えられます。自然に排出された場合や流産手術の後は、出血が落ち着いてから数週間後が目安です。8週を過ぎても生理がこない、または妊娠検査薬の陽性が続く場合は受診してください。
- ➤生理が戻る時期 → 多くは8週以内。流産の種類や出血の長さで前後する
- ➤最初の周期の排卵 → 必ず無排卵ではなく、生理より先に排卵が戻ることが多い
- ➤生理がこないとき → まず妊娠検査薬。陽性が続くなら遺残・次の妊娠・異所性妊娠などを確認
- ➤次の妊娠 → 体の面では長く待つ必要を示す根拠はなく、気持ちの準備ができてからでよい
1. 流産後の生理はいつ来る?
流産後の最初の生理は、多くの場合、流産から8週以内に来ます。英国の国民保健サービス(NHS)は、流産の後、次の生理が来るまでに最大で8週ほどかかることがあり、流産に伴う出血や少量の出血(点状出血)は2週間ほど続くことがある、と案内しています[1]。インターネット上では「4〜6週」という数字もよく見かけますが、出血がどのくらい長引いたか、もともとの生理周期が何日くらいかによって前後するため、「8週以内に戻ることが多い」と幅をもって考えておくのが実際的です。
生理の戻り方は、流産の種類によっても違います。妊娠のごく初期に終わる化学流産と、胎嚢(たいのう:赤ちゃんを包む袋)が確認された後の流産とでは、体の中に残っている妊娠のホルモンの量も、子宮の中の状態も異なるからです。ここでは代表的な3つの場合に分けて説明します。
🗓 流産の種類と、次の生理の目安
| 流産の種類 | 出血のしかた | 次の生理の目安 |
|---|---|---|
| 化学流産 | 生理予定日ごろ、生理に似た出血が起こる | 普段の周期に近い間隔で来ることが多いと考えられる |
| 自然流産(自然排出) | 子宮の内容物が出た後、しばらく出血が続く | 出血が落ち着いてから数週間後。多くは8週以内 |
| 流産手術(子宮内容除去術)の後 | 手術後、少量の出血がしばらく続く | 出血が落ち着いてから数週間後。多くは8週以内 |
※目安の上限(8週)はNHSの案内[1]による。化学流産後の次の生理までの日数を直接調べた研究は、現時点では十分に示されていません。
化学流産の場合:予定日ごろの出血が「流産」、次の生理はいつもの周期が目安
化学流産では、生理予定日ごろに起こる生理のような出血そのものが、妊娠の終わり(流産)にあたります。日本産婦人科医会は、化学流産(生化学的妊娠)を、尿や血液の中に妊娠のホルモンであるhCGが一時的に検出された後、超音波検査で胎嚢が見える段階に至らずに妊娠が終わり、hCGが陰性に戻る状態と説明しています[2]。欧州ヒト生殖学会(ESHRE)の用語の取り決めでも、超音波で確認する前にhCGの低下によって妊娠の終了が分かるものを「生化学的妊娠の喪失(biochemical pregnancy loss)」と呼んでいます[3]。
そのため、「化学流産の後、生理はいつ来るのか」という疑問には、2つの出血を分けて考える必要があります。1つ目は、予定日から数日遅れて始まることもある、流産そのものの出血です。2つ目は、その後に来る「次の生理」です。化学流産ではhCGの量がもともと少なく、早く陰性に戻るため、次の生理は普段の周期に近い間隔で来ることが多いと考えられます。ただし、化学流産の後に次の生理までの日数を直接測った研究は十分ではなく、数日から1〜2週程度ずれることもあります。
化学流産がどのように気づかれるか、通常の生理とどう見分けるかについては化学流産の解説で、出血の量や期間の特徴については化学流産の出血の特徴で詳しく扱っています。
自然流産(自然排出)の場合
胎嚢が確認された後の流産で、子宮の内容物が自然に出た場合は、出血が落ち着いてから数週間後に最初の生理が来るのが一般的です。内容物が出た後も、子宮の内側がもとの状態に戻るまで少量の出血がしばらく続くことがあり、その出血が長引けば、次の生理もその分後ろにずれます[1]。
