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「赤ちゃんに先天異常があったらどうしよう」「奇形児が生まれる原因は何だろう」——妊娠中にそうした不安を抱えて、夜中にこの言葉を検索される方は少なくありません。まずお伝えしたいのは、先天異常の多くは、誰のせいでもなく起こるということです。この記事では、先天異常とは何か、どのくらいの割合で起こるのか、原因や種類を、臨床遺伝専門医の立場から、正確に、そして不安をあおらない言葉で整理してお伝えします。
- ➤ 先天異常とは、生まれつきの形や機能の違いを広く指す言葉であること
- ➤ 赤ちゃんのおよそ3〜5%にみられ、決してまれではないこと
- ➤ 原因の多くは特定できず、「母親のせい」ではないこと
- ➤ 染色体・遺伝子・環境がどう関わるのか
- ➤ 出生前にわかること・わからないこと、検査で確かめる方法
先天異常とは?まず言葉の意味から
はじめに結論からお伝えします。先天異常とは、生まれる前に生じた原因によって、生まれつき体の形や働きに違いがある状態を広く指す言葉です。英語ではbirth defectと呼ばれます。出生前、生まれたとき、あるいは生後しばらくしてから気づかれることもあります。
ここで大切なのは、「先天異常」がとても幅の広い言葉だということです。目に見える形の違い(形態異常)だけでなく、見た目には分からない体の働きの違い(機能異常)も含みます。ひとくくりに語られがちですが、実際には数え切れないほど多様な状態が、この一語のなかに含まれています。
「形の違い」と「働きの違い」の2つに大きく分かれる
先天異常は、大きく2つのグループに分けて理解すると整理しやすくなります。ひとつは体の形にあらわれる先天奇形(先天的な形態異常)、もうひとつは体の働きにあらわれる機能的な違いです。心臓や手足、口唇口蓋の形などにあらわれるものが前者、代謝や神経・筋肉、内分泌、血液、免疫などにかかわるものが後者にあたります。
先天奇形…生まれる前に生じた、体の形の違いのこと。「奇形」は医学の専門用語ですが、日常語としては強い響きを持つため、傷つく方もいらっしゃいます。当院では、その言葉の重みに配慮しながら説明することを大切にしています。
形の違いをすべて「異常」と呼ぶことにも、本来は慎重であるべきです。ここでは検索して情報を探しておられる方に届くよう一般的な用語を用いますが、その背景にこうした配慮があることを、まずお伝えしておきます。
先天異常の割合・確率はどのくらい?
受精した1個の細胞から、心臓や脳、手足のそろった赤ちゃんの体ができあがるまでの過程は、想像を超えて複雑です。それでも大多数の赤ちゃんは無事に育ちますが、ひとつひとつの工程が精密であるがゆえに、一定の割合で違いが生じます。
個々の疾患そのものはまれでも、先天異常をすべて合わせると、その頻度は決して低くありません。世界保健機関(WHO)は、先天異常はおよそ33人に1人(約3%)の新生児にみられると報告しています[1]。定義や調査方法、追跡する期間によっても変わり、生後しばらくして分かるものまで含めると、おおむね3〜5%とされることが多いものです。
「3〜5%」を高いと感じるか低いと感じるかは、人によって違います。ただ、この数字には軽いものから重いものまで、あらゆる状態がまとめて含まれている点に注意が必要です。
生活にほとんど影響しない小さな違いも、丁寧な医療的サポートを要するものも、すべて同じ「3〜5%」の中にあります。この一語だけで、赤ちゃんの将来を思い描くことはできません。
なお、先天異常は乳幼児期(0〜4歳)の死亡原因として上位を占めることが、日本の人口動態統計でも示されてきました。数字としては重く受け止められがちですが、これは医療の進歩でほかの原因による死亡が大きく減った結果、相対的に順位が上がったという側面も持っています。医学の発展により、以前は難しかった状態にも、いまでは多くの治療やサポートの選択肢があります。
奇形児が生まれる原因は? ― 多くは「原因不明」
「なぜ生まれたのか」という問いは、当事者にとって最もつらい問いです。正直にお答えすると、先天異常の原因の多くは、現在の医学でも特定できません。原因が分かるものを大きく分けると、染色体の変化、単一の遺伝子の変化、環境要因、そしてこれらが複雑に絡み合ったものになりますが、これらで説明できるのは全体の一部にとどまります[2]。
染色体の変化…全体のおよそ1割前後。ダウン症候群(21トリソミー)などが含まれます。
単一遺伝子の変化…数%程度。1つの遺伝子の変化が原因となるものです。
環境要因…感染や一部の薬など。全体からみると少数です。
原因不明・多因子…最も多いグループ。複数の要因がわずかずつ関わると考えられています。
