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先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)・甲状腺ホルモン不応症の遺伝子検査|甲状腺の病気は遺伝する?36遺伝子で原因と次の一手がわかる

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)・甲状腺ホルモン不応症の遺伝子検査

先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)と甲状腺ホルモン不応症は、遺伝子1つの変化で起こることがある甲状腺の病気です。この甲状腺の遺伝子検査は、その原因になる36の遺伝子を一度に調べます。原因の型がわかると、甲状腺ホルモンの薬を続ける必要があるかを考える手がかりになり、バセドウ病と間違えた治療を避けることや、ご家族が同じ変化をもっているかを確かめることにもつながります。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、これからの治療とご家族の計画に、ずっと使える情報です。このページでは、甲状腺の病気が遺伝するのか、どんな人がこの検査を受けるとよいか、結果が出たあとに何ができるかを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この甲状腺の遺伝子検査で何がわかりますか?

先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)と甲状腺ホルモン不応症などの原因になる36の遺伝子を一度に調べます。甲状腺の形、ホルモンを作るしくみ、脳からの指令、ホルモンの受け取り・運び込みに関わる遺伝子が含まれます。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

新生児マススクリーニングをきっかけに先天性甲状腺機能低下症と診断された方、FT4が高いのにTSHが下がらないと言われた方、ご家族に同じ甲状腺の病気の方がいる方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、お子さんへの確率やご家族の検査も考えられます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの治療と計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

1. 甲状腺の病気は遺伝する?遺伝子1つで起こる甲状腺の病気と、そうでない病気

甲状腺の病気が遺伝するかどうかは、病気によって違います。大人に多い橋本病(慢性甲状腺炎)は、遺伝的ななりやすさに環境の要因が加わって起こる病気で、遺伝子1つで決まる病気ではありません。一方、生まれつきの甲状腺機能低下症の一部と甲状腺ホルモン不応症は、遺伝子1つの変化で起こり、型によって親から子へ伝わる確率が決まっています。「甲状腺の病気が母親から遺伝するのでは」と心配して調べる方は多いのですが、まず、どちらの種類の病気なのかを分けて考えることが大切です。

大人の甲状腺機能低下症(橋本病など)と遺伝

日本小児内分泌学会がまとめた小児慢性特定疾病情報センターの解説では、橋本病(自己免疫性甲状腺炎)は、遺伝的な素因を土台に、ウイルス感染やヨウ素の摂り方などの環境の要因が加わって、免疫のしくみが自分の甲状腺を攻撃するようになって起こるとされています。同じ解説では、家族内で起こることが30〜40%にみられるとも書かれています(2026年10月時点で確認)。

つまり、橋本病は「家族に多い」ことはあっても、遺伝子1つの変化で起こり、決まった確率で子どもに伝わる病気ではありません。橋本病のなりやすさを調べることは、この検査の目的ではありません。このページの検査が役に立つのは、次に説明する「遺伝子1つで起こる甲状腺の病気」です。

遺伝子1つで起こる甲状腺の病気:この検査で調べるもの

この検査で調べる36の遺伝子は、働きで大きく4つに分けられます。

  • ●甲状腺ができる・育つ:PAX8・NKX2-1・FOXE1など。甲状腺がない・小さい・別の場所にある、といった形の違いに関わります。
  • ●甲状腺ホルモンを作る:DUOX2・TPO・TGなど。甲状腺の形は正常でも、ホルモンを作る工程がうまく進みません。
  • ●脳から甲状腺への指令:TSHB・TRHR・IGSF1・PROP1など。甲状腺に「ホルモンを作って」と伝える指令が足りなくなります(中枢性甲状腺機能低下症)。
  • ●ホルモンを受け取る・運び込む・活性化する:THRB・THRA・SLC16A2・SECISBP2。ホルモンが十分にあっても、体がうまく使えません(甲状腺ホルモン不応症など)。

遺伝のしかたは遺伝子ごとに違い、常染色体潜性(劣性)遺伝、常染色体顕性(優性)遺伝、X連鎖のものがあります。36の遺伝子それぞれの病気と遺伝のしかたは、第6章の表にまとめました。

2. 先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)とは:原因と遺伝

先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)は、生まれつき甲状腺ホルモンが足りない状態です。日本ではすべての赤ちゃんが受ける新生児マススクリーニングで見つかり、早く治療を始めることで、発達への影響を防ぐことをめざします。「クレチン症」は古くからの呼び名で、今は先天性甲状腺機能低下症と呼ぶのが一般的です。甲状腺ホルモンは、赤ちゃんの脳と体の成長に欠かせないホルモンです。

