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スクリーニング検査とは?目的・確定診断との違い・感度と特異度を臨床遺伝専門医が解説

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。

スクリーニング検査とは、自覚症状のない人の集団から、ある病気にかかっている可能性が高い人を「ふるい分け」するための検査です。病気を確定させる検査ではなく、精密検査(確定診断)を受けたほうがよい人を選び出す「一次のふるい」にあたります。この記事では、スクリーニング検査の意味と目的、確定診断・精密検査との違い、種類と具体例、そして検査の正確さを表す感度・特異度・陽性的中率までを、臨床遺伝専門医の視点で解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約12分
🔬 定義・確定診断との違い・感度と特異度
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. スクリーニング検査とは、ひとことで言うと何ですか?

A. 症状のない集団を対象に、簡便な検査で「病気の可能性がある人」と「その可能性が低い人」をふるい分ける検査です。結果はあくまで可能性の高低であり、病気の確定ではありません。ふるい分けで「陽性(要精査)」となった人は、精密検査(確定診断)に進んで初めて病気の有無がはっきりします。早期の診断・治療や適切な介入につなげ、対象集団の健康上の利益を得ることが目的です。

  • ➤正体 → 無症状の集団から「要精査の人」をふるい分ける一次の検査。診断そのものではない
  • ➤目的 → 早期の診断・治療や適切な介入につなげ、対象集団の健康上の利益を得る
  • ➤確定診断との違い → 陽性なら精密検査へ。確定診断で初めて病気の有無が決まる
  • ➤正確さの指標 → 感度・特異度・陽性的中率。的中率は「有病率」で大きく変わる
  • ➤限界 → 偽陽性・偽陰性・過剰診断があり、100%ではない

🔎 スクリーニング検査の基本情報

項目 内容
読み方・別名 すくりーにんぐけんさ/選別試験・ふるい分け試験(英:screening)
定義 自覚症状のない人を対象に、迅速に実施できる検査や手技で、無自覚の疾病や異常がある人を暫定的に識別すること[1]
位置づけ 診断ではなく、精密検査(確定診断)を受けるべき人を選び出す一次のふるい
対象 症状のない集団(新生児・妊婦・成人など)。症状のある人への「診断の検査」とは目的が異なる
代表例 がん検診、新生児マススクリーニング、新生児聴覚スクリーニング、出生前スクリーニング(NIPT・母体血清マーカー・胎児超音波)など
正確さの指標 感度・特異度・陽性的中率・陰性的中率。有病率によって的中率が変わる

※本記事は一般の方と医療に関わる方の両方に向けた用語解説です。特定の検査を勧めるものではありません。

1. スクリーニング検査とは

スクリーニング検査とは、症状のない人の集団から、ある病気にかかっている可能性が高い人を選び出す(ふるい分ける)ための検査です。英語のscreeningは「ふるい分け」を意味します。健康そうに見える多くの人の中から、精密検査を受けたほうがよい人を効率よく見つけ出すのが役割で、その場で病気を確定させるものではありません。

症状があって病院を受診した人に対して、医師が病気を突き止めるために行う検査は「診断のための検査」です。これに対してスクリーニング検査は、まだ症状のない段階の集団に対して、公衆衛生的な観点から広く行われる点が大きく違います。スクリーニングで「陽性」と出ても、それだけでは病気が確定したことにはなりません。

「ふるい分け」という考え方

スクリーニングは、全員をいきなり精密に調べるのではなく、「まず簡単な検査でふるいにかけ、引っかかった人だけを詳しく調べる」という二段構えの仕組みです。精密検査は正確な一方で、費用・時間・体への負担が大きいものが多く、症状のない人全員に行うのは現実的ではありません[2]。そこで、負担の小さい検査で対象を絞り込み、そのうえで必要な人に精密検査を行う、という流れが取られます。

