この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

ファンコニ貧血(ファンコーニ貧血)は、DNAの傷を直すしくみに関わる遺伝子が生まれつき働かないために、骨髄で血液が作られにくくなり、がんにもなりやすくなる病気です。腎臓の病気の「ファンコニ症候群」とは、名前が似ているだけの別の病気です。原因の遺伝子は20種類を超えていて、どの遺伝子のどんな変化かがわかると、きょうだいを骨髄移植(造血細胞移植)のドナーにする前に何を確かめるか、がんをどう見張るか、どんな治療を控えめにするかが決まってきます。原因の遺伝子が決まれば、その先の計画を具体的に立てられるようになります。このページでは、病気の特徴と、25の遺伝子をまとめて調べる遺伝子検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
ファンコニ貧血の原因として知られる遺伝子と、見分けが必要な病気の遺伝子、あわせて25の遺伝子に原因となる変化がないかを1回で調べます。腎臓の「ファンコニ症候群」とは別の病気です。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
染色体の壊れやすさを見る検査で陽性だった方、骨髄不全や親指・前腕の形の特徴などからファンコニ貧血が疑われる方、ご家族にファンコニ貧血の方がいて、ご自身やきょうだいのことを知りたい方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円で、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜で、オンライン診療でも受けられます。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。多くの型は潜性遺伝で、ご両親とも保因者なら、次のお子さんがこの病気になる確率は4分の1です。ご家族の検査や、意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. ファンコニ貧血とは:腎臓の「ファンコニ症候群」とは別の病気です
ファンコニ貧血は、DNAの傷を直すしくみ(ファンコニ貧血経路)に関わる遺伝子が生まれつき働かないために起こる病気で、骨髄の働きが落ちる「骨髄不全」、親指や前腕などの体の形の特徴、がんへのなりやすさの3つが特徴です[1]。日本では指定難病285に指定されています。英語では Fanconi anemia と書き、FAと略されます。
この病気の細胞は、DNAの2本の鎖を橋のようにつないでしまう傷(DNA鎖間架橋)をうまく直せません。DNA修復がうまくいかないため、染色体が切れやすくなり、血液を作るもとの細胞(造血幹細胞)が少しずつ減っていきます。生まれつき血液の病気になりやすい病気の仲間(遺伝性骨髄不全症候群)のなかでも、代表的な病気です。
どれくらいの人がなる病気か
難病情報センターによると、日本では年に5〜10人ほどが発症し、出生100万人あたり5人前後、国内の患者さんは約200人と推定されています。保因者(2つある遺伝子のうち1つだけに変化をもち、発症しない人)は、日本では200〜300人に1人と推定されています(2026年10月時点で確認)。男女の差はなく、世界中のすべての人種でみられます。
日本の患者さんでは、原因の遺伝子の多くがFANCAとFANCGです。日本の患者さん117人を調べた研究では、97%で原因の型(相補群)が決まり、FANCAが58%、FANCGが25%を占め、3番目に多いのはFANCBでした。欧米で多いFANCCは1例だけでした[2]。欧米ではFANCAが60〜70%、FANCCが約14%とされているので[1]、国によって原因の遺伝子の内訳がかなり違います。
症状と現れる時期
血液の異常は、ふつう6歳ごろから現れます(生まれたときから、あるいは大人になってから始まることもあります)。米国の登録データでは、骨髄不全が始まる平均の年齢は7.6歳で、すべての型をあわせると、40歳までに90%の方に何らかの血液の異常が出るとされています[1]。
体の形の特徴や生まれつきの異常は、約75%の方にみられます[1]。GeneReviewsに挙げられている主なものは次のとおりです。
- ●体が小さい(成長の遅れ:約65%)。約40%は、生まれたときの体が小さめです
- ●皮膚の色の変化(カフェオレ斑や色の薄い部分:約40%)
- ●親指や前腕の骨の形の違い(約40%)
- ●頭が小さい(小頭症:20〜25%)
- ●ホルモンの病気(50〜75%。甲状腺の働きの低下30〜60%、糖尿病8〜10%など)
一方で、約4人に1人は体の形の特徴がはっきりしません。見た目では気づかれず、血液の異常をきっかけにわかる方もいます。難病情報センターも、生まれたときや大人になってから病気が始まることがあるとしています。
