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福山型筋ジストロフィーの遺伝子検査|症候性先天性筋ジストロフィー5遺伝子パネル(FKTN・POMT1ほか)で原因と遺伝の確率を調べる

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

福山型筋ジストロフィーの遺伝子検査|症候性先天性筋ジストロフィー5遺伝子パネル

症候性先天性筋ジストロフィーは、生まれたときから乳児期に筋力の弱さが見つかり、筋肉だけでなく脳や目にも症状が出る筋ジストロフィーのグループです。福山型先天性筋ジストロフィー・筋眼脳病・ウォーカー・ワールブルグ症候群がその代表で、どれもご両親が保因者の場合に起こる「常染色体潜性(劣性)遺伝」の病気です。原因の遺伝子がわかれば、次のお子さんで同じことが起こる可能性がどれくらいあるか、そして次の妊娠でどう備えられるかを、具体的に考えられるようになります。このページでは、主な原因遺伝子5つ(FKTN・POMT1・POMT2・POMGNT1・LARGE1)を一度に調べる遺伝子検査で、何がわかり、何がわからないのかを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

福山型筋ジストロフィー・筋眼脳病・ウォーカー・ワールブルグ症候群などの原因となる5つの遺伝子(FKTN・POMT1・POMT2・POMGNT1・LARGE1)に、病気の原因となる変化があるかを調べます。日本人の福山型に多い約3kbのSVA挿入は、一般的な遺伝子検査(NGS)では見つけにくい変化ですが、当院の検査では、この領域が十分に読み取れており、大きな挿入を見つける解析も行っているため、理論上は検出できると考えられます(検査会社に確認)。結果の読み方は臨床遺伝専門医がご説明します。ただし、2番目に多いイントロンの奥深くの変化は、この検査の調べる範囲の外です。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

乳児期から体がやわらかい・首のすわりが遅いなどの症状に加えて、脳のMRIや目に異常があるお子さん、上のお子さんがこれらの病気と診断され、次の妊娠を考えているご両親、ご家族に患者さんがいて保因者かどうか知りたい方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、唾液・粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、ご両親が保因者の場合、次のお子さんが発症する確率は4分の1です。ご家族の検査や、意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | 13遺伝子まで広く調べる検査 | どの検査がよいか迷う方へ

1. 症候性先天性筋ジストロフィーとは:福山型など、筋肉・脳・目に症状が出る先天性筋ジストロフィー

症候性先天性筋ジストロフィーとは、生まれつき(または乳児期から)筋力が弱い先天性筋ジストロフィーのうち、脳の形の異常や目の異常など、筋肉以外の症状を伴うものをまとめた呼び方です。このページの検査で調べる病気は、筋肉の細胞の表面にあるα-ジストログリカンというタンパク質に、糖の鎖がうまく付かなくなることで起こる「α-ジストログリカノパチー」と呼ばれる仲間です[1]。

α-ジストログリカンは、筋肉の細胞の中の骨組みと、細胞の外にあるラミニンなどをつなぐ、ジストロフィン・糖タンパク質複合体の一部です。タンパク質に糖の鎖を付けるしくみ(糖鎖修飾)に関わる遺伝子に変化があると、この病気の仲間が起こります。同じ仲間の病気でも、症状の重さには大きな幅があります。

福山型・筋眼脳病・ウォーカー・ワールブルグ症候群の違い

重さの順は、ウォーカー・ワールブルグ症候群がいちばん重く、次に筋眼脳病、福山型の順です。遺伝性疾患の解説書GeneReviewsは、福山型は脳や目の症状がほかの2つより軽く、筋眼脳病やウォーカー・ワールブルグ症候群に特徴的な目の異常は福山型にはみられないとしています[1]。

🧬 代表的な3つの病気の違い

病気 主な特徴 運動の見通し
ウォーカー・ワールブルグ症候群 生まれたときから全身の筋力低下。敷石状の滑脳症・水頭症・小脳の形の異常・目の異常を伴う[9] 最も重い型。多くのお子さんが3歳までに亡くなるとされる[9]
筋眼脳病(MEB) 筋力低下・脳の形の異常・目の異常の3つを伴う。ウォーカー・ワールブルグ症候群より軽い[1] 人によって幅がある
福山型先天性筋ジストロフィー 筋力低下と脳の形の異常(敷石状の滑脳症・厚脳回など)。筋眼脳病・ウォーカー・ワールブルグ症候群に特徴的な目の異常はない[1] 典型型(約50%)は支えなしで座れる・お尻で移動するまで。重症型(約38%)は支えがあれば座れる、または首がすわらない。軽症型(約12%)は支えがあって立つ・歩く[1]

