InstagramInstagram

脊髄小脳変性症1型(SCA1)の遺伝子検査|子ども・孫への遺伝と、自分が受け継いでいるかを調べるATXN1検査

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

脊髄小脳変性症1型(SCA1)の遺伝子検査 ATXN1

脊髄小脳変性症1型(脊髄小脳失調症1型、SCA1)は、ATXN1遺伝子のCAGという3文字の繰り返し配列が長くなって起こる、常染色体顕性(優性)遺伝の病気です。親がこの変化をもっていると、お子さんが受け継ぐ確率は2分の1です。この検査では、ATXN1遺伝子の繰り返しの数を測り、ご自身がご家族と同じ変化を受け継いでいるかを、唾液や血液で調べます。先が見えないまま過ごすより、わかったうえで、仕事・結婚や出産・住まい・介護の準備を考えたいという方のための検査です。このページでは、子どもや孫に遺伝する確率、症状と発症年齢、検査でわかること、結果のあとにできることを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

脊髄小脳変性症1型(SCA1)の原因であるATXN1遺伝子のCAGリピートの数を測り、病気を起こす長さかどうかを調べます。ご家族にSCA1の方がいる場合は、ご自身が同じ変化を受け継いでいるかがわかります。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

親・きょうだいがSCA1と診断されていて、自分も受け継いでいるか知りたい症状のない方、ふらつきなどがあり型を確かめたい方、結婚や妊娠を考えている方です。家族の型がわからないときは、まとめて調べる検査が向きます。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込275,000円、結果までは約2週間です。検体は唾液・頬の粘膜・血液などで、唾液や頬の粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。受け継いでいた場合、お子さんに伝わる確率は2分の1です。境界の長さの結果や、ご家族の検査・妊娠の計画についてもご説明します。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの計画に /

📅遺伝カウンセリングを予約する(ご希望があれば検査まで受けられます)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 家族の型がわからない方へ(運動失調リピート伸長パネル)

1. 脊髄小脳変性症1型(SCA1)とは|ATXN1遺伝子のCAGリピートで起こる病気

脊髄小脳変性症1型は、小脳を中心に神経が少しずつ傷み、ふらつき・ろれつの回りにくさ・手足の動かしにくさなどが進んでいく、遺伝性脊髄小脳変性症のひとつです。「脊髄小脳失調症1型」とも呼ばれ、英語の spinocerebellar ataxia type 1 を略してSCA1といいます。原因は、ATXN1遺伝子の中の、CAGという3つの塩基の繰り返し(CAGリピート)が長くなることです。この原因は1993年に報告されました[2]。

ポリグルタミン病のひとつ

CAGは、たんぱく質を作るときにグルタミンというアミノ酸を指定する暗号です。CAGリピートが長くなると、ATXN1遺伝子から作られるたんぱく質(アタキシン1)にグルタミンが長くつながり、神経細胞が傷みやすくなると考えられています。こうした仕組みで起こる病気をまとめてポリグルタミン病といい、繰り返し配列が伸びて起こるリピート伸長病の一群です。ハンチントン病や球脊髄性筋萎縮症も、同じ仲間の病気です。

繰り返し配列の病気は、遺伝子の文字(塩基)が1つ変わるのとは違い、「長さ」の変化です。そのため、遺伝子の配列を読む一般的な検査ではなく、繰り返しの数を測る専用の検査で調べます。

SCA1の初期症状と主な症状

遺伝性疾患の解説書GeneReviewsによると、SCA1の初期症状は、歩きにくさ、ろれつの回りにくさ、体のバランスのとりにくさなどです[1]。診察では、腱反射が強く出ること、目を素早く動かすときに目標を行き過ぎること、眼振(目のふるえ)、軽い飲み込みにくさがみられることがあります[1]。

病気が進むと、目を素早く動かす動き(サッケード)が遅くなる、上を見る動きが制限される、手足の動きの距離や速さがうまく調節できない、といった症状が加わります。さらに進むと、筋肉のやせ、体の位置の感覚の低下、不随意運動(舞踏運動・ジストニア)、飲み込みやしゃべるための筋肉の働きの低下がみられることがあり、呼吸の働きが落ちることが主な死因とされています[1]。

考える力にも影響が出ることがあります。GeneReviewsは、物事を計画して進める力、処理の速さ、注意などの低下が報告され、SCA2・SCA3・SCA6より幅広く、速く低下する傾向があるとしています[1]。症状の出方には個人差が大きく、ここにあげたすべての症状が出るわけではありません。

何歳で発症する?進み方と見通し

SCA1は、多くの場合20〜30代(GeneReviewsの表現では「人生の3番目か4番目の10年」)に発症します。ただし、子どもの時期や高齢になってから発症した例も報告されています[1]。CAGリピートが長いほど、早く発症する傾向があります[1]。60歳を過ぎて発症した場合は、小脳の症状だけが目立つことがあるとされています[1]。