WHOによる定義

世界保健機関(WHO)が1968年にまとめた古典的な報告書では、スクリーニングを引用元の委員会(米国の慢性疾患委員会、1951年)の言葉として、「迅速に実施できる検査・手技を用いて、無自覚の疾病または障害を暫定的に識別すること」と定義しています[1]。「暫定的に」という言葉が示すとおり、スクリーニング検査だけでは病気の診断はできません。ふるい分けで拾い上げられた人を適切な精密検査・診断・治療または介入につなげ、対象集団における疾病負担を減らすことを意図した検査です。

2. スクリーニング検査の目的

スクリーニング検査の目的は、見かけ上健康な集団の中から、特定の健康問題を持つ可能性が高い人を見つけ、早期の診断・治療や適切な介入につなげることです[3]。重要なのは、検査を実施すること自体ではなく、陽性となった人を診断・治療や必要な支援へ確実につなげ、スクリーニングを受ける集団全体として利益が不利益を上回ることです。

たとえば、がん検診は症状のない段階で異常の疑いを拾い上げ、精密検査につなげます。新生児マススクリーニングは、放置すると発達に影響しうる先天性の代謝異常などを、症状が出る前に見つけて治療を始めるための検査です。いずれも「病気を確定する」ためではなく、「詳しく調べるべき人を早く見つける」ために行われます。

3. スクリーニング検査と確定診断・精密検査の違い

スクリーニング検査と確定診断(精密検査)のいちばんの違いは、目的です。スクリーニングは「詳しく調べるべき人を選び出す」ための検査、確定診断は「病気があるかどうかを最終的に決める」ための検査です。両者は役割が違うため、片方だけで判断せず、順番に組み合わせて使います。

📊 スクリーニング検査と確定診断(精密検査)の違い

比較項目 スクリーニング検査 確定診断(精密検査)
目的 要精査の人をふるい分ける 病気の有無を確定する
対象 症状のない集団 スクリーニング陽性など、疑いのある人
結果の意味 可能性の高低(陽性=要精査) 診断(あり/なし)
負担 小さいことが多い 大きいことがある
例 便潜血検査、NIPT、母体血清マーカー 大腸内視鏡、羊水検査・絨毛検査

スクリーニング陽性は「病気の確定」ではない

スクリーニングで陽性となっても、それは「病気の可能性が高いので詳しく調べましょう」という意味であって、病気が確定したわけではありません。実際、スクリーニング陽性の人が精密検査を受けると、病気ではなかった(偽陽性だった)とわかることがあります。反対に、スクリーニングで陰性だった人にごくまれに病気が見つかること(偽陰性)もあります。だからこそ、スクリーニングと確定診断は役割を分けて使うことが大切になります。

除外診断(rule out)と確定診断(rule in)

診断の場面では、医師は症状や事前確率などから疑わしい病気の候補を挙げ(鑑別診断)、検査結果によってその可能性を上げたり下げたりします。rule in(ルールイン)は診断を支持する方向に、rule out(ルールアウト)は診断を除外する方向に確率を動かす考え方です。実際にどこまで診断を確定・除外できるかは、感度や特異度の一方だけではなく、尤度比、事前確率、検査対象集団などを含めて判断します[4]。

💡 用語解説:除外診断(じょがいしんだん)・鑑別診断(かんべつしんだん)

鑑別診断は、症状などから考えられる病気の候補を挙げることです。rule out(ルールアウト)は検査結果などによって特定の病気の可能性を十分に低くすることを指します。高感度の検査で陰性、高特異度の検査で陽性という結果は、それぞれ除外・診断支持に役立つことがありますが、感度または特異度だけで確定・除外を決めることはできません[4]。尤度比と検査前確率を踏まえて、検査後の確率を評価することが重要です。

4. スクリーニング検査の種類と具体例

スクリーニング検査は、対象とする集団や病気によってさまざまな種類があります。「多くの人を対象にふるい分ける」という共通点を持ちながら、方法も対象疾患も多岐にわたります。代表的なものを挙げます。

