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今にも生理がきそうでこないのは妊娠?生理前と妊娠初期の違いと検査の目安

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

今にも生理がきそうなのにこないとき、その周期に避妊をしない性交があれば、妊娠している可能性は十分にあります。生理前と妊娠初期は同じ黄体ホルモンの働きで似た症状が出るため、下腹部痛や胸の張りといった症状だけでは見分けられません。決め手になるのは、生理予定日を過ぎても高温期が続いているかどうかと、生理予定日のおよそ1週間後に使う妊娠検査薬の結果の2つです。この記事では、生理前と妊娠初期の違い、薄い血や茶色い出血の考え方、何日遅れたら検査や受診をするか、陰性なのに生理がこない原因、そして「生理をこさせる方法」の医学的な答えまでを順に解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約14分
🩸 生理きそうでこない・生理前と妊娠初期の違い
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 今にも生理がきそうなのにこないのは、妊娠している可能性がありますか?

A. その周期に避妊をしない性交があったなら、可能性はあります。生理前のような下腹部痛が続いたまま妊娠していた、という経過はめずらしくありません。ただ、症状だけで妊娠かどうかを見分けることはできません。生理予定日を過ぎても高温期が続くか、予定日の約1週間後の妊娠検査薬が陽性かで判断します。

  • ➤似ている理由 → 生理前も妊娠初期も、黄体ホルモン(プロゲステロン)が多い時期だから
  • ➤見分ける決め手 → 予定日を過ぎた高温期の持続と、予定日約1週間後の検査薬
  • ➤すぐ受診したい症状 → 強い片側の腹痛、出血と痛みが一緒にある、ふらつきや失神
  • ➤陰性でもこない → 排卵の遅れ、ストレスや体重変化、PCOS、甲状腺、プロラクチン、早発卵巣不全など
  • ➤生理をこさせる方法 → 妊娠でないことを確かめたうえで、医療機関のホルモン剤で出血を起こす

1. 今にも生理がきそうなのにこない…妊娠の可能性は?

生理前のような下腹部の重さや胸の張りがあるのに、予定日になっても生理が始まらない。この状態で妊娠していることは、十分にありえます。

一方で、同じ感覚のまま数日遅れて普段どおり生理が来ることも、同じくらいよくあります。「来そうで来ない」という感覚そのものは、妊娠のサインとも、生理の前ぶれとも言い切れないのです。ここでは、なぜ見分けにくいのか、その仕組みから整理します。

「生理前のような下腹部痛のまま陽性だった」はよくある経過

妊娠初期には、生理予定日の数日前から生理前と同じような下腹部の鈍い痛みや張りを感じることがあります。予定日を過ぎても出血がなく、生理前に似た症状が続く場合があります。基礎体温を記録している場合は、高温期が予定日を過ぎても続くことが手がかりになります。そして予定日の1週間ほど後に妊娠検査薬を使うことで、妊娠の可能性を確認できます。

この経過で大事なのは、下腹部痛そのものが妊娠の証拠になったわけではない点です。妊娠を示したのは、生理が来なかったこと、高温期が続いたこと、そして検査薬の結果でした。「生理前の症状があるから妊娠していない」とも、「いつもと違う痛みだから妊娠している」とも判断できないということを、まず押さえておいてください。

生理前と妊娠初期が同じように感じる理由(黄体ホルモンとhCG)

生理前と妊娠初期の症状が似るのは、どちらも黄体ホルモン(プロゲステロン)が多く分泌されている時期だからです。排卵が起きると、卵子が飛び出したあとの卵胞が「黄体」に変わり、黄体ホルモンを分泌します。このホルモンは子宮内膜を受精卵が着床しやすい状態に整え、体温を上げ、腸の動きをゆるやかにし、乳腺にも働きかけます。そのため、下腹部の張り、胸の張りや痛み、眠気、便秘、むくみ、気分の揺れといった変化が、妊娠していてもいなくても排卵後に起こります。

