InstagramInstagram

パーキンソン病と認知症の遺伝子検査|レビー小体型認知症・アルツハイマー病まで35遺伝子を一度に調べる

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

パーキンソン病と認知症の遺伝子検査

パーキンソン病と認知症は、多くが遺伝子1つで決まる病気ではありません。ただ、一部には遺伝子1つの変化が原因になるものがあり、パーキンソン病とレビー小体型認知症の両方のなりやすさに関わる遺伝子(GBA1)もわかっています。このページの検査は、パーキンソン病・レビー小体型認知症・アルツハイマー病・前頭側頭型認知症などに関わる35遺伝子を一度に調べる遺伝子検査です。パーキンソン病なのか認知症なのか、症状が両方にまたがって原因がわかりにくいとき、病気ごとに検査を重ねる回り道を、1回の検査で短くできる可能性があります。親やきょうだいが発症して「自分も同じ病気になるのか」「子どもに遺伝するのか」と心配な方に向けて、遺伝の確率、検査でわかること・わからないこと、受けるかどうかの考え方を、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. パーキンソン病と認知症は遺伝しますか?この検査で何がわかりますか?

多くは遺伝子1つで決まる病気ではなく、パーキンソン病で遺伝子1つが原因とされるのは全体の5〜10%と推定されています。この検査では、パーキンソン病・レビー小体型認知症・アルツハイマー病・前頭側頭型認知症などに関わる35遺伝子を一度に調べ、病気の原因になる変化と、GBA1・APOEのようななりやすさに関わる変化があるかを確かめます。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

若くして発症した方、パーキンソン症状と物忘れの両方がある方、ご家族にパーキンソン病や認知症の方が何人もいる方、親やきょうだいが発症して、ご自身やお子さんへの遺伝が心配な方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は330,000円(税込)、結果までは3〜5週間です。検体は血液・唾液・口腔ぬぐい液で、唾液・口腔ぬぐい液ならオンライン診療で遺伝カウンセリングを受けたあと、検体をお送りいただけます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。常染色体顕性(優性)遺伝の型ならお子さん1人あたり2分の1の確率で受け継がれます。ご家族の検査や、意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 原因を知って、診断の回り道を終わらせる /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | パーキンソン病だけを調べる検査 | 認知症だけを調べる検査

1. パーキンソン病と認知症は遺伝する?多くは遺伝子1つでは決まりません

パーキンソン病も認知症も、多くは遺伝子1つの変化で決まる病気ではありません。パーキンソン病で、遺伝子1つの変化が原因とされるのは全体の5〜10%と推定されています[1]。一方で、ご家族に何人も発症している、若くして発症した、という場合には、遺伝子の原因が見つかることがあります。認知症の遺伝やパーキンソン病の遺伝を考えるときは、「遺伝子1つで起こる型」と「なりやすさに関わる遺伝子」を分けて考えるのが出発点です。

孤発性が多く、家族性は一部

家族歴のない方に起こるものを「孤発性」、家族の中に同じ病気の方が続くものを「家族性」と呼びます。パーキンソン病は遺伝しますか、と聞かれたときの答えは、「多くは孤発性で、遺伝子1つが原因の家族性パーキンソン病は一部」です[1]。

認知症は遺伝するのか、という疑問も同じです。アルツハイマー型認知症のうち、若くして発症し、APP・PSEN1・PSEN2のどれかの変化で起こる家族性のものは、全体の2%未満とされています[2]。「母親が認知症だから、自分も必ずなる」というわけではありません。ただし、ご家族の発症年齢が若い、何人も発症している、という場合は、遺伝子1つで起こる型が隠れていないかを確かめる意味があります。若年性認知症が遺伝するかどうかも、原因によって答えが変わります。

2種類の遺伝子:単独で病気の原因になる遺伝子と、なりやすさに関わる遺伝子

この検査で調べる遺伝子には、変化があると単独で病気の原因になる遺伝子と、変化があっても発症するとは限らず、なりやすさを高める遺伝子の2種類があります。結果の意味がまったく違うので、表で分けて示します。

🧬 パーキンソン病・認知症の遺伝子の2つの種類

種類 この検査に含まれる主な遺伝子 遺伝の確率の考え方
単独で原因になる(常染色体顕性〔優性〕遺伝) パーキンソン病:SNCA・LRRK2・VPS35/アルツハイマー病:APP・PSEN1・PSEN2/前頭側頭型認知症:MAPT・GRN・C9orf72/プリオン病:PRNP お子さん1人あたり2分の1で受け継ぐ。ただし受け継いでも発症の時期や有無に幅がある遺伝子もある
単独で原因になる(常染色体潜性〔劣性〕遺伝) 若くして発症するパーキンソン病:PRKN・PINK1・PARK7・ATP13A2・FBXO7・PLA2G6 など ご両親とも保因者のとき、きょうだい1人あたり4分の1で発症しうる
なりやすさに関わる APOE(アルツハイマー病)、GBA1(パーキンソン病・レビー小体型認知症)など 変化があっても発症するとは限らず、変化がなくても発症することがある。1人ひとりの確率は数字で示せない

