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アラジール症候群はNIPTでわかる?赤ちゃんに遺伝する確率と、妊娠中に調べられる範囲を臨床遺伝専門医が解説

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

「アラジール症候群は、おなかの赤ちゃんの段階でわかるの?」「夫(または私)がアラジール症候群。赤ちゃんに遺伝する確率は?」。アラジール症候群の原因の多くは、当院のインペリアルプランのNIPTで調べられます。ただし、ダイヤモンドプランでは調べられないこと、親が当事者のときは流れが変わること、陽性でも症状の重さまではわからないことなど、知っておきたい点がいくつもあります。臨床遺伝専門医が、出生前に何がどこまでわかるかに絞ってまとめました。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. アラジール症候群はNIPTでわかる?

原因の多くは調べられます。原因の遺伝子JAG1・NOTCH2はインペリアルプランの対象で、JAG1を含む20p12の欠失は双子マックスプランとインペリアルプランの対象です。ダイヤモンドプランの56遺伝子には入っていません。対象の遺伝子でも、すべての変化を見つけられるとは限りません。

👶 Q. 赤ちゃんがアラジール症候群になる確率は?

親のどちらかがアラジール症候群なら、お子さん1人ごとに2分の1の確率で受け継ぎます。ただし患者さんの約6割は、ご両親にない変化が赤ちゃんで新しく起きたもので、家族に誰もいなくても起こります。

🩺 Q. 妊娠中のエコーでわかる?

胎児心エコーで心臓の病気が見つかることはありますが、エコーが正常でもアラジール症候群は否定できません。エコーで心臓の病気がすでに見つかっているときは、NIPTではなく羊水検査などの確定検査が基本です。

👪 Q. 私(または夫)がアラジール症候群。NIPTで赤ちゃんのことはわかる?

お母さんが当事者の場合、ふつうのNIPTでは、見つかった変化がお母さん由来か赤ちゃん由来かを区別できません。できれば妊娠前にご本人の遺伝子検査で原因の変化を特定し、妊娠中はその変化を目印に絨毛検査か羊水検査で赤ちゃんを調べます。

🧩 Q. NIPTで自閉症や発達障害はわかる?

一部はわかります。インペリアルプランでは、自閉症・発達障害・知的障害を伴うことがある病気(ピット・ホプキンス症候群・フェラン・マクダーミッド症候群など)の原因の一部も調べられます。陰性でも、自閉症や発達障害がないとは言えません。

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アラジール症候群はNIPTでわかる? ― 原因の多くはインペリアルプランで調べられる

結論からお伝えすると、アラジール症候群の原因の多くは、当院のインペリアルプランのNIPTで調べられます。ただし、すべてのアラジール症候群がわかるわけではありません。どこまでわかるかは、原因が「どの遺伝子の、どんな変化か」によって変わります。

アラジール症候群の原因は、ほとんどがJAG1(ジャグワン)という遺伝子の変化です。米国の遺伝性疾患の専門書GeneReviewsでは、原因の内訳をJAG1が約94%、NOTCH2(ノッチツー)が約2.5%、原因がわからないものが約3%としています[1]。JAG1の変化には、遺伝子の中の小さな変化のほか、JAG1全体がなくなる欠失や、JAG1を含む20番染色体の20p12という範囲がまとめてなくなる欠失もあります[1]。

約94%JAG1の変化(1型)
→ インペリアルで調べる遺伝子
約2.5%NOTCH2の変化(2型)
→ インペリアルで調べる遺伝子
約3%原因がわからないもの
→ NIPTでは調べられない

GeneReviews[1]の表の数字で、アラジール症候群の原因の内訳です。NIPTで見つけられる割合ではありません(対象の遺伝子でも、すべての変化を見つけられるとは限りません)。JAG1を含む20p12の欠失は、双子マックスプランとインペリアルプランの微小欠失の対象です。

🧬 アラジール症候群の原因と、当院のNIPTで調べられるプラン

原因 インペリアル 双子マックス ダイヤモンド
JAG1の変化(アラジール症候群1型) ○(単一遺伝子) ― ―
NOTCH2の変化(アラジール症候群2型) ○(単一遺伝子) ― ―
JAG1を含む20p12の欠失 ○(92種類の微小欠失) ○(92種類の微小欠失) ―
原因がわからないもの ― ― ―