GeneReviewsは、大人になってから発症した場合、発症から亡くなるまでの期間をおよそ10〜30年としています。13歳より前に発症する若年型は、進みがより速いとされています[1]。これは多くの患者さんをまとめた幅であり、一人ひとりの見通しは、繰り返しの長さやそのほかの要因によって違います。ご家族の経過が、そのままご本人に当てはまるとは限りません。

日本では何人に一人?SCA1の頻度と地域

GeneReviewsは、SCA1の有病率を人口10万人あたり1〜2人と推定しています。世界全体では、常染色体顕性遺伝の小脳失調症の約6%がSCA1とされますが、地域による差が大きい病気です[1]。

日本全体では、脊髄小脳変性症の約67%が家族歴のない孤発性、約27%が常染色体顕性遺伝、約1.8%が常染色体潜性遺伝と報告されています。難病情報センターは、日本に多い遺伝性の型として、SCA3(マシャド・ジョセフ病)・SCA6・SCA31・DRPLAをあげています(2025年12月更新の情報、2026年10月時点で確認)。

一方で、地域によってはSCA1の割合が高いことがわかっています。東北地方(主に宮城県)の常染色体顕性遺伝の小脳失調症117家系を調べた研究では、SCA1が24.8%と、わかっている型の中で最も多くみられました[3]。北海道の113家系を調べた研究では、11家系がSCA1でした[4]。東北の研究では、人の移動が少なかった地域で、病気の原因となる長さの手前の繰り返し(中間の長さのアレル)が長く受け継がれてきた可能性が考察されています[3]。

ただし、住んでいる地域で発症するかどうかが決まるわけではありません。大切なのは、ご家族にSCA1と診断された方がいるかどうかです。この地域の差は「この地域で家族に脊髄小脳変性症の方がいるなら、SCA1も型の候補に入る」という意味で受け止めてください。

多系統萎縮症・ほかの型(SCA3・SCA6など)との違い

脊髄小脳変性症は、たくさんの病気をまとめた呼び名です。SCA1は、そのうちの遺伝性の型のひとつで、原因をATXN1遺伝子の検査で確かめられます。指定難病の制度では、多系統萎縮症は脊髄小脳変性症とは別の病気として扱われています(第8章)。症状が似ていても、遺伝するかどうか、どの遺伝子を調べればよいかは型によってまったく違います。

ご家族の型がSCA1とわかっていればこのページの検査を、ほかの型とわかっていれば、その型の検査を選びます。当院で扱っている主な型の検査は次のとおりです。

🧬 脊髄小脳変性症の型と、当院の個別の検査

※型がわからない場合は、運動失調リピート伸長パネル(18遺伝子)でまとめて調べられます(第4章)。

2. 脊髄小脳変性症は遺伝する?子ども・孫に遺伝する確率

SCA1は常染色体顕性(優性)遺伝で、親が原因の変化をもっていれば、お子さんが受け継ぐ確率は、性別に関係なくお子さん1人ごとに2分の1です[1]。「脊髄小脳変性症は遺伝するか」は型によって違い、家族歴のない孤発性の脊髄小脳変性症もあります。SCA1は、遺伝する型にあたります。

父親から・母親から:お子さんへの確率は2分の1

常染色体顕性(優性)遺伝では、対になった2本の染色体のうち1本に原因の変化があれば発症しうるため、親から子へ伝わる確率は2分の1です。父親から伝わる場合も、母親から伝わる場合も、確率は同じ2分の1です。男の子か女の子かで確率が変わることもありません。上のお子さんが受け継いだかどうかで、下のお子さんの確率が変わることもありません。

父親からか母親からかで違うのは、確率ではなく、伝わるときに繰り返しの数が変わりやすいかどうかです(下の「表現促進現象」で説明します)。

孫に遺伝する?「隔世遺伝」のように見えるのはなぜ

お子さんが原因の変化を受け継いでいなければ、そのお子さんから孫へSCA1が伝わることはありません。孫に伝わるのは、間の世代のお子さんが変化を受け継いでいる場合で、その場合に孫へ伝わる確率は、孫1人ごとに2分の1です。

それでも、祖父母と孫に病気があり、間の親には症状がないように見えることがあります。親が発症する年齢になる前に別の理由で亡くなった場合や、親の発症が遅く、孫のほうが先に発症した場合などです。原因の変化そのものは世代を飛ばして伝わるわけではなく、間の親も変化をもっていたと考えます。祖父母がSCA1で、親が検査を受けていない場合、孫の世代の方の確率は、親が受け継いでいるかどうかによって変わります。