新生児マススクリーニングで見つかる病気

欧州の小児内分泌学会などがまとめた2020〜2021年の国際的な診療指針(コンセンサスガイドライン)は、原発性の先天性甲状腺機能低下症の頻度を3,000人に1人から2,000人に1人としています[1]。日本の新生児マススクリーニングの指針(2021年改訂)は、日本での頻度はかつて5,000〜8,000人に1人ほどだったものが、軽い型(潜在性)も診断されるようになって増えたと述べています[2]。新生児スクリーニングの基準の見直しで、甲状腺の形は正常な位置・大きさにある軽い型が多く見つかるようになったことも、国際的な指針で指摘されています[1]。

国際的な指針は、甲状腺ホルモンの薬(レボチロキシン)による治療を、できるだけ早く、遅くとも生後2週間までに始めるよう勧めています[1]。早く治療を始めることで、取り返しのつかない発達の遅れを防ぎ、発達の見通しをよくすることがねらいです。

原因の多くは甲状腺の形の異常。遺伝子の原因が見つかるのは一部

先天性甲状腺機能低下症の原因は、大きく「甲状腺の形の異常(甲状腺形成異常)」「ホルモンを作るしくみの異常(甲状腺ホルモン合成障害)」「脳からの指令の不足(中枢性)」に分けられます。甲状腺形成異常には、甲状腺がない(無甲状腺症)、小さい(低形成)、舌のつけ根など本来と違う場所にある(異所性甲状腺)といった型があります。

国際的な指針によると、ホルモンを作るしくみの異常(甲状腺ホルモン合成障害)は家族内で繰り返すことがあり、常染色体潜性遺伝でご両親とも保因者の場合、お子さん1人あたりの再発率は25%です。一方、甲状腺の形の異常が家族内で起こるのは2%とされ、さらに研究が必要とされています[1]。形の異常の多くは、今の検査で遺伝子の原因を特定できるわけではありません。反対に、ホルモンを作るしくみの異常では、原因の遺伝子が見つかることが多いと報告されています。日本の地域の集団を対象にした研究では、甲状腺ホルモン合成障害と診断された14人のうち93%で、DUOX2・TG・TPOのいずれかに原因と考えられる変化が見つかりました[3]。

また、国際的な指針は、先天性甲状腺機能低下症のお子さんでは心臓の生まれつきの病気が3〜11%にみられ、一般の出生(0.5〜0.8%)より多いとしています[1]。ほかの体の特徴を伴う場合(症候群)は遺伝子を調べること、甲状腺の形の異常や中枢性の甲状腺機能低下症が家族内で起きている場合はさらに遺伝子を調べることが勧められています[1]。

クレチン症の原因は母親?

クレチン症は、母親のせいで起こる病気ではありません。原因の多くは、甲状腺の形やホルモンを作るしくみの生まれつきの違いで、誰にでも起こりうるものです。遺伝子が関わる型でも、潜性遺伝ならご両親はどちらも症状のない保因者で、父親と母親の両方から1つずつ変化を受け継いで起こります。

一方で、一時的に甲状腺の働きが下がる原因もあります。国際的な指針は、出産の前後や新生児期にヨウ素を含む消毒薬を使うと、一時的な甲状腺機能低下症を起こしうるとして、使わないよう勧めています[1]。妊娠中のお母さんの甲状腺の病気と赤ちゃんの関係は、妊娠と甲状腺疾患の関係で解説しています。

一過性で治る型と、一生続く型(DUOX2など)

先天性甲状腺機能低下症には、成長とともに薬が要らなくなる「一過性」の型と、薬を続ける「永続性」の型があります。国際的な指針は、生まれてすぐの時期に永続性と診断がつかなかった場合は、2〜3歳以降に甲状腺の働きを見直すことを勧めています[1]。

ホルモンを作るしくみに関わるDUOX2やDUOXA2の変化では、症状の出方が人によっても時期によっても大きく違い、治療が要らない方や一過性で終わる方もいると、同じ指針に書かれています[1]。DUOX2関連の甲状腺機能低下症は、典型的には2つの病的な変化による潜性遺伝で起こりますが(甲状腺ホルモン合成障害6)、1つの変化が見つかる例も報告されています。2002年の報告では、2つの変化をもつお子さんは永続性の、1つの変化をもつお子さんは一過性の軽い甲状腺機能低下症でした[10]。2つの変化が別々の場所にある状態を複合ヘテロ接合といいます。原因の遺伝子がわかると、一過性の可能性も含めて、経過を考える手がかりが増えます。

難聴を伴う型(ペンドレッド症候群)