月経前症候群(PMS)は、こうした身体と気分の症状が排卵後の黄体期に繰り返し現れ、月経が始まると間もなくおさまる状態を指します。米国産科婦人科学会(ACOG)の診療ガイドラインでは、日常生活に支障の出るPMSの症状は女性の20〜30%にみられ、さらに重い月経前不快気分障害(PMDD)は2〜5%とされています。代表的な症状として、いらいら、お腹の張り、気分の変動、だるさ、胸の張りが挙げられています[1]。

妊娠しなかった周期では、黄体はおよそ2週間で役目を終えて小さくなり、黄体ホルモンが急に減ります。この減少が合図になって子宮内膜がはがれ、月経が始まります。これに対して妊娠した周期では、受精卵が子宮内膜にもぐり込む「着床」が起こり、そこからhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが作られ始めます。hCGは黄体に「働き続けなさい」という信号を送るため、黄体ホルモンが減らず、月経が来ないまま生理前のような状態が続きます。

着床のタイミングについては、妊娠を希望する女性の尿中ホルモンを毎日測定した研究があり、着床は排卵後6〜12日目に起こり、多くは8〜10日目だったと報告されています[2]。つまり妊娠していても、生理予定日の直前まではホルモンの状態が生理前とほぼ同じで、体の感じ方にはっきりした違いが出にくいのです。

💡 用語解説:黄体ホルモン(プロゲステロン)

黄体ホルモンは、排卵後に卵巣の黄体から分泌される女性ホルモンです。子宮内膜を妊娠に適した状態に保ち、基礎体温を上げる働きがあります。妊娠しなければ約2週間で減って月経が始まり、妊娠すると胎盤からhCGが出るため分泌が続きます。生理前と妊娠初期の症状が似るのは、この同じホルモンが働いているためです。

前提として、その周期に避妊しない性交があったか

妊娠の可能性を考えるうえで、症状より先に確認したいのが「その周期に避妊をしない性交があったか」です。排卵日の数日前から排卵日までの性交が妊娠につながりやすく、排卵日は周期によって前後します。いつもの生理予定日から逆算した排卵日がずれていることも多いため、「安全日だったはず」と思っていても可能性は否定できません。

反対に、その周期に性交がまったくなかった場合は、生理がきそうでこない原因は妊娠以外にあります。この場合は、後半の「陰性なのに生理がこない原因」の章を読み進めてください。

2. 生理前と妊娠初期の違い|症状で見分けられる?

結論から言うと、生理前と妊娠初期を症状だけで見分けることはできません。どちらも黄体ホルモンが多い時期で、出る症状の種類がほとんど重なるからです。違いが出てくるのは「生理予定日を過ぎたあとに、その状態が続くかどうか」という時間の経過です。妊娠超初期に出やすい症状の全体像は、妊娠超初期症状のチェックリストにまとめています。ここでは、生理前との比較に絞って整理します。

症状の比較表(体温・下腹部痛・胸の張り・おりもの・出血ほか)

下の表は、生理前と妊娠初期で起こりやすい変化を並べたものです。「妊娠初期」の欄の特徴があっても妊娠とは限らず、なくても妊娠していないとは言えません。あくまで「予定日を過ぎてからの変化」に注目するための目安として見てください。

📋 生理前と妊娠初期によくある変化の比較

項目 生理前(PMS) 妊娠初期
基礎体温 高温期のあと、月経の前後で下がる 予定日を過ぎても高温期が続く
下腹部痛 鈍い痛み・張り。月経が始まると軽くなることが多い 生理前に似た鈍い痛みや張りが、予定日を過ぎても続くことがある
胸の張り 月経が始まるとおさまることが多い 予定日を過ぎても続く、あるいは強くなることがある
おりもの 白っぽく粘りが出ることがある 量が増えたと感じることがあるが、個人差が大きい
出血 予定日前後に月経として始まり、量が増えていく 予定日ごろに少量の出血がみられることがある(第3章)
吐き気 ときにみられる 予定日を過ぎて、しばらくしてから目立ってくることが多い
眠気・だるさ・寒気 黄体期によくみられる 同じようにみられ、予定日を過ぎても続くことがある