※福山型の割合は、発達の遅れのある方を対象にした分類(GeneReviews[1])による。

症状:首のすわりが遅い・体がやわらかい(フロッピーインファント)・CKが高い・顔つきの特徴

最初に気づかれやすいのは、体がやわらかく力が弱い(フロッピーインファント)、首のすわりや寝返りが遅い、といった運動発達の遅れです。福山型について、GeneReviewsは次のような特徴を挙げています[1]。

  • ●血液検査のクレアチンキナーゼ(CK)は、ふつう正常の10〜60倍と高い(寝たきりの方では正常のこともある)
  • ●生後6〜12か月ごろから、顔の筋肉の弱さによる顔つき(ミオパチー顔貌)がはっきりし、年齢とともに目立つ。乳児期の後半には、頬のふくらみや、ふくらはぎ・前腕が太く見える「仮性肥大」がみられる
  • ●発達や言葉の遅れはすべての方にみられ、IQはふつう30〜60
  • ●脳のMRIで、表面が小石を敷きつめたように見える敷石状の滑脳症、脳のしわが太く少ない厚脳回、小脳の多小脳回や小さな袋(小脳嚢胞)がみられる
  • ●けいれん(てんかん)は60%を超える方に起こる。近視などの屈折異常は40〜53%、網膜の異常は重い福山型の32%にみられる

日本の全国登録(遺伝子で確定した207人、登録時の平均年齢8.1歳)では、熱性けいれん・てんかんが33%、呼吸の補助が必要な方が16%(年齢とともに増加)、心臓の働きの低下が16%、飲み込みの障害が22%でした[4]。GeneReviewsの数字と差があるのは、この登録には年齢の低いお子さんが多く含まれているためと考えられます。

寿命・経過は型によって大きく違う

寿命や経過は、どの型か、どの遺伝子のどんな変化かで大きく違うため、ひとくくりには言えません。ウォーカー・ワールブルグ症候群は最も重く、多くのお子さんが3歳までに亡くなるとされています[9]。

福山型では、飲み込みが難しくなることによる誤嚥性肺炎や、呼吸器の感染症が、入院や亡くなる原因として多いとされています。20歳を超えて過ごす方では、気管切開や、マスクを使った呼吸の補助(非侵襲的換気)が必要になることがあります[1]。心臓の病気(拡張型心筋症など)はGeneReviewsで80%を超えるとされ、多くは10代で目立ってきます[1]。ただし、福山型の心臓の悪くなり方は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーより穏やかと報告されています[8]。

原因がわかって型がはっきりすると、何を、いつから見張ればよいかが決まります。これは第6章でくわしくご説明します。

なぜ筋肉と脳と目に症状が出るのか

α-ジストログリカンは、筋肉だけでなく脳や目にもあるタンパク質です。糖の鎖がうまく付かないと、筋肉の細胞がこわれやすくなるだけでなく、同じ仲間の病気では脳の形づくりや目にも影響が出ることが知られています[1]。どの遺伝子のどんな変化かによって、筋肉の症状だけで済む軽い型から、脳と目に重い症状が出る型まで、同じ遺伝子でも幅があります[10]。

2. 福山型筋ジストロフィーは遺伝する?遺伝のしかたと次のお子さんの確率

福山型を含め、このページの検査で調べる病気は、どれも常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がどちらも保因者のとき、お子さん1人ごとに、発症する確率は4分の1(25%)、保因者になる確率は2分の1(50%)、どちらでもない確率は4分の1(25%)です[1]。

常染色体潜性遺伝(劣性遺伝):ご両親とも保因者のとき、お子さんごとに4分の1

常染色体潜性(劣性)遺伝では、対になった2つの遺伝子の両方に変化があるときに発症します。片方だけに変化がある方は「保因者」と呼ばれ、ふつう症状はありません[1]。そのため、ご両親とも症状がなく、ご家族にも同じ病気の方がいないまま、お子さんが発症することがよくあります。

父:保因者症状なし
+
母:保因者症状なし
▶
発症4分の1
保因者2分の1
どちらでもない4分の1

この確率はお子さん1人ごとに同じで、上のお子さんが発症したかどうかで、次のお子さんの確率が変わることはありません。遺伝のしくみと確率は、劣性遺伝(潜性遺伝)と保因者のしくみでもくわしく解説しています。

日本人の保因者はどれくらい?

