この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

SCA17(脊髄小脳変性症17型・脊髄小脳失調症17型)は、TBP遺伝子の中の「CAG/CAA」という3文字のくり返しが長くなることで起こる、遺伝性の脊髄小脳変性症です。ふらつきに加えて、認知症・精神症状・不随意運動を伴いやすく、ハンチントン病に似た症状で始まることもあります。親から子へ2分の1の確率で伝わる病気なので、親やきょうだいが発症して「自分はどうなのか」と考えている方も少なくありません。先が見えないまま過ごすより、わかったうえで、仕事・結婚や出産・住まい・ご家族の介護の準備など、これからの人生を計画したいと考える方もいます。このページでは、SCA17の症状・発症年齢・遺伝する確率と、TBPのリピートの数を測る遺伝子検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
SCA17(脊髄小脳変性症17型)の原因であるTBP遺伝子のCAG/CAAリピートの数を測ります。40回以下は正常、41〜48回は「発症しないこともある範囲」、49回以上は発症する範囲とされています。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
親・きょうだいがSCA17と診断され、ご自身が受け継いでいるか知りたい方(発症前診断)、ふらつきに認知症や不随意運動を伴い原因を確かめたい方、ハンチントン病の遺伝子検査で原因が見つからなかった方、結婚や妊娠を考えている方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込275,000円、結果までは2週間です(至急オプション33,000円で約7日短くなります)。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。生まれ持った遺伝子は一生変わらないので、一度わかったことは、ご自身の暮らしの計画にも、ご家族やお子さんのことを考えるときにも使える情報になります。リピートが伸びていた場合も、見張り方・治療・お子さんを持つときの選択肢まで一緒に考えます。
1. SCA17(脊髄小脳変性症17型)とは
SCA17は、TBPという遺伝子の中の「CAG/CAA」のくり返し(リピート)が長くなることで起こる、常染色体顕性(優性)遺伝の脊髄小脳変性症です[1]。英語の spinocerebellar ataxia type 17 の頭文字をとってSCA17と呼ばれ、日本語では「脊髄小脳変性症17型」「脊髄小脳失調症17型」とも書かれます。ハンチントン病に似た症状を示すことから、「ハンチントン病類似疾患4型(HDL4)」という別名もあります[1]。
SCA17は、1999年に日本の研究グループが、TBP遺伝子のリピートが63回に伸びていた患者さんを報告したことから知られるようになりました。この方はご家族に同じ病気の方がいない孤発例で、運動失調と知的機能の低下があり、リピートの伸長はご本人の代で新しく起きていました[3]。2001年には、日本の4家系の研究で、患者さんのリピートが47〜55回、健康な人では29〜42回であることが示され、SCA17という名前が付けられています[2]。
脊髄小脳変性症・脊髄小脳失調症との関係(遺伝性は約3割)
脊髄小脳変性症は、小脳や脊髄の神経が少しずつ傷んで、ふらつき・ろれつの回りにくさ・手の動かしにくさが出る病気の総称です。日本では指定難病18「脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)」にあたります。難病情報センターによると、脊髄小脳変性症のうち67.2%が遺伝しない孤発性、27%が常染色体優性(顕性)遺伝性、1.8%が常染色体劣性(潜性)遺伝性と報告されています(2003年の調査。2026年10月時点で確認)。
遺伝性の脊髄小脳変性症は、原因の遺伝子ごとに「1型」「2型」……と番号で呼ばれ、SCA17はそのひとつです。同じ「脊髄小脳変性症」でも、型によって原因の遺伝子も、調べる検査も違います。ご家族の型がわかっていれば、その型だけを調べる検査を選べます(第4章)。
日本でどれくらいの人がなる病気か
SCA17はまれな型です。遺伝性疾患の解説書GeneReviewsによると、日本での有病率は100万人あたり0.47人と推定され、常染色体顕性(優性)遺伝の脊髄小脳失調症の約0.3%にあたります。報告されている家系は世界で100に満たないとされています[1]。ただし、SCA17の一部はハンチントン病によく似ているため、実際より少なく見積もられている可能性も指摘されています[1]。
TBP遺伝子とCAG/CAAリピート