※遺伝のしかたはGeneReviews[1][2]とOMIMの記載による。遺伝子ごとの病気は第5章の表をご覧ください。

たとえばAPOE遺伝子のε4という型は、アルツハイマー病のなりやすさに関わります。40の研究チームのデータをまとめた解析では、日本人でε4を1つ持つ人(ε3/ε4)のオッズ比は5.6、2つ持つ人(ε4/ε4)は33.1でした[6]。それでも、ε4を持っていても発症しない人、持っていなくても発症する人がいます。米国臨床遺伝・ゲノム学会と米国遺伝カウンセラー学会の合同指針は、APOEは「なりやすさの遺伝子で、発症を予測する検査ではない」として、症状のない人が予測のためにAPOEを調べることを勧めていません[7]。日本の7つの学会が監修した「認知症に関するAPOE遺伝学的検査の適正使用ガイドライン」(2025年)も、アルツハイマー病の診断や発症予測を目的にAPOEを調べることは不適切としています。この検査ではAPOEも調べるため、結果をどう受け止めるかは、検査の前の遺伝カウンセリングでご説明します。

お子さん・きょうだいへの遺伝の確率

パーキンソン病や認知症が遺伝する確率は、原因の遺伝子と遺伝のしかたで決まります。「親がパーキンソン病だと遺伝するのか」に一律の答えはなく、原因がわかってはじめて確率を言えるようになります。

  • ●常染色体顕性(優性)遺伝の型:常染色体顕性遺伝では、親が変化を持っていれば、お子さん1人あたり2分の1の確率で受け継ぎます。ただし受け継いでも必ず発症するとは限りません。たとえばLRRK2のG2019Sという変化では、受け継いだ人がパーキンソン病を発症する確率は59歳で28%、69歳で51%、79歳で74%と推定されています[3](世界21施設の研究)。このように、変化があっても発症しない人がいることを「不完全浸透」といいます。
  • ●常染色体潜性(劣性)遺伝の型:常染色体潜性遺伝では、両親から1つずつ変化を受け継いだときに発症します。ご両親がともに保因者なら、きょうだい1人あたり4分の1の確率で発症しえます。若くして発症するパーキンソン病の原因として知られるPRKN(parkin)は、日本人の家系の研究から見つかった遺伝子です[4]。欧州を中心とした研究では、若年発症のパーキンソン病の家系の49%にPRKNの変化がありました[5]。
  • ●なりやすさに関わる遺伝子:APOEやGBA1は、変化を受け継いでも発症するとは限らないため、「お子さんが発症する確率は何%」とは言えません。

💡 用語解説:浸透率

原因となる遺伝子の変化を持っている人のうち、実際に発症する人の割合を「浸透率」といいます。パーキンソン病の遺伝子には、年齢とともに浸透率が上がり、生涯発症しない人もいるものがあります。遺伝のしかたの全体像は遺伝形式とはで解説しています。

2. パーキンソン病とレビー小体型認知症・アルツハイマー病のつながり

パーキンソン病と認知症は別の病気として扱われがちですが、症状も、関わる遺伝子も重なっています。パーキンソン病の経過で認知症が加わることがあり、パーキンソン病とレビー小体型認知症の両方のなりやすさに関わる遺伝子もあります。このパネル検査が、パーキンソン病と認知症の遺伝子をまとめて調べるのはこのためです。

レビー小体型認知症とパーキンソン病の違い

レビー小体型認知症とパーキンソン病の違いは、主に「認知症とパーキンソン症状のどちらが先か」で区別されます。レビー小体型認知症の国際的な診断基準(第4版)は、認知症がパーキンソン症状より先、または同じころに出た場合にレビー小体型認知症と診断するとしています。研究で両者を分けるときには、パーキンソン症状が出てから1年以内に認知症が出たかどうかで区切る「1年ルール」が使われます[8]。

遺伝子の面でも、2つは近い関係にあります。αシヌクレインというタンパク質の設計図であるSNCA遺伝子が倍以上に増えた家系では、認知症を伴うパーキンソン症状が若くして起こることが報告され[9]、SNCAの1文字の変化で、パーキンソン病とレビー小体型認知症の両方が起こる家系も報告されています[10]。

パーキンソン病に認知症が加わるとき(パーキンソン病認知症)

パーキンソン病の経過の中で認知症が出てくる状態を、パーキンソン病認知症と呼びます。これまでの有病率の研究をまとめた系統的レビューでは、パーキンソン病の方の24〜31%に認知症がありました[11]。オーストラリアで診断時から追いかけた研究では、20年後に生存していた方の83%に認知症がみられました[12]。パーキンソン病と認知症は、長い経過の中で同じ方に重なって起こりうる病気です。

GBA1:パーキンソン病とレビー小体型認知症の両方のなりやすさに関わる遺伝子

GBA1遺伝子(旧名GBA)は、パーキンソン病とレビー小体型認知症の両方のなりやすさに関わることがわかっている遺伝子です。GBA1は、両親から変化を1つずつ受け継ぐとゴーシェ病を起こす遺伝子ですが、変化を1つだけ持つ人では、パーキンソン病のなりやすさが上がることがわかってきました。

