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NIPTを受けたAさんのケースレポート|保因者検査から確定検査まで

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

関根りささんがお子さんの遺伝性の病気を公表したことをきっかけに、「夫婦の遺伝子検査」を調べる方が増えました。この検査は保因者検査といい、夫婦がそれぞれ、子どもに伝わる可能性のある遺伝子の変化を持っていないかを調べるものです。このページでは、公表をきっかけに保因者検査を受け、X染色体にある遺伝子の変化の保因者と分かったAさんが、妊娠後にNIPTで赤ちゃんの性別を確かめ、確定検査で結果を知るまでを紹介します。保因者検査・着床前診断・出生前診断の違いも、あわせて整理します。

📌 このページについて

この物語は、実際の患者さんの体験をもとにしていますが、プライバシー保護のために一部を脚色し、フィクションとして構成しています。また、このページは関根りささんご本人の診療について書いたものではありません。関根さんについては、ご本人が公表している内容だけを出典つきで紹介しています。

この記事でわかること
📖 読了時間:約12分
🧬 保因者検査・NIPT・確定検査
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤保因者検査・着床前診断(PGT-M)・出生前診断の違い
  • ➤夫婦がともに保因者の場合(25%)と、X連鎖の保因者の場合(性別で変わる)の違い
  • ➤X連鎖の保因者が妊娠したとき、最初に赤ちゃんの性別を確かめる理由
  • ➤NIPTで分かること・分からないこと(家系の病気そのものはNIPTでは調べられない)
  • ➤確定検査(絨毛検査・羊水検査)の流れと、結果が出るまでの日数

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. 関根りささんの公表で注目された「夫婦の遺伝子検査」とは?

保因者検査のことです。夫婦がそれぞれ、同じ病気の遺伝子の変化を持っていないかを調べます。関根さんは、ご夫婦がともに同じ病気の遺伝子の変化を持っていたと公表しています。この場合、お子さんがその病気を持つ確率は、妊娠のたびに25%です。

🔬 Q. 着床前診断と出生前診断は何が違う?

着床前診断(PGT-M)は、体外受精でできた受精卵を子宮に戻す前に調べる検査です。出生前診断は妊娠してから赤ちゃんを調べる検査で、NIPT・絨毛検査・羊水検査があります。当院は体外受精を行っていないため着床前診断は行っておらず、保因者検査・NIPT・確定検査を行っています。

👶 Q. X連鎖の保因者と分かったら、妊娠後は何をする?

まずNIPTで赤ちゃんの性別を確かめます(当院は妊娠9週から)。男の子なら、絨毛検査や羊水検査で、家系で分かっている遺伝子の変化を受け継いでいるかを調べます。NIPTでは、家系の病気そのものは調べられません。

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📅 NIPTを予約する

当院のNIPTは、18・13トリソミーや微小欠失症候群、単一遺伝子の病気の一部まで調べられます。調べる範囲は、90分の受診枠の中で臨床遺伝専門医と決められます。

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AさんがNIPTを受けたきっかけ

関根りささんの公表がきっかけに

Aさんは、YouTubeで関根りささんの動画をよく見ていました。日々の楽しみのひとつで、関根さんの考え方にも共感していました。

ある日、Aさんは関根さんの発信で、お子さんに遺伝性の病気があることを知りました。関根さんは2023年4月、長男に遺伝性の病気(接合部型表皮水疱症)があること、ご夫婦がともにこの病気の遺伝子の変化を持っていたことを公表しています[1][2]。

「遺伝のことって、自分にも関係あるのだろうか?」。公表を知ったAさんは、自分自身の遺伝のリスクについて考え始めました。これまで遺伝性の病気を深く意識したことはありませんでしたが、自分や家族にも関わることかもしれないと思うようになったのです。

Aさんは、夫とこの話題について話し合いました。「私たちにも遺伝のリスクがあるかもしれないし、一度検査を受けておいたほうがいいのでは?」と切り出すと、夫も賛成しました。「将来、子どもを授かることを考えるなら、先に調べておこう」。こうしてAさん夫婦は、保因者検査を受けることを決め、ミネルバクリニックを受診しました。