日本各地の2,814人を調べた研究では、福山型の原因となる変化をもつ保因者は、平均で188人に1人でした[3]。同じ研究で、韓国では935人に1人でした[3]。福山型は世界中でみられますが、日本人に最も多く、日本では出生1万人あたり0.7〜1.2人に起こるとされています[1][2]。

日本人にこれほど多いのは、2,000〜2,500年前の1人の祖先に起きた変化が、子孫に受け継がれて広がったためと考えられています[1]。このように、ある集団の共通の祖先に由来する変化が広がる現象を創始者効果といいます。福山型の患者さんの87%がこの変化をもっていました[2]。

男の子だけの病気ではありません

福山型は常染色体潜性遺伝なので、男の子にも女の子にも同じように起こります。日本の全国登録でも、男の子104人・女の子103人と、ほぼ同じ数でした[4]。男の子に多いデュシェンヌ型筋ジストロフィー(X連鎖の病気)とは、遺伝のしかたが違います。

きょうだいが保因者かどうか

患者さんのきょうだいは、生まれる時点で2分の1の確率で保因者です[1]。きょうだいがのちに結婚や妊娠を考えるとき、ご自身が保因者かどうかを知ることは、パートナーの検査や出生前診断を計画する手がかりになります。ご家族で原因の変化がわかっていると、きょうだいはその変化だけをピンポイントで調べることができます[1]。

3. どんな人がこの検査を受けるとよいか

筋力の弱さに脳や目の症状を伴うお子さん、上のお子さんが診断されて次の妊娠を考えているご両親、ご家族に患者さんがいる方に向く検査です。見た目や家族歴だけでは判断できないことが多いので、迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。

お子さんに症状がある方:診断までの回り道を短くする

次のような症状があるお子さんは、この検査の対象になります。

  • ●生まれたときや乳児期から体がやわらかい、首のすわり・寝返り・お座りが遅い
  • ●血液検査でCKが高いと言われた
  • ●脳のMRIで滑脳症・厚脳回・多小脳回・小脳嚢胞などの形の異常を指摘された
  • ●目の異常(強い近視・網膜の異常など)や、てんかんがある

希少な病気では、診断がつくまでに時間がかかることが多く、欧州の41か国・6,507人を対象にした調査では、診断までの平均は4.7年でした[12]。先天性筋ジストロフィーの123人を調べたオーストラリアの研究では、従来の方法と遺伝子検査を組み合わせて、遺伝子の診断がついたのは51%でした。この研究は、まず遺伝子検査を行い、筋肉の一部を取って調べる筋生検は2番目に回すことを提案しています[11]。

ただし、遺伝子検査で全員に診断がつくわけではありません。日本の未診断疾患イニシアチブ(IRUD)でも、全エクソーム解析を終えた家系のうち診断が確定したのは43.8%でした[13]。原因が見つからなかったときにも次の選択肢があることは、第6章でご説明します。

上のお子さんが診断され、次の妊娠を考えている方

原因の遺伝子の変化がわかっていれば、次の妊娠で赤ちゃんに同じ変化があるかを、出生前診断で調べる計画が立てられます。原因がわからないままでは、出生前に何を調べればよいかが決まりません。上のお子さんの検査は、ご両親が「次の妊娠をどうするか」を考えるための出発点になります。

お子さんの病気が遺伝の病気だとわかると、自分を責めてしまう親御さんがいます。けれども、保因者であることはふつう症状がなく、誰にでも起こりうることで、誰のせいでもありません。前もって知っておくことは、その後の選択肢を増やすことにつながります。

ご家族に患者さんがいて、ご自身が保因者か知りたい方

ご家族に患者さんがいて、その方の原因の変化がわかっている場合は、その変化をピンポイントで調べることで、ご自身が保因者かどうかを確かめられます。ご家族の結果がわからない場合や、パートナーと一緒に調べたい場合は、多くの遺伝子をまとめて調べる保因者検査という選び方もあります(第6章)。

5遺伝子・13遺伝子・神経筋疾患パネルの選び方

当院には、症状に合わせて選べる筋肉の病気の検査がいくつかあります。このページの5遺伝子は、13遺伝子を調べるジストログリカン関連先天性筋ジストロフィー遺伝子検査にすべて含まれ、料金も結果までの日数も同じです。迷ったときは、より広く調べる13遺伝子の検査を考えます。このページの検査は、主な5遺伝子にしぼって調べたい方に向いています。調べる遺伝子が少ないと、意義がまだわからない変化(VUS)が見つかる機会も少なくなります。