※いずれの項目も個人差が大きく、この表だけで妊娠かどうかは判断できません。判断には基礎体温の経過と妊娠検査薬を使います。

決め手①:予定日を過ぎても高温期が続く

基礎体温をつけている人にとって、いちばん早くわかる手がかりは「生理予定日を過ぎても高温期が下がらない」ことです。黄体ホルモンには体温を上げる働きがあるため、排卵後は体温が上がって高温期になります。妊娠しなかった周期では、黄体ホルモンの減少とともに体温も下がり、月経が始まります。妊娠した周期ではhCGが黄体を支え続けるので、高温期がいつもの長さを超えて続きます。

ただし、基礎体温は睡眠不足や測る時間のずれ、体調で簡単に上下します。1日だけ下がった、1日だけ高かったという変化では判断できません。「いつもの高温期の日数」を超えて高い状態が続いているかを、数日単位で見ることが大切です。基礎体温の読み方や、妊娠初期に体温が低めに出る場合については妊娠初期の基礎体温で詳しく解説しています。

決め手②:予定日1週間後の妊娠検査薬

最終的に妊娠を確かめる手段は、尿中のhCGを調べる妊娠検査薬です。市販の一般的な妊娠検査薬は、生理予定日のおよそ1週間後から使うように作られています。これには理由があります。

妊娠を希望する女性を追跡した研究では、生理予定日の当日の時点で、のちに妊娠が確認された人の10%は、尿中のhCGがまだ検出できない量でした。つまり予定日当日に検査しても、どれほど高感度な方法でも見つけられる上限は約90%です。それが予定日の1週間後になると、検出できる割合は97%まで上がると推定されています[3]。着床の時期に数日の幅があるため、hCGが検査で拾える量になるまでの日数にも個人差が出るのです。

予定日前や予定日当日に検査して陰性だった場合は、「妊娠していない」ではなく「まだわからない」と受け取ってください。生理が来ないまま1週間たった時点で、もう一度検査するのが確実です。

生理痛のような痛みと妊娠初期の腹痛・腰痛

生理痛のような痛みがあっても、妊娠している可能性はあります。妊娠初期には子宮が大きくなり始め、子宮へ流れる血液も増えます。黄体ホルモンの影響で腸の動きがゆるやかになり、お腹の張りやガスがたまった感じも出やすくなります。こうした変化が、生理前の鈍い下腹部痛や腰の重さとよく似た感覚として現れます。

よく「着床痛」という言葉が使われますが、受精卵が着床する瞬間に痛みが出るという医学的な裏付けは、現時点では確認されていません。痛みの有無や強さで着床や妊娠を判断することはできないと考えてください。

一方で、妊娠初期の腹痛には注意が必要なものもあります。片側だけの強い痛み、だんだん強くなる痛み、出血を伴う痛みは、異所性妊娠(子宮外妊娠)や流産の始まりのこともあります。妊娠初期の腹痛の種類と受診の目安は妊娠初期の腹痛で詳しく解説しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【症状ではなく「日付」で判断する】

生理前と妊娠初期は、同じ黄体ホルモンが働いている時期です。体の感じ方で見分けようとすると、どうしても「いつもと違う気がする」という印象に頼ることになり、期待と不安で判断が揺れやすくなります。

症状の細かな違いを探すより、「予定日を過ぎても高温期が続いているか」「予定日の1週間後に検査したか」という日付で区切って判断するほうが客観的です。予定日当日より1週間後のほうが、hCGに基づく妊娠検査で検出できる割合は高くなります。

3. 生理きそうでこないときの「薄い血」「茶色い出血」は?