SLC26A4遺伝子の変化は、難聴と甲状腺の病気が組み合わさるペンドレッド症候群の原因になり、常染色体潜性遺伝です。国際的な指針は、生まれつきの感音難聴がある場合は、ペンドレッド症候群を考えるよう勧めています[1]。難聴が中心のときは、難聴遺伝子パネル検査も選択肢になります(第5章の表)。

3. 甲状腺ホルモン不応症とは:バセドウ病と間違えられやすい生まれつきの病気

甲状腺ホルモン不応症は、体が甲状腺ホルモンにうまく反応できない生まれつきの病気です。β型(THRB関連)では、血液検査でFT4(とFT3)が高いのに、TSH(甲状腺刺激ホルモン)が下がらないのが特徴です[4]。一方、α型(THRA関連)では異なる検査所見を示します。甲状腺ホルモンは、細胞の核の中にある受容体(核内ホルモン受容体)に結びついて働きます。この受容体の遺伝子の変化で、ホルモンの効き方が弱くなります。

甲状腺ホルモン不応症の研究で知られる研究者のレビューによると、新生児を対象にした2つの調査から、頻度は4万人に1人、1万9,000人に1人と推定されていますが、正確な頻度はわかっていません[4]。難病情報センターは、日本で報告されている患者さんは100人ほどで、診断されていない方や、バセドウ病など別の病気と診断されている方がいる可能性を指摘しています(2026年10月時点で確認)。

FT4が高いのにTSHが下がらない(FT4だけ高い・少し高い)

ふつうは、甲状腺ホルモン(FT4)が高くなると、脳の下垂体が「もう十分」と判断してTSHを下げます。甲状腺ホルモン不応症では、下垂体もホルモンに反応しにくいため、FT4が高いのにTSHが正常か高めのままになります[4]。健康診断などで「FT4だけ高い」「FT4が少し高いのにTSHは正常」と言われ、原因を調べている方もいるかもしれません。

ただし、この数値の組み合わせは甲状腺ホルモン不応症だけで起こるわけではありません。同じレビューは、まず測定の干渉(検査法による見かけの異常)を除外したうえで判断すること、TSHを作る下垂体の腫瘍などと見分ける必要があることを挙げています[4]。数値の解釈は、まず内分泌内科の主治医とご相談ください。遺伝子検査は、そのうえで原因を確かめる方法のひとつです。

バセドウ病と間違えて、甲状腺を壊す治療を受けることがある

⚠️ FT4が高いという理由だけで、バセドウ病の治療をしないことが大切です

日本小児内分泌学会がまとめた解説は、甲状腺ホルモン不応症の多くでは、ホルモンへの反応の弱さが高いホルモン値で補われているため治療を必要とせず、FT4やFT3が高いという理由でバセドウ病に対する不適切な治療を行わないことが大切だとしています(小児慢性特定疾病情報センター、2026年10月時点で確認)。

ここが、この病気で遺伝子を調べる大きな意味です。甲状腺ホルモン不応症の方の甲状腺を、抗甲状腺薬や、甲状腺を壊す治療(放射性ヨウ素・手術)でバセドウ病のように抑えると、そのあとの甲状腺機能低下症の治療が難しくなるとされ、こうした治療には注意が必要だとされています[4]。遺伝子検査でTHRB遺伝子の変化が確かめられれば、「なぜ数値が高いのか」に説明がつき、不要な治療を避ける根拠になります。

治療は症状に合わせて行い、脈が速い方には脈を落ち着かせる薬(β遮断薬)が使われることがあります(難病情報センター、レビュー[4])。症状として、甲状腺の腫れ(甲状腺腫)がよくみられ、注意欠如・多動症(ADHD)は、研究によって48〜83%と幅をもって報告されています[4]。

β型(THRB)とα型(THRA)の違い

甲状腺ホルモンの受容体にはβ型とα型があり、よく知られている甲状腺ホルモン不応症はβ型(THRB遺伝子)の変化によるものです。同じレビューでは、甲状腺ホルモン不応症の特徴をもつ方の14%ではTHRBに変化が見つからなかったとされています[4]。つまり、THRBの変化が見つかるのは約86%で、見つからない方もいます。

β型は、多くが常染色体顕性(優性)遺伝で、親が変化をもっていればお子さん1人あたり2分の1の確率で受け継ぎます(難病情報センター、レビュー[4])。変化をもつ受容体が、正常な受容体の働きまで邪魔するしくみ(ドミナントネガティブ)が関わっていると考えられています[4]。ご両親に病気がなく、ご本人の代で新しく起きた変化(新生突然変異)で発症することも少なくないとされています(難病情報センター)。

