目次
NIPTで全染色体検査は必要?
1,090人のデータが示す「遺伝子」を見るべき医学的理由
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Q. 全染色体検査(1〜22番)は受けた方がいい?
A. 医学的には推奨されません。2024年に権威ある医学誌『Nature Medicine』で発表された臨床研究(1,090例)では、超音波異常があるハイリスク群であっても、基本トリソミー(13,18,21番)と性染色体以外の「その他の常染色体異常」は1例も見つかりませんでした(0例)。 -
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Q. では、何を検査すべきですか?
A. 「微細欠失」と「遺伝子変異」です。上記の研究では、その他の常染色体異常が0だったのに対し、遺伝子レベルの異常は37例も見つかっています。実在するリスクを調べることが重要です。 -
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Q. 検査の精度は信頼できる?
A. 当院は米国の4大遺伝子検査会社の一角と提携しています。遺伝子検査で最も重要なのは「読み取ったデータの解釈」です。高度な専門技術で、正確な判定を行います。
「せっかくNIPTを受けるなら、全部の染色体(1番〜22番)を調べたほうが安心ではないか?」
多くの妊婦さんがそう考えます。しかし、臨床遺伝専門医の視点から言えば、それは「砂漠で針を探すようなもの」かもしれません。実は、本当に警戒すべきリスクは、染色体の「数」ではなく、もっと細かい「遺伝子」の中に隠れていることが多いのです。
この記事では、なぜミネルバクリニックの最上位検査「ダイヤモンドプラン」があえて全染色体検査を行わないのか。その医学的根拠と、1,090症例のデータに基づく衝撃の事実を解説します。
1. 「全染色体検査」の落とし穴と1,090人のデータ
「全染色体検査」という響きは、すべてを網羅しているように聞こえ、非常に魅力的です。しかし、そこには医学的な「費用対効果」の壁があります。
💡 用語解説:異数性(Aneuploidy)
染色体の数が、本来の2本(ペア)ではなく、1本多かったり(トリソミー)、少なかったり(モノソミー)する状態のこと。「数の異常」を指します。
1,090人の調査で「その他の常染色体」は0例だった
[cite_start]
2024年に権威ある医学誌『Nature Medicine』で発表されたCOATE法の臨床研究 [cite: 1] において、超音波検査で何らかの異常が見つかったハイリスクな妊婦さんを含む1,090人(登録数1,191人のうち解析対象者)を対象に詳細な遺伝子解析を行いました。その結果、どうなったと思いますか?
🔍 1,090人の確定診断結果
全染色体検査で見つかるはずの
「その他の常染色体異常」
0 例
(基本の3つのトリソミー・性染色体異常を除く)
COATE法で見つかった
「遺伝子変異・微細欠失」
46 例
(微細欠失9例 + 単一遺伝子37例)
この研究では、基本の3つのトリソミー(13, 18, 21番)が61例、性染色体異常(ターナー症候群やクラインフェルター症候群など)が28例見つかりました。しかし、それ以外の「その他の常染色体異常(希少トリソミー)」は1例も見つかりませんでした。
つまり、たとえハイリスクな妊婦さんであっても、全染色体(1〜22番)をくまなく調べたところで、医学的に意義のある異常が見つかる確率は極めて低いのです。存在しないものを探すためにコストをかけるよりも、「現実に多数存在するリスク(遺伝子変異や微細欠失)」を調べる方が、生まれてくる赤ちゃんの健康を知る上ではるかに重要です。
「たった1,090人?」ではありません。実は「35,000人分」に匹敵します
一般的なNIPTの臨床試験は、リスクの低い一般妊婦さんを対象に行われるため、数万人集めても「陽性(異常あり)」のデータはごくわずかしか集まりません。
[cite_start]しかし、今回の研究は「超音波で異常が見つかったハイリスク妊婦さん(876名)」を含んだ特殊な集団です。一般の妊婦健診で胎児異常が見つかる確率は約2.5%程度 [cite: 5] ですから、そこから逆算すると、この1,090人(特に異常がある876人)を集めるには、約35,000人の一般妊婦スクリーニングが必要になります。
つまり、実質3.5万人規模のスクリーニングを行っても、「その他の常染色体異常」は見つからなかった。この事実は、全染色体検査の限界を証明する強力なエビデンスと言えます。
2. ダイヤモンドプランは何が違うのか?