自然に出るのを待つか、手術を選ぶかは、妊娠週数や出血の状態、体調などを見て医師と決めます。それぞれの利点と注意点は自然排出の解説にまとめています。自然排出を選んだ場合は、子宮の中に組織が残っていないかを確かめるため、決められた時期に妊娠検査や受診をするよう案内されることが多い点も覚えておいてください(詳しくは第4章で説明します)。
流産手術(子宮内容除去術)の場合
流産手術の後も、多くは8週以内に最初の生理が戻ります。手術で子宮の内容物を取り除いた後は、数日から2週間ほど少量の出血が続くことがあり、それが落ち着いてから数週間で生理が来るのが一般的な経過です[1]。手術か自然排出かで再開時期に明らかな差があることを示す、確かなデータは現時点では示されていません。
ただし、手術の後に生理がまったく来ない、または量が極端に少なくなった場合には、子宮の内側がくっついてしまう「子宮内の癒着」が原因になっていることがあります。頻度は高くありませんが、手術の後ならではの原因なので、第4章で改めて触れます。手術が必要になるケースや手術の方法については、流産手術の解説をご覧ください。
生理が戻るまでの体の順番
流産の後は、「hCGが下がる → 排卵する → 次の生理が来る」という順番で体が元に戻っていきます。生理は排卵のおよそ2週間後に来る出血なので、生理より先に排卵が戻るのが普通の順番です。
妊娠が成立すると、胎盤のもとになる組織からhCGが分泌され、妊娠初期には卵巣の黄体を刺激してプロゲステロン分泌を維持します。妊娠中はこうしたホルモン環境によって視床下部―下垂体―卵巣系の周期的な働きが抑えられています。流産後にhCGや妊娠関連ホルモンが低下すると、卵胞発育と排卵を伴う月経周期が再開していきます。妊娠週数や流産後のhCG低下の速さには個人差があるため、生理が戻る時期にも幅があります。
💡 用語解説:hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)
hCGは、妊娠すると胎盤のもとになる組織(絨毛)から分泌されるホルモンです。市販の妊娠検査薬は尿中のhCGを検出して陽性・陰性を判定します。流産の後もhCGはすぐにはゼロにならず、少しずつ下がっていくため、しばらく検査薬が陽性のままになることがあります。詳しくはhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の解説をご覧ください。
2. 流産後の最初の生理は無排卵?排卵はいつ戻る?
流産後の最初の周期が「必ず無排卵になる」というわけではありません。排卵は生理より先に戻ることが多く、早い人では流産から2週間以内に排卵することもあります。「化学流産後の最初の生理は無排卵」という情報を目にして心配になる方もいますが、流産の後の排卵を調べた研究から見ると、最初の生理の前にすでに排卵している人のほうが多数派です。
「必ず無排卵」ではない:生理より先に排卵が来ることもある
妊娠初期に妊娠が終わった後の排卵の時期を調べた研究をまとめた国際的な臨床資料では、排卵は通常3〜4週以内に戻り、早い人では8日ほどで排卵することがあるとされています。また、少なくとも85%の人が最初の生理が来る前に排卵していたと報告されています[4]。
ただし、これらのデータの多くは人工妊娠中絶の後を調べた研究から得られたもので、自然流産、とくに化学流産の後の排卵を直接調べたものではありません。体の中で起こること(hCGが下がり、卵巣の働きが戻る)は共通しているため、自然流産の後も同じような経過をたどると考えられていますが、その点は幅をもって受け取ってください。
一方で、流産後の最初の周期に排卵が遅れたり、排卵しないまま出血が来たりすることもあり得ます。その場合、周期がいつもより長くなったり、出血がだらだらと続いたりすることがあります。1回の周期が乱れただけで異常と決めつける必要はありませんが、同じ状態が何周期も続く場合は婦人科で相談してください。