公表で注目された3つの検査 ― 保因者検査・着床前診断・出生前診断の違い

関根さんの公表のあと、「遺伝子検査」「着床前診断」「出生前診断」という言葉を調べる方が増えました。この3つは、調べる時期と、調べる相手が違います。

🧬 保因者検査・着床前診断・出生前診断の違い

検査 いつ 何を調べるか 当院では
保因者検査 妊娠前(妊娠中も受けられる) 夫婦それぞれが、子どもに伝わる可能性のある遺伝子の変化を持っていないか 行っている(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子)
着床前診断(PGT-M) 体外受精でできた受精卵を子宮に戻す前 受精卵の一部の細胞で、家系で分かっている遺伝子の変化があるか 行っていない(体外受精を行っていないため)
出生前診断 妊娠してから NIPTは母体の血液で染色体などを調べるスクリーニング検査。絨毛検査・羊水検査は赤ちゃん由来の細胞を直接調べる確定検査 行っている(NIPT、絨毛検査・羊水検査とも院内)

保因者検査は、米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)が、妊娠中の方と妊娠を考えている方の全員に提供することを勧めている検査です[4]。当院の保因者検査は、女性版が787遺伝子(X染色体の遺伝子を含む)、男性版が714遺伝子を対象にしています。

着床前診断(PGT-M)は、日本では日本産科婦人科学会の見解にもとづき、重い遺伝性の病気を対象に、症例ごとに学会へ申請したうえで行われます[5]。関根さんは2024年7月、第2子に向けて海外で着床前診断を受けることを伝え[2]、2026年7月に第2子の出産を報告しています[3]。着床前診断と、妊娠してからの出生前診断のどちらを選ぶかは、病気の種類やご夫婦の考え方で変わります。考え方の整理は着床前診断(PGT-M)だけが選択肢ではない理由で解説しています。

遺伝のしかたにも違いがあります。関根さんのご家族の場合は、夫婦がともに同じ病気の保因者のときに起こる「常染色体潜性(劣性)遺伝」で、お子さんがその病気を持つ確率は、性別に関係なく、妊娠のたびに25%です[2]。これに対して、Aさんに見つかったのは「X連鎖」という別の型で、赤ちゃんの性別によって確率が変わります。このあとの物語は、X連鎖の場合の流れです。

💡 用語解説:保因者(ほいんしゃ)

病気に関係する遺伝子の変化を持っているものの、自分はその病気を発症していない人のことです。保因者であることは、本人の生活や行動が原因で起こるものではありません。症状がないため、検査を受けるまで気づかないことがほとんどです。

夫婦で保因者検査を決意しミネルバクリニックへ

保因者検査を受けると決めたものの、Aさんの心は晴れませんでした。「本当に受けて大丈夫なのだろうか……」。検査の日が近づくにつれて、不安が大きくなっていきました。

夫は「何か分かっても、知っていれば対策できる」と励ましてくれましたが、Aさんの頭の中では「もし自分が保因者だったら?」「私のせいで子どもに影響があったら?」という考えが巡っていました。「何も知らないままのほうが、幸せなのかもしれない」。そんな考えもよぎりました。

検査当日。診察室では、臨床遺伝専門医が検査の流れと遺伝のしくみを説明しました。「X染色体にある遺伝子も含めて、病気に関係する変化があるかどうかを調べます。結果が出るまで少し時間がかかりますが、その間に不安なことがあれば、いつでも連絡してください」。

Aさんはうなずきながらも、まだ迷っていました。「もし何かが見つかったら、私は耐えられるのだろうか」。ふと横を見ると、夫が手を握ってくれていました。「どんな結果でも、一緒に受け止めよう」。その言葉で、Aさんは検査を受ける気持ちを固めました。何も知らないまま不安を抱え続けるより、知ることでできることがあるかもしれない、と考えたのです。