寿命・生存率と、がんへのなりやすさ
小児慢性特定疾病情報センターの解説では、2000年以降の日本の患者さんの全生存の中央値は29歳とされています。造血細胞移植の成績が良くなり、骨髄不全が原因で亡くなる方は減ってきました(難病情報センター)。そのため今は、年齢とともに増えるがんにどう備えるかが、大きな課題になっています。
GeneReviewsによると、骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML)を40歳までに発症する割合は約35%です。一般の人と比べると、MDSは約6,000倍、AMLは約700倍なりやすいとされています。血液以外のがんで最も多いのは頭頸部(口の中・のど)の扁平上皮がんで、一般の人の500〜1,000倍の頻度で、20〜40歳ごろに多いとされています[1]。
難病情報センターも、固形がんは20歳を過ぎると増え、治療が難しいため、早く見つけて早く取り除くことが大切だとしています。頭頸部・食道・肝臓・女性の生殖器の定期的な検査、たばこ・お酒を避けること、口の中を清潔に保つこと、男女ともHPVワクチンを接種することが勧められています(2026年10月時点で確認)。
「ファンコニ症候群」とはどう違う?
名前に同じ「ファンコニ(Fanconi)」が付きますが、ファンコニ貧血とファンコニ症候群はまったく別の病気です。名前が似ているため、取り違えられやすくなっています。
病気のしくみや治療の研究についてさらに詳しく知りたい方は、ファンコニ貧血 総論もご覧ください。このページでは、遺伝子検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。
2. ファンコニ貧血はどう診断する?染色体脆弱性試験と遺伝子検査
ファンコニ貧血の診断は、染色体の壊れやすさを見る検査(染色体脆弱性試験)で病気の性質を確かめ、遺伝子検査で原因の遺伝子と変化を決める、という組み合わせで行います[1]。どちらか一方だけでは足りない場面があります。
染色体脆弱性試験:病気の性質を確かめる
血液のリンパ球に、DNAの鎖をつないでしまう薬(DEBやマイトマイシンC)を加えて育て、染色体が切れる数が増えるかを調べます。増えていれば、ファンコニ貧血と診断する根拠になります[1]。染色体が壊れやすい性質は染色体不安定性とも呼ばれます。
GeneReviewsでは、診断は「染色体脆弱性試験で染色体の切れやすさが増えている」か、「原因の遺伝子に、病気の原因となる変化が2つある(RAD51・FANCBでは1つ)」ことで確定するとされています[1]。
原因の遺伝子がわかると、何が変わるか
遺伝子検査で原因の遺伝子と変化が決まると、「ファンコニ貧血らしい」から「この遺伝子のこの変化によるファンコニ貧血」になり、ご本人とご家族の次の一手が具体的になります。移植や治療は専門の医療機関で行いますが、その計画を立てるための大事な情報になります。
- ●きょうだいをドナーにする前の確認:骨髄不全を根本から治す方法は造血細胞移植で[1]、白血球の型(HLA)が合うきょうだいはドナーの候補になります。ただ、きょうだいもファンコニ貧血である可能性があります。米国のファンコニ貧血の診療ガイドラインは、HLAの合うきょうだいのドナーは全員、ファンコニ貧血でないかを調べるとしています。きょうだいでは、症状がなくても染色体脆弱性試験が陰性に出てしまうことがあり(モザイクのため)、ご家族の原因の変化がわかっていれば、同じ変化をもっているかを直接確かめられます。
- ●治療を控えめにする必要:この病気の方は、DNAの傷を直す力が弱いため、移植の前の抗がん剤(アルキル化剤)や放射線の副作用が強く出ます。そのため、移植では少量の薬を使う前処置が行われます(難病情報センター、米国の診療ガイドライン)。将来がんの治療が必要になったときにも、ファンコニ貧血と診断されていることが、治療の強さを決める前提になります。
- ●がんの見張りの計画:GeneReviewsは、血液検査を3〜4か月ごと、口の中の診察を9〜10歳から6か月ごと、のどの内視鏡を10歳から年1回、婦人科の診察を13歳から年1回などと示し、HPVワクチンの接種を勧めています[1]。
- ●遺伝子によって見通しが変わる:たとえばBRCA2が原因の型では、10歳までに白血病を発症する割合が80%とされ、ほかの型より早くから見張りが必要です[1]。どの遺伝子かで、見張りの始めどきが変わります。
💡 日本の患者さんならではの話:ALDH2