🔍 症状・CK値・発症の時期から選ぶ検査

こんなとき 向いている検査
乳児期から筋力が弱く、CKが高く、脳の形や目に異常がある(筋眼脳病など) このページの検査(5遺伝子)、または13遺伝子のジストログリカン関連先天性筋ジストロフィー遺伝子検査
重い脳の異常(滑脳症・水頭症)と目の異常が目立つ ウォーカー・ワールブルグ症候群遺伝子検査(7遺伝子)
日本人で、福山型が強く疑われる このページの検査。日本人に最も多いFKTNの長い挿入も、理論上は検出できると考えられます。2番目に多いイントロンの奥の変化は範囲の外です(第5章)
脳や目の症状がなく、乳児期から筋力が弱い・CKが高い(メロシン欠損型などが疑われる) 神経筋疾患遺伝子パネル検査(LAMA2・LMNAなども含む)
関節が硬い・やわらかい、と筋力低下が一緒にある ウルリッヒ型筋ジストロフィー・ベスレムミオパチー遺伝子検査、VI型コラーゲン異常症遺伝子検査
CKは正常か軽く高い程度で、筋生検でミオパチーと言われた 先天性ミオパチー遺伝子検査、ネマリンミオパチー遺伝子検査、先天性筋線維タイプ不均等症遺伝子検査
まぶたが下がる・疲れやすい(筋力が日によって変わる) 先天性筋無力症候群遺伝子検査
大人になってからCKが高い・肩や腰まわりの筋力が落ちてきた 肢帯型筋ジストロフィー遺伝子パネル検査
脳の形の異常が中心で、筋肉の症状ははっきりしない 滑脳症遺伝子パネル検査、大脳皮質形成異常遺伝子パネル検査、多小脳回症遺伝子検査
筋肉の病気だが型をしぼれない/筋肉以外の症状も多い 神経筋疾患遺伝子パネル検査、全エクソーム検査(WES)

※どの検査が合うかは、症状・診察の所見・MRI・CKの値・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

\ 原因がわかれば、次のお子さんへの備えが具体的になります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

ご両親とも保因者とわかった場合、次の妊娠での羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます(2025年6月から産婦人科を併設)。

海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。

お問い合わせはこちら | 筋肉の病気をまとめて調べる検査 | どの検査がよいか迷う方へ

4. 調べる5つの遺伝子と、わかる病気

この検査では、α-ジストログリカンの糖鎖に関わる5つの遺伝子(FKTN・LARGE1・POMGNT1・POMT1・POMT2)をまとめて調べます。どの遺伝子の病気も、常染色体潜性遺伝です。

🧪 調べる5遺伝子と関係する病気

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた
FKTN(9q31.2) 福山型先天性筋ジストロフィー(脳と目の異常を伴う重い型にはウォーカー・ワールブルグ症候群に近いものもある)/知的障害を伴わない先天性筋ジストロフィー/肢帯型筋ジストロフィー/筋力低下が軽いか、ほとんどない拡張型心筋症 常染色体潜性
POMT1(9q34.13) ウォーカー・ワールブルグ症候群・筋眼脳病など脳と目の異常を伴う型/知的障害を伴う先天性筋ジストロフィー/肢帯型筋ジストロフィー 常染色体潜性
POMT2(14q24.3) ウォーカー・ワールブルグ症候群・筋眼脳病など脳と目の異常を伴う型/知的障害を伴う先天性筋ジストロフィー/肢帯型筋ジストロフィー 常染色体潜性
POMGNT1(1p34.1) 筋眼脳病など脳と目の異常を伴う型/知的障害を伴う先天性筋ジストロフィー/肢帯型筋ジストロフィー/網膜色素変性症(76型) 常染色体潜性
LARGE1(22番染色体) ウォーカー・ワールブルグ症候群・筋眼脳病など脳と目の異常を伴う型/先天性筋ジストロフィー1D型 常染色体潜性

※病名と遺伝のしかたはOMIM(FKTN・POMT1・POMT2・POMGNT1)、GeneReviews[1]、米国国立医学図書館の遺伝情報(LARGE1)による。

同じ遺伝子でも、どんな変化かによって症状の重さが変わります。英国などの92人を調べた研究では、この5つの遺伝子で原因の変化が見つかったのは34%で、脳の症状がない肢帯型筋ジストロフィーの方から、ウォーカー・ワールブルグ症候群の方まで、幅広い症状がみられました[10]。

5. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、5つの遺伝子のタンパク質を作る部分と、その境目にある小さな変化(1文字の変化や、小さな欠け・入り込み)と、遺伝子の一部や全部がまとまって欠けたり増えたりしている変化です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