TBP(TATA-box binding protein)は、たくさんの遺伝子の働きのスタートを助けるたんぱく質を作る遺伝子です。TBPの中には、グルタミンというアミノ酸を指定する「CAG」と「CAA」がくり返し並ぶ場所があり、この数が多すぎると、異常に長いグルタミンのつながり(ポリグルタミン)をもつたんぱく質ができ、神経が傷むと考えられています[1]。こうしたしくみで起こる病気は、ハンチントン病・SCA1・2・3・6・7・歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)などとともに「ポリグルタミン病」とまとめられ、リピートが伸びて起こる病気(トリプレットリピート病)のひとつです。
💡 用語解説:リピートの数え方
SCA17では、CAGとCAAのどちらもグルタミンを指定するため、両方を合わせた数を「リピートの数」として数えます[1]。遺伝子の文字が1つ変わる変化とは違い、「長さ」の変化なので、この検査のように長さを測る専用の方法で調べます。
2. SCA17の症状と発症年齢:ふらつきに認知症・精神症状・不随意運動
SCA17の症状は、ふらつき(運動失調)に、認知症・精神症状・不随意運動(舞踏運動やジストニア)が重なりやすいのが特徴です。GeneReviewsでは、運動失調が95%、認知症が約90%、不随意運動が約70%の方にみられるとされています[1]。
主な症状(運動失調・認知症・精神症状・不随意運動)
🩺 SCA17でみられる主な症状
※割合と症状はGeneReviews[1]による。てんかん発作は、GeneReviewsの治療の項に、発作のある方への抗てんかん薬の使用として記載されている。
初期症状と、症状が出る順番
GeneReviewsによると、最初に気づかれやすいのは運動失調(ふらつき)と精神面の変化で、そのあとに不随意運動・パーキンソン症状・認知症・錐体路徴候が加わっていくことが多いとされています[1]。日本からは、25歳で歩きにくさが始まり、その後少しずつ性格が変わり、42歳には認知症・小脳失調・行動の異常・舞踏運動がみられた女性の報告があります[5]。脳のMRIでは、小脳の萎縮が最もよくみられる所見とされています[1]。
何歳で発症するか(発症年齢)
発症の平均年齢は34.6歳で、幼児期から高齢期まで幅があります[1]。リピートが49回以上ある方は、50歳までに全員が神経や精神の症状を発症すると報告されています[1]。一方で、SCA17はほかの多くのポリグルタミン病に比べて、リピートの数と発症年齢の結びつきが弱いとされ[1]、リピートの数だけで「何歳で発症するか」を言い当てることはできません。
ハンチントン病に似た症状(ハンチントン病類似疾患4型)
舞踏運動・認知症・精神症状が前に出る場合、SCA17はハンチントン病とよく似ています。そのため、ハンチントン病の遺伝子検査(HTT遺伝子)で原因が見つからなかった方で、SCA17が見つかることがあります。GeneReviewsは、ハンチントン病に似た症状を起こす病気として、SCA17のほかにDRPLA(ATN1)・遺伝性プリオン病(PRNP)・ハンチントン病類似疾患2型(JPH3)などを挙げています[1]。ハンチントン病との違いは、症状だけでは決めきれないことが多く、遺伝子検査で原因を確かめます。
治療の現状
難病情報センターは、ポリグルタミン病そのものに対して、現在のところ有効性が示された薬はないとしています(2026年10月時点で確認)。そのうえで、ふらつきなどの運動失調全般には、TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)やその仲間の薬が使われています。日本では、タルチレリン(商品名セレジスト)が「脊髄小脳変性症における運動失調の改善」の効能で承認されています(医薬品医療機器総合機構の添付文書、2025年12月改訂版で確認)。症状に合わせた治療については第8章でまとめます。
3. SCA17の遺伝:子どもや孫に遺伝する確率と、リピートの数の読み方
SCA17は常染色体顕性(優性)遺伝で、リピートが伸びた遺伝子をもつ親から、お子さん1人ごとに2分の1の確率で伝わります[1]。ただし、伸びたリピートを受け継いでも、その数によっては発症しない方もいます。結果の意味を正しく受け取るには、リピートの「数」が大切です。
常染色体顕性(優性)遺伝:父親からも母親からも2分の1
常染色体顕性(優性)遺伝では、対になった2本の遺伝子のうち1本にリピートの伸長があれば発症しうるため、親から子へ伝わる確率は、お子さん1人ごとに2分の1です。父親から伝わる場合も、母親から伝わる場合も同じで、お子さんの性別にも関係しません。上のお子さんが受け継いだかどうかで、下のお子さんの確率が変わることもありません。
「孫に遺伝するか」は、間の世代(お子さん)が受け継いでいるかどうかで決まります。お子さんが受け継いでいなければ、その方からお孫さんに伝わることはありません。お子さんが受け継いでいれば、お孫さん1人ごとに2分の1です。ただし、SCA17ではリピートの数によって症状が出ない方もいるため(次の項)、「親に症状がないから受け継いでいない」とは言い切れません。
リピートの数の読み方(正常・浸透率が低い範囲・発症する範囲)
📏 TBPのCAG/CAAリピートの数と意味
※GeneReviews[1]による。2001年の日本の研究では健康な人の範囲を29〜42回としており[2]、区切りは報告によって少し違います。日本では45回で25歳に発症した報告もあります[5]。