夫婦で保因者検査の結果を聞くためにミネルバクリニックへ

Aさん夫婦は、検査結果を聞くために再びミネルバクリニックを訪れました。遺伝子検査の結果は専門的で複雑なため、ミネルバクリニックでは、対面またはオンライン診療で臨床遺伝専門医が説明します。この日は、Aさん夫婦のために約2時間の診療時間がとられていました。

医師は、報告書を手に話し始めました。「今回の検査で、AさんのX染色体に、病気に関係する遺伝子の変化が見つかりました。Aさんは保因者ということになります。Aさんご自身に症状が出る可能性は高くありませんが、将来男の子を妊娠した場合、50%の確率でこの変化を受け継ぎ、病気を発症する可能性があります」。

その言葉を聞いた瞬間、Aさんの頭の中は真っ白になりました。「まさか、私が?」。ずっと健康に過ごしてきたし、家族にもそうした病気の話はなかったはずです。夫も、驚いた表情のまま報告書を見つめていました。

しばらくの沈黙のあと、Aさんは震える声で尋ねました。「これって……私のせいで、子どもが病気になるということですか?」。医師は答えました。「いいえ、Aさんのせいではありません。誰にでも起こりうることです。大切なのは、この結果を知ったことで、先に準備ができるという点です」。

医師は、X染色体の遺伝のしくみを説明しました。「女の子を妊娠した場合は、50%の確率でお子さんも保因者になります。保因者の多くは症状が出ないか、出ても軽くすみます。男の子を妊娠した場合は、50%の確率で病気を発症する可能性があります。ですから、妊娠されたら、まずNIPTで赤ちゃんの性別を確かめることをお勧めします。男の子だった場合は、病気があるかどうかを調べる確定検査を検討します」。

👶 母親がX連鎖潜性(劣性)の病気の保因者のとき

赤ちゃんの性別 変化を受け継ぐ確率 受け継いだ場合
男の子 50% 病気を発症する可能性がある(X染色体が1本のため)
女の子 50% 保因者になる。多くは症状が出ないか軽いが、病気によっては症状が出ることがある

女性はX染色体を2本持ち、細胞ごとにどちらか1本だけが働きます。変化のあるX染色体が働く細胞の割合が多いと、女性の保因者にも症状が出ることがあります[6]。しくみはX連鎖遺伝とはで解説しています。

Aさんは、夫の手を握りながらつぶやきました。「妊娠する前に知ることができて、よかったんでしょうか」。夫は答えました。「知ったことで、ちゃんと準備ができるということじゃないかな」。医師もうなずきました。「今は、おなかの中にいる段階で調べることができます。子どもを持つことをあきらめる必要はありません」。

動揺が消えたわけではありませんでしたが、Aさんは少し気持ちを整理できました。結果を受け入れるのは簡単ではありません。それでも、知ったことで選択肢が広がったことは確かでした。

妊娠後、NIPTを受けることを決意

ミネルバクリニックでの相談

その後、Aさんは妊娠しました。妊娠検査薬の陽性反応を見た瞬間、喜びと同時に、保因者検査の結果が頭をよぎりました。「私、X染色体の保因者だったよね……」。Aさんは夫と話し合い、ミネルバクリニックを再び受診することにしました。

ミネルバクリニックには、一般的な病院のような待合室がありません。Aさん夫婦は、到着後すぐに診察室へ案内されました。

医師は「Aさん、ご妊娠おめでとうございます」と声をかけ、続けました。「AさんはX染色体の保因者と分かっていますから、最初に赤ちゃんの性別を確かめることが大切です。女の子なら、50%の確率で保因者になりますが、多くは症状が出ないか軽くすみます。男の子なら、50%の確率で病気を発症する可能性があります。妊娠の早い時期に性別が分かれば、次に何をするかを決められます」。

「まずはNIPT(新型出生前診断)で、赤ちゃんの性別を確かめましょう。男の子だった場合は、病気があるかどうかを調べる検査を検討します。すぐに決める必要はありません。お二人でよく話し合ってください」。