わかること

遺伝子の配列を、次世代シーケンサー(NGS)という方法で読みます。読み取りの質が低い場所は、別の方法(サンガー法)で確かめます。遺伝子の一部(となり合う2つ以上のエクソン)や全部がまとまって欠けたり増えたりしている変化は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。ただし、エクソン1つだけの欠け・増えは、ふつうは見つかりません。また、エクソン単位の欠け・増えを調べられるのは血液の検体のときだけです。

日本人の福山型の多くは、FKTN遺伝子(フクチンというタンパク質の設計図)の「タンパク質を作る部分のあと(3’非翻訳領域)」に、約3,000塩基(約3kb)のレトロトランスポゾン(SVA)が入り込んだ変化が原因です[2]。これは日本人の共通の祖先に由来する創始者変異で、日本全国の調査では、この挿入の保因者は約188人に1人でした[3]。日本人の福山型に多い約3kbのSVA挿入は、一般的な遺伝子検査(NGS)では見つけにくい変化ですが、当院の検査では、この領域が十分に読み取れており、大きな挿入を見つける解析も行っているため、理論上は検出できると考えられます(検査会社に確認)。結果の読み方は臨床遺伝専門医がご説明します。同じことは、13遺伝子のジストログリカン関連先天性筋ジストロフィー遺伝子検査や、ご夫婦で受ける保因者検査(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子など)にもあてはまります。福山型は常染色体潜性遺伝なので、ご夫婦の両方が保因者のときに、お子さん1人ごとに4分の1の確率で起こります。

⚠️ 日本人に多い福山型の変化について

⚠️ この検査だけで、福山型であるとも、ないとも言い切れません

日本人の福山型の患者さんでは、FKTN遺伝子の「タンパク質を作る部分のあと(3’非翻訳領域)」に、約3,000塩基の長い配列(レトロトランスポゾンの一種)が入り込んだ変化が最も多く、日本人の患者さんの75〜80%は、この変化を両方の遺伝子にもっています[1][4]。この挿入は、上に書いたとおり、当院の検査では理論上は検出できると考えられます(検査会社に確認)。2番目に多いのは、遺伝子の途中にあるイントロンの奥深く(境目から2,084塩基離れた場所)の変化(c.647+2084G>T)です[5][6]。この検査は「タンパク質を作る部分とその境目」を調べるもので、イントロンの奥(境目から20塩基より先)の変化は見つけられません。そのため、日本人で福山型が強く疑われる場合、この検査で「異常なし」や「変化が1つだけ」という結果でも、それだけで福山型を否定することはできません。

調べない遺伝子:FKRP・ISPDなど、LAMA2・LMNA・COL6

GeneReviewsは、α-ジストログリカノパチーに関わる遺伝子として14個を挙げています[1]。この検査で調べるのはそのうち5つで、FKRP・CRPPA(ISPD)・POMGNT2・B4GAT1・DAG1・B3GALNT2・GMPPB・POMK・RXYLT1は調べません。このうちFKRP・ISPD・POMGNT2・B4GAT1・DAG1は、13遺伝子のジストログリカン関連先天性筋ジストロフィー遺伝子検査で調べられます。

また、先天性筋ジストロフィーには、このグループとは原因の違う型もあります。メロシン欠損型(LAMA2)・LMNA関連先天性筋ジストロフィー・SELENON関連・ウルリッヒ型(VI型コラーゲン)などです[1]。これらの遺伝子は、この検査では調べません。

陰性=この病気ではない、とは言えない理由/VUS

  • ●見つけられない変化:染色体の一部が入れ替わる転座や逆位、繰り返し配列が伸びる変化、遺伝子のはたらきを調節する場所(プロモーター)の多くの変化、イントロンの奥の変化は、この検査では見つかりません。
  • ●よく似た配列:よく似た配列(偽遺伝子など)があると、まれに判定のじゃまになることがあります。
  • ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態や、腫瘍などで後から起きた変化を見つけるようには作られていません。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。ご希望により、VUSを報告に含めないこともできます(無料)。
  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、調べていない遺伝子や、この検査で見つけられない変化が原因の可能性が残ります。

6. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。

病的変異が見つかったら、次にできること

原因の変化がわかると、病名が決まり、何を見張ればよいか、ご家族が何を調べられるか、次のお子さんにどう備えられるかが、具体的になります。エクソーム・ゲノム検査の研究167件をまとめた米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)の系統的レビューでは、95%の研究で、患者さんやご家族の診療方針に何らかの変化があったと報告されています[14](変化の中身や大きさは研究によって違います)。立場ごとに整理します。

① ご本人(症状のあるお子さん)
病名が決まると、筋生検を受けずに診断がつくことがあります[11]。福山型では、GeneReviewsが次のような見張りを勧めています[1]。