生理予定日ごろの薄い血や茶色い出血は、妊娠初期にみられることもあれば、妊娠と関係のない不正出血や、量の少ない月経のこともあります。出血の色や量だけでどれかを決めることはできません。

いわゆる「着床出血」と生理の違い

妊娠初期の少量の出血は、一般に「着床出血」と呼ばれています。ただ、医学的な研究で確かめられている事実は、その呼び名から想像されるものと少し違います。妊娠を希望する女性の尿中ホルモンを毎日調べて着床の日を特定した研究では、妊娠が確認された151人のうち14人(9%)が妊娠8週までに出血を経験していました。その出血は生理予定日のころに起こることが多く、着床の日に一致することはまれで、研究者は「着床が出血を起こすという仮説を支持する結果は得られなかった」と結論づけています[4]。

同じ研究では、出血の多くは量が少なく、月経と取り違えるほどではなかったこと、14人のうち12人がそのまま出産に至ったことも報告されています[4]。つまり「予定日ごろに少量の出血があったあと、生理らしく量が増えないまま止まった」という場合は、妊娠の可能性を考えて予定日の1週間後に検査する意味があります。

目安として、月経は茶色い出血から始まっても、1〜2日のうちに赤い血に変わって量が増えていくことが多いものです。これに対し、妊娠初期の出血は量が少ないまま数日でおさまることが多いとされています。ただし例外も多く、見た目だけで決めることはできません。着床出血と呼ばれる出血の時期や特徴は着床出血はいつ?生理との違いでも解説しています。

不正出血として受診したほうがよいとき

妊娠検査薬が陰性で、月経とは思えない出血が繰り返す場合は、不正出血として婦人科で原因を調べる対象になります。ホルモンの乱れによる出血のほか、子宮頸部や子宮内膜のポリープ、子宮筋腫、感染症、まれに子宮頸がんや子宮体がんなどが原因になることがあります。

また、検査薬が陽性のうえで出血がある場合は、正常な妊娠経過のこともありますが、異所性妊娠や流産との区別が必要です。出血に加えて腹痛がある場合は、早めに産婦人科を受診してください。どのくらい続いたら受診すべきかは不正出血はどのくらい続いたら病院へ行くべき?で解説しています。

4. 何日遅れたら検査・受診する?

妊娠の可能性がある場合は、生理予定日のおよそ1週間後に妊娠検査薬を使い、陽性なら産婦人科を受診します。陰性でも生理が来ないまま、さらに1週間ほどたったら再検査するか、受診を考えます。生理の遅れの日数ごとの考え方は生理3日・1週間遅れは妊娠?検査の目安で詳しく扱っています。

検査するタイミング

第2章で紹介したとおり、予定日当日では妊娠していても約10%がまだ検出できず、1週間後には97%まで検出できると推定されています[3]。そのため、下の流れで考えると迷いにくくなります。

生理予定日を過ぎる高温期が続くか確認
▶
予定日の約1週間後妊娠検査薬を使う
▶
結果に応じて次へ陽性→産婦人科で子宮内の妊娠を確認陰性→1週間後に再検査、続けば受診

生理周期がもともと不規則な人は、「予定日」そのものがはっきりしません。その場合は、最後に性交があった日からおよそ3週間後を目安に検査すると判断しやすくなります。排卵が遅れた周期では、予定日を大きく過ぎてから陽性になることもあります。

陽性なら、子宮内の妊娠を確認するため受診する時期

妊娠検査薬が陽性になっても、それだけでは「子宮の中に正常に妊娠している」ことまではわかりません。検査薬はhCGが出ていることを示すだけで、受精卵がどこに着床したかは区別できないからです。産婦人科では超音波検査で、子宮の中に胎嚢(赤ちゃんを包む袋)が見えるかを確認します。

あまり早く受診すると、正常な妊娠でもまだ胎嚢が見えない時期のことがあり、1〜2週間後に再診となる場合があります。強い痛みや出血などの症状がなければ、生理予定日から1〜2週間後を目安に受診すると、子宮内の妊娠を確認しやすくなります。症状がある場合は、時期にかかわらず受診してください。