体の中でできるアルデヒドという物質もDNAを傷つけます。日本人の約半数は、アルデヒドを分解する酵素ALDH2の働きが弱い型をもっています。日本のファンコニ貧血の患者さん64人を調べた研究では、ALDH2の働きが弱い型をもつ方で、骨髄不全が早く進むことが強く関係していました[3]。日本の患者さんでは、ファンコニ貧血の遺伝子だけでなく、こうした体質も経過に関わりうることがわかっています。
移植後・モザイクのときの検体の注意
ファンコニ貧血では、血液の細胞の一部で、遺伝子の変化が自然に元に戻ることがあります(体細胞モザイク)。この場合、血液のリンパ球で調べた染色体脆弱性試験が正常に出てしまうことがあり、モザイクが疑われるときは、皮膚の細胞(線維芽細胞)など別の細胞で調べます[1]。
また、造血細胞移植を受けたあとの方は、血液の細胞がドナー由来に置き換わっているため、血液ではご本人の遺伝子を正しく調べられません。移植を受けた方、血液の検査結果と症状が合わない方は、どの検体で調べるかを遺伝カウンセリングでご相談ください。
3. どんな人がこの検査を受けるとよいか
ファンコニ貧血が疑われる方、ご家族にファンコニ貧血の方がいる方に向く検査です。原因がわかれば、ご本人の治療の計画だけでなく、次のお子さんで同じ病気が起こる確率や、次の妊娠でどう備えられるかを具体的に考えられるようになります。
受けるとよい場面
- ●染色体脆弱性試験が陽性だった方(原因の遺伝子を決めるため)
- ●血液の3つの成分(赤血球・白血球・血小板)がそろって減っている、骨髄不全と言われた方
- ●若くして骨髄異形成症候群・急性骨髄性白血病・頭頸部がんと診断された方
- ●親指や前腕の形の特徴、低身長、皮膚の色の変化などがあり、ファンコニ貧血が疑われる方
- ●お子さんやきょうだいがファンコニ貧血と診断され、原因の遺伝子をはっきりさせたい方
原因の遺伝子がわかれば、次のお子さんで同じ病気が起こる確率がはっきりします。ファンコニ貧血の多くは常染色体潜性遺伝で、ご両親とも保因者のとき、次のお子さんがこの病気になる確率は、妊娠のたびに4分の1です。一方、FANCBが原因のX連鎖の型では、お母さんが保因者なら男の子が受け継ぐ確率が2分の1、RAD51が原因の型では、これまで報告された方はみな新しく起きた変化だったとされています[1]。どの型かによって、次の妊娠の考え方がまったく変わります。
この検査より別の検査が向いている場合
ファンコニ貧血が強く疑われるなら、まずこの検査です。症状がファンコニ貧血らしいかどうか決めきれないときは、次の検査のほうが向いていることがあります。
🔍 症状に合わせた検査の選び方
※骨髄不全症候群パネルの61遺伝子には、このページの25遺伝子のうち17遺伝子が入っています。ATR・BRCA1・ERCC6L2・MAD2L2・RAD51・RFWD3・UBE2T・XRCC2の8遺伝子は、このページの検査にだけ入っています(2026年10月、当院の両検査ページで確認)。
4. 調べる25遺伝子と遺伝のしかた
この検査では、ファンコニ貧血の原因として知られる遺伝子と、見分けが必要な病気の遺伝子、あわせて25の遺伝子を調べます。遺伝子ごとに、関係する病気と遺伝のしかたは次のとおりです。
🧬 ファンコニ貧血遺伝子パネル検査の対象遺伝子(25遺伝子)
※対象遺伝子は当院の検査内容による。病名とOMIM番号はUniProt(OMIMの番号を収載)、ファンコニ貧血の型ごとの遺伝のしかたと、1つの変化をもつ方のがんのなりやすさはGeneReviews[1]による。型ごとの詳しい解説はファンコニ貧血 総論にまとめています。
遺伝のしかたは3通り:潜性・X連鎖(FANCB)・顕性(RAD51)
ファンコニ貧血の大部分は常染色体潜性(劣性)遺伝で、FANCBだけがX連鎖遺伝、RAD51の型は常染色体顕性(優性)遺伝です[1]。
- ●潜性遺伝の型:ご両親がともに保因者のとき、お子さん1人ごとに、この病気になる確率は4分の1、保因者になる確率は2分の1、どちらでもない確率は4分の1です[1]。
- ●X連鎖の型(FANCB):お母さんが保因者のとき、妊娠ごとに2分の1の確率で変化が受け継がれ、受け継いだ男の子は発症します[1]。日本の患者さんでは、FANCBは3番目に多い型です[2]。
- ●顕性の型(RAD51):ご両親を調べた報告では、どの方も新しく起きた変化(de novo)で、ほかのご家族への影響は小さいと考えられています[1]。
BRCA2・PALB2などは、保因者の大人のがんにも関わる
BRCA1・BRCA2・PALB2・RAD51C・BRIP1は、2つとも変化があるとファンコニ貧血になりますが、1つだけ変化をもつ大人でも、がんになりやすくなることが知られています。GeneReviewsによると、BRCA1・BRCA2では乳がん・卵巣がん、PALB2では乳がん・卵巣がん・膵がん、RAD51Cでは乳がん・卵巣がん、BRIP1では卵巣がんなどのなりやすさが挙げられています[1]。