○=プランの対象。スタンダードプラン・プレミアムプランは、アラジール症候群の原因を調べません。対象の遺伝子でも、すべての変化を見つけられるとは限りません。

ダイヤモンドプランでは調べられない

当院で単一遺伝子の病気を調べるのは、ダイヤモンドプラン(56遺伝子・COATE法)とインペリアルプラン(最大155遺伝子202疾患・低深度全ゲノムシーケンス+ターゲット法)の2つです。このうちダイヤモンドプランの56遺伝子には、JAG1もNOTCH2も入っていません。アラジール症候群の原因まで調べたい場合は、インペリアルプランを選ぶことになります。2つのプランの違いはインペリアルプランとダイヤモンドプランの違いにまとめています。

ダイヤモンドプランは、米国の3大遺伝子検査会社の一角が提供する新技術「COATE法」(SNP法とターゲット法の組み合わせ)※で、ヌーナン症候群やCHARGE症候群など、別の56遺伝子を調べるプランです。調べる遺伝子が違うので、ご家族が気にしている病気が入っているかどうかで選びます。

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

NIPTで調べるのは「赤ちゃんに新しく起きた変化」

NIPT(新型出生前診断)は、お母さんの血液に混ざっている赤ちゃん側(主に胎盤)のDNAのかけらを調べる検査です。単一遺伝子の病気でNIPTが主に見ているのは、ご両親にはなく、赤ちゃんで新しく起きた変化(de novo変異)です。アラジール症候群は約6割がこの新しく起きた変化によるため[1]、家族歴がないご夫婦でもNIPTで調べる意味があります。当院で受けられる検査の範囲は、東京のNIPT(新型出生前診断)のページにまとめています。

インペリアルプランの単一遺伝子の検査は、高リスクの妊婦さん750人で確かめた研究で、陽性的中率96.9%・感度100%・特異度99.9%と報告されています[2]。これはインペリアルプランと同じ155遺伝子202疾患の検証データで、リスクの高い妊婦さんでの数字です。一般の妊婦さんでは陽性的中率がこれより低くなることがあり、陽性なら必ず確定検査で確かめます。

💡 用語解説:JAG1・NOTCH2・de novo変異

JAG1(ジャグワン)とNOTCH2(ノッチツー)は、細胞どうしが連絡を取り合う「Notch(ノッチ)シグナル」という仕組みにかかわる遺伝子です。肝臓の胆管や心臓、血管、背骨などができるときに働きます。de novo(デノボ)変異は、ご両親にはなく、赤ちゃんで新しく起きた遺伝子の変化のことです。詳しくはJAG1遺伝子とは・NOTCH2遺伝子とはをご覧ください。

アラジール症候群はどんな病気? ― 出生前に知っておきたいポイントだけ

アラジール症候群とは、肝臓・心臓・目・背骨・顔つきなど、いくつもの臓器に特徴が出る遺伝性の病気です[1]。生まれてくる赤ちゃんの約3万〜5万人に1人とされていますが、症状の幅が広いため、実際には診断されていない人もいると考えられています[1]。日本では指定難病(297)になっています(2026年11月時点)[3]。

📋 アラジール症候群の主な特徴(GeneReviewsの表より)

臓器 主な特徴 みられる割合
肝臓 胆汁の流れが悪くなる(胆汁うっ滞)。生まれてまもなくの黄疸として気づかれることが多い 95%
心臓 肺動脈が細い(肺動脈狭窄)など 90〜97%
目 後部胎生環(黒目のふちの小さな線。視力にはふつう影響しない) 78〜89%
背骨 蝶形椎(背骨の骨の形の特徴)など 33〜93%
腎臓 腎臓の形の違いや腎臓の病気 39%

