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ダイアモンド・ブラックファン貧血(先天性赤芽球癆)の遺伝子検査|原因遺伝子・遺伝のしかた・きょうだいドナー選び

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

ダイアモンド・ブラックファン貧血(先天性赤芽球癆)の遺伝子検査

ダイアモンド・ブラックファン貧血(ダイヤモンド・ブラックファン貧血、DBA、先天性赤芽球癆)は、骨髄で赤血球だけがつくられにくくなる、生まれつきの貧血です。多くは赤ちゃんのうちに見つかり、原因の多くはリボソームという「たんぱく質をつくる工場」の部品の遺伝子にあります。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、ご本人の治療やがんへの備えだけでなく、きょうだいを骨髄移植のドナーにしてよいか、次のお子さんで同じ病気が起こる確率はどれくらいかを考えるときにも、ずっと使える情報になります。このページでは、病気の特徴と遺伝のしかた、10の原因遺伝子を調べる遺伝子検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

ダイアモンド・ブラックファン貧血の原因になる10の遺伝子(いちばん多いRPS19を含むリボソームの遺伝子9つと、X連鎖のGATA1)に、病気の原因となる変化があるかを一度に調べます。原因がわかると、診断がはっきりし、ご家族の検査もできるようになります。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

赤ちゃんのころから赤血球だけが少ない貧血があり、診断を確かめたい方。きょうだいを骨髄移植のドナーとして考えているご家族。ご家族にこの病気の方がいて、ご自身やお子さんのことを知りたい方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。検体は血液・唾液・頬の粘膜などで、唾液・頬の粘膜ならオンライン診療でも受けられます。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因が見つかれば、ご家族が同じ変化をもっているかを調べられます。意義がまだわからない変化(VUS)が見つかることもあり、その扱いもご説明します。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、ご家族のこれからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

10の原因遺伝子を2〜3週間で調べ、検査の前後の遺伝カウンセリングは臨床遺伝専門医が行います。

白血球・血小板も少ない方は骨髄不全症候群パネルへ | どの検査がよいか迷う方へ

1. ダイアモンド・ブラックファン貧血(先天性赤芽球癆)とは

ダイアモンド・ブラックファン貧血は、骨髄で赤血球のもとになる細胞(赤芽球)だけが極端に少なくなり、白血球や血小板はふつうにつくられる、生まれつきの貧血です。約9割は1歳までに血液の異常が現れ、約半数に体の形の特徴(先天奇形)を伴います[1]。英語の Diamond-Blackfan anemia の頭文字をとってDBAと呼ばれ、日本語では「ダイアモンド」「ダイヤモンド」の両方の表記が使われます。2024年の国際コンセンサスでは、貧血がない方や大人になってから見つかる方も含めるため、「DBA症候群」という呼び方が採用されました[1][2]。

ダイアモンド・ブラックファン貧血は、骨髄の働きが生まれつき弱い遺伝性骨髄不全症候群のひとつです。頻度は、GeneReviewsでは出生10万〜20万人に1人、日本の難病情報センターでは出生100万人あたり約5〜7人と推定されています[1]。

赤血球だけがつくられない、生まれつきの貧血:後天性赤芽球癆・一過性赤芽球癆との違い

「赤芽球癆」には、生まれつきのもの(先天性赤芽球癆=ダイアモンド・ブラックファン貧血)と、生まれたあとに起こるものがあります。大人で多い後天性赤芽球癆は、胸腺腫などの病気や薬、ウイルスがきっかけになるもので、このページの遺伝子検査の対象ではありません。

赤ちゃん・子どもでは、見分けたい病気がいくつかあります。GeneReviewsによると、一過性赤芽球癆(TEC)はほとんどが1〜数か月で自然に治り、8割以上が1歳以上で診断され、赤血球のアデノシンデアミナーゼ(eADA)が高いのは1割ほどです。パルボウイルスB19の感染も、赤血球がつくられなくなることがありますが、多くは軽く、一時的です[1]。また、ファンコニ貧血では赤血球だけでなく、白血球・血小板も少しずつ減っていく(骨髄不全が進む)のが一般的です[1]。