つまり、お子さんのファンコニ貧血の原因がこれらの遺伝子だった場合、保因者であるご両親や、保因者のきょうだいご自身の、将来のがんの見張りにも関わってきます。あなたの1回の検査の結果が、ご両親・きょうだいがご自身の体を守る手がかりになります。大人の方のがんのなりやすさは、遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)の考え方に沿って検討します。がんに関わる遺伝子を広く調べたい方には、遺伝性がん遺伝子検査(154遺伝子)もあります。DNAの傷を直すしくみの1つで、BRCA2やPALB2が働く相同組換えのページもあわせてご覧ください。
5. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、25の遺伝子の中の小さな変化(1つの文字の変化や小さな挿入・欠失)と、遺伝子のまとまった欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。
- ●欠失・重複の見つけやすさ:遺伝子1つまるごとの欠失・重複は、血液と頬の粘膜の検体で見つけられます。連続した2つ以上のエクソン(遺伝子の中の区画)の欠失・重複は、血液の検体でだけ見つけられます。1つのエクソンだけの欠失・重複は、見つかることもありますが、ふつうは見つけられません。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
- ●調べていない場所:染色体の一部が入れかわる変化(転座・逆位)、繰り返し配列の伸び、遺伝子のスイッチの部分(プロモーター)や、遺伝子の中の区画から20塩基以上離れた場所の変化は、この検査では見つけられません。
- ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態は、この検査では見つけることを目的としていません。腫瘍の組織での検査にも使えません。
- ●似た配列のある場所:よく似た配列(偽遺伝子など)が別の場所にある部分は、正確に読みにくいことがあります。読み取りの質が足りない部分は、サンガー法で確かめます。
- ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうかまだ判断できない変化が見つかることがあります。
- ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、この検査で見つけられない変化や、まだ知られていない遺伝子による可能性が残ります。染色体脆弱性試験などの結果とあわせて判断します。
読み取りの範囲と深さについては、対象の遺伝子の領域の99%以上を、20回以上重ねて読み取ります。遺伝子の配列を読む方法については次世代シークエンサーのページで解説しています。
6. 結果が出たあと(陽性・陰性・VUS)
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。
陽性だったとき:診断の確定と、ご家族の検査
原因の遺伝子と変化がわかると、診断が確定し、どの型かによって見張りの始めどきや、治療を控えめにする必要がはっきりします(第2章)。ご家族の原因の変化がわかっていれば、きょうだいは同じ場所を調べることで、病気をもっているか、保因者かを確かめられます。GeneReviewsも、早く診断して見守るために、きょうだいの染色体の検査や遺伝子の検査を勧めています[1]。きょうだいを移植のドナーとして調べることや、HLAの検査、移植そのものは、移植を行う専門の医療機関で進めます。
原因がBRCA1・BRCA2・PALB2・RAD51C・BRIP1だった場合は、保因者のご両親・きょうだいご自身のがんのなりやすさも考えます(第4章)。調べた目的とは別の病気の原因が見つかったときの扱いは、当院の二次的所見の開示方針に沿ってご説明します。
陰性だったとき
原因が見つからなかった場合は、この検査で見つけられない変化や、モザイクの可能性も含めて考えます(第5章)。症状や血液の所見に合わせて、骨髄不全症候群パネルなどほかの検査を考えます。日本の患者さんを調べた研究では、染色体の大きな欠失を調べる方法なども組み合わせて、97%で原因の型が決まっています[2]。
意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき
VUSは、それだけで診断やご家族の発症リスク、ドナーの適否を判断する根拠にはしません。ただし、その変化の意味を確かめるために、ご家族の検査を行うことがあります。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。
次のお子さん・妊娠を考えている方へ