がん検診

便潜血検査(大腸がん)、マンモグラフィ(乳がん)、子宮頸部細胞診など。症状のない段階で異常の疑いを拾い、精密検査につなげます。

新生児のスクリーニング

新生児マススクリーニング(先天性代謝異常など)や新生児聴覚スクリーニングが、生後まもなく行われます。

出生前スクリーニング

NIPT・母体血清マーカー検査・胎児超音波スクリーニングなど。胎児の染色体疾患などの「可能性」を調べます。

感染症・生活習慣病

HIVなどの抗原・抗体検査、特定健康診査(メタボリックシンドロームと予備群のふるい分け)などがあります。

これらはいずれも「病気を確定する検査」ではなく、詳しく調べるべき人を効率よく選び出すための検査です。個々の検査で調べられること・時期・方法は異なるため、詳細はそれぞれの専用ページで確認できます。なお、集団全員を対象に行うものを特にマススクリーニングと呼びます。

5. スクリーニングで「陽性」だったらどうする

スクリーニングで陽性(要精査)となったら、次のステップは精密検査(確定診断)を受けることです。陽性はあくまで「詳しく調べる必要がある」という合図で、その時点では病気は確定していません。慌てず、必要な精密検査を受けて、病気があるかどうかをはっきりさせるのが基本の流れです。

① 無症状の集団
▶
② スクリーニング検査(ふるい分け)
▶
③ 陽性なら精密検査(確定診断)
▶
④ 診断確定・治療/偽陽性の判明

たとえば便潜血検査が陽性なら大腸内視鏡検査を、マンモグラフィで異常があれば超音波検査や組織検査(生検)を行います。精密検査の結果、病気であれば早期に治療を始められます。異常がなければ偽陽性だったとわかります。出生前領域では、NIPTなどのスクリーニングで陽性となった場合、確定診断のために羊水検査・絨毛検査が必要になります。

6. スクリーニング検査の精度:感度・特異度・的中率

検査の正確さは、主に「感度」と「特異度」、そして結果を受け取った側から見た「的中率」で表されます。スクリーニング検査に100%はありません。どの指標がどれだけ高いかで、検査の得意・不得意が決まります。まず、これらは病気のあり・なしと検査結果の陽性・陰性を組み合わせた2×2の表(クロス集計表)から計算されます。

🧮 感度・特異度・的中率の求め方(2×2表)

疾患あり 疾患なし
検査陽性 a(真陽性) b(偽陽性)
検査陰性 c(偽陰性) d(真陰性)

感度=a/(a+c) | 特異度=d/(b+d) | 陽性的中率=a/(a+b) | 陰性的中率=d/(c+d)

感度と特異度

感度(かんど)は、「本当に病気がある人を、正しく陽性と判定できる割合」です(真陽性率)。感度が高い検査は、病気の見逃し(偽陰性)が少なくなります。特異度(とくいど)は、「病気がない人を、正しく陰性と判定できる割合」です(真陰性率)。特異度が高い検査は、病気でない人を誤って陽性にする(偽陽性)ことが少なくなります。

💡 用語解説:感度・特異度

感度=病気の人をどれだけ拾えるか(見逃しの少なさ)。特異度=病気でない人をどれだけ正しく除けるか(お騒がせの少なさ)。理想は両方100%ですが、判定閾値を動かす検査では一般に感度と特異度の間にトレードオフが生じます。スクリーニングでは見逃しを減らすため感度を重視する設計が多い一方、実際の検査結果の解釈には感度・特異度の双方と検査前確率を考慮する必要があります[4]。

陽性的中率(PPV)と陰性的中率(NPV)

感度・特異度が「検査の性能」を表すのに対し、検査を受けた本人にとって知りたいのは「陽性と出たとき、本当に病気である確率」です。これを陽性的中率(PPV)といいます。陽性と判定された人のうち、実際に病気だった人の割合で、a/(a+b) で求めます。反対に、陰性的中率(NPV)は、陰性と判定された人のうち、実際に病気でなかった人の割合で、d/(c+d) で求めます。

💡 用語解説:陽性的中率(ようせいてきちゅうりつ)・陰性的中率(いんせいてきちゅうりつ)

陽性的中率(PPV)は「陽性だった場合に、本当に病気である確率」。陰性的中率(NPV)は「陰性だった場合に、本当に病気でない確率」。感度・特異度が検査そのものの性能を表すのに対し、的中率は検査結果を受け取った人の立場から見た事後の確率です。くわしくは陽性的中率(PPV)のページで解説しています。