また、「生理より先に排卵が来る」ということは、最初の生理を待たずに次の妊娠が成立する可能性があることも意味します。すぐに妊娠を望まない場合は避妊が必要になりますし、逆に、生理がこないまま妊娠検査薬が陽性になった場合には、流産の名残なのか新しい妊娠なのかを区別するために受診が必要です。
基礎体温で見るときの注意
基礎体温は排卵の有無を知る手がかりになりますが、流産直後の数週間は形が読み取りにくいことがあります。排卵が起こると黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用で体温がわずかに上がり、高温期に入ります。流産の後、2相性(低温期と高温期に分かれる形)が戻ってくれば、排卵が再開したと考える目安になります。
ただし、基礎体温は睡眠不足や体調、測る時間の違いでも簡単に上下します。流産後の最初の周期は、出血が長引いたり排卵の時期がずれたりして、グラフがきれいな2相性にならないことも珍しくありません。1周期だけで「排卵していない」と判断せず、数周期続けて全体の流れを見ることが大切です。化学流産の後の基礎体温の変化とつけ方のコツは、化学流産後の基礎体温の解説で詳しく扱っています。
💡 用語解説:黄体ホルモン(プロゲステロン)と高温期
排卵の後、卵巣には黄体という組織ができ、黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌します。このホルモンには体温をわずかに上げる働きがあるため、排卵後は基礎体温が上がって「高温期」になります。妊娠しなければ黄体は約2週間で役目を終え、ホルモンが減って体温が下がり、生理が始まります。基礎体温の高温期は、排卵が起きたことを後から示すサインです。
3. 流産後の生理が「いつもと違う」とき:量・塊・痛み・周期
流産後の最初の1〜2回の生理は、量や痛み、周期がいつもと違うことがあります。多くは一時的なもので、周期を重ねるうちに元に戻っていきます。ただし、「流産の後は必ず生理が重くなる」といった決まりがあるわけではなく、変化の出方には個人差があります。ここでは、よく気にされる4つの変化について、様子を見てよい範囲と、受診を考えたい目安を説明します。
量が多い・塊が出る
流産後の最初の生理では、普段より量が多く感じられたり、レバーのような血の塊が混じったりすることがあります。ただし、流産後に必ず経血量が増えるわけではなく、量には個人差があります。血の塊は、出血量が多いときに血液が凝固して混じることがあり、それだけで異常を意味するわけではありません。
一方で、大きなナプキンが1時間に2枚以上いっぱいになる状態が2時間以上続く場合は、すぐに受診が必要な出血の目安とされています[5]。塊が何日も続く、強い腹痛を伴う、においのあるおりものが出るといった場合も、子宮の中に組織が残っている可能性や感染がないかを確かめるため受診してください。化学流産で出てくる白い塊については白い塊の解説で、胎嚢確認後の流産に伴う出血については流産に伴う出血の解説で詳しく扱っています。
量が少ない・すぐ終わる
反対に、最初の生理が普段より少なく、短期間で終わることもあります。流産後の最初の数周期は排卵時期やホルモン変化が通常と異なることがあり、出血量や期間にもばらつきがみられます。無排卵性の出血は少量とは限らず、多量または不規則になることもあるため、出血量だけで排卵の有無を判断することはできません。1回だけ量が少なく、その後に通常の周期へ戻るのであれば経過をみることもできます。
注意したいのは、流産手術の後から生理の量が極端に減った、あるいはほとんど出血がないという状態が続く場合です。この場合は、次の第4章で説明する子宮内の癒着が関係していることがあるため、手術を受けた医療機関に相談してください。
生理痛が重い