表現促進現象:次の世代で早く・重く出ることがある

SCA1では、世代を重ねるごとに発症が早く、重くなる「表現促進現象」がみられることがあります[1]。これは、親から子へ伝わるときにCAGリピートがさらに長くなることがあるためです。GeneReviewsは、父親から伝わるときに繰り返しが長くなりやすく、母親から伝わるときは短くなることのほうが多いとしています[1]。

⚠️ 「親が軽いから、子どもも軽い」とは言えません

親御さんの発症が遅かったり症状が軽かったりしても、同じ変化を受け継いだお子さんで、繰り返しが長くなって早く発症することがあります。とくに父親から伝わるときは、繰り返しが長くなりやすいとされています[1]。親の経過だけで子どもの見通しを決めず、知ったうえで計画することに意味があります。

きょうだいが受け継いでいる確率

親のどちらかがSCA1の原因の変化をもっている場合、きょうだいはそれぞれ独立に2分の1の確率で受け継ぎます。きょうだいの1人が発症したからといって、ほかのきょうだいの確率が上がったり下がったりはしません。症状の出方や発症の年齢は、同じきょうだいの間でも違うことがあります。

3. ATXN1遺伝子検査でわかること|CAGリピート数の読み方

この検査では、ATXN1遺伝子のCAGリピートの数を測り、病気を起こす長さかどうかを判定します。繰り返しの長さを確かめる方法として、repeat-primed PCR法とアンプリコン長解析を使います。どちらも、繰り返し配列の部分を増やして長さを測る方法で、繰り返しが長くなっているかどうかを見つけるために使われます。

遺伝子検査そのものの一般的なメリットとデメリットについては、遺伝子検査(遺伝学的検査)とはで解説しています。

リピート数の目安(正常・境界・発症の範囲)

📏 ATXN1遺伝子のCAGリピート数の読み方

CAGリピートの数 意味
6〜35回 正常の範囲。繰り返しの途中にCATが混ざっていて、子どもに伝わるときも長さが変わりにくい
36〜38回(CATが混ざっていない) 変化しやすい正常の長さ(中間の長さ)。ご本人は発症しないが、お子さんに伝わるときに長くなることがある
39〜44回(CATが混ざっていない) 発症する長さ(完全浸透)。症状が出ると考えられ、長いほど早く発症する傾向がある
36〜44回(CATが混ざっている) 正常と扱われる。ただし、CATの混ざった44回で66歳まで症状のなかった女性の報告など、例外的な報告がある
45回以上 病気を起こす長さの範囲。CATの混ざった46〜70回の報告もあり、CATがあると、長さから予想されるより発症が遅くなりうるとされる

※GeneReviews(2023年2月更新)[1]の区分による。境界の長さの意味は、ご家族の情報とあわせて遺伝カウンセリングでご説明します。

リピートの中のCATで、結果の意味が変わる

SCA1では、繰り返しの「長さ」だけでなく、繰り返しの途中にCATという別の3文字が混ざっているかどうかで、結果の意味が変わります。正常な長さのATXN1遺伝子では、CAGの繰り返しの途中にCATがはさまっています。GeneReviewsによると、36〜44回の範囲では、CATが混ざっていれば正常、混ざっていなければ36〜38回は変化しやすい正常の長さ、39回以上は発症する長さと判断されます[1]。

CATの有無は、原因の変化をもっていても発症するかどうか(浸透率)にも関わります。GeneReviewsは、39〜44回の長さが見つかったときはCATの有無を別に確かめる必要があること、44回を超える長い繰り返しでは、ふつうの検査でCATの有無を確実に見分けられないことを記載しています[1]。そのため、結果が境界の長さだったときは、数字だけで判断せず、ご家族の発症の有無や年齢とあわせて、臨床遺伝専門医が意味をご説明します。

💡 用語解説:中間の長さ(変化しやすい正常の長さ)

ご本人は発症しない長さですが、お子さんに伝わるときに繰り返しが長くなり、発症する長さになることがある範囲です。SCA1では、CATの混ざっていない36〜38回がこれにあたります[1]。ご家族に症状のある方がいないのに、お子さんの世代で発症する理由のひとつになります。

調べる遺伝子と関係する病気

🧪 脊髄小脳変性症1型(SCA1)の遺伝子検査で調べる遺伝子

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた 調べること
ATXN1(1遺伝子) 脊髄小脳変性症1型(脊髄小脳失調症1型、SCA1) 常染色体顕性(優性)遺伝 CAGリピートの数