出典:GeneReviews[1]の表2。割合は報告によって幅があります。顔つきの特徴もよくみられます。症状・治療・経過は疾患ページで詳しく解説しています。

出生前の検査を考えるときに大切なのは、同じ家族の中でも、症状の出方が大きく違うことです。GeneReviewsは、症状がほとんどない人から重い人まで幅があり、同じ家族の中でも違いがみられると書いています[1]。そのため、親が軽くて気づいていないこともあります。病気そのもの(症状・診断・治療・経過)は、アラジール症候群1型(ALGS1)とはとアラジール症候群2型(ALGS2)とはで詳しく解説しています。

赤ちゃんがアラジール症候群になる確率は? ― 遺伝のしかたとde novo

親のどちらかがアラジール症候群なら、お子さん1人ごとに2分の1(50%)の確率で原因の変化を受け継ぎます[1]。アラジール症候群は常染色体顕性(優性)遺伝で、2本ある遺伝子のうち1本に病的な変化があれば発症しうるためです。ただし、変化を持っていても症状がみられない人もいます(下の浸透率の段落)。

一方で、GeneReviewsによると、患者さんの約4割は親から受け継いだ変化、約6割は赤ちゃんで新しく起きた変化です[1]。つまり、家族に誰もアラジール症候群の人がいなくても、赤ちゃんがアラジール症候群になることがあります。

👪 場面ごとの、次のお子さんの確率

場面 お子さんが受け継ぐ確率
父か母がアラジール症候群(原因の変化を持っている) お子さん1人ごとに2分の1
上のお子さんが新しく起きた変化(両親とも変化なし) 低いが0ではない(親の性腺モザイクがあるため)
親がモザイク(体の一部の細胞だけに変化がある) お子さん1人あたり最大で2分の1
家族歴がない 新しく起きる変化で起こることがある

出典:GeneReviews[1]。JAG1が原因のご家族を調べた研究では、親の体細胞・性腺モザイクは約8%でした[1]。

「受け継いだら必ず症状が出るのか」も気になる点です。JAG1の変化を持つ人では、症状がまったくない人もまれにいて、浸透率(変化を持つ人のうち症状が出る人の割合)は96%と報告されています[1]。ただし、症状が出るかどうか、どのくらい出るかは、遺伝子の検査では予測できません[1]。

単一遺伝子の病気は、まとめるとダウン症候群より多い

アラジール症候群のような単一遺伝子の病気は、1つひとつはまれです。けれども、わずか30遺伝子・25疾患を合わせただけでも約600人に1人(0.17%)[4][5]…これは30の遺伝子に絞って調べた研究での数字なので、実際にはこれより多いと考えています。ダウン症候群の出生頻度(米国の全国推計〔2004〜2006年の出生〕で約700人に1人)[6]より多い頻度です。そして、その多くはお父さん・お母さんに原因がなく、赤ちゃんで新しく起きる変化です。de novo変異とお父さんの年齢の関係は単一遺伝子疾患とNIPT|父親の年齢で解説しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「うちの家系にはいない」でも起こる病気です】

アラジール症候群で臨床遺伝専門医として大切だと考えているのは、「家族歴がない=心配いらない」とは言えない、という点です。約6割は赤ちゃんで新しく起きた変化によるものですし、残りの約4割の中にも、親が症状に気づかないまま変化を持っていた、という場合があります。

反対に、親がアラジール症候群でも、お子さんの症状が親と同じになるとは限りません。親が軽くてもお子さんが重いことも、その逆もあります。確率の数字と「症状の重さは予測できない」という事実を両方知ったうえで、どの検査を選ぶかを考えていただきたいと考えています。

妊娠中のエコーでアラジール症候群はわかる?

エコーだけでアラジール症候群と診断することは、ふつうはできません。GeneReviewsは、アラジール症候群の可能性がある赤ちゃんでは胎児心エコーで心臓の大きな病気が見つかることがある一方で、胎児心エコーが正常でもアラジール症候群は否定できないとしています[1]。

アラジール症候群でいちばん多い肝臓の特徴(胆汁うっ滞)は、生まれたあとに黄疸などとして気づかれるものです。大きな研究では、アラジール症候群のお子さんの85%に、新生児期の胆汁うっ滞の経過がありました[1]。おなかの中にいる間は、肝臓の特徴はエコーで見えにくいと考えてください。