最初の生理で、いつもより下腹部の痛みが強く感じられることがあります。量が多く、塊が出るときには、子宮が収縮して内容物を押し出そうとするため、痛みも強くなりやすくなります。市販の鎮痛薬で和らぐ程度で、日を追うごとに軽くなっていくのであれば、一時的な変化と考えられます。
一方、鎮痛薬が効かないほどの強い痛み、片側だけの鋭い痛み、肩の痛みやめまい・失神を伴う場合は、生理痛と考えずに急いで受診してください。NHSも、強い腹痛、肩先の痛み、失神を、すぐに医療機関へ連絡すべき症状として挙げています[1]。これらは異所性妊娠(子宮外妊娠)など、見逃してはいけない状態のサインであることがあります。
周期が早まる・遅れる
流産後の最初の周期は、排卵の時期がずれやすいため、生理が予想より早く来たり遅れたりすることがあります。流産からの日数で数えると、同じ「最初の生理」でも人によって3週後だったり7週後だったりと幅があります。2〜3周期のうちに、もともとの周期に近づいていくのが一般的な経過です。
流産の後は気持ちの負担も大きく、睡眠や食事のリズムが崩れやすい時期でもあります。強いストレスや急な体重減少は、脳から卵巣への指令を弱め、排卵を遅らせることが知られています(第4章で説明します)。一方で、ストレスが流産そのものの原因になるかどうかは別の問題で、ストレスと流産の関係の解説で整理しています。
4. 流産後に生理がこない・遅れるときに考えること
流産後に生理がこないときは、まず妊娠検査薬で確認してください。陽性が続くか、陰性かによって、考えられる原因がまったく変わります。陽性が続く場合は子宮の中に組織が残っている、新しい妊娠が始まっている、あるいは異所性妊娠だったといった可能性を医療機関で確かめる必要があります。陰性なのに生理がこない場合は、排卵の遅れや、手術の後の子宮内の癒着などを考えます。
まず妊娠検査薬:陽性が続くとき
流産後しばらく妊娠検査薬が陽性なのは珍しくありませんが、時間がたっても陽性が続く場合は受診が必要です。英国国立医療技術評価機構(NICE)の診療指針では、自然排出を待った場合や薬で流産の処置をした場合、流産から3週後に自宅で尿の妊娠検査をし、陽性であれば医療機関に戻るよう勧めています[6]。陽性が続く場合に確かめるべき状態として、子宮の中に組織が残っている状態(遺残)、胞状奇胎、異所性妊娠が挙げられています[6]。
陽性が続く理由として、次のような状態が考えられます。
・hCGが下がりきっていない、または子宮内に組織が残っている:妊娠週数が進んでいたほど下がるのに時間がかかります。組織が残っていると、出血が長引いたり、腹痛や発熱が出たりすることがあります。
・新しい妊娠が始まっている:生理より先に排卵が戻るため、最初の生理を待たずに次の妊娠が成立していることがあります。
・異所性妊娠だった:子宮の外(多くは卵管)に着床した妊娠で、最初から子宮内に胎嚢が見えないため、化学流産と区別がつきにくいことがあります。
・まれに胞状奇胎などの絨毛性疾患:胎盤のもとになる組織が異常に増える病気で、hCGが下がらない、あるいは上がり続けることがあります。
化学流産の後、陽性がどのくらいの期間続くのかについては、化学流産はいつまで陽性が続くかの解説で詳しく扱っています。
💡 用語解説:異所性妊娠(子宮外妊娠)と胞状奇胎
異所性妊娠は、受精卵が子宮の内側以外の場所(多くは卵管)に着床した状態です。妊娠検査薬は陽性になりますが、子宮の中に胎嚢が見えず、進行すると卵管が破れて大量の腹腔内出血を起こすことがあります。胞状奇胎は、胎盤のもとになる絨毛の組織が異常に増える病気で、hCGが高いまま下がらないことがあります。どちらも頻度は高くありませんが、妊娠検査薬の陽性が続くときに確認が必要な状態です。詳しくは子宮外妊娠(異所性妊娠)、胞状奇胎の解説をご覧ください。
陰性なのにこないとき
妊娠検査薬が陰性なのに生理がこない場合、最も多いのは排卵が遅れているケースです。流産後の最初の周期は排卵の時期がずれやすく、排卵が遅れればそのぶん生理も遅れます。この場合は、しばらく待つと生理が来ることがほとんどです。
