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【妊婦向け】染色体とは?基礎知識から新型出生前診断の仕組みまで解説

現在、妊娠中のお母さんにとって、我が子が健康に生まれてくれるか心配する過程で「染色体異常」というワードを聞いたことがあるのではないでしょうか?

そこでこの記事では、染色体異常について体系的に学べるように以下の内容を解説します。

  • ・染色体とは?
  • 遺伝子とは?
  • ゲノムとは?
  • ・染色体異常を調べる検査

染色体についてあまり詳しくない方でも理解しやすいように噛み砕いて解説していますので、ぜひご覧ください。

染色体とは?

染色体という言葉に馴染みがない方も多いのではないでしょうか?

言葉自体は聞いたことがあっても、体のどの部分にあり、どんな働きをするのかなど詳しく理解している人は少ないと予測されます。

そこでこの章では、染色体の基礎知識として以下の内容について学んでいきましょう。

  • ・染色体の種類
  • ・染色体の数と形

一読で理解できるように簡単な内容で解説していますので、ぜひご活用ください。

 

染色体の種類

染色体とは、親から引き継いだ遺伝情報を保管する場所です。そして、以下の2つの種類があります。

  • 常染色体
  • 性染色体

通常、染色体は23対(計46本)から構成されます。内訳は、常染色体が44本(両親それぞれから22本ずつ)、性染色体が2本(両親それぞれから1本ずつ)です。

常染色体は全身の細胞を作るための情報の保管庫です。心臓には心臓、脳には脳、足の筋肉には足の筋肉のように、それぞれの組織に必要な遺伝情報を記録しています。つまり、受精卵が胎児へ、あかちゃんが大人へなるための細胞分裂には常染色体が不可欠なのです。

一方、性染色体は性別を決めるための染色体です。「XX(女性)」「XY(男性)」の2種類があります。総務省によると、日本人の男女比はおよそ1:1であり、それほど差がありません。

このように染色体には、体の作りを決める「常染色体」と性別を決める「性染色体」の2種類があるのが分かりました。

では、次に染色体の数と形の特徴について解説します。

※参考資料:総務省統計局/男女別人口

 

染色体の数と形

ヒトの染色体数は「46本(23対)」であり、形は以下の画像をご覧ください。

染色体

NIPT Japan/染色体とは?基本から解説!より画像引用)

ヒトが46本であるのに対して、猫は38本(19対)と種族により異なります。

また、卵子精子などの性染色体は、減数分裂という通常の2分の1の染色体数になる方法で分裂します。減数分裂をすることで、性染色体が2倍の染色体数にならない仕組みになっているのです。

※参考資料:NIPT Japan/染色体とは?基本から解説!

遺伝子とは?

染色体に続き、遺伝子についても詳しく知っているという方は少ないのではないでしょうか?

そこでこの章では、以下の内容について解説します。

  • ・遺伝子の役割
  • ・遺伝子とDNAの違いとは?
  • ・遺伝情報をもとに体ができる仕組み

染色体・遺伝子異常など出生前検査に関心がある方は、前章の染色体と合わせてしっかりと理解しておきましょう。

 

遺伝子の役割

遺伝子の役割は、以下の通りです。

  • ・遺伝情報の管理
  • ・生命活動の維持
  • ・種の保存

ヒトの体はタンパク質の合成を行うために、細胞分裂をします。そして遺伝子にはタンパク質の合成に関する遺伝情報があります。

例えば、心臓には心臓になるための細胞分裂の方法を、脳には脳の、筋肉には筋肉といった感じで、それぞれの組織に合わせた細胞分裂を促します。

またDNAに保管された遺伝情報は、ヒトが成長する過程で繰り返し読み出されて使われます。タンパク質は筋肉やホルモンを作るために不可欠な物質であることから、ヒトの生命維持においても非常に重要な役割を果たしていると言えます。

ヒトと他の種族の遺伝子の違いは、とても少ないと分かっています。例えば、人とチンパンジーの遺伝子の98%は同じです。つまり、わずかな遺伝子の違いにより、私たち人間という種を保存しているのです。

 

遺伝子とDNAの違いとは?