不安が消えたわけではありませんでしたが、Aさんは少し肩の力が抜けるのを感じました。「NIPTの予約をお願いします」。こうしてAさん夫婦は、赤ちゃんの性別を知るために、NIPTを受けることを決めました。

性別による検査の違い

診察室で、医師は、赤ちゃんの性別によってその後の検査が変わることを、あらためて整理しました。

🔎 NIPTで性別が分かったあとの進め方

NIPTの結果 その後の検査
男の子 X染色体を母親から1本だけ受け継ぐため、50%の確率で変化を持ち、病気を発症する可能性がある。絨毛検査や羊水検査で、変化を受け継いでいるかを調べる確定検査を検討する
女の子 50%の確率で保因者になる。原則として確定検査は行わない。病気によっては女性の保因者にも症状が出ることがあるため、遺伝カウンセリングで個別に確認する

母体の血液に含まれる赤ちゃん由来のDNAから性別を調べる方法は、57の研究をまとめた解析で、感度95.4%・特異度98.6%と報告されています。一方で、検査の時期が早すぎると信頼性が下がることも示されています[7]。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。性別の判定のくわしい話はNIPTで性別はわかる?何週から・精度と確率で解説しています。

先に性別を確かめる利点は、女の子と分かれば、お腹に針を刺す確定検査を受けずにすむことです。X連鎖の病気などの理由で紹介された妊婦さん30人を追った研究では、母体の血液で性別を調べた結果をもとに、28人中13人(46%)が絨毛検査などを受けないことを選びました[8]。

ここで知っておきたいのは、NIPTでは、家系にある遺伝性の病気そのものは調べられないということです。NIPTで調べるのは、染色体の数の異常や微小欠失、そしてプランによっては新しく起こる単一遺伝子の変化(de novo変異)です。Aさんのように、親から受け継ぐ遺伝子の変化が分かっている場合、NIPTの役割は「性別を早く確かめること」と「染色体などの別の病気を調べること」で、家系の病気については確定検査で調べます。

Aさんは、夫と顔を見合わせました。「性別でこんなに違いがあるんですね」。今できることを一つずつ進めるしかない。そう考え、Aさんは早い時期にNIPTを受けることを決めました。

NIPTの結果とその後の確定検査

ミネルバクリニックのNIPTの結果

Aさんが選んだのは、ミネルバクリニックのダイヤモンドプランです。性別の確認だけでなく、染色体や遺伝子の別の病気についても、この機会に調べておきたいと考えたからです。ダイヤモンドプランで調べる範囲は、次のとおりです。

💎 ダイヤモンドプランで調べる範囲(単胎のみ)

項目 内容
常染色体のトリソミー 6種類(13・15・16・18・21・22番)。21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、13トリソミーを含む
性染色体の数の異常 4種類(45,X/47,XXX/47,XXY/47,XYY)
微小欠失 12種類13疾患
単一遺伝子の病気 56遺伝子。親から受け継ぐ変化ではなく、新しく起こる変化(de novo変異)が対象

結果は10〜14日ほどで出ます。NIPTはスクリーニング検査で、陽性の場合は確定検査で確かめる必要があります。微小欠失は、染色体の数の異常に比べて陽性的中率が低め(項目によって60〜70%程度)です。

NIPTの結果、Aさんの赤ちゃんは男の子であることが分かりました。男の子の場合、AさんのX染色体にある遺伝子の変化を受け継いでいる可能性があるため、確定検査で調べる必要があります。

ミネルバクリニックでは、赤ちゃんが男の子だった場合に備えて、確定検査を受けられるように、あらかじめ手配を進めていました。保因者と分かっている方の場合、NIPTの結果が出てから準備を始めるのでは、検査を受けられる週数に間に合わなくなるおそれがあるからです。「結果が出てから考える」のではなく、「結果が出る前に、次の一手を決めておく」。この準備があったため、Aさん夫婦は、NIPTの結果が出た直後に確定検査へ進むことができました。