エコーで心臓の病気を指摘されたら、確定検査が基本

妊婦健診のエコーで、赤ちゃんの心臓の病気(肺動脈が細いなど)をすでに指摘されている場合は、NIPTではなく、羊水検査などの確定検査で調べるのが基本です。心臓の病気の原因は、染色体の数の異常、微小欠失、単一遺伝子の変化などさまざまで、羊水検査ではマイクロアレイ検査や遺伝子の検査をまとめて考えられます。院長は、羊水でマイクロアレイ検査をするなら妊娠18週くらいが適していると考えています。

NIPTは、まだエコーで何も言われていないけれど心配、という方が、早い時期に可能性を拾い上げるための検査と考えてください。エコーの所見の相談は、まずかかりつけの産婦人科の主治医と行ってください。

⚠️ 注意:エコーとNIPTの役割は違います

・エコーで形の異常が見つかっているとき → 羊水検査・絨毛検査(確定検査)が基本

・まだ何も言われていないが心配なとき → NIPTで可能性を拾い上げ、陽性なら確定検査

・NIPTが陰性でも、エコーで気になる所見が出たら、主治医と確定検査を含めて相談する

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絨毛検査は妊娠11〜13週、羊水検査は妊娠15週から院内で受けられます。
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お父さん・お母さんがアラジール症候群のときは?

親のどちらかがアラジール症候群のときは、検査の流れが変わります。どちらが当事者かで、NIPTでできることが違うためです。

お母さんがアラジール症候群のとき

お母さん自身が原因の変化を持っている場合、通常のNIPTでは、見つかった変化がお母さん由来か赤ちゃん由来かを区別できません。お母さんの血液には、お母さん自身のDNAと赤ちゃん側のDNAが混ざっているためです。

そのため、まだご本人が遺伝子検査を受けていないなら、時間的な余裕があれば、まずお母さん本人の遺伝子検査で原因の変化を特定するのが基本です。できれば妊娠前に済ませておくほうがよいと考えています。アラジール症候群の原因の変化は、JAG1の中だけでも人によって場所も種類もさまざまで、軟骨無形成症のように原因の変化がほぼ1つに決まっている病気とは違います。当院ではアラジール症候群遺伝子検査(JAG1/NOTCH2)を行っています。

妊娠週数などで時間的な余裕がないときは、NIPTで対象の変化の有無をチェックすることがあります。このときのNIPTは、赤ちゃんが受け継いだかを判定するためではなく、確定検査で調べる目印を把握するためのものです。ただし、原因の変化が人によってさまざまなアラジール症候群では、NIPTでお母さんの変化を決められるとは限りません。原因の変化がわかったら、その変化を目印にして、絨毛検査(妊娠11〜13週)か羊水検査(妊娠15週から)で赤ちゃんを調べます。

また、お母さんの病気とは別に、赤ちゃんで新しく起きる単一遺伝子の病気もあります。そのため、お母さんが当事者でも、NIPTは基本的に受けたほうがよいと院長は考えています(赤ちゃんがお母さんの変化を受け継いだかを調べるのは、NIPTではなく絨毛検査・羊水検査です)。詳しい流れはお母さんが単一遺伝子疾患のときのNIPTにまとめています。

お父さんがアラジール症候群のとき

お父さんが原因の変化を持っている場合は、事情が違います。お父さん由来の変化はお母さんの血液にはないため、NIPTでその変化が見つかれば、赤ちゃんが受け継いでいる可能性が高いと考えられます。JAG1とNOTCH2はインペリアルプランの対象です(ダイヤモンドプランの56遺伝子には入っていません)。

ただし、お父さんの変化がNIPTで調べられる種類のものかどうかは、遺伝カウンセリングでお父さんの遺伝子検査の報告書を見て確かめます。対象に入らない変化なら、お父さんの変化を目印に絨毛検査・羊水検査で調べる方法を考えます。NIPTはあくまで確定ではない検査なので、見つかった場合も確定検査で確かめます。詳しくはお父さんが単一遺伝子疾患のときのNIPTをご覧ください。