  • ●パーキンソン病:16施設の国際共同研究では、GBA1の変化を持つ人のパーキンソン病のオッズ比は5.43でした(日本とノルウェーの施設を除いた値)[13]。日本の多施設研究では、パーキンソン病の方534人の9.4%にGBA1の変化があり、対照の方では0.37%で、オッズ比は28.0でした[14]。
  • ●レビー小体型認知症:11施設の研究では、GBA1の変化を持つ人のレビー小体型認知症のオッズ比は8.28、パーキンソン病認知症のオッズ比は6.48でした。変化を持つ人は、持たない人より若くレビー小体型認知症と診断されていました(平均63.5歳と68.9歳)[15]。
  • ●パーキンソン病の経過:連続して受診したパーキンソン病の方2,764人の研究では、GBA1の変化を持つ方は、認知症になるリスクが3.16倍でした[16]。

「レビー小体型認知症は遺伝するのか」という疑問には、「遺伝子1つで決まる例は少ないが、遺伝の関わりはある」が答えになります。レビー小体型認知症の大規模な遺伝子研究では、APOE・GBA・SNCAの3つの場所がなりやすさに関わり、遺伝で説明できる部分はおよそ36%と推定されています[17]。ただし、GBA1やAPOEの変化があっても、必ず発症するわけではありません。

アルツハイマー病・前頭側頭型認知症・プリオン病・CADASILなども

この検査には、パーキンソン病とレビー小体型認知症のほかにも、次のような認知症や似た症状の病気に関わる遺伝子が入っています。

  • ●アルツハイマー病:APP・PSEN1・PSEN2(若くして発症する家族性アルツハイマー病。早発アルツハイマー病)、APOE・TREM2(なりやすさ)
  • ●前頭側頭型認知症:MAPT・GRN・C9orf72。C9orf72は、同じ変化で前頭側頭型認知症と筋萎縮性側索硬化症(ALS)の両方が起こりうる遺伝子です
  • ●プリオン病:PRNP(クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、致死性家族性不眠症など)
  • ●脳の血管・白質の病気:NOTCH3(CADASIL)、CSF1R(神経軸索スフェロイドを伴う遺伝性びまん性白質脳症)、TREM2・TYROBP(那須・ハコラ病)

C9orf72のリピート伸長は、欧米の白人では家族性ALSの39.3%、孤発性ALSの7.0%を占めるとされます[18]。一方、日本人のALSの研究では、孤発性ALSの0.4%[19]、別の研究で家族性ALSの3.4%[20]と、まれでした。ALSの症状が中心の方は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)遺伝子検査パネルが向いています。ALSの遺伝子検査を受けられる場については、『SOD1以外のALS遺伝子検査は研究段階のためできない』と言われた方へで解説しています。

3. どの検査を選べばよい?パーキンソン病・認知症の遺伝子検査の選び分け

パーキンソン病と認知症の両方の症状がある方、家族にパーキンソン病の方と認知症の方がいる方は、このページの35遺伝子の検査が向いています。当院には名前の似た遺伝子検査がいくつかあるので、症状とご家族の状況から選べるよう、表にまとめました。

🔍 パーキンソン病・認知症の遺伝子検査の選び方

こんなとき 向いている検査 調べる遺伝子
パーキンソン病と認知症の両方の症状がある/家族にパーキンソン病の方と認知症の方がいる/レビー小体型認知症が心配 このページの検査(パーキンソン病・アルツハイマー病・認知症遺伝子パネル検査) 35遺伝子
パーキンソン病だけが心配(若年性パーキンソン病を含む) パーキンソン病包括的遺伝子検査 26遺伝子
認知症の原因をまとめて調べたい(アルツハイマー型・前頭側頭型など) アルツハイマー・認知症遺伝子検査パネル 16遺伝子
65歳より前に発症したアルツハイマー病の方が家族に何人もいる 早発性家族性アルツハイマー病遺伝子検査 3遺伝子(APP・PSEN1・PSEN2)
ALSが中心、またはALSと前頭側頭型認知症の両方が家族にいる ALS(筋萎縮性側索硬化症)遺伝子検査パネル 43遺伝子
ハンチントン病や、繰り返し配列が伸びる病気が心配 ハンチントン病など単一遺伝子のリピート伸長遺伝子検査 HTTなどのリピート伸長

※遺伝子数は各検査ページの記載による(2026年10月時点)。迷う場合は、遺伝カウンセリングで症状とご家族の情報を伺ってから、合う検査を選びます。

4. どんな人がこの検査を受けるとよいか

この検査が向いているのは、パーキンソン病や認知症を発症していて原因を知りたい方と、親やきょうだいが発症して、ご自身やお子さんへの遺伝が心配な方です。

発症していて、原因を知りたい方

  • ●若くしてパーキンソン病や認知症を発症した方
  • ●パーキンソン症状と物忘れ・幻視など、両方の症状がある方
  • ●ご家族に、パーキンソン病や認知症の方が何人もいる方
  • ●主治医から遺伝の可能性を言われた方、ほかの検査で原因がわからなかった方

レビー小体型認知症の国際的な診断基準は、遺伝子検査を診断や発症予測のために日常的に使う段階にはない、としています[8]。だからこそこの検査は、若くして発症した、家族に多い、という遺伝子の原因が見つかる見込みのある場面で受ける意味があります。原因がわかれば、病名がはっきりし、ご家族が自分の状態を知る手がかりにもなります。

親・きょうだいがパーキンソン病や認知症で、ご自身やお子さんへの遺伝が心配な方

「親がパーキンソン病だと自分も遺伝するのか」「母親が認知症だと遺伝するのか」という心配は、とても多いものです。症状のない方が、将来発症する可能性を調べる検査を「発症前の検査(予測的検査)」といいます。