つまり、「はっきりした一つの原因」が見つかることのほうが、むしろ少数派なのです。染色体を調べても違いが見つからないこともあります。だからこそ、原因を一つに決めつけて誰かを責めることには、科学的な根拠がありません。
⚠️ 大切なこと:先天異常のあるお子さんが生まれたとき、「母親のせい」「あのとき○○をしたから」という考えが流布することがあります。しかし多くの場合、これは誤りです。ご自分を責める必要はありません。
先天異常=遺伝、ではありません
よくある誤解として、「先天異常はすべて遺伝する」というものがあります。これは正しくありません。一般の方だけでなく、医療関係者のあいだでも見られる思い込みですが、親から子へ受け継がれる形の遺伝病は、実際には多くありません。
「体質を受け継ぐこと」と「病気が遺伝すること」は別
先天異常には、遺伝子や染色体の変化がかかわるものもあります。ただし、その変化が親から受け継がれたとは限りません。たとえばダウン症候群の多くは、ご両親の染色体には変化がなく、赤ちゃんに新しく生じたものです。「遺伝子がかかわる」ことと「親から遺伝する」ことは、同じではないのです。
また、体の設計図である遺伝子は、いつ・どの細胞で・どれくらい働くかまで精密に制御されています。この制御のどこかにたまたまエラーが起こると、脳や心臓が形づくられる大切な時期に影響し、先天異常につながることがあります。これは遺伝形式のはっきりした遺伝病とは、性質が異なります。
染色体異常…遺伝子がぎっしり並んだ「染色体」の数や形の変化。くわしい解説はこちら。
単一遺伝子疾患…1つの遺伝子の変化が原因となる状態。単一遺伝子疾患のページもご覧ください。親から受け継ぐ場合と、赤ちゃんに新しく生じる場合の両方があります。
環境が関わる先天異常 ― 感染・薬・アルコール
受精からおよそ3か月までは、臓器が急速に形づくられる器官形成期です。この時期に外からの影響を受けると、体の形づくりに違いが生じることがあります。ただし、あとで述べるように、影響があるものは限られており、日常の多くの行動は心配ありません。
感染症・一部の薬
風疹、サイトメガロウイルス、トキソプラズマなどは、感染する時期によって赤ちゃんに影響することがあります。また、母親が服用した場合に影響しうる薬もあります。抗けいれん薬の一部や、血圧を下げる一部の薬などが知られていますが、こうした薬は限られており、多くの薬は妊娠中でも安全に使えます。自己判断で中止せず、必ず主治医にご相談ください。
💡 X線について:妊娠中のレントゲン(1回の単純撮影)であれば、胎児への影響は心配いりません。健診で撮影が必要になっても、過度に不安になる必要はありません。
アルコールと胎児アルコール症候群
妊娠中の飲酒については、はっきりお伝えできることがあります。「ここまでなら安全」という量は分かっていません。米国では、原因のはっきりした発達の遅れの中で、胎児アルコール症候群が最も多いとされます[3]。子宮内での発育の遅れ、生後の低身長、発達の遅れ、特徴的な顔つきなどを伴います。ですから、妊娠中は飲酒を避けるのが望ましいとされています。
一方で、妊娠に気づく前にごく少量を1〜2回口にしていたとしても、それだけで先天異常と結びつけるのは適切ではありません。過ぎたことを悔やみ続けるより、これからできることに目を向けていただければと思います。
先天異常の種類 ― 単発のものと、多発奇形症候群
先天異常には、体の1か所だけにみられるものと、複数の部位にまたがってみられるものがあります。後者のうち、解剖学的に離れた複数の場所に、いくつもの形の違いが分布する場合を「多発奇形症候群」と呼びます。「多発奇形症候群とは」「多発奇形 いつわかる」といった検索が多いのも、この状態への関心の高さを示しています。
複数の部位に違いがみられる場合、単一遺伝子疾患や染色体の変化がかかわっている可能性が、相対的に高くなります。医師は、成長の様子、体の各部のバランス、左右対称かどうか、筋緊張の状態などから、違いの組み合わせをみて臨床的に病名を推定し、必要に応じて遺伝子検査や染色体検査で確定診断を行います。
多発奇形症候群…離れた複数の部位に、複数の形の違いが同時にみられる状態。一つひとつを別々に考えるのではなく、「組み合わせのパターン」として捉えることで、背景にある原因(多くは特定の症候群)にたどり着きやすくなります。診断には専門的な評価が必要です。
出生前に何がわかる? ― NIPTと確定検査
「生まれる前に調べられないのか」というご質問をよくいただきます。出生前の検査で分かることには範囲があり、すべての先天異常が事前に分かるわけではありません。ここは正確に知っておいていただきたいところです。