すぐ受診すべき危険なサイン

妊娠の可能性があるときに注意したいのが、異所性妊娠(子宮外妊娠)です。ACOGの診療指針では、異所性妊娠は報告された妊娠のおよそ2%を占め、破裂した異所性妊娠は2011〜2013年の米国で妊娠に関連する死亡の2.7%を占めていました。妊娠初期に性器出血や腹痛、またはその両方で救急外来を受診した女性では、異所性妊娠の割合が最大18%にのぼるとされています[5]。

⚠️ すぐに受診したい症状

妊娠の可能性がある、または検査薬が陽性のときに、次の症状があれば予約を待たずに産婦人科や救急を受診してください。片側の下腹部の強い痛み、だんだん強くなる痛み、出血と腹痛が一緒にある、肩の痛み、ふらつき・冷や汗・失神。異所性妊娠が破裂すると、お腹の中で大量に出血することがあります。

異所性妊娠では、妊娠検査薬が陽性になり、少量の出血や片側の痛みが出ることがあります。これを「着床出血」や「生理前の痛み」と思い込んで様子を見てしまうことがないよう、陽性がわかったら必ず一度は受診して、子宮内の妊娠を確認することが大切です。原因や症状の詳しい解説は子宮外妊娠の原因と症状をご覧ください。

💡 用語解説:異所性妊娠(子宮外妊娠)

異所性妊娠とは、受精卵が子宮の内側以外の場所、主に卵管に着床した状態です。そのまま育つことはできず、大きくなると卵管が破れて腹腔内に出血することがあります。妊娠検査薬は陽性になるため、陽性がわかったあとに超音波検査で子宮内の妊娠を確かめることが見逃しを防ぎます。

5. 妊娠検査薬が陰性なのに生理がこない原因

予定日の1週間後に検査して陰性なら、妊娠している可能性は低くなります。それでも生理が来ない場合は、排卵のタイミングや、排卵を抑える体の変化・病気が原因として考えられます。国際産婦人科連合(FIGO)の基準では、正常な月経周期は24〜38日で、周期ごとのばらつきは年齢によって7〜9日以内とされています[6]。この範囲を超えて遅れる場合や、同じことを繰り返す場合は、原因を調べる意味があります。陰性なのに生理がこないときの受診の目安は妊娠検査薬が陰性なのに生理こないでも解説しています。

米国生殖医学会(ASRM)の見解では、それまで順調だった月経が3か月を超えて止まった場合、またはもともと不順だった人で6か月止まった場合を「続発性無月経」とし、まず妊娠検査を行い、そのうえで甲状腺刺激ホルモン(TSH)、プロラクチン、卵胞刺激ホルモン(FSH)などを調べることを基本の流れとしています[7]。以下の原因は、この検査の流れで区別されていきます。

排卵が遅れただけのケース(検査が早すぎる)

もっとも多いのは、その周期の排卵が遅れたために生理も遅れているケースです。黄体期の長さは比較的一定なので、排卵が1週間遅れれば、生理も約1週間遅れます。このとき「予定日の1週間後」は、実際の排卵からみるとまだ早すぎる時期で、妊娠していても検査薬が陰性になることがあります。生理が来ないまま、さらに1週間後に再検査するのはこのためです。

ストレス・体重変化・過度な運動

強いストレス、急な体重減少、激しい運動は、脳の視床下部から出る性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の分泌を弱め、排卵を止めることがあります。米国内分泌学会の診療ガイドラインでは、これを「機能性視床下部性無月経」と呼び、体重減少、激しい運動、心理的ストレスが単独または重なって起こるとしています。食事から取るエネルギーが活動量に見合っていない「エネルギー不足」が背景にあることが多く、妊娠や甲状腺の病気、高プロラクチン血症、PCOSなど、ほかの原因を除外したうえで診断されます[8]。

