この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

ウォーカー・ワールブルグ症候群は、脳(滑脳症・水頭症)・目・筋肉に生まれつき重い症状が出る、先天性筋ジストロフィーのなかでいちばん重い型です。このページでご案内する遺伝子検査では、原因として知られる7つの遺伝子をまとめて調べます。原因がわかれば、次のお子さんで同じ病気が起こる確率と、次の妊娠での備えが具体的になります。病気の特徴、遺伝する確率、妊娠中に赤ちゃんの脳の異常を指摘された方が知っておきたいこと、そして検査でわかること・わからないことを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
ウォーカー・ワールブルグ症候群(滑脳症・水頭症・目の異常を伴う先天性筋ジストロフィー)の原因として知られる7つの遺伝子(POMT1・POMT2・POMGNT1・FKTN・FKRP・ISPD〔CRPPA〕・LARGE1)に、病気の原因となる変化があるかを一度に調べます。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
生まれつき筋肉の力が弱く、滑脳症や水頭症、目の異常があるお子さんの原因を知りたいご家族です。ご家族にこの病気の方がいて、ご自身が保因者かを知りたい方は、ご家族の結果をもとに調べ方をご相談ください。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査料は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、オンライン診療でもお受けできます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、次のお子さんで同じ病気が起こる確率(妊娠のたびに4分の1)と、出生前診断などの備えを具体的に考えられます。意義がまだわからない変化(VUS)が見つかることもあります。
1. ウォーカー・ワールブルグ症候群とは:脳・目・筋肉に症状が出る、いちばん重い先天性筋ジストロフィー
ウォーカー・ワールブルグ症候群は、生まれたときから筋肉の力が弱く、脳の形の異常(滑脳症・水頭症など)と目の異常を伴う、先天性筋ジストロフィーのなかでいちばん重い型です[1]。常染色体潜性(劣性)遺伝のしかたをとり、ご両親がともに保因者のときにお子さんに起こります。
北イタリアの調査では、生まれた赤ちゃん10万人あたり1.2人と報告されていますが、世界全体での頻度はわかっていません[1]。病気そのもののしくみや研究の状況をさらに詳しく知りたい方は、ウォーカー・ワールブルグ症候群(疾患の詳しい解説)もご覧ください。このページでは、検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。
病名と別名:ワーデンブルグ症候群とは別の病気です
病名は、1942年のWalker(ウォーカー)の報告と、1971年のWarburg(ワールブルグ)の報告にちなみ、2人の名前に由来します[1]。英語ではWalker-Warburg syndromeといい、頭文字をとってWWSとも呼ばれます。カタカナでは「ウォーカー・ワーバーグ症候群」と書かれることもあります。
💡 名前が似ている「ワーデンブルグ症候群」とは別の病気です
「ワーデンブルグ症候群(ワールデンブルグ症候群)」は、難聴や、髪・皮膚・目の色素の変化を起こす別の病気で、原因の遺伝子も違います。ワーデンブルグ症候群の遺伝子検査をお探しの方は、ワーデンブルグ症候群NGS遺伝子パネル検査のページをご覧ください。
脳・目・筋肉の3つの症状
症状は生まれたときから見られ、体全体の筋肉の張りが弱く(筋緊張低下)、筋力が弱く、発達の遅れがあります。けいれん発作が起こるお子さんもいます[1]。生まれたばかりの赤ちゃんの体がぐにゃりと柔らかい状態は、フロッピーインファントと呼ばれます。
🧠 ウォーカー・ワールブルグ症候群でみられる主な症状
※脳・目・筋肉の症状は文献[1]、小眼球は文献[8]、CKは文献[11]による。症状の組み合わせと重さには個人差があります。
滑脳症は、脳の表面にあるしわ(脳回)が少なく、表面がなめらかに見える状態です。ほかの原因で起こる滑脳症も含めた解説は、滑脳症(I型滑脳症)のページにまとめています。
なぜ起こるのか:α-ジストログリカンの糖鎖がつくれない
この病気は、筋肉や脳の細胞を外側の土台(基底膜)につなぎとめるα-ジストログリカンに、糖の鎖(糖鎖)がうまく付かないことで起こります。糖鎖が付かないと、α-ジストログリカンは土台のたんぱく質とつながれず、筋肉の細胞は壊れやすくなります。脳では、神経細胞が移動を止める位置がずれてしまいます。
糖鎖は、いくつもの酵素がリレーのように順番に組み立てます。たとえば、ISPD(現在の名前:CRPPA)は材料となるCDP-リビトールをつくります。フクチン(FKTN)とFKRPは、リビトールリン酸を1つずつ付けます。LARGE1は、土台とつながる部分(マトリグリカン)をつくります[6]。リレーのどこか1つが欠けても糖鎖は完成しないため、原因の遺伝子が複数あります。この病気のグループ(ジストログリカノパチー)の原因遺伝子は、少なくとも18個見つかっています[6]。糖鎖の付き方そのものについては、糖鎖修飾(グリコシル化)総論で解説しています。
福山型先天性筋ジストロフィー・筋眼脳病(MEB)・肢帯型筋ジストロフィーとの関係
同じ遺伝子の変化でも、症状の重さには大きな幅があります。ウォーカー・ワールブルグ症候群はその最も重い端にあり、同じ遺伝子が軽い型の筋ジストロフィーを起こすこともあります。遺伝子の病気をまとめた国際的なデータベース(OMIM)では、このグループを症状の重さで3つの型に分けています。