🩸 赤血球がつくられにくくなる主な病気の違い

病気 見つかる時期・経過 遺伝子検査
ダイアモンド・ブラックファン貧血 約9割が1歳までに発症。生まれつきで続く このページの検査
一過性赤芽球癆(TEC) 8割以上が1歳以上で診断。ほとんどが1〜数か月で自然に治る ふつうは不要
パルボウイルスB19による赤芽球癆 多くは軽く、一時的 ウイルスの検査で調べる
ファンコニ貧血 白血球・血小板も含めて骨髄不全が進むことが多い ファンコニ貧血の遺伝子検査

※GeneReviews[1]の鑑別診断の記載による。実際の見分けは、血液検査・骨髄検査とあわせて主治医が判断します。

見つかる時期と、体にみられる特徴

GeneReviewsによると、約90%の方は生後1年以内に血液の異常が現れ、受診のきっかけになる年齢の中央値は生後2か月、診断の中央値は生後3か月です[1]。顔色が悪い、ミルクの飲みが悪いなどで気づかれることが多い一方、もっと遅く見つかる方もいます。重い場合には、おなかの中の赤ちゃんが貧血になり、胎児水腫(免疫が原因ではない胎児水腫)を起こすことも報告されています[1]。

先天奇形は約50%にみられ、2つ以上の奇形がある方は最大25%です[1]。日本の難病情報センターは、頭や顔の異常が約20〜30%、腕・手の異常が約10〜20%、腎臓・尿路の奇形や先天性心疾患が約7〜20%、低身長が約40%としています(2026年10月時点で確認)。手の特徴としては、親指の関節が1つ多い三指節母指、顔では口蓋裂などが知られています。

血液検査では、赤血球が大きめ(大球性)の貧血、網赤血球(できたての赤血球)の減少がみられます。赤血球のアデノシンデアミナーゼ(eADA)が高いのは80〜85%で、胎児ヘモグロビン(HbF)も高くなります。赤ちゃんでは、HbFは輸血の前に測っておくことが勧められています[1]。

治療の考え方と経過(寿命・予後)

治療の中心は、ステロイド(副腎皮質ホルモン)と赤血球の輸血で、輸血が欠かせない方などでは造血幹細胞移植が検討されます[1]。治療は小児血液の専門の医療機関で行われます。当院は治療を行っておらず、遺伝子検査と遺伝カウンセリングで、診断とご家族の計画を支える立場です。

GeneReviewsでは、ステロイドで赤血球が増える方は約60〜80%で、ステロイドは1歳を過ぎてから始めることが勧められています[1]。日本の難病情報センターは、ステロイドに約80%が反応し、その後約40%がステロイドを続ける必要があり(ステロイド依存)、約40%が輸血を続ける必要がある(輸血依存)一方、約20%は輸血やステロイドから離れて寛解する、としています(情報更新日:令和6年11月、2026年10月時点で確認)。

2024年の国際コンセンサスは、2008年の指針を置き換えるもので、ステロイドを続けるときの量を少なく抑えること(プレドニゾンで1日0.3mg/kgまで)、輸血の前のヘモグロビンの目安を年齢によらず9〜10g/dLに上げること、鉄を早めにしっかり抜くこと、造血幹細胞移植の対象を広げることなどを示しました[2]。

寿命・予後について、小児慢性特定疾病情報センターは「生命予後は一般的に良好」としつつ、長い治療の副作用や合併症で生活の質が下がることがあると説明しています(2026年10月時点で確認)。一人ひとりの見通しは、治療への反応や合併症で大きく変わるため、主治医に確かめることが大切です。

長い目で気をつけたいこと:がんと鉄過剰

ダイアモンド・ブラックファン貧血では、がんになりやすさがあり、GeneReviewsでは悪性腫瘍の頻度は2〜5%とされています。挙げられているのは、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨肉腫、肺・大腸・子宮頸部のがんなどです[1]。2024年の国際コンセンサスは、大腸がんの早めの検診を含む、計画的な見張り(サーベイランス)を勧めています[2]。

輸血を続けている方では、体に鉄がたまる鉄過剰症が最も多い合併症です。GeneReviewsでは、赤血球輸血が10〜12回に達したころ、または血清フェリチンが1,000〜1,500µg/Lになったころに、鉄キレート療法(鉄を体の外に出す薬)を始めることが多いとされています[1]。

原因の遺伝子がわかっていると、「この病気だから、何をどのくらいの間隔で見張るか」が決まり、診断名が確かになることで、使える制度(第7章)を確かめる手がかりにもなります。