NIPTでわかること
NIPT(新型出生前診断/非侵襲的出生前検査)は、お母さんの血液に含まれるDNAのかけらを調べる検査です。採血のみで流産の心配がなく、主に次のようなことを調べられます。
染色体の数の変化…21・18・13トリソミーなど。
染色体の構造の変化…微細な欠失など、検査プランによって対象が異なります。
単一遺伝子疾患…一部の項目について、対応するプランがあります。
ただし、NIPTは可能性を絞り込むための検査(非確定的検査)です。陽性となった場合には、必ず確定検査に進んでいただく必要があります。検査の範囲について、くわしくはスーパーNIPTのページや全染色体・微細欠失検査のページをご覧ください。
確定検査 ― 羊水検査・絨毛検査
確定検査は羊水検査と絨毛検査で、赤ちゃん由来の細胞そのものから核型(染色体の並び)を確認します。生まれたあとに確かめる場合も、染色体検査(Gバンド法)で確認します。出生前にわかるのは主に染色体や一部の遺伝子の変化であり、体の細かな形の違いのすべてが分かるわけではない点は、あらかじめ理解しておいていただきたいところです。
当院でできること
ミネルバクリニックは臨床遺伝専門医が運営し、ご相談から検査、結果のご説明、その後のフォローまで終始責任をもって支援するクリニックです。2025年6月に産婦人科を併設し、確定検査まで院内で行える体制を整えました。
🏥 当院の検査・サポート体制
ご相談から結果のご説明まで、専門医が一貫して関わります
NIPTから確定検査までを院内で。転院の必要がありません
確定検査は基本的に日曜日か祝日に実施。遠方の方も予定を立てやすくなります
特定の選択へ誘導せず、ご自身で選べるよう情報をお伝えします
遠方の方もご相談いただけます
結果が出たあとの時間こそ、いちばん支えが必要な時期だと考えています
検査前後の遺伝カウンセリングは、臨床遺伝専門医が担当します。また、当院でNIPTを受けられる方には互助会(8,000円)にご加入いただき、陽性となった場合の羊水検査・絨毛検査の費用に充てられます。オンラインNIPTにも対応しています。
まとめ
- • 先天異常とは:生まれつきの体の形や働きの違いを広く指す言葉で、内容はきわめて多様
- • 割合・確率:新生児のおよそ3〜5%にみられ、決してまれではない
- • 原因:多くは特定できず、「母親のせい」ではない
- • 遺伝との関係:「遺伝子がかかわる」ことと「親から遺伝する」ことは別
- • 環境要因:影響しうるものは限られ、多くの薬やX線は過度に心配しなくてよい
- • 検査:NIPTは可能性を絞り込む検査、確定は染色体検査による。すべてが事前に分かるわけではない
先天異常という言葉は、どうしても不安を呼び起こします。けれど本当に大切なのは、正確な知識で、根拠のない自責や不安から自由になることだと私たちは考えています。気がかりなことがあれば、どうかお一人で抱え込まず、ご相談ください。
よくある質問(FAQ)
🏥 ミネルバクリニックへのご相談
赤ちゃんのことで眠れない夜を過ごしていらっしゃる方も、検査を受けるかどうか迷っていらっしゃる方も、どうぞお気軽にご相談ください。臨床遺伝専門医が、答えを押しつけずにご一緒に整理します。
🏥 赤ちゃんのご不安についてのご相談も承ります
✓ 臨床遺伝専門医が運営し、終始責任をもって支援します
✓ 産婦人科併設で、NIPTから確定検査まで院内対応(2025年6月〜)
✓ 確定検査は基本的に日曜・祝日に実施
✓ 中立・非指示的な遺伝カウンセリングで、ご自身の決定に寄り添います
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参考文献
- World Health Organization. Congenital disorders. [WHO]
- Feldkamp ML, Carey JC, Byrne JLB, Krikov S, Botto LD. Etiology and clinical presentation of birth defects: population based study. BMJ. 2017;357:j2249. [PubMed]
- Williams JF, Smith VC; Committee on Substance Abuse. Fetal Alcohol Spectrum Disorders. Pediatrics. 2015;136(5):e1395-e1406. [PubMed]
- 出生前検査認証制度等運営委員会「NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)とは」 [公式サイト]