🧬 α-ジストログリカンの病気(ジストログリカノパチー)の3つの型
※型の分け方はOMIMの分類(muscular dystrophy-dystroglycanopathy type A・B・C)による(2026年10月確認)。A型に福山型が含まれることは、難病情報センターの指定難病113の病型・病名一覧(FKTN:福山型先天性筋ジストロフィー/α-ジストログリカノパチー4型)でも確かめています。
福山型先天性筋ジストロフィーは日本人に多い病気で、FKTN遺伝子の同じ変化(後で説明する約3,000塩基の挿入)が原因の大部分を占めます[7][9]。日本人の福山型の研究では、この挿入と別の小さな変化を1つずつもつお子さんで、水頭症や小眼球などウォーカー・ワールブルグ症候群に似た重い症状が、有意に多くみられました[8]。日本のご家族では、福山型とウォーカー・ワールブルグ症候群の境目は連続していると考えて検査を選ぶことが大切です。
予後(寿命)について
ウォーカー・ワールブルグ症候群は先天性筋ジストロフィーのなかでいちばん重い型で、2006年の総説では、多くのお子さんが3歳になる前に亡くなるとされています[1]。この数字は多くのお子さんをまとめた見通しで、一人ひとりの経過を決めるものではありません。原因の遺伝子や症状の重さによって経過は変わり、同じ遺伝子でも軽い型になることがあります。
つらい数字をお伝えすることになりますが、原因がはっきりすることで、お子さんの合併症への備えと、ご家族の次の計画を具体的に考えられるようになります。見通しについては、主治医とご相談ください。
2. 妊娠中に「赤ちゃんの脳室が大きい・水頭症」と言われた方へ
妊娠中のエコー(超音波検査)で見えるのは、脳室の拡大や水頭症などの「形の変化」で、その原因はさまざまです。ウォーカー・ワールブルグ症候群は、その原因の一つにすぎません。脳室が大きいと言われただけで、この病気だと決まるわけではありません。
赤ちゃんの脳室が基準より大きく見える状態は、胎児脳室拡大と呼ばれます。原因は一つではありません。ウォーカー・ワールブルグ症候群でも、脳や目の変化が出生前の画像検査で見つかることがあります[1]。
エコー・胎児MRIでわかること、滑脳症がわかる時期
滑脳症は「脳のしわが少ない」状態なので、正常でもまだしわができていない時期には判断できません。正常な胎児50人をエコーで調べた研究では、脳の溝がすべての胎児で見えるようになったのは、頭頂後頭溝で妊娠20.5週以降、鳥距溝で21.9週以降、帯状溝で24.3週以降、脳の表面(円蓋部)の溝で27.9週以降でした[12]。この時期を知っておくと、滑脳症を早めに疑う手がかりになるとされています[12]。
ウォーカー・ワールブルグ症候群のお子さん1人の妊娠中の経過を報告した論文では、妊娠26週に脳室の拡大と小脳まわりの異常がエコーで見つかり、胎児MRIでも確かめられました。網膜の異常が見えたのは、その約1か月後の妊娠31週でした[13]。1例の報告なので、すべての妊娠に当てはまるわけではありません。しかし、脳と目の変化が少しずつ見えてくることがあると知っておくと、検査の計画を立てやすくなります。
赤ちゃんの原因を調べる方法
妊娠中に赤ちゃんの原因を調べるには、羊水検査・絨毛検査で赤ちゃんの細胞を採り、遺伝子や染色体を調べます。当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。原因の候補がしぼれないときは、出生前全エクソーム(WES)検査や出生前全ゲノム(WGS)検査で、約2万の遺伝子を広く調べる方法もあります。
どの検査をどの順で行うかは、妊娠週数、見つかった所見、ご家族の情報によって変わります。結果が出るまでの時間も検査によって違うため、妊娠週数に余裕があるうちにご相談いただくことが大切です。単一遺伝子の病気の出生前診断の考え方は、単一遺伝子疾患の出生前診断にまとめています。
3. ウォーカー・ワールブルグ症候群の遺伝子検査を受けるとよい方・別の検査が向く方
この検査が向くのは、生まれつきの筋力低下に、滑脳症や水頭症などの脳の異常と、目の異常が重なっているお子さんです。症状がこの病気らしいほど、7つの遺伝子にしぼって調べる意味が大きくなります。
受けるとよい方
- ●生まれたときから筋肉の張りが弱く、滑脳症(敷石様)や水頭症、小脳の異常がある
- ●白内障・網膜の異常・小眼球など、目の異常を伴っている
- ●血液のクレアチンキナーゼ(CK)が高いと言われた
- ●症状から、ウォーカー・ワールブルグ症候群・筋・眼・脳病・福山型先天性筋ジストロフィーなどを疑われている
- ●お子さんを亡くされたあと、次の妊娠を考えて原因を知りたい(保存されている検体で調べられるかは、検体の種類によります)
原因がわからないまま病院を回る時間を、検査で短くできる可能性があります。日本の未診断疾患イニシアチブ(IRUD)では、遺伝学的な解析を終えた5,136家系のうち2,247家系(43.8%)で診断が確定しました[15]。一方で、全員に診断がつくわけではありません。原因が見つからなかったときにも次の選択肢があることを、第6章・第7章でお伝えします。
見た目や症状だけでは、どの遺伝子が原因かは判断できません。同じ症状でも原因の遺伝子が違うことがあり、遺伝子がわかってはじめて、ご家族の検査や次の妊娠の計画を具体的に立てられます。
どの検査を選ぶか:症状とCK値から選ぶ
脳と目の異常がはっきりしていれば、この7遺伝子の検査がしぼり込みとして向いています。症状がこの病気らしいとは言い切れないときは、もっと広く調べる検査のほうが向いています。当院の筋肉・脳の遺伝子検査は、次のように選び分けます。