当院は、ライフステージごとに患者さんの人生をサポートするという考え方で診療しており、知りたいと願う方を拒むことはしません。遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合は、その意思を尊重して検査まで行います。知らないでいる選択も、同じように尊重します。

ご家族に発症した方がいて、その方の検査で原因の変化がわかっていれば、症状のない方は同じ変化だけを調べることができ、結果の意味もはっきりします。発症した方の検査が難しい場合は、症状のない方が先に受けることもできますが、その場合、原因の変化が見つからなかった結果を「遺伝していない」とは言い切れません。どちらがよいかは、遺伝カウンセリングでご家族の状況を伺ってから考えます。若年性パーキンソン病のご家族をもつ方の遺伝カウンセリングの例は、父が若年性パーキンソン病で亡くなった息子さんの遺伝カウンセリングで紹介しています。

なお、日本医学会のガイドライン(2022年改定)は、成年期以降に発症する病気の未成年者への発症前の検査は、原則として本人が成人し自分で判断できるまで延期すべきとしています。お子さんの検査は、この考え方を踏まえてご相談ください。

この検査より別の検査が向いている場合

症状によっては、次の検査のほうが向いていることがあります。比べる相手は検査の種類で、どれが合うかは遺伝カウンセリングで一緒に決めます。

\ あなたの1回の検査が、ご家族が自分を知る手がかりに /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

ご家族で原因の変化がわかれば、ほかのご家族は同じ変化をピンポイントで調べられます。

症状のない方は、遺伝カウンセリングを予約する(ご希望があれば検査まで受けられます) | どの検査がよいか迷う方へ

5. 調べる35遺伝子と、関係する病気

この検査では、次の35遺伝子を調べます。パーキンソン病に関わる遺伝子、認知症に関わる遺伝子、両方や似た症状の病気に関わる遺伝子に分けて示します。1つの遺伝子が、いくつもの病気に関わることがあります。

🧬 パーキンソン病・アルツハイマー病・認知症遺伝子パネル検査で調べる35遺伝子

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた
APOE アルツハイマー病2(なりやすさ)、III型高リポタンパク血症、リポタンパク糸球体症、シーブルー組織球症 なりやすさ/顕性・潜性(病気による)
APP アルツハイマー病1(若くして発症する家族性)、APP関連脳アミロイドアンギオパチー 顕性
ATP13A2 クフォー・ラケブ症候群(若年性パーキンソニズム)、常染色体潜性痙性対麻痺78 潜性
ATP1A3 ジストニア12(急速発症型ジストニア・パーキンソニズム)、小児交互性片麻痺2型、CAPOS症候群、発達性てんかん性脳症99 顕性
C9orf72 前頭側頭型認知症±筋萎縮性側索硬化症1 顕性
CSF1R 神経軸索スフェロイドを伴う遺伝性びまん性白質脳症、脳の異常・神経変性・骨硬化を伴う病気(BANDDOS) 顕性(白質脳症)/潜性(BANDDOS)
DCTN1 ペリー症候群、遠位型遺伝性運動ニューロパチー7B、筋萎縮性側索硬化症(なりやすさ) 顕性
DNMT1 常染色体優性小脳性運動失調・難聴・ナルコレプシー、遺伝性感覚ニューロパチー1E 顕性
EIF4G1 パーキンソン病18(関連を示す報告がある) 顕性
FBXO7 パーキンソン病15(若年性パーキンソニズム) 潜性
GBA1(GBA) ゴーシェ病、パーキンソン病・レビー小体型認知症(なりやすさ) 潜性(ゴーシェ病)/なりやすさ
GCH1 ドパ反応性ジストニア(瀬川病)、BH4欠乏による高フェニルアラニン血症B型 顕性(ドパ反応性ジストニア)/潜性
GRN 前頭側頭葉変性症(TDP-43を伴う)、神経セロイドリポフスチン症11型 顕性(前頭側頭葉変性症)/潜性(CLN11)
HTRA2 パーキンソン病13(なりやすさ)、3-メチルグルタコン酸尿症8型 なりやすさ/潜性
LRRK2 パーキンソン病8 顕性(年齢とともに発症しやすくなり、発症しない人もいる)
MAPT 前頭側頭型認知症、ピック病、進行性核上性麻痺1 顕性
NOTCH3 CADASIL、側方髄膜瘤症候群、乳児筋線維腫症2型 顕性
PARK7 パーキンソン病7(若年発症) 潜性
PINK1 パーキンソン病6(若年発症) 潜性
PLA2G6 乳児神経軸索ジストロフィー(脳内鉄沈着神経変性症2A)、脳内鉄沈着神経変性症2B、パーキンソン病14 潜性
POLG ミトコンドリアDNA枯渇症候群4A(アルパース型)、進行性外眼筋麻痺(ミトコンドリアDNA欠失を伴う)、SANDO(感覚性運動失調・構音障害・眼筋麻痺) 潜性(進行性外眼筋麻痺には顕性の型もある)
PRKN 若年性パーキンソン病2型 潜性
PRKRA ジストニア16 潜性
PRNP クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、致死性家族性不眠症、ハンチントン病類縁疾患1 顕性
PSEN1 アルツハイマー病3(若くして発症する家族性)、前頭側頭型認知症、拡張型心筋症1U、家族性化膿性汗腺炎3 顕性
PSEN2 アルツハイマー病4(家族性)、拡張型心筋症1V 顕性
SLC6A3 乳児パーキンソニズム・ジストニア1 潜性
SNCA パーキンソン病1・4、レビー小体型認知症 顕性
SNCB レビー小体型認知症(関連を示す報告がある) 顕性
TAF1 X連鎖ジストニア・パーキンソニズム(ジストニア3)、X連鎖症候群性知的発達症33 X連鎖潜性
TH 常染色体潜性の瀬川病(チロシン水酸化酵素欠損症) 潜性
TREM2 那須・ハコラ病2、アルツハイマー病17(なりやすさ) 潜性(那須・ハコラ病)/なりやすさ
TYROBP 那須・ハコラ病1 潜性
UCHL1 パーキンソン病5(なりやすさ)、痙性対麻痺79A・79B なりやすさ/顕性(79A)・潜性(79B)
VPS35 パーキンソン病17 顕性