どちらの場合も、症状の重さは遺伝子の検査では予測できません[1]。どの検査をどの順番で受けるかは、検査前の遺伝カウンセリングで、ご家族の状況に合わせて選びます。遺伝カウンセリングについては遺伝カウンセリングとはをご覧ください。

NIPTで陽性だったら? ― 確定検査で確かめる

NIPTは確定検査ではなく、スクリーニング検査です。陽性なら、必ず絨毛検査か羊水検査で確かめてから考えます。当院では、陽性の場合も確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられます。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。確定検査は基本的に日曜日(月曜日が祝日のときは月曜日)に行っています。

① NIPT陽性JAG1・NOTCH2・20p12欠失
▶
② 遺伝カウンセリング陽性後は何度でも無料
▶
③ 絨毛・羊水検査見つかった変化を目印に
▶
④ 結果主要な項目は3日以内

確定検査でアラジール症候群とわかっても、どの臓器にどのくらい症状が出るかは予測できません[1]。わかったことを、生まれたあとの肝臓・心臓の評価や、出産する施設の準備にどう生かすか、妊娠を続けるかどうかも含めて、遺伝カウンセリングで一緒に考えます。当院は分娩・中絶を行っていないので、出産や妊娠の管理はかかりつけの産婦人科と連携して進めます。

NIPTを受ける方は全員、2つの互助会に加入します。羊水検査互助会(カトレア会)は陽性のときの確定検査の費用を補助し(補助の上限なし)、安心検査結果保障制度は、流産で再検査ができず結果が出なかった場合に備える制度です。

アラジール症候群が心配なときのプランの選び方と受ける時期

アラジール症候群の原因まで調べたいなら、単一遺伝子(JAG1・NOTCH2)と20p12の欠失の両方が対象になるインペリアルプランが合います。

🧬 単一遺伝子を調べる2つのプランの違い

項目 インペリアルプラン ダイヤモンドプラン
単一遺伝子 最大155遺伝子202疾患 56遺伝子
アラジール症候群(JAG1・NOTCH2) 対象 対象外
微小欠失・重複 92種類(20p12の欠失を含む)+5Mbを超える欠失・重複 12種類13疾患
検査の方式 低深度全ゲノムシーケンス+ターゲット法 COATE法(SNP法とターゲット法の組み合わせ)
結果まで 基本10〜14日(単一遺伝子の結果だけ3〜4週間) 10〜14日(単一遺伝子も)
対象 単胎のみ 単胎のみ

料金はプランのページでご確認ください。料金には臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリング・NIPTでの性別判定・4Dエコー(来院の場合)が含まれます。155遺伝子の一覧は155遺伝子de novo変異NIPTで確認できます。

超音波検査で赤ちゃんの異常が疑われた妊婦さんを対象にした研究では、染色体の検査に加えて単一遺伝子の病気も調べると、見つかった病気の数が約1.6倍(61件→98件、60.7%増)に増えたと報告されています。[7]調べる範囲を広げると見つけられる病気は増えますが、陽性になって確定検査が必要になる場面も増えます。だからこそ、どこまで調べるかは検査前の遺伝カウンセリングで選びます。

インペリアルプランでは、アラジール症候群のほかにも、自閉症・発達障害・知的障害を伴うことがある病気の原因の一部(ピット・ホプキンス症候群・フェラン・マクダーミッド症候群など)も調べられます。ただし調べられるのは「一部」で、陰性でも自閉症や発達障害がないとは言えません。詳しくは一部の自閉症・発達障害の原因はNIPTでわかるをご覧ください。

いつ受けられる?