2. 原因遺伝子と遺伝のしかた

ダイアモンド・ブラックファン貧血の多くは、リボソームの部品をつくる遺伝子の片方に変化がある常染色体顕性(優性)遺伝で、約55〜60%は親から受け継いだのではなく新しく起きた変化によるものです。GATA1とTSR2が原因のときはX連鎖の遺伝になります[1]。原因がわかっている方は約8割で、約2割は今の検査でも原因が見つかりません[1]。

リボソームの遺伝子が「半分足りない」と起こる

リボソームは、細胞の中でたんぱく質をつくる工場です。GeneReviewsでは、20のリボソームたんぱく質の遺伝子のどれかに、片方だけ病気の原因となる変化がある場合に、この病気になるとされています[1]。2本ある遺伝子のうち1本が働かず、残り1本だけでは足りなくなる状態をハプロ不全といいます。

多くは常染色体顕性。新しく起きた変化も多い

常染色体顕性(優性)遺伝では、2本ある遺伝子のうち1本に変化があると病気になりうるため、この病気の方のお子さんは、1人ごとに2分の1の確率で同じ変化を受け継ぎます[1]。

GeneReviewsでは、常染色体顕性のダイアモンド・ブラックファン貧血のうち、親から受け継いでいるのは約40〜45%、ご本人で新しく起きた変化(de novo変異)が約55〜60%とされています[1]。日本の難病情報センターは、家族歴がある患者さんは約10〜20%としています(2026年10月時点で確認)。家族歴は「ご家族に診断のついた方がいるか」なので、症状の軽いご家族が診断されていない場合は、家族歴として数えられないことがあります(次の項目)。

GATA1はX連鎖(TSR2もX連鎖ですが、この検査の対象外です)

このページの検査に含まれるGATA1は、赤血球をつくるのに欠かせない「転写因子」(ほかの遺伝子のスイッチを入れるたんぱく質)の遺伝子で、X染色体にあります。GeneReviewsでは、GATA1が原因のダイアモンド・ブラックファン貧血は5家系の報告で、全体の1%未満です。X染色体を1本しかもたない男性で発症し、変化を受け継いだ女性は、ふつうは発症しません[1]。

X連鎖の遺伝では、お母さんが変化をもっている(保因者)場合、息子さんは1人ごとに2分の1の確率で発症し、娘さんは2分の1の確率で保因者になります。同じX連鎖のTSR2(1家系の報告)と、常染色体潜性のHEATR3は、このページの10遺伝子には含まれていません[1]。

同じ変化を持っていても、症状の重さが大きく違う

GeneReviewsは、ご家族でわかっている変化をもっていても、目立った症状がない血縁者がいると記載しています。原因をもっていても発症しないことがある「不完全浸透」と、同じ原因でも重さが人によって違う「表現型の多様性」によるものです。RPL5・RPS19・RPS26で遺伝子の働きを失わせる変化ではほぼ全員が発症するのに対し、たんぱく質の1か所だけが変わる型の変化(ミスセンス変異)では、発症しない方がより多いようだとされています[1]。

⚠️ 「親が元気だから、遺伝ではない」とは言えません

症状がないか、とても軽いために診断されていない親御さんやきょうだいが、同じ遺伝子の変化をもっていることがあります。そのご家族の次の世代では、変化を受け継いだお子さんが重い貧血で生まれることもありえます。見た目の元気さだけでは判断できないので、ご家族の原因がわかったら、ほかのご家族も同じ変化を調べることに意味があります。

3. どんな人がこの検査を受けるとよいか

ダイアモンド・ブラックファン貧血の診断を確かめたい方、きょうだいを骨髄移植のドナーとして考えているご家族、ご家族にこの病気の方がいる方に向く検査です。見た目や家族歴だけでは判断できないことが多いので、迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。

診断を確かめたい・ほかの貧血と区別したい方

難病情報センターの診断基準(指定難病284)では、「1歳未満での発症」「大球性(または正球性)の貧血で、ほかの2系統の血球の減少がない」「網状赤血球の減少」「赤血球のもとになる細胞が消えている、細胞の数はふつうの骨髄」に加えて、「古典的なダイアモンド・ブラックファン貧血にみられる遺伝子変異の保有」が主要な項目のひとつになっています。家族歴や、eADA・グルタチオンの高値、古典的な先天奇形、HbFの上昇は、診断を支える項目です(2026年10月時点で確認)。