原因をもっていても発症しない人がいることを「浸透率が100%ではない(不完全浸透)」といいます。SCA17では41〜48回の範囲がこれにあたり、ここに入った結果の受け止め方がいちばん難しいところです。GeneReviewsによると、41〜50回の方では、精神症状・認知症・パーキンソン症状・舞踏運動など、ハンチントン病に似た症状が多い傾向があるとされています[1]。
41〜46回の結果と、STUB1遺伝子(二遺伝子性のSCA17)
2022年のイタリアの研究で、41〜46回の範囲の方が発症するかどうかに、別の遺伝子STUB1の変化が関わっていることが示されました[4]。TBPが41〜46回だった発端者31人のうち30人が、STUB1にも病気の原因となる変化をもっていました。家系の中では、TBPの41〜46回とSTUB1の変化の両方をもつ方が発症し、どちらか一方だけでは発症していませんでした[4]。この研究は、TBPが47回以上なら1つの遺伝子で起こる顕性遺伝の病気、41〜46回では2つの遺伝子がそろって起こる病気(二遺伝子遺伝)という、2つの遺伝のしかたがあると結論づけています[4]。GeneReviewsもこの考え方を取り上げています[1]。
STUB1は、それだけでSCA48(脊髄小脳失調症48型)の原因にもなる遺伝子です。この研究はイタリアの患者さんを中心としたもので、日本の方に同じ割合が当てはまるかはまだわかっていません。
💡 この検査にSTUB1は入っていません:追加して調べられます
このページの検査で調べるのは、TBPのリピートの数だけです。STUB1は含まれていません。TBPが41〜46回だった方や、ご家族の発症のしかたを詳しく考えたい方は、このパネルに入っていないSTUB1遺伝子も、追加して調べることができます。遺伝カウンセリングのときにご相談ください(カスタマイズ遺伝子パネル検査)。
表現促進現象は少ない(世代で早く・重くなりにくい)
世代を重ねるごとに発症が早く・重くなることを「表現促進現象」といい、ハンチントン病などでよく知られています。SCA17では、表現促進現象はほかのリピート病に比べてまれとされています[1]。多くの家系では、リピートの途中に「CAA CAG CAA」という区切りが入っていて、これがリピートを安定させていると考えられているためです。ただし、この区切りがない家系(ドイツやイタリアの家系)では、親子の間でリピートが変わり、表現促進現象がみられたと報告されています[1]。SCA17で、父親から伝わるときに特に伸びやすいといった傾向は、はっきりしていません[1]。
⚠️ 「親が軽いから、子どもも軽い」とは言えません
同じリピートの数でも、症状の出方や重さは人によって違います。41〜48回の範囲では発症しない方もいる一方で、同じ範囲で若いうちに発症した報告もあります[5]。ご家族の症状の程度だけで、ご自身やお子さんの見通しを決めることはできません。だからこそ、知ったうえで計画することに意味があります。
家族歴がない場合(新しく起きた変化)
GeneReviewsによると、発端者のおよそ半数には同じ病気の親がいますが、見直された59家系のうち38%は家族歴のない孤発例でした(多くは、新しく起きた変化かどうかまで調べられていません)[1]。最初に報告された日本の患者さんも、ご本人の代で新しくリピートが伸びた方でした[3]。家族歴がないように見える場合は、親御さんの検査が勧められています[1]。親御さんの血液で伸長が見つからなくても、卵子や精子のもとになる細胞にだけ変化がある「性腺モザイク」の可能性は残るため、次のお子さんの確率は、ご家族ごとに遺伝カウンセリングでご説明します。
4. どんな人がこの検査を受けるとよいか
親・きょうだいがSCA17と診断されている方、ふらつきに認知症や不随意運動を伴い原因を確かめたい方、結婚や妊娠を考えている方に向く検査です。あなたの1回の検査結果は、ご両親・きょうだい・お子さんが、自分のことを考える手がかりにもなります。
親・きょうだいがSCA17と診断されている方(発症前診断)
症状のない方が、将来発症する可能性を調べる検査を「発症前診断(予測的検査)」といいます。GeneReviewsは、ご家族の診断が確定していれば、血縁者の発症前診断ができるとしています。そのうえで、結果から発症の年齢や重さ、どんな症状がどう進むかまでは予測できない、とも明記しています[1]。
当院は、ライフステージごとに患者さんの人生をサポートするという考え方で診療しており、知りたいと願う方を拒むことはしません。遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合は、その意思を尊重して検査まで行います。知らないでいる選択も、同じように尊重します。英国でハンチントン病の発症前検査を受けた人の理由として最も多かったのは「不確実さを減らすため」(70.5%)でした[6]。病気は違いますが、「知って、計画を立てたい」という思いは、SCA17のご家族にも通じるものだと考えています。