一時的なストレスで1回だけ遅れた程度なら自然に戻ることが多いものの、6か月以上続く無月経では骨密度の評価も勧められています[8]。長く止まったままにしないことが大切です。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん、PCOS)は、排卵が起こりにくくなる状態で、2023年の国際ガイドラインでは有病率が10〜13%と示されています。成人では、排卵障害(周期が35日を超える、または年8回未満の月経)、男性ホルモンが多い所見、卵巣の多嚢胞状形態またはAMHによる評価のうち、他の原因を除外したうえで2項目を満たすことを診断に用います[9]。「生理がきそうでこない」ことが何周期も続く人は、PCOSが背景にあることがあります。詳しくは多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とはで解説しています。

甲状腺の病気・高プロラクチン血症

甲状腺ホルモンは月経周期にも影響します。甲状腺と生殖の関係をまとめた総説では、甲状腺機能低下症(橋本病など)では主に月経の回数が減る「希発月経」が、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)では経血量が減ったり月経の回数が増えたりする変化が起こりやすいとされています[10]。暑がり、動悸、体重減少、あるいは寒がり、むくみ、だるさといった全身の症状を伴う場合は、甲状腺の検査が役に立ちます。妊娠との関係は妊娠と甲状腺疾患の関係で解説しています。

プロラクチンは母乳を出すホルモンで、妊娠していないのに多く出ると排卵が抑えられ、月経が止まったり乳汁が出たりします。米国内分泌学会のガイドラインでは、血液検査1回で基準値を超えていれば高プロラクチン血症と診断でき、原因として抗精神病薬や吐き気止め(メトクロプラミド)などの薬、甲状腺機能低下症、腎不全、下垂体の腫瘍を確認するよう示しています[11]。飲んでいる薬がある人は、受診時に必ず伝えてください。

💡 用語解説:高プロラクチン血症

高プロラクチン血症(こうプロラクチンけっしょう)は、血液中のプロラクチンが基準より多い状態です。プロラクチンは本来、出産後に母乳を出すために増えるホルモンで、多すぎると排卵が止まり、生理不順や無月経、乳汁分泌の原因になります。薬の副作用で起こることも多く、原因に応じて薬の調整や治療が行われます。

早発閉経(早発卵巣不全)と更年期

40歳未満で卵巣の働きが低下し、月経が止まったり不規則になったりする状態を早発卵巣不全(POI)といい、早発閉経とも呼ばれます。2024年の欧州ヒト生殖学会(ESHRE)のガイドラインでは、40歳未満で4か月以上の無月経または不規則な月経があり、FSHが1回でも25 IU/Lを超えることを診断の基準としています。頻度は従来1%程度とされてきましたが、最近の報告では3.5%とされています[12]。のぼせや発汗など更年期のような症状を伴うこともあれば、ほとんど症状がないこともあります。原因や妊娠への影響は早発閉経(早期閉経)とはで詳しく解説しています。

40代後半以降では、閉経に向かう過程で排卵が不規則になり、「きそうでこない」周期が増えていきます。この時期でも妊娠の可能性はゼロではないため、性交があった場合は検査薬で確かめることが基本です。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【陰性のあとの「こない」を放っておかない】

妊娠検査薬が陰性だと、ひと安心して、生理が来ないこと自体はそのままにしてしまいがちです。けれども月経は、甲状腺、下垂体、卵巣といった全身のホルモンの状態が映し出される指標でもあります。

何周期も月経が遅れる、あるいはそれまで順調だった月経が3か月を超えて止まっている場合は、無月経として原因を調べる対象になります。原因に応じて、将来の妊娠や骨の健康も考慮した対応が検討されます。

6. 生理がこないのに生理痛のような痛みが続くとき

妊娠検査薬が陰性で、生理が来ないのに生理痛のような痛みだけが続く場合は、子宮や卵巣の病気が隠れていないかを確認する必要があります。月経前の痛みは、子宮内膜で作られるプロスタグランジンという物質が子宮を収縮させることで起こります。月経が始まって内膜が外に出ると、多くは数日で落ち着きます。月経と関係なく痛みが続く、あるいは毎回強くなっていく場合は、次のような病気を考えます。