遺伝子とは、体を作るための遺伝情報の保管庫であることは前章までに解説した通りです。一方のDNAとは、多数の遺伝子が集まり二重らせん構造になった遺伝子の集合体のことです。

つまり、無数の遺伝子が集まりDNAを構成しているイメージです。そして、これらのDNAが何本も集合することで「染色体」になり、これら全てを総称して「ゲノム」と呼びます。

厚生労働省の以下の図解が、遺伝子とDNAの違いを理解するのに参考になります。

ゲノム

厚生労働省/新しいバイオテクノロジーで作られた食品について P3より画像引用)

イメージしにくい方のために、DNAを本に例えると分かりやすいでしょう。1冊の本(DNA)の中には、沢山の情報や物語が書かれています(遺伝子や遺伝情報)。これらの本は本棚(染色体)に並べられて生理されます。

また読み返したくなったら、本棚から探して読みますよね。大人になる過程で細胞分裂を繰り返すのに、遺伝情報は何度も引き出して使います。遺伝子やDNA・染色体など言葉で理解するのが難しくても、本に例えると分かりやすくなります。

※参考資料:厚生労働省/新しいバイオテクノロジーで作られた食品について P3

 

遺伝情報をもとに体ができる仕組み

ヒトは遺伝情報をもとにタンパク質の合成を行い、各組織に必要な内容で細胞分裂をします。

タンパク質の合成には20種類のアミノ酸が必要でありますが、以下の2種類に分けられます。

  • ・必須アミノ酸
  • ・非必須アミノ酸

必須アミノ酸とは、ヒトをはじめ動物が体内で作れない9種類のアミノ酸のことであり、食事摂取を通して取り込みます。一方の非必須アミノ酸とは、体内で糖や脂質を合成することで作り出せる11種類のアミノ酸のことです。

体を構成する要素として60%を占める水分に次いで2番目に多い物質となります。これらの20種類のアミノ酸が鎖状に集合して折り畳まれた状態のものがタンパク質になります。そしてその形によりタンパク質の働きが決まるのです。

一連の流れを解説すると、摂取もしくは体内で合成されたアミノ酸を使って、遺伝情報をもとにタンパク質を合成することで体が作られる仕組みになります。

妊娠中に調べる胎児の遺伝子異常について詳しく知りたい方は「遺伝子とは?遺伝子異常・検査について分かりやすく解説」の記事が参考になります。ぜひ、ご覧ください。

※参考資料:厚生労働省e-ヘルスネット/アミノ酸

ゲノムとは?

ゲノムとは遺伝子(gene)と集合をあらわす(ome)を組み合わせた言葉であり、遺伝子と染色体から構成される遺伝情報の一組のことです。

ヒトゲノム(人間のゲノム)にあるDNAの文字配列(塩基)は32億文字配列から成立していることが分かっています。この文字配列の中でタンパク質を合成するための情報を持った遺伝子が約23,000個あります。

これらの遺伝子が連なったのがDNAであり、最終的に染色体となります。これら一連の集合体がゲノムなのです。

染色体異常とは?

妊婦なら「子どもが障害になっていないか?」と心配になり、一度は染色体異常について調べたことがあるのではないでしょうか?

しかし、染色体異常について科学的な解説をした記事はあるものの、胎児との関係性について書かれたものはなかなかありません。

そこでこの章では、妊婦向けに胎児と染色体異常の関係性について、以下の内容を解説します。

  • ・染色体異常の種類と流産の関係性
  • ・精子・卵子の染色体異常
  • ・代表的な染色体異常症

妊娠した以上、胎児が染色体異常になる確率は誰にでもあります。そのため、最後まで読んで染色体異常について理解を深めておきましょう。

 

染色体異常の種類と流産の関係性

妊娠する以上、胎児が染色体異常を発症するリスクは誰にでも十分あります。そして流産の50〜70%の原因は染色体異常であり、流産の約80%は妊娠12週までに起こることも分かっています。

染色体異常の種類は、以下の3つです。

  • ・数的異常
  • ・構造異常
  • 機能異常

数的異常とは、本来2本で1対になるはずの染色体の数が増減する異常です。代表的なものだと、21番目の染色体が3本になるダウン症21トリソミー)があります。

構造異常とは、染色体の形が違うことで生じる異常です。染色体相互転座や染色体逆位などがあります。また、部分欠損や重複、環状などのケースも考えられます。

機能異常とは染色体の一部が機能していなかったり、刷り込み現象が起こったりした状態のことです。

※参考資料:公益社団法人 日本産婦人科医会/染色体異常

 

精子・卵子の染色体異常

加齢とともに卵子・精子は劣化するため、それに伴って染色体異常が生じる可能性が高まります。特に精子は遺伝子レベルの変異を起こすことが分かっています。

染色体異常のある受精卵は、流産のリスクが非常に高く、無事生まれても重篤な障害を持っていることがほとんどです。

流産になる胎児の約60%で常染色体トリソミー(13・15・16・18・21・22番目の異常が多い)があり、中には2箇所以上で染色体異常が見つかることもあります。染色体異常を抱えて生まれてくる新生児は全体の約0.4%で、このデータからも染色体に異常があると出産に到ることが難しいと分かります。

