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おなかにいる赤ちゃんが小さめだと医師から言われてしまったら、ママはとても不安な気持ちで過ごすことになってしまいます。胎児が正常範囲の下限よりも小さめで、成長が遅い、もしくは成長がとまってしまっていることを、胎児発育不全といいます。胎児発育不全と診断されても無事に生まれてくる赤ちゃんもいれば、順調に育たずに死産となってしまうこともあります。この記事では、胎児発育不全の原因や診断の基準、治療法、胎動が元気なときの考え方などをご紹介します。
Q. 胎児発育不全と言われましたが、胎動が元気なら大丈夫ですか?
A. 胎動が元気なのは、赤ちゃんがよく動けているという良い徴候の一つです。ただし、胎動の強さで発育の状態を判断することはできず、発育は超音波の推定体重や血流、羊水の量で評価します。胎動が減った、いつもと違うと感じたときは、健診日を待たずにかかりつけの産婦人科に連絡してください[1]。
- ➤胎児発育不全とは → 推定体重が週数の基準より小さい状態。日本では−1.5SD以下が目安
- ➤原因 → 胎盤の働きの低下が最も多く、母体の病気や赤ちゃんの染色体異常・感染症も関わる
- ➤体質的に小さいだけのことも → 基準より小さい赤ちゃんには、健康で体質的に小さいだけの赤ちゃんも含まれる
- ➤治療 → 胎内で大きくする治療はなく、安静や食事量で治るという根拠もない
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胎児発育不全とは

妊娠中は病院での妊婦健診で、血圧や体重測定、尿検査を行いますが、そのほかにも超音波検査で赤ちゃんの健康状態のチェックが行われます。超音波検査で確認される赤ちゃんの推定体重は、週数によって平均値や上限、下限が定められています。
週数ごとの下限値よりも低い場合に胎児発育不全と診断され、赤ちゃんが小さい原因を探りながら、慎重に経過を見ていきます。
胎児発育不全は「fetal growth restriction」の頭文字をとってFGRと呼ばれ、以前は「子宮内胎児発育遅延(IUGR)」とも呼ばれていました。ママに自覚症状はほとんどなく、超音波検査でみつかることが多い状態です。
日本の診断の目安(後で説明する−1.5SD以下)に当てはめると、定義上は同じ週数の赤ちゃんのおよそ7%が該当します[2]。そのため、注意深く経過観察を行うことが重要となります。
胎児発育不全の原因

胎児発育不全には胎児因子、母体因子、胎盤・臍帯因子などがあり、さまざまな原因が重なり合うことで起こっている可能性もあります。詳しく調べても、原因がはっきりしないことも少なくありません。
胎児因子
赤ちゃん自身の要因として、染色体異常、奇形症候群などの遺伝性疾患、先天性心疾患、感染症が考えられます。
染色体異常の中で胎児発育不全との関連が特に強いのは、18トリソミー、13トリソミー、三倍体です。こうした場合、多くは心臓などほかの形態異常も一緒に見つかります[3]。21トリソミー(ダウン症候群)でも体が小さめになることはありますが、胎児発育不全だけでダウン症かどうかは分かりません。
さらに、胎児先天性ウイルス感染(サイトメガロウイルス、トキソプラズマ、風疹など)が胎児発育不全の原因になることもあります。妊娠中の母体ウイルス感染が赤ちゃんにも波及してしまうことが原因となります。
母体因子
ママ側の要因としては、妊娠高血圧症候群、心臓や腎臓の病気、自己免疫疾患、糖尿病、喫煙、アルコールの過剰摂取などが挙げられます。もともとの病気や、妊娠してからかかった病気、喫煙などの生活習慣によって、赤ちゃんの発育が妨げられてしまう場合があります。
特に喫煙は、変えることのできる要因の中で影響が大きいものです。妊娠したらタバコやお酒はやめ、生活習慣を見直すことが勧められます。
💡 ママのせいではありません
ママの食事の量が少なかったことや寝不足が、胎児発育不全の主な原因になるわけではありません。原因の多くは胎盤のつくられ方や赤ちゃん自身の要因など、本人の努力では変えられないものです。
胎盤、臍帯因子
酸素や栄養を母体の血液から受け取る胎盤が、梗塞や出血(常位胎盤早期剥離など)、胎盤の形の異常などによって本来の働きを妨げられてしまうと、胎児発育不全が起こります。また、胎盤から赤ちゃんに血液を運ぶ臍帯に異常があり血流が妨げられている場合も、赤ちゃんの成長を妨げます。
胎盤機能不全といって、妊娠初期に胎盤がうまくつくられず、胎盤自体の機能が低下している場合も胎児発育不全が起こります。胎盤の働きの低下は、胎児発育不全の原因として最も多いものとされています。
胎児発育不全について

胎児発育不全はさまざまな原因によって起こります。ときにはその原因が複合的に重なり合っている場合もあります。原因となる母体の病気があれば、その治療を行います。
胎児発育不全の3タイプ