保因者検査からNIPT、確定検査までの流れと日数

Aさんがたどった流れを、当院で行っている検査に当てはめると、次のようになります。

① 保因者検査妊娠前。夫婦の遺伝子の変化を確認
▶
② NIPT妊娠9週から。性別と染色体などを確認
▶
③ 確定検査絨毛検査は妊娠10〜14週ごろ、羊水検査は15週以降
▶
④ 結果の説明臨床遺伝専門医が説明

当院は2025年6月に産婦人科を併設し、絨毛検査・羊水検査を院内で行っています。染色体の主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。NIPTが陽性だった場合のカウンセリングは、何度でも無料です。

Aさんのように、家系で分かっている遺伝子の変化を赤ちゃんが受け継いでいるかを調べる検査は、染色体の検査とは別の検査です。どの遺伝子のどの変化を調べるかを、検査の前に確認しておく必要があります。保因者検査の報告書があれば、その準備を妊娠前や妊娠初期から進められます。検査の内容は単一遺伝子疾患の出生前診断で説明しています。

絨毛検査・羊水検査は、お腹に針を刺すため流産のリスクがあるとされてきました。約4万5千人の妊婦さんを調べた英国の研究では、流産率は絨毛検査を受けた人で1.5%・受けなかった人で1.2%、羊水検査を受けた人で0.8%・受けなかった人で1.2%で、どちらも統計的な差はありませんでした[9]。

ミネルバクリニックからの電話:確定検査の結果

確定検査を終えたAさんは、結果が出るまでの数日間、落ち着かない日々を過ごしました。「どうか、赤ちゃんが元気でありますように」。

数日後、ミネルバクリニックから電話がかかってきました。「Aさん、こんにちは。ミネルバクリニックの仲田です。確定検査の結果が出ましたので、お伝えします。もしご主人がそばにいらっしゃるなら、スピーカーフォンにして一緒に聞いてください」。

一人で聞くのではなく、二人で聞く。Aさんはスマートフォンを夫との間に置き、スピーカーに切り替えました。

「結果ですが、お子さんは、Aさんがお持ちの遺伝子の変化を受け継いでいませんでした」。

その瞬間、Aさんの目から涙がこぼれました。「この結果を聞くまでの時間は、とても長かったと思います。よくここまで進んでこられましたね」。電話の向こうの声に、Aさんは言葉を詰まらせながら、何度もお礼を伝えました。夫も涙を浮かべ、Aさんの肩に手を置きました。

Aさん夫婦は、この経過を通じて「知ることの大切さ」を実感しました。不安は大きかったものの、妊娠前に保因者と分かっていたからこそ、妊娠後に何をするかを先に決めておくことができました。こうしてAさん夫婦は、新しい命を迎える準備を進めていきました。

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ミネルバクリニックが果たす役割

遺伝に関する悩みを抱える人へのサポート

「自分は保因者ではないだろうか」「子どもに遺伝する可能性はあるのか」「リスクがあったら、どうすればいいのか」。遺伝のことは目に見えないため、誰に聞けばよいか分からず、一人で抱え込んでしまう方が少なくありません。

ミネルバクリニックには臨床遺伝専門医が常駐しています。Aさんのような経過で必要になる検査のうち、当院で行っているものは次のとおりです。

🏥 当院で行っていること

時期 内容
妊娠前 保因者検査(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子)。結果は臨床遺伝専門医が説明
妊娠9週から NIPT(妊娠6〜8週は臨床研究として受けられる)。90分の受診枠の中で、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行う
NIPTのあと 確定検査(絨毛検査・羊水検査)を院内で実施。主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほど。陽性のカウンセリングは何度でも無料
来院が難しい方 オンラインNIPT(Zoomでの遺伝カウンセリング+全国110か所の提携施設で採血)