子宮筋腫は、子宮の筋肉にできる良性の腫瘍です。女性ホルモンのエストロゲンの影響で大きくなり、できる場所や大きさによって、重い生理痛、経血量の増加、下腹部の圧迫感、頻尿などを起こします。症状や治療法は子宮筋腫ってどんな病気?で解説しています。

子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が卵巣や腹膜など子宮の外にでき、月経のたびに炎症や癒着を起こす病気です。月経血が卵管を通ってお腹の中へ逆流する現象が発生に関わると考えられていますが、逆流自体は多くの女性に起こるため、それだけでは説明しきれず、仕組みにはまだわかっていない部分があります。年々強くなる生理痛、月経以外の時期の下腹部痛、性交時の痛みが特徴です。詳しくは子宮内膜症の症状とメカニズムをご覧ください。

このほか、卵巣嚢腫(卵巣にできる袋状の腫れ)がねじれたり破れたりすると、急に強い痛みが出ることがあります。急な激しい痛み、発熱を伴う痛み、吐き気を伴う痛みは、時間をおかずに受診してください。

7. 生理きそうでこないときに生理をこさせる方法は?

医学的に「生理をこさせる」ことができるのは、妊娠していないことを確かめたうえで、医療機関がホルモン剤を使って出血を起こす方法です。食べ物やツボ、市販のサプリメントで、止まっている生理をすぐに来させることができるという根拠はありません。

まず妊娠でないことを確認する

生理をこさせるための薬を考える前に、必ず妊娠検査を行います。妊娠している可能性が残ったまま自己判断で薬や漢方を使うことは避けてください。医療機関でも、ホルモン剤で出血を起こす前には妊娠検査で妊娠を除外するのが基本の手順です[7]。

医療機関での黄体ホルモン剤などによる出血誘導

生理が来ない原因が「排卵が起きていない」ことにある場合、黄体ホルモン剤を一定期間飲み、やめたときに黄体ホルモンが急に下がることで子宮内膜がはがれ、月経のような出血(消退出血)が起こります。これは妊娠しなかった周期の生理と同じ仕組みを、薬で再現する方法です。

ASRMの見解では、黄体ホルモンをやめたあとに出血があるかどうかは、無月経の原因を考える手がかりにもなるとされています。出血があれば、エストロゲンはある程度出ているが排卵が起きていない状態が示唆され、出血がなければ、エストロゲンが低い状態や子宮内膜の問題が考えられます。ただし、この反応には偽陽性・偽陰性もあるため、ほかの検査と合わせて解釈すると述べられています[7]。状況によっては、エストロゲンと黄体ホルモンを組み合わせた薬で周期を作る方法も使われます。どの薬を選ぶかは、原因と妊娠の希望によって変わります。

食べ物・ツボ・漢方で「今すぐ来させる」根拠は乏しい

特定の食べ物、ツボ押し、体を温める習慣などで生理を来させる、という情報は多く見かけます。しかし、止まっている生理を短期間で来させる効果を示した信頼できる研究は見当たりません。漢方薬は医療機関で月経不順に使われることがありますが、効果の現れ方には時間がかかり、「数日以内に来させる」ためのものではありません。

周期を整えるためにできること(体重・睡眠)

生活面で意味があるのは、極端な体重の増減を避け、食事から十分なエネルギーを取り、睡眠のリズムを整えることです。機能性視床下部性無月経では、食事量を増やしたり運動量を減らしたりしてエネルギー不足を解消することが治療の中心とされています[8]。

よくある質問(FAQ)

Q1. 生理痛のような痛みがあっても妊娠していることはありますか?

あります。妊娠初期には子宮の変化や黄体ホルモンの影響で、生理前とよく似た鈍い下腹部痛や腰の重さが出ることがあります。痛みの有無では妊娠かどうかを判断できないため、生理予定日の約1週間後に妊娠検査薬で確かめてください。片側の強い痛みや出血を伴う痛みがあるときは、早めに受診してください。

Q2. 妊娠検査薬はいつから使えば正確ですか?