ほかに考えられるのが、ストレスや体重の減少、過度な運動によって脳から卵巣への指令が弱まり、排卵が止まってしまう「視床下部性無月経」です。米国内分泌学会の診療ガイドラインは、体重減少、激しい運動、心理的ストレスを主な引き金として挙げ、生理の間隔が45日を超える状態が続く場合や、3か月以上生理がない場合には、妊娠を除外したうえで原因を調べるよう勧めています[7]。
流産手術(掻爬)の後に生理がこない、あるいは極端に少ない場合には、子宮の内側がくっついてしまう子宮内の癒着も考えます。流産後の子宮の中を子宮鏡で調べた研究をまとめた解析では、癒着は一定の割合で見つかり、その多くは軽度で、掻爬の回数が増えるほど起こりやすくなると報告されています[8]。陰性のまま生理が長くこない状態が続くときの一般的な考え方は、妊娠検査薬が陰性なのに生理がこないときの解説も参考にしてください。
💡 用語解説:子宮内の癒着(アッシャーマン症候群)
子宮の内側を覆う内膜の土台が傷つくと、治る過程で子宮の前の壁と後ろの壁がくっついてしまうことがあります。これを子宮内の癒着といい、生理の量が減ったり、生理が来なくなったりする原因になります。症状が強いものはアッシャーマン症候群と呼ばれます。流産や分娩の後の掻爬が主なきっかけで、子宮鏡という細いカメラで診断し、必要に応じて癒着を切り離す治療が行われます。
何週こなければ受診する?
受診の目安は2段階で考えると分かりやすくなります。1つ目は「流産から3週後に妊娠検査薬が陽性か」、2つ目は「8週を過ぎても生理が来ないか」です。
まず、流産からおよそ3週がたった時点で妊娠検査薬を使い、陽性であれば受診してください。海外の診療指針では、この時期の検査で陽性の場合に、組織の遺残や胞状奇胎、異所性妊娠がないかを確認するよう勧めています[6]。日本では、流産の後の受診の時期は、処置を受けた医療機関からそれぞれ指示されることが多いので、その指示がある場合はそちらを優先してください。
次に、検査薬が陰性で、流産から8週を過ぎても生理が来ない場合は、一度婦人科で相談してください。多くの人は8週以内に生理が戻るため[1]、それを超えて来ない場合は、排卵が止まっていないか、子宮内の癒着などがないかを確かめる意味があります。また、どの時期であっても、次の第5章に挙げる症状がある場合は、週数を待たずに受診してください。
🩺 院長コラム【「生理がこない」は、まず検査薬で2つに分ける】
流産の後に生理がこないと、「体がどこかおかしくなったのでは」と考えがちです。けれども実際には、原因の見当をつけるために最初にすることはとても単純で、妊娠検査薬が陽性か陰性かを確かめることだと考えています。陽性なら「妊娠のホルモンがまだ出ている理由」を、陰性なら「排卵が戻っていない理由」を探す、というように、その後に考えるべきことが大きく変わるからです。
流産の後の数週間は、出血が続いたり止まったりして、時期の感覚があいまいになりやすい時期でもあります。流産の日、出血が止まった日、検査薬を使った日と結果を簡単にメモしておくと、受診したときに医師が経過を正確に把握できます。
5. すぐ受診してほしいサイン
流産の後、次のような症状があるときは、生理が戻る時期を待たずに産婦人科を受診してください。夜間や休日で強い症状がある場合は、救急の受診も考えてください。これらは、大量出血、子宮内の感染、組織の遺残、異所性妊娠の破裂など、早めの対応が必要な状態のサインであることがあります。
⚠️ 受診を急ぐ症状
・大きなナプキンが1時間に2枚以上いっぱいになる出血が、2時間以上続く[5]
・37.8℃(100°F)を超える発熱、寒気がある[5]
・鎮痛薬が効かないほどの強い腹痛、片側の鋭い痛み
・肩先の痛み、めまい、失神[1]
・においの強いおりものが続く
・妊娠検査薬が陰性でも、出血や腹痛、発熱が続く[6]