※遺伝子と病気の関係・遺伝のしかたはOMIMの記載(NCBIのOMIM連携データ)による。顕性=常染色体顕性(優性)遺伝、潜性=常染色体潜性(劣性)遺伝、X連鎖潜性=X連鎖潜性(劣性)遺伝。「なりやすさ」は、その遺伝子の変化が病気のなりやすさに関わるとされているもの。GBAは現在GBA1という名前です。

※ATP1A3は、当院のNIPTのインペリアルプランでも、赤ちゃんで新しく起きた変化を調べられる遺伝子に入っています(インペリアルプラン。妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます)。

※常染色体潜性・X連鎖の型の遺伝子では、症状のない保因者かどうかが結婚・妊娠の前に気になる方もいます。保因者検査の対象かどうかは、拡大版保因者スクリーニングの遺伝子一覧でご確認ください。

6. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、35遺伝子の小さな変化と、C9orf72のリピート伸長です。一方で、調べられない種類の変化もあり、「原因の変化が見つからなかった=発症しない」ではありません。

わかること

  • ●遺伝子の小さな変化:35遺伝子の、タンパク質の設計図になる部分(エクソン)とその境目で、1文字の変化や小さな欠けや入り込みを調べます。
  • ●エクソン単位の欠失・重複:遺伝子の一部(2つ以上のエクソン)がまとまって欠けたり増えたりしていないかを調べます。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
  • ●C9orf72のリピート伸長:前頭側頭型認知症やALSの原因になるC9orf72の繰り返し配列の伸びを、専用の方法(リピートプライムドPCR法)で調べます。

わからないこと(検査の限界)

  • ●C9orf72のメチル化と、正確なリピートの数:C9orf72のメチル化は調べません。リピートがとても長い場合、正確な数まではわからないことがあります。
  • ●C9orf72以外のリピート伸長:ハンチントン病(HTT)や脊髄小脳変性症などの繰り返し配列の伸びは、この検査ではわかりません。疑われるときはリピート伸長の検査を選びます。
  • ●染色体の入れ替わりや、遺伝子の調節部分・エクソンから離れた部分の変化:染色体の転座や逆位、遺伝子の働きを調節する部分の多く、エクソンから離れたイントロンの深い部分の変化は調べられません。
  • ●体の一部の細胞だけにある変化(モザイク):確実に見つける方法としては確かめられていません。
  • ●よく似た配列のある遺伝子:よく似た配列(偽遺伝子)がある遺伝子では、結果の判定が難しい部分があります。
  • ●多くの遺伝子が少しずつ関わるなりやすさ:孤発性のパーキンソン病や認知症のなりやすさには、たくさんの遺伝子と環境が少しずつ関わっています。この検査で、それらすべてを足し合わせたリスクはわかりません。
  • ●35遺伝子以外の遺伝子:この検査に含まれていない遺伝子の変化はわかりません。

「陰性」は「発症しない」ではない/意義がまだわからない変化(VUS)

原因の変化が見つからなかった場合も、調べていない種類の変化や、まだ知られていない原因が残っている可能性があります。また、病気の原因かどうかまだ判断できない変化(VUS)が見つかることがあります。VUSの扱いは第8章でご説明します。

7. 病的変異が見つかったら、次にできること

病気の原因となる変化(病的変異)が見つかったら、それで終わりではありません。発症している方、症状のない方、これから子どもを持つことを考える方、ご家族のそれぞれに、次にできることがあります。生まれ持った遺伝子は一生変わらないので、一度の検査でわかったことは、この先の計画にずっと使える情報になります。

発症しているご本人:治療の選び方と治験

アルツハイマー病の進行を抑える薬として、日本ではレカネマブ(2023年9月承認)とドナネマブ(2024年9月承認)が、アルツハイマー病による軽度認知障害と軽度の認知症の方に使われています。これらの薬では、脳のむくみや小さな出血(ARIAと呼ばれる副作用)が起こることがあり、その起こりやすさはAPOE ε4の数で違います。レカネマブの臨床試験では、むくみ(ARIA-E)が起きた割合は、ε4を2つ持つ方で32.6%、1つ持つ方で10.9%、持たない方で5.4%でした(医薬品リスク管理計画、2026年9月版)。