つまり、遺伝子検査で原因が見つかることは、それだけで診断を支える大きな根拠になります。症状が典型的でない方、1歳を過ぎてから見つかった方、すでに輸血を受けていて血液の検査値で判断しにくい方では、とくに遺伝子検査の意味が大きくなります。

きょうだいを骨髄移植のドナーにする前に

造血幹細胞移植を考えるとき、ドナーとして最初に検討されるのは、白血球の型(HLA)が合うきょうだいです。GeneReviewsが紹介する登録データでは、HLAの合うきょうだいから10歳未満で移植を受けたお子さんの生存が最もよく(92.3%)、GeneReviewsは、診断の時点でご本人・きょうだい・ご両親のHLAを調べることを勧めています[1]。

ここで大切なのが、前の章でお伝えした「症状のない血縁者が同じ変化をもっていることがある」という点です。GeneReviewsは、病気の原因となる変化をもつ血縁者は、症状があるかどうかにかかわらず、骨髄のドナーに適さないとしています[1]。ご家族の変化がわかっていれば、きょうだいはその変化があるかを遺伝子検査で調べられます。わかっていない場合は、MCV(赤血球の大きさ)・eADA・HbFなどで評価することになり[1]、症状がとても軽い方を見分けるのは難しくなります。

ご本人の原因の遺伝子がわかっていることは、きょうだいをドナーにしてよいかを、確かな方法で決めるための出発点になります。移植を受けるかどうかや時期は、移植を行う専門の医療機関で決められますが、その判断に役立つ情報を、当院の遺伝子検査と遺伝カウンセリングで用意できます。

ご両親・きょうだい・お子さんが自分の状態を知るために

ご本人の原因がわかると、ご両親が同じ変化をもっているか(親から受け継いだのか、新しく起きたのか)を調べられます。常染色体顕性の型で親御さんが変化をもっていれば、そのほかのお子さんも2分の1の確率で受け継いでいる可能性があり、きょうだいご自身が将来、結婚や妊娠を考えるときの手がかりにもなります。あなたの1回の検査が、ご家族が自分のことを知る入口になります。

この検査より別の検査が向いている場合

赤血球だけが少なく、ダイアモンド・ブラックファン貧血がはっきり疑われるなら、このページの検査が向いています。一方で、次のような場合は、別の検査のほうが合うことがあります。

🔍 症状に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
赤血球だけが少なく、DBAが疑われる このページの検査(10遺伝子)
白血球・血小板も少ない、ファンコニ貧血などと区別がつかない 骨髄不全症候群パネル(61遺伝子)
白血球・血小板も減っていて、体の特徴からファンコニ貧血が疑われる ファンコニ貧血の遺伝子検査
血液以外の症状も多く、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)

※骨髄不全症候群パネルの61遺伝子には、このページの10遺伝子がすべて含まれ、ほかにRPL15・RPL26なども入っています(料金・結果までの日数は、どちらも税込330,000円・2〜3週間。2026年10月時点の当院の各ページによる)。どちらが合うかは、血液の検査値やご家族の情報で変わるため、遺伝カウンセリングで一緒に決めます。

\ あなたの1回の検査が、ご家族の判断の手がかりに /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

ご本人の原因がわかれば、ご家族が同じ変化をもっているかを、遺伝カウンセリングのうえで調べられます。

海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。

骨髄不全症候群パネル(61遺伝子)を見る | どの検査がよいか迷う方へ

4. 調べる10遺伝子と、わかる病気

この検査では、ダイアモンド・ブラックファン貧血の原因として報告のある10の遺伝子(GATA1、RPL11、RPL35A、RPL5、RPS10、RPS17、RPS19、RPS24、RPS26、RPS7)を、次世代シーケンサー(NGS)で一度に調べます。GeneReviewsの割合を足し合わせると、この10遺伝子は、ダイアモンド・ブラックファン貧血全体のおよそ5割〜7割に当たります(目安。当院で計算)[1]。