有病率と陽性的中率の関係

ここが、スクリーニングを理解するうえでいちばん大切なところです。感度・特異度が同じ優れた検査でも、対象集団の有病率(その病気を持つ人の割合)が低いほど、陽性的中率は大きく下がります[2]。まれな病気を大勢のなかから探すと、陽性のうち偽陽性の占める割合が増えるためです。だからこそ、スクリーニングは高リスクの集団に絞って行うと、陽性的中率が上がり、効率よく病気を見つけられます。

💡 用語解説:有病率(ゆうびょうりつ)

ある時点で、その病気を持っている人が集団の中でどれくらいの割合いるかを示す数字です。有病率が低い(=まれな病気)集団では、たとえ性能のよい検査でも陽性的中率が下がります。有病率や、事前の確率を検査結果で更新する考え方(ベイズの定理)とあわせて理解すると、スクリーニングの結果を正しく読めるようになります。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「陽性」の意味は、集団によって変わる】

スクリーニングの結果を読むときに大切なのは、同じ「陽性」でも、その意味は対象集団によって変わる、という点です。感度も特異度も高い優秀な検査であっても、まれな病気を有病率の低い集団で調べれば、陽性の中に占める偽陽性の割合は増えます。数字が語っているのは検査の性能だけでなく、「どんな集団に使ったか」でもあるのです。

ですから、陽性という結果を「確定」と受け取らず、精密検査で確かめるまでは可能性の段階だと理解しておくことが、不要な不安や早まった判断を避けるうえで役立ちます。集団のデータとして示された確率を、そのまま一人ひとりの確率に置き換えられない、という点も押さえておきたいところです。

7. よいスクリーニング検査の条件

よいスクリーニング検査には、「検査そのものの条件」と「スクリーニングを行うプログラム全体の条件」の2つの側面があります。まず、検査そのものに求められる基本的な条件は次のとおりです。

✅ 検査そのものに求められる条件

条件 内容
有効性(Validity) 感度と特異度が高いこと。病気の人を正しく陽性に、病気でない人を正しく陰性にできる
信頼性(Reliability) 検査方法・測定者・複数回の検査で結果のばらつきが少ないこと
簡易性(Simplicity) 簡単で、短時間に実施できること
費用(Cost) 費用対効果がよいこと

さらに、集団に対してスクリーニングを行うかどうかを考えるときには、検査単体だけでなく、プログラム全体としての条件も問われます。WHOが1968年に示した原則(ウィルソンとユングナーの基準)は、いまも判断のよりどころになっています[1]。要点は次のとおりです。

  • ➤対象とする病気が、重要な健康問題であること
  • ➤早期に見つけた場合に、有効な治療法があること
  • ➤診断と治療のための設備・体制が整っていること
  • ➤症状が出る前の段階(潜伏期・無症状期)があること
  • ➤適切な検査法があり、受ける人にとって受け入れやすいこと
  • ➤病気の自然経過(進行の仕方)が分かっていること
  • ➤陽性者を確実に精密検査・治療につなげる仕組みがあること

早期発見が有効な治療につながらない病気を無理にスクリーニングしても、利益は限られます。治療法があってはじめて、早く見つける意味が生まれる、という考え方です。

8. スクリーニング検査の注意点(不利益)

スクリーニング検査には利益だけでなく、避けきれない不利益もあります。100%正確な検査は存在しないため、あらかじめ知っておくと結果を落ち着いて受け止めやすくなります。主な注意点は3つです。

偽陽性(ぎようせい)

病気がないのに陽性と出ること。不要な精密検査や一時的な心理的負担につながることがあります。有病率の低い集団ほど、陽性のうち偽陽性の割合が増えます。

偽陰性(ぎいんせい)

病気があるのに陰性と出ること。「異常なし」という結果が、かえって受診の遅れにつながる可能性があります。陰性でも症状が出たら受診が必要です。

過剰診断(かじょうしんだん)