こうした結果から、2026年8月、2つの薬の添付文書が改訂され、投与を始める前にAPOE遺伝子検査を行うことを考えるよう求められるようになりました(医薬品医療機器総合機構、2026年10月時点で確認)。治療を受けるかどうか、どの薬を使うかは、認知症の専門の主治医が判断します。当院はこれらの治療を行っていませんが、遺伝子の結果を主治医の先生にお伝えし、治療を考える材料にしていただけます。

パーキンソン病では、GBA1の変化があるパーキンソン病の方などを対象に、遺伝子の型に合わせた薬の治験が海外で行われてきました。治験の多くは遺伝子の結果が参加の条件になるため、原因がわかっていることが参加の手がかりになります。国内で行われている治験は、jRCT(臨床研究等提出・公開システム)で探せます。

症状のない方:知ったうえで、人生の計画を立てる

先が見えないまま過ごすより、わかったうえで、仕事・結婚や出産・住まい・ご家族の介護の準備など、これからの人生を計画したいと考える方もいます。英国でハンチントン病の発症前検査を受けた人の理由として最も多かったのは「不確実さを減らすため」(70.5%)でした[23]。病気は違いますが、「知ることで計画を立てたい」という思いは、パーキンソン病や認知症のご家族にも通じるものだと思います。

親がアルツハイマー病の症状のない成人162人を対象にした米国の研究では、APOEの結果を知らせた群と知らせなかった群で、その後の不安・抑うつ・検査に関するつらさに差はありませんでした。一方で、検査の前から気持ちのつらさが強かった方は、結果を知ったあとにつらくなりやすいこともわかっています[21]。だからこそ当院では、検査の前の遺伝カウンセリングで、知ったあとの気持ちの変化まで含めて考えていただき、結果をお伝えしたあとも相談を続けていただけます。

認知症の予防については、2024年の国際的な報告(ランセット委員会)が、視力低下の放置や高いLDLコレステロールなどを含む14の要因に対処すれば、認知症の半分近くを防ぐか遅らせられる可能性がある、としています[22]。これは主に孤発性の認知症についての推計で、遺伝子1つで起こる型にそのまま当てはまるかはわかっていません。それでも、わかったうえで生活を見直すことは、ご自身でできる前向きな一歩です。

子どもを持つときの選択肢

ご家族で原因の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。(羊水検査・絨毛検査)

ただし、日本産科婦人科学会の見解(2013年)が出生前の遺伝学的検査の対象として挙げている単一遺伝子の病気は、新生児期・小児期に発症する重い病気です。成人になってから発症する病気で出生前診断をどう考えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断されます。妊娠を考えている段階からご相談ください。もちろん、何も調べずにそのまま産むことも、大切な選択の1つです。どの選択も尊重します。

ご家族:同じ変化をピンポイントで調べられる

ご本人に原因の変化が見つかると、ご両親・きょうだい・お子さんは、その変化だけを調べて、受け継いでいるかどうかを確かめられます。症状のないご家族の検査は発症前の検査になるため、ご本人が考えて決めてから受けていただきます(第4章)。

当院でのその後

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明し、ご家族への伝え方や、次に受けるとよい検査を一緒に考えます。発症前の検査を受けた方には、結果を知ったあとの生活や結婚・妊娠の計画まで、ライフステージに合わせてご相談いただけます。

8. 陰性・VUSだったとき

原因の変化が見つからなかった(陰性)場合も、VUSが見つかった場合も、それぞれに次の選択肢があります。

陰性だったとき

症状のある方で原因が見つからなかった場合は、孤発性の病気である可能性が高くなりますが、この検査で調べられない変化(第6章)が原因の可能性も残ります。症状に合わせて、リピート伸長の検査や全エクソーム検査などを考えます。ご家族で原因の変化がわかっていて、症状のない方がその変化を受け継いでいなかった場合は、その変化による発症の心配はなくなりますが、ほかの原因による病気まで否定するものではありません。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき

VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。扱い方はVUS(意義不明変異)の臨床的取り扱いで解説しています。調べた目的と別の病気の原因が見つかったときの扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

9. 日本の制度:指定難病(2026年10月時点)

パーキンソン病は指定難病6です。医療費の助成の対象になるのは、ホーン・ヤールの重症度3度以上かつ生活機能障害度2度以上の方とされています。このパネルに関わる病気では、次のものも指定難病に含まれています(厚生労働省の指定難病の一覧、2026年4月時点。2026年10月に確認)。

  • ●指定難病5 進行性核上性麻痺、127 前頭側頭葉変性症、23 プリオン病
  • ●指定難病19 ライソゾーム病(ゴーシェ病、セロイドリポフスチノーシスなどを含む)
  • ●指定難病124 皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)、125 神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症
  • ●指定難病120 遺伝性ジストニア、174 那須・ハコラ病

助成を受けるには、それぞれの病気の診断基準と重症度の基準を満たし、申請する必要があります。くわしくは、難病情報センターやお住まいの自治体の窓口でご確認ください。

10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

パーキンソン病・認知症の遺伝子検査の費用は330,000円(税込)、結果までは3〜5週間です。唾液・口腔ぬぐい液なら、遠方の方でも、オンライン診療で遺伝カウンセリングを受けたあと検体をお送りいただく形で、ご来院なしで検査を受けられます。

ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
検体の採取血液・唾液・口腔ぬぐい液
▶
結果のご説明3〜5週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
調べる遺伝子 35遺伝子(C9orf72のリピート伸長を含む。C9orf72のメチル化は含まない)
検体 血液・唾液・口腔ぬぐい液
結果までの期間 3〜5週間
検査費用 330,000円(税込)
ご両親とお子さんの同時検査 550,000円(税込)
至急オプション 結果までの期間が約7日短くなります(追加料金55,000円)
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別

※この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。出生前検査の際の母体側のコンタミネーション解析は、当面お取り扱いしていません。

当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方はNIPT/遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

🎥 動画で紹介:老後に心配な病気と遺伝子検査(院長)

\ 一生変わらない遺伝子を、一度の検査で知る /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

唾液・口腔ぬぐい液なら、オンライン診療の遺伝カウンセリングのあと、ご来院なしで検査を受けられます。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

11. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【知ることは、これからを選ぶための材料】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

パーキンソン病や認知症は、年をとってから発症することが多い病気です。親の介護をしながら「次は自分の番かもしれない」と考え、仕事や結婚、子どもを持つかどうかに迷う方もいらっしゃると思います。結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。知ってから決めるのと、知らずに決めるのとでは、同じ選択でも意味が違う、と私は考えています。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知りたいと願う方を拒むことはしません。知らないでいることを選ぶ方の気持ちも、同じように尊重します。どの選択をされても、その後の人生を、遺伝の専門医としてサポートします。

よくある質問(FAQ)

Q1. 親がパーキンソン病だと、自分も遺伝しますか?

多くのパーキンソン病は遺伝子1つで決まるものではなく、遺伝子1つが原因とされるのは全体の5〜10%と推定されています。原因の遺伝子がわかってはじめて、確率を言えるようになります。常染色体顕性遺伝の型ならお子さん1人あたり2分の1で受け継ぎますが、LRRK2のように、受け継いでも発症しない人がいる遺伝子もあります。

Q2. 母親が認知症だと、遺伝しますか?

アルツハイマー型認知症の多くは遺伝子1つで決まるものではなく、APP・PSEN1・PSEN2の変化で若くして発症する家族性のものは全体の2%未満とされています。母親が認知症だから必ずなる、というわけではありません。発症が若い、ご家族に何人もいる、という場合は、遺伝子の原因を調べる意味があります。

Q3. レビー小体型認知症は遺伝しますか?

遺伝子1つで決まる例は少ないものの、遺伝の関わりはあります。大規模な研究では、APOE・GBA・SNCAの3つの場所がなりやすさに関わり、遺伝で説明できる部分はおよそ36%と推定されています。GBA1の変化を持つ人では、レビー小体型認知症のオッズ比が8.28だったという報告があります。

Q4. 子どもに遺伝する確率は?

原因の遺伝子と遺伝のしかたで決まります。常染色体顕性遺伝ならお子さん1人あたり2分の1、常染色体潜性遺伝ならご両親とも保因者のとき、きょうだい1人あたり4分の1です。APOEやGBA1のような、なりやすさに関わる遺伝子では、確率を数字で示すことはできません。

Q5. パーキンソン病の検査と認知症の検査、どちらを受ければよいですか?

パーキンソン病だけが心配ならパーキンソン病包括的遺伝子検査(26遺伝子)、認知症だけならアルツハイマー・認知症遺伝子検査パネル(16遺伝子)が向いています。パーキンソン病と認知症の両方の症状がある方、家族に両方の方がいる方、レビー小体型認知症が心配な方は、このページの35遺伝子の検査が向いています。

Q6. 結果が陰性なら、発症しないということですか?

いいえ。この検査で調べられない種類の変化(C9orf72以外のリピート伸長など)や、まだ知られていない原因が残っている可能性があります。また、孤発性のパーキンソン病や認知症は、遺伝子1つの変化がなくても起こります。

Q7. 症状がなくても検査を受けられますか?

受けられます。症状のない方が将来の発症の可能性を調べる検査は発症前の検査になるため、遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合に検査まで行います。未成年の方への発症前の検査は、原則として本人が成人して自分で判断できるまで延期すべきとされています。