🧬 対象の10遺伝子と関係する病気

遺伝子 関係する病気(OMIM番号) 遺伝のしかた DBA全体での割合 欠失・重複で見つかる割合
RPS19 ダイアモンド・ブラックファン貧血1(105650) 常染色体顕性 25〜30% 約5%
RPL5 ダイアモンド・ブラックファン貧血6(612561) 常染色体顕性 7〜12% 5%未満
RPS26 ダイアモンド・ブラックファン貧血10(613309) 常染色体顕性 6.6〜9% 20%未満
RPL11 ダイアモンド・ブラックファン貧血7(612562) 常染色体顕性 5〜7% 約10%
RPL35A ダイアモンド・ブラックファン貧血5(612528) 常染色体顕性 2〜3% 約50%
RPS24 ダイアモンド・ブラックファン貧血3(610629) 常染色体顕性 2〜3% 1人の報告
RPS17 ダイアモンド・ブラックファン貧血4(612527) 常染色体顕性 1〜3% 65%超
RPS10 ダイアモンド・ブラックファン貧血9(613308) 常染色体顕性 1〜3% 報告なし
RPS7 ダイアモンド・ブラックファン貧血8(612563) 常染色体顕性 約1% 報告なし
GATA1 X連鎖の、血小板減少を伴わない貧血(300835)、X連鎖の赤血球形成異常性貧血と血小板減少(300367)、X連鎖のβサラセミアを伴う血小板減少(314050)など。関連:GATA1関連血球減少症 X連鎖 1%未満(5家系) 報告なし

※病名とOMIM番号はOMIMの番号をUniProtの疾患情報で照合(2026年10月確認)。割合・欠失重複の割合はGeneReviews[1]による。DBAの型の番号は、この病気が見つかった順についた番号です。

表の右の列は、その遺伝子の原因のうち、遺伝子の文字を読む方法(配列解析)ではなく、遺伝子の一部または全部がなくなる「欠失」などを調べる方法で見つかった割合です。とくにRPS17では65%を超え、RPL35Aでは約50%が欠失・重複として見つかっています[1]。この検査の欠失・重複の調べ方には検体による違いがあるため、第5章で説明します。

5. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、10の遺伝子の小さな変化(1つの文字の変化や、小さな文字の抜け・入り込み)と、検体によっては遺伝子のまるごと、または連続する2つ以上のエクソンの欠失・重複です。一方で、遺伝子検査のメリット・デメリットの解説にもあるように、どの検査にも限界があります。

  • ●調べていない遺伝子:この検査は10遺伝子が対象です。GeneReviewsではリボソームの遺伝子だけで20あり、RPL15・RPS29(各約1%)や、まれな遺伝子、TSR2・HEATR3はこの検査に含まれていません。また、全体の約2割は、今の医学では原因の遺伝子がわかっていません[1]。日本では、遺伝子の異常が見つかるのは約60%とされています(小児慢性特定疾病情報センター、2026年10月時点で確認)。
  • ●欠失・重複は検体で範囲が違う:遺伝子1つまるごとの欠失・重複は、頬の粘膜でも血液でも調べられます。連続する2つ以上のエクソンの欠失・重複は、血液の検体でだけ調べられます。1つのエクソンだけの欠失・重複は、見つかることはありますが、ふだんは検出できません。見つかった欠失・重複は、別の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。この病気はRPS17・RPL35Aなどで欠失が原因になることが多いため[1]、臨床遺伝専門医としては、採血できる場合は血液の検体のほうが向いていると考えます。
  • ●見つけられない種類の変化:染色体の一部が入れ替わる転座・逆位、同じ配列の繰り返しが伸びる変化、遺伝子のスイッチの部分(プロモーター)や、エクソンから離れた場所(イントロンの深い部分)の変化は調べていません。
  • ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)を見つけることは、この検査の目的に入っていません。
  • ●造血幹細胞移植を受けた方:移植のあとは、血液の細胞がドナーの方の細胞からつくられるようになります。移植後の方を調べた研究では、頬の粘膜の検体にもドナー由来のDNAがかなり混ざっていました[3]。移植を受けた方は、検体の選び方を、検査の前の遺伝カウンセリングでご相談ください。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の知識ではまだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、ダイアモンド・ブラックファン貧血ではないとは言い切れません。診断は、血液・骨髄の検査や症状とあわせて行います。
検査の精度(専門的な数値)を見る

対象の遺伝子の99%以上の領域を、20回以上読み取ります(≥99% at 20x)。同じ場所を何回も読むほど、読み間違いを減らせます。読み取りの質が低かった変化は、別の方法(サンガー法)で確かめます。

6. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。原因が見つかった・見つからなかった・VUSが見つかった、のそれぞれで、次にできることが違います。

原因の遺伝子の変化が見つかったとき

ダイアモンド・ブラックファン貧血の診断を支える大きな根拠になり、病名がはっきりします。治療は専門の医療機関で続けますが、がんや鉄過剰の見張りを計画的に行う理由がはっきりし(第1章)、指定難病などの制度を確かめるときの手がかりにもなります(第7章)。

さらに、ご家族は同じ変化があるかを調べられるようになります。きょうだいを骨髄移植のドナーとして考えている場合は、その判断に使えます(第3章)。症状のないご家族の検査は、知ることの意味をよく考えてから受けていただくため、遺伝カウンセリングを行ったうえでお受けしています。

原因が見つからなかったとき

この10遺伝子に原因が見つからなくても、ダイアモンド・ブラックファン貧血ではないとは言い切れません(第5章)。ほかのリボソームの遺伝子や、ほかの骨髄不全症候群を調べる骨髄不全症候群パネル、症状が広い場合の全エクソーム検査などを、主治医の診断とあわせて考えます。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき

VUSは、それだけで診断やドナー選びの判断の根拠にはしません。ただし、その変化の意味を明らかにするために、ご両親などの家族検査を行うことがあります。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的と別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

次のお子さんで同じ病気が起こる確率

次のお子さんの確率は、原因がご本人で新しく起きた変化か、親から受け継いだ変化かで大きく変わります。原因がわかってはじめて、具体的に考えられるようになります。

  • ●常染色体顕性の型で、親御さんのどちらかが同じ変化をもっている場合:次のお子さんは、1人ごとに2分の1の確率で同じ変化を受け継ぎます[1]。
  • ●ご両親の血液で変化が見つからない(新しく起きた変化と考えられる)場合:確率は低くなりますが、ゼロではありません。GeneReviewsでも、両親とも変化が見つからないのに2人のきょうだいが同じ変化をもっていた家族が報告されており、親の性腺モザイクが考えられています。親の白血球の検査では、モザイクを見逃すことがあるともされています[1]。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。
  • ●GATA1(X連鎖)の場合:お母さんが保因者なら、息子さんは1人ごとに2分の1の確率で発症し、娘さんは2分の1の確率で保因者になります。お母さんが保因者かどうかで、確率は大きく変わります。

お子さんで新しく起きた変化だとわかれば、ご両親のせいではないことがはっきりします。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。

妊娠を考えるとき:出生前診断の相談

GeneReviewsは、ご家族で原因の変化がわかっていれば、出生前の検査や着床前の検査が可能としています[1]。ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。

当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。この病気で出生前診断をどのように進めるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に考えるため、妊娠を考えている段階からご相談ください。あらかじめご家族の原因を確かめておくことが、出生前診断を計画するための出発点になります。なお、この10遺伝子は当院の拡大版保因者スクリーニング(787遺伝子)の対象には入っていません(2026年10月時点)。ご家族で変化がわかっている場合は、その変化を直接調べる検査をご相談ください。

海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます

ダイアモンド・ブラックファン貧血のご本人は、大人になってご自身のお子さんを持つことがあり、常染色体顕性の型では、お子さんへ伝わる確率は1人ごとに2分の1です。「海外でPGT-Mを受けたい」というお問い合わせもあるため、準備に必要なことをまとめます。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因の遺伝子の確定、英語の検査結果の用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠後の絨毛検査・羊水検査(院内)です。

PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の指針は、準備として、①病気の原因と確かめられた遺伝子の変化があること、②その変化が書かれた元の報告書(認定を受けた検査室のもの)、③ご家族の検体、を挙げています[4]。

ご家族の検体が必要なのは、受精卵から取れるDNAがごくわずかで、変化を直接読むだけでは、2本あるうちの片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあるためです。そこで、変化のある場所の両側にある目印(STR・SNPなどの多型マーカー)で「変化をもつ染色体」を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます。顕性遺伝の病気では、患者さん少なくとも1人(できれば2人)、および/または発症していない方1人の検体が目安とされ、X連鎖の病気では、患者さん、および/または発症していない方(保因者と確かめられた方が望ましい)が目安とされています[4]。ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。