α型(THRA遺伝子)の変化は2012年にはじめて報告された比較的新しい病気で[6]、甲状腺の数値の現れ方がβ型とは違います。この検査では、β型とα型の両方を調べます。

甲状腺ホルモン不応症の方の妊娠

ポルトガル・アゾレス諸島の甲状腺ホルモン不応症の1家系167人を後ろ向きに調べた研究では、甲状腺ホルモン不応症をもつ母親の妊娠で流産が22.9%と、比べた群(2.0%・4.4%)より多くみられました。また、母親が甲状腺ホルモン不応症で、赤ちゃんは変化を受け継がなかった場合に、赤ちゃんの出生体重が在胎週数に比べて低い傾向がありました[5]。1家系の研究なので、すべての方に当てはまるわけではありませんが、甲状腺ホルモン不応症とわかっている方の妊娠は、内分泌内科と産科の主治医が連携して見ていくことが大切です。

4. 遺伝子がわかると治療の考え方が変わる、そのほかの病気

この検査では、先天性甲状腺機能低下症と甲状腺ホルモン不応症のほかにも、甲状腺ホルモンを細胞に運び込めない病気や、脳からの指令が足りない病気など、原因がわかると治療や見張りの考え方が変わる病気を調べます。

MCT8欠損症(アラン・ハーンドン・ダドリー症候群)

SLC16A2遺伝子は、甲状腺ホルモンを細胞の中に運び込む運び屋(MCT8)の遺伝子です。欧州医薬品庁(EMA)の資料によると、甲状腺ホルモンは脳などの組織に入るときにMCT8を必要とします。この運び屋が働かないMCT8欠損症(アラン・ハーンドン・ダドリー症候群)はX連鎖の病気で、主に男の子に症状が出ます。

この病気には、甲状腺ホルモンのT3に似た薬(Triac、一般名チラトリコール)の臨床試験が行われ[9]、欧州連合では2025年2月に、MCT8欠損症の「末梢の甲状腺中毒症」(体の組織で甲状腺ホルモンが効きすぎている状態)の治療薬として、生まれた時から使える承認を受けました(EMAの公表資料、2026年10月時点で確認)。日本で使えるかは、主治医にご確認ください。原因が確かめられていることが、こうした治療を考える出発点になります。

甲状腺ホルモンを活性化できない病気(SECISBP2)

SECISBP2遺伝子は、セレンを含むたんぱく質(セレノプロテイン)を作るのに必要な遺伝子です。2005年の報告では、この遺伝子の変化を2つもつ方で、甲状腺ホルモンを活性型に変える酵素(2型脱ヨウ素酵素)の働きが下がり、甲状腺ホルモンの代謝に異常がみられました[7]。詳しくは全身性セレノプロテイン欠損症で解説しています。

脳からの指令が足りない中枢性甲状腺機能低下症

甲状腺そのものではなく、脳の視床下部や下垂体からの指令(TRH・TSH)が足りないために起こる甲状腺機能低下症を、中枢性甲状腺機能低下症といいます。国際的な指針は、新生児スクリーニングで見つかる中枢性の頻度を3万人に1人から1万6,000人に1人と報告しています[1]。

この検査では、TSHを作るTSHB、TRHを受け取るTRHR、X連鎖で中枢性甲状腺機能低下症と精巣の大きさの増大を起こすIGSF1[8]、TBL1X・IRS4などを調べます。PROP1・POU1F1・LHX3・LHX4・HESX1・OTX2のように、甲状腺以外の下垂体ホルモン(成長ホルモンなど)も足りなくなる複合下垂体ホルモン欠損症の遺伝子も含まれます。ほかのホルモンの不足が中心のときは、複合下垂体ホルモン欠損症の遺伝子検査も選択肢です。

5. どんな人がこの検査を受けるとよいか

新生児マススクリーニングをきっかけに先天性甲状腺機能低下症と診断された方、FT4が高いのにTSHが下がらないと言われた方、ご家族に同じ甲状腺の病気の方がいる方に向く検査です。数値や見た目だけでは、どの型かを決められないことが多いのが甲状腺の病気です。

新生児マススクリーニングで再検査になり、先天性甲状腺機能低下症と診断された

新生児マススクリーニングで再検査や精密検査になり、治療が必要と診断されたお子さんでは、原因の型を知ることで、一過性の可能性を考えたり、ご家族の次のお子さんへの確率を考えたりできます。精密検査で異常がないと判断された場合は、この検査をすぐに受ける必要はありません。ご家族に同じ病気の方がいる場合や、ほかの体の特徴を伴う場合は、国際的な指針でも遺伝子を調べることが勧められています[1]。

