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染色体検査法:G分染法(Gバンド)

染色体検査法:G分染法(Gバンド)

正常男性のGバンド

染色体のバンドとは、染色体を色素で染色した際に生じる、染色体の長さ方向に沿って交互に並ぶ明暗のある領域のことで、隣接するセグメントと明確に区別される部分と定義されています。

G分染法

染色体異常を検出するための最も古いかつ、代表的な染色法がGバンドです。羊水検査では主にGバンドで染色体解析(核型検査)がなされます。

ヒトにみられる24種類の染色体(1~22、X,Y)は、細胞遺伝学レベルで特異的な染色をすることにより簡便に同定することができます。

最も一般的な染色法はGiemsa分染法 G分染法(G-banding)で、1970年代初頭に開発され、研究および臨床診断のために広く用いられるようになり、今でも十分用いられている全ゲノム解析法です。これをGバンドと呼んでいます。

核型を可視化するためには、スライドガラス上で増殖する細胞をコルヒチンのような紡錘体抑制作用をもつ薬物によって有糸分裂中期で細胞分裂を強制的に停止させ、それらをギムザ染色することにより標本を作製します。従来は白黒反転した染色体の写真を撮影し、紙の上に切り貼りして核型を分析していました。

一般にバンドは、遺伝子が多いインターバンド(バンドとバンドの間の明るい部分)に比べて、G-C含有量が少なくなっています。ギムザ染色の前に染色体を87℃で10分処理すると、Gバンディングとは逆のRバンディングと呼ばれるパターンが生じることがあります。Rバンディングはユークロマチン領域を染色することができます。

染色体の模式図

G分染法はゲノムの構造的や数的な異常の検出、特性を評価するための代表的な染色方法で、先天性疾患の出生後あるいは出生前の診断に利用するだけではなく、がんや白血病・リンパ腫といった後天的疾患の臨床診断にも用いられています。

G分染法および他の染色法により、 個々の染色体とそのバリアントあるいは異常を国際的に承認された染色体分類の記載法を用いて示すことができます。
最新の国際染色体分類記載法は、ISCN 2016: An International System for Human Cytogenomic Nomenclature (2016)でご覧になれますので、ご興味ある方はお買い求めの上、ご覧ください。

図は分裂中期の正常ヒト染色体のバンドパターンの模式図で、染色体を同定するのに参照する淡染バンドと濃染バンドの交互パターンを示しています。
濃染バンドは、DNAレベルでATが比較的多い遺伝子密度が低い領域、淡染バンドは、GCに富んだ遺伝子密度が高い領域と考えてよいです。

第5~7染色体の詳細を示した図ですが、それぞれの腕にはセントロメア(中心)からテロメア(尾部)に向かって番号が付けられています。こうして領域を基本にした各バンドに階層的に番号を振る方法で特定のバンド明確に区別して記述することが可能となりました。

ヒト染色体は、 分裂中期に一次狭窄として観察できるセントロメア(centromere)の位置によって容易に識別できる3つのタイプに分類されます。

1.中部着糸型(中部動原体型)
染色体のほほ中心にセントロメアがあり、両腕が同じくらいの長さ。1・3・16・19・20番染色体がこれに該当します。
2.次中部着糸型(次中部動原体型)
セントロメアが染色体の中心からややずれた位置にあり、両腕の長さが明らかに異なっているもの。
3.端部着糸型(端部動原体型)(アクロセントリック染色体)
セントロメアが一方の末端近くにある。
13、14、15、21、22番染色体とY染色体が該当します。これらの短腕の末端部には、幅の狭いストーク(stalk、二次狭窄とも呼ばれます)を介してクロマチンが凝縮したサテライトと呼ばれる小さな構造物が付着しています。この5種類の染色体対のストークにはさまざまな反復配列とともに、 リボソームRNAの遺伝子が数百コピーも含まれています。

いくつかの染色体の特定の部位では脆弱部位(fragile site)と呼ばれる非染色性のギャップが観察され、局所的なゲノム不安定性を示します。一般的な脆弱部位は80以上知られていて、その多くは継承しうるバリアントです。従来よりcommon fragile site (CFS)として知られている染色体脆弱部位というのは、低容量の複製ポリメラーゼ阻害剤アフィディコリン処理によって染色体切断が観察される領域のことをさし、複製起点の発火が不十分なため複製後期において未複製のままM期に突入してしまい、結果として切断が誘発されると考えられています。

脆弱部位の一部は特定の臨床疾患に関連しています。臨床的重要性が最もよくわかっているのは脆弱X症候群において観察されるX染色体長腕の末端近くの脆弱部位で、特徴的な症状をもち比較的頻度の高いX連鎖の知的障害の男性と、同じ遺伝学的異常をもつ女性保因者で見られます。

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この記事の筆者

1995年医師免許取得。血液・呼吸器・感染症内科を経て、臓器別・疾患別の縦割りの医療の在り方に疑問を感じ、人を人として”全人的”に診療したいという思いを強くし、臓器を網羅した横断的専門医となり、2010年にがん薬物療法専門医取得(2019年現在全国1200人程度)。臓器を網羅すると遺伝性がんへの対策が必要と気づき、2011年に臨床遺伝専門医取得(2019年現在全国1000人程度)。遺伝相談はセンシティブな分野にもかかわらず、昼間の短い時間しか対応できない大病院のありかたに疑問を感じて、もっと必要な人がハードルを感じずに診療を受けられるようにしたいと2014年12月に開業。以来、全国から大学病院でも難しい内容の対応を求める人々を受け入れ、よろづお悩み相談所として多くの人々の様々な”家族(計画)の問題”を改善に導く。

著書に”女性のがんの本当の話”(ワニブックス)、”遺伝するがん・しないがん”(法研)がある。
少ない専門家で、正直で嘘のない言葉選びから週刊誌等の取材も多く、医療系の特集に時折コメントが掲載。(週刊現代、週刊ポスト、週刊新潮など)。
テレビ出演も時々あり、小林真央さんの病状を市川海老蔵さんが初めて記者会見した日、フジテレビの午後4時台のニュース番組に生出演して解説。その他TBS, AbemaTVなど出演。

一人一人の事情に合わせた個別対応をするべく、しっかり時間を取って本当のニーズは何かを聞き取りすることを大切にしている。短い時間でもお互いが出会ったことが相手の人生に大きな意味があるような医師患者関係の構築を理想として日々精進。

患者さんが抱えている問題を解決するにはどうしたらよいのかを考えて医師歴8年目に法学部に学士入学した程度に”凝り性”。女医が少なかった時代に3人の母親として難関専門医を3つ取得して社会進出を続けた経験から、女性のライフスタイルを医学以外の部分でも支援したいと願っている。
いろんな人生経験から心に響く言葉を投げかけるため、”会うと元気になる”ということで有名。飼いネコ4匹。

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