血縁者がいない場合について、指針は、ご夫婦で目印を調べたうえで、治療周期の受精卵や1個の精子を調べて変化の乗った染色体を決める方法を挙げています。ただし、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります。また、新しく起きた変化(de novo)で、これまでに妊娠歴のないご夫婦では、一般的なハプロタイプ解析の方法は使えないとされています[4]。ダイアモンド・ブラックファン貧血は新しく起きた変化が半数以上を占める病気なので[1]、とくに大切な点です。海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。

臨床遺伝専門医としての判断をお伝えすると、意義がまだわからない変化(VUS)は、病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。また、海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もってご確認ください。

⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です

PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[5]。当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。当院では絨毛検査・羊水検査を院内で行っており、海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。

日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます。この指針の「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、申請の時点で有効な治療法がないか、治療法があっても高度かつ侵襲度の高いもの、とされています。成人に達する前に生存が危ぶまれるわけではないものの、日常生活が著しく損なわれる状態が現れる疾患では、その病気の専門医の意見書などを追加で出す仕組みになっています。学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち、37件が審査継続中でした(2026年9月発表)。

英国では、公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気が載っています(2026年9月17日更新の一覧で2,067)。一覧にない病気は、施設を通じて申請し、HFEAが審査します。米国には、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[6]。どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。くわしくは海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へで解説しています。

結果の報告書について

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の見方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

7. 日本の制度(2026年10月時点)

ダイアモンド・ブラックファン貧血は、指定難病284に指定されています。難病情報センターによると、医療費助成の対象は重症度分類でStage 2以上(ステロイド以外の薬が必要、ステロイド依存、定期的な赤血球輸血が必要、のいずれか)で、輸血も薬も要らないStage 1は対象外です。ただし、基準に届かなくても高額な医療を続ける必要がある場合は、助成の対象になることがあります(重症度分類の適用:令和6年4月1日、2026年10月時点で確認)。

また、小児慢性特定疾病の対象疾病として「先天性赤芽球癆(ダイアモンド・ブラックファン貧血)」が掲載されています(2026年10月時点で確認)。助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の粘膜の検体なら、オンライン診療でもお受けできます。

ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
検体の採取血液・唾液・頬の粘膜
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検査内容 ダイアモンド・ブラックファン貧血に関係する10遺伝子(GATA1、RPL11、RPL35A、RPL5、RPS10、RPS17、RPS19、RPS24、RPS26、RPS7)の塩基配列と欠失・挿入(料金に含まれます)
検査費用 税込330,000円
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 2〜3週間
オプション 至急:結果までの期間が約7日短くなります(55,000円)/VUS除外(無料)
検体 血液(EDTAチューブ4mL×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3µg)、頬の粘膜(スワブ)、唾液(ご希望により採取キットをお送りします)
オンライン診療 唾液・頬の粘膜・血液のいずれもオンライン診療が可能です。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

オンライン診療(ビデオ通話での診療)では、遺伝カウンセリングを行ったあとに、検体を当院にお送りいただく流れになります。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えや品質の問題を防ぐため、キットが届く前にご自身で検体を採取しないでください。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

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臨床遺伝専門医が常駐し、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

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9. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「元気なきょうだい」が同じ変化をもっていることがある】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

ダイアモンド・ブラックファン貧血は、同じ遺伝子の変化をもっていても、ほとんど症状が出ない方がいる病気です。だからこそ、ご家族の「元気そうだから大丈夫」という見た目の印象は、骨髄移植のドナー選びでも、次のお子さんを考えるときでも、判断の根拠にはならないと考えています。原因の遺伝子がわかっていれば、きょうだいがドナーになれるかを、確かな方法で決められます。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで次の妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. ダイアモンド・ブラックファン貧血(ダイヤモンド・ブラックファン貧血)とはどんな病気ですか?

ダイアモンド・ブラックファン貧血は、骨髄で赤血球のもとになる細胞だけが極端に少なくなる、生まれつきの貧血です。先天性赤芽球癆、DBAとも呼ばれます。約9割は生後1年以内に血液の異常が現れ、約半数に親指の関節が1つ多い(三指節母指)、口蓋裂などの体の特徴を伴います。指定難病284に指定されています。

Q2. 寿命・予後はどうですか?