甲状腺が腫れている・家族に同じ甲状腺の病気の人がいる

甲状腺ホルモンを作るしくみの病気は、甲状腺の腫れを伴うことがあり、潜性遺伝なら、きょうだいで同じ病気が起こることがあります(再発率25%[1])。あなたの1回の検査結果が、ご両親・きょうだい・お子さんが自分の状態を知る手がかりになります。

FT4が高いのにTSHが下がらないと言われた

甲状腺ホルモン不応症を疑われている方、バセドウ病と言われたものの数値の組み合わせが合わないと言われた方、ご家族に甲状腺ホルモン不応症の方がいる方です。レビューは、患者さんが見つかったときに一親等のご家族を調べることは役に立ち、費用の面でも効率がよいとしています[4]。

発達の遅れ・筋肉の張りの弱さと、甲状腺の数値の異常がある

甲状腺の数値の異常に、発達の遅れなどの神経の症状が重なっている男の子では、MCT8欠損症(第4章)のように甲状腺ホルモンの運び込みの病気が隠れていることがあります。甲状腺以外の症状が多く、病気をしぼれないときは、下の表のように全エクソーム検査が向くこともあります。

この検査より別の検査が向いている場合

比べる相手は検査の種類です。血液のホルモン検査と症状から、次のように選び分けます。

🔍 血液のホルモン検査・症状から、どのパネルを選ぶか

こんなとき 向いている検査
TSHが高くFT4が低い(新生児マススクリーニングで見つかった先天性甲状腺機能低下症) このページの検査(36遺伝子)
FT4が高いのにTSHが下がらない このページの検査(THRB・THRAを含む)
FT4が低いのにTSHが上がらず、成長ホルモンなどほかの下垂体ホルモンも足りない 複合下垂体ホルモン欠損症の遺伝子検査(このページの検査とは6遺伝子が重なる)
下垂体ホルモンの不足に、視神経の発達の問題などを伴う 中隔視神経形成異常症の遺伝子検査
カルシウムや副甲状腺の異常が中心 副甲状腺機能亢進症の遺伝子検査
生まれつきの難聴が中心 難聴遺伝子パネル検査
生まれてすぐの呼吸の障害が中心 肺サーファクタント機能不全症の遺伝子検査(NKX2-1を含む)
生まれてすぐの糖尿病が中心 MODY・新生児糖尿病の遺伝子検査
甲状腺以外の症状が多く、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)
染色体の数や構造の変化が疑われる 疑う異常に応じて染色体検査(Gバンド法)やマイクロアレイ染色体検査

※どの検査が合うかは、血液検査の結果・症状・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

\ あなたの1回の検査が、ご家族の手がかりに /

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原因の遺伝子の変化がわかったご家族は、同じ変化をもっているかを、遺伝カウンセリングのうえで当院で調べられます。

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6. 調べる36遺伝子と、それぞれでわかる病気

この検査では、甲状腺の形・ホルモンを作るしくみ・脳からの指令・ホルモンの受け取りと運び込みに関わる36の遺伝子を、まとめて調べます。病気の名前と遺伝のしかたは、遺伝性疾患のデータベース(OMIM)の登録にもとづいています(2026年10月時点で確認)。