市販の一般的な妊娠検査薬は、生理予定日の約1週間後から使うように作られています。研究では、予定日当日では妊娠していても約10%はhCGがまだ検出できず、1週間後には97%まで検出できると推定されています。予定日前や当日の陰性は「まだわからない」と考えてください。

Q3. 検査薬が陰性でも妊娠していることはありますか?

検査が早すぎた場合や、その周期の排卵が遅れた場合は、妊娠していても陰性になることがあります。生理が来ないまま1週間たったら、もう一度検査してください。再検査でも陰性で生理が来ない状態が続く場合は、妊娠以外の原因を考えて婦人科で相談することを検討してください。

Q4. 薄い血が少し出て止まりました。生理ですか、妊娠ですか?

出血の色や量だけでは判断できません。妊娠初期にも、生理予定日ごろに少量の出血がみられることがあります。月経なら多くは1〜2日で赤い血に変わって量が増えていきます。量が増えないまま止まった場合は、予定日の約1週間後に妊娠検査薬を使って確かめてください。

Q5. 生理が何日こなければ受診したほうがよいですか?

妊娠の可能性がある場合は、予定日の約1週間後に検査し、陽性なら予定日から1〜2週間後を目安に産婦人科を受診します。陰性でも生理が来ない状態が続き、それまで順調だった人で3か月を超えた場合は、無月経として原因を調べる対象になります。強い腹痛や出血と痛みがあるときは、日数にかかわらず受診してください。

Q6. 「今にも生理がきそう」な状態が1週間以上続いています。

妊娠している場合も、排卵が遅れて生理前の状態が長引いている場合もあります。まず妊娠検査薬を使い、陽性なら産婦人科へ、陰性なら1週間後に再検査してください。生理が来ない状態がさらに続く場合は、ホルモンの検査で原因を調べることを考えてください。

Q7. ミネルバクリニックで妊娠の確認や生理不順の検査・治療はできますか?

いいえ、行っていません。当院は遺伝診療の専門クリニックのため、妊娠の確認や、生理不順・無月経の検査・治療についてのご予約・お問い合わせはお受けしていません。お近くの産婦人科・婦人科へご相談ください。

まとめ

今にも生理がきそうなのにこないとき、その周期に避妊をしない性交があれば、妊娠している可能性はあります。生理前と妊娠初期は同じ黄体ホルモンの働きで似た症状が出るため、下腹部痛や胸の張りといった症状では見分けられません[1]。判断の決め手は、生理予定日を過ぎても高温期が続いているかと、予定日の約1週間後の妊娠検査薬の結果です[3]。

陽性なら産婦人科で子宮内の妊娠を確認し、強い片側の痛みや出血と痛みがあるときはすぐに受診してください[5]。陰性でも生理が来ない状態が続く場合は、排卵の遅れのほか、ストレスや体重変化、PCOS、甲状腺やプロラクチンの異常、早発卵巣不全などを考え、ホルモンの検査で原因を確かめることが大切です[7]。生理をこさせたいときも、まず妊娠でないことを確認したうえで、医療機関で相談してください。

🏥 妊娠の確認や生理不順の検査・治療をお考えの方へ

当院では、妊娠の確認や、生理不順・無月経の検査・診断・治療を行っておりません。
この件についてのご予約・お問い合わせはお受けしておりません。
妊娠の可能性がある場合や、生理が来ない状態が続く場合は、お近くの産婦人科・婦人科を受診してください。この記事は生理が来ないときの体の仕組みを正しく知っていただくための解説であり、当院での診療をご案内するものではありません。

参考文献

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  • [3] Wilcox AJ, Baird DD, Dunson D, McChesney R, Weinberg CR. Natural limits of pregnancy testing in relation to the expected menstrual period. JAMA. 2001;286(14):1759-1761. [PubMed 11594902]
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プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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