当院の「ダイヤモンドプラン」は、この医学的エビデンスに基づいて設計されています。「全染色体」という広くて浅い検査を捨て、「遺伝子」という深く精密な検査を採用しました。
一般的な「全染色体」NIPT
1番から22番までの染色体の「数」だけを広く浅く見ます。しかし、前述のデータの通り、ここから「基本以外の常染色体異常」が見つかる確率は極めて低く、検査としての効率(Yield)は良くありません。
💎 ダイヤモンドプラン(COATE法)
米国の4大遺伝子検査会社の一角が提供する最新技術「COATE法」を採用。染色体の「数」については重要な13/18/21/15/16/22番などに絞り込み、その分、「微細欠失」や「56種類の遺伝子変異」を徹底的に調べます。量より質を重視した、専門医推奨のプランです。
3. 遺伝子検査の真髄は「解釈力」にあり
NIPTを検討されている方にはあまり知られていませんが、遺伝子検査において「シーケンス(塩基配列の読み取り)」と「インタープリテーション(変異の解釈)」は全く別の能力です。
シーケンス自体は、最新の機械(シーケンサー)を購入すれば、どのラボでも同じように「ATGCの配列データ」を出すことができます。
※ATGCとは:アデニン(A)・チミン(T)・グアニン(G)・シトシン(C)という、DNAを構成する4つの塩基のこと。
しかし、読み取った膨大なデータの中から、「どの変異が病気の原因なのか」「どの変異は日本人特有の良性なものなのか」を判断する「解釈」には、膨大な臨床データベースと高度な専門知識(バイオインフォマティクスと臨床遺伝学)が不可欠です。ここが検査会社の腕の見せ所です。
ダイヤモンドプランを担当するのは
米国の4大遺伝子検査会社の一角
ミネルバクリニックが提携しているのは、世界的に見ても有数の実績と技術力を持つ米国の検査機関です。単に機械で読み取るだけでなく、その後の「解釈」において高い信頼性を保持しています。
私(院長・仲田洋美)は臨床遺伝専門医として数多くの遺伝子検査会社を見てきましたが、このラボの出すデータの正確さと解釈の深さは、専門家の目から見ても非常に信頼できるものです。だからこそ、自信を持って患者様にこのダイヤモンドプランを提供できるのです。
4. COATE法だからわかる「3つの深いリスク」
ダイヤモンドプランは、従来のNIPTでは見えなかった「微細な異常」や「遺伝子のキズ」までを高精度に検出します。
① 重要染色体のトリソミー(13/18/21/15/16/22)
基本の3つに加え、流産リスクに関連する15、16、22番などのトリソミーをカバーします。無駄な全染色体検査は行わず、医学的に意義のある染色体にフォーカスします。
② 微細欠失症候群(12か所13疾患)
💡 用語解説:微細欠失(Microdeletion)
染色体の一部分がごくわずかに「欠けている」状態。顕微鏡で見る通常の染色体検査(Gバンド法)では小さすぎて発見できませんが、重篤な疾患の原因となります。
例えば「22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)」は、約2000〜4000人に1人と比較的高い頻度で発生し、心疾患や免疫異常を伴います。
従来の検査法では、微細欠失の陽性的中率は70%台程度と不安定でしたが、当院のCOATE法導入により、陽性的中率は99.9%以上へと飛躍的に向上しました。偽陽性(本当は大丈夫なのに陽性と出る)の不安が極めて少ないのが特徴です。
③ 父親由来の遺伝子変異(デノボ変異)と症候性自閉症
ここが非常に重要です。ダウン症のリスクは「母親の年齢」に依存しますが、自閉症などの遺伝子疾患の一部は「父親の年齢」とともにリスクが上昇します。
(図:精子の細胞分裂と突然変異の蓄積イメージ)
男性の精子は生涯作られ続けますが、細胞分裂を繰り返す過程でコピーミス(突然変異)が蓄積します。これを「新生突然変異(デノボ変異)」と呼びます。
ダイヤモンドプランでは、父親の加齢に関連する56の遺伝子を検査します。これらの中には、重篤な「症候性自閉症」(重い知的障害や奇形、てんかんなどを合併するタイプ)の原因となる疾患(レット症候群、ソトス症候群など)が多数含まれています。