胎児発育不全は、体のつり合いから次の3タイプに分けて説明されることがあります。
📋 胎児発育不全の3タイプ
| タイプ | 特徴 |
|---|---|
| 均等型 | 妊娠初期から発育が妨げられ、全身が均等に小さい。比較的早い時期に見つかることが多く、染色体異常や先天感染など赤ちゃん自身の要因が関わっていることがある |
| 不均等型 | 胎盤の血流障害による栄養不足が原因のことが多く、妊娠後期に見つかりやすい。頭囲は正常範囲なのに、おなかまわりが小さい。赤ちゃんが脳に優先的に血液を送るためと考えられている |
| 混合型 | 均等型と不均等型の中間タイプ。発育の遅れの程度によって経過は異なる |
※現在の医学では、見つかった時期によって「早発型(妊娠32週未満)」と「遅発型(妊娠32週以降)」に分ける考え方が主に使われています。早発型は妊娠高血圧症候群を合併することが多く、遅発型は頻度が高い一方で見落とされやすいという特徴があります。
診断の基準
赤ちゃんの小ささは、標準偏差とよばれるSDを用いて表現されます。日本では、胎児発育不全は推定体重が−1.5SD以下が目安となっています[2]。これは、同じ週数の赤ちゃんを小さい順に並べた時に、100人の中の7番目以下ということになります。欧米では「10パーセンタイル未満」という別の基準が使われています。
推定体重は赤ちゃんの頭、おなか周り、大腿の長さを計算式に当てはめることで算出されます。計算で求めた値なので一定の誤差があり、1回の計測だけで判断せず、2〜3週間ほどあけて成長の推移を見ていきます。
約7%の胎児が基準に当てはまることになりますが、そのなかには体質的に小さめというだけで、疾患もなく健康な赤ちゃんも含まれています。そのため、胎児発育不全と診断されたら、病気によるものなのか、赤ちゃんの体質なのかを見極める必要があります。母体や胎児に何らかの異常が発見されたら、原因への対応を行いながら観察を続けますが、どちらにも異常がない場合は経過観察となります。
胎動が元気なら大丈夫?
胎児発育不全と言われても、胎動が元気なことはよくあります。胎動が活発なのは、赤ちゃんがよく動けているという良い徴候の一つです。
ただし、胎動の強さで赤ちゃんの発育の状態を判断することはできません。発育は、超音波の推定体重や血流、羊水の量で評価します。胎動が元気だからといって、健診で経過を見ていく必要がなくなるわけではありません。
一方で、胎動の減少は、胎盤の働きの低下や胎児発育不全と関連することが知られています。英国の産婦人科学会(RCOG)のガイドラインでも、胎動が減った、あるいはなくなったと感じたら、すぐに医療機関に連絡することが勧められています[1]。
⚠️ こんなときはすぐに連絡を
「いつもより動かない」「動き方が変わった」と感じたときは、次の健診日を待たずにかかりつけの産婦人科に連絡してください。受診の目安は胎動が少ない日が心配な方へで解説しています。
治療法
胎児発育不全の原因によっては、もとになっている母体の病気を治療することが、赤ちゃんを守ることにつながります。しかし、一度胎児発育不全と診断を受けたら、胎内で正常な大きさまで大きくするといった治療法は現在ありません。安静にすることや、たくさん食べることで発育不全が治るという根拠もありません[4]。
そのため、赤ちゃんの状態を厳重に管理し、元気な状態でいる限りはママのおなかの中で育てていくことになります。何らかの生まれつきの疾患が原因の場合には、出産後にすみやかに疾患の治療ができるよう、安全な出産環境を準備することとなります。場合によっては出産前に入院することで、細かく状態をチェックし管理することもあります。
なお、血管を広げる薬(PDE5阻害薬)を使った治療が研究されています。そのうちシルデナフィルは、海外の臨床試験で効果が認められず、新生児への安全性の懸念も示されたため、研究以外の目的で使うことは推奨されていません[5]。
以前、「タダラフィルで胎児の体重が増えた」「今後に期待」と紹介されていたのは、三重大学などが進めている臨床研究です。その後の経過は次のとおりです。
日本の第II相試験(TADAFER II)は、プラセボ(偽薬)を使わない方法で2016年に始まりましたが、シルデナフィルの海外試験の結果を受けて2018年に登録を途中で止め、89例で安全性を再検討しました。死亡はタダラフィル群で1例、通常の管理のみの群で7例と報告されていますが、途中で止まった試験のため、これだけで効果があるとは言えません[6]。
そこで現在は、プラセボを使った二重盲検試験(TADAFER IIb、180例予定、主な評価項目は妊娠期間を延ばせるか)で効果と安全性が検証されていますが、結果はまだ論文として公表されていません[7]。また、2023年のコクランレビューは、シルデナフィルやタダラフィルなど血管を広げる系統の薬について、母子の経過を改善する根拠は示されず、有害な影響が多い可能性があるとして、現時点で診療に使うことは支持されないと結論づけています。タダラフィルについては、さらに研究が必要とされています[8]。