なお、GeneReviewsは、早く治療を始めても効果がない大人になってから発症する病気について、症状のない未成年への発症前診断は適切でないとしています[1]。日本医学会のガイドライン(2022年改定)も、成年期以降に発症する病気の未成年への発症前診断は、原則として本人が成人して自分で判断できるまで延期すべきとしています。お子さんの検査については、この考え方を踏まえてご相談ください。
「自分もなるかもしれない」という不安を抱えて暮らしている方へ
親やきょうだいが発症した方の中には、ちょっとしたつまずき、もの忘れ、気分の落ち込みがあるたびに「始まったのでは」と心配しながら暮らしている方もいます。こうした不安を抱えながら暮らしている方もいる、ということを、私たちは大切に受け止めています。
検査で、ご家族のリピートの伸長を受け継いでいないとわかれば、ご家族のSCA17について、ご自身が受け継いでいるかどうかを心配し続けることはなくなります。ご自身のお子さんに、ご家族のこの変化が伝わることもありません。ただし、ほかの原因による病気まで否定できるわけではありません。受け継いでいるとわかった場合は、見張り方・治療・治験・生活の計画(第8章)を、一緒に考えます。知らないでいることも選べます。検査の前後で、臨床遺伝専門医と時間をかけて考えていただけます。
ふらつき・認知症・不随意運動があり、原因を確かめたい方
GeneReviewsは、次のような方でSCA17を考えるとしています[1]。
- ●ふらつき(運動失調)に、認知症・精神症状・舞踏運動・ジストニア・パーキンソン症状などが加わっている方
- ●ハンチントン病に似た症状があるのに、ハンチントン病の遺伝子検査で原因が見つからなかった方
- ●ご家族に脊髄小脳変性症の方がいて、よくある型の検査で原因が見つからなかった方
結婚・妊娠を考えている方
結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。知ってから決めるのと、知らずに決めるのとでは、同じ選択でも意味が違ってきます。ご家族にSCA17の方がいて結婚や妊娠を考えているなら、妊娠の前にご自身が受け継いでいるかを知っておくと、選べることが増えます。ご家族の原因がわかっていれば、GeneReviewsは、出生前診断や着床前遺伝学的検査(PGT)が可能としています[1]。日本でどう扱われるかを含め、第7章・第8章でご説明します。パートナーの方とご一緒に遺伝カウンセリングを受けていただくこともできます。
この検査より別の検査が向いている場合
ご家族の型がSCA17とわかっているなら、まずこの検査です。型がわからないときや、症状がSCA17らしくないときは、次の検査のほうが向いていることがあります。比べる相手は検査の種類で、ご家族の状況や症状によって選び方が変わります。
🔍 状況に合わせた検査の選び方
※リピートの伸長は、遺伝子の文字を読む一般的なパネル検査やエクソーム検査では見つけにくいため、リピートの長さを測る検査を選びます。どの検査が合うかは、遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。
5. この検査で調べること
この検査では、TBP遺伝子(1遺伝子)のCAG/CAAリピートの長さを測り、正常の範囲か、浸透率が低い範囲か、発症する範囲かを判定します。リピートを狙って増やす方法(リピートプライムドPCR法)と、増やしたDNAの長さを測る方法(アンプリコン長解析)を組み合わせて調べます。
🧪 調べる遺伝子と、わかる病気(1遺伝子)
※検査の対象は当院の検査内容による(TBPの1遺伝子・リピートの長さのみ)。病気と遺伝のしかたは文献[1][4]による。
6. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、TBPのCAG/CAAリピートが何回あるかです。GeneReviewsでは、SCA17の診断にはまずTBPのリピートを狙って調べる方法が勧められ、SCA17の原因となるリピートの伸長に対するこの方法の検出率は100%と記載されています[1]。これは、SCA17の原因として知られているのがTBPのリピートの伸長であるためで、検査で誤りが起こらない、症状の原因が必ず見つかる、という意味ではありません。遺伝子検査には必ず限界があります。
- ●調べるのはリピートの長さだけ:TBPの遺伝子の文字(配列)の変化や、遺伝子の一部が欠けたり増えたりする変化(欠失・重複)は、この検査には含まれません。必要なときは別に調べることができます。メチル化の検査も含まれません。
- ●とても大きな伸長:大きく伸びたリピートでは、正確な数が出ないことがあります。
- ●STUB1は調べていない:41〜46回の結果の意味を考えるうえで手がかりになるSTUB1遺伝子は、この検査に含まれません(追加できます。第3章)。
- ●発症の時期や重さはわからない:伸長が見つかっても、何歳で、どの症状がどのくらいの重さで出るかまでは予測できません[1]。
- ●モザイク・腫瘍:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)を見つけることは目的としていません。腫瘍の組織での検査には使えません。