  • ●心臓:最初の検査で異常がなくても、10歳から年に1回の心エコー(主治医の判断で6か月ごと)
  • ●呼吸と飲み込み:受診のたびに誤嚥や呼吸の弱さがないかを確かめ、必要ならマスクを使った呼吸の補助を始める。呼吸器の感染症は早めに治療する
  • ●熱が出たあと:熱の出るウイルス感染のあとに急に力が落ち、CKが大きく上がる(横紋筋融解)ことがあり、まれに命にかかわると報告されている。いつもと違うときは早めに受診する

治療やリハビリ、てんかん・目の管理は、小児神経科など専門の医療機関で受けていただきます(当院では治療・リハビリは行っていません)。日本では、原因の変化を正すことをねらった薬の治験が進んでいます。福山型の日本人に多い変化(3’非翻訳領域の入り込み)が、RNAのつなぎ合わせ(スプライシング)を乱すエキソントラッピングを起こすことがわかり、アンチセンスオリゴヌクレオチドでそれを正すと、患者さんの細胞とモデルマウスでフクチンのはたらきが戻ったと報告されています[7]。この考え方にもとづく薬(NS-035)は、5〜10歳の福山型の方を対象にした第I相試験が終了し、第II相試験が2026年6月から参加者の登録を始めています(2026年10月時点、臨床研究等提出・公開システムjRCTで確認)。治験の対象になるかは、主治医や実施施設にご確認ください。

② 症状のないご本人(保因者だった方・ご両親)
保因者であることがわかっても、ふつうご自身に症状は出ません[1]。大切なのはお子さんを持つときのことです。常染色体潜性遺伝の病気は、パートナーも同じ遺伝子の保因者のときだけ、お子さんが発症する可能性があります。パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかを調べることで、お子さんへの確率を具体的に考えられます。

③ 次のお子さんを持つときの選択肢
ご家族で原因の変化がわかっていれば、保因者の検査や、妊娠中・受精卵の段階の検査が可能とされています[1]。
・自然に妊娠して出生前診断を受ける:絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。ご家族の原因の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんに同じ変化があるかを調べられます。病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。くわしくは単一遺伝子疾患の出生前診断と羊水検査・絨毛検査のページをご覧ください。
・PGT-M(着床前遺伝学的検査):日本産科婦人科学会の審査を経て国内で受ける方法と、海外で受ける方法があります(次の項)。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。
・特別な検査を受けずに妊娠・出産する:これも、そのまま選べる選択肢です。どの選択をされても、その選択を尊重します。

④ ご家族(きょうだい・いとこなど)
きょうだいやいとこが同じ変化をもっているかは、その変化だけをピンポイントで調べられます。症状のない方の検査は、ご本人の同意で行います。保因者かどうかを、パートナーと一緒に多くの遺伝子でまとめて調べたい方には、拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)と男性版714遺伝子があり、FKTN・POMT1・POMT2・POMGNT1が対象遺伝子に入っています。女性版1009遺伝子と男性版911遺伝子には、LARGE1も入っています。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」(女性787遺伝子・男性714遺伝子。単独では受けられません)もあります。日本人の福山型に最も多いFKTNの長い挿入も、これらの保因者検査(787・714・911・1009遺伝子)で、理論上は検出できると考えられます(検査会社に確認)。2番目に多いイントロンの奥の変化は、保因者検査でも見つけられるとは示されていません。ご家族に福山型の方がいる場合は、まずご家族の変化を確かめることが大切です。

⑤ 当院でのその後
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、ご家族の検査や、次の妊娠でどうするかを一緒に考えます。遺伝カウンセリング料は30分22,000円(税込)、出生前診断の遺伝カウンセリングは30分33,000円(税込)です。

海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます

PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。当院は、海外でPGT-Mを受けるときに使える英語の検査結果をお渡しできます。ご希望の方は、検査の時にお申し出ください。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因遺伝子の確定、英語の検査結果のご用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠後の絨毛検査・羊水検査(院内)です。

欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の指針では、PGT-Mの準備に次のことが求められています[15]。

  • ●病気の原因と確かめられた遺伝子の変化があること(可能な限り確かめておくことが勧められている)
  • ●どの遺伝子のどの変化かが書かれた元の報告書(認定を受けた検査室から取り寄せることが勧められている)
  • ●ご家族の検体

