染色体の異常(染色体不均衡)とは?

 

文責 仲田洋美(総合内科専門医、がん薬物療法専門医臨床遺伝専門医

東京でNIPTをはじめとする遺伝子検査を提供するミネルバクリニックです。新型出生前診断とは、「母体から採血し、その血液を検査することにより胎児の染色体異常を調べる検査」のことをいいます。新型出生前診断という名称自体は日本での通称名であり、母体血清マーカ―テストなどの従来の血液による出生前診断と比較して感度特異度からみる検査自体の精度がきわめて高い為、従来の出生前診断と区別してこのように呼ばれています。正式には非侵襲的出生前検査といいます。

出生前診断を検討されている方のために、赤ちゃんの先天異常の原因の一つである染色体の異常(染色体不均衡)とは?についてお伝えしたいと思います。

染色体の異常(染色体不均衡)の原因とは?

染色体異常には数的異常(異数性)と構造異常があります。

1つまたは複数の常染色体・性染色体、あるいはその両方が同時に関与していることもあります。
染色休異常の全頻度は生産児154人あたり1人程度とされており、その影響は臨床医学にとっても社会にとっても非常に大きいものです。
異数性が生じる原因は完全に理解されているわけではないのですが、最も一般的な染色体のメカニズムは減数分裂時の不分離です。

染色体分離の異常

配偶子(精子、卵子といった生殖細胞)ができるとき、減数分裂をするのですが、その際に分け方に失敗してしまうことをさします。
ヒトで最も多い変異は、染色体の分離に関連したもので、典型的には不分離が生じた染色体を2コピー持つか、1コピーも持たない異常な配偶子が形成されます。
2段階の減数分裂のどちらかの段階でおこるのですが、通常は第一減数分裂のときとされています。
第一減数分裂時の柑同染色体対の正確な分離は、 比較的単純そうに見えるかもしれませんが、実際には
2つの相同染色体が並んでお互いに密接に結合(対合といいます)
紡錘休と相互作用
最終的に切り離されて反対極に移動
別々の娘細胞に入る
という、正確な時間的・空間的制御が求められる複雑で巧妙なものなのです。
染色体対の不分離の起こりやすさは、正確な対合を維持するために不可欠な、第一減数分裂時の組換えの頻度または位置、あるいはその両方と強く関連する。
組換えが非常に少ない(あるいはまったくない)染色体対や、セントロメアまたはテロメアに非常に近い位置での組換えがある染色体対は組換えの頻度や位置がより一般的な染色体対に比べて不分離を起こしやすくなっています。
染色体不分離は、接合子形成後の体細胞分裂時にも起こる可能性があります。染色体不分離が初期卵割時に起きた場合には、臨床的にはモザイク(mosaicism)となる可能性があります。

生殖細胞ではない体細胞で不分離を起こすこともあるのですが、稀です。
一部の悪性細胞株や培養細胞では、体細胞分裂時の染色休不分離により、高度に異常な核型が生じる場合もあります。

染色体異常症候群

ゲノムには欠失や重複を起こしやすいホットスポットがあるため、こうした部位がかかわっている場合です。

特発性(原因が明らかではない)

典型的には配偶子ができるときの新生突然変異です。

不均衡型家族性染色体異常

ゲノムインプリンティングを受ける領域が関わる

ひとくちに染色体異常の原因といっても、みなさんがイメージするのはダウン症候群かもしれませんが、医学的にはたくさんあります。

異数性とは?

臨床上重要な染色体異常のなかで最も一般的なのは、染色体の数が多かったり少なかったりする染色体数の異常で異数性(aneuploidy)と呼ばれます。
異数性染色体異常は常に、身体的異常か精神発達異常あるいはその両方を伴います。

異数性は、 ヒトの染色体異常症のなかで最も多く、全妊娠の少なくとも5%にみられるものです。
異数性染色体異常の患者のほとんどが、特定の染色体が正常の1対(2本)ではなく3本あるトリソミー(trisomy)か、特定の染色体が1本しかないモノソミー(monosomy)のいずれかであり、モノソミーの方
が少なくなっています。
常染色体モノソミーは細胞自体が生きていけないので死滅してしまうためです。