原因がわかっていれば、次の妊娠でどう備えるかを、具体的に計画できます。反対に、原因がわからないままでは、出生前に何を調べるかの的を決められません。また、お子さんの原因がわかることは、ファンコニ貧血でないきょうだいが将来、結婚や出産を考えるときに、ご自身が保因者かどうかを知る手がかりにもなります。
保因者かどうかは、妊娠の前に調べておくことができます。当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)の遺伝子一覧には、このページの遺伝子のうちFANCA・FANCB・FANCC・FANCD2・FANCE・FANCF・FANCG・FANCI・FANCL・BRIP1・ERCC4が入っています(2026年10月に遺伝子一覧で確認)。男性版などほかの版の対象は、それぞれの遺伝子一覧でご確認ください。すでに妊娠している方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」(女性787遺伝子・男性714遺伝子)があります。こちらはNIPTと同時にお申し込みいただく検査で、単独では受けられません。
ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに、赤ちゃんに同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。
日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-Mが行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。
7. 日本の制度:指定難病285・小児慢性特定疾病(2026年10月時点)
ファンコニ貧血は、指定難病285に指定されています。難病情報センターのファンコニ貧血のページ(2025年11月更新)で、指定難病285として掲載されていることを確かめました。小児慢性特定疾病情報センターにも、ファンコニ(Fanconi)貧血の疾患の概要が掲載されています(2026年10月時点で確認)。
医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。なお、当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。
8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜で、どれでもオンライン診療で受けられます。
ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医・オンライン可
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検体の採取お支払い後にキット送付
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。検体の取り違えを防ぎ、検査に使える品質を保つため、ご自身で勝手に検体を採取しないでください。造血細胞移植を受けた方は、使える検体が限られるため、必ず事前にご相談ください(第2章)。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。遺伝カウンセリングについては遺伝カウンセリングとはで解説しています。
9. 院長コラム
🩺 院長コラム【薬を「弱める」ことが命を守る病気だからこそ】
私はがん薬物療法専門医でもあります。ふつう、がんの治療では、決められた量の抗がん剤や放射線を、しっかり使い切ることが大切です。ところがファンコニ貧血では、DNAの傷を直す力が弱いため、同じ治療が体にとってとても強く効いてしまいます。この病気では「治療を弱める」ことが命を守ることになる、という点が、ほかの多くの病気と大きく違うところだと考えています。そして、治療を弱める判断の前提になるのが、「この方はファンコニ貧血である」という診断です。
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査で原因の遺伝子がわかれば、骨髄移植のドナー選び、がんの見張り、将来がんの治療が必要になったときの治療の強さ、ご家族の保因者の確認、次の妊娠の計画まで、この先ずっと使える情報になります。研究が進めば、同じ結果の意味が新しくわかることもあります。
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。
わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで次の妊娠を考えたい方には、保因者検査から出生前診断まで、当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. ファンコニ貧血とはどんな病気ですか?ファンコニ症候群とは違いますか?