🧬 甲状腺機能低下症・甲状腺ホルモン不応症の遺伝子検査で調べる36遺伝子

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた
甲状腺ができる・育つ(形の異常に関わる)
PAX8 先天性甲状腺機能低下症(非甲状腺腫性)2型 AD
NKX2-1 舞踏アテトーゼ・甲状腺機能低下症・新生児呼吸窮迫(脳・肺・甲状腺症候群)/良性遺伝性舞踏病/非髄様甲状腺がん1 AD
FOXE1 バンフォース・ラザルス症候群/非髄様甲状腺がん4 AR/AD
NKX2-5 先天性甲状腺機能低下症(非甲状腺腫性)5型/心房中隔欠損7型・心室中隔欠損3型・ファロー四徴症などの先天性心疾患 AD(円錐動脈幹奇形はAR)
GLIS3 先天性甲状腺機能低下症を伴う新生児糖尿病 AR
TSHR 先天性甲状腺機能低下症(非甲状腺腫性)1型/家族性妊娠性甲状腺機能亢進症・非自己免疫性甲状腺機能亢進症 AR/AD
甲状腺ホルモンを作る(甲状腺ホルモン合成障害)
SLC5A5 甲状腺ホルモン合成障害1(ヨウ素の取り込みの障害) AR
TPO 甲状腺ホルモン合成障害2A AR
TG 甲状腺ホルモン合成障害3(自己免疫性甲状腺疾患のなりやすさ3としても登録) AR
IYD 甲状腺ホルモン合成障害4(ヨウ素の再利用の障害) AR
DUOXA2 甲状腺ホルモン合成障害5 AR
DUOX2 甲状腺ホルモン合成障害6 AR
SLC26A4 ペンドレッド症候群/前庭水管拡大を伴う常染色体潜性難聴4 AR
SLC26A7 甲状腺腫を伴う先天性甲状腺機能低下症(2018年に6家系で報告。OMIMの登録は未確認)[11] AR(2つの変化で発症)
脳から甲状腺への指令(中枢性・下垂体)
TSHB 先天性甲状腺機能低下症(非甲状腺腫性)4型(TSHの不足) AR
TRHR 先天性甲状腺機能低下症(非甲状腺腫性)7型 AR
IGSF1 中枢性甲状腺機能低下症と精巣の大きさの増大 X連鎖
TBL1X 先天性甲状腺機能低下症(非甲状腺腫性)8型 X連鎖
IRS4 先天性甲状腺機能低下症(非甲状腺腫性)9型 X連鎖
POU1F1 複合下垂体ホルモン欠損症1型 AD/AR
PROP1 複合下垂体ホルモン欠損症2型 AR
LHX3 下垂体性低身長を伴う感音難聴 AR
LHX4 複合下垂体ホルモン欠損症4型 AD
HESX1 中隔視神経形成異常症 AD/AR
OTX2 複合下垂体ホルモン欠損症6型/症候性小眼球症5型 AD
ホルモンを受け取る・運び込む・活性化する
THRB 甲状腺ホルモン不応症(全身型・顕性)/(全身型・潜性)/(下垂体型) AD(全身型の一部はAR)
THRA 先天性甲状腺機能低下症(非甲状腺腫性)6型(甲状腺ホルモン不応症α型) AD
SLC16A2 アラン・ハーンドン・ダドリー症候群(MCT8欠損症) X連鎖
SECISBP2 甲状腺ホルモン代謝異常(全身性セレノプロテイン欠損症) AR
副甲状腺・カルシウム・そのほか
GNAS 偽性副甲状腺機能低下症1A型(ほかに1B型・1C型・偽性偽性副甲状腺機能低下症など) AD
CASR 家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症1型/新生児重症副甲状腺機能亢進症/常染色体顕性低カルシウム血症1型 AD(新生児重症型はAD・AR)
GCM2 副甲状腺機能亢進症4型/家族性孤発性副甲状腺機能低下症2型 AD/AR
TUBB1 TUBB1関連の常染色体顕性大型血小板減少症 AD
病気との関係を研究中の遺伝子
FOXA2 OMIMに病気の登録なし(甲状腺の病気との関係を研究中) 未確定(研究中)
CDCA8 OMIMに病気の登録なし(甲状腺の病気との関係を研究中) 未確定(研究中)
TRH OMIMに病気の登録なし(中枢性甲状腺機能低下症との関係を研究中) 未確定(研究中)

※病名と遺伝のしかたはOMIMの登録(2026年10月時点)による。AD=常染色体顕性(優性)、AR=常染色体潜性(劣性)、X連鎖=X染色体上の遺伝子。OMIMに病気の登録がない遺伝子は「研究中」としました。

7. 甲状腺の遺伝子検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、36の遺伝子の配列の小さな変化(1文字の置き換わり・小さな欠けや挿入)と、遺伝子の大きな欠け・重複(欠失・重複)です。次世代シークエンサーで、たんぱく質の設計図になる部分(コード領域)と、そのつなぎ目(スプライス部位)を読みます。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

  • ●DUOX2の一部:DUOX2遺伝子のエクソン6〜8は、よく似た遺伝子(DUOX1)があるため、変化を確実に見つけることができません。
  • ●欠失・重複の大きさ:遺伝子まるごとの欠失・重複(血液・口の内側の粘膜)と、連続する2つ以上のエクソンの欠失・重複(血液のみ)を見つけられます。エクソン1つだけの欠失・重複は、見つかることもありますが、ふだんは検出の対象ではありません。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
  • ●見つけられない変化:染色体の一部が入れ替わる変化(転座・逆位)、繰り返し配列が伸びる変化、遺伝子のスイッチの部分(プロモーター)や、遺伝子の奥深く(エクソンから20塩基より離れた場所)の変化、遺伝子の働き方の調節(メチル化)の異常は調べません。
  • ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)を見つけるようには作られていません。
  • ●染色体の数の変化:ダウン症候群など、染色体の数や大きな構造の変化は調べません。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、36遺伝子以外の原因や、この検査で見つけられない変化が残る可能性があります。先天性甲状腺機能低下症のうち甲状腺の形の異常では、遺伝子の原因が見つからないことのほうが多いと考えられています。

8. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。

病的変異が見つかったら、次にできること

わかるだけで終わりにしないために、立場ごとに、次にできることをまとめます。治療は、内分泌内科・小児内分泌科など専門の医療機関で受けていただきます。

  • ●①ご本人(症状がある方):病名がはっきりします。先天性甲状腺機能低下症なら、型によって一過性の可能性を考え、2〜3歳以降の見直しの判断材料になります[1]。甲状腺ホルモン不応症なら、バセドウ病の治療を避ける根拠になり、脈が速いなどの症状に合わせた治療を選べます[4]。ペンドレッド症候群なら難聴の、複合下垂体ホルモン欠損症の遺伝子なら甲状腺以外のホルモンの見張りにつながります。MCT8欠損症では、治療薬を考える出発点になります。
  • ●②症状のないご本人(家族歴で受けた方・保因者だった方):顕性遺伝の甲状腺ホルモン不応症の変化をもっていれば、健康診断などで数値の異常を指摘されたときに、不要な治療を避けられます。妊娠を考えるときは、内分泌内科と産科で一緒に見ていくことが大切です[5]。潜性遺伝の病気の保因者とわかった場合は、パートナーが同じ遺伝子の保因者かを調べると、お子さんへの確率がわかります。
  • ●③子どもを持つときの選択肢:ご家族で原因の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。その病気で出生前診断を行うかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に考えますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。何もせずに出産を迎えることも、そのまま選べる選択肢です。
  • ●④ご家族:ご両親・きょうだい・いとこが同じ変化をもっているかを、ピンポイントで調べられます(カスケード検査)。症状のない方の検査は、ご本人の同意のうえで行います。
  • ●⑤当院でのその後:結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、次にどうするかを一緒に考えます(遺伝カウンセリング料は第10章のとおり)。

子どもに遺伝する確率は?

お子さんに伝わる確率は、原因の遺伝子と遺伝のしかたで決まります。甲状腺ホルモン不応症(THRB)など顕性遺伝の病気では、お子さん1人あたり2分の1です。甲状腺ホルモンを作るしくみの病気の多くは潜性遺伝で、ご両親とも同じ遺伝子の保因者のとき、お子さん1人あたり4分の1です。X連鎖の病気(MCT8欠損症・IGSF1など)では、お母さんが保因者かどうかで確率が変わります。詳しい考え方は遺伝形式とはで解説しています。

この検査の遺伝子のうち、TPO・TG・DUOX2・DUOXA2・SLC26A4・SLC5A5・IYD・TSHB・TSHR・TRHR・PROP1・POU1F1・LHX3・SLC16A2・IGSF1の15遺伝子は、当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)の対象に入っています。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります(単独では受けられません)。妊娠の前に知れば、選べることが増えます。

陰性だった場合

原因が見つからなかった場合、甲状腺の形の異常のように遺伝子の原因が見つかりにくい型である可能性や、36遺伝子以外・この検査で見つけられない変化による可能性があります(第7章)。甲状腺以外の症状が多い場合は、全エクソーム検査などを考えます。治療は、これまでどおり主治医の方針で続けます。

VUS(意義がまだわからない変化)が見つかった場合

VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的と別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

9. 日本の制度(2026年10月時点)

甲状腺ホルモン不応症は、指定難病80に指定されています。難病情報センターのページ(情報更新 令和6年11月)で確認しました。また、小児慢性特定疾病の対象疾病にも、甲状腺ホルモン不応症が掲載されています。

先天性甲状腺機能低下症については、小児慢性特定疾病の対象疾病として、無甲状腺症・異所性甲状腺・甲状腺刺激ホルモン(TSH)分泌低下症(先天性に限る)・それ以外の先天性甲状腺機能低下症が掲載されています(小児慢性特定疾病情報センター、2026年10月時点で確認)。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円で、結果までは2〜3週間です。唾液・口の内側の粘膜・血液のいずれもオンライン診療で受けられます。ほとんどの検査は唾液・口の内側の粘膜で行えます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取唾液・粘膜・血液
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

検体の採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えや品質の低下を防ぐため、ご自身の判断で先に検体を採取しないでください。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。

💴 費用・日数・検体

項目 内容
対象遺伝子 36遺伝子(第6章の表)
調べること 遺伝子の配列(料金に含まれる)/欠失・挿入(料金に含まれる)
検体 血液(EDTA採血管4mL×2本)・抽出DNA・口の内側の粘膜(頬粘膜)・唾液
結果までの期間 2〜3週間
検査費用 税込330,000円
至急オプション 55,000円(結果までの期間が約7日短くなります)
VUS除外オプション 無料(意義がまだわからない変化を報告に含めない)
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
オンライン診療 唾液・口の内側の粘膜・血液のいずれも可能(オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください)