※対象遺伝子は当院の検査内容による。病気と遺伝のしかたはGeneReviews[1]による。

この検査でわからないこと

この検査でわかるのは、ATXN1遺伝子のCAGリピートの長さだけです。次のことは、この検査ではわかりません。

  • ●ほかの型の脊髄小脳変性症:SCA2・SCA3・SCA6など、ほかの型の原因は調べません。家族の型がわからない場合は、第4章の検査を選びます。
  • ●とても長い繰り返しの正確な数:繰り返しが大きく伸びている場合、伸びていることはわかっても、正確な数を決められないことがあります。
  • ●遺伝子のほかの変化:ATXN1遺伝子の配列を読む検査や、遺伝子の一部がなくなる・増える変化(欠失・重複)の検査、メチル化の検査は含まれていません。
  • ●発症する年齢・症状の重さ:繰り返しが長いほど早く発症する傾向はありますが、何歳で、どの程度の症状が出るかを、一人ひとりについて言い当てることはできません[1]。
  • ●陰性でも、ふらつきの原因すべてを否定できるわけではありません:症状のある方でATXN1の繰り返しが正常だった場合、SCA1は考えにくくなりますが、ほかの原因が残ります。

遺伝子の配列を読む検査では、病気の原因かどうかまだ判断できない変化(VUS:意義がまだわからない変化)が見つかることがあります。この検査は繰り返しの長さを測る検査ですが、境界の長さの結果のように、すぐには意味を決められない結果が出ることはあります。調べた目的と別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

4. どんな人がこの検査を受けるとよいか

ご家族にSCA1と診断された方がいて、ご自身が受け継いでいるか知りたい方に、いちばん向いている検査です。「脊髄小脳変性症の遺伝子検査はどこで受けられるのか」と探している方も多いと思います。当院では、臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリングのうえで、ご希望の方には検査まで行っています。

家族に脊髄小脳変性症1型の方がいて、自分も受け継いでいるか知りたい方

親・きょうだいがSCA1と診断されている方は、ご自身も2分の1の確率で同じ変化を受け継いでいる可能性があります。症状のない方が、将来発症する可能性を調べる検査を「発症前診断」といいます。結果は、ご自身の将来の計画だけでなく、ご両親・きょうだい・お子さんが自分のことを考える手がかりにもなります。

ご家族の型がSCA1と確定していることが、この検査を選ぶ前提です。ご家族の診断名が「脊髄小脳変性症」だけで型がわからない場合は、下の「型がわからないとき」をご覧ください。

ふらつき・ろれつの回りにくさがあり、型を確かめたい方

歩くときのふらつき、ろれつの回りにくさ、手足の動かしにくさなどがあり、ご家族にSCA1の方がいる場合は、この検査で原因を確かめられます。型がわかると、ほかの型と区別して見通しや注意点を考えられ、ご家族の検査にもつながります。

「自分もなるかもしれない」という不安を抱えながら暮らしている方へ

親やきょうだいが発症するのを見てきた方の中には、ちょっとしたつまずきや、言葉が出にくい瞬間があるたびに「始まったのでは」と不安になりながら暮らしている方もいます。

検査で、ご家族の原因となっている変化を受け継いでいないとわかれば、SCA1については、ご家族と同じ確率を心配する必要はなくなります。また、そのお子さんや孫の世代にも、ご自身からSCA1が伝わることはありません。一方で、受け継いでいるとわかった場合にも、見張り・リハビリ・生活の計画など、そのあとにできることがあります(第7章)。

知らないでいることも、ひとつの選択です。当院では、検査を受けるかどうかを、検査の前に臨床遺伝専門医と時間をかけて考えていただけます。検査を受けたあとも、結果を受け止めるまでの気持ちの変化について、遺伝カウンセリングで相談を続けていただけます。

結婚や妊娠を考えている方

ご家族に脊髄小脳変性症の方がいることで、結婚や妊娠に迷いを感じている方もいると思います。お子さんに伝わる確率はご家族の状況によって違い、検査で「わかること」があります。ご自身が変化を受け継いでいるかがわかれば、受け継いでいない場合はお子さんに伝わる心配はなくなり、受け継いでいる場合はお子さんごとに2分の1という確率をもとに、これからを考えられます。

妊娠の前に知っておけば、出生前診断を計画するなど、選べることが増えます(第7章)。結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。どの選択も、ご本人とパートナーが決めることで、当院はその選択を尊重します。

型がわからないとき・ほかの検査が向いているとき

ご家族の型がSCA1とわかっていれば、このページの検査です。型がわからない場合は、運動失調の原因になる繰り返し配列をまとめて調べる検査のほうが向いています。症状やご家族の情報によって、次のように選びます。