ファンコニ貧血は、DNAの傷を直すしくみに関わる遺伝子が生まれつき働かないために、骨髄不全、親指や前腕などの体の形の特徴、がんへのなりやすさが起こる病気です。腎臓の尿細管の働きが落ちる「ファンコニ症候群」とは、名前が似ているだけの別の病気です。
Q2. ファンコニ貧血の寿命・生存率はどのくらいですか?
小児慢性特定疾病情報センターの解説では、2000年以降の日本の患者さんの全生存の中央値は29歳とされています。造血細胞移植の成績が良くなり、骨髄不全が原因で亡くなる方は減ってきました。一方で、年齢とともに頭頸部がんなどのがんが増えるため、定期的な見張りが大切です。
Q3. ファンコニ貧血は指定難病ですか?
はい。指定難病285に指定されています(2026年10月時点、難病情報センターの情報)。小児慢性特定疾病情報センターにも疾患の概要が掲載されています。医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。
Q4. ファンコニ貧血はがんになりやすいのですか?
はい。遺伝性疾患の解説書(GeneReviews)によると、骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病を40歳までに発症する割合は約35%です。血液以外では頭頸部(口の中・のど)の扁平上皮がんが最も多く、一般の人の500〜1,000倍の頻度で、20〜40歳ごろに多いとされています。
Q5. ファンコニ貧血は遺伝しますか?先天性の病気ですか?
生まれつきの遺伝子の変化による病気です。多くは常染色体潜性遺伝で、ご両親とも保因者のとき、お子さん1人ごとにこの病気になる確率は4分の1です。FANCBが原因の型はX連鎖遺伝、RAD51が原因の型は新しく起きた変化による顕性遺伝で、型によって伝わり方が違います。血液の異常は、ふつう6歳ごろから現れます。
Q6. きょうだいは造血細胞移植のドナーになれますか?
白血球の型(HLA)が合うきょうだいはドナーの候補になりますが、きょうだいもファンコニ貧血である可能性があるため、ドナーになる前に調べることが勧められています。きょうだいでは染色体脆弱性試験が陰性に出てしまうことがあり、ご家族の原因の遺伝子の変化がわかっていれば、同じ変化をもっているかを直接確かめられます。移植は専門の医療機関で行います。
Q7. 家族は保因者検査を受けたほうがよいですか?
ご家族の原因の変化がわかっていれば、きょうだいは同じ場所を調べて、病気をもっているか、保因者かを確かめられます。原因がBRCA1・BRCA2・PALB2・RAD51C・BRIP1の場合は、保因者の大人もがんになりやすくなることがあります。妊娠を考えている方は、パートナーの方も含めて保因者検査を考えます。受けるかどうかは、遺伝カウンセリングで説明を聞いてから決めていただけます。
Q8. 遺伝子検査で異常が見つからなければ、ファンコニ貧血ではないのですか?
そうとは限りません。この検査で見つけられない種類の変化や、血液の細胞で変化が元に戻るモザイクなどにより、原因が見つからないことがあります。染色体脆弱性試験などの結果とあわせて判断し、必要に応じてほかの検査を考えます。
🧬 一度の検査で、ご本人とご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。ファンコニ貧血の原因の遺伝子がわかれば、きょうだいドナーの確認、がんの見張り、ご家族の保因者の確認、次の妊娠の計画まで、具体的に考えられるようになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
- [1] Mehta PA, Ebens CL. Fanconi Anemia. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2002 (Updated 2026 Jan 15). [NCBI Bookshelf NBK1401]
- [2] Mori M, Hira A, Yoshida K, et al. Pathogenic mutations identified by a multimodality approach in 117 Japanese Fanconi anemia patients. Haematologica. 2019;104(10):1962-1973. [DOI: 10.3324/haematol.2018.207241](PMID: 30792206)
- [3] Hira A, Yabe H, Yoshida K, et al. Variant ALDH2 is associated with accelerated progression of bone marrow failure in Japanese Fanconi anemia patients. Blood. 2013;122(18):3206-3209. [DOI: 10.1182/blood-2013-06-507962]
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