🏥 流産後の症状と受診の目安
| 状況 | 考えられること | 受診の目安 |
|---|---|---|
| 大量の出血・発熱・強い腹痛 | 大量出血、組織の遺残、子宮内の感染、異所性妊娠など | すぐに受診(夜間・休日は救急も考える) |
| 流産から3週後も検査薬が陽性 | hCGの下がり待ち、遺残、次の妊娠、異所性妊娠、胞状奇胎 | 医療機関で確認する |
| 検査薬は陰性、8週を過ぎても生理がこない | 排卵の遅れ、視床下部性無月経、手術後の子宮内の癒着など | 婦人科で相談する |
| 最初の生理の量・痛みがいつもと少し違う | 流産後の一時的な変化であることが多い | 2〜3周期様子を見て、続く場合は相談 |
※目安はNHS[1]、米国産科婦人科学会の一般向け解説[5]、NICE[6]などによる。処置を受けた医療機関から別の指示がある場合は、そちらを優先してください。
反対に、最初の生理の量が少し多い、痛みが少し強い、周期が数日ずれたといった変化で、日ごとに軽くなっているものは、急いで受診する必要はないことが多いです。「このくらいで受診してよいのか」と迷う場合は、処置を受けた医療機関に電話で様子を伝えて判断を仰ぐのも一つの方法です。
6. 次の妊娠は生理を待ったほうがいい?
体の面では、流産の後に長く待たなければならないことを示す根拠はありません。気持ちの準備ができ、出血などの症状が落ち着いたら、次の妊娠を考えてよいとされています。NHSも、症状が治まり、気持ちの準備ができたら再び妊娠を試みてよいと案内しています[1]。
妊娠20週未満の流産を経験した女性を追跡した米国の研究では、流産から3か月以内に妊娠を試み始めた人は、3か月以上待った人に比べて、妊娠や出産に至る割合が同等か、むしろ高いという結果でした[9]。また、流産後の妊娠までの間隔を調べた研究をまとめた解析では、間隔が6か月未満の妊娠でも、6か月以上の場合と比べて次の流産や早産が増えることはなく、むしろ少なかったと報告されています[10]。
ただし、これらは観察研究で、「早く試みたから妊娠しやすくなった」という因果関係を示したものではありません。早く妊活を再開できる人は、もともと体調が整っていたなど、別の理由が関係している可能性もあります。同じように、「化学流産の後は妊娠しやすくなる」という話もよく聞かれますが、これを裏づける医学的な根拠はありません。妊娠しやすくなるわけではない一方で、化学流産を経験したことで妊娠しにくくなるわけでもない、と理解しておくのが適切です。
一方、米国国立小児保健発達研究所(NICHD)は、次の妊娠を試みる前に正常な生理を1回待つのが一般的だとしています[11]。これは、1回生理を見送ると次の妊娠の週数を数えやすくなり、流産の名残なのか新しい妊娠なのかも区別しやすくなるという実務上の理由によるものです。どちらを選ぶかは、ご自身の気持ちや体調、主治医の方針に合わせて決めてかまいません。妊活を再開するタイミングや、流産後の性交渉の注意点については流産後の妊娠の解説で詳しく扱っています。
7. 流産・化学流産を繰り返すとき
流産を2回以上繰り返す場合は「不育症」として原因を調べることが勧められています。化学流産は流産の回数には数えませんが、3回以上繰り返す場合は、不育症に準じた原因の検査を行う考え方が示されています。日本の「不育症管理に関する提言2025」は、生化学的妊娠(流産)は不育症の診断に用いる流産回数には数えないとする一方、生化学的妊娠を3回以上繰り返す場合を「反復生化学的妊娠(流産)」として、不育症に準じた原因検索を行うことを推奨しています[12]。
1回の流産や化学流産は、多くの場合、受精卵そのものの染色体の偶然の変化によって起こり、次の妊娠でも同じことが起こるとは限りません。日本産婦人科医会も、化学流産をただちに病的な状態と捉えて原因の精査や治療を行う必要性は低いとしています[2]。化学流産が続く場合に考えられる原因や対応は、化学流産を繰り返す理由の解説で詳しく扱っています。