🔍 状況に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
家族の型がSCA1とわかっている このページの検査(ATXN1)
家族に脊髄小脳変性症の方がいるが、型がわからない 運動失調リピート伸長パネル(18遺伝子)
リピート伸長の検査で原因がわからなかった 運動失調症遺伝子検査パネル
大人になってから失調が始まった 遅発性運動失調症遺伝子パネル検査
子どものうちに失調が始まった 早期発症運動失調症遺伝子検査パネル
中高年でふるえと失調があり、脆弱X関連振戦/失調症候群(FXTAS)を考える FMR1遺伝子リピート伸長検査(FXTAS)
ハンチントン病など、ほかの単一遺伝子のリピート伸長を調べたい ハンチントン病など単一遺伝子のリピート伸長検査

※GeneReviewsは、関係のない変化が見つかることがある多遺伝子パネルより、家族の型がわかっている場合はATXN1の単独の検査を先に行うのが一般的としています[1]。どの検査が合うかは、遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

\ 妊娠の前に知れば、選べることが増えます /

📅遺伝カウンセリングを予約する(ご希望があれば検査まで受けられます)

受け継いでいるとわかった方が妊娠したとき、羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます(2025年6月から産婦人科を併設)。

海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

5. 発症前診断を受ける前に考えておきたいこと

症状のない方がSCA1の検査を受けるかどうかは、遺伝カウンセリングで十分に考えてから、ご本人が決めます。結果は一生変わらない情報で、知ったあとに「知らなかった頃」に戻ることはできないからです。

知りたい方も、知らないでいたい方も尊重します

当院は、ライフステージごとに患者さんの人生をサポートするという考え方で診療しています。知りたいと願う方を拒むことはしません。遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合は、その意思を尊重して検査まで行います。知らないでいる選択も、同じように尊重します。

先が見えないまま過ごすより、わかったうえで、仕事・結婚や出産・住まい・介護の準備など、これからの人生を計画したいと考える方もいます。英国でハンチントン病の発症前検査を受けた人の理由として最も多かったのは「不確実さを減らすため」(70.5%)でした[5]。病気は違いますが、同じように成人になってから発症するポリグルタミン病で、「知ることで計画を立てたい」という思いは共通するものだと考えています。

検査の前に遺伝カウンセリングで話し合うこと

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか(第3章)、受け継いでいた場合と受け継いでいなかった場合、それぞれのあとの気持ちの変化、ご家族に結果をどう伝えるか、などをお話しします。結果がどちらでも、気持ちの変化は起こりうるものです。

検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。説明を聞いたうえで、今は受けないと決めることもできます。

未成年の方の発症前診断は原則として行いません

GeneReviewsは、早く知っても治療や経過が変わらない場合、成人になってから発症する病気について、症状のない未成年の方に検査を行うのは適切でないと考えられている、としています。一方で、ご家族で診断が確定していて症状がある方は、年齢にかかわらず検査の対象になるとしています[1]。当院でも、症状のない未成年の方の発症前診断は原則として行わず、ご本人が成人して自分で判断できるようになってから、とお考えいただいています。考え方の詳しい解説は、未成年者の遺伝学的検査に関するガイドラインをご覧ください。

6. 結果が出たあと(受け継いでいない・受け継いでいる・判定がむずかしい場合)

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。

受け継いでいなかった場合

ご家族の原因となっている繰り返しの伸長が見つからず、正常の範囲だった場合は、ご家族のSCA1をご自身が受け継いでいないと考えられます。ご自身のお子さんや孫に、ご自身からSCA1が伝わることはありません。ただし、ほかの病気が起こらないことまでわかるわけではありません。また、ご自身の繰り返しが36〜38回の中間の長さだった場合は、お子さんに伝わるときの変化についてご説明します。

受け継いでいた場合

発症する長さの繰り返しが見つかった場合は、ご家族と同じ変化を受け継いでいると考えられます。いつ発症するか、どの程度の症状になるかを一人ひとりについて言い当てることはできませんが[1]、わかったうえで、次の章のように、見張りや生活の計画、ご家族の検査、子どもを持つときの選択肢を考えられます。

境界の長さや、CATの混じったリピートが見つかった場合

36〜44回の範囲では、CATが混ざっているかどうかで意味が変わります(第3章)[1]。こうした結果のときは、数字だけで判断せず、ご家族の発症の有無や発症年齢とあわせて、意味を一緒に考えます。結果の報告書の読み方は、遺伝子検査結果の見かたでも解説しています。

7. 病的変異が見つかったら、次にできること

SCA1の進行を遅らせたり止めたりする治療は、まだ確立していません。それでも、わかったあとにできることはあります[1]。わかるだけで終わらないよう、立場ごとに、次の一歩をまとめます。当院は治療を行っていないため、治療やリハビリは専門の医療機関で受けていただきます。

見張り・リハビリ・転倒と飲み込みへの備え

症状のある方は、脳神経内科の専門の医療機関で、症状の変化を定期的に確かめていきます。GeneReviewsは、さまざまな職種がかかわる支えるケアを勧め、理学療法では筋力を鍛えることより、バランス・歩くこと・手足の協調の練習を優先するとしています[1]。