放置しても症状や命に関わらなかったはずの病変まで見つけ、必要以上の検査・治療につながること。検診の利益と不利益を比べて考える必要があります。

これらの不利益があるため、あらゆる病気を手当たり次第にスクリーニングするのではなく、利益が不利益を上回ると確かめられた検査が公的に行われます。スクリーニングを受けるかどうかは、こうした利益と不利益の両方を理解したうえで判断することが大切です。

9. 遺伝・出生前領域のスクリーニング検査

遺伝や出生前の分野でも、「スクリーニング=ふるい分け」と「確定診断」を分ける考え方は同じです。胎児の状態や、将来子どもに伝わりうる遺伝性疾患について調べる検査の多くは、まず可能性を調べるスクリーニングにあたります。

出生前スクリーニングには、NIPT(母体血を用いた検査)、母体血清マーカー検査、胎児超音波スクリーニングなどがあります。これらは胎児の染色体疾患などの「可能性」を調べる非確定的な検査で、結果が陽性の場合、診断を確定するには羊水検査・絨毛検査が必要です。NIPTで解析する妊娠由来cfDNAは、一般に「胎児由来DNA」と呼ばれることがありますが、主な由来は胎盤の栄養膜細胞です[6]。このため、胎盤限局性モザイクなどによってNIPT結果と胎児の核型が一致しないことがあり、NIPTが確定診断ではない理由の一つになっています。

また、妊娠前や妊娠中に、常染色体潜性疾患やX連鎖疾患について将来の子どもの遺伝学的リスクを評価する保因者スクリーニング(キャリアスクリーニング)があります。これは本人の病気を早期発見する一般的な疾病スクリーニングとは目的が異なり、生殖に関する遺伝学的リスクを明らかにして、情報に基づく意思決定につなげる検査です[5]。生まれてすぐに行う新生児マススクリーニングとは目的が異なりますが、いずれも対象を一定の基準でふるい分け、次の評価や対応につなげるという考え方を用います。

ミネルバクリニックでは、こうした出生前検査や遺伝性疾患の遺伝子検査について、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行っています。話し合う内容は、検査で何が分かり何が分からないのか、スクリーニングと確定診断はどう違うのか、結果をその後の判断にどう用いるか、といった点です。検査を受けるかどうかを含め、決めるのはご本人であり、私たちは中立の立場で判断材料を整理する役割を担います。

まとめ

スクリーニング検査とは、症状のない集団から「詳しく調べるべき人」をふるい分ける一次の検査であり、病気を確定する検査ではありません。陽性なら精密検査(確定診断)に進み、そこで初めて病気の有無が決まります。検査の正確さは感度・特異度・的中率で表され、とくに陽性的中率は対象集団の有病率によって大きく変わります。偽陽性・偽陰性・過剰診断といった不利益もあるため、利益と不利益の両方を理解して受けることが大切です。結果を「確定」と受け取らず、必要に応じて精密検査・確定検査へ進むことが重要です。

よくある質問(FAQ)

Q1. スクリーニング検査とはどんな検査ですか?

症状のない人の集団から、ある病気にかかっている可能性が高い人を「ふるい分け」するための検査です。病気を確定する検査ではなく、精密検査(確定診断)を受けたほうがよい人を選び出す一次のふるいにあたります。早期の診断・治療や適切な介入につなげ、対象集団の健康上の利益を得ることを目的として行われます。

Q2. スクリーニング検査と確定診断・精密検査は何が違いますか?

目的が違います。スクリーニングは「詳しく調べるべき人を選び出す」ための検査で、対象は症状のない集団です。確定診断(精密検査)は「病気があるかどうかを最終的に決める」ための検査で、スクリーニング陽性など疑いのある人が対象です。スクリーニングで陽性でも病気は確定しておらず、精密検査で初めて有無がはっきりします。

Q3. スクリーニング検査にはどんな種類・具体例がありますか?