小児慢性特定疾病情報センターは、生命予後は一般的に良好としています。一方で、日本の難病情報センターによると、ステロイドに約80%が反応したあと、約40%がステロイド依存、約40%が輸血依存になり、約20%は寛解します。長い治療の副作用や鉄過剰、白血病・骨髄異形成症候群・骨肉腫・大腸がんなどのがんに注意が必要で、悪性腫瘍の頻度は2〜5%とされています。

Q3. 遺伝しますか?親が元気でも子どもが発症することはありますか?

多くは常染色体顕性(優性)遺伝で、この病気の方のお子さんは1人ごとに2分の1の確率で同じ変化を受け継ぎます。約55〜60%はご本人で新しく起きた変化によるものです。同じ変化をもっていても症状がほとんど出ないご家族がいるため、親が元気でも遺伝ではないとは言えません。GATA1が原因の場合はX連鎖の遺伝になります。

Q4. きょうだいを骨髄移植のドナーにする前に、遺伝子検査は必要ですか?

GeneReviewsは、病気の原因となる変化をもつ血縁者は、症状があるかどうかにかかわらず骨髄のドナーに適さないとしています。症状のないきょうだいが同じ変化をもっていることがあるため、ご本人の原因の遺伝子がわかっていれば、きょうだいがその変化をもっているかを遺伝子検査で確かめられます。移植の判断は、移植を行う専門の医療機関で行われます。

Q5. ファンコニ貧血や後天性赤芽球癆とはどう違いますか?

ダイアモンド・ブラックファン貧血は赤血球だけがつくられにくくなる生まれつきの貧血で、白血球・血小板はふつうにつくられます。ファンコニ貧血では、白血球・血小板も含めて骨髄不全が進むことが多いとされています。後天性赤芽球癆は、胸腺腫や薬、ウイルスなどをきっかけに生まれたあとに起こるもので、このページの遺伝子検査の対象ではありません。

Q6. 遺伝子検査で原因が見つからないことはありますか?

あります。GeneReviewsでは約2割は今の医学で原因の遺伝子がわかっておらず、日本では遺伝子の異常が見つかるのは約60%とされています。この検査の10遺伝子に原因が見つからなくても、ダイアモンド・ブラックファン貧血ではないとは言い切れません。必要に応じて、骨髄不全症候群パネルや全エクソーム検査を考えます。

Q7. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?

はい。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。PGT-Mの準備には、ふつうご本人の結果だけでなくご家族の検体も必要で、新しく起きた変化で妊娠歴のないご夫婦では、一般的なハプロタイプ解析の方法は使えないとされています。くわしくは当院のコラム「海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へ」で解説しています。

Q8. 費用と結果までの期間は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です(至急オプション55,000円で約7日短くなります)。遺伝カウンセリング料は30分22,000円(税込)で、検査費用とは別にかかります。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

🧬 一度の検査で、ご本人とご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。ダイアモンド・ブラックファン貧血の原因がわかれば、診断の確定やがんへの備えだけでなく、きょうだいのドナー選び、次のお子さんの確率、妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Sieff C. DBA Syndrome. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2009 (Updated 2025 Jul 31). [NCBI Bookshelf NBK7047]
  • [2] Wlodarski MW, Vlachos A, Farrar JE, et al. Diagnosis, treatment, and surveillance of Diamond-Blackfan anaemia syndrome: international consensus statement. Lancet Haematol. 2024;11(5):e368-e382. [DOI: 10.1016/S2352-3026(24)00063-2](PMID: 38697731)
  • [3] Mertens M, Sadlo M, Kühl JS, et al. Who Am I? Eyebrow Follicles Minimize Donor-Derived DNA for Germline Testing After Hematopoietic Stem Cell Transplantation. Int J Mol Sci. 2026;27(2):744. [DOI: 10.3390/ijms27020744]
  • [4] ESHRE PGT-M Working Group, Carvalho F, Moutou C, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the detection of monogenic disorders. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa018. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa018]
  • [5] ESHRE PGT Consortium Steering Committee, Carvalho F, Coonen E, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the organisation of PGT. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa021. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa021]
  • [6] Nakasato K, Yamamoto BA, Kato K. Evaluating standards for ‘serious’ disease for preimplantation genetic testing: a multi-case study on regulatory frameworks in Japan, the UK, and Western Australia. Hum Genomics. 2022;16:16. [DOI: 10.1186/s40246-022-00390-3]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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