日本の研究では、小脳の症状が中心の脊髄小脳変性症の42人を対象に、協調・バランス・日常の動作に重点を置いた入院でのリハビリ(4週間)を行ったところ、行わなかった期間と比べて、失調・歩く速さ・日常生活の動作が改善しました。失調の改善は12週、歩行の改善は24週まで保たれていました[6]。SCA1だけを調べた研究ではありませんが、リハビリを続ける意味を示す結果です。

GeneReviewsは、飲酒や、神経に害のある薬(イソニアジド、高用量のビタミンB6など)を避けること、けがにつながりやすい活動を避けることも勧めています[1]。飲み込みにくさが出てきたら、早めに専門の医療機関に相談します。

症状のない方(発症前に受け継いでいるとわかった方)は、今すぐ治療を始めるわけではありませんが、症状が出はじめたときにどこに相談するかを決めておく、体の変化に気づきやすくしておく、などの準備ができます。

症状に合わせた治療と、治験・研究の動き

難病情報センターは、脊髄小脳変性症の失調に対して、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)やTRHの誘導体が使われること、症状によっては筋肉のけいれんやめまいに対する薬が使われることを紹介しています(2025年12月更新の情報、2026年10月時点で確認)。どの薬が合うかは、専門の医療機関で症状に合わせて決めます。

GeneReviews(2023年更新)は、SCA1の進行を遅らせたり止めたりする治療は知られていないとしたうえで、研究段階の薬の治験が行われていることを記載しています[1]。遺伝子検査で型が確定していれば、その型を対象にした研究や治験の情報を探しやすくなります。最新の状況は、専門の医療機関でご確認ください。

仕事・運転・住まい・介護の計画

受け継いでいるとわかった方の中には、症状が出る前から、仕事の続け方、車の運転をいつまで続けるか、段差の少ない住まいへの住み替え、ご家族の介護の分担などを考えはじめる方もいます。指定難病の医療費の助成(第8章)や、症状に応じた福祉の制度も、知っておくと計画に役立ちます。すべてを一度に決める必要はなく、時間をかけて、ご家族と話し合いながら考えていけます。

ご家族の検査

ご家族の中で原因の変化がわかっていると、きょうだい・お子さん(成人の方)・親御さんは、同じATXN1遺伝子の繰り返しを調べることで、受け継いでいるかどうかを確かめられます。症状のないご家族の検査は発症前診断になるため、ご本人の同意のもと、検査の前に遺伝カウンセリングで、知ることの意味をよく考えていただきます(第5章)。

子どもを持つときの選択肢

ご家族の原因の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べることができます。GeneReviewsは、ご家族の伸長が確認されていれば、出生前検査も着床前検査も可能としています。ただし、出生前の結果から、発症する年齢や症状の重さ、進み方を確実に予測することはできないとされ、出生前検査を使うかどうかは、多くの施設で個人の判断とされています[1]。

絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。成人になってから発症する病気の出生前診断の扱いには、国内の指針を踏まえた個別の判断が必要です。妊娠を考えるときは、出生前診断ができるかも含めて、妊娠を考えている段階から当院でご相談ください。当院は分娩・体外受精を行っていません。

体外受精でできた受精卵を調べる着床前検査(PGT-M)という選択肢もあります(下で説明します)。また、出生前診断を受けずに、そのまま妊娠・出産をすることも、もちろん選べる選択肢です。どの選択も、ご本人とパートナーが決めることで、当院はその選択を尊重します。

海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます

PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因の遺伝子の変化の確定、英語の検査結果の用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠後の絨毛検査・羊水検査(院内)です。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。

欧州ヒト生殖学会(ESHRE)の指針は、PGT-Mの準備として、①病気の原因と確かめられた遺伝子の変化があること、②どの遺伝子のどの変化かが書かれた元の報告書、③ご家族の検体、をあげています[7]。受精卵から取れるDNAはごくわずかで、変化を直接読むだけでは判定を誤るおそれがあるため、変化のある場所の両側にある目印(多型マーカー)で「変化をもつ染色体」を家系の中でたどる方法を組み合わせます。そのために、ご夫婦に加えて、病気の有無がわかっている血縁者のDNAが必要になります。SCA1のような顕性遺伝の病気では、指針の目安は、患者さん少なくとも1人(できれば2人)、および/または発症していない方1人です[7]。

ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。血縁者がいない場合について、指針はご夫婦で目印を調べたうえで、治療周期の受精卵や1個の精子を調べて変化の乗った染色体を決める方法をあげていますが、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります[7]。海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。