- ●結果に影響すること:輸血や骨髄移植を受けたことがある方は、結果に影響することがあるため、検査の前にお知らせください。
- ●陰性でも否定できないこと:TBPのリピートが正常でも、ふらつきなどの症状がある場合は、SCA17以外の型や、ほかの原因の病気が考えられます。「陰性=症状の原因がない」ではありません。
7. 結果が出たあと
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。リピートの数によって、次にできることが違います。結果の報告書の見方は、遺伝子検査結果の見かたもあわせてご覧ください。
49回以上だったとき(発症する範囲)
症状のある方では、症状やほかの検査結果とあわせてSCA17の診断を確定し、その後の経過観察や治療の方針を考えます。症状のない方では、49回以上は完全浸透とされる範囲であり、将来SCA17を発症すると考えられます。ただし、発症の時期や重さまでは予測できません[1]。お子さん1人ごとに2分の1の確率で伝わる可能性があり、ご両親・きょうだいも同じ変化をもっている可能性があります。次にできることは、第8章でまとめます。
41〜48回だったとき(浸透率が低い範囲)
この範囲では、発症する方としない方がいます。GeneReviewsでは、41〜44回で約50%、45〜48回で80%を超える方が発症するとされています[1]。これは報告された患者さん・家系をもとにした目安で、お一人おひとりの確率をそのまま表すものではありません。41〜46回では、STUB1遺伝子の変化がそろうかどうかが発症に関わるという報告もあります[4]。症状やご家族の情報とあわせて結果の意味を考え、必要ならSTUB1の追加検査やご家族の検査も含めて、一緒に方針を決めます。お子さんに伝わる確率は、この範囲でも2分の1です。
40回以下だったとき(正常の範囲)
ご家族のSCA17の原因がわかっていて、ご自身のリピートが正常の範囲だった場合は、ご家族のリピートの伸長を受け継いでいない、とわかります。症状がある方で正常の範囲だった場合は、SCA17ではない可能性が高くなり、ほかの型の脊髄小脳変性症や、ほかの原因の病気を考えます(第4章の選び方の表)。
判断が難しい結果が出たとき(VUS・境界の数)
リピートの数が区切りの近くにある場合や、追加の検査で意義がまだわからない変化(VUS)が見つかった場合は、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的と別の病気の手がかりが見つかったときの扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。
妊娠を考えている方:出生前診断の相談
ご家族でTBPのリピートの伸長がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。GeneReviewsは、ご家族の診断が確定していれば、出生前診断が可能としています[1]。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。大人になってから発症する病気の出生前診断をどう考えるかは、ご家族ごとに違います。妊娠を考えるときは、出生前診断ができるかも含めて、妊娠を考えている段階からご相談ください。
海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます
PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。「海外でPGT-Mを受けたい」というお問い合わせは少なくありません。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因の確定、英語の検査結果の用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠したあとの絨毛検査・羊水検査(院内)です。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。
欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の指針では、PGT-Mの準備に、病気の原因と確かめられた変化があること、その変化が書かれた元の報告書、そしてご家族の検体が必要とされています[7]。受精卵から取れるDNAはごくわずかで、変化を直接読むだけでは判定を誤るおそれがあるため、変化の両側にある目印を使って「変化をもつ染色体」を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます。顕性遺伝の病気では、目安として、患者さん少なくとも1人(できれば2人)、および/または発症していない方1人の検体が求められます[7]。ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。血縁者がいない場合の方法も指針に挙げられていますが、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります。また、新しく起きた変化で、これまでに妊娠歴のないご夫婦では、一般的なハプロタイプ解析の方法は使えないとされています[7]。海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。