不育症の検査には、子宮の形を調べる検査、抗リン脂質抗体などの血液検査、甲状腺などの内分泌の検査に加えて、夫婦それぞれの染色体検査が含まれます[12]。夫婦のどちらかが均衡型転座(染色体の一部が入れ替わっているものの、遺伝情報の過不足はない状態)を持っていると、受精卵に染色体の過不足が生じやすくなり、流産を繰り返す原因になることがあります。不育症の全体像は不育症の解説で、染色体が関わる仕組みは不育症の原因になる染色体異常の解説で扱っています。夫婦の染色体を調べる方法については夫婦の染色体検査(Gバンド法)をご覧ください。
なお、同じ提言では、原因が特定できない不育症の方が多く、原因不明の場合でも精神的な支援を中心とした対応で次の妊娠に至る方が少なくないことも示されています[12]。これは集団としての傾向であり、一人ひとりの見込みは、流産の回数や年齢、検査の結果によって異なります。
🩺 院長コラム【1回の流産と、繰り返す流産は分けて考える】
妊娠初期の流産では、胚の染色体異常が主要な原因の一つです。多くは受精や初期発生の過程で偶発的に生じる染色体数・構造の異常であり、通常の生活上の行動だけで説明できるものではありません。1回の流産だけで、直ちにご本人に持続的な医学的異常があると判断することはできません。
一方で、流産を繰り返す場合には、夫婦の染色体の構造の違い(均衡型転座など)のように、検査で見つけることができ、次の妊娠に向けた選択肢につながる原因が含まれていることがあります。1回目と2回目以降とで考え方を切り替え、繰り返すときには原因を調べるという順序が大切だと考えています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 化学流産の場合、生理は何日後に来ますか?
化学流産では、生理予定日ごろ(数日遅れることもあります)に起こる生理のような出血そのものが流産にあたります。その後の次の生理は、hCGが早く陰性に戻るため、普段の周期に近い間隔で来ることが多いと考えられます。ただし数日から1〜2週程度ずれることもあり、流産から8週を過ぎても来ない場合は婦人科で相談してください。
Q2. 化学流産と言われたのに生理がこないのはなぜですか?
多くは排卵が遅れているためで、しばらく待つと生理が来ます。まず妊娠検査薬で確認し、陽性が続く場合は、hCGが下がりきっていない、次の妊娠が始まっている、まれに異所性妊娠だったといった可能性があるため受診してください。陰性で8週を過ぎても来ない場合も相談をおすすめします。
Q3. 流産してから生理が重いのはなぜですか?
流産後の最初の1〜2回の生理は、子宮の内膜がひと通り入れ替わる過程で量が多くなったり、血の塊が出たり、痛みが強く感じられたりすることがあり、多くは一時的です。ただし、大きなナプキンが1時間に2枚以上いっぱいになる出血が2時間以上続く、発熱がある、強い腹痛がある場合は、すぐに受診してください。
Q4. 化学流産の後は妊娠しやすいですか?
化学流産の後に妊娠しやすくなることを裏づける医学的な根拠はありません。一方で、化学流産を経験したことで妊娠しにくくなるわけでもありません。流産後に早く妊活を再開した人でも次の妊娠の経過が悪くなることはないという研究があり、気持ちの準備ができてからの再開でよいとされています。
Q5. 流産手術後と自然流産後で、生理の再開時期は違いますか?
どちらも多くは8週以内に最初の生理が戻り、手術か自然排出かで再開時期に明らかな差があることを示す確かなデータは現時点では示されていません。出血が長引いた場合は、そのぶん生理も遅れます。手術の後に生理が来ない、または量が極端に少ない状態が続く場合は、子宮内の癒着がないかを確かめるため、手術を受けた医療機関に相談してください。
Q6. ミネルバクリニックで流産後の診察や治療はできますか?