当院は、体外受精・着床前診断・分娩・人工妊娠中絶は行っていません。

遺伝性の病気が家系にある方、保因者と分かっている方にとって、妊娠の前に知っておくことには意味があります。妊娠してからの検査には受けられる週数の限りがあり、先に分かっていれば、その限られた時間を準備ではなく考えることに使えるからです。

専門的な遺伝カウンセリングの重要性

遺伝性の病気は、特定の家族歴がある人だけのものではありません。保因者検査で将来の子どもへの影響を知り、妊娠中はNIPTで赤ちゃんの情報を得て、必要なら確定検査で確かめる。この流れのどこで何を受けるかは、人によって違います。結果が出たあとに「この結果は何を意味するのか」「次に何をすればよいのか」と迷うことも少なくありません。そこで必要になるのが、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングです。役割は次の3つです。

役割 内容
① 正確な情報を伝える 遺伝のリスク、検査の目的と限界、結果の読み方を説明する
② その人に合った検査を選ぶ 家族歴や状況をふまえ、必要な検査を、受けられる時期に受けられるようにする
③ 結果のあとを支える 結果を受けて次に何をするかを、本人が決められるように整理する

「もし自分が保因者だったら」「赤ちゃんに病気のリスクがあったら」。知ることは、怖いことに思えるかもしれません。けれども、知ることで選択肢が広がり、準備ができます。Aさんの経過は、そのことを示しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【保因者と分かることは、誰のせいでもない】

保因者検査で遺伝子の変化が見つかると、「私のせいで」と自分を責める方がいます。けれども、保因者であることは、生活や行動の結果ではありません。親から受け継いだか、偶然に生じた遺伝子の変化で、責める相手はどこにもいません。

臨床遺伝専門医として大切だと考えているのは、結果が出てから慌てて考えるのではなく、結果が出る前に「男の子だったら」「陽性だったら」の次の一手を決めておくことです。妊娠中の検査には、受けられる週数に限りがあります。先に段取りを整えておけば、結果を待つ時間を、考える時間として使えます。知ることは、準備することだと考えています。

🏥 保因者検査から確定検査まで、同じクリニックで

ミネルバクリニックは、臨床遺伝専門医が常駐し、保因者検査・NIPT・確定検査(絨毛検査・羊水検査)を院内で行っています。確定検査の主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。来院が難しい方は、オンラインNIPT(全国110か所の提携施設で採血)もご利用いただけます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 関根りささんの公表で話題になった「夫婦の遺伝子検査」は、どんな検査ですか?

保因者検査(キャリアスクリーニング)と呼ばれる検査です。夫婦がそれぞれ、子どもに伝わる可能性のある遺伝子の変化を持っていないかを調べます。関根さんは、ご夫婦がともに同じ病気の遺伝子の変化を持っていたと公表しています。夫婦がともに同じ病気の保因者の場合、お子さんがその病気を持つ確率は、妊娠のたびに25%です。

Q2. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

どこまで調べるかは、ご家族の考え方によって変わります。ただ、Aさんのように家系に分かっている病気がある方でも、それとは別に、染色体の数の異常や微小欠失、新しく起こる遺伝子の変化は起こりえます。当院のNIPTは、ダウン症候群(21トリソミー)のほか、18・13トリソミーと微小欠失症候群を全プランで、単一遺伝子の病気の一部をダイヤモンドプランとインペリアルプランで調べられます。調べる範囲は、90分の受診枠の中で臨床遺伝専門医と決められます。

Q3. 着床前診断と出生前診断は、何が違いますか?

着床前診断(PGT-M)は、体外受精でできた受精卵を子宮に戻す前に調べる検査で、日本では学会への申請を経て行われます。出生前診断は、妊娠してから赤ちゃんを調べる検査で、NIPTのようなスクリーニング検査と、絨毛検査・羊水検査のような確定検査があります。当院は体外受精を行っていないため着床前診断は行っておらず、保因者検査・NIPT・確定検査を行っています。

Q4. X連鎖の保因者と分かりました。赤ちゃんが女の子なら、確定検査は受けなくてよいですか?