臨床遺伝専門医としての判断をお伝えすると、SCA17では41〜48回の範囲のように、発症するかどうかが数だけでは決まらない結果があります。こうした結果や、意義がまだわからない変化(VUS)を、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もってご確認ください。
⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です
PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[8]。当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。当院では絨毛検査・羊水検査を院内で行っており、海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。
日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます。この指針でいう「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、申請の時点で有効な治療法がないか、あっても高度かつ侵襲度の高いもの、とされています。成人に達する前に生存が危ぶまれるわけではないが日常生活が著しく損なわれる状態が現れる疾患では、その病気の専門医の意見書などを追加で出す仕組みになっています。学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち、37件が審査継続中でした(2026年9月発表)。
どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国によって違います。英国では、公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気が載っています(2026年9月17日更新の一覧で2,067)。一覧にない病気は、施設を通じて申請し、HFEAが審査します。米国では、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[9]。どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。くわしくは遺伝性疾患をお持ちで海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。
8. 病的なリピートの伸長が見つかったら、次にできること
わかるだけで終わりではありません。リピートの伸長がわかったあとにできることを、読む方の立場ごとにまとめます。治療は専門の医療機関(脳神経内科)で受けていただくことになります。当院は、結果の説明と、ご家族の検査・妊娠の相談まで続けて支えます。
症状がある方:病名が決まり、見張り方と治療が決まる
GeneReviewsは、診断がついた方に、神経心理の検査・脳のMRI・脳神経内科と遺伝の専門医の診察を勧め、その後は年に1〜2回(進みが速いときはもっと頻繁に)脳神経内科で経過をみることを勧めています[1]。症状に合わせた治療として、精神症状には向精神薬、てんかん発作には抗てんかん薬、ジストニアにはボツリヌス毒素の注射、認知症には暮らしの環境を整える工夫が挙げられています。こうした薬の副作用が強く出ることもあるので、量を減らす・やめることも含めて調整します[1]。ふらつきを悪くすることがあるため、睡眠薬・鎮静薬やアルコールは避けたほうがよいとされています[1]。日本では、運動失調の改善を目的にタルチレリンが使われることがあります(第2章)。
脊髄小脳変性症は指定難病18にあたり、認定の条件を満たせば医療費の助成を受けられます(第9章)。病名がはっきりしていることは、こうした制度を使うときの手がかりにもなります。治験の情報は、ClinicalTrials.govなどの登録サイトで確かめられますが、SCA17を対象とした治験がない時期もあるとされています[1]。
症状のない方:これからの暮らしを計画する
症状のない方が伸長を受け継いでいるとわかった場合、今すぐ治療が必要になるわけではありません。わかったうえで、仕事の続け方、車の運転、住まい(段差の少ない家・通院しやすい場所など)、ご家族の介護や将来の支えをどうするか、ご家族とどう話し合うかを、前もって考えておくことができます。気になる症状が出てきたときに、早めに脳神経内科を受診する目安にもなります。
お子さんを持つときの選択肢
お子さんに伝わる確率は、1人ごとに2分の1です。知ったうえで選べることは、次のとおりです。どれを選ぶかはご夫婦が決めることで、当院はどの選択も尊重します。