当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。受けられる時期の上限は設けていません。ただし、人工妊娠中絶ができるのは通常妊娠満22週未満です(出典:日本医師会「医の倫理の基礎知識 2018年版【生殖医療】D-5」[8])。インペリアルプランの単一遺伝子の結果は3〜4週間かかり、陽性ならそのあと確定検査もあります。受ける時期と結果の生かし方は、検査前の遺伝カウンセリングで一緒に考えます。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「何がわかって、何がわからないか」を知ってから選ぶ】

アラジール症候群は、NIPTで原因を拾い上げられる病気の一つです。けれども、拾い上げられるのは原因の変化があるかどうかまでで、肝臓や心臓にどのくらい症状が出るかまではわかりません。そして、原因がわからないアラジール症候群や、NIPTで見つけにくい変化もあります。

それでも、生まれる前に可能性を知っていれば、生まれてすぐに肝臓や心臓を詳しく調べてもらう準備ができます。検査でわかることと、わからないことの両方を知ったうえで選ぶこと、それがご家族の意思決定を支えることだと考えています。

検査は「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ ― 1つの病気あたりで考えると

「ダウン症候群だけが心配」という方は少なくありません。けれども、出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんとご家族の暮らしに大きくかかわるものです。そして、ご家族の子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった「行動の問題」だと分かっています[9]。こうした行動の問題を伴いやすい病気には、ダウン症候群ではなく、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患が多く含まれます[9][10]。三大トリソミーだけを調べる検査では、これらの病気は調べられません。

出生前検査は、その後の人生を左右するかもしれない検査です。『安さ』だけで選んで大丈夫でしょうか。

三大トリソミーだけを調べる検査を仮に10万円とすると、1つの病気あたりは約3万3千円です。

当院のインペリアルプランは、全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、202の単一遺伝子疾患を調べます。性染色体の数の異常も含めて、数えられる病気だけで320になり、1つの病気あたりは約1,719円です。さらに、5Mbを超える欠失・重複はすべての染色体が対象なので、数えきれないほどの変化を調べていることになります。数えられる分だけでも、これだけの範囲を調べられます。

プラン 主に調べる範囲 数えた病気の数 1つの病気あたり
三大トリソミーだけを調べる検査
(仮に10万円とした場合)
13・18・21トリソミー 3 約33,333円
スタンダード(220,000円) 13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患 14 約15,714円
プレミアム(264,000円) 13・18・21・15・16・22トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失12種類13疾患 23 約11,478円
ダイヤモンド(407,000円) プレミアムの範囲+単一遺伝子56 79 約5,152円
双子マックス(440,000円) 全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常 114+α 約3,860円
インペリアル(550,000円) 全常染色体の数の異常、性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常、単一遺伝子202疾患 320+α 約1,719円

※価格は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込価格です。最新の料金は料金ページをご確認ください。※病気の数は、数の異常・微小欠失・重複・単一遺伝子疾患を1つずつ数えたものです。性染色体の数の異常は4種類(ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群)として数えています(性染色体を調べるのはスタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・インペリアル。双子マックスは調べません)。5Mbを超える構造異常は数に入れていないため、双子マックスとインペリアルは実際にはさらに多くの変化を調べています。※『三大トリソミーだけを調べる検査』は計算のための仮の例で、特定の施設の価格ではありません。

調べる範囲が広がると、陽性になる可能性も、確定検査が必要になる場面も増えます。どこまで調べたいかは、ご家族によって違います。90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、どのプランが合うかを一緒に考えます。

🏥 アラジール症候群の原因まで調べられるNIPT

インペリアルプランでは、JAG1・NOTCH2の変化と20p12の欠失を調べられます。臨床遺伝専門医が常駐し、陽性なら絨毛検査・羊水検査まで院内で受けられ、主要な項目は3日以内に結果が出ます。

まだプランを決めていない方は:インペリアルとダイヤモンドの違い | オンラインNIPT(全国110か所の提携施設で採血)
オンラインの場合、遺伝カウンセリングの料金は事前のお支払いです。

よくある質問(FAQ)

Q1. アラジール症候群はNIPTでわかりますか?

原因の多くは調べられます。原因の遺伝子JAG1・NOTCH2は当院のインペリアルプランの対象で、JAG1を含む20p12の欠失は双子マックスプランとインペリアルプランの対象です。原因がわからないアラジール症候群もあり、対象の遺伝子でもすべての変化を見つけられるとは限りません。陽性なら確定検査で確かめます。

Q2. ダイヤモンドプランでアラジール症候群は調べられますか?

調べられません。ダイヤモンドプランの56遺伝子には、JAG1もNOTCH2も入っていません。アラジール症候群の原因まで調べたい場合は、インペリアルプランを選びます。

Q3. 赤ちゃんがアラジール症候群になる確率はどのくらいですか?