※参考資料:公益社団法人 日本産婦人科医会/染色体異常

 

代表的な染色体異常症

代表的な染色体異常は、以下の通りです。

先天性異常一覧

NIPT Japan/出生前検査でわかることより画像引用)

ダウン症のように有名な染色体異常から、あまり聞き慣れないものまであります。それぞれの染色体異常により、症状の程度や特徴が全く異なります。

染色体という目に見えない小さな部分の変化であっても、生物にとって染色体は非常に重要な役割を担っていることが分かります。

※参考資料:NIPT Japan/出生前検査でわかること

【胎児】染色体異常の発見には新型出生前診断(NIPT)が有効

染色体異常について理解を深めて方が次に気になるのは「自分の子どもに異常はないか?」ではないでしょうか?

いくら理解を深めても「あなたの子どもに異常がない」とは言い切れないため、100%不安を解消することはできませんよね。

そこでこの章では、胎児の染色体異常について調べられる「新型出生前診断」について、以下の内容をお伝えします。

  • ・新型出生前診断とは?
  • ・新型出生前診断の費用
  • ・新型出生前診断の前に考えておくこと【後悔したくない方へ】

不安を抱えたまま妊娠生活を送りたくない方は、ぜひ最後までご覧ください。

 

新型出生前診断とは?

新型出生前診断(NIPT)とは、出生前に胎児に先天性障害がないかを確認する出生前スクリーニング検査のことです。

お母さんの採血を行い、血液中に浮かぶDNAの破片をもとに、染色体・遺伝子異常がないかを解析します。検査費用が約10〜20万円と高いデメリットはありますが、早い時期(妊娠10週)から受けられる上に、採血による苦痛だけで済むメリットもあります。

特にダウン症(21トリソミー)に対しての約99.9%の感度であることからも、信頼性の高い検査であることは言うまでもありません。しかし現在のところ「非確定的検査」であるため、確定診断を求めるなら追加検査が必要になります。

確定診断には「羊水・絨毛検査」が必要です。これらの検査について詳しく知りたい方は「「つわりが重い=ダウン症」は根拠のない噂!ダウン症の特徴や分かる時期・検査について解説」の記事が参考になります。ぜひ、ご覧ください。

 

新型出生前診断の費用

新型出生前診断の費用は、受ける施設にもよりますが「約20万円」です。

そこで「保険適応で安くならないの?」と考えた方もいるのではないでしょうか?

新型出生前診断は、妊婦健診や病気による通院・治療とは違い、すべての妊婦が受けなければいけない検査ではありません。そのため、検査費用は保険適用外であり、全額自己負担なので注意しましょう。また、医療控除の対象外でもあります。

検査費用の負担が難しい方は、ダウン症を含むいくつかの染色体異常に絞ったクアトロテストがおすすめです。検査項目は限定されますが、「約2〜3万円」で受けられるメリットがあります。

ただし、出生前検査もクアトロテストも非確定的検査であるため、確定診断にはならない点に注意しましょう。

 

新型出生前診断の前に考えておくこと【後悔したくない方へ】

妊婦になる以上、「胎児に障害がないか?」と心配になるのは仕方ありません。そして新型出生前診断を受ける妊婦が「障害がない健康な胎児であってほしい」と願うのも当然です。

一方で、新型出生前診断を受ける前に以下のことを考えておかなければ、後悔する危険性があります。

  • ・陽性だった際の対応方法
  • ・高額な検査費用
  • ・人工妊娠中絶を選択した場合のリスク

陽性反応(胎児に障害がある可能性)を指摘されることも十分考えられます。

上記内容については「【妊娠中】赤ちゃんに障害がないか不安な親の悩みを解消」の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

まとめ: 染色体異常を探るなら新型出生前診断が有効

以上、「染色体」をはじめ「遺伝子」や「ゲノム」について詳しく解説しました。

これらについて簡単におさらいしましょう。

染色体とは親から引き継いだ遺伝情報を保管する場所であり、常染色体・性染色体の2種類に分類されます。常染色体は体細胞分裂により体作りを、性染色体は減数分裂により性の決定を行います。

また、染色体はDNAの集合体である遺伝子から構成されます。これらを全てまとめてゲノムと呼びます。染色体に異常が起こると、ダウン症で有名な染色体異常になります。

染色体異常になっていないか妊娠中に気になるのは当然です。そこで新型出生前診断にて確認することもできます。ただし、陽性判定があった際の対応や検査費用による経済的な負担などについて考えて受けないと後悔することになります。

この記事が染色体異常について不安を抱えるお母さんの助けになれば幸いです。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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