🔍 症状・CK値・発症の時期から、どの検査を選ぶか
※遺伝子の数は、2026年10月19日時点の当院の各検査ページの表示による。滑脳症と大脳皮質形成異常の検査には、7遺伝子のうちISPDが含まれていません。どの検査が合うかは、症状・診察所見・ご家族の情報で変わるので、遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。
7遺伝子は、ほかの検査にも含まれていることがあります。症状がこの病気にはっきり当てはまるなら、しぼった検査で十分なことが多い一方、少しでも迷いがあるなら、はじめから広い検査を選ぶほうが、検査をくり返さずに済む場合もあります。
4. 調べる7つの遺伝子と、それぞれで起こる病気
この検査では、ウォーカー・ワールブルグ症候群の原因として知られる7つの遺伝子を、まとめて調べます。7つとも常染色体潜性(劣性)遺伝で、どれも、同じ遺伝子が重い型から軽い型まで、いろいろな重さの病気を起こします。
🧬 ウォーカー・ワールブルグ症候群の遺伝子検査で調べる7遺伝子
※「A型・B型・C型」は前の章のジストログリカノパチーの3つの型(A型=脳と目の異常を伴う先天型、B型=先天性筋ジストロフィー、C型=肢帯型)。病名と遺伝のしかたはOMIMの各遺伝子の項目(POMT1・POMGNT1・FKTN・FKRPはOMIMの記載、POMT2・LARGE1・ISPDはOMIMの番号をもとにNCBI Gene・UniProtで確認、2026年10月)による。遺伝子名の新旧はHGNC(ヒト遺伝子命名委員会)で確認。
わかっている遺伝子で説明できるのは一部です
ウォーカー・ワールブルグ症候群のお子さんでも、今わかっている遺伝子で原因が見つかるのは一部で、原因がわからないままの方が少なくありません。調べた集団や時期によって、数字は次のように違います。
- ●POMT1の変化が初めて報告された2002年の研究では、血縁のないウォーカー・ワールブルグ症候群の30人のうち6人(20%)で、POMT1に変化が見つかりました[2]。
- ●2012年の論文では、当時知られていた7つの遺伝子で説明できるのは、ウォーカー・ワールブルグ症候群の50〜60%とされました[3]。
- ●胎児を中心とした敷石様滑脳症の90家系を調べたフランスの研究では、8つの遺伝子を合わせて64%の家系で原因が見つかり、36%(90家系のうち32家系)では原因がわかりませんでした[4]。
- ●敷石様滑脳症の胎児65例を調べた研究では、66%で原因の変化が見つかり、内訳はPOMT1が34%、POMGNT1が18%、POMT2が8%、LARGEが4.5%、FKRPが1.5%でした[5]。
この病気のグループでは、2012年以降もPOMGNT2・DAG1・B4GAT1など新しい原因遺伝子が見つかっています。これらは、この7遺伝子の検査には含まれていません。もっと広く調べたい場合は、第3章の表のように、13遺伝子を調べる検査や全エクソーム検査が選択肢になります。
5. 遺伝する確率:ウォーカー・ワールブルグ症候群は常染色体潜性(劣性)遺伝
ウォーカー・ワールブルグ症候群は常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がともに保因者の場合、お子さんが発症する確率は、妊娠のたびに4分の1(25%)です[7]。筋ジストロフィーには、遺伝のしかたが違う型がいくつもあります。「筋ジストロフィーは遺伝する確率が◯%」と一つにまとめることはできず、型ごとに考える必要があります。
次のお子さんで同じ病気が起こる確率は4分の1
遺伝子は、お父さんから1つ、お母さんから1つ受け継いで、2つで1組になっています。常染色体潜性(劣性)遺伝の病気は、2つともに原因の変化があるときに発症します。変化を1つだけもつ方は「保因者」と呼ばれ、ふつう症状はありません。
発症する2つとも受け継ぐ
4分の1(25%)
|
保因者1つ受け継ぐ
2分の1(50%)
|
受け継がないどちらも受け継がない
4分の1(25%)
ご両親がともに保因者のとき、お子さん1人ひとりについて、上の確率は妊娠のたびに同じです[7]。上のお子さんが発症したからといって、次のお子さんの確率が下がったり上がったりすることはありません。
ご両親が血縁関係にある(いとこ同士など)場合は、同じ変化を2人ともが受け継いでいる可能性が高くなるため、潜性遺伝の病気のお子さんが生まれる可能性が高くなります。2012年の研究も、血縁のあるご両親から生まれたお子さんを集めて新しい原因遺伝子を見つけています[3]。とはいえ、血縁関係のないご両親のお子さんにも起こる病気です。
きょうだい・ご親戚が知っておきたいこと(結婚・妊娠を考えるとき)
ウォーカー・ワールブルグ症候群のお子さんのきょうだいで、発症していない方が保因者である確率は、3分の2と計算されます。発症していないことがわかっている方は「発症する」の4分の1を除いて考えるため、残りの4分の3のうち保因者が4分の2を占めるからです。保因者であっても、ご自身に症状が出ることはふつうありません。
お子さんがこの病気になるのは、パートナーも同じ遺伝子に変化をもつ保因者だった場合です。ご家族で原因の変化がわかっていれば、ご自身がその変化をもっているかを、ピンポイントで調べられます。パートナーには、保因者検査で同じ遺伝子を調べられます。
家族に筋ジストロフィーの方がいることで、結婚や出産に不安を感じたり、周りから心配の声をかけられたりする方もいます。遺伝の確率は、病気の型とご家族の状況によって大きく違います。検査で「わかること」があり、知ったうえで選べる道もあります。どの選択も尊重されるべきもので、当院では、結婚・妊娠を考える段階からご相談いただけます。