臨床遺伝専門医としての判断では、境界の長さのように意味が決まりきらない結果は、そのままPGT-Mの対象にするのが難しいことがあります。また、海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もって確認してください。

⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です

PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[8]。当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でも、院内でご相談いただけます。

日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます。この指針の「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、申請の時点で有効な治療法がないか、治療法があっても高度かつ侵襲度の高いもの、とされています。成人に達する前に生存が危ぶまれるわけではないものの日常生活が著しく損なわれる状態が現れる疾患は、その病気の専門医の意見書などを追加で出す仕組みになっています(2026年10月時点で確認)。

PGT-Mの対象になる病気は、国によって違います。日本では症例ごとに学会が審査し、審査が続いている申請も多い状況です(学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち、37件が審査継続中。2026年9月発表)。英国では、公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気が載っています(2026年9月17日更新の一覧で2,067)。脊髄小脳失調症も、多くの型がこの一覧に載っています。一覧にない病気は、施設を通じて申請し、HFEAが審査します。米国では、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[9]。米国生殖医学会(ASRM)の倫理委員会は2024年、大人になってから発症する病気に対するPGT-Mも倫理的に許容されうるとする意見を出しています[10]。どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。

必要な準備やご家族の検体が要る理由は、遺伝性疾患をお持ちで海外でPGT-Mを考えている方へで詳しく解説しています。

8. 日本の制度:脊髄小脳変性症は指定難病(18)

脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)は、指定難病18に指定されています(2026年10月時点、難病情報センターで確認)。難病情報センターによると、2012年度の医療受給者証の所持者は25,447人でした。多系統萎縮症は、これとは別の病気として扱われています。

医療費の助成を受けるには、診断基準と重症度の基準を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センターやお住まいの自治体の窓口でご確認ください。発症前に受け継いでいるとわかっただけでは、助成の対象にはなりません。当院の検査・遺伝カウンセリングは、すべて自費診療です。

9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込275,000円、結果までは約2週間です。唾液・頬の粘膜・血液のいずれでも検査でき、オンライン診療で遺伝カウンセリングを受けたあと、検体を当院にお送りいただく流れでも受けられます。

ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
検体の採取唾液・頬の粘膜・血液
▶
結果のご説明約2週間後・マイページへ

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検査内容 ATXN1遺伝子のCAGリピート伸長解析(repeat-primed PCR法・アンプリコン長解析)
検査費用 275,000円(税込)
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 約2週間
検体 血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬の粘膜(スワブ)、唾液(採取キットをお送りします)
オンライン診療 唾液・頬の粘膜・血液のいずれもオンライン診療で受けられます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。当院の検査・遺伝カウンセリングは、すべて自費診療です。

オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。検体の取り違えを防ぎ、検査に必要な品質を保つため、ご自身の判断で先に検体を採取することはしないでください。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたをご覧ください。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、ご家族とこれからの計画に /

📅遺伝カウンセリングを予約する(ご希望があれば検査まで受けられます)

唾液・頬の粘膜ならオンライン診療で受けられ、結果までは約2週間です。結果は臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

10. 院長コラム:知ってから、人生の大きな選択をするということ

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【知ってから決めることと、知らずに決めることは違う】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。SCA1は、親から子へ伝わるときに繰り返しが長くなり、次の世代で早く発症することがある病気です。だからこそ、「親は発症が遅かったから」「まだ症状がないから」という印象だけで、将来を決めてしまわないでほしいと考えています。

結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。知ってから決めるのと、知らずに決めるのとでは、同じ選択でも意味が違う、と私は考えています。もちろん、知らないでいることを選ぶ方の気持ちも尊重します。大切なのは、ご本人が十分に考えたうえで選べることです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、検査から遺伝カウンセリング、出生前診断まで、当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 脊髄小脳変性症1型は父親から遺伝しますか?母親からでは違いますか?

脊髄小脳変性症1型(SCA1)は常染色体顕性(優性)遺伝で、父親からでも母親からでも、お子さんが受け継ぐ確率は1人ごとに2分の1です。違いがあるのは、伝わるときに繰り返しの数が変わりやすいかどうかで、GeneReviewsは、父親から伝わるときに繰り返しが長くなりやすく、母親から伝わるときは短くなることのほうが多いとしています。

Q2. 脊髄小脳変性症は孫に遺伝しますか?

SCA1の場合、間の世代のお子さんが原因の変化を受け継いでいなければ、孫に伝わることはありません。お子さんが受け継いでいる場合は、孫1人ごとに2分の1の確率で伝わります。祖父母と孫に病気があり、間の親に症状がないように見えるときも、変化が世代を飛ばしたのではなく、親も変化をもっていたと考えます。

Q3. 脊髄小脳変性症1型は何歳ごろ発症しますか?