このデノボ検査の陽性的中率も99.9%以上です。米国の4大遺伝子検査会社が責任を持って解析するため、世界トップレベルの精度で「見えないリスク」を可視化します。
5. ミネルバクリニックだけの「トリプルリスクヘッジ」
「検査項目が多いのは分かったけれど、もし陽性だったらどうすればいいの?」
NIPTは検査を受けて終わりではありません。万が一の時、患者様を路頭に迷わせないために、ミネルバクリニックは他の無認可施設にはない「3つの保証(トリプルリスクヘッジ)」を完備しています。
1. 金銭的リスクヘッジ(互助会)
検査時に「互助会」(会費8,000円・非課税)にご加入いただくことで、陽性時の確定検査(羊水検査)費用を上限15万円(税込16万5千円)まで全額カバーします。ミネルバクリニックはNIPT取り扱い当初から、患者様の経済的負担を減らすこのシステムを運用しています。
2. 時間的リスクヘッジ(院内完結)
ここが大きな進化です。2025年6月より産婦人科を併設し、確定検査(絨毛検査・羊水検査)を自院で実施可能になりました。非認証施設でありながら、検査から確定診断までワンストップで完結できる日本でも稀有なクリニックです。陽性後に他院を探して予約を取り直す「たらい回し」のストレスがありません。
3. 心理的リスクヘッジ(専門医サポート)
当院は臨床遺伝専門医が院長を務めるクリニックです。検査前のカウンセリングから、陽性時のフォローアップまで、専門医が直接担当します。さらに24時間連絡可能な体制を整えており、不安な夜も患者様に寄り添い続けます。
さらに安心!新しい2つの取り組み
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🔍 NIPT前の4Dエコー(2022年11月〜)
検査当日に胎児の状態を確認してから採血を行います。赤ちゃんが元気に動いている姿を見てから検査を受けられるため、安心感が違います。 -
💸 安心結果保証制度(2025年1月〜)
胎児のDNA量が不足して検査結果が出ず(再検査)、その間に残念ながら流産となってしまい再採血ができない場合、診断書をいただければ検査代金を全額返金いたします(加入料6,000円)。流産が多い時期だからこそ、患者様の気持ちとお財布に寄り添うシステムを作りました。
よくある質問(FAQ)
🏥 臨床遺伝専門医へのご相談
1200人のデータが示す「本当に調べるべきリスク」とは。
全染色体よりも深い、遺伝子レベルの検査で、より確実な安心をお届けします。
参考文献
- [1] Zhang J, et al. Prospective prenatal cell-free DNA screening for genetic conditions of heterogenous etiologies. Nat Med. 2024. [Nature Medicine]
- [2] Wapner RJ, et al. Chromosomal microarray versus karyotyping for prenatal diagnosis. N Engl J Med. 2012. [NEJM]
- [3] Kong A, et al. Rate of de novo mutations and the importance of father’s age to disease risk. Nature. 2012. [PubMed]
- [4] National Institute of Neurological Disorders and Stroke. Autism Spectrum Disorder Fact Sheet. [NIH]
- [5] Mai CT, et al. National population-based estimates for major birth defects, 2010-2014. Birth Defects Res. 2019. [PubMed]