いいえ、当院では流産後の診察・処置・治療は行っておらず、この件についてのご予約・お問い合わせもお受けしていません。流産後の出血や生理の遅れについては、処置を受けた医療機関、またはお近くの産婦人科へご相談ください。
まとめ
流産後の生理は、多くの場合、流産から8週以内に戻ります[1]。化学流産では生理予定日ごろの出血そのものが流産にあたり、その後の次の生理は普段の周期に近いことが多いと考えられます。体は「hCGが下がる → 排卵する → 生理が来る」という順番で戻るため、最初の生理より先に排卵が戻ることが多く、「最初の生理は必ず無排卵」というわけではありません[4]。
生理がこないときは、まず妊娠検査薬で陽性か陰性かを確かめてください。流産から3週後も陽性であれば医療機関で確認を受け[6]、陰性で8週を過ぎても生理が来ない場合は婦人科で相談してください。大量の出血、発熱、強い腹痛、肩の痛みや失神がある場合は、時期を待たずに受診してください。次の妊娠は、体の面では長く待つ必要はなく、気持ちの準備ができてからでかまいません[10]。流産や化学流産を繰り返す場合は、不育症として原因を調べる選択肢があります[12]。
🏥 流産後の診察・治療をお考えの方へ
当院では、流産後の診察・処置・治療を行っておりません。
この件についてのご予約・お問い合わせはお受けしておりません。
流産後の出血や生理の遅れが気になる場合は、処置を受けた医療機関、またはお近くの産婦人科へご相談ください。
この記事は流産後の体の変化を正しく知っていただくための解説であり、当院での診療をご案内するものではありません。なお、流産を繰り返し、夫婦の染色体検査など具体的な遺伝学的評価が必要と判断された場合に限り、遺伝カウンセリングが関係することがあります。
参考文献
- [1] Miscarriage – Afterwards. NHS. [NHS]
- [2] 生化学的妊娠(Biochemical pregnancy)の扱い方. 日本産婦人科医会. [日本産婦人科医会]
- [3] Terminology for pregnancy loss prior to viability: a consensus statement from the ESHRE early pregnancy special interest group. Hum Reprod. 2015;30(3):495-498. doi:10.1093/humrep/deu299 [Human Reproduction]
- [4] Postabortion contraception: when and what type. Ipas Clinical Updates in Reproductive Health. [Ipas]
- [5] What Happens After a Miscarriage? An Ob-Gyn Discusses the Options. American College of Obstetricians and Gynecologists(ACOG). 2022. [ACOG]
- [6] Ectopic pregnancy and miscarriage: diagnosis and initial management(NG126). National Institute for Health and Care Excellence(NICE). [NICE]
- [7] Functional Hypothalamic Amenorrhea: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2017;102(5):1413-1439. doi:10.1210/jc.2017-00131 [JCEM]
- [8] Systematic review and meta-analysis of intrauterine adhesions after miscarriage: prevalence, risk factors and long-term reproductive outcome. Hum Reprod Update. 2014;20(2):262-278. doi:10.1093/humupd/dmt045 [Human Reproduction Update]
- [9] Trying to Conceive After an Early Pregnancy Loss: An Assessment on How Long Couples Should Wait. Obstet Gynecol. 2016. [PubMed 26942344]
- [10] Interpregnancy interval following miscarriage and adverse pregnancy outcomes: systematic review and meta-analysis. Hum Reprod Update. 2017;23(2):221-231. doi:10.1093/humupd/dmw043 [Human Reproduction Update]
- [11] Other FAQs About Pregnancy Loss (Before 20 Weeks of Pregnancy). Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Development(NICHD). [NICHD]
- [12] 不育症管理に関する提言2025. 「不育症管理に関する提言」改訂委員会. [こども家庭庁]