親のどちらかがアラジール症候群なら、お子さん1人ごとに2分の1の確率で原因の変化を受け継ぎます。患者さんの約6割は赤ちゃんで新しく起きた変化によるもので、家族歴がなくても起こります。生まれてくる赤ちゃんの約3万〜5万人に1人とされています。

Q4. 家族に誰もいないのに、アラジール症候群になることはありますか?

あります。約6割は、ご両親にない変化が赤ちゃんで新しく起きたものです。また、同じ家族の中でも症状の出方が大きく違うため、親が軽くて気づいていないこともあります。

Q5. 妊娠中のエコーでアラジール症候群はわかりますか?

エコーだけで診断することは、ふつうはできません。胎児心エコーで心臓の大きな病気が見つかることはありますが、胎児心エコーが正常でもアラジール症候群は否定できません。エコーで心臓の病気がすでに見つかっているときは、羊水検査などの確定検査が基本です。

Q6. 私(妻)がアラジール症候群です。NIPTで赤ちゃんのことはわかりますか?

お母さんが原因の変化を持っている場合、通常のNIPTでは、見つかった変化がお母さん由来か赤ちゃん由来かを区別できません。できれば妊娠前にご本人の遺伝子検査で原因の変化を特定し、妊娠中はその変化を目印に絨毛検査(妊娠11〜13週)か羊水検査(妊娠15週から)で赤ちゃんを調べます。赤ちゃんで新しく起きる別の病気もあるため、NIPTは基本的に受けたほうがよいと院長は考えています。

Q7. 夫がアラジール症候群です。どんな検査を選べばよいですか?

お父さん由来の変化はお母さんの血液にないため、NIPTで見つかれば赤ちゃんが受け継いでいる可能性が高いと考えられます。JAG1・NOTCH2はインペリアルプランの対象です。お父さんの変化がNIPTで調べられる種類かは、遺伝カウンセリングで報告書を見て確かめ、見つかった場合も確定検査で確かめます。

Q8. NIPTで陽性だったらどうなりますか?

絨毛検査か羊水検査で確かめます。当院では確定検査まで院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料です。確定してもどのくらい症状が出るかは予測できないため、わかったことの生かし方を遺伝カウンセリングで一緒に考えます。

Q9. NIPTは何週から受けられますか?結果はいつわかりますか?

当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。結果は基本10〜14日ですが、インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間かかります。

関連記事

参考文献

  • [1] Spinner NB, Loomes KM, Krantz ID, Gilbert MA. Alagille Syndrome. In: Adam MP, et al., editors. GeneReviews®. Seattle (WA): University of Washington, Seattle. Initial Posting: May 19, 2000; Last Update: January 4, 2024. [NCBI Bookshelf NBK1273]
  • [2] Expanded noninvasive prenatal screening for dominant single-gene disorders: proof-of-concept, performance, and challenges. Am J Obstet Gynecol. 2025;233(6):673.e1-673.e21. doi:10.1016/j.ajog.2025.06.043 [DOI 10.1016/j.ajog.2025.06.043]
  • [3] 難病情報センター. アラジール症候群(指定難病297). [難病情報センター]
  • [4] Clinical experience with non-invasive prenatal screening for single-gene disorders. Ultrasound Obstet Gynecol. 2022;59(1):33-39. [DOI 10.1002/uog.23756]
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  • [8] 日本医師会. 医の倫理の基礎知識 2018年版【生殖医療】D-5. [日本医師会]
  • [9] Parental stress and adjustment in the context of rare genetic syndromes: A scoping review. J Intellect Disabil. 2022;26(2):522-544. [DOI 10.1177/1744629521995378]
  • [10] The prevalence and phenomenology of self-injurious and aggressive behaviour in genetic syndromes. J Intellect Disabil Res. 2011;55(2):109-120. [DOI 10.1111/j.1365-2788.2010.01337.x]

※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・検査の選択を示すものではありません。検査については臨床遺伝専門医にご相談ください。

プロフィール

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

Google公認:仲田洋美 公式プロフィール

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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