保因者検査で調べられる遺伝子
当院の拡大版保因者スクリーニングでは、検査の版によって、7遺伝子のうち調べられる遺伝子が違います(2026年10月19日に各ページの遺伝子一覧で確認)。
🧪 保因者検査で調べられる遺伝子
※保因者検査では、ご家族の原因の変化が見つかるかどうかだけでなく、ほかの多くの遺伝子もあわせて調べます。ご家族で原因の変化がわかっている場合は、その変化だけを調べる方法もあります。
妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」(女性787遺伝子・男性714遺伝子)もあります。単独では受けられません。対象の遺伝子は、遺伝カウンセリングでご確認ください。
6. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、7つの遺伝子の文字(塩基)の小さな変化と、遺伝子の一部が欠けたり重複したりする変化です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。
わかること
次世代シーケンサー(NGS)という機械で、7つの遺伝子のたんぱく質をつくる部分と、そのつなぎ目を読みます。1文字の変化や、小さな挿入・欠失が見つかります。遺伝子の一部が欠けたり重複したりする変化(欠失・重複)も調べ、見つかった場合は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
わからないこと(検査の限界)
- ●7つ以外の遺伝子:POMGNT2やDAG1など、この検査に含まれない原因遺伝子は調べません(第4章)。
- ●見つけにくい種類の変化:染色体の一部の入れかわり(転座・逆位)、同じ配列のくり返しが長くなる変化、遺伝子の働きを調節する部分や、遺伝子の奥深く(イントロン)の変化は、この検査では見つかりません。1つのエクソンだけの小さな欠失・重複は、見つからないことがあります。
- ●モザイク:体の一部の細胞にだけある変化は、この検査の目的に含まれていません。
- ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の知識では判断できない変化が見つかることがあります。
- ●陰性でも否定はできません:第4章のとおり、この病気のお子さんでも、今わかっている遺伝子で原因が見つかるのは一部です。原因が見つからなくても、この病気ではないとは言えません。
日本人に多いFKTNの挿入について
福山型先天性筋ジストロフィーの原因の大部分は、FKTN遺伝子の端(3’非翻訳領域)に入り込んだ約3,000塩基の配列(レトロトランスポゾンの挿入)です[9]。この挿入は、この検査では見つけにくい場合があります。日本の各地域の調査をまとめた推定では、FKTNの保因者は約188人に1人とされています[7]。こうした、多くの人に共通する祖先由来の変化は、創始者変異と呼ばれます。
日本のご家族では、この挿入と別の小さな変化を1つずつもつことで、ウォーカー・ワールブルグ症候群に似た重い症状になることがあります[8]。その場合、この検査では小さな変化だけが見つかり、もう1つの挿入が見つからないことがありえます。臨床遺伝専門医としては、FKTNに変化が1つだけ見つかったお子さんでは、挿入を調べる別の方法を検討する必要があると考えます。結果の読み方は、遺伝カウンセリングで詳しくご説明します。
7. 病的変異が見つかったら、次にできること
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。原因の変化(病的変異)が見つかったときに、立場ごとに次にできることをまとめます。
お子さん(ご本人):病名が決まり、見張る合併症がはっきりする
原因の遺伝子がわかると、病名がはっきりし、何に気をつけて過ごせばよいかが決まります。先天性筋ジストロフィーの国際的な診療の合意文書(2010年)は、次のような見張りと支援を勧めています[10]。
- ●呼吸:受診のたびに、少なくとも年1回、呼吸の働きを調べる。必要に応じて、血液の酸素や睡眠中の呼吸も確かめる。
- ●栄養:長く管から栄養をとる必要があるときは、胃ろう・腸ろうが第一の選択とされ、鼻からの管は短い期間に限るとされています。
- ●けいれん:脳波を最初に調べ、その後もくり返し確かめる。
- ●目:α-ジストログリカンの病気では、詳しい目の検査と、その後の定期的な確認が勧められています。
- ●心臓:少なくとも1回、小児循環器の診察(心電図・心エコー)を受ける。心不全は、FKRP・フクチン(FKTN)・POMT1などの変化をもつ方で、10代の半ば以降に起こりやすいとされています。
- ●関節・背骨:関節が固くなることや側弯に備えて、早めに整形外科にかかり、少なくとも年1回は確かめる。
FKTNの変化では、筋力低下がほとんどないまま拡張型心筋症として見つかった例も報告されています[14]。このように、同じ遺伝子でも症状の現れ方は人によって違います。原因の病気そのものを治す治療は、2026年10月時点でまだ確立していません。福山型の挿入については、細胞やモデルマウスで、異常なつなぎ合わせを防ぐ核酸医薬(アンチセンス核酸)の研究が報告されています[16]。治療やリハビリは、小児神経科など専門の医療機関で受けていただきます。
ご両親・きょうだい:同じ変化をもっているかを、ピンポイントで調べられる
お子さんで原因の変化が2つ見つかったら、ご両親がそれぞれどちらの変化をもっているかを確かめます。潜性遺伝の病気では、2つの変化がお父さん由来とお母さん由来に分かれていることを確かめるのが大切です。この確認が、次の妊娠の計画の出発点になります。