受精卵から取れるDNAはごくわずかで、変化を直接読むだけでは、2本あるうちの片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあります。そのため、変化のある場所の両側にある目印(STR・SNPなどの多型マーカー)で「変化をもつ染色体」を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます。常染色体潜性遺伝の病気では、ご夫婦に加えて、患者さん(2つの変化をもつ方)・保因者・保因者でない方のDNAが目安とされています[15]。ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。血縁者がいない場合は、治療の周期の受精卵や1個の精子を調べて変化の乗った染色体を決める方法も挙げられていますが、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります[15]。

海外でPGT-Mを考えている方は、上のお子さんの検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。臨床遺伝専門医として、次の点も大切だと考えています。意義がまだわからない変化(VUS)は病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいこと。常染色体潜性遺伝の病気では、ご夫婦それぞれがどの変化をもっているかを確かめておく必要があること。海外の施設によって求められる書類や検体が違うので、受ける予定の施設にも前もって確認すること。

⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です

PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[16]。当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。当院では絨毛検査・羊水検査を院内で行っており、海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。

日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます。この指針の「重篤」とは、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、申請の時点で有効な治療法がないか、治療法があっても高度かつ侵襲度の高いものとされています。成人に達する前に生存が危ぶまれるわけではないが日常生活が著しく損なわれる状態が現れる疾患では、その病気の専門医の意見書などを追加で出す仕組みになっています。対象になるかどうかは、審査で個別に決まります。

PGT-Mの対象になる病気は、国によって違います。日本では学会が症例ごとに審査し、審査が続いている申請も多くあります(学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち、37件が審査継続中。2026年9月発表)。英国では公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気が載っています(2026年9月17日更新の一覧で2,067)。一覧にない病気でも、施設を通じて申請し、HFEAが審査します。米国では、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[17]。どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。くわしくは遺伝性疾患をお持ちで海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。

陰性・VUSだったとき

原因の変化が見つからなかった場合でも、この病気の可能性はなくなりません(第5章)。症状に合わせて、13遺伝子の検査、神経筋疾患遺伝子パネル検査、全エクソーム検査などを考えます。日本人で福山型が疑われ、この検査で見つからなかった場合は、イントロンの奥の変化を調べる方法(全ゲノム解析など)について、臨床遺伝専門医がご説明します。VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査や出生前診断に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。結果の伝え方については、当院の二次的所見の開示方針もあわせてご覧ください。

7. 日本の制度(2026年10月時点)

筋ジストロフィーは指定難病113に定められており、その病型の中に「先天性」があります。難病情報センターの筋ジストロフィーのページ(2026年1月更新)には、福山型先天性筋ジストロフィーが日本の先天性筋ジストロフィーで最も多いと書かれています。また、小児慢性特定疾病情報センターの神経・筋疾患の対象疾病に「福山型先天性筋ジストロフィー」が掲載されています(2026年10月時点で確認)。

医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の基準を満たし、申請する必要があります。どの病型が対象になるか、認定の基準や申請の方法は、主治医や、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センター、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。遺伝子検査で原因が確定していることは、診断の手がかりのひとつになります。

8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の内側の粘膜の検体なら、オンライン診療で遺伝カウンセリングを受けたあと、検体をお送りいただけます。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取血液・唾液・頬の粘膜
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

💴 費用・日数・検体

項目 内容
調べる遺伝子 FKTN・LARGE1・POMGNT1・POMT1・POMT2(5遺伝子)
調べ方 塩基配列の解析と、欠失・重複の解析(どちらも料金に含まれます)
検査費用 税込330,000円
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 2〜3週間
オプション 至急(結果までの期間が約7日短くなります):55,000円/VUSを報告に含めない:無料
検体 血液(EDTA採血管4ml×2本)、抽出済みのDNA(3μg)、頬の内側の粘膜、唾液
オンライン診療 唾液・頬の粘膜・血液のいずれもオンライン診療で受けられます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えや品質の低下を防ぐため、キットが届く前にご自身で検体を採らないでください。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

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臨床遺伝専門医が常駐し、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

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9. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【先天性筋ジストロフィーと、私の原点】

私ががん薬物療法の専門医でありながら、臨床遺伝専門医として出生前診断に携わると決めた原点は、先天性筋ジストロフィーのひとつ、メロシン欠損型筋ジストロフィーでお子さんを亡くしたお母さんとの出会いでした。その経緯はがん専門医のわたしが臨床遺伝専門医として出生前検査をする原点症例に書いています。メロシン欠損型の原因であるLAMA2遺伝子は、このページの検査では調べませんが、同じ先天性筋ジストロフィーの仲間であり、私にとって特別な意味をもつ病気です。

常染色体潜性遺伝の病気では、ご両親に症状がなく、ご家族に同じ病気の方もいないことがほとんどです。上のお子さんの診断をきっかけに、初めてご自身が保因者だったと知る方もいます。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。そのうえで、原因がわかっていれば、次の妊娠でどう備えるかを、ご夫婦で具体的に考えることができます。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで次の妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。知る・知らない、子どもを持つ・持たない、出生前診断を受ける・受けない、どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 福山型筋ジストロフィーは男の子の病気ですか?