🧬 人生に一度の遺伝子検査を、ご自身とご家族のこれからの計画に

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。パーキンソン病や認知症の原因がわかれば、治療を考える材料になるだけでなく、ご家族が自分の状態を知る手がかりや、仕事・結婚・妊娠の計画を考える材料になります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Morris H, Lim SY. Parkinson Disease Overview. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2004 (Updated 2025 May 15). [NCBI Bookshelf NBK1223]
  • [2] Bird TD. Alzheimer Disease Overview. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 1998 (Updated 2018 Dec 20). [NCBI Bookshelf NBK1161]
  • [3] Healy DG, Falchi M, O’Sullivan SS, et al. Phenotype, genotype, and worldwide genetic penetrance of LRRK2-associated Parkinson’s disease: a case-control study. Lancet Neurol. 2008;7(7):583-590. [DOI: 10.1016/S1474-4422(08)70117-0](PMID: 18539534)
  • [4] Kitada T, Asakawa S, Hattori N, et al. Mutations in the parkin gene cause autosomal recessive juvenile parkinsonism. Nature. 1998;392(6676):605-608. [DOI: 10.1038/33416](PMID: 9560156)
  • [5] Lücking CB, Dürr A, Bonifati V, et al. Association between early-onset Parkinson’s disease and mutations in the parkin gene. N Engl J Med. 2000;342(21):1560-1567. [DOI: 10.1056/NEJM200005253422103](PMID: 10824074)
  • [6] Farrer LA, Cupples LA, Haines JL, et al. Effects of age, sex, and ethnicity on the association between apolipoprotein E genotype and Alzheimer disease. A meta-analysis. JAMA. 1997;278(16):1349-1356. [PMID: 9343467]
  • [7] Goldman JS, Hahn SE, Catania JW, et al. Genetic counseling and testing for Alzheimer disease: joint practice guidelines of the American College of Medical Genetics and the National Society of Genetic Counselors. Genet Med. 2011;13(6):597-605. [DOI: 10.1097/GIM.0b013e31821d69b8](PMID: 21577118)
  • [8] McKeith IG, Boeve BF, Dickson DW, et al. Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies: Fourth consensus report of the DLB Consortium. Neurology. 2017;89(1):88-100. [DOI: 10.1212/WNL.0000000000004058](PMID: 28592453)
  • [9] Farrer M, Kachergus J, Forno L, et al. Comparison of kindreds with parkinsonism and alpha-synuclein genomic multiplications. Ann Neurol. 2004;55(2):174-179. [DOI: 10.1002/ana.10846](PMID: 14755720)
  • [10] Zarranz JJ, Alegre J, Gómez-Esteban JC, et al. The new mutation, E46K, of alpha-synuclein causes Parkinson and Lewy body dementia. Ann Neurol. 2004;55(2):164-173. [DOI: 10.1002/ana.10795](PMID: 14755719)
  • [11] Aarsland D, Zaccai J, Brayne C. A systematic review of prevalence studies of dementia in Parkinson’s disease. Mov Disord. 2005;20(10):1255-1263. [DOI: 10.1002/mds.20527](PMID: 16041803)
  • [12] Hely MA, Reid WG, Adena MA, et al. The Sydney multicenter study of Parkinson’s disease: the inevitability of dementia at 20 years. Mov Disord. 2008;23(6):837-844. [DOI: 10.1002/mds.21956](PMID: 18307261)
  • [13] Sidransky E, Nalls MA, Aasly JO, et al. Multicenter analysis of glucocerebrosidase mutations in Parkinson’s disease. N Engl J Med. 2009;361(17):1651-1661. [DOI: 10.1056/NEJMoa0901281](PMID: 19846850)
  • [14] Mitsui J, Mizuta I, Toyoda A, et al. Mutations for Gaucher disease confer high susceptibility to Parkinson disease. Arch Neurol. 2009;66(5):571-576. [DOI: 10.1001/archneurol.2009.72](PMID: 19433656)
  • [15] Nalls MA, Duran R, Lopez G, et al. A multicenter study of glucocerebrosidase mutations in dementia with Lewy bodies. JAMA Neurol. 2013;70(6):727-735. [DOI: 10.1001/jamaneurol.2013.1925](PMID: 23588557)
  • [16] Cilia R, Tunesi S, Marotta G, et al. Survival and dementia in GBA-associated Parkinson’s disease: The mutation matters. Ann Neurol. 2016;80(5):662-673. [DOI: 10.1002/ana.24777](PMID: 27632223)
  • [17] Guerreiro R, Ross OA, Kun-Rodrigues C, et al. Investigating the genetic architecture of dementia with Lewy bodies: a two-stage genome-wide association study. Lancet Neurol. 2018;17(1):64-74. [DOI: 10.1016/S1474-4422(17)30400-3](PMID: 29263008)
  • [18] Majounie E, Renton AE, Mok K, et al. Frequency of the C9orf72 hexanucleotide repeat expansion in patients with amyotrophic lateral sclerosis and frontotemporal dementia: a cross-sectional study. Lancet Neurol. 2012;11(4):323-330. [DOI: 10.1016/S1474-4422(12)70043-1](PMID: 22406228)
  • [19] Ogaki K, Li Y, Atsuta N, et al. Analysis of C9orf72 repeat expansion in 563 Japanese patients with amyotrophic lateral sclerosis. Neurobiol Aging. 2012;33(10):2527.e11-2527.e16. [DOI: 10.1016/j.neurobiolaging.2012.05.011](PMID: 22727276)
  • [20] Konno T, Shiga A, Tsujino A, et al. Japanese amyotrophic lateral sclerosis patients with GGGGCC hexanucleotide repeat expansion in C9ORF72. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2013;84(4):398-401. [DOI: 10.1136/jnnp-2012-302272](PMID: 23012445)
  • [21] Green RC, Roberts JS, Cupples LA, et al. Disclosure of APOE genotype for risk of Alzheimer’s disease. N Engl J Med. 2009;361(3):245-254. [DOI: 10.1056/NEJMoa0809578](PMID: 19605829)
  • [22] Livingston G, Huntley J, Liu KY, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024;404(10452):572-628. [DOI: 10.1016/S0140-6736(24)01296-0](PMID: 39096926)
  • [23] Baig SS, et al. 22 Years of predictive testing for Huntington’s disease: the experience of the UK Huntington’s Prediction Consortium. Eur J Hum Genet. 2016;24(10):1396-1402. [DOI: 10.1038/ejhg.2016.36]

関連記事

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

記事の作り方と生成AIの使い方は、編集方針をご覧ください。