発症していないきょうだいやご親戚も、ご家族の変化をもっているかを、その変化だけを狙って調べられます。症状のない方の検査は、ご本人が知りたいと決めた場合に、遺伝カウンセリングのうえで行います。
次のお子さんを考えるとき:知ってから選べること
ご家族の原因の変化がわかっていれば、次の妊娠で、赤ちゃんが同じ変化を受け継いでいるかを調べられます。原因がわからないままでは、出生前に調べる的を決められません。原因の変化がわかっている潜性遺伝の病気では、保因者の検査、出生前の検査、着床前の検査が可能とされています[7]。
- ●自然に妊娠して、出生前診断を受ける:絨毛検査または羊水検査で赤ちゃんの細胞を採り、ご家族の変化を調べます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。
- ●着床前遺伝学的検査(PGT-M):体外受精でできた受精卵を調べる方法で、日本では日本産科婦人科学会の審査を経て行われ、海外で受ける方もいます。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません(次の項目で詳しくご説明します)。
- ●検査を受けずに妊娠・出産する:これも、そのまま選べる選択肢です。
出生前診断を行えるかどうかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて、ご家族ごとに考えます。妊娠を考えている段階からご相談ください。なお、この病気の7つの遺伝子は、当院のNIPTの対象には含まれていません。
海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます
PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。海外でPGT-Mを受けたいというお問い合わせをいただくことがあります。当院は体外受精・PGT-Mを行っていませんが、その前提となる原因遺伝子の確定と、英語の検査結果の用意ができます。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。
ヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)の指針は、PGT-Mの準備に次の3つが必要としています[17]。
- ●病気の原因と確かめられた遺伝子の変化:可能な限り、その変化を確かめておくことが勧められています。
- ●変化の内容が書かれた元の報告書:どの遺伝子のどの変化かが書かれたもので、認定を受けた検査室から取り寄せることが勧められています。
- ●ご家族の検体:受精卵から取れるDNAはごくわずかです。そのため、変化を直接読むだけでは、2本のうち片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで、判定を誤るおそれがあります。そこで、変化のある場所の両側にある目印(多型マーカー)で、変化をもつ染色体を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます。潜性遺伝の病気では、ご夫婦に加えて、患者さん(2つの変化をもつ方)・保因者の方・保因者でない方の検体が目安とされています。
ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。血縁者の検体が得られない場合、指針は、ご夫婦の目印を調べたうえで、治療周期の受精卵や1個の精子を調べて、変化の乗った染色体を決める方法も挙げています。ただし、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります[17]。
臨床遺伝専門医としての判断をお伝えします。この病気では、お子さんを亡くされているご家族も少なくありません。お子さんの検体(保存されたDNAなど)が残っているかを、早めに確かめておくことが大切です。また、意義がまだわからない変化(VUS)は、病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もって確認してください。
海外でPGT-Mを考えている方は、検査の段階から、協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。くわしくは、遺伝性疾患をお持ちで海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へで解説しています。
⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です
PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[18]。当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。絨毛検査・羊水検査は院内で行っており、海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。
日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます。この指針の「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患とされています。申請の時点で有効な治療法がないか、治療法があっても高度で侵襲度の高いものが対象です。審査が続いている申請も多く、学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち、37件が審査継続中でした(2026年9月発表)。
どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います[19]。英国では、公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しています。一覧には2,000を超える病気が載っており(2026年9月17日更新の一覧で2,067)、一覧にない病気も施設を通じて申請できます。米国には、PGTを直接規制する連邦や州の法律はありません[19]。米国生殖医学会の倫理委員会は2024年、大人になってから発症する病気に対するPGT-Mも、倫理的に許容されうるとする意見を出しています[20]。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。
原因が見つからなかったとき・VUSだったとき
7つの遺伝子で原因が見つからなかったときは、第3章の表のように、もっと広く調べる検査を次の選択肢として考えます。FKTNに変化が1つだけ見つかった場合は、第6章のとおり、日本人に多い挿入を調べる方法を検討します。
意義がまだわからない変化(VUS)は、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査や出生前診断に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的と別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。
8. 日本の制度(2026年10月時点)
ウォーカー・ワールブルグ症候群は、指定難病113「筋ジストロフィー」の病型のひとつに含まれています。難病情報センターの病型・病名一覧(令和7年度版)では、先天性筋ジストロフィーのなかの「α-ジストログリカノパチー」が遺伝子ごとに並んでいます。POMT1・POMT2・POMGnT1・FKTN・FKRP・ISPD(CRPPA)などには、症候群名として「ウォーカー・ワールブルグ症候群」が書かれています。概要・診断基準の文書でも、先天性筋ジストロフィーの表に「Walker-Warburg症候群(常染色体劣性)」が載っています。
指定難病の医療費助成の対象になるかは、重症度の基準によって決まります。生活の自立度(modified Rankin Scale)・食事と栄養・呼吸・循環のいずれかの評価が3以上の場合が対象です。小児慢性特定疾病では、「ウォーカー・ワールブルグ症候群」という名前の項目はありません。ただし、神経・筋疾患の脳形成障害のなかに「滑脳症」があり、その解説では、敷石様の異形成が先天性筋ジストロフィーに伴ってみられるとされています。福山型先天性筋ジストロフィーも、独立した項目として掲載されています。
医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。どの制度が使えるかは、主治医や、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。
9. 検査の流れ・費用(筋ジストロフィーの遺伝子検査費用)・結果までの日数・検体
検査料は税込330,000円で、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の内側の粘膜・血液のいずれでも検査ができ、オンライン診療でもお受けいただけます。
ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
検体の採取唾液・粘膜・血液
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査料の割引はありません)。
この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えや品質の低下を防ぐため、ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の見方は、NIPT/遺伝子検査結果の見かたで解説しています。
当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
10. 院長コラム
🩺 院長コラム【原因がわかってはじめて、次の妊娠の備えが立てられる】
重い病気のお子さんを授かったご両親が、「自分たちのせいではないか」とご自分を責めてしまうことがあります。潜性遺伝の病気の保因者であることは、誰にでもありうることです。誰のせいでもありません。私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
ウォーカー・ワールブルグ症候群のような重い病気では、原因がわかっても、お子さんの病気そのものを治せるわけではありません。それでも、原因がわかれば、次のお子さんで同じことが起こる可能性がどれくらいあるか、そして次の妊娠でどう備えられるかを、具体的に考えられるようになります。原因がわからないままでは、出生前に調べる的を決めることもできません。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。次の妊娠を考えるご家族には、原因の確定から、出生前診断(絨毛検査・羊水検査)まで、当院で続けて支えられる体制を整えています。知る・知らない、子どもを持つ・持たない、出生前診断を受ける・受けない。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. ウォーカー・ワールブルグ症候群とはどんな病気ですか?