※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

見つかった変化のうち、読み取りの質が十分でないものは、別の方法(サンガー法)で確かめてから報告します。結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたをご覧ください。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。遺伝カウンセリングについては遺伝カウンセリングとはで解説しています。

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11. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【数値だけで決めず、原因から考える】

甲状腺の病気は、血液検査の数値で診断と治療が進むことの多い分野です。けれども、同じ「FT4が高い」でも、バセドウ病と甲状腺ホルモン不応症とでは、すべきことがまったく違います。同じ「先天性甲状腺機能低下症」でも、一過性で薬が要らなくなる型もあれば、きょうだいで繰り返しうる潜性遺伝の型もあります。数値だけでは見えない違いを確かめるのが、遺伝子検査の役割だと考えています。

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。原因がわかれば、ご自身の治療だけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画まで、知ったうえで選べます。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 甲状腺の病気は遺伝しますか?母親から遺伝しますか?

病気によって違います。大人に多い橋本病(慢性甲状腺炎)は、遺伝的ななりやすさに環境の要因が加わって起こるとされ、遺伝子1つで決まる病気ではありません。一方、生まれつきの甲状腺機能低下症の一部や甲状腺ホルモン不応症は遺伝子1つの変化で起こり、型によってお子さんに伝わる確率が決まっています。母親からだけ伝わるわけではなく、父親から受け継ぐこともあります。

Q2. クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)の原因は母親ですか?

母親のせいで起こる病気ではありません。原因の多くは甲状腺の形やホルモンを作るしくみの生まれつきの違いで、誰にでも起こりうるものです。潜性遺伝の型では、症状のないご両親の両方から1つずつ変化を受け継いで起こります。出産の前後にヨウ素を含む消毒薬を使うなど、一時的に甲状腺の働きが下がる原因もあります。

Q3. 新生児マススクリーニングで再検査になり、結果は異常なしでした。この検査は必要ですか?

精密検査で異常がないと判断された場合は、この検査をすぐに受ける必要はありません。治療が必要と診断された場合、ご家族に同じ病気の方がいる場合、ほかの体の特徴を伴う場合に、原因を調べる意味があります。迷う場合は、遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q4. クレチン症は大人になったら治りますか?

原因によって違います。一過性の型では、成長とともに薬が要らなくなることがあります。生まれてすぐの時期に永続性と診断がつかなかった場合は、2〜3歳以降に甲状腺の働きを見直すことが国際的な指針で勧められています。DUOX2などの変化では、症状の出方が人によっても時期によっても大きく違います。遺伝子の原因は、経過を考える手がかりの1つになります。

Q5. 甲状腺ホルモン不応症とバセドウ病の違いは?

どちらもFT4(甲状腺ホルモン)が高くなりますが、よく知られているβ型の甲状腺ホルモン不応症ではTSHが下がらず、正常か高めのままです。甲状腺ホルモン不応症の多くは治療を必要とせず、FT4やFT3が高いという理由でバセドウ病の治療を行わないことが大切とされています。THRB遺伝子を調べると、原因を確かめられることがあります。

Q6. 子どもに遺伝する確率は?結婚や妊娠に影響しますか?

原因の遺伝子と遺伝のしかたで違います。甲状腺ホルモン不応症(THRB)など顕性遺伝の病気では、お子さん1人あたり2分の1です。甲状腺ホルモンを作るしくみの病気の多くは潜性遺伝で、ご両親とも同じ遺伝子の保因者のとき、お子さん1人あたり4分の1です。結婚や妊娠をどうするかは、ご本人とパートナーが決めることです。当院は、パートナーの検査や妊娠したときの出生前診断も含めて、知ったうえで選べるよう支えます。

Q7. ダウン症候群の甲状腺の病気も、この検査でわかりますか?

わかりません。この検査は36の遺伝子の小さな変化と欠失・重複を調べるもので、ダウン症候群のような染色体の数の変化は調べません。染色体の数や構造の変化が疑われる場合は、疑う異常に応じてGバンド法による染色体検査やマイクロアレイ染色体検査などを考えます。

Q8. 保険は使えますか?費用はいくらですか?

当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。この検査は税込330,000円で、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。結果まではおよそ2〜3週間です。

🧬 一度の検査で、甲状腺の病気の原因とご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)や甲状腺ホルモン不応症の原因がわかれば、薬の続け方や不要な治療を避けることだけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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