タダラフィルは肺高血圧症などの治療薬ですが、胎児発育不全の治療薬としては承認されておらず、研究として参加する場合を除いて使われる薬ではありません。
陣痛前に帝王切開することも
胎児発育不全と診断されても、少しずつでも赤ちゃんが成長していることが認められ、十分元気である場合はそのまま妊娠を継続し、ママのおなかの中で育つのを見守りながら陣痛を待つこととなります。
しかし、赤ちゃんの成長が認められなかった場合や、赤ちゃんの元気がない場合などは、赤ちゃんの体力なども考慮したうえで分娩を早めることも考えられます。胎児発育不全の赤ちゃんは、ママのおなかの中にいる間に十分な酸素や栄養が行き届いていないことがあり、陣痛のストレスに耐える余力が少ないと考えられる場合には、帝王切開で分娩することが多くなります。
予定日より早く生まれた(早産)赤ちゃんや低体重のまま生まれた赤ちゃんは、新生児集中治療室(NICU)へ入院し、ある程度成長するまで整備された環境で過ごすことになります。
まとめ
胎児発育不全は、さまざまな原因が複合的に重なり合って起こっている場合があります。診断を受けたら、焦らずに医師と一緒に原因を探り、赤ちゃんの状態を定期的に確認していきましょう。胎児発育不全と診断されても、小さめながらもママのおなかの中でゆっくり育ち、通常の分娩で生まれてくる赤ちゃんもたくさんいます。
医師とよく話し合い、赤ちゃんをよりよい状態で迎えられるような準備をすることが大切です。胎動がいつもより少ないと感じたときは、健診日を待たずにかかりつけの産婦人科に連絡してください。
🏥 胎児発育不全の原因を調べる検査について
東京のミネルバクリニックは、臨床遺伝専門医が在籍する出生前診断の施設です。
胎児発育不全の原因として、赤ちゃんの染色体の検査(羊水検査・絨毛検査など)を検討されている方には、
検査でわかること・わからないことを臨床遺伝専門医がご説明しています。
参考文献
- [1] Reduced Fetal Movements Green-top Guideline No. 57. BJOG. 2026. [DOI:10.1111/1471-0528.70198]
- [2] 中田雅彦, 長﨑澄人. 定義 FGRの新しい考え方. 周産期医学. 2025;55(2):137-139. [DOI:10.24479/peri.0000002012]
- [3] Fetal growth retardation: associated malformations and chromosomal abnormalities. Am J Obstet Gynecol. 1993;168(2):547-555. [PubMed 8438926]
- [4] Bed rest in hospital for suspected impaired fetal growth. Cochrane Database Syst Rev. 2000;(2):CD000034. [PubMed 10796093]
- [5] Maternal Sildenafil vs Placebo in Pregnant Women With Severe Early-Onset Fetal Growth Restriction: A Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open. 2020;3:e205323. [DOI:10.1001/jamanetworkopen.2020.5323]
- [6] Safety Evaluation of Tadalafil Treatment for Fetuses with Early-Onset Growth Restriction (TADAFER): Results from the Phase II Trial. J Clin Med. 2019;8(6):856. [PubMed 31208060]
- [7] Tadalafil treatment for fetuses with early-onset growth restriction: a protocol for a multicentre, randomised, placebo-controlled, double-blind phase II trial (TADAFER IIb). BMJ Open. 2022. [PMC9198796]
- [8] Interventions affecting the nitric oxide pathway versus placebo or no therapy for fetal growth restriction in pregnancy. Cochrane Database Syst Rev. 2023;(7):CD014498. [Cochrane Library]