ウォーカー・ワールブルグ症候群(Walker-Warburg症候群、WWS)は、脳・目・筋肉に生まれつき重い症状が出る、先天性筋ジストロフィーのなかでもいちばん重い型です。筋肉や脳の細胞をつなぎとめるα-ジストログリカンというたんぱく質に、糖鎖がうまく付かないことで起こり、常染色体潜性(劣性)遺伝のしかたをとります。名前が似ているワーデンブルグ症候群(難聴や色素の変化を起こす病気)とは、まったく別の病気です。
Q2. 遺伝する確率は?次の子どもも同じ病気になりますか?
ウォーカー・ワールブルグ症候群は常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がともに同じ遺伝子の変化をもつ保因者の場合、お子さんが発症する確率は、妊娠のたびに4分の1(25%)です。保因者になる確率は2分の1、どちらの変化も受け継がない確率は4分の1です。ご家族の原因の変化がわかっていれば、次の妊娠で出生前診断を計画できます。
Q3. 妊娠中のエコーで水頭症(脳室拡大)と言われました。この検査を受けたほうがよいですか?
胎児の脳室拡大や水頭症の原因はさまざまで、ウォーカー・ワールブルグ症候群はその原因の一つにすぎません。この検査は、症状のある方(お子さん)の血液や唾液などで、7つの原因遺伝子を調べる検査です。妊娠中に赤ちゃんの原因を調べる方法には、羊水検査・絨毛検査や出生前の全エクソーム検査などがあり、どの検査をどの順で行うかは、妊娠週数と見つかった所見によって変わります。まずは遺伝カウンセリングでご相談ください。
Q4. 滑脳症は妊娠何週ごろにわかりますか?
滑脳症は脳の表面のしわ(脳回)が少ない状態なので、正常でもしわがまだできていない時期には判断できません。正常な胎児50人を調べた研究では、脳の溝がすべての胎児で見えるようになったのは、溝によって妊娠20.5週以降から27.9週以降でした。そのため、滑脳症は妊娠中期の後半以降に疑われることが多く、それより早い時期には脳室の拡大などがきっかけになります。
Q5. 寿命(予後)はどのくらいですか?
ウォーカー・ワールブルグ症候群は先天性筋ジストロフィーのなかでいちばん重い型で、2006年の総説では、多くのお子さんが3歳になる前に亡くなるとされています。ただし、経過には幅があり、原因の遺伝子や症状の重さによって変わります。見通しについては、主治医とご相談ください。
Q6. きょうだいがこの病気でした。結婚や妊娠の前にできることはありますか?
発症していないきょうだいの方が保因者である確率は、3分の2と計算されます。保因者であっても、ご自身に症状が出ることはふつうありません。お子さんが発症するのは、パートナーも同じ遺伝子の変化をもっている場合です。ご家族で原因の変化がわかっていれば、ご自身がその変化をもっているかをピンポイントで調べられます。パートナーには保因者検査で同じ遺伝子を調べられ、知ったうえで結婚や妊娠の計画を立てられます。
Q7. 検査で原因が見つからなかったらどうなりますか?
この病気と診断されたお子さんでも、今わかっている遺伝子で原因が見つかるのは一部です。7つの遺伝子で原因が見つからなくても、この病気が否定されるわけではありません。ほかの遺伝子を含むジストログリカン関連の検査や、全エクソーム検査を次の選択肢として考えます。
Q8. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?