GeneReviewsによると、多くは20〜30代に発症しますが、子どもの時期や高齢になってから発症した例も報告されています。CAGリピートが長いほど早く発症する傾向があります。ただし、何歳で発症するかを一人ひとりについて言い当てることはできません。

Q4. 家族に脊髄小脳変性症の人がいると、結婚に差し支えますか?

結婚するかどうかは、ご本人とパートナーが決めることです。お子さんに伝わる確率はご家族の状況によって違い、検査でご自身が変化を受け継いでいるかがわかります。受け継いでいなければ、ご自身からお子さんにSCA1が伝わることはありません。受け継いでいる場合も、出生前診断などの選択肢を知ったうえで、これからを考えられます。

Q5. 検査で受け継いでいないとわかったら、子どもに遺伝することはありますか?

ご家族の原因となっている繰り返しの伸長を受け継いでいなければ、ご自身からお子さんにSCA1が伝わることはありません。ただし、ご自身の繰り返しが36〜38回の中間の長さ(CATが混ざっていない)だった場合は、お子さんに伝わるときに長くなることがあるため、遺伝カウンセリングで意味をご説明します。

Q6. 脊髄小脳変性症の遺伝子検査はどこで受けられますか?費用はいくらですか?

当院では、臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリングのうえで、脊髄小脳変性症1型(ATXN1)の遺伝子検査を受けられます。検査費用は税込275,000円、結果までは約2週間で、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。唾液や頬の粘膜ならオンライン診療でも受けられます。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご家族の型がわからない場合は、運動失調リピート伸長パネルでまとめて調べられます。

Q7. 未成年の子どもに発症前の検査を受けさせることはできますか?

症状のない未成年の方の発症前診断は、原則として行っていません。GeneReviewsも、早く知っても治療や経過が変わらない場合、成人になってから発症する病気について、症状のない未成年の方に検査を行うのは適切でないと考えられているとしています。ご本人が成人して、自分で判断できるようになってからお考えください。

Q8. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?

はい。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。なお、当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。PGT-Mの準備には、ご本人の結果だけでなく、ご家族の検体が必要になることがふつうです。

🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。脊髄小脳変性症1型の原因の変化を受け継いでいるかがわかれば、ご自身の生活の計画だけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Opal P, Ashizawa T. Spinocerebellar Ataxia Type 1. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 1998 (Updated 2023 Feb 2). [NCBI Bookshelf NBK1184]
  • [2] Orr HT, Chung MY, Banfi S, et al. Expansion of an unstable trinucleotide CAG repeat in spinocerebellar ataxia type 1. Nat Genet. 1993;4(3):221-226. [DOI: 10.1038/ng0793-221]
  • [3] Onodera Y, Aoki M, Tsuda T, et al. High prevalence of spinocerebellar ataxia type 1 (SCA1) in an isolated region of Japan. J Neurol Sci. 2000;178(2):153-158. [DOI: 10.1016/S0022-510X(00)00390-7](PMID: 11018707)
  • [4] Basri R, Yabe I, Soma H, et al. Spectrum and prevalence of autosomal dominant spinocerebellar ataxia in Hokkaido, the northern island of Japan: a study of 113 Japanese families. J Hum Genet. 2007;52(10):848-855. [DOI: 10.1007/s10038-007-0182-x]
  • [5] Baig SS, et al. 22 Years of predictive testing for Huntington’s disease: the experience of the UK Huntington’s Prediction Consortium. Eur J Hum Genet. 2016;24(10):1396-1402. [DOI: 10.1038/ejhg.2016.36]
  • [6] Miyai I, Ito M, Hattori N, et al. Cerebellar ataxia rehabilitation trial in degenerative cerebellar diseases. Neurorehabil Neural Repair. 2012;26(5):515-522. [DOI: 10.1177/1545968311425918](PMID: 22140200)
  • [7] ESHRE PGT-M Working Group, Carvalho F, Moutou C, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the detection of monogenic disorders. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa018. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa018]
  • [8] ESHRE PGT Consortium Steering Committee, Carvalho F, Coonen E, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the organisation of PGT. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa021. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa021]
  • [9] Nakasato K, Yamamoto BA, Kato K. Evaluating standards for ‘serious’ disease for preimplantation genetic testing: a multi-case study on regulatory frameworks in Japan, the UK, and Western Australia. Hum Genomics. 2022;16:16. [DOI: 10.1186/s40246-022-00390-3]
  • [10] Ethics Committee of the American Society for Reproductive Medicine. Use of preimplantation genetic testing for monogenic adult-onset conditions: an Ethics Committee opinion. Fertil Steril. 2024;122:607-611. [ASRM]

関連記事

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

記事の作り方と生成AIの使い方は、編集方針をご覧ください。