トリソミーゲノムのどの染色体にも起こりうるのですが、1本の完全な染色体のトリソミーがある場合に胎児の間に致死とならないことは稀です。
生産児に最もよくみられるトリソミーは21トリソミー(trisomy21)であり、ダウン症候群の患者の95%にみられます。

生産児にみられる他のトリソミーとしては、18トリソミーエドワーズ症候群)と13トリソミー(パタウ症候群)があります。
トリソミーの重症度はその染色体に含まれる遺伝子の数と相関しているようで、一番少ないのが第21番染色体、次が第18番染色体、その次が第13番染色体、という順だからこの3つの染色体のトリソミーは生まれてくることができるのだとされています。

それよりも遺伝子数が多い常染色体トリソミーは、ほとんどの場合致死だと推定されますが、稀にモザイクで生まれてくることがあります。

妊娠される一番おおいトリソミーは実は、第16番染色体となっていますが、こちらはほとんど流産してしまうのであまり有名ではありません。

1本の完全な染色体のモノソミーはほぼ必ず致死となるのですが、たった一つの例外として、Turner症候群と呼ばれるX染色体のモノソミーがあります。

染色体の構造異常とは?

染色体構造の再構成は、染色体の切断、再結合交換にの異常な組み合わせにより異常が生じたものです。
再構成はさまざまなしくみで起こりうるのですが、すべてを合わせても異数性異常より頻度は少なくなっています。
全体として、染色体の構造異常は新生児約375人あたりl人に生じると報告されています。
数的異常と同じく、構造異常も個人の全細胞に存在している場合と.モザイクとして存在している場合があります。
染色体構造の再構成(構造異常)は、ゲノムに正常な染色体構成要素が完全にそろっている均衡型(balanced)と、過剰や欠失がある不均衡型(unbalanced)に分類されます。

不均衡型構造異常

不均衡型構造異常は、生産児約1、600人あたりに1人の頻度で検出されるとされています。
複数の遺伝子の欠失あるいは重複、一部の症例ではその両方があるため、表現型は異常となる可能性が高くなります。
1本の染色体の一部の重複は、その断片に含まれる遺伝子の部分トリソミーを生じ、 一部の欠失は部分モノソミーを生じることになります。
一般的には正常な遺伝子品の均衡を乱すあらゆる変化は異常な発達を引き起こす可能性があります。

欠失

染色体断片を失う欠失(deletion)は染色体の不均衡を生じます。)。相同部位の1つは正常で、 もう1つが欠失している染色休欠失を有す
る人はその欠失断片上に存在する逍伝情報がモノソミーとなっていることになります。
臨床的な影響は、通常はハプロ不全により引き起こされる。
ハプロ不全というのは、遺伝物質が1コピーになることにより正常な
ら2コピーの遺伝物質が担っている機能を果たせなくなってしまうことをさしています。
臨床的な重症度は、欠失した断片の大きさや、欠失した個々の遺伝子の数と機能によって決まります。
細胞遺伝学的に検出可能な常染色体欠失は、生産児約7、000人あたり1人の頻度でみられる。こうした異常は顕微鏡では検出できず、マイクロアレイ染色体検査法により検出される小さな欠失の頻度はもっと高いのですが、多数のバリアントの臨床的重要性はまだ解明されていないものがたくさんあります。
欠失は染色体の端部(terminal)や、染色体腕の中間部
(interstitial)で起こりやすくなっています。欠失は、単に染色体が切断され、そのセントロメアを有しない染色体断片が失われることで生じるためです。数々の欠失が形態異常を有する患者や知
的障害を有する患者そして出生前診断の過程で同定されています。

重複

一般的に重複(duplication)は欠失に比べて臨床的影牌が少ないと考えられていますが、配偶子における重複は染色休不均衡(すなわち部分トリソミーなど)を生じるほか,重複の原因となった染色体の切断により遺伝子が損傷されることもあるため,重複も多くの場合何らかの表現型異常を引き起こします。

*その他、いろいろな構造異常があるのですが、順番に追記します。

新生児における染色体異常の頻度

全体 1/154生産児(生きて生まれた赤ちゃんという意味です)
異数性異常 1/263
性染色体 1/475
常染色体 1/700
構造異常  1/375
均衡型  1/500
不均衡型 1/1600
と報告されています。(トンプソン&トンプソン遺伝医学第2版p79)

 

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