- ●自然に妊娠して、出生前診断を受ける:絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。大人になってから発症する病気のため、出生前診断ができるかも含めて、妊娠を考えている段階からご相談ください。
- ●PGT-M(着床前遺伝学的検査):日本産科婦人科学会の審査を経て国内で、または海外で行われています。当院は体外受精・PGT-Mを行っていませんが、海外で受けるための英語の検査結果をお渡しできます(第7章)。
- ●何もしないで産む:出生前診断もPGT-Mも受けずに、そのまま産むことも、同じように選べる選択肢です。
ご家族:同じ変化をピンポイントで調べられる
ご家族の中でリピートの伸長がわかっていると、ご両親・きょうだい・お子さん・いとこなどは、同じTBPのリピートを測ることで、受け継いでいるかどうかを確かめられます。症状のない方の検査は発症前診断になるため、ご本人の同意のもとで、検査の前に遺伝カウンセリングで知ることの意味をよく考えていただきます。
当院でのその後
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、次にどうするか(脳神経内科への受診、ご家族の検査、STUB1の追加検査、妊娠の計画など)を一緒に考えます。結果を知ったあとの気持ちの変化は、陽性でも陰性でも起こりえます。結果をお伝えしたあとも、遺伝カウンセリングで相談を続けていただけます(遺伝カウンセリング料は30分22,000円・税込)。
9. 日本の制度(2026年10月時点)
SCA17は、指定難病18「脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)」に含まれます。難病情報センターの脊髄小脳変性症のページでは、CAGリピートの伸長で起こる優性(顕性)遺伝性の型として、SCA1・2・3・6・7・17・DRPLAが挙げられています(2026年10月時点で確認)。医療費の助成を受けるには、重症度などの認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。
10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込275,000円、結果までは2週間です。検体は血液のほか、唾液・頬の内側の粘膜でも調べられ、オンライン診療でも受けられます。
ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取血液・唾液・頬の粘膜
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結果のご説明2週間後・マイページへ
この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
💴 費用・日数・検体
※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。
オンライン診療では、ビデオ通話で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただきます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。検体の取り違えや品質の問題を防ぐため、ご自身の判断で先に検体を採らないでください。
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
11. 院長コラム
🩺 院長コラム【知ってから選ぶ、知らないで選ぶ】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。SCA17は、リピートの数によって発症する人としない人がいて、同じ範囲でも症状の出方が人によって違う病気です。「親は軽かったから」「家族に同じ病気の人はいないから」という印象だけで、将来を決めてしまわないでほしいと考えています。遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。知ってから決めるのと、知らずに決めるのとでは、同じ選択でも意味が違うと考えています。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。一方で、知らないでいることを選ぶ方の気持ちも、同じように大切です。当院は、知りたいと願う方を拒むことはしません。そして、知ったあとの結婚・妊娠の計画から出生前診断まで、続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. SCA17は子供に遺伝しますか?確率はどれくらいですか?
SCA17は常染色体顕性(優性)遺伝で、TBPのリピートが伸びた遺伝子をもつ親から、お子さん1人ごとに2分の1の確率で伝わります。父親・母親のどちらから伝わる場合も同じで、お子さんの性別にも関係しません。ただし、リピートが41〜48回の範囲では、受け継いでも発症しない方がいます。
Q2. 父親から遺伝しやすいのですか?