がん検診(便潜血検査・マンモグラフィなど)、新生児マススクリーニング、新生児聴覚スクリーニング、出生前スクリーニング(NIPT・母体血清マーカー・胎児超音波)、HIVなどの感染症スクリーニング、特定健康診査などがあります。集団全員を対象に行うものを特にマススクリーニングと呼びます。いずれも病気を確定する検査ではありません。

Q4. スクリーニングで「陽性」と出たらどうすればいいですか?

次のステップは精密検査(確定診断)を受けることです。陽性は「詳しく調べる必要がある」という合図で、その時点では病気は確定していません。たとえば便潜血陽性なら大腸内視鏡、出生前スクリーニング陽性なら羊水検査・絨毛検査などに進み、病気の有無をはっきりさせます。精密検査で異常がなければ偽陽性だったとわかります。

Q5. 感度・特異度・陽性的中率とは何ですか?

感度は「病気がある人を正しく陽性にできる割合」(見逃しの少なさ)、特異度は「病気がない人を正しく陰性にできる割合」です。陽性的中率(PPV)は「陽性と出たとき、本当に病気である確率」で、対象集団の有病率が低いほど下がります。感度・特異度が検査の性能を表すのに対し、的中率は結果を受け取る人の立場から見た確率です。

Q6. スクリーニング検査でダウン症はわかりますか?

NIPTや母体血清マーカー検査などの出生前スクリーニングでは、ダウン症(21トリソミー)などの染色体疾患の「可能性(確率)」を調べられます。ただしこれらはふるい分けの検査であり、診断を確定するものではありません。確定診断には羊水検査・絨毛検査が必要です。結果の意味や検査の選び方については、遺伝カウンセリングで相談できます。

Q7. スクリーニング検査は全員が受けるものですか?

検査によって異なります。新生児マススクリーニングのように、対象となる集団全員に行うもの(マススクリーニング)もあれば、希望する人が受ける任意の検査もあります。出生前スクリーニングは、希望する妊婦が、検査の内容や結果の意味を理解したうえで受けるかどうかを選ぶ検査です。受けるかどうかは、利益と不利益を理解して判断することが大切です。

🏥 出生前検査・遺伝子検査を検討している方へ

スクリーニング検査と確定診断の違い、検査で分かること・分からないことについて
検査を検討している方は、臨床遺伝専門医が運営する
ミネルバクリニックの遺伝カウンセリングでご相談いただけます。

参考文献

  • [1] Wilson JMG, Jungner G. Principles and practice of screening for disease. Public Health Papers No.34. Geneva: World Health Organization; 1968.(無自覚の疾病を暫定的に識別するというスクリーニングの定義と、実施の原則を示した古典的報告書。定義は米国・慢性疾患委員会〔Commission on Chronic Illness, 1951〕に由来する)[WHO IRIS]
  • [2] MSDマニュアル プロフェッショナル版「医学的検査および検査結果の理解」(感度・特異度・陽性的中率と有病率の関係、rule in/rule out の考え方)[MSD Manuals]
  • [3] World Health Organization Regional Office for Europe. Screening programmes: a short guide. Increase effectiveness, maximize benefits and minimize harm. Copenhagen: WHO Regional Office for Europe; 2020. [WHO]
  • [4] Pewsner D, Battaglia M, Minder C, Marx A, Bucher HC, Egger M. Ruling a diagnosis in or out with “SpPIn” and “SnNOut”: a note of caution. BMJ. 2004;329(7459):209-213. DOI 10.1136/bmj.329.7459.209. [PMC487735]
  • [5] Gregg AR, Aarabi M, Klugman S, et al. Screening for autosomal recessive and X-linked conditions during pregnancy and preconception: a practice resource of the American College of Medical Genetics and Genomics (ACMG). Genet Med. 2021;23(10):1793-1806. DOI 10.1038/s41436-021-01203-z. PMID 34285390. [PubMed 34285390]
  • [6] Taglauer ES, Wilkins-Haug L, Bianchi DW. Review: cell-free fetal DNA in the maternal circulation as an indication of placental health and disease. Placenta. 2014;35 Suppl:S64-S68. DOI 10.1016/j.placenta.2013.11.014. PMID 24388429. [PubMed 24388429]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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