いいえ。福山型は常染色体潜性(劣性)遺伝の病気なので、男の子にも女の子にも同じように起こります。日本の全国登録でも、男の子104人・女の子103人と、ほぼ同じ数でした。男の子に多いデュシェンヌ型筋ジストロフィーとは、遺伝のしかたが違います。

Q2. 福山型筋ジストロフィーは何人に1人ですか?

日本では、出生1万人あたり0.7〜1.2人に起こるとされています。原因となる変化をもつ保因者は、日本各地の2,814人を調べた研究で平均188人に1人でした。日本人に多いのは、2,000〜2,500年前の1人の祖先に起きた変化が広がったためと考えられています。

Q3. 福山型筋ジストロフィーは長生きできますか?

寿命や経過は、型や遺伝子の変化によって大きく違うため、ひとくくりには言えません。福山型では、飲み込みが難しくなることによる誤嚥性肺炎や呼吸器の感染症が予後に大きく関わり、20歳を超えて過ごす方では、気管切開やマスクを使った呼吸の補助が必要になることがあります。心臓・呼吸・飲み込みを定期的に見張り、感染症を早めに治療することが大切です。

Q4. 遺伝形式は?次の子どもに遺伝する確率は?

常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がどちらも保因者の場合、お子さん1人ごとに、発症する確率は4分の1(25%)、保因者になる確率は2分の1(50%)、どちらでもない確率は4分の1(25%)です。上のお子さんで原因の変化がわかっていれば、次の妊娠で出生前診断を計画できます。

Q5. 家族に筋ジストロフィーの人がいると、結婚に差し支えますか?

筋ジストロフィーの遺伝のしかたは型によって違い、遺伝の確率は病気とご家族ごとに違います。福山型のような常染色体潜性遺伝の病気では、ご自身が保因者でも、パートナーが同じ遺伝子の保因者でなければ、お子さんが発症することはふつうありません。ご自身が変化をもっているか、パートナーが保因者かは、遺伝子検査で確かめられます。知ったうえで、出生前診断などの選択肢を考えることもできます。

Q6. この検査で異常が見つからなければ、福山型ではないと言えますか?

言えません。日本人の福山型に最も多い変化(FKTN遺伝子の3’非翻訳領域への長い配列の入り込み)は、当院の検査では理論上は検出できると考えられます(検査会社に確認)。一方、2番目に多い変化(イントロンの奥の変化)は、この検査の調べる範囲の外です。また、原因が見つからなくても、調べていない遺伝子や、この検査で見つけられない変化が原因の可能性が残るため、異常が見つからなかったことだけで福山型を否定することはできません。結果の読み方は臨床遺伝専門医がご説明します。

Q7. 5遺伝子と13遺伝子のパネル、どちらを選べばいいですか?

このページの5遺伝子は、13遺伝子を調べるジストログリカン関連先天性筋ジストロフィー遺伝子検査にすべて含まれ、料金と結果までの日数は同じです。迷ったときは、より広く調べる13遺伝子の検査を考えます。主な5遺伝子にしぼって調べたい方には、このページの検査が向いています。症状によっては神経筋疾患遺伝子パネル検査のほうがよいこともあるので、遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

Q8. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?

はい。海外でPGT-Mを受けるときに使える英語の検査結果をお渡しできますので、検査の時にお申し出ください。ただし、ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。常染色体潜性遺伝の病気では、患者さん・保因者・保因者でない方など、ご家族の検体が目安とされています。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。

Q9. 日本人に多い福山型の挿入変異も調べられますか?

理論上は検出できると考えられます。日本人の福山型に多い約3kbのSVA挿入は、一般的な遺伝子検査(NGS)では見つけにくい変化ですが、当院の検査では、この領域が十分に読み取れており、大きな挿入を見つける解析も行っています(検査会社に確認)。結果の読み方は臨床遺伝専門医がご説明します。この挿入は日本人の福山型の多くの原因となっている変化で、日本全国の調査では、この挿入の保因者は約188人に1人です。ご夫婦で受ける保因者検査(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子など)でも同じです。

🧬 原因を知ることが、次のお子さんへの備えの出発点に

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。症候性先天性筋ジストロフィーの原因がわかれば、お子さんの合併症への備えだけでなく、ご家族の検査や、次の妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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