X連鎖潜性(劣性)の病気では、女の子は変化を受け継いでも保因者になることが多く、原則として確定検査は行いません。ただし、病気によっては女性の保因者にも症状が出ることがあるため、どの病気か、家系でどのように現れているかをもとに、遺伝カウンセリングで個別に確認します。

Q5. NIPTで、家系にある遺伝性の病気そのものは分かりますか?

分かりません。NIPTで調べるのは、染色体の数の異常、微小欠失、そしてプランによっては新しく起こる単一遺伝子の変化(de novo変異)です。親から受け継ぐ家系の遺伝子の変化は対象ではありません。Aさんの場合、NIPTの役割は赤ちゃんの性別を早い時期に確かめることで、家系の病気については確定検査で調べました。

Q6. 確定検査の結果は、どのくらいで出ますか?

当院では絨毛検査・羊水検査を院内で行っており、染色体の主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。家系で分かっている遺伝子の変化を調べる検査は、これとは別の検査です。どの変化を調べるかを妊娠前や妊娠初期に確認しておくと、検査を始めるまでの時間を短くできます。

Q7. 保因者と分かったら、子どもを持つことをあきらめたほうがよいですか?

あきらめる理由にはなりません。保因者であることは、ご本人の行動や生活が原因ではありません。妊娠前に分かっていれば、自然に妊娠して出生前診断を受ける、着床前診断を検討する、検査を受けずに妊娠・出産するなど、複数の選択肢を時間をかけて考えられます。

Q8. このページのAさんは、関根りささんご本人ですか?

いいえ、別の方です。Aさんは、関根さんの公表をきっかけに保因者検査を考えた一人です。このページは関根さんご本人の診療について書いたものではなく、関根さんについては、ご本人が公表している内容だけを紹介しています。

関連記事

参考文献

  • [1] モデルプレス. 長男の難病報告のYouTuber関根りさ、異変に気づいたタイミング・原因に言及. 2023年4月26日.(公表内容の出典・報道) [モデルプレス]
  • [2] ユーチュラ. 希少難病の子どもを持つ関根りさ、第2子出産に向けてアメリカで着床前診断へ. 2024年7月16日.(公表内容の出典・報道) [ユーチュラ]
  • [3] モデルプレス. YouTuber関根りさ、第2子出産を報告. 2026年7月.(公表内容の出典・報道) [モデルプレス]
  • [4] Gregg AR, Aarabi M, Klugman S, et al. Screening for autosomal recessive and X-linked conditions during pregnancy and preconception: a practice resource of the American College of Medical Genetics and Genomics (ACMG). Genet Med. 2021;23(10):1793-1806. [DOI 10.1038/s41436-021-01203-z]
  • [5] 日本産科婦人科学会. 重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査に関する審査小委員会(見解・細則、症例申請). [日本産科婦人科学会]
  • [6] Migeon BR. X-linked diseases: susceptible females. Genet Med. 2020;22(7):1156-1174. [DOI 10.1038/s41436-020-0779-4]
  • [7] Devaney SA, Palomaki GE, Scott JA, Bianchi DW. Noninvasive fetal sex determination using cell-free fetal DNA: a systematic review and meta-analysis. JAMA. 2011;306(6):627-636. [DOI 10.1001/jama.2011.1114]
  • [8] Hyett JA, Gardener G, Stojilkovic-Mikic T, et al. Reduction in diagnostic and therapeutic interventions by non-invasive determination of fetal sex in early pregnancy. Prenat Diagn. 2005;25(12):1111-1116. [DOI 10.1002/pd.1284]
  • [9] Beta J, Zhang W, Geris S, Kostiv V, Akolekar R. Procedure-related risk of miscarriage following chorionic villus sampling and amniocentesis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2019;54(4):452-457. [DOI 10.1002/uog.20293]

※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。遺伝のしかたや検査の進め方は病気によって異なります。ご自身の場合については、主治医・臨床遺伝専門医にご相談ください。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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