はい。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の両方をご希望の場合は、追加料金5,500円で承ります。ただし、ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。潜性遺伝の病気では、ご夫婦それぞれの変化の確認と、ご家族の検体が必要になります。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。
🧬 一度の検査で、ご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。ウォーカー・ワールブルグ症候群の原因がわかれば、お子さんの合併症への備えだけでなく、ご両親・きょうだいの検査や、次の妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
- [1] Vajsar J, Schachter H. Walker-Warburg syndrome. Orphanet J Rare Dis. 2006;1:29. [DOI: 10.1186/1750-1172-1-29](PMID: 16887026)
- [2] Beltrán-Valero de Bernabé D, Currier S, Steinbrecher A, et al. Mutations in the O-mannosyltransferase gene POMT1 give rise to the severe neuronal migration disorder Walker-Warburg syndrome. Am J Hum Genet. 2002;71(5):1033-1043. [DOI: 10.1086/342975](PMID: 12369018)
- [3] Manzini MC, Tambunan DE, Hill RS, et al. Exome sequencing and functional validation in zebrafish identify GTDC2 mutations as a cause of Walker-Warburg syndrome. Am J Hum Genet. 2012;91(3):541-547. [DOI: 10.1016/j.ajhg.2012.07.009](PMID: 22958903)
- [4] Vuillaumier-Barrot S, Bouchet-Séraphin C, Chelbi M, et al. Identification of mutations in TMEM5 and ISPD as a cause of severe cobblestone lissencephaly. Am J Hum Genet. 2012;91(6):1135-1143. [DOI: 10.1016/j.ajhg.2012.10.009](PMID: 23217329)
- [5] Devisme L, Bouchet C, Gonzalès M, et al. Cobblestone lissencephaly: neuropathological subtypes and correlations with genes of dystroglycanopathies. Brain. 2012;135(Pt 2):469-482. [DOI: 10.1093/brain/awr357](PMID: 22323514)
- [6] Kanagawa M. Dystroglycanopathy: from elucidation of molecular and pathological mechanisms to development of treatment methods. Int J Mol Sci. 2021;22(23):13162. [DOI: 10.3390/ijms222313162]
- [7] Saito K. Fukuyama Congenital Muscular Dystrophy. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2006 (Updated 2025 May 8). [NCBI Bookshelf NBK1206](PMID: 20301385)
- [8] Kondo-Iida E, Kobayashi K, Watanabe M, et al. Novel mutations and genotype-phenotype relationships in 107 families with Fukuyama-type congenital muscular dystrophy (FCMD). Hum Mol Genet. 1999;8(12):2303-2309. [DOI: 10.1093/hmg/8.12.2303](PMID: 10545611)
- [9] Kobayashi K, Nakahori Y, Miyake M, et al. An ancient retrotransposal insertion causes Fukuyama-type congenital muscular dystrophy. Nature. 1998;394:388-392. [DOI: 10.1038/28653](PMID: 9690476)
- [10] Wang CH, Bonnemann CG, Rutkowski A, et al. Consensus statement on standard of care for congenital muscular dystrophies. J Child Neurol. 2010;25(12):1559-1581. [DOI: 10.1177/0883073810381924](PMID: 21078917)
- [11] Bönnemann CG, Wang CH, Quijano-Roy S, et al. Diagnostic approach to the congenital muscular dystrophies. Neuromuscul Disord. 2014;24(4):289-311. [DOI: 10.1016/j.nmd.2013.12.011]
- [12] Toi A, Lister WS, Fong KW. How early are fetal cerebral sulci visible at prenatal ultrasound and what is the normal pattern of early fetal sulcal development? Ultrasound Obstet Gynecol. 2004;24(7):706-715. [DOI: 10.1002/uog.1802]
- [13] Strigini FAL, Valleriani A, Cecchi M, et al. Prenatal ultrasound and magnetic resonance imaging features in a fetus with Walker-Warburg syndrome. Ultrasound Obstet Gynecol. 2009;33(3):363-365. [DOI: 10.1002/uog.6300](PMID: 19222032)
- [14] Murakami T, et al. Fukutin gene mutations cause dilated cardiomyopathy with minimal muscle weakness. Ann Neurol. 2006;60(5):597-602. [DOI: 10.1002/ana.20973](PMID: 17036286)
- [15] Takahashi Y, et al. Six years’ accomplishment of the Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases: nationwide project in Japan to discover causes, mechanisms, and cures. J Hum Genet. 2022;67(9):505-513. [DOI: 10.1038/s10038-022-01025-0](PMID: 35318459)
- [16] Taniguchi-Ikeda M, Kobayashi K, Kanagawa M, et al. Pathogenic exon-trapping by SVA retrotransposon and rescue in Fukuyama muscular dystrophy. Nature. 2011;478(7367):127-131. [DOI: 10.1038/nature10456](PMID: 21979053)
- [17] ESHRE PGT-M Working Group, Carvalho F, Moutou C, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the detection of monogenic disorders. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa018. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa018]
- [18] ESHRE PGT Consortium Steering Committee, Carvalho F, Coonen E, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the organisation of PGT. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa021. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa021]
- [19] Nakasato K, Yamamoto BA, Kato K. Evaluating standards for ‘serious’ disease for preimplantation genetic testing: a multi-case study on regulatory frameworks in Japan, the UK, and Western Australia. Hum Genomics. 2022;16:16. [DOI: 10.1186/s40246-022-00390-3]
- [20] Ethics Committee of the American Society for Reproductive Medicine. Use of preimplantation genetic testing for monogenic adult-onset conditions: an Ethics Committee opinion. Fertil Steril. 2024;122(4):607-611. [DOI: 10.1016/j.fertnstert.2024.05.165]
関連記事