SCA17は、父親からでも母親からでも、お子さん1人ごとに2分の1の確率で伝わります。SCA17で、父親から伝わるときに特にリピートが伸びやすいといった傾向は、はっきりしていません。多くの家系ではリピートの途中に区切りの配列があり、親子の間で数が変わりにくいと考えられています。
Q3. 脊髄小脳変性症は孫に遺伝しますか?
孫に伝わるかどうかは、間の世代(お子さん)が受け継いでいるかで決まります。お子さんが受け継いでいなければ、その方からお孫さんに伝わることはありません。お子さんが受け継いでいれば、お孫さん1人ごとに2分の1です。SCA17ではリピートの数によって症状が出ない方もいるため、親に症状がないことだけで受け継いでいないとは言い切れません。
Q4. SCA17は何歳で発症しますか?初期症状は?
発症の平均年齢は34.6歳で、幼児期から高齢期まで幅があります。最初に気づかれやすいのは、ふらつき(運動失調)と、気分や性格の変化などの精神面の変化で、その後に不随意運動・パーキンソン症状・認知症などが加わることが多いとされています。リピートの数だけで発症年齢を言い当てることはできません。
Q5. リピートが41〜48回と言われました。必ず発症しますか?
必ず発症するわけではありません。GeneReviewsでは、41〜44回で約50%、45〜48回で80%を超える方が発症するとされています。41〜46回では、STUB1という別の遺伝子の変化がそろうかどうかが発症に関わるという2022年の報告もあります。STUB1はこの検査に含まれませんが、追加して調べることができます。お子さんに伝わる確率は、この範囲でも2分の1です。
Q6. 発症前診断は受けられますか?未成年でも受けられますか?
ご家族のSCA17の診断が確定していれば、症状のない方も発症前診断を受けられます。当院は、遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合は、その意思を尊重して検査まで行います。症状のない未成年の方への発症前診断は、国内外の指針で、原則として本人が成人して自分で判断できるまで延期すべきとされています。
Q7. 家族にSCA17の人がいると、結婚に差し支えますか?
ご家族にSCA17の方がいても、それだけで結婚について何かが決まるわけではありません。ご自身が受け継いでいるかどうかは、検査で確かめることができます。受け継いでいた場合も、お子さんへの確率や、出生前診断・PGT-Mなどの選択肢を知ったうえで、おふたりで考えることができます。パートナーの方とご一緒に遺伝カウンセリングを受けていただくこともできます。
Q8. ハンチントン病の遺伝子検査は陰性でした。SCA17の検査を受ける意味はありますか?
あります。SCA17は、舞踏運動・認知症・精神症状が前に出ると、ハンチントン病によく似た症状を示すことがあり、ハンチントン病類似疾患4型とも呼ばれます。ハンチントン病の検査で原因が見つからなかった方は、SCA17の検査を考える対象とされています。
Q9. 脊髄小脳変性症の遺伝子検査は、どこで受けられますか?費用は?
当院で受けられます。SCA17の検査費用は税込275,000円で、結果までは2週間です。唾液・頬の内側の粘膜・血液で調べられ、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。ご家族の型がわからない場合は、運動失調リピート伸長遺伝子パネル検査も選べます。
Q10. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?
はい。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。また、ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整わず、ご家族の検体が必要になることが多いので、早めにご相談ください。
🧬 人生に一度の遺伝子検査を、これからの計画に
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。TBPのリピートの数がわかれば、ご自身の暮らしの計画だけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠のことを考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
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- [2] Nakamura K, et al. SCA17, a novel autosomal dominant cerebellar ataxia caused by an expanded polyglutamine in TATA-binding protein. Hum Mol Genet. 2001;10(14):1441-1448. [DOI: 10.1093/hmg/10.14.1441]
- [3] Koide R, et al. A neurological disease caused by an expanded CAG trinucleotide repeat in the TATA-binding protein gene: a new polyglutamine disease? Hum Mol Genet. 1999;8(11):2047-2053. [DOI: 10.1093/hmg/8.11.2047]
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- [7] ESHRE PGT-M Working Group, Carvalho F, Moutou C, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the detection of monogenic